説明

半導体装置

【課題】半導体素子と配線基板との間にボイドが発生するのを効果的に防ぎ、フリップチップ実装の信頼性を高める半導体装置を提供する。
【解決手段】配線基板1における半導体素子2の側端部2eの近傍に、アンダーフィル3の塗布位置8がある。配線基板1には、アンダーフィル3が塗布される塗布位置8の近傍であって、半導体素子2のコーナー部2a,2bに対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる凹部4a,4bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を配線基板にフリップチップ実装で接続し、半導体素子と配線基板との間に封止樹脂を充填した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯情報機器等の小型化、軽量化に伴って、半導体装置の高密度化、小型化が要求されている。これらの要求に応えるためにフリップチップ実装を用いた半導体装置の開発が行われている。フリップチップ実装は、半導体素子の電極パッドにバンプ電極が形成された面と、配線基板上の電極パッドが形成された面とを互いに対向させて、配線基板に半導体素子を接続する技術である。フリップチップ実装では、従来のワイヤボンディングを用いた実装技術と比較し、実装後の半導体装置のサイズを小型化できる。フリップチップ実装を行う場合、半導体素子と配線基板との間にアンダーフィルと呼ばれる封止樹脂が充填される。
【0003】
アンダーフィルを充填する目的としては、接続部を異物から保護し、構造的に補強すると共に、半導体素子と配線基板との線膨張係数の違いと、周辺温度の変動や半導体装置自体の発熱によって発生する熱応力を分散させることにある。このアンダーフィルの充填により、半導体素子と配線基板との接続部が破断に至るのを防いでいる。
【0004】
アンダーフィルを形成する場合、半導体素子を配線基板にフリップチップ実装した後に、半導体素子の外周辺に、液状のアンダーフィルが半導体素子の上面に被らないように、半導体素子の側端部より一定の距離を離して配線基板上にアンダーフィルを塗布する。その後、濡れ広がったアンダーフィルが半導体素子の側端部に接触し、半導体素子と配線基板との間にアンダーフィルが毛細管現象により充填される。このアンダーフィルとしては、熱硬化性の樹脂を用いるのが一般的であり、アンダーフィルの充填後、加熱により熱硬化させている。
【0005】
ところで、金属材料とアンダーフィルとは密着性が低いため、応力が集中する半導体素子のコーナー部には、金属材料のバンプ電極を配置しないのが一般的である。毛細管現象を利用したアンダーフィルの充填方法においては、半導体素子のコーナー部の直下はバンプ電極が配置されていないため、バンプ電極が配置されている箇所よりもアンダーフィルが入り込みやすい。したがって、半導体素子のコーナー部を起点として毛細管現象により接続部のバンプ配列に沿って進行するアンダーフィルの進行速度は、半導体素子の側端部の中央部からのアンダーフィルの進行速度よりも速くなる。半導体素子の側端部の両側のコーナー部からのアンダーフィルの進行速度が速いと、半導体素子と配線基板との間の空気が両側から巻き込まれ、半導体素子と配線基板との間のアンダーフィル中にボイドが形成されることがある。
【0006】
このボイドには、アンダーフィルから浸透した水分が溜まりやすい。したがって、このボイド中に水分が含まれている状態ではんだリフロー工程などの加熱工程が加わると、ボイド中の水分が蒸発して急激に膨張することがある。この水蒸気の膨張が発生すると、アンダーフィルの剥離やクラック、半導体素子と配線基板との間のバンプ電極による接続部の破断が生じ、半導体装置の信頼性が低下する。またバンプ電極の周囲にボイドが発生すると、浸透した水分によるバンプ間のマイグレーションの発生や、半導体素子と配線基板との間の接続強度不足となる。
【0007】
そこで、アンダーフィル中にボイドが形成されるのを抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、配線基板における半導体素子を搭載する搭載部の外周近傍に凹部を形成し、この凹部にアンダーフィルを流れ込ませることでアンダーフィルの進行速度の減速を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−189005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した方法でボイドの発生を抑制しようとする場合、アンダーフィルは、半導体素子と配線基板との間を毛細管現象で進むため、配線基板における半導体素子搭載部の外周部近傍に凹部を設けても、凹部にはほとんど流入しない。そのため、塗布したアンダーフィルの大部分は、半導体素子搭載外周部より内側である半導体素子と配線基板の間を毛細管現象により進行することとなり、アンダーフィルの進行速度の減速効果は小さく、ボイドの発生を抑制する効果としては不十分である。
【0010】
そこで、本発明は、半導体素子と配線基板との間にボイドが発生するのを効果的に防ぎ、フリップチップ実装の信頼性を高める半導体装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のバンプ電極が配置された半導体素子と、前記各バンプ電極の位置に対応して配置された複数の電極パッドを有する配線基板と、を備え、前記バンプ電極と前記電極パッドとが接続されており、前記配線基板と前記半導体素子との間は封止樹脂により充填されてなる半導体装置において、前記配線基板には、前記半導体素子のコーナー部に対向する位置に、前記封止樹脂が充填された凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子のコーナー部を配線基板の凹部に対向させることで封止樹脂の進行速度を減速させているので、コーナー部から先に封止樹脂が進行するのを防ぐことができ、封止樹脂中にボイドが発生するのを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は、半導体装置の概略平面図、(b)は、図1(a)のA−A’線に沿う半導体装置の概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は、半導体装置の概略平面図、(b)は、図2(a)のB−B’線に沿う半導体装置の概略断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は、半導体装置の概略断面図、(b)は、別の半導体装置の概略断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は、半導体装置の概略平面図、(b)は、図6(a)のC−C’線に沿う半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、図1(a)は、半導体装置の概略平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A’線に沿う半導体装置の概略断面図である。半導体装置100は、インターポーザである配線基板1と、配線基板1に実装される半導体素子2と、を備えている。半導体素子2は、平面視四角形状であり、4つのコーナー部2a,2b,2c,2dを有する。半導体素子2において、配線基板1に対向する側の面を裏面とすると、半導体素子2の裏面には、半導体素子2のコーナー部2a〜2dを避けて、複数の電極パッド5が格子状に配置されている。この半導体素子2の裏面は回路面であるが、回路面が表面にあってもよい。各電極パッド5には、はんだのバンプ電極7が配置されている。なお、一部の電極パッド5にバンプ電極7が形成されていない場合であってもよい。
【0016】
配線基板1は、半導体素子2よりも平面視大面積の四角形状である。配線基板1において、半導体素子2に対向する側の面を表面とすると、配線基板1の表面には、半導体素子2に対向する部分に素子用凹部1aが形成されており、素子用凹部1aの低壁に、各バンプ電極7の位置に対応して複数の電極パッド6が配置されている。そして、半導体素子2の各バンプ電極7と、配線基板1の各電極パッド6とがはんだリフロー工程における加熱処理により接続されている。なお、配線基板1は、基体1Aの表面に形成されたレジスト層1Bを有する。素子用凹部1aは、レジスト層1Bに形成された、レジスト層1Bから電極パッド6を露出させるための開口部であり、各電極パッド6は、基体1Aに配置されている。この素子用凹部1aは、半導体素子2よりも平面視小面積の四角形状に形成されており、半導体素子2と配線基板1とに隙間を空けて、素子用凹部1aが平面視半導体素子2で覆われている。配線基板1の基体1Aは、ガラスエポキシ系基板、セラミック系基板、絶縁性アルミ基板などのハード基板もしくはFPC、TABなどのフレキシブル基板もしくは透明基板などを用いることができる。
【0017】
ここで、半導体装置100の製造工程において、封止樹脂としての液状のアンダーフィル3が配線基板1の表面に塗布される。このアンダーフィル3としては、流動性を有し、熱硬化性を有する絶縁体であればすべてを含む。これにより、アンダーフィル3は、配線基板1の表面を濡れ広がり、半導体素子2と配線基板1との間を毛細管現象により進行して、半導体素子2と配線基板1との間に充填される。そして、加熱することによりアンダーフィル3を熱硬化させている。
【0018】
アンダーフィル3は、アンダーフィル3が半導体素子2の表面に被らないように、半導体素子2の4つの側端部のうち、1つの側端部2eの近傍であって、その側端部2eの辺に沿って、一方のコーナー部2aから他方のコーナー部2bに向かって塗布される。なお、塗布位置8は、半導体素子2の側端部2eの近傍としたが、側端部2f,2g,2hの近傍のいずれでもよく、また、半導体素子2の全周の近傍であってもよい。
【0019】
本第1実施形態では、配線基板1の表面には、配線基板1に実装された半導体素子2のコーナー部2a〜2dに対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる複数の凹部4(4a,4b,4c,4d)が形成されている。そのうち、凹部4a,4bは、塗布位置8の近傍に形成されている。具体的には、凹部4aは、塗布開始位置8aの近傍、凹部4bは、塗布終了位置8bの近傍に形成されている。この際、アンダーフィル3の塗布位置8は凹部4a,4bを含まないことが望ましい。
【0020】
各凹部4の一部分は、半導体素子2のコーナー部2a〜2dの下の領域に及んでおり、素子用凹部1aのコーナー部に連通している。つまり、各凹部4は、素子用凹部1aのコーナー部に跨る六面体(平面視四角形)の外形形状であり、各凹部4の一部分が素子用凹部1aのコーナー部にオーバーラップしている。各凹部4a〜4dの深さは、素子用凹部1aと同じかそれよりも浅い。なお、各凹部4の形状は、半導体素子2のコーナー部2a〜2dの下の領域を含むものであれば、例えば平面視多角形や円形等であってもよく、また、素子用凹部1aにオーバーラップしていなくてもよく、種々の形状に形成可能である。また、凹部4a〜4dの形状は全て同じである必要はない。
【0021】
本第1実施形態では、凹部4は、配線基板1のレジスト層1Bの作製時に、予め凹部4の外形が除去されたレジストを一層ないし複数積層して形成されている。なお、凹部4の別の作成方法として、配線基板1の作製後に機械加工又はエッチングによって凹部4を作製してもよいし、配線基板1の基体1Aに機械加工によって貫通孔を作成し、液状レジストの塗布により凹部4を形成してもよい。
【0022】
本第1実施形態では、バンプ電極7に金スタッドバンプや金メッキバンプを用いて超音波接合により電極パッド5に接続してもよい。また、バンプ電極7に金メッキバンプや銅メッキバンプを用いて、予め印刷法やメッキ法によりハンダ層を付与した電極パッド5とリフロー工程による加熱処理で接続してもよい。また、バンプ電極7に金メッキバンプや銅メッキバンプを用いてハンダディップ法によりバンプ電極7にハンダ層を付与し、電極パッド5とリフロー工程による加熱処理で接続してもよい。
【0023】
製造工程において、アンダーフィル3が塗布位置8に塗布された場合、塗布位置8に塗布されて濡れ広がるアンダーフィル3は、半導体素子2の側端部2e側から半導体素子2と配線基板1との間を毛細管現象により進行することとなる。ここで、毛細管現象によるアンダーフィル3の進行は空間の間隔に反比例するため、凹部4a,4bの箇所では、凹部4a,4bの存在しない配線基板1上よりも減速される。つまり、半導体素子2のコーナー部2a,2bに対応する位置には、凹部4a,4bが形成されているので、アンダーフィル3の毛細管現象が緩和され、アンダーフィル3が凹部4a,4bに溜まり、アンダーフィル3の進行速度が減速される。したがって、半導体素子2の側端部2e側から進行するアンダーフィル3のうち、側端部2eの中央部を進行するアンダーフィル3よりも側端部2eの両側のコーナー部2a,2bを進行するアンダーフィル3が遅延する。換言すると、アンダーフィル3は、側端部2eの中央部から優先的に進行する。これにより、アンダーフィル3が半導体素子2のコーナー部2a,2bから優先的に進行してしまうのを防ぎ、半導体素子2と配線基板1との間の空気が両側から巻き込んでしまうことによってアンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。
【0024】
更に本第1実施形態では、配線基板1において、半導体素子2のコーナー部2c,2dに対向する位置にも凹部4c,4dが形成されている。したがって、コーナー部2c,2dに到達した後に側端部2gの中央部に向かうアンダーフィル3の進行速度が減速され、半導体素子2と配線基板1との間の空気が両側から巻き込まれるのが効果的に防止される。これにより、より効果的にアンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。
【0025】
また、凹部4a〜4dが素子用凹部1aに連通しているので、凹部4a〜4dに流れ込んだアンダーフィル3は素子用凹部1aに流れ込みやすく、半導体素子2と配線基板1との間の中央部にアンダーフィル3が誘導されることとなる。したがって、より効果的にアンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。
【0026】
なお、本第1実施形態では、半導体素子2の各コーナー部2a〜2dに対向して各凹部4a〜4dを形成したので、塗布位置8を他の側端部2f,2g,2hの近傍に変更しても、同様に、アンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。また、半導体素子2の外周全体にアンダーフィル3を塗布する場合にも、本発明は適用可能である。
【0027】
また、本第1実施形態では、半導体素子2の全てのコーナー部2a〜2bに対応して配線基板1に凹部4a〜4dを形成したが、凹部4を全てのコーナー部2a〜2bに対応して形成する必要はない。例えば、コーナー部2c,2dにてアンダーフィル3を減速させる必要がなければ、凹部4c,4dは省略可能であり、また、コーナー部2a及びコーナー部2bの一方で減速させる必要がなければ、凹部4a及び凹部4bの一方は省略可能である。
【0028】
ここで、一般的に半導体素子2のコーナー部2a,2b,2c,2dには電極パッド5を配置していない。そのため、凹部4の体積が、半導体素子2のコーナー部2a,2b,2c,2dに対応する領域において凹部4がないとした場合の体積以上となるように設定されている。これにより、半導体素子2のコーナー部2a,2bからのアンダーフィル3の進入を確実に遅延できる。
【0029】
また、本第1実施形態において、凹部4の表面の一部又は全部は、凹部4の周囲よりもアンダーフィル3の濡れ性の低い材料で形成されている。この材料として、例えば、アンダーフィル3の濡れ性の低いポリエチレンやポリプロピレン、シリコーン、フッ素系樹脂等で構成される材料で形成してもよい。
【0030】
これにより、凹部4に進入したアンダーフィル3の進行速度の減速効果をさらに増大させることができる。したがって、アンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐ効果を、増すことができる。なお、上記のアンダーフィル3の濡れ性の低い材料は、配線基板1の作製時にあらかじめ形成しておいてもよいし、配線基板1の作製後に、アンダーフィル3と濡れ性の低い材料を凹部4に塗布して形成してもよい。また、凹部4の一部を配線基板1の金属配線材料と同一のCuやAgやAuやAlで形成してもよい。一般的に金属材料とアンダーフィル3との濡れ性は低いため、凹部4に進入したアンダーフィル3は減速される。これにより凹部4を持つ配線基板1の製造時に、配線基板1の製造材料以外の新たな材料を用意することなく低コストに製造できる。
【0031】
ここで、8mm×8mmの外形の半導体素子2をフリップチップ実装する場合、半導体素子2と配線基板1の間隔は一般的に40μm程度となる。また半導体素子2の外形が8mm×8mm程度の場合、半導体素子2のコーナー部2a〜2dの400μm×400μm程度の領域には電極パッドを配置しない。そのため半導体素子2のコーナー部2a〜2dの電極パッド5が配置されていない領域の体積は400μm×400μm×40μm=6400000μm程度となる。また、アンダーフィル3の塗布位置8が凹部4を含まないためには、アンダーフィル3の塗布幅を考慮すると、半導体素子2から300μm程度の範囲内に凹部4を形成するのが望ましい。上記の場合に、図1に示すように凹部4を形成すると、凹部4の半導体素子2のコーナー部の下以外の部分の面積は、(300μm+350μm)−(350μm)=300000μm前後となる。そのため、凹部4の体積が半導体素子2のコーナーの電極パッド5が配置されていない領域の体積以上とするためには、凹部4の深さは6400000μm/300000μm=21μm以上であることが望ましい。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置100Aについて、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置100Aの概略構成を示す説明図であり、図2(a)は、半導体装置100Aの概略平面図、図2(b)は、図2(a)のB−B’線に沿う半導体装置100Aの概略断面図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
半導体装置100Aの配線基板1の表面には、配線基板1に実装された半導体素子2のコーナー部2a〜2dに対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる複数の凹部40(40a〜40d)が形成されている。そのうち、凹部40a,40bは、塗布位置8の近傍に形成されている。具体的には、凹部40aは、塗布開始位置8aの近傍、凹部40bは、塗布終了位置8bの近傍に形成されている。この際、アンダーフィル3の塗布位置8は凹部40a,40bを含まないことが望ましい。
【0034】
各凹部40a〜40dは、素子用凹部1aのコーナー部に連通するよう素子用凹部1aのコーナー部に跨ってオーバーラップして形成されている。そして、各凹部40aは、素子用凹部1aよりも深く凹んで形成されている。つまり、凹部40の底面と半導体素子2のバンプ電極7が形成されている面との間隔を、半導体素子2直下の配線基板1の領域と半導体素子2のバンプ電極7が形成されている面との間隔よりも広く設定している。
【0035】
これにより、アンダーフィル3は少なくとも凹部40a,40bを満たすまでは半導体素子2と接触する可能性が低い。そのため半導体素子2のコーナー部2a,2bに進入したアンダーフィル3は、少なくとも凹部40a,40bを満たすまで毛細管現象によるアンダーフィル3の進行を抑制することができる。
【0036】
結果、凹部40a,40bが配置されている半導体素子2のコーナー部2a,2bに進入するアンダーフィル3の毛細管現象の開始が遅延され、半導体素子2のコーナー部2a.2bからのアンダーフィル3の進行をより効果的に減速できる。したがってアンダーフィル3が半導体素子2のコーナーから優先的に進行してしまうのを防止でき、アンダーフィル3中にボイドが発生することを防ぐ効果を、増すことができる。
【0037】
更に本第2実施形態では、配線基板1において、半導体素子2のコーナー部2c,2dに対向する位置にも凹部40c,40dが形成されている。したがって、コーナー部2c,2dに到達した後に側端部2gの中央部に向かうアンダーフィル3の進行速度が減速され、より効果的にアンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。
【0038】
また、凹部40a〜40dが素子用凹部1aに連通しているので、各凹部40a〜40dに流れ込んだアンダーフィル3のオーバーフロー分は素子用凹部1aに流れ込み、半導体素子2と配線基板1との間の中央部にアンダーフィル3が誘導されることとなる。したがって、より効果的にアンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。
【0039】
なお、本第2実施形態では、半導体素子2の各コーナー部2a〜2dに対向して各凹部40a〜40dを形成したので、塗布位置8を他の側端部2f,2g,2hの近傍に変更しても、同様に、アンダーフィル3中にボイドが発生するのを防ぐことができる。また、半導体素子2の外周全体にアンダーフィル3を塗布する場合にも、本発明は適用可能である。
【0040】
また、本第2実施形態では、半導体素子2の全てのコーナー部2a〜2bに対応して配線基板1に凹部40a〜40dを形成したが、凹部40を全てのコーナー部2a〜2bに対応して形成する必要はない。例えば、コーナー部2c,2dにてアンダーフィル3を減速させる必要がなければ、凹部40c,40dは省略可能であり、また、コーナー部2a及びコーナー部2bの一方で減速させる必要がなければ、凹部40a及び凹部40bの一方は省略可能である。
【0041】
凹部40は、配線基板1の基体1Aに機械加工を施し、レジスト層1Bをエッチングによって除去して凹部40を作製してもよい。また、配線基板1の基体1Aに機械加工によって貫通孔を作成し、液状レジストの塗布により凹部40を形成してもよい。
【0042】
ここで、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、8mm×8mmの外形の半導体素子2をフリップチップ実装する場合、半導体素子2直下の配線基板1の領域と半導体素子2のバンプ電極7が形成されている面との間隔は40μm程度である。また、上記第1実施形態と同様、半導体素子2のコーナー部の、電極パッド5が配置されていない領域に充填されるアンダーフィル3の体積以上の体積を有する凹部40を、半導体素子2のコーナーに対向して配置している。したがって、半導体素子2のコーナー部2a,2bからのアンダーフィル3の進入を確実に遅延できる。この場合の凹部40の面積は(300μm+350μm)=422500μm程度となる。そのため、凹部40の体積が半導体素子2のコーナー部の電極パッド5が配置されていない領域の体積以上とするためには、凹部4の深さは6400000μm/422500μm=15μm以上であることが望ましい。そのため半導体素子2のバンプ電極7が形成されている面と凹部4の底面の間隔は55μm以上であることが望ましい。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置100Bについて、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置100Bの概略構成を示す説明図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、半導体装置100Bの配線基板1の表面には、配線基板1に実装された半導体素子2のコーナー部2a〜2dに対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる凹部140a〜140dが形成されている。そのうち、凹部140a,140bは、塗布位置8の近傍に形成されている。具体的には、凹部140aは、塗布開始位置8aの近傍、凹部140bは、塗布終了位置8bの近傍に形成されている。この際、アンダーフィル3の塗布位置8は凹部140a,140bを含まないことが望ましい。
【0045】
凹部140a及び凹部140bは、半導体素子2の中央側に向かって延び、アンダーフィル3を半導体素子2の中央側に誘導する誘導部141を有する。この誘導部141は、半導体素子2のコーナー部2a,2bから半導体素子2中央側へ延びた多角柱に形成されている。これにより、凹部140a,140bが対向して配置されている半導体素子2のコーナー部2a,2bから進入したアンダーフィル3を、半導体素子2の中央側に誘導することができる。
【0046】
結果、半導体素子2のコーナー部2a,2bからのアンダーフィル3の進行をさらに減速できる。したがってアンダーフィル3が半導体素子2のコーナー部2a,2bから優先的に進行してしまうことによりアンダーフィル3中にボイドが発生することを防ぐ効果を、増すことができる。なお、凹部140a,140bの誘導部141の形状が半導体素子2のコーナー部2a,2bから半導体素子2の中央側へ延びる多角錐に形成しても、同様の効果を実現できる。
【0047】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置100Cについて、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置100Cの概略構成を示す説明図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、半導体装置100Cの配線基板1の表面には、配線基板1に実装された半導体素子2のコーナー部2a〜2dに対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる凹部240a〜240dが形成されている。そのうち、凹部240a,240bは、塗布位置8の近傍に形成されている。具体的には、凹部240aは、塗布開始位置8aの近傍、凹部240bは、塗布終了位置8bの近傍に形成されている。この際、アンダーフィル3の塗布位置8は凹部240a,240bを含まないことが望ましい。
【0049】
本第4実施形態では、凹部240a〜240dは、円柱又は円錐の形状に形成され、凹部240a〜240dの上端が円形(上端全体が、円弧状)に形成されている。これにより、凹部4の上端に角部を持たないため、アンダーフィル3の表面張力が破れにくくなり、凹部240a〜240dからのアンダーフィルの進行が遅延される。
【0050】
結果、凹部240a〜240dからのアンダーフィル3の進行が遅延されるので、凹部240a〜240dが設けられている半導体素子2のコーナー部2a〜2dからのアンダーフィル3の進行開始も遅延できる。したがって、アンダーフィル3が半導体素子2のコーナー部2a〜2dから優先的に進行してしまうことによりアンダーフィル3中にボイドが発生することを防ぐ効果を増すことができる。
【0051】
なお、凹部240a〜240dの形状は、円弧柱若しくは円弧錐又は半球であっても同様の効果を実現でき、凹部240a〜240dの上端の少なくとも半導体素子2の中央側が、円弧状に形成されていれば、上記同様の効果を奏する。
【0052】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る半導体装置100D,100Dについて、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、図5(a)は、半導体装置100Dの概略断面図、図5(b)は、別の半導体装置100Dの概略断面図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
図5(a),(b)に示すように、半導体装置100D,100Dの配線基板1の表面には、半導体素子2のコーナー部に対向する位置に、アンダーフィル3の充填の際にアンダーフィル3の進行を減速させる凹部340A,340Bが形成されている。凹部340A,340Bの内側壁には、段差部342A,342Bが形成されている。
【0054】
図5(a)に示す段差部342Aは、階段状に形成されている。これにより、配線基板1とアンダーフィル3との接触面積が増大し、配線基板1とアンダーフィル3との接着強度が向上する。結果、応力が集中する半導体素子2のコーナー部に対向するアンダーフィル3の熱応力に対する耐性を向上させ、半導体装置100Dの信頼性を向上させることができる。
【0055】
図5(b)に示す段差部342Bは、アンダーカット部343を有して形成されている。これにより、配線基板1とアンダーフィル3との接触面積が増大すると共に、アンダーカット部343が抜け止めとなり、配線基板1とアンダーフィル3との接着強度が向上する。結果、応力が集中する半導体素子2のコーナー部に対向するアンダーフィル3の熱応力に対する耐性を向上させ、半導体装置100Dの信頼性を向上させることができる。
【0056】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る半導体装置100Eについて、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の第6実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す説明図であり、図6(a)は、半導体装置の概略平面図、図6(b)は、図6(a)のC−C’線に沿う半導体装置の概略断面図である。なお、上記第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図6(a)、(b)に示すように、半導体素子2は、その裏面に配置され、受光部及び発光部の少なくとも一方の機能を有する光素子9を備えている。つまり、半導体素子2の裏面の光素子9の部分が光インターフェース面である。
【0058】
配線基板1には、半導体素子2のコーナー部2a〜2dに対向する凹部40(40a〜40d)が複数形成されている。また、配線基板1には、光素子9に対向する光透過部10が形成されており、半導体素子2が、光素子9を光透過部10に臨むように配置されている。光透過部10は、開口部であってもよいし、透光性材料を使用した透光基板であってもよい。
【0059】
ところで、フリップチップ実装する半導体素子2が光素子9をもつ場合にも、半導体素子2と配線基板1の間には、接続部である電極パッド5、バンプ電極7及び電極パッド6の保護、補強のためにアンダーフィル3を充填する必要がある。また光インターフェースの機能を損なわないために、半導体素子2の光インターフェース面である光素子9にアンダーフィル3が被らないように、アンダーフィル3の充填を調整する必要がある。
【0060】
本第6実施形態では、図6(a)に示すように、配線基板1において、アンダーフィル3を半導体素子2の側端部2e,2f,2g,2hの近傍であり、半導体素子2を囲う位置をアンダーフィル3の塗布位置8A,8B,8C,8Dとしている。具体的に説明すると、塗布位置8Aにおける塗布開始位置は、凹部40aの近傍であり、塗布位置8Aにおける塗布終了位置は、凹部40bの近傍である。また、塗布位置8Bにおける塗布開始位置は、凹部40bの近傍であり、塗布位置8Bにおける塗布終了位置は、凹部40cの近傍である。また、塗布位置8Cにおける塗布開始位置は、凹部40cの近傍であり、塗布位置8Cにおける塗布終了位置は、凹部40dの近傍である。また、塗布位置8Dにおける塗布開始位置は、凹部40dの近傍であり、塗布位置8Dにおける塗布終了位置は、凹部40aの近傍である。このように複数辺にアンダーフィル3を塗布する場合、半導体素子2のコーナー部2a〜2dは二辺のアンダーフィル3の塗布位置の始点と終点に当たるため、半導体素子2のコーナー部2a〜2dに塗布されるアンダーフィル3の量が多くなる。しかし凹部40a〜40dが半導体素子2のコーナー部2a〜2dからのアンダーフィル3の進行を減速すると共に半導体素子2の側端部の中央部よりも、凹部40a〜40dの体積分だけアンダーフィル3の量を保持できる。そのため、半導体素子2の光素子9へのアンダーフィル3の被りを抑制できる。なお、凹部40a〜40dの外形や深さは、塗布されるアンダーフィル3の量に対応した大きさに設定しておけばよい。
【0061】
さらに、配線基板1上に、アンダーフィル流れ込み防止部を設ける必要がないため、フリップチップ実装時に流れ込み防止部が半導体素子2に接触することによる半導体素子2と配線基板1との接続不良が起ることもなく、半導体素子2の破損が起ることもない。したがって、流れ込み防止部を設ける必要がなく、半導体装置100Eのサイズを小さくしても流れ込み防止部が半導体素子2に接触することがないため、半導体装置100Eを小型化することが可能である。なお、アンダーフィル3の塗布は、必ずしも半導体素子2の外周四辺に塗布する必要はない。
【0062】
上記構成によれば、凹部40a〜40dにより、半導体素子2のコーナー部2a〜2dからのアンダーフィル3の進行を減速できる。さらに、半導体素子2のコーナー部2a〜2dと半導体素子2の側端部2e〜2hの中央部とでアンダーフィル3の毛細管現象による進行を均一にすることができる。結果、配線基板1のサイズを大きくすることなく、光素子9へのアンダーフィル3の被りを抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 配線基板
2 半導体素子
3 アンダーフィル(封止樹脂)
4a,4b,40a,40b,140a,140b,240a,240b,340A,340B 凹部
6 電極パッド
7 バンプ電極
100,100A,100B,100C,100D,100D,100E 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンプ電極が配置された半導体素子と、前記各バンプ電極の位置に対応して配置された複数の電極パッドを有する配線基板と、を備え、前記バンプ電極と前記電極パッドとが接続されており、前記配線基板と前記半導体素子との間は封止樹脂により充填されてなる半導体装置において、
前記配線基板には、前記半導体素子のコーナー部に対向する位置に、前記封止樹脂が充填された凹部が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記配線基板には、前記複数の電極パッドが配置され、前記半導体素子に対向する素子用凹部が形成され、
前記凹部は、前記素子用凹部のコーナー部に連通するよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記素子用凹部よりも深く凹んで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記素子用凹部のコーナー部に跨って形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凹部の表面は、前記凹部の周囲よりも前記封止樹脂の濡れ性の低い材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記凹部の上端の少なくとも前記半導体素子の中央側が、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記凹部の内側壁には、段差部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記半導体素子の中央側に向かって延び、前記封止樹脂を前記半導体素子の中央側に誘導する誘導部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体素子は、受光部及び発光部の少なくとも一方が配置された光インターフェース面を有し、前記光インターフェース面が前記配線基板に形成された光透過部に臨むように配置され、
前記凹部は、前記半導体素子の複数のコーナー部のそれぞれに対向するよう複数形成され、
前記封止樹脂は、前記半導体素子を囲う塗布位置に塗布されて前記半導体素子と前記配線基板との間に充填されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171426(P2011−171426A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32319(P2010−32319)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】