説明

単結晶ウェハーの製造方法、単結晶ウェハー、振動素子、及び圧電デバイス

【課題】高安定用の圧電基板の製造方法を得る。
【解決手段】ランバードから四角形基板を作る工程と、四角形基板と同一形状の四角形板材上に参考線を描く工程と、四角形基板を接合して四角柱状積層ブロックを作る工程と、四角柱状積層ブロックの一端面上に四角形板材を接合する工程と、四角柱状ブロックの一側面を残し、円弧筒状積層ブロックを作る工程と、円弧筒状積層ブロックの外周面をマーカーに沿って平坦面化する工程と、圧電基板個片に分解する工程と、を有する単結晶ウェハーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶ウェハーの製造方法、単結晶ウェハー、振動素子、及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子、例えば高安定圧電発振器(恒温槽型圧電発振器)に用いるATカット水晶振動子や、SCカット水晶振動子は、水晶基板を機械的に支持する位置により、力−f係数Kα(Force-frequency coefficient、印加する力により周波数が変化する率)が変化する。そのため、ランバード、ブランクの製造段階から圧電基板を機械的に支持する位置を想定して圧電基板の加工が行なわれる。
特許文献1には、フォトリソグラフィー加工用の水晶ウェハーの製造方法が開示されている。水晶ウェハーの製造方法の1つは、Z板水晶原石をZ軸方向に円筒状に研磨加工するが、周円部は全周にわたるのではなく、X軸方向のランバード面が周円部の直線部として残るように加工する。つまり、1面、又は上下2面がカットされて略円筒状のブロックとなる。この略円筒状ブロックのフラットなランバード面を基台に載置し、所定の切り出し角度で切断し、略円板状のウェハーを得る方法である。
また、他の製造方法は、始めに所定の角度で切断したブランクを、ランバード面を一致させ、接着剤を用いて積層して四角形状のブロックを形成する。この四角形状ブロックのランバード面を残しつつ略円筒状に加工する。略円筒状ブロックの接着剤を溶解して略円板状のウェハーを得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−288102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高安定振動子用の圧電基板では、圧電基板の所定の支持点(複数)を精度よく支持するため、円形圧電基板の直径D、オリフラ寸法H(オリフラ(Orientation Flat、方向付け)と直交し、且つ円の中心を通る直線が圧電基板の外周と交わるとき、オリフラからその交点までの長さ)、及びオリフラと基準軸との角度α(以下、オリフラ角αと称す)等を所定の精度で仕上げる必要がある。
しかしながら、特許文献1に開示された製造方法を用いてオリフラを形成すると、オリフラがX面(X軸に直交する面)と一致する場合の精度は、ランバード面の精度である±15分程度で構成できるが、オリフラが結晶軸と任意の角度をなす場合については記述されていないという問題があった。
【0005】
圧電基板の直径D、オリフラ寸法H、オリフラ角αを所定の精度で仕上げるには、2つの方法が考えられる。1つの方法は、所定の角度で切断した四角形の圧電基板(ブランク)を、基準面を合わせて四角柱状のブロックに形成し、基準面を残さないで円柱状に加工し、これにオリフラを形成し、オリフラ寸法Hを仕上げる。この方法では、直径D、オリフラ寸法Hは所定の精度で仕上げることができるが、オリフラ角αに誤差が生じ、所定の角度を満たせないという問題がある。
2つ目の方法は、前記四角柱状のブロックを基準面から所定の角度(オリフラ角α)を傾けて四角柱状ブロックに研削し、オリフラ角α面を残し、略円柱加工を行う。しかし、円形加工装置に新たな四角柱状ブロックを取り付ける際に、四角柱状ブロックの芯(回転中心)の設定を、0.01mmの精度で設定することは難しく、直径D、オリフラ角αは所定の精度で仕上げることができるが、オリフラ寸法Hに誤差が生じ、所定の寸法を満たせないという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、直径D、第1のオリフラ、第2のオリフラを有し、第2のオリフラのオリフラ角αを所定の精度で仕上げた略円形の単結晶ウェハーの製造方法、単結晶ウェハー、振動素子、及び圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本発明に係る単結晶ウェハーの製造方法は、単結晶ウェハーの製造方法であって、単結晶材料のランバード面を輪郭面の少なくとも一つに有している多角形基板を準備する工程と、複数枚の前記多角形基板を前記ランバード面が同一の面に含まれるように積層して接合することにより多角柱状積層ブロックを形成する工程と、前記ランバード面を残して前記多角柱状ブロックを円弧筒状に加工することで第1のオリフラを形成する工程と、前記第1のオリフラを形成した後に、前記積層ブロックの円弧状の面に前記積層ブロックの軸方向と平行な平坦面から成る第2のオリフラを形成する工程と、を含むことを特徴とする単結晶ウェハーの製造方法である。
【0008】
この製造方法によれば、基準方向に正確に合わせたランバードから多角形基板、例えば四角形基板を形成し、上記のような工程を踏んで第1、及び第2のオリフラを有するウェハー(基板)が形成されるので、第1のオリフラの方向は所定の軸に正確に合わされており、圧電基板の直径も精度よく加工される。その上、第2のオリフラも精度よく形成され、且つ第2のオリフラ寸法(第2のオリフラと直交し、且つウェハーの外周円の中心を通る直線が外周と交わるとき、第2のオリフラから外周上の交点までの長さ)は高精度に研削加工されたウェハーが得られるという効果がある。
【0009】
[適用例2]また、単結晶ウェハーの製造方法は、前記多角形基板の少なくとも1枚は、前記第1のオリフラと交差する方向に延びるマーカーを備えていることを特徴とする適用例1に記載の単結晶ウェハーの製造方法である。
【0010】
この構成によれば、最外側の多角形基板(例えば四角形基板)にマーカーを備えることにより、このマーカーを基準に第2のオリフラが形成されるので、第1のオリフラと第2のオリフラのなす角度を精度よく形成できるという効果がある。
【0011】
[適用例3]また、本発明に係るウェハーは、上記の製造方法により製造された単結晶ウェハーであって、前記第1のオリフラから直交して延び且つ前記ウェハーの円弧状外周円の中心点を通って対向する外周縁にて終端する第1の直線が、前記第2のオリフラから直交して延び且つ前記ウェハーの円弧状外周円の中心点を通って対向する外周縁にて終端する第2の直線の長さよりも短いことを特徴とする単結晶ウェハーである。
【0012】
この構成によれば、第1、及び第2のオリフラの夫々寸法が異なるので、マスク装置に装填する際の誤装填を無くすと共に、特性不良が生じた際の分析が容易に行えるという効果がある。
【0013】
[適用例4]また、本発明に係る振動素子は、上記に記載の単結晶ウェハー、前記ウェハーの両主面に夫々形成した励振電極、及び前記各励振電極から前記ウェハー端部に引き出された引出電極を備えていることを特徴とする振動素子である。
【0014】
この構成によれば、第2のオリフラが蒸着治具(マスク装置)の中板の中でウェハー(圧電基板)の面内回転を抑制するので、ウェハー(圧電基板)の第2のオリフラ方向と引出電極(リード電極)とが並行となり、保持具に支持する際に圧電基板上の支持すべき位置を正確に支持できるという効果がある。
【0015】
[適用例5]本発明に係る圧電デバイスは、上記に記載の振動素子と、前記振動素子を収容する容器とを備えていることを特徴とする圧電デバイスである。
【0016】
この構成によれば、本発明に係る単結晶ウェハーの製造方法を用いてウェハー(圧電基板)を形成しているので、第2のオリフラとリード電極とは平行となり、電極端子の中央部を支持片のスリットに挿入するので、圧電基板の所定の支持点に対し、スリットに塗布する導電性接着剤の塗布位置を正確に一致させることができるという効果がある。つまり圧電基板の支持すべき位置を正確に支持できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法により得られたウェハー(圧電基板)1の構造を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は各部の寸法を記した平面図。
【図2】ATカット水晶基板と結晶軸との関係を示す図。
【図3】SCカット水晶基板と結晶軸との関係を示す図。
【図4】(a)はATカット水晶基板に印加される力Fと、結晶軸からの角度αとの関係を示す図であり、(b)はX軸からの角度αと、力−f係数Kαとの関係を示す図。
【図5】蒸着治具の構成を示す、(a)は断面図であり、(b)はマスク上板の平面図であり、(c)は中板の平面図。
【図6】中板の1つの収容穴26aに収容された圧電基板1の平面図。
【図7】圧電振動素子の平面図。
【図8】キャップを省略した圧電振動子の平面図。
【図9】(a)〜(c)は本発明に係る圧電基板の製造方法を示す工程図。
【図10】(a)〜(c)は本発明に係る圧電基板の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の製造方法を用いて製造されたウェハー(例えば圧電基板)1の構成を示す概略図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図であり、同図(c)はウェハー1の各部の寸法を記した平面図である。ウェハー1は、直径Dの略円形状であり、その外周縁には第1のオリフラOF1と第2のオリフラOF2とが形成されている。
第1のオリフラOF1は、ウェハー1の一つの結晶軸、例えばX軸と平行に形成されている。第2のオリフラOF2は、第1のオリフラOF1と対向するウェハー1の外周縁であって、第1のオリフラOF1と平行で、且つウェハー1の円の中心を通る直線6とウェハー1の外周縁との2つの交点7a、7b間に位置する外周縁部分に形成されている。そして、第2のオリフラOF2は、X軸から所定の角度αを傾けて形成されている(オリフラ角αと称す)。
【0019】
図1(b)はウェハー1の側面図であり、その形状は矩形状である。つまり、ウェハー1は平板状の略円形基板である。しかし本発明の圧電基板1の側面図は矩形状に限らず、プラノコンベックス状、(一方の主面が球面状であり、他方の主面が平坦状)、バイコンベックス状(両主面とも球面状)であってもよい。むしろ、恒温槽に収容して用いられる高安定用圧電振動子の圧電基板の形状としては、振動エネルギーを中央部に集中させ、支持部の影響を低減させるため、外形をプラノコンベックス状に加工した基板の方が多く用いられている。しかし、ここでは、本発明を簡潔に説明するために、平板状の圧電基板を例にして説明する。
【0020】
図1(c)はウェハー1の2つのオリフラOF1、OF2の寸法を示した平面図である。ウェハー1の直径をDとし、第1のオリフラOF1の長さをL1とし、OF1のオリフラ寸法(第1のオリフラから直交して延び、且つウェハーの円弧状外周円の中心点を通って対向する外周縁にて終端する第1の直線)をH1とする。D、L1、H1は独立したパラメータではなく、D、H1を決めるとL1は自動的に決まる。第2のオリフラOF2の長さをL2とし、OF2のオリフラ寸法をH2とする。第1、及び第2のオリフラOF1、OF2の夫々の長さの関係をL1<L2とした場合、オリフラ寸法ではH1>H2の関係にある。図1(c)の直径Dの両端に示す小円Pは、圧電基板1が機械的に支持される支持点を示している。
【0021】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。ATカット水晶基板40は、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させた平面に沿って、水晶から切り出された平板である。ATカット水晶基板40の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板40は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板40は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。
即ち、ATカット水晶基板は、図2に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板である。
【0022】
高安定水晶振動子用に用いられるSCカット水晶基板42は、図3に示すように、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させ、次にZ’軸の回りに角度φだけ回転させて切り出された水晶基板である。直交座標軸は2回回転されているために、X’軸、Y”軸、Z’軸となる。一例としてθは34°07′、φは21°56′程度である。SCカット水晶基板42の主振動は、厚みすべり振動モード(Cモード)であるが、これより周波数が高い振動モードとして厚みねじれモード(Bモード)、厚み縦モード(Cモード)が存在する。主振動のCモードf1に隣接するBモードの周波数f2は、Cモードの周波数f1の高周波側に励起され、両者の周波数間隔は、周波数f1の約9〜10%程度である。また、Cモードの変極点は、ATカット水晶振動子の変極点が約27.5度であるのに対し、約95と高温側にある。ATカット水晶振動子の場合は、変曲点より高温側の谷の底の温度を、SCカット水晶振動子の場合は、変曲点より低温側の山の頂点の温度を、恒温槽の設定温度とし、高安定水晶発振器を構成する。
【0023】
図4(a)は、ATカット水晶基板の両側面に直径方向から印加する力Fと、2つの力点を結ぶ直線とX軸方向とがなす方位角αと、を示す図である。図4(b)は、一定の力FをATカット水晶基板に印加したときの方位角αと、力−f係数Kαとの関係を示す曲線である。X軸からの角度αを大きくするに応じて、係数Kαは漸減し、αが略61度で零となる。更にαを大きくすると係数Kαはマイナスとなり、その絶対値は大きくなる。従ってATカット水晶基板の支持点としては、X軸方向から略61度の方位角で、圧電基板の中心を挟む両端の2点(図1(c)のP点)で支持すると、保持具(ホルダー、ハーメチック端子)からの温度変化による応力、導電性接着剤による硬化時の応力等が加わったときにも、周波数変化を最小にすることができる。
また、2回回転のSCカット水晶基板(SCカットの一例は、θ=34°07′、φ=21°56′、θはX軸の回りの回転角、φはZ’軸の回りの回転角)の場合、力−f係数Kαが零となる方位角αの一例は、略82°であるという。
何れのカットの水晶基板にしても力−f係数Kαが零となる方位角αで圧電基板を支持することが肝要である。
【0024】
図5はウェハー(圧電基板)1の両主面に励振電極、リード電極、電極端子を形成する蒸着治具20の一例である。図5(a)は蒸着治具20の構成を示す分解断面図であり、同図(b)はマスク上板24の平面図であり、同図(c)は中板26の平面図である。マスク下板28は、マスク上板24のマスクパターン10が、図中で左右反転された形状で構成されているだけで、他は同様であるので省略する。
マスク上板24、マスク下板28のパターン10、及び中板26の収容穴26aのパターンは、金属薄板にフォトリソグラフィー技法を用いて形成された開口であり、パターン10、26aが縦横に所定のピッチで配列されている。蒸着治具20は、図5(c)に示すように、水晶基板1を収容するため、水晶基板1の形状とほぼ同等であって開口面積が僅かに大きい収容穴26aを縦横に所定のピッチ(パターン10、26aと同じピッチ)で形成した中板26と、図5(b)のように圧電基板1の一方の主面に励振電極、リード電極、電極端子を形成するマスク板上24と、圧電基板1の他方の主面に励振電極、リード電極、電極端子と形成するマスク下板28と、マスク上板24、中板26、及びマスク下板28を上下方向からサンドイッチ状に挟んで保持する保持板22a、22bと、を備えている。保持板22a、22b夫々には、中板26の収容穴26aより大きな穴が、各収容穴26aと一対一で対応するように縦横に所定のピッチで貫通形成されている。また、一方の保持板22bには複数のピン23が嵌めこまれており、このピン23に対してマスク下板28、中板26、マスク上板24には、夫々対応する位置に複数の位置決め用の貫通孔が形成されている。マスク上板24、中板26、及びマスク下板28夫々の位置決め用の貫通孔をピン23に挿通することにより相互の位置決めが行われ、上下のパターン(励振電極等)が精度よく成膜される。また、マスク下板28と中板26とは、相互の位置決めした後、スポット溶接して一体的な構成にしておいてもよい。
【0025】
図6は、中板26の1つの収容穴26aを破線で示し、この収容穴26aに、実線で示すウェハー(圧電基板)1を収容したときの平面図である。収容穴26aと圧電基板1との違いを明示するために、誇張して図示している。収容穴26aの形状は圧電基板1の形状より僅かに大きい相似形となるように形成されている。しかし、圧電基板1の第1のオリフラOF1に対しては、収容穴26aは円形としている。また、収容穴26aの平坦部32の長さW2は、圧電基板1の第2のオリフラOF2の長さL2に対し、僅かに短く形成されている。つまり、中板26の平坦部32の長さW2は、金属薄板にエッチング加工で形成されているのでW2の寸法は高精度であり、第2オリフラOF2の長さL2、即ちオリフラ寸法H2を高精度に仕上げることにより、両者の寸法差(L2−W2)を小さくでき、中板26の収容穴26aの中で、圧電基板1が面内回転しないようにできる。図6では、第1オリフラOF1の長さW1を第2オリフラOF2の長さW2より長く表示しているが、ウェハー(圧電基板)1の中心を通るオリフラ寸法で表わせば、第1のオリフラOF1のオリフラ寸法H1は、第2のオリフラOF2のオリフラ寸法H2より小さくなる。
また、中板26の上下面には夫々マスク上板24と、マスク下板28とが密着されており、圧電基板1は蒸着治具20の中でサンドイッチ状に挟まれて保持されている。圧電基板1を装填した蒸着治具20を真空蒸着装置に装着し、蒸着治具20を反転させながら電極用金属を蒸着して、マスク上板24、マスク下板28に形成された貫通パターンを通して励振電極、リード電極、電極端子を成膜する。
【0026】
図7は、ウェハー(圧電基板)1の表裏面に励振電極12a、12b、各励振電極から夫々反対方向へ引き出されたリード電極14a、14b、各リード電極の端部に設けた電極端子16a、16bを成膜して構成した圧電振動素子2の平面図である。圧電基板1に第2オリフラOF2を形成したために、収容穴26aの中で圧電基板1の面内回転がなく、第2のオリフラOF2と平行にリード電極12a、12bが形成されている。
【0027】
図8は、保持具(ハーメチック端子、保持具とキャップとで容器を構成する)35の2つの支持片37に設けたスリット37a内に、圧電振動素子2の電極端子16a、16bの中央部Pを挿入し、導電性接着剤38を塗布して構成した圧電振動子である。気密封止用のキャップは、内部の構成を示すために省略してある。支持片37のスリット37aに圧電振動素子2を挿入する際には、電極端子16a、16bの中央部がスリット37aの中央部に整合するように挿入して、導電性接着剤38を塗布する。このように整合することにより、圧電基板1の所定の支持点P、つまりATカット水晶基板の場合は、X軸より略61度傾けたオリフラ角αで圧電基板1が支持されることになる。
以上のように圧電振動子3を構成することにより、圧電基板1の所定の支持点Pと、支持片37の支持位置とが合致し、導電性接着剤38の硬化する際の応力、支持片37の接触による応力、圧電振動子の周囲の温度変化に伴う応力等が加わっても、周波数変化の少ない圧電振動子が得られる。
【0028】
図1の実施形態に示すように、圧電基板1の第2のオリフラOF2と、図5に示す蒸着治具20の中板26に設けた収容穴26aの平坦部32とで、中板26の中で圧電基板1の面内回転が抑制され、圧電基板1の所定の位置に精度よくリード電極14a、14b、電極端子16a、16bが形成されるという効果がある。
また、圧電基板1に励振電極12a、12b、リード電極14a、14b、電極端子16a、16bを形成するとき、第2のオリフラOF2を設けたことにより、リード電極14a、14bの方向精度が改善された圧電振動素子2が得られるという効果がある。
また、圧電基板1の第2のオリフラOF2と、リード電極14a、14bとは平行となり、電極端子16a、16bの中央部を支持片37のスリット37aに挿入するので、圧電基板1の所定の支持点に対し、スリット37aに塗布する導電性接着剤38の塗布位置を、正確に一致させることができるという効果がある。
【0029】
図9、図10は、本発明に係る製造方法を説明するための概略斜視図である。ATカット水晶基板を例にして本発明の圧電基板1を説明する。SCカット水晶基板の場合はこれに準ずればよい。
始めに、結晶軸方向が明確になっている単結晶ランバードを所定の厚さ、所定の角度で切断し多角形基板(以下、四角形基板を用いて説明する)43を形成する。四角形基板(ブランク)43の一辺は、例えばX軸方向を平行とする。次に、図9(a)に示すように、同一形状に切り出された四角形基板(ブランク)43を、ランバード面(例えばX面、X軸に直交する面)を整合させた状態で積層し、接着剤で接合し、四角柱状積層ブロック45を形成する。このとき、四角柱状積層ブロック45の図中左方の面はX面であり、底辺はX軸方向である。次に、図9(b)に示すように、四角形基板43と同一形状の四角形板材(例えばガラス板)43dを用意し、その主面上に、基準となる一辺と所定の角度αをなす直線Xαである参考線を描き、四角形板材43dの基準辺を四角柱状積層ブロック45のX軸と整合させるように接着剤で接合する。
【0030】
次に、図9(c)の破線で示すように、四角柱状ブロック45の一側面を残し、外周面の残りの部位を円弧筒状に加工して円弧筒状の積層ブロックを形成する。この円弧筒状の積層ブロックが、図10(a)に示す円弧筒状の積層ブロック48である。四角柱状ブロック45の残された一側面(X軸方向)が図1の第1のオリフラOF1に対応する。なお、ここで円弧筒状とは、円筒体の外周面の一部を軸方向に平坦面状に切り欠いた図示のような形状を指称する。
円弧筒状の積層ブロック48の直径は機械精度で正確に研削され、研磨加工により直径の精度は0.01mm程度に仕上げることができる。また、オリフラOF1の方向は、ランバードのX軸方向であり、精度よく加工されている。
しかし、円形加工装置に四角柱状ブロック45を取り付ける際に、四角柱状ブロック45の芯(回転中心)の設定を、0.01mmの精度で設定することは難しく、オリフラOF1の長さL1の精度を0.01mmで仕上げることは難しい。
【0031】
そこで、図10(b)に示すように、円弧筒状の積層ブロック48の円弧筒状部分の、図1に示す第2のオリフラOF2に相当する外周面を研磨加工により、平坦面化し、第2のオリフラOF2を形成する。第2のオリフラOF2のオリフラ寸法H2は精度よく測定できるので、第2のオリフラOF2の長さも精度よく、例えば0.01mm程度に仕上げることが可能である。
次に、円弧筒状の積層ブロック48の接着剤を溶かして、個片に分解し、圧電基板1を得る。
圧電基板1の主面の一方、又は両方に球面加工を施し、プラノコンベックス型、又はバイコンベックス型の圧電基板に仕上げてもよい。
以上の例では四角柱状積層ブロック45から1つの円弧筒状の積層ブロック48を得る方法を説明したが、図9(c)において、一つの第2の四角柱状積層ブロック46から2つの円弧筒状積層ブロック48を並行な姿勢で研削して得るようにしてもよい。
【0032】
基準方向、例えばX軸方向に正確に合わせたランバードから多角形基板(例えば四角形基板)を形成し、上記のような工程を踏んで第1、及び第2のオリフラを有するウェハー(圧電基板)が形成されるので、第1のオリフラの方向は所定の軸に正確に合わされており、圧電基板の直径も精度よく加工される。その上、第2のオリフラの方向もマーカー(参考線)に沿って精度よく形成され、且つオリフラ寸法は高精度に研削加工された圧電基板が得られるという効果がある。
また、加工後に第1のオリフラ(正確なX軸方向)を基準として、第2のオリフラの方向を精度よく測定できるという効果がある。これは不良が生じた際にも精度のよいX軸方向(第1のオリフラ方向)が基準として使えるので、解析にも有用である。
また、本製造方法は、半導体のウェハーにも適用することができる。例えばシリコン単結晶から、所定の形状で、結晶軸と所定の角度を有するウェハーを形成する際にも適用できるという効果がある。
【符号の説明】
【0033】
1…ウェハー、2…圧電振動素子、3…圧電振動子、6…直線、7a、7b…交点、10…マスクパターン、12a、12b…励振電極、14a、14b…リード電極、16a、16b…電極端子、20…蒸着治具、22a、22b…保持板、23…ピン、24…マスク上板、26…中板、26a…収容穴、28…マスク下板、32…平坦部、35…保持具(ハーメチック端子)、35a…ベース、37…支持片、37a…スリット、38…導電性接着剤、40…ATカット水晶基板、42…SC水晶基板、43…四角形基板(ブランク)、43d…四角形板材、45…四角柱状積層ブロック、48…円弧筒状の積層ブロック、L1…第1のオリフラOF1の長さ、L2…第2のオリフラOF1の長さ、H1…第1のオリフラOF1のオリフラ寸法、H2…第2のオリフラOF2のオリフラ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウェハーの製造方法であって、
単結晶材料のランバード面を輪郭面の少なくとも一つに有している多角形基板を準備する工程と、
複数枚の前記多角形基板を前記ランバード面が同一の面に含まれるように積層して接合することにより多角柱状積層ブロックを形成する工程と、
前記ランバード面を残して前記多角柱状ブロックを円弧筒状に加工することで第1のオリフラを形成する工程と、
前記第1のオリフラを形成した後に、前記積層ブロックの円弧状の面に前記積層ブロックの軸方向と平行な平坦面から成る第2のオリフラを形成する工程と、
を含むことを特徴とする単結晶ウェハーの製造方法。
【請求項2】
前記多角形基板の少なくとも1枚は、前記第1のオリフラと交差する方向に延びるマーカーを備えていることを特徴とする請求項1に記載の単結晶ウェハーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された単結晶ウェハーであって、
前記第1のオリフラから直交して延び且つ前記ウェハーの円弧状外周円の中心点を通って対向する外周縁にて終端する第1の直線が、前記第2のオリフラから直交して延び且つ前記ウェハーの円弧状外周円の中心点を通って対向する外周縁にて終端する第2の直線の長さよりも短いことを特徴とする単結晶ウェハー。
【請求項4】
請求項3に記載の単結晶ウェハー、前記ウェハーの両主面に夫々形成した励振電極、及び前記各励振電極から前記ウェハー端部に引き出された引出電極を備えていることを特徴とする振動素子。
【請求項5】
請求項4に記載の振動素子と、前記振動素子を収容する容器とを備えていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115534(P2013−115534A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258606(P2011−258606)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】