説明

協調搬送方法および協調搬送装置

【課題】搬送重量あたりの機器コストを低減でき、重量物の搬送に有利な協調搬送方法および協調搬送装置を提供する。
【解決手段】
複数台の移動式クレーンロボット10A(リーダ11およびフォロワ12)により搬送物体1を共吊りしながら目的地まで搬送する。搬送物体1とフォロワ12のワイヤ6との接続点にマーカ13を設置し、マーカ13を上方から撮像する撮像装置8をフォロワ12に設置する。リーダ11に目的地までの動作指令を与え、撮像装置8の画像からフォロワ12の座標系におけるマーカ13の位置を検知して位置情報を生成し、この位置情報に基づいてリーダ11の動作を推定し、推定したリーダ11の動作に基づいてフォロワ12の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物、長物などを複数台の移動式クレーンロボットにより搬送させる協調搬送方法および協調搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工事現場や工場、倉庫などで生産の自動化への要求が高まっており、無人搬送車や天井クレーン、ロボットにより物体の搬送を行っている。しかし、様々な物体を搬送するためには、ロボットの能力には限界があり、ロボットの搬送能力を超える大型な物体などは当該ロボットでは搬送できず、別の新たなロボットを投入しなければならない。
これに対し、小型のロボットを複数台投入して人間のように協調して搬送させることで、1台では搬送できなかった物体も搬送することが可能となり、また、様々な大きさの物体に応じてロボットの台数を変更することにより柔軟に対応できることから、このような現場での作業の効率化が期待されている。
【0003】
従来、この種の協調搬送については、主にマニピュレータやフォークリフトを備えた移動ロボットにより実現されている。
例えば、下記非特許文献1では、複数台のロボットからリーダとなる1台のロボットを選択し、フォロワと称する残りのロボットは何らかのセンサによってリーダの動作を推定し、搬送物体を目的地まで協調搬送する方法について一つの提案がなされている。
また、下記特許文献1では、2輪独立駆動方式のロボットの協調搬送において、駆動輪の2車輪の中点から車輪の進行方向に所定距離を隔てた位置で、その垂直軸周り回転自在に搬送物体を支持し、その支持点の移動速度、搬送物体に掛かる内力を制御して協調搬送する方法について一つの提案がなされている。
【0004】
【非特許文献1】小菅一弘、大住智宏、千葉晋彦:日本ロボット学会誌、vol.16、No.1、pp.87〜95、1998
【特許文献1】特開2000−42958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来技術による協調搬送は、主にマニピュレータやフォークリフトを備えた移動ロボットにより実現されている。
しかしながら、搬送作業に限定した場合、マニピュレータやフォークリフトによる搬送では、搬送重量あたりの機器コストが高く、重量物の搬送には適していないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、搬送重量あたりの機器コストを低減でき、重量物の搬送に有利な協調搬送方法および協調搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の協調搬送方法および協調搬送装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる協調搬送方法は、搬送物体を吊り下げ可能なクレーンを備え且つ移動可能に構成された移動式クレーンロボットを複数台用い、該複数台の移動式クレーンロボットにより搬送物体を共吊りしながら目的地まで搬送する、ことを特徴とする。
【0008】
このように、搬送物体を複数台の移動型クレーンロボットにより協調搬送するので、従来のマニピュレータなどを用いた協調搬送よりも搬送重量あたりの機器コストが低減でき、重量物の搬送に対して有利である。
【0009】
また、本発明にかかる協調搬送方法では、前記複数の移動式クレーンロボットのうち一台を目的地までの動作指令が与えられるリーダとし、他の残りの移動式クレーンロボットを前記リーダの動作を推定しながら移動するフォロワとし、搬送物体と該搬送物体を吊り下げた状態のクレーンのワイヤのうち少なくともいずれかを上方から撮像する撮像装置を前記フォロワに設置し、前記リーダに目的地までの動作指令を与え、前記撮像装置の画像からフォロワの座標系における搬送物体、ワイヤまたはこれらの所定部位の位置を検知して位置情報を生成し、該位置情報に基づいて前記リーダの動作を推定し、推定した前記リーダの動作に基づいて前記フォロワの動作を制御する、ことを特徴とする。なお、ここで、上記「動作指令」には、コンピュータによる動作指令のみならず、人間の運転又は通信手段を介した操作(リモートコントロール)による動作指令も含まれる。
【0010】
このように、リーダに目的地までの動作指令を与えて動作すると、フォロワは、搬送物体、ワイヤまたはこれらの所定部位の位置の変化からリーダの動作を推定し、リーダの動作から各自の目標位置を決定し動作するので、複数台のロボットに動作指令を与える必要がなく、また、リーダ・フォロワ間、フォロワ同士の通信も必要としない。
このため、全てのロボットに動作指令(目標軌道)を与える場合に比べて、目的地の変更の際にリーダの動作指令のみを変更すればよく、フォロワの制御に関しては変更が不要という利点がある。また、リーダとなる移動式クレーンロボットを人間の操作(運転又はリモートコントロール)により動作させても、協調搬送が可能である。
【0011】
また、本発明にかかる協調搬送方法では、推定されたリーダの動作に基づいて、前記リーダと前記フォロワの相対位置を初期状態における前記リーダと当該フォロワの相対位置に保持するように、当該フォロワの動作を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
このように、フォロワは、リーダとフォロワの相対位置を初期状態におけるリーダとフォロワの相対位置に保持するように動作するので、移動物体の搬送中において、各移動式クレーンロボットが搬送物体に接近して衝突したり、各ロボットの距離が離れすぎて搬送物体の重さにより倒れたりすることがなく、確実に搬送物体を目的地まで搬送することができる。
【0013】
また、本発明にかかる協調搬送方法では、前記移動式クレーンロボットの動作による前記搬送物体の振れを推定し、この推定値に基づいて、前記の検知した位置について前記搬送物体の振れによる誤差を修正する、ことを特徴とする。
【0014】
このように、撮像装置により撮像した画像に基づいて検知した位置について、搬送物体の振れによる誤差を修正するので、リーダの動作(位置、向き)を正確に推定することができる。このため、各フォロワはリーダとの相対位置を一定に保ちながら、安定して搬送物体を搬送することができる。
【0015】
また、本発明にかかる協調搬送装置は、搬送物体を吊り下げ可能なクレーンを備え且つ移動可能に構成された複数台の移動式クレーンロボットからなり、該複数台の移動式クレーンロボットにより搬送物体を共吊りしながら目的地まで搬送する協調搬送装置であって、該複数台の移動式クレーンロボットのうち一台は、目的地までの動作指令が与えられるリーダであり、他の残りの移動式クレーンロボットは、前記リーダの動作を推定しながら移動するフォロワであり、該フォロワは、前記搬送物体と該搬送物体を吊り下げた状態のクレーンのワイヤのうち少なくともいずれかを上方から撮像する撮像装置と、該撮像装置の画像から当該フォロワの座標系における搬送物体、ワイヤまたはこれらの所定部位の位置を検知して位置情報を生成する位置検知部と、前記位置情報に基づいて前記リーダの動作を推定する動作推定部と、推定されたリーダの動作に基づいて当該フォロワの動作を制御する動作制御部と、を有する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる協調搬送装置では、前記動作制御部は、推定されたリーダの動作に基づいて、前記リーダと前記フォロワの相対位置を初期状態における前記リーダと当該フォロワの相対位置に保持するように、当該フォロワの動作を制御する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる協調搬送装置では、前記フォロワは、前記移動式クレーンロボットの動作による前記搬送物体の振れを推定し、この推定値に基づいて、前記の検知した位置について搬送物体の振れによる誤差を修正する誤差修正部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0018】
上記の協調搬送装置により、本発明の協調搬送方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搬送重量あたりの機器コストを低減でき、重量物の搬送に有利である、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかる協調搬送装置10の概要を示す図である。
図1に示すように、この協調搬送装置10は、搬送物体1を吊り下げ可能なクレーン4を備え且つ移動可能に構成された複数台の移動式クレーンロボット10Aからなる。各移動式クレーンロボット10Aは、前進、後進、左右方向への旋回を行って自在に地上を走行し移動することができ、これら複数台の移動式クレーンロボット10Aにより搬送物体1を共吊りしながら目的地まで協調して搬送する。
本実施形態において移動式クレーンロボット10Aは2台であるが、搬送物体1の重量、大きさ、移動式クレーンロボット10Aの搬送能力などにより、3台以上で協調搬送するようにしてもよい。
【0022】
上記の複数の移動式クレーンロボット10Aのうち一台を目的地までの動作指令が与えられるリーダとし、他の残りの移動式クレーンロボット10Aをリーダの動作を推定しながら移動するフォロワとする。本実施形態では、図1の左側のロボット10Aがリーダ11であり、右側のロボット10Aがフォロワ12である。
【0023】
移動式クレーンロボット10Aは、リーダ11、フォロワ12ともに、地上を走行可能な移動台車3と、移動台車3上に設けられたクレーン4とを備える。クレーン4は、支柱5と、支柱5に取り付けられたワイヤ6を備え、ワイヤ6の先端部に設けられたフックなどにより搬送物体1を吊り下げるようになっている。本実施形態では、リーダ11とフォロワ12のクレーン4のワイヤ6は、ともに同一長さであり、上端部の取り付け高さも同一に設定されている。
ここで、リーダ11とフォロワ12が前後方向に関して同一位置でかつ平行に並んだ状態における、リーダ11とフォロワ12のワイヤ6の上端間の距離を車間距離dとし、この状態を初期状態とする。
【0024】
リーダ11は、目的地までの動作指令が与えられて動作するが、この動作指令は、予めプログラミングされたものでも、通信手段を介して他の制御装置から動作指令を受けるものでも、あるいは、人間の運転又は通信手段を介した操作(リモートコントロール)による動作指令であってもよい。
【0025】
フォロワ12である移動式クレーン4ロボット10Aは、さらに、搬送物体1とクレーン4のワイヤ6を上方から撮像する撮像装置8(例えば、ビデオカメラ)を備えている。また、この撮像装置8を支持するためのビーム9がクレーン4の支柱5に設けられている。この撮像装置8は、搬送物体1、搬送物体1を吊り下げた状態のクレーン4のワイヤ6のうち少なくともいずれかを上方から撮像し、これらの中から特定の部位を、後述する位置検知部21(図3参照)における位置の検知対象とする。
本実施形態では、搬送物体1とフォロワ12のクレーン4のワイヤ6との接続点に、撮像装置8によって識別可能なマーカ13が設置されており、マーカ13を位置の検知対象となる特定部位としている。
なお、マーカ13を設置せずに、搬送物体1自体の全体又は一部の形状を特徴点としてパターンマッチングなどの画像処理により、特定部位の位置を検知するようにしてもよい。またマーカ13は、搬送物体1とフォロワ12のクレーン4のワイヤ6との接続点以外の部位に設置されてもよい。
【0026】
図2は、リーダ11、フォロワ12および搬送物体1を上方から見た図であって、リーダ11にある動作指令を与えてリーダ11が動作し、搬送物体1が移動した状態を示すものである。また枠15で囲んだ範囲は撮像装置8によって撮像される画像の範囲である。なお、破線は、初期状態におけるリーダ11とそのワイヤ6、搬送物体1、フォロワ12のワイヤ6を示している。
このように、リーダ11が動作し、リーダ11とフォロワ12の相対位置が初期状態から変化することで、搬送物体1とワイヤ6の位置が変位し、マーカ13の位置も変位する。ここで、フォロワ12のワイヤ6の上端の位置を座標系のゼロ点としたときのマーカ13の位置をl、φで表現する。
なお、このように撮像装置8によりマーカ13の位置変位を追跡する必要があるので、リーダ11が動作に伴ってマーカ13の位置が移動しても撮像画像上にマーカ13が収まるように、撮像装置8の画角や設置高さが設定される。
【0027】
また、図1に示すように、フォロワ12である移動式クレーンロボット10Aは、種々の情報処理、演算、制御を行う処理部20を備えている。
図3は、フォロワ12である移動式クレーンロボット10Aの処理部20の構成を示す図である。処理部20は、位置検知部21と、誤差修正部22と、動作推定部23と、動作制御部24と、を有している。
位置検知部21は、撮像装置8から画像信号を受け、フォロワ12の座標系における搬送物体1、ワイヤ6またはこれらの所定部位の位置を検知してその位置情報を生成する。本実施形態では、撮像装置8の画像から検知するのは、上記のマーカ13の位置である。
【0028】
誤差修正部22は、移動式クレーンロボット10A(リーダ11およびフォロワ12)の動作による搬送物体1の振れを推定し、この推定値に基づいて、上記の検知した位置について搬送物体1の振れによる誤差を修正する。検知したマーカ13の位置情報は搬送物体1の振れによる誤差も含んでいる。それによりリーダ11が停止したにも関わらず搬送物体1が振れているとフォロワ12は搬送物体1の振れを検知し、それによって動作してしまう。そこで、誤差修正部22において、搬送物体1の振れによる誤差を修正する。
【0029】
動作推定部23は、搬送物体1の位置情報に基づいてリーダ11の動作を推定する。この搬送物体1の位置情報は、誤差修正部22により搬送物体1の振れによる誤差が修正された位置情報である。具体的には、上部から投影した2本のワイヤ6は搬送物体1に対称な向きと長さになるので、撮像装置8の画像に基づいて検知した搬送物体1の位置から、フォロワ12の座標系におけるリーダ11の位置と向きを推定することができる。
【0030】
動作制御部24は、推定されたリーダ11の動作に基づいてフォロワ12の動作を制御する。具体的には、動作制御部24は、推定されたリーダ11の動作に基づいて、リーダ11とフォロワ12の相対位置を初期状態におけるリーダ11とフォロワ12の相対位置に保持するように、フォロワ12の動作を制御する。
【0031】
このような処理部20は、例えば、マイクロコンピュータで構成することができ、上記の位置検知部21、誤差修正部22、動作推定部23および動作制御部24は、そのようなマイクロコンピュータの機能の一部として実現することができる。
【0032】
次に、本実施形態にかかる協調搬送装置10の動作によって実現される協調搬送方法について説明する。
図4は、リーダ11の動作の一例として右旋回しながら前進した場合の、リーダ11、フォロワ12および搬送物体1を上方から見たときのこれらの位置関係を示す図である。
初期状態からリーダ11にある動作指令を与えて動作させた場合、リーダ11とフォロワ12の相対位置が変化することで、搬送物体1とワイヤ6の位置が変位し、マーカ13の位置も変位する。フォロワ12は、撮像装置8によりマーカ13の動きを撮像しており、位置検知部21によりフォロワ12の座標系におけるマーカ13の位置を検知する。
【0033】
位置検知部21により検知したマーカ13の位置情報は搬送物体1の振れによる誤差も含んでいるので、誤差修正部22により、以下の方法により誤差を修正する。
搬送物体1の振れはリーダ11とフォロワ12の加速度に依存するものであり、誤差修正部22は、フォロワ12の速度から搬送物体1の振れを以下の式(数1)から推定する。
【0034】
【数1】

【0035】
ここで、lはワイヤ6の長さであり、gは重力加速度である。求めた振れ角により以下の式(数2、数3)から、検知したマーカ13の位置情報を修正する。
【0036】
【数2】

【0037】
【数3】

【0038】
振れが生じなければ、図4のように二本のワイヤ6は搬送物体1に対称であるので、動作推定部23はマーカ13の位置情報から幾何学的にリーダ11の位置と向きを推定し、動作制御部24はリーダ11とフォロワ12の初期状態における相対位置を保持するための目標位置と向きを、以下の式(数4〜数6)により決定する。
【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
【数6】

【0042】
ここで、dは、リーダ11及びフォロワ12のワイヤ6と搬送物体1との接続点間の距離(搬送物体1の大きさ)である(図1参照)。
求めた目標位置、向きからフォロワ12の速度を以下の式(数7)から求める。
【0043】
【数7】

【0044】
ここで、K、Kωは正の定数である。また、s、tはリーダ11の動作(直進、右旋回、左旋回)に関する係数であり、以下の式(数8、数9)の条件により求める。
【0045】
【数8】

【0046】
【数9】

【0047】
上記の式(数8、数9)の条件によりリーダ11の動作(直進、右旋回、左旋回)に対してフォロワ12の並進速度、回転速度の符号を決定する。
このように、リーダ11に目的地までの動作指令を与えて動作すると、フォロワ12は、マーカ13の位置の変化からリーダ11の動作を推定し、リーダ11の動作からフォロワ12の目標位置を決定し動作するので、リーダ11とフォロワ12により搬送物体1を目的地まで協調搬送することができる。
【0048】
次に、リーダ11の軌道を右旋回、左旋回に走行した場合のシミュレーション結果について説明する。
図5はリーダ11の軌道を右旋回した場合であり、図6はリーダ11の軌道を左旋回した場合である。リーダ11の速度は時間についての5次関数とし、最高速度を0.5m/sとし、初期状態の車間をd=0.8mとした。図5、図6において左側は、位置情報の修正を行わない場合であり、右側は搬送物体1の振れを推定し、位置情報を修正した場合である。
【0049】
シミュレーション結果から、搬送物体1の位置情報のみでフォロワ12がリーダ11の動作を推定した場合はリーダ11が停止しているにもかかわらずフォロワ12は搬送物体1の振れを検知していまい、前後に動作し続けてしまう。またその動作によって搬送物体1の振れを助長してしまい、フォロワ12の動作は発散してしまう。一方、振れを推定し検知した値を修正した場合は、リーダ11の軌道に対してうまく初期状態の相対位置を保持するように動作しているのが分かる。
【0050】
次に、本発明にかかる協調搬送方法および協調搬送装置10の作用・効果について説明する。
本発明によれば、搬送物体1を移動型クレーンロボット10Aにより協調搬送するので、従来のマニピュレータなどを用いた協調搬送よりも搬送重量あたりの機器コストが低減できる。したがって、重量物の搬送に対して有利である。
【0051】
また、リーダ11に目的地までの動作指令を与えて動作すると、フォロワ12は、搬送物体1、ワイヤ6またはこれらの所定部位の位置の変化からリーダ11の動作を推定し、リーダ11の動作から各自の目標位置を決定し動作するので、複数台のロボットに動作指令を与える必要がなく、また、リーダ11・フォロワ12間、フォロワ12同士の通信も必要としない。
このため、全てのロボットに動作指令(目標軌道)を与える場合に比べて、目的地の変更の際にリーダ11の動作指令のみを変更すればよく、フォロワ12の制御に関しては変更が不要という利点がある。また、リーダ11となる移動式クレーンロボット10Aを人間の操作(運転又はリモートコントロール)により動作させても、協調搬送が可能である。
【0052】
また、フォロワ12は、リーダ11とフォロワ12の相対位置を初期状態におけるリーダ11とフォロワ12の相対位置に保持するように動作するので、移動物体の搬送中において、各移動式クレーン4ロボット10Aが搬送物体1に接近して衝突したり、各ロボットの距離が離れすぎて搬送物体1の重さにより倒れたりすることがなく、確実に搬送物体1を目的地まで搬送することができる。
【0053】
このように、撮像装置8により撮像した画像に基づいて検知した位置について、搬送物体1の振れによる誤差を修正するので、リーダ11の動作(位置、向き)を正確に推定することができる。このため、各フォロワ12はリーダ11との相対位置を一定に保ちながら、安定して搬送物体1を搬送することができる。
【0054】
なお、上記の実施形態ではフォロワ12が1台の場合について説明したが、本発明はこれに限られず、フォロワ12が2台以上の場合にも当然に適用可能である。すなわち、上記の実施形態では、フォロワ12が一台の場合におけるリーダ11の動作を推定するアルゴリズム(数1〜数9)について説明したが、フォロワ12が2台以上の場合においても、上述した本発明の技術思想に基づいてアルゴリズムを構築することができる。
その他、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態にかかる協調搬送装置の概要図である。
【図2】リーダが動作したときのマーカ位置の変化を説明する図である。
【図3】フォロワの画像処理部の構成を示す図である。
【図4】リーダが右旋回したときのフォロワの動作説明図である。
【図5】リーダの軌道を右旋回しながら走行した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】リーダの軌道を左旋回しながら走行した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 搬送物体
3 移動台車
4 クレーン
5 支柱
6 ワイヤ
8 撮像装置
9 ビーム
10 協調搬送装置
11 リーダ
12 フォロワ
13 マーカ
15 枠
20 処理部
21 位置検知部
22 誤差修正部
23 動作推定部
24 動作制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物体を吊り下げ可能なクレーンを備え且つ移動可能に構成された移動式クレーンロボットを複数台用い、該複数台の移動式クレーンロボットにより搬送物体を共吊りしながら目的地まで搬送する、ことを特徴とする協調搬送方法。
【請求項2】
前記複数の移動式クレーンロボットのうち一台を目的地までの動作指令が与えられるリーダとし、他の残りの移動式クレーンロボットを前記リーダの動作を推定しながら移動するフォロワとし、搬送物体と該搬送物体を吊り下げた状態のクレーンのワイヤのうち少なくともいずれかを上方から撮像する撮像装置を前記フォロワに設置し、
前記リーダに目的地までの動作指令を与え、前記撮像装置の画像からフォロワの座標系における搬送物体、ワイヤまたはこれらの所定部位の位置を検知して位置情報を生成し、該位置情報に基づいて前記リーダの動作を推定し、推定した前記リーダの動作に基づいて前記フォロワの動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の協調搬送方法。
【請求項3】
推定されたリーダの動作に基づいて、前記リーダと前記フォロワの相対位置を初期状態における前記リーダと当該フォロワの相対位置に保持するように、当該フォロワの動作を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の協調搬送方法。
【請求項4】
前記移動式クレーンロボットの動作による前記搬送物体の振れを推定し、この推定値に基づいて、前記の検知した位置について前記搬送物体の振れによる誤差を修正する、ことを特徴とする請求項2または3に記載の協調搬送方法。
【請求項5】
搬送物体を吊り下げ可能なクレーンを備え且つ移動可能に構成された複数台の移動式クレーンロボットからなり、該複数台の移動式クレーンロボットにより搬送物体を共吊りしながら目的地まで搬送する協調搬送装置であって、
該複数台の移動式クレーンロボットのうち一台は、目的地までの動作指令が与えられるリーダであり、
他の残りの移動式クレーンロボットは、前記リーダの動作を推定しながら移動するフォロワであり、
該フォロワは、
前記搬送物体と該搬送物体を吊り下げた状態のクレーンのワイヤのうち少なくともいずれかを上方から撮像する撮像装置と、
該撮像装置の画像から当該フォロワの座標系における搬送物体、ワイヤまたはこれらの所定部位の位置を検知して位置情報を生成する位置検知部と、
前記位置情報に基づいて前記リーダの動作を推定する動作推定部と、
推定されたリーダの動作に基づいて当該フォロワの動作を制御する動作制御部と、を有する、
ことを特徴とする協調搬送装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、推定されたリーダの動作に基づいて、前記リーダと前記フォロワの相対位置を初期状態における前記リーダと当該フォロワの相対位置に保持するように、当該フォロワの動作を制御する、ことを特徴とする請求項5に記載の協調搬送装置。
【請求項7】
前記フォロワは、前記移動式クレーンロボットの動作による前記搬送物体の振れを推定し、この推定値に基づいて、前記の検知した位置について搬送物体の振れによる誤差を修正する誤差修正部をさらに有する、ことを特徴とする請求項5または6に記載の協調搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−161394(P2007−161394A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358459(P2005−358459)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】