説明

単結晶SiC製造用原料、その製造方法、この原料を用いた単結晶SiCの製造方法、及び、その製造方法により得られる単結晶SiC

【課題】SiC種単結晶上に目詰まりすることなく良好に輸送可能な単結晶SiC製造用原料と、その製造方法を提供し、また、その原料を用いて高品質な単結晶SiCをエピタキシャルに成長させる方法、及び、その結果得られる高品質な単結晶SiCを提供する。
【解決手段】シリカとカーボンの各1次粒子から実質的になる2次粒子であって、2次粒子形状が直径1〜90μmの略球形である単結晶SiC製造用原料、並びに、シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒からなるスラリを製造する工程、及び、蒸発装置内でスラリを噴霧乾燥造粒させてシリカとカーボンを含有する2次粒子を製造するスプレードライ工程を含む、単結晶SiC製造用原料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用材料やLED用材料として利用される単結晶SiCを製造する際に使用される単結晶SiC製造用原料に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶SiCは結晶の結合エネルギーが大きく、絶縁破壊電界が大きく、また熱伝導率も大きいため、耐苛酷環境用デバイスやパワーデバイス用の材料として有用である。またその格子定数がGaNの格子定数と近いため、GaN−LED用の基板材料としても有用である。
【0003】
従来この単結晶SiCの製造合成には、黒鉛坩堝内でSiC粉末を昇華させ、黒鉛坩堝内壁に単結晶SiCを再結晶化させるレーリー法や、このレーリー法をベースに原料配置や温度分布を最適化し、再結晶化させる部分にSiC種単結晶を配置してエピタキシャルに再結晶成長させる改良レーリー法、ガスソースをキャリアガスによって、加熱されたSiC種単結晶上に輸送し結晶表面で化学反応させながらエピタキシャル成長させるCVD法、黒鉛坩堝内でSiC粉末とSiC種単結晶を近接させた状態でSiC粉末をSiC種単結晶上にエピタキシャルに再結晶成長させる昇華近接法などがある(非特許文献1第4章参照)。
【0004】
ところで現状では、これらの各単結晶SiC製造合成方法にはいずれも問題があるとされている。レーリー法では、結晶性の良好な単結晶SiCが製造合成できるものの、自然発生的な核形成をもとに結晶成長するため、形状制御や結晶面制御が困難であり、且つ大口径ウエハが得られないという問題がある。改良レーリー法では、数100μm/h程度の高速で大口径の単結晶SiCインゴットを得ることができるものの、螺旋状にエピタキシャル成長するため、結晶内に多数のマイクロパイプが発生するという問題がある。CVD法では、高純度で低欠陥密度の良質な単結晶SiCが製造合成できるものの、希薄なガスソースでのエピタキシャル成長のため、成長速度が〜10μm/h程度と遅く、長尺の単結晶SiCインゴットを得られないという問題がある。昇華近接法では、比較的簡単な構成で高純度のSiCエピタキシャル成長が実現できるが、構成上の制約から長尺の単結晶SiCインゴットを得ることは不可能という問題がある。
【0005】
最近、加熱状態で保持されているSiC種単結晶表面に向けて、二酸化ケイ素超微粒子及び炭素超微粒子を不活性キャリアガスを用いて供給して付着させ、SiC種単結晶において二酸化ケイ素を炭素により還元することでSiC単結晶をSiC種単結晶上に成長させる方法が開示された(特許文献1参照)。この製造方法では、マイクロパイプ等の欠陥を抑制した高品質な単結晶SiCを高速で得ることができるとされている。
【0006】
特許文献1に開示された単結晶SiCの製造方法によれば、単結晶SiC製造に使用する原料である二酸化ケイ素超微粒子と炭素超微粒子のそれぞれの種類、粒径、粒子形状等は特に限定されていない。ところが、一般に入手可能なこれらの超微粒子は非常に小さな1次粒子径(平均粒子径が100nm以下)であるため嵩密度が小さく、且つ形状は略球形をしていない。そのため、もしもこれらの原料をそのまま不活性キャリアガスでSiC種単結晶上に輸送しようと試みても、途中の配管内で簡単に閉塞してしまう傾向がある。
【0007】
【特許文献1】特許第3505597号公報
【非特許文献1】松波弘之編著、「半導体SiC技術と応用」、日刊工業新聞社(2003年3月初版発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、SiC種単結晶上に目詰まりすることなく良好に輸送可能な単結晶SiC製造用原料を提供すること、その製造方法を提供すること、その原料を用いて高品質な単結晶SiCをエピタキシャルに成長させる方法を提供すること、及び、その結果得られる高品質な単結晶SiCを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、以下に記載の手段によって解決された。
(1)シリカとカーボンの各1次粒子から実質的になる2次粒子であって、該2次粒子形状が直径1〜90μmの略球形であることを特徴とする単結晶SiC製造用原料、
(2)シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒からなるスラリを製造する工程、及び、蒸発装置内で該スラリを噴霧乾燥造粒させてシリカとカーボンを含有する2次粒子を製造するスプレードライ工程を含む、(1)に記載の単結晶SiC製造用原料の製造方法、
(3)加熱手段を備えた坩堝内に、SiC種結晶を固定したサセプタ、及び、外部から単結晶SiC製造用原料を供給するための原料供給管を配置する配置工程、並びに、高温雰囲気とした該坩堝内に(1)に記載の単結晶SiC製造用原料又は(2)に記載の製造方法により製造された単結晶SiC製造用原料を原料供給管を通して該SiC種結晶上に供給することにより単結晶SiCを成長させる成長工程、を含む単結晶SiCの製造方法、
(4)(3)に記載の製造方法により製造された単結晶SiC。
【発明の効果】
【0010】
本発明の単結晶SiC製造用原料を用いると、この原料をキャリアガスにより安定に搬送することが可能となり、又、この原料を使用して単結晶SiCを製造することにより、マイクロパイプ等の欠陥や不純物濃度を抑制した高品質の単結晶SiCを安定して製造し提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の側面(第1発明)は、シリカとカーボンの各1次粒子から実質的になる2次粒子であって、該2次粒子形状が直径1〜90μmの略球形であることを特徴とする単結晶SiC製造用原料に係る。
本発明に使用する単結晶SiC製造用原料の構成物としては、シリカ粒子とカーボン粒子が好適に使用できる。これらシリカ粒子及びカーボン粒子は、それぞれその種類を適宜選択可能であり、シリカ粒子もカーボン粒子も共に1次粒子の平均粒子径が100nm以下の微粒子が好ましく、40nm以下の微粒子がより好ましく、20nm以下の超微粒子が更に好ましく、5〜20nmの超微粒子が特に好ましい。又、純度は共に極力高純度なものが好ましい。シリカとしては例えば火炎加水分解法で得られる高純度シリカ(いぶしシリカ、fumed silica)が好ましく、また、カーボンとしてはカーボンブラックが好ましく、高純度アセチレンブラックなどがより好ましく利用できる。1次粒子の平均粒子径は電子顕微鏡観察により求めることができる。
「実質的になる」とは、シリカ及びカーボン以外に固体ドープ成分等の少量成分を含むことを排除しない意味である。
【0012】
単結晶SiC製造用原料は、上記シリカ粒子及びカーボン粒子が一緒に凝集した2次粒子であり、2次粒子の粒径は、直径が約1μm以上90μm以下であり、その形状は略球形である。
直径が「約1μm以上90μm以下」とは製造された2次粒子の100重量部のうち90重量部以上、好ましくは95重量部以上、より好ましくは全重量部が、直径約1μm以上90μm以下であることを言う。約1μm以上90μm以下であることは篩による分級等により決定できる。また2次粒子の粒径範囲及び重量平均直径を市販の粒度計等を用いて測定することにより求めることができる。
ここで、「略球形」とは、真球状を含む球形に近い形状を意味し、直径の長径/短径比が1〜2の範囲にある回転楕円体の他に、球形表面の一部が陥没したいわゆる陥没球や球形表面にひげ状の突起がある形状をも含む意味である。
シリカ粒子とカーボン粒子とがそれぞれ別々に上記粒径及び形状を有する2次粒子であるよりも、上記のより細かい平均粒子径を有する前記のシリカ粒子及びカーボン粒子の1次粒子を予め混合してから、(2)の製造方法により一緒に凝集して上記粒径及び形状を有する2次粒子に加工することが好ましい。
【0013】
シリカ/カーボン比は、1.5〜5(重量比)が代表的であり、製造条件に応じた所望の配合比とすることができる。
【0014】
本発明の単結晶SiC製造用原料は、1μm以上90μm以下の直径を有した略球形の2次粒子であるため、途中の配管内でもさらさらと流れ、目詰まりの故障を生じない。また略球形の該原料を得る方法として、以下に詳述するスプレードライ法を用いることにより、粒度分布を狭く抑え、高純度に、又多孔質に仕上げることが可能となる。そのため当該原料を用いた単結晶SiC製造プロセスでは、粉立ちしにくく、流動性に優れ、配管目詰まり不良も発生しない他に、高純度でかつ高品質の単結晶SiCを製造することができる。
【0015】
本発明の第2の側面(第2発明)は、シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒からなるスラリを製造する工程、並びに、蒸発装置内で該スラリを噴霧乾燥及び造粒させてシリカとカーボンを含有する2次粒子を製造するスプレードライ工程を含む、(1)に記載の単結晶SiC製造用原料の製造方法、に係る。溶媒は揮発性溶媒であることが好ましい。
上記のような粒径及び形状を有する2次粒子に加工する方法は、粒度分布がシャープで、且つ高純度に管理された方法であれば特に制限はない。
本発明者らは、以下に示す種々の造粒方法を検討した。すなわち、シリカとカーボンの各1次粒子の凝集物を解砕する解砕造粒、回転ロール表面のモールドに粉体を食い込ませて圧縮する圧縮造粒、低湿の粒子混合物を顆粒機で押し出す押出し造粒等を比較検討したところ、小さい粒径範囲、狭い粒径分布、特に、不純物混入量の少なさの観点から噴霧乾燥造粒に基づくスプレードライ法が優れていることを見いだし、この単結晶SiC製造用原料の製造方法の発明を完成した。
【0016】
スプレードライ法は噴霧乾燥に基づく造粒方法であり公知である。シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒から実質的になるスラリを製造した後、このスラリを噴霧するアトマイザによって噴霧して乾燥室の熱風中で瞬時に乾燥させ造粒して略球形の2次粒子として回収することができる。乾燥時間は、短時間であり数秒以下である。なお、「溶媒」は揮発性液体であればよく、シリカ又はカーボンを溶解する液体でなくてもよく、水を使用することができる。
スラリを液滴として噴霧するためのアトマイザ(噴霧装置)としては、ノズルと回転円板(ディスク)が代表的である。ノズルには、加圧ノズルも含まれるが、噴射端にスラリが詰まったり、また摩耗が起こる懸念があるために、本発明では回転円板のアトマイザがより好ましく使用できる。
回転円板方式のアトマイザでは、高速で回転する円板の中心部にスラリを供給し遠心力によって噴霧させる。高速回転する回転円板(ディスク)方式のアトマイザには、回転軸を空気圧で浮かせてその加重を支持する空気軸受けを用いることもできる(特開平10−118536号公報参照)。回転円板の回転速度を大きくすると、2次粒子の粒径を小さくすることができる。高速回転(5,000〜40,000rpm)可能な回転円板を備えた噴霧乾燥機が例えば大川原化工機株式会社から市販されている。高速回転させた回転円板を使用して、粒子直径が1〜90μmの範囲に2次粒子の90重量%以上が含まれる略球形のシリカ・カーボン2次粒子を製造することができる。
【0017】
図1は、第2発明の製造方法に使用する噴霧乾燥造粒機の一例を示す概念図である。
噴霧乾燥造粒機は、シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒からなるスラリを貯蔵したスラリタンク1から、スラリ送液ポンプ2により噴霧装置であるアトマイザ7に送られ、乾燥室8の熱風中に噴霧されて瞬時に乾燥され2次粒子に造粒される。アトマイザ7の周囲には送風機12により空気が送られている。本発明においては、アトマイザとして、加圧ノズル、ディスク式ノズル、2流体ノズル、加圧2流体ノズル等の公知のノズルを適宜選択して使用することができるが、ディスク式ノズルが好ましい。乾燥室8は、上部を直胴部とし下部に円錐部が接続された構造を有する。乾燥室8の上部には、乾燥用熱風導入口が設けられ、エアフィルタ3を通した空気がエアヒータ5により熱せられ、熱風フィルタ6を通して熱風として送風機4により供給される。乾燥室8には、乾燥用熱風を排気するための排気ラインも設けられ、スラリから生じた微粉を回収するサイクロン9を介在させて排風機10及び集塵機11に接続されている。排気ラインは噴霧乾燥部の頂上部、直胴部の側壁、乾燥部内部へ挿入したパイプ等を適宜選択して使用することができる。2次粒子である製品は、円錐部の底部に設けた不図示の取り出し口から取り出すことができる。
【0018】
本発明の第3の側面(第3発明)は、加熱手段を備えた坩堝内に、SiC種結晶を固定したサセプタ、及び、外部から単結晶SiC製造用原料を供給するための原料供給管を配置する工程、並びに、高温雰囲気とした該坩堝内に(1)に記載の単結晶SiC製造用原料又は(2)に記載の製造方法により製造されたSiC製造用原料を原料供給管を通してSiC種結晶表面又はこの上に成長する単結晶SiCの成長層表面に供給することにより単結晶SiCを成長させる工程、を含むことを特徴とする単結晶SiCの製造方法に係る。
【0019】
単結晶SiC製造温度は特に限定されず、目的とする単結晶SiCのサイズや形状、種類等に応じて適宜設定でき、好ましい製造温度は1,600〜2,400℃の範囲であり、この温度は例えば坩堝外側の温度として測定できる。
【0020】
本発明の単結晶SiCの製造方法に使用する単結晶SiC製造装置の構成は、特に限定されない。すなわち種結晶サイズ、坩堝加熱方法、坩堝材質、原料供給方法、雰囲気調整方法、成長圧力、温度制御方法などは、目的とする単結晶SiCのサイズや形状、種類、単結晶SiC製造用原料の種類や量等に応じて適宜選択できる。例えば、温度測定と温度制御にはPID温度制御技術を使用することができる。
【0021】
本発明で使用する坩堝の形状は、外形については特に限定されず、目的とする単結晶SiCのサイズや形状に合わせ適宜選択できる。尚、当該坩堝の材質は使用温度範囲を考慮してグラファイト製であることが好ましい。
【0022】
SiC種結晶を保持するサセプタの形状は特に限定されず、目的とする単結晶SiCのサイズや形状に合わせ適宜選択できる。但し当該サセプタの材質は使用温度範囲を考慮してグラファイト製であることが好ましい。
【0023】
単結晶SiC製造用原料を供給する原料供給管の形状は特に限定されず、目的とする単結晶SiCのサイズや形状に合わせ適宜選択できる。但し当該供給管の材質は使用温度範囲を考慮してグラファイト製であることが好ましい。
原料供給管は、炭化珪素種単結晶を固定したサセプタに坩堝中で対向させてもよく、直角又は斜めに配置してもよい。
【0024】
本発明の単結晶SiC製造用原料を用いて単結晶SiCを製造するために用いる単結晶SiC製造装置の構成は特に限定されない。すなわち坩堝サイズや加熱方法、材質、原料供給方法、雰囲気調整方法、温度制御方法などは、目的とする単結晶SiCのサイズや形状、種類、単結晶SiC製造用原料の種類や量等に応じて適宜選択できる。
【0025】
第1発明である単結晶SiC製造用原料を用いて単結晶SiCを製造する方法(第3発明)においては、SiC種結晶が固定されたサセプタと、外部から単結晶SiC製造用原料を供給する(好ましくは連続供給する)ための原料供給管とは、坩堝の中で対向乃至は直角または斜めに配置されていることが好ましい。より詳しくは、サセプタ下端のSiC種結晶を保持する表面の法線方向は、該サセプタの鉛直方向と略平行から最大45°傾斜まで自由に設定することができる。
さらに上記のようなサセプタと原料供給管の配置状態で前記坩堝を加熱して坩堝内を高温雰囲気としながら前記単結晶SiC製造用原料を原料供給管を通してSiC種結晶表面に連続供給して単結晶SiCを成長させてSiC単結晶を成長させる。
【0026】
上記単結晶SiC製造時に連続供給される単結晶SiC製造用原料であるシリカ粒子とカーボン粒子の配合比および(連続)供給量は特に限定されないが、シリカ/カーボン比は、1.5〜5(重量比)が代表的であり、製造条件に応じた所望の配合比および供給量が適宜選択できる。
また上記単結晶SiC製造用原料は、必要に応じ、他の成分を微量添加してもよい。
【0027】
上記単結晶SiC製造用原料のSiC種結晶上への供給は、好ましくは途切れることなく連続して供給される方法が好ましく、例えば市販のパウダフィーダのように連続して粉体輸送できるものが挙げられる。また上記単結晶SiC製造用原料が上記粉体輸送手段から原料供給管までの間を輸送される際に目詰まりを起こさないようにするために、上記単結晶SiC製造用原料は略球形に加工されたものだけを使うことが好ましい。
また、単結晶SiC製造用原料は、キャリアガスと共に供給されることが好ましく、前記キャリアガスとしてはアルゴンガス及びヘリウムガス等の不活性キャリアガスが好ましく例示できる。これらの中でもキャリアガスとしてアルゴンガスを使用することが好ましい。
【0028】
また単結晶SiC中にドーピングをおこなう場合は、上記単結晶SiC製造用原料に固体ソースとして混合しても良いし、単結晶SiC製造装置内の雰囲気中にガスソースとして、該ドーピング成分を混合しても良い。具体的には、成長時にN2、Al(CH33、B26等の不純物をドーピングして、荷電子制御をすることができる。
【0029】
本発明で使用するSiC種結晶は、SiC種単結晶であることが好ましく、ウエハの形状であることが好ましい。SiC種単結晶ウエハの種類、サイズ、形状は特に限定されず、目的とする単結晶SiCの種類、サイズ、形状によって適宜選択できる。例えば改良レーリー法によって得られたSiC単結晶を必要に応じて前処理したSiC種単結晶ウエハが好適に利用できる。種単結晶としてジャスト基板、オフ角基板共に用いることができ、ジャスト面のSi面基板や数度のオフ角を有する(0001)Si面基板が例示できる。
【0030】
単結晶SiC製造温度は特に限定されず、目的とする単結晶SiCのサイズや形状、種類等に応じて適宜設定でき、好ましい製造温度は1,600〜2,400℃の範囲であり、この温度は例えば坩堝外側の温度として測定できる。
【0031】
本発明の第4の側面(第4発明)は、第3発明の方法により製造された単結晶SiCに係る。このSiC単結晶は、マイクロパイプ(MP)のほとんどなく、欠陥密度の低い、高品質のものとすることができる。
【実施例】
【0032】
以下本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
単結晶SiC製造用原料であるカーボン(電気化学工業(株)製デンカブラック)とシリカ(日本アエロジル製アエロジル380)とを混合してから純水に溶いてスラリ化した。得られたスラリをスプレードライヤ(大川原化工機(株)製FOC−16)を用いて略球形の造粒粉に加工した。このときの粒径は1μm以上90μm以下であった。また得られた原料中の金属不純物濃度はサブppm以下であった。こうして得られた原料を内製のパウダフィーダに充填した。
【0033】
(実施例2)
このパウダフィーダを単結晶SiC製造装置の原料供給管ラインに接続した。
図2に単結晶SiC製造装置30の構成図を示す。単結晶SiC製造装置30は高周波誘導加熱方式を採用しており、水冷された密閉チャンバ31内にカーボン製の円筒坩堝32(直径100mm、高さ150mm)が配置され、前記水冷された密閉チャンバ31の外側に高周波誘導加熱コイル33を配置した構造となっている。また前記円筒坩堝32内の上部には、SiC種結晶34を保持するためのサセプタ35が貫通挿入されている。さらに前記サセプタ35は円筒坩堝32の外側まで伸びており、図示しない回転機構により該サセプタの中心軸を回転軸として回転可能である。
また前記単結晶SiC製造用の造粒原料を供給するパウダフィーダ37と、前期高周波誘導加熱炉の外部に配管により接続された原料供給管36’はサセプタ35と反対側の円筒坩堝32の下面から円筒坩堝32内に伸びており、サセプタ35と対向配置されている。原料供給管36を通して供給された原料は、種結晶34表面又はその上に成長する単結晶SiCの成長層40表面に供給される。尚、前記パウダフィーダ37内では、調節弁38を介して原料貯蔵槽39から配管36’に供給され、造粒原料は、不活性キャリアガス供給源(図示せず)から供給された不活性キャリアガスAにより原料供給管36’を通して円筒坩堝32内に供給される。原料供給量は、パウダフィーダ37内の調節弁38による流量調節機構により制御される。
【0034】
単結晶SiC製造装置30の高周波誘導加熱炉は、図示しない真空排気系及び圧力調節系により圧力制御が可能であり、また図示しない不活性ガス置換機構を備えている。尚、図2に示す例ではサセプタと原料供給管の位置関係が上下対置関係であるが、本発明の作用が変わらない範囲内で、それぞれ横向きの対向関係に配置することも可能であるし、供給管とサセプタを互いに斜めや直角関係に配置することも可能である。前記サセプタの先端部にはSiC種単結晶ウエハが固定されている。
【0035】
図2に示した単結晶SiC製造装置を使用し、SiC種単結晶ウエハとして改良レーリー法で製造された単結晶SiCを使用した。面条件はジャスト面、Si面とした。
続いて高周波誘導加熱炉内部を真空引きした後、不活性ガス(高純度アルゴン)で該高周波誘導加熱炉内部を置換した。次いで前記高周波誘導加熱コイルにより、前記カーボン製の円筒坩堝の外側の温度が2,150〜2,350℃の範囲となるまで加熱昇温した。その状態でSiC種単結晶ウエハが固定された前記サセプタを0〜20rpmの回転速度で回転させた。ここで前記パウダフィーダに接続された前記不活性キャリアガス(高純度アルゴン)を流し、前記単結晶SiC製造用原料を、前記供給管内部を通じて、前記円筒坩堝内の対向部に配置された前記SiC種単結晶ウエハ表面上に供給した。そのまま前記円筒坩堝の外側の温度を一定に保ちながら、前記単結晶SiCを所望のサイズ(2インチ×1mm)となるまで前記単結晶SiC製造用原料の連続供給を継続して、前記単結晶SiCの製造をおこなった。
尚、最適の成長温度は雰囲気圧力や単結晶SiC製造用原料混合比、SiC種単結晶ウエハの種類等により変化する。
【0036】
(比較例1)
また比較のために、単結晶SiC製造用原料であるカーボン(電気化学工業(株)製デンカブラック)とシリカ(日本アエロジル製アエロジル380)とを混合してから、スプレードライ加工工程を経ないで、そのまま内製のパウダフィーダに充填し、以後は実施例1と全く同様の条件にて単結晶SiCの製造をおこなった。
【0037】
上記それぞれの条件での単結晶SiC製造結果を表1に示す。表からスプレードライ加工処理を施さなかった比較例1の場合は、原料供給開始直後から原料が配管内で目詰まりを起こしてしまい、SiC種単結晶ウエハ上への供給が断続的な不規則状態となった。一方、スプレードライ加工を実施した実施例の場合は、低不純物濃度で、マイクロパイプ(MP)のほとんどなく、低欠陥密度の高品質大型単結晶SiCを滞りなく製造することができた。
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の単結晶SiC製造用原料を製造するために使用する噴霧乾燥装置の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の単結晶SiCを製造するための装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 スラリタンク
2 スラリ送液ポンプ
3 エアフィルタ
4 送風機
5 エアヒータ
6 熱風フィルタ
7 アトマイザ(ディスク又はノズル)
8 乾燥室
9 サイクロン
10 排風機
11 集塵機(バッグフィルタ、スクラバ)
12 送風機
30 単結晶SiC製造装置
31 密閉チャンバ
32 円筒坩堝
33 高周波誘導加熱コイル
34 SiC種結晶
35 サセプタ
36 原料供給管
36’配管
37 パウダフィーダ
38 調節弁
39 原料貯蔵槽
40 成長層
A 不活性キャリアガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカとカーボンの各1次粒子から実質的になる2次粒子であって、該2次粒子形状が直径1〜90μmの略球形であることを特徴とする単結晶SiC製造用原料。
【請求項2】
シリカ粒子、カーボン粒子及び溶媒からなるスラリを製造する工程、及び、
蒸発装置内で該スラリを噴霧乾燥造粒させてシリカとカーボンを含有する2次粒子を製造するスプレードライ工程を含む、
請求項1に記載の単結晶SiC製造用原料の製造方法。
【請求項3】
加熱手段を備えた坩堝内に、SiC種結晶を固定したサセプタ、及び、外部から単結晶SiC製造用原料を供給するための原料供給管を配置する配置工程、並びに、
高温雰囲気とした該坩堝内に請求項1に記載の単結晶SiC製造用原料又は請求項2に記載の製造方法により製造された単結晶SiC製造用原料を原料供給管を通して該SiC種結晶表面に供給することにより単結晶SiCを成長させる成長工程、を含む
単結晶SiCの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法により製造された単結晶SiC。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−37720(P2008−37720A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216748(P2006−216748)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】