説明

半田付け装置

【課題】炉本体を形成する筐体の合わせ面に装着されているシール部材の耐熱・耐薬品性を向上させた半田付け装置を提供する。
【解決手段】炉内で電子部品を搭載した基板を半田付けする装置であって、炉本体は上下に2分割されて上側筐体1Aと下側筐体1Bとから形成されている。上側筐体1Aと下側筐体1Bの合わせ面にはシール部材13が装着され、炉内を気密に保持している。シール部材13は断面円形の中実のシリコーンゴムからなる弾性部材で、下側筐体1Bの合わせ面に形成した凹所14に収納されて合わせ面に配置する。シール部材13の表面は耐熱・耐薬品性部材16であるポリテトラフルオロエチレンチューブで被覆されている。耐熱・耐薬品性部材16を被覆したシール部材13は上側筐体1Aと下側筐体1Bの合わせ面で挟圧され、炉内を気密に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー半田付け装置等の半田付け装置に関し、特に炉本体を形成する筐体の合わせ面に装着されたシール部材の耐熱・耐薬品性を向上させた半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー半田付け装置は、一般に、炉内に予熱室、リフロー室、及び冷却室をコンベヤの搬送ラインに沿って順に有しており、電子部品を搭載した基板がコンベヤによって炉内を搬送される。電子部品を搭載した基板は、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られており、予熱室で所定の高温度に加熱され、リフロー室で高温の半田付け温度まで加熱されて、基板上のクリーム半田が溶融される。そして、リフロー室に続く冷却室を通る間に溶融半田が冷却固化され、半田付けが完了する。
【0003】
前記装置において、炉本体は、炉内のメンテナンスなどのために、一般に、上下に2分割されて上側筐体と下側筐体とから形成され、上側筐体が開閉可能に構成されている。そして、炉内には、半田付け部の酸化を防止するために窒素ガス等の不活性ガスが供給されており、上側筐体と下側筐体の合わせ面にはシール部材が装着され、炉内の気密性を高めている(特許文献1参照)。シール部材は従来、シリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムなどで形成されている。
【特許文献1】特許第3141306号公報
【0004】
一方、近年、リフロー半田付け装置で使用される半田は、鉛を使用しない鉛フリー半田が主流となってきており、従来使用されてきた半田よりも半田付け温度が高くなっている。そのため、炉内のリフロー室内の雰囲気は例えば240℃〜260℃になる。また、半田付け処理において、基板に塗布されたクリーム半田が加熱されると、クリーム半田に含まれているフラックスやアルコール等がガス(以下、フラックスガスという。)となって蒸発し、炉内の雰囲気ガス中に混合される。そして鉛フリー半田を使用する半田付け処理においては半田に含まれているフラックスの成分も従来と異なっている場合がある。
【0005】
そのため、従来使用されているシール部材は、シリコーンゴムの場合、フラックスガスにより劣化する場合があり、エチレンプロピレンゴムの場合は高温で劣化することがある。
その結果、炉内のシール効果が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、炉本体を形成する筐体の合わせ面に装着されているシール部材の耐熱・耐薬品性を向上させた半田付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、炉内で電子部品を搭載した基板を半田付けする装置であって、炉本体を形成する筐体の合わせ面にシール部材が装着されている半田付け装置において、
耐熱性及びフラックスガスに対する耐薬品性に優れた耐熱・耐薬品性部材が前記シール部材の表面に被覆されていることを特徴とする。
【0008】
耐熱・耐薬品性部材は、シール部材の全表面を被覆するのが望ましいが、シール部材の表面のうち、炉内の雰囲気ガスが接触する部分のみを被覆してもよい。
【0009】
前記耐熱・耐薬品性部材は、例えばフッ素樹脂又はポリイミド樹脂で形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、炉本体を形成する筐体の合わせ面部をシールするシール部材が耐熱・耐薬品性部材で被覆されているので、特に半田付け温度が高い鉛フリー半田を使用する半田付け処理の場合においても、シール部材が炉内の熱やフラックスガスによって劣化するのを防止でき、炉内を気密に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
リフロー半田付け装置は、図1に示されているように、炉1内に、3個の予熱室2と、1個のリフロー室3と、1個の冷却室4とをコンベヤ5の搬送ラインに沿って順に有している。各室2,3,4内には、半田の酸化を防止するために不活性ガス、本実施形態では窒素ガスが供給されており、電子部品を搭載したプリント基板6がコンベヤ5によって炉1内を搬送される。電子部品を搭載したプリント基板6は、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られている。
【0013】
図1において、7は送風機、8は送風機7を駆動するモータ、9はヒータ、10は導風装置である。これらで熱風循環装置11が構成され、予熱室2とリフロー室3には熱風循環装置11がコンベヤ5を挟んで上下に設けられている。冷却室4には、コンベヤ5を挟んで上下に冷却風循環装置12が設けられている。冷却風循環装置12は、上記熱風循環装置11とはヒータを備えていない点でのみ相違し、他の構成は同じである。
【0014】
したがって、予熱室2とリフロー室3では、ヒータ9によって加熱された炉1内の雰囲気ガスは、送風機7に吸入され、送風機7の吐出口から吐出され、導風装置10に案内されて複数のガス噴出口からコンベヤ5上のプリント基板6に吹き付けられる。その後、上記のように、加熱された雰囲気ガスが送風機7に吸入されて、吐出口から吐出される。このようにして、雰囲気ガスが熱風循環装置11によって各室2,3内を循環し、プリント基板6が加熱される。また、冷却室4では、冷却風としての雰囲気ガスが冷却室4内を循環し、コンベヤ上のプリント基板6を冷却する。
【0015】
炉1本体は上下に2分割されて上側筐体1Aと下側筐体1Bとから形成されている。上側筐体1Aはシリンダ装置(図示せず)によって開閉可能に構成されている。上側筐体1Aと下側筐体1Bの合わせ面にはシール部材13(図3参照)が装着され、炉1内を気密に保持している。シール部材13は断面円形の中実のシリコーンゴムからなる弾性部材で、下側筐体1Bの合わせ面に形成されている凹所14に収納されて合わせ面に配置されている。シール部材13は、下側筐体1Bにおいて、図2に示されているように、コンベヤ5が配設されるなどのために形成されている切欠部15を除いて、合わせ面の略全周にわたって装着されている。シール部材13の表面は耐熱・耐薬品性部材16で被覆されている。耐熱・耐薬品性部材16はポリテトラフルオロエチレンチューブで、シール部材13に被せた後、熱収縮させることでシール部材13に一体に固定されている。17は予熱室2とリフロー室3と冷却室4とを仕切る仕切壁である。
【0016】
耐熱・耐薬品性部材16を被覆したシール部材13は、上側筐体1Aがシリンダ装置によって閉じられることによって上側筐体1Aと下側筐体1Bの合わせ面で挟圧され、炉1内を気密に保持する。
【0017】
以下、上記リフロー半田付け装置の動作を説明する。
【0018】
電子部品を搭載したプリント基板6は、コンベヤ5によって炉1内を搬送されながら、プリント基板6上のクリーム半田が、予熱室2内を循環する加熱された雰囲気ガス(熱風)によって所定の温度に加熱され、更に、リフロー室3内を循環する加熱された雰囲気ガス(熱風)によって加熱溶融され、冷却室4で冷却室4内を循環する雰囲気ガス(冷却風)によって溶融半田が冷却固化され、電子部品が基板上に半田付けされる。
【0019】
電子部品を搭載したプリント基板6に塗布されたクリーム半田が予熱室2とリフロー室3で加熱されると、クリーム半田に含まれているフラックスやアルコール等がガスとなって蒸発し、フラックスガスが雰囲気ガス中に混合される。
【0020】
本発明においては、シール部材13の表面がポリテトラフルオロエチレンチューブからなる耐熱・耐薬品性部材16で被覆されているため、特に半田付け温度が高い鉛フリー半田を使用する場合であっても、ポリテトラフルオロエチレンチューブからなる耐熱・耐薬品性部材16が耐熱性があり、フラックスガスに対する耐薬品性にも優れているため、シール部材13が劣化するのを防止でき、炉1内を気密に保持する。
【0021】
図4はシール部材の別の例を示すものである。図4に示すシール部材13は、断面円形の中空のシリコーンゴムチューブで、特許文献1に示されているのと同じようにして、中空部内に所定圧力の窒素ガスが封入されている。このシール部材13の表面は、上記実施形態と同じように、耐熱・耐薬品性部材16であるポリテトラフルオロエチレンチューブで被覆されている。
【0022】
なお、本発明において、シール部材13の材料、断面形状、構造、配置などは上記2つの例に示したものに限ることがないことは言うまでもない。例えば、シール部材13の材料はエチレンプロピレンゴムを使用することもできる。
【0023】
また、シール部材13の表面を被覆する耐熱・耐薬品性部材16も上記実施形態で示したものに限らないことは言うまでもない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂以外のフッ素樹脂材料を使用することもできる。また、ポリイミド樹脂を使用することもできる。ポリイミド樹脂の場合は、例えばポリイミドシートを使用してシール部材の表面に被覆して固定する。
【0024】
また、耐熱・耐薬品性部材16は、シール部材13の表面のうち、炉1内の雰囲気ガスが接触する部分のみを被覆するようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態では炉1内の雰囲気ガスとして窒素ガスを使用したものを示したが、雰囲気ガスは窒素ガスに限らない。例えば、空気を使用する場合もある。
【0026】
また、上記実施形態では、本発明をリフロー半田付け装置に適用した例を示したが、本発明は他の半田付け装置、例えば噴流式やディップ式の半田付け装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】リフロー半田付け装置の炉を示す正面図である。
【図2】下側筐体を示す平面図である。
【図3】炉のシール部材部分を示す断面図である。
【図4】炉のシール部材部分を示す断面図で、シール部材の別の例を示す。
【符号の説明】
【0028】
1・・炉、1A・・上側筐体、1B・・下側筐体、2・・予熱室、3・・リフロー室、4・・冷却室、5・・コンベヤ、6・・電子部品を搭載したプリント基板、7・・送風機、8・・モータ、9・・ヒータ、10・・導風装置、11・・熱風循環装置、12・・冷却風循環装置、13・・シール部材、14・・凹所、15・・切欠部、16・・耐熱・耐薬品性部材、17・・仕切壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内で電子部品を搭載した基板を半田付けする装置であって、炉本体を形成する筐体の合わせ面にシール部材が装着されている半田付け装置において、
耐熱性及びフラックスガスに対する耐薬品性に優れた耐熱・耐薬品性部材が前記シール部材の表面に被覆されていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記耐熱・耐薬品性部材がフッ素樹脂又はポリイミド樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−234634(P2007−234634A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50657(P2006−50657)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(500379509)有限会社ヨコタテクニカ (31)
【Fターム(参考)】