単軸ロボット
【課題】渦電流によって動力性能が低下することを防ぎながら、コイルを効率よく冷却することができる単軸ロボットを提供する。
【解決手段】リニアガイド13に往復動自在に支持されたスライダ14を備える。このスライダ14に内蔵されたコイル21を棒状のステータ22が貫通する可動コイル形リニアモータ15を備える。前記コイル21と前記スライダ14の内面との間に含浸させたエポキシ樹脂54によって前記コイル21が前記スライダ14に接着される。前記スライダ14の内面に複数のフィン61を突設した。
【解決手段】リニアガイド13に往復動自在に支持されたスライダ14を備える。このスライダ14に内蔵されたコイル21を棒状のステータ22が貫通する可動コイル形リニアモータ15を備える。前記コイル21と前記スライダ14の内面との間に含浸させたエポキシ樹脂54によって前記コイル21が前記スライダ14に接着される。前記スライダ14の内面に複数のフィン61を突設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動コイル形リニアモータを動力源としてスライダを往復動させる単軸ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の単軸ロボットとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に示された単軸ロボットは、水平方向に延びる1本の棒状のステータと、このステータが貫通するコイルとを有するリニアモータを動力源として構成されている。前記コイルは、前記ステータの軸線方向に移動自在に構成されたスライダに収納されている。
【0003】
前記スライダは、内部に前記コイルが固定されるとともに、被駆動部材を取付けるためのステージが上端部に設けられている。
従来の単軸ロボットに用いるスライダは、例えば図14に示すように形成されている。図14において、符号1で示すものは、従来の単軸ロボット用スライダの本体部分を示す。このスライダ本体1は、アルミニウム合金によって所定の形状に成形されたもので、上端部に前記ステージ(図示せず)を取付けるための取付座2が形成されるとともに、中心部に断面円形の貫通穴3が穿設されている。この貫通穴3の内部には、リニアモータ用のコイル4が接着されている。
【0004】
前記コイル4は、円筒状に形成され、前記貫通穴3内にその中心線に沿って一列に並ぶ状態で複数嵌合されている。また、このコイル4は、前記貫通穴3の穴壁面との間に充填された合成樹脂5によってスライダ本体1に接着されている。この接着用の合成樹脂5は、所望の接着強度を有する他に、スライダ本体1とコイル4とを確実に絶縁することができるものが使用されている。
【0005】
図14において、コイル4の中空部内に位置する符号6で示すものはステータである。このステータ6は、パイプ7の内部に複数の円筒状の永久磁石8を嵌合することによって形成され、軸心部を貫通する固定用ボルト9によってステータ用支持部材(図示せず)に固定されている。
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【特許文献1】特開平10−313566号公報(第2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように構成された従来の単軸ロボットは、作動時に発熱するコイル4の冷却が問題になっていた。これは、コイル4から発生する熱は、接着用の合成樹脂5を介してスライダ本体1に伝導され、このスライダ本体1から大気中に放散するからである。すなわち、従来の単軸ロボットにおいては、金属に較べて熱伝導率が小さい合成樹脂5からなる合成樹脂層がコイル4とスライダ本体1との間に介在されており、熱伝達経路の熱抵抗が大きくなるために、コイル4の冷却を向上させるためには限界があった。なお、このような問題を解消するためには、スライダ本体1を前記貫通穴3の内面がコイル4の外周面に近接するように形成し、合成樹脂層の厚みを薄く形成することが考えられる。
【0007】
しかし、このような構成を採ると、スライダ本体1とステータ6との間隔が狭くなることに起因して作動時に導電性を有する材料からなるスライダ本体1の内部に渦電流が生じてしまう。このようにスライダ本体1内に渦電流が発生すると、動作速度に比例する大きさをもつ制動力が作用する。このため、スライダ本体1の前記内面をコイル4に接近させると、単軸ロボットとしての性能が低下するという新たな問題が発生する。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、渦電流によって動力性能が低下することを防ぎながら、コイルを効率よく冷却することができる単軸ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る単軸ロボットは、リニアガイドと、このリニアガイドと同一方向に配置された棒状のステータと、この棒状のステータが貫通するコイルと、このコイルを内蔵しリニアガイドに往復動自在に支持されたスライダ本体とを備え、このスライダ本体の内面と前記コイルとの間に含浸させた合成樹脂によって前記コイルと前記スライダ本体とを一体化して構成されるスライダが、前記コイルと棒状のステータからなる可動コイル形リニアモータにより往復駆動される単軸ロボットにおいて、前記スライダ本体の内面に複数のフィンを突設したものである。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項1に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、フィンをコイルの中心部を指向しかつスライダの移動方向に延びるように形成したものである。
【0011】
請求項3に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項1または請求項2に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、リニアガイドと前記棒状のステータを開口を設けたケース内に収納し、前記開口に外方からこの開口を塞ぐ可撓性のシャッターを設け、前記スライダに前記シャッターを開口から外方に遊離させるガイド部を設けることにより前記スライダを前記シャッターの開口からの遊離部と前記ケースとの開放空間を介してケース内からケース外に延在させるようにしたものである。
【0012】
請求項4に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項3に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、前記ケースの内部空間を前記スライダによって二つに仕切るとともに、前記スライダ本体の外面にスライダの移動方向に延びるフィンを突設したものである。
【0013】
請求項5に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項4に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、ケース内の二つの空間のうち少なくとも一方の空間をケースの外に連通させたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スライダにおけるコイル接着用合成樹脂と接する部位の表面積が増大する。このため、前記合成樹脂とスライダとの接着部分の面積、言い換えれば熱伝達部分の面積が増大するから熱抵抗が低減され、コイルを放熱によって効率よく冷却することができる。
本発明に係る単軸ロボットにおいては、スライダのフィンと、スライダにおける前記フィンの基部に隣接する壁部分とのうち、渦電流が発生し易いのは前記壁部分である。この壁部分は、ステータとの距離が相対的に長くなるから、この壁部分内で発生する渦電流は小さくなる。
したがって、本発明に係る単軸ロボットは、スライダで渦電流が発生することがないか、発生したとしても小さく抑えることができることから高性能で、しかもコイルを充分に冷却することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、フィンは、スライダの移動方向(ステータの磁束に対して垂直な方向)の断面積が相対的に小さくなるように形成される。このため、この発明によれば、フィンで発生する渦電流を可及的小さく抑えることができるから、コイルの放熱性を向上させながら、単軸ロボットの動力性能(加速能力、最高速度など)を向上させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、スライダをケース外に突出させるためにケースに形成される開口をシャッターによって塞ぐことができるから、前記開口からケース内に異物が入ることをシャッターによって確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、スライダ本体がケース内を一方から他方へ移動することによって、ケース内の空気がスライダ本体とケースとの間の隙間を通って前記他方から一方へ流れる。この空気は、スライダ本体の外面に突設されたフィンに沿い、一部がフィンに接触する状態で流れる。
このため、スライダ本体に伝達されたコイルの熱がスライダ本体の外に効率よく放熱されるようになる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、スライダの往復動によるポンプ作用によってケース内を換気することができるから、換気を行うためのファンを使用することなく、ケース内の温度を外気温度に保つことができる。このため、コスト低減を図りながら、ケース内を適温に保つことができる単軸ロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る単軸ロボットの一実施の形態を図1ないし図10によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る単軸ロボットの平面図、図2は同じく側面図、図3は単軸ロボットの要部を拡大して示す断面図である。図4はスライダの断面図、図5はスライダ本体とシール部材との接続部分を示す断面図、図6はシール部材を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は底面図である。図7はスライダ本体を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図、同図(c)は底面図、同図(d)は(b)図におけるD−D線断面図、同図(e)は(b)図におけるE−E線断面図である。図8はスライダのステータ貫通部を拡大して示す断面図、図9はコイルの結線図、図10はスライダの組立方法を説明するための斜視図である。
【0020】
これらの図において、符号11で示すものは、この実施の形態による単軸ロボットを示す。このロボット11は、図1〜図4に示すように、水平な一方向(以下、この方向を前後方向という)に延びるケース12と、このケース12内に設けられたリニアガイド13と、このリニアガイド13と同一方向に配置された棒状のステータ22と、この棒状のステータ22が貫通する環状のコイル21と、このコイル21を内蔵しリニアガイド13に往復動自在に支持されたスライダ本体51とを備え、このスライダ本体51と前記コイル21とを一体化して構成されたスライダ14が可動コイル形リニアモータ15により往復駆動されるものである。前記スライダ14は、図3および図4に示すように、前記コイル21を内蔵しかつステータ22が貫通するスライダ本体51と、このスライダ本体51の上端部に取付けられたテーブル52とから構成されている。
【0021】
前記リニアモータ15は、前記スライダ本体51内に設けられた後述する複数の環状のコイル21と、これらのコイル21の中心部を遊嵌状態で貫通する前記ステータ22と、前記コイル21の近傍に配設されたコイル結線用基板23などによって構成されている。前記基板23の配線回路は、リード線24(図4参照)によってロボット用制御装置25(図2参照)に接続されている。前記リード線24は、後述するスライダ14の上部から側方に延び、図1および図2に示すように、前記ケース12の側部に設けられたチェーン式ケーブル保持部材26の内部を通ってケース12の外に導出されている。
【0022】
前記ケース12は、前記前後方向に延びる細帯状に形成された底板31(図3および図4参照)と、この底板31の両側部に取付けられた一対の側壁部材32,32と、前記底板31の長手方向の両端部に取付けられた前壁部材33および後壁部材(図示せず)とによって上方に向けて開口する箱状に形成されている。
【0023】
この実施の形態によるケース12の上端部の開口12aは、ステンレス鋼によって細長い膜状に形成されたシャッター34によって上方から覆われている。このシャッター34は、ケース12内に塵埃や異物が入るのを防止するためのもので、後述するスライダ14の挿通路35(図4参照)内に挿通された状態で前記前壁部材33と前記後壁部材とに固定されている。この実施の形態によるシャッター34は、前記側壁部材32の上端面に上方から接触し、上方へ容易に撓むことができるように構成されている。ケース12の内部には、前記シャッター34によってケース上端部の開口12aが覆われることにより、前記スライダ14の前方と後方とに閉空間36,37(図3参照)が形成される。
【0024】
前記底板31の上面には、図3および図4に示すように、前記リニアガイド13が設けられている。このリニアガイド13は、底板31に固定された1本のレール部材41と、このレール部材41の上に図示していない軸受によって移動自在に支持された2個のスライド部材42とから構成されている。この軸受は、ボール循環式軸受が平行に複数条設けられたもので、スライダ本体51側に設けられている。
前記前壁部材33は、図3に示すように、前記ステータ22の前端部を支持し、前記後壁部材は、図示してはいないが、前記ステータ22の後端部を支持している。
【0025】
前記ステータ22は、図3および図4に示すように、前記前壁部材33と後壁部材とによって両端部が支持されたパイプ43と、このパイプ43の内部に嵌入された複数の永久磁石44とによって構成されている。これらの永久磁石44は、円筒状に形成されており、同じ極性の磁極が互いに対向する状態でパイプ43内に嵌合されている。この実施の形態においては、これらの永久磁石44は、軸心部を貫通する固定用ボルト45によって軸線方向の両側から挟圧され、所定の位置に固定されている。
【0026】
前記スライダ14のテーブル52は、この実施の形態による単軸ロボット11が駆動する被駆動部材(図示せず)を取付けるためのものである。このテーブル52は、前記シャッター34をケース12の開口12aから外方(上方)に遊離させるガイド部52aを備えている。このガイド部52aは、図3に示すように、上方に向けて凸になる凸曲面が形成され、この凸曲面にシャッター34の下面が摺接する状態でスライダ本体51の上面に取付けられている。このガイド部52aによってシャッター34が上方に遊離させられることにより、シャッター34の両側端とケース12との間に開放空間が形成される。テーブル52には、図4に示すように、前記開放空間を通る開放空間通過部52bが形成されている。この開放空間通過部52bは、一方がケース12内のスライダ本体51の上面に接続され、他方が被駆動部材取付用の取付座52cとして形成されている。テーブル52における取付座52cとなる部位は、前記側壁部材32の上面との間に微小なクリアランスを有する状態で側方に延設されている。クリアランスが微小であることにより、異物が外方からケース12内に侵入するのを防いでいる。
【0027】
前記テーブル52の上端部には、保護カバー52dが取付けられている。この保護カバー52dとテーブル52の上面との間に、上述したシャッター34が挿通する前記挿通路35が形成されている。また、テーブル52の上端部であって、前記ガイド部52a前方と後方には、シャッター34を前記側壁部材32の上面(開口12aの開口縁部)に密着させるためのローラ53が設けられている。スライダ14が移動するときにもシャッター34によってスライダ14の前後のケース12の上端開口が閉塞された状態を保つことができる。また、開放空間通過部52bをテーブル52に設けることにより、シャッター34を上方へ遊離させた結果生じた開放空間が略塞がれ、テーブル52とケース12との間は小さな隙間とされることにより、ケース12内を外方に対して略密閉状態とすることができる。
【0028】
前記スライダ本体51は、アルミニウム合金を材料として所定の形状に成形されており、図4および図7に示すように、下方へ向けて開放する断面コ字状に形成され、内部に前記複数のコイル21がエポキシ樹脂54によって固着されている。詳述すると、このスライダ本体51は、例えば図7(a)に示すように、互いに対向する一対の側板55,56と、これらの側板55,56の上端部どうしを接続する上板57とが一体に形成されており、内部に前記コイル21が取付けられた状態で前記リニアガイド13の二つのスライド部材42の上面に固定されている。前記両側板55,56の下端部の一端側(前端側)と他端側(後端側)には、図7(c)に示すように、前記スライド部材42に載せて固定するための取付座58が形成されている。また、前記両側板55,56におけるスライダ本体51の両端側の内面には、図5および図7(c),(d)に示すように、後述するシール部材59が嵌合する凹溝60が上下方向に延びるように形成されている。
【0029】
また、このスライダ本体51の内面と両側板55,56の外面には、スライダ14の移動方向に延びる複数のフィン61,62が一体に形成されている。スライダ本体51の内側のフィン61は、図4に示すように、前記コイル21の中心(ステータ22の軸心)を指向するように、スライダ本体51の内面に突設されている。一方、外面側のフィン62は、側方に向けて水平に突出するように前記外面に突設されている。
【0030】
このスライダ本体51の内側の横幅(図4において左右方向の幅)は、スライダ本体51のコイル21の外径より大きくなるように形成されている。一方、このスライダ本体51の外側の横幅は、前記ケース12の内部にスライダ本体51を収容させた状態で両側板55,56のフィン62の先端がケース12の側壁部材32,32に接近するように形成されている。このように形成されたスライダ本体51をケース12内のリニアガイド13に取付けることによって、スライダ本体51がケース12内を長手方向の一端側と他端側とに区画する実質的な区画壁として機能するようになる。
【0031】
スライダ本体51内に設けられた複数(この実施の形態では12個)のコイル21は、それぞれ円環状に形成されている。これらのコイル21の内径は、前記ステータ22の外径より大きくなるように形成されている。また、これらのコイル21は、図9中にC1〜C12として示すように、いわゆるU線と共通線Aとに接続される第1群に属するもの(C1,C4,C7およびC10)と、いわゆるW線と共通線Aとに接続される第2群に属するもの(C2,C5,C8およびC11)と、いわゆるV線と共通線Aとに接続される第3群に属するもの(C3,C6,C9およびC12)とに分けられ、スライダ14の移動方向に所定の順序で並べられている。
【0032】
これらのコイルC1〜C12が並ぶ順序は、第1群に属するコイル21と、第2群に属するコイル21と、第3群に属するコイル21とがこの順序で並び、かつこれらの第1群〜第3群のコイル21を一組としてこの組が複数一列に並ぶように設定されている。これらのコイル21は、図9に示すように、いわゆるスター結線によって配線されており、U相(第1群)と、W相(第2群)と、V相(第3群)の各相において、それぞれ4個のコイル21が直列に接続され、全相が互いに接続されている。図9において、符号Sはコイル21の開始端を示し、Eはコイル21の終端を示す。なお、U線、V線、W線および各コイル21の共通線Aは、それぞれ制御装置25に接続されている。また、これらのコイル21は、図3に示すように、U相のコイル21と、W相のコイル21と、V相のコイル21とからなる1組のコイル21の軸線方向の長さと、ステータ22内のそれぞれの永久磁石44の1個分の磁石全長と一致するように形成されている。
【0033】
これらのコイル21のリードは、図3および図4に示すように、コイル21の近傍に配設されたコイル結線用基板23に半田付けされ、この基板23を介してU線、V線、W線および共通線Aに接続されている。これらの配線は、前記リード線24としてスライダ14の外に導出され、制御装置25に接続されている。
【0034】
前記第1〜第3群のコイル21は、前記制御装置25によって位相が120°異なる交流電流が供給されることにより、ステータ22の軸線方向に推力を発生させる。スライダ14は、この推力によって前後方向に移動する。前記推力の大きさは、前記交流電流のピーク値に相関し、スライダ14の移動速度は、前記交流電流の周波数に相関する。制御装置25は、スライダ14に設けられたリニアセンサ(図示せず)によって検出された位置情報に基づいてスライダ14の位置を確認しながら、前記ピーク値および前記周波数を制御する。制御装置25は、例えばスライダ14を停止させる場合は、制動力が発生するように、UVW線に供給する電流を制御し、制動力を発生させる必要がない場合には、全ての群(第1群〜第3群)の電流値を0とする。
【0035】
これらのコイル21を前記スライダ本体51内に取付けるための前記エポキシ樹脂54は、スライダ本体51内の所定位置にコイル21が位置決めされている状態で液状のものをスライダ本体51内に注入し、その後、加熱することにより硬化させる。このときの液状のエポキシ樹脂54の粘度は、コイル21の素線どうしの間に含浸するように設定されている。このように流動性が高い液状のエポキシ樹脂54を断面コ字状のスライダ本体51の内部に貯留するためには、コ字状の開放部分が上方を指向するようにスライダ本体51を上下方向に反転させ、このスライダ本体51の前後方向の両端部にいわゆる堰となるシール部材59(図3および図5参照)を取付ける。このシール部材59は、エポキシ樹脂54を貯留するためばかりではなく、スライダ本体51内に嵌合することにより、樹脂注入時にコイル21をスライダ本体51内に位置決めするためにも使用している。
【0036】
この実施の形態によるシール部材59は、合成樹脂によって所定の形状に成形され、図3、図5および図6に示すように、フランジ63とボス64とが一体に形成されている。前記フランジ63は、外縁部分が全域にわたってスライダ本体51の前記凹溝60に嵌合するように形成されている。また、このフランジ63の下端部には、図3および図6(b)に示すように、前記コイル結線用基板23を取付けるための取付座65が形成されている。
【0037】
前記ボス64は、フランジ63からスライダ本体51の外側へ向けて突出するように形成されており、製造工程においてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の注入時に流出するのを防止するためのものであり、熱硬化後においては図3および図8に示すように、コイル側と外側とを画成するための仕切壁64aが形成されるとともに、内部に樹脂ベアリング66が取付けられている。前記仕切壁64aには、コイル21の内径と同径の貫通孔64bが穿設されている。前記樹脂ベアリング66は、鍔66aを有する円筒状に形成されており、前記ボス64に外側から嵌合された状態で前記鍔の移動を規制する固定用ねじ67(図3参照)によって、ボス64に外れることがないように固定されている。図8に示すように、この樹脂ベアリング66の内径D1は、ステータ22のパイプ43の外径D2より大きく、かつコイル21の内径D3より小さくなるように形成されている。このように樹脂ベアリング66をシール部材59に取付けることにより、スライダ14のステータ22に対する位置が例えばリニアガイド13内の摺動または転動部分の磨耗などにより変化したときには、樹脂ベアリング66の内周面がステータ22の外周面に接触する。このため、このような場合であっても、コイル21の内周面がステータ22に接触することがなく、コイル21の素線の絶縁膜がステータ22との接触により破れて絶縁不良を起こすことを防ぐことができる。
【0038】
ここで、コイル21をスライダ本体51にエポキシ樹脂54によって接着し固定する方法を図10によって説明する。なお、図10に示す各部材の形状は、理解を容易にするために簡略化してあり、実際の形状とは相違する。
スライダ本体51にコイル21を装着するためには、先ず、図10(a)に示すように、断面円形のロッド71とストッパー72とからなる治具73に円筒状の絶縁フィルム74を嵌合させ、次いで、同図(b)に示すように、前記絶縁フィルム74の外周面に前記一方のシール部材59を嵌合させる。前記絶縁フィルム74は、ロッド71が後述するコイル21に接着することを防ぐためのものである。この状態で、シール部材59と絶縁フィルム74の境界部分に液状のシール剤を塗布しておく。このシール剤としては、例えばエポキシ樹脂54と同等の材料やあるいはシリコン系樹脂を主成分とする材料のものを使用する。
【0039】
その後、図10(c)に示すように、複数のコイル21を前記治具73のロッド71(絶縁フィルム74の外周部)に嵌合させる。このとき、各コイル21のリードは、予めコイル結線用基板23に半田付けしておく。前記ロッド71の外径は、絶縁フィルム74の厚みを加えた状態で、コイル21の内径と、シール部材59の前記貫通孔64bの孔径と同径になるように形成されている。このため、このロッド71にコイル21とシール部材59とを嵌合させることによって、シール部材59とコイル21とを同一軸線上に位置付けることができる。
【0040】
コイル21をロッド71に装着した後、図10(d)に示すように、他方のシール部材59を前記ロッド71に嵌合させ、このシール部材59と絶縁フィルム74との境界部分に前記液状のシール剤を塗布し、両端側に位置する二つのシール部材59に前記基板23を取付用ねじ23aによって固定する。しかる後、図10(e)に示すように、スライダ本体51の開口部分に前記二つのシール部材59をそれぞれ嵌合させる。このシール部材59がスライダ本体51内に嵌合することにより、全てのコイル21がスライダ本体51の仮想軸心(ステータ22の軸心)と同一軸線上に位置付けられる。
【0041】
次に、スライダ本体51をその開口部が上方を指向する状態として前記開口部内に液状のエポキシ樹脂54を注入する。この注入行程では、コイル結線用基板23をエポキシ樹脂54内に埋没させる。
このようにエポキシ樹脂54をスライダ本体51内に注入した後、この熱硬化性のエポキシ樹脂54を硬化させるために、スライダ本体51を加熱炉(図示せず)などに装填する。そして、前記エポキシ樹脂54を加熱して硬化させ、冷却後に前記治具73をスライダ本体51側から引抜いて取外す。このように治具73を取外した後、樹脂ベアリング66を両シール部材59に取付けることによって、スライダ本体51が完成する。このスライダ本体51は、前記ステージ52が取付けられた後に前記ステータ22が挿通され、このステータ22とともにケース12に装着される。
【0042】
上述したように構成された単軸ロボット11においては、スライダ14内のコイル21に制御装置25によって所定の交流電流が供給されることにより、スライダ14がリニアガイド13に沿って前後方向に移動する。この移動時、すなわち、コイル21が通電されるときにはコイル21が発熱する。
コイル21の熱の大部分は、エポキシ樹脂54を介してスライダ本体51に伝導され、このスライダ本体51内を内側から外側へ伝導した後にスライダ本体51の外表面からケース12内に放散する。この実施の形態によるスライダ本体51は、内面に複数のフィン61が突設されているから、フィンが設けられていない場合に較べるとエポキシ樹脂54と接する部位の表面積が増大する。
【0043】
このため、この単軸ロボット11においては、前記エポキシ樹脂54とスライダ14との接着部分の面積、言い換えれば熱伝達部分の面積が増大するから、熱抵抗が低減され、コイル21の熱がエポキシ樹脂54を介してスライダ本体51に伝わり易くなる。この結果、この単軸ロボット11のコイル21は、従来の単軸ロボットのコイルに較べて冷却され易くなる。
【0044】
この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ本体51が導電性を有する材料によって形成されているために、スライダ14が移動するときにスライダ本体51内に微弱ながらも渦電流が発生する。スライダ本体51の内面に突設された前記フィン61と、スライダ本体51における前記フィン61の基部に隣接する壁部分のうち、渦電流が発生し易いのは壁部分である。この壁部分は、ステータ22との距離が相対的に長くなるから、この壁部分内で発生する渦電流は相対的に小さくなる。また、前記フィン61は、スライダ14の移動方向の断面積が相対的に小さくなるように形成されているから、このフィン61で発生する渦電流を無視できるように小さく抑えることができる。
したがって、この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ14(スライダ本体51)で渦電流が発生することがないか、発生したとしても小さく抑えることができる。
【0045】
さらに、この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ本体51によってケース12内が前方と後方とに仕切られているから、スライダ14がケース12内を例えば前方から後方へ移動することによって、ケース12内の空気がスライダ本体51とケース12との間の隙間を通って前記後方から前方へ流れる。この空気は、スライダ本体51の外面に突設されたフィン62に沿い、一部がこのフィン62に接触する状態で流れる。このため、スライダ本体51に伝達されたコイル21の熱をフィン62によってスライダ本体51の外に効率よく放熱することができる。スライダ本体51は鋳造により形成してもよいが、フィン61およびフィン62を長手方向に形成しているので、フィン形状を設けた口金型からの押し出し棒を切断することにより価格を抑えて形成すると良い。
【0046】
加えて、この実施の形態による単軸ロボット11は、前記スライダ14がケース12内を一端側と他端側とに区画する実質的な区画壁として機能するから、スライダ本体51が前進したときに前方に位置する気室(閉空間36)の空気が圧縮されるようになり、この気室内の空気の一部が例えばケース12の側板55,56とシャッター34との間の隙間を通ってケース12外に排出される。この場合、ケース12に異物の吸入を阻止するチャンバーが途中に設けられた換気管(図示せず)をケース12内の少なくとも一方の気室設けることにより、この換気管を通ってケース12内と外が連通することになる。このため、この構成を採ることにより、スライダ本体51がケース12内で往復することによるポンプ作用によってケース12内を換気することができ、換気を行うためのファンを使用することなく、ケース12内の温度を外気温度に保つことができる。
【0047】
なおさらに、この実施の形態における単軸ロボットにおいては、シール部材59を外形円筒状とすることなく異形形状とすることで、スライダ本体51内部の空間を大きく取り、渦電流による動作抵抗を小さくすることができた。また、シール部材59の外形を円筒状でなく異形形状としており、コイル21、21‥‥と絶縁フィルム74との間で使用している液状シールを、シール部品59の外形部とスライダ本体51との間でも使用している。シール部材59の外縁には液状シールのシール性を確実なものとするために段を設けている。しかし、シール性の向上のためには段つき形状を採る方法のほかに、溝を設けても良い。
【0048】
また、この実施の形態におけるスライダ本体51は全長にわたってコの字状断面を採用しており、絶縁フィルム74、シール部材59およびコイル結線用基板23のスライダ本体51内への組付け作業性が良い。特に、スライダ本体51へコイル21、21‥‥を組込む前に結線作業をすることができ、作業性および製品信頼性が向上する。
【0049】
この実施の形態における単軸ロボットにおいては、シール部材59に樹脂ベアリング66を嵌合保持させるようにしているので、コイル21の中心穴のセンター軸と樹脂ベアリング66の中心軸を完全に一致させることができる。これにより、樹脂ベアリング66の機能を十分に果たすことができるとともに、下記する第2の実施の形態のベアリングホルダ92を使用しておらず、部品点数を減らすことができる。本実施の形態では、シール部材59の外縁に設けた段つき形状をスライダ本体51の溝に嵌合させることで、下記する第2の実施の形態のストッパープレート91をも廃止している。また、樹脂ベアリング66の内周に周方向に複数箇所、長手方向の縦溝を形成しており、スライダ14の移動に伴い、スライダ本体51がケース12内で往復することによるポンプ作用により、ステータ22の外周と樹脂ベアリング66内周の間のクリアランスおよび縦溝、ステータ22外周と絶縁フィルム74内周の間のクリアランスを通り、ケース12内の空気が往復流動し、コイル21、21‥‥を冷却することができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
本発明に係る単軸ロボットは図11ないし図13に示すように構成することができる。
図11は単軸ロボットの他の実施の形態を示す縦断面図、図12はスライダの横断面図、図13はスライダ本体を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は側面図、同図(c)は背面図、同図(d)は(b)図におけるD−D線断面図、同図(e)は(b)図におけるE−E線断面図である。これらの図において、前記図1〜図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0051】
この実施の形態による単軸ロボット11のケース12は、図12に示すように、上方に向けて開放する断面コ字状に形成されて前後方向に延びるベースブロック81と、このベースブロック81の両側部に取付けられた一対のカバー82,82とから構成されている。前記ベースブロック81の両側部の上面には、リニアガイド13のレール部材41がそれぞれ固定されている。これらのレール部材41に移動自在に支持された一対のスライド部材42は、横方向に延びるプレート83によって互いに接続されている。このプレート83は、スライダ本体51の上端部に取付けられ、テーブル52を支持している。また、このプレート83の上面には、前後方向に延びる複数の放熱用フィン84が立設されている。
【0052】
この実施の形態によるスライダ本体51は、前記プレート83から下方に延び、前記ベースブロック81の凹部85内に挿入されている。このスライダ本体51は、図13に示すように、前後方向(スライダ14の移動方向)の端部86,86を除く中央部分87が上方に向けて開放する断面コ字状に形成されている。前記両端部86は、図13(b)に示すように、このスライダ本体51の両側板55,56の上端部どうしを接続するクロスメンバ88が設けられており、図13(e)に示すように、閉じた断面形状となるように形成されている。すなわち、この実施の形態によるスライダ本体51は、第1の実施の形態で示したスライダ本体に較べると剛性が高く、相対的に大型に形成することが可能な構成が採られている。前記中央部分87、すなわちスライダ本体開口51aの長さLは、コイル21、21‥‥の全長より長くなるように形成されている。
【0053】
前記クロスメンバ88が設けられた前記両端部86は、円形孔89{図13(c)参照}が穿設され、この円形孔89内に、円環状に形成されたシール部材59(図11参照)が嵌合されている。このスライダ本体51は、前記シール部材59と両側板55,56とによって囲まれた空間内にコイル21とコイル結線用基板23とが配設されるとともに、エポキシ樹脂54が充填されている。前記基板23は、スライダ本体51の上端部に形成された取付座90{図14および図13(a),(d)参照}に取付用ねじ23a(図11参照)によって取付けられている。
【0054】
この実施の形態において、コイル21をスライダ本体51内の所定の位置に取付けるためには、第1の実施の形態を採るときと同様に治具73を使用して行う。すなわち、スライダ本体51にコイル21を取付けるためには、先ず、前記治具73に絶縁フィルム74と、二つのシール部材59,59と、複数のコイル21,21‥‥とを装填することによってコイル組立体を形成する。
【0055】
次に、前記コイル組立体をスライダ本体51の一方の円形孔89に外側から挿入するとともに、スライダ本体51内で軸線方向に平行移動させ、前端部のシール部材59と後端部のシール部材59とをスライダ本体51の両端部の86,86の円形孔89にそれぞれ嵌合させる。この状態で、図11に示すように、スライダ本体51の前端面と後端面とに外周にOリングを装着したストッパープレート91と、樹脂ベアリング66を有するベアリングホルダ92とを取付ける。前記ストッパープレート91は、樹脂ベアリング66の移動を規制するためのものである。その後、各コイル21のリード線をコイル結線用基板23に半田付けする。この基板23には、制御装置25からのU,V,Wおよび共通線Aを予め結線しておく。前記半田付けは、各コイル21の両端(図9において符号S,Eで示す両端)をそれぞれ前記基板上の所定端子部に接続することによって行う。この半田付け作業が終了することにより、図9に示す回路が構成される。次に、前記基板23をスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入して固定し、液状のエポキシ樹脂54をスライダ本体51内に注入する。このエポキシ樹脂54を加熱することにより硬化させた後に治具73を取外す。
【0056】
なお、図13におけるスライダ本体開口51aの長手方向長さLが、装着する全てのコイル21、21‥‥の全長、および基板23の長手方向長さより長い場合には、上述した第1の実施の形態と一部同じようにスライダ14を形成する。すなわち、治具73を互いに脱着可能な3ピースで形成し、中央のピースに絶縁フィルム74、複数のコイル21、21‥‥とを装填してコイル組立体を形成し、U、V、Wおよび共通線Aが結線された基板23へ各コイル21の両端を半田付けし、コイル組立体と基板23を一緒にスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し、基板23をスライダ本体51に固定する。
【0057】
その後、中央のピースの両側から、外周にOリングを取付けたシール部材59と、樹脂ベアリング66を有し外周にOリングを取付けたベアリングホルダ92とを装着した端部ピースをそれぞれ組付け、ストッパープレート91をスライダ本体51に取付ける。その後からエポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化する。中央のピース、両側のピースからなる治具73を除去して、スライダ14を完成させる。シール部材59とベアリングホルダ92を円形孔89に嵌合させることと、ストッパープレート91を取付けることで、コイル21のスライダ本体51に対する位置決めができる。
【0058】
また、スライダ本体開口51aの長手方向長さLが、装着する全てのコイル21、21と両シール部材59との全長より長い場合には、治具73を互いに脱着可能な3ピースで形成し、中央のピースに絶縁フィルム74、複数のコイル21、21‥‥、両シール部材59とを装填してコイル組立体を形成し、コイル組立体を一緒にスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し、樹脂ベアリング66を有し、外周にOリングを取付けたベアリングホルダ92を装着した端部ピースをそれぞれ組付け、ストッパープレート91をスライダ本体51に取付ける。
【0059】
このうえで、U、V、Wおよび共通線Aが結線され、各コイル21の両端が半田付けされた基板23も、スライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し固定し、エポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化する。基板23をスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入しない場合には、エポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化した後、U、V、Wおよび共通線Aが結線された基板23へ各コイル21の両端を半田付けする。
【0060】
前記スライダ本体51におけるエポキシ樹脂54が充填される部分の内面は、図12に示すように、ステータ22の軸線方向から見てコイル21と同心円状に形成され、複数のフィン61が突設されている。これらのフィン61は、コイル21の中心部を指向しかつスライダ14の移動方向に延びるように形成されている。また、この実施の形態においても、スライダ本体51の外面に複数の放熱用フィン62が立設されている。
この実施の形態で示したようにスライダ14を構成しても第1の実施の形態を採る場合と同等の効果を奏する。
【0061】
上述した各実施の形態ではケース12のシャッター34と側板55との間に形成される隙間によりケース12内が少しずつ換気される例を示したが、ケース12の前壁部材33と後壁部材の少なくとも一方にケース12の内外を連通する連通管(図示せず)を設け、この連通管を用いてケース12内の換気を行うこともできる。また、本発明に係る単軸ロボット11は、上述したようにスライダ14の移動に依存する換気装置を装備する他に、電動ファンによって強制的にケース12内を換気する換気装置を装備することができる。この構成を採る場合は、ケース12内の温度が予め定めた温度を上回ったときに電動ファンによって換気を行うことができる。これらの連通管や換気装置には、外部の塵埃のケース12内への侵入を防止するフィルタを設ける。
【0062】
上述した各実施形態においては、コイル21をエポキシ樹脂54にスライダ本体51に固定する例を示したが、この樹脂材料としては、エポキシ樹脂に限定されることはなく、耐熱性、絶縁性および機械的強度の条件を満たすものであれば、どのようなものでも用いることができる。また、図12に示すように、テーブル52のプレート83への接続部に断熱材93を介装し、テーブル52にコイル21の熱が伝達されることを防止するようにすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る単軸ロボットの平面図である。
【図2】本発明に係る単軸ロボットの側面図である。
【図3】単軸ロボットの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】スライダの横断面図である。
【図5】スライダ本体とシール部材との接続部分を示す断面図である。
【図6】シール部材を示す図である。
【図7】スライダ本体を示す図である。
【図8】スライダのステータ貫通部を拡大して示す断面図である。
【図9】コイルの結線図である。
【図10】スライダの組立方法を説明するための斜視図である。
【図11】単軸ロボットの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図12】スライダの横断面図である。
【図13】スライダ本体を示す図である。
【図14】従来の単軸ロボットのスライダの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11…単軸ロボット、12…ケース、13…リニアガイド、14…スライダ、15…可動コイル形リニアモータ、21…コイル、22…ステータ、44…永久磁石、51…スライダ本体、52…テーブル、54…エポキシ樹脂、61,62…フィン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動コイル形リニアモータを動力源としてスライダを往復動させる単軸ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の単軸ロボットとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に示された単軸ロボットは、水平方向に延びる1本の棒状のステータと、このステータが貫通するコイルとを有するリニアモータを動力源として構成されている。前記コイルは、前記ステータの軸線方向に移動自在に構成されたスライダに収納されている。
【0003】
前記スライダは、内部に前記コイルが固定されるとともに、被駆動部材を取付けるためのステージが上端部に設けられている。
従来の単軸ロボットに用いるスライダは、例えば図14に示すように形成されている。図14において、符号1で示すものは、従来の単軸ロボット用スライダの本体部分を示す。このスライダ本体1は、アルミニウム合金によって所定の形状に成形されたもので、上端部に前記ステージ(図示せず)を取付けるための取付座2が形成されるとともに、中心部に断面円形の貫通穴3が穿設されている。この貫通穴3の内部には、リニアモータ用のコイル4が接着されている。
【0004】
前記コイル4は、円筒状に形成され、前記貫通穴3内にその中心線に沿って一列に並ぶ状態で複数嵌合されている。また、このコイル4は、前記貫通穴3の穴壁面との間に充填された合成樹脂5によってスライダ本体1に接着されている。この接着用の合成樹脂5は、所望の接着強度を有する他に、スライダ本体1とコイル4とを確実に絶縁することができるものが使用されている。
【0005】
図14において、コイル4の中空部内に位置する符号6で示すものはステータである。このステータ6は、パイプ7の内部に複数の円筒状の永久磁石8を嵌合することによって形成され、軸心部を貫通する固定用ボルト9によってステータ用支持部材(図示せず)に固定されている。
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【特許文献1】特開平10−313566号公報(第2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように構成された従来の単軸ロボットは、作動時に発熱するコイル4の冷却が問題になっていた。これは、コイル4から発生する熱は、接着用の合成樹脂5を介してスライダ本体1に伝導され、このスライダ本体1から大気中に放散するからである。すなわち、従来の単軸ロボットにおいては、金属に較べて熱伝導率が小さい合成樹脂5からなる合成樹脂層がコイル4とスライダ本体1との間に介在されており、熱伝達経路の熱抵抗が大きくなるために、コイル4の冷却を向上させるためには限界があった。なお、このような問題を解消するためには、スライダ本体1を前記貫通穴3の内面がコイル4の外周面に近接するように形成し、合成樹脂層の厚みを薄く形成することが考えられる。
【0007】
しかし、このような構成を採ると、スライダ本体1とステータ6との間隔が狭くなることに起因して作動時に導電性を有する材料からなるスライダ本体1の内部に渦電流が生じてしまう。このようにスライダ本体1内に渦電流が発生すると、動作速度に比例する大きさをもつ制動力が作用する。このため、スライダ本体1の前記内面をコイル4に接近させると、単軸ロボットとしての性能が低下するという新たな問題が発生する。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、渦電流によって動力性能が低下することを防ぎながら、コイルを効率よく冷却することができる単軸ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る単軸ロボットは、リニアガイドと、このリニアガイドと同一方向に配置された棒状のステータと、この棒状のステータが貫通するコイルと、このコイルを内蔵しリニアガイドに往復動自在に支持されたスライダ本体とを備え、このスライダ本体の内面と前記コイルとの間に含浸させた合成樹脂によって前記コイルと前記スライダ本体とを一体化して構成されるスライダが、前記コイルと棒状のステータからなる可動コイル形リニアモータにより往復駆動される単軸ロボットにおいて、前記スライダ本体の内面に複数のフィンを突設したものである。
【0010】
請求項2に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項1に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、フィンをコイルの中心部を指向しかつスライダの移動方向に延びるように形成したものである。
【0011】
請求項3に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項1または請求項2に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、リニアガイドと前記棒状のステータを開口を設けたケース内に収納し、前記開口に外方からこの開口を塞ぐ可撓性のシャッターを設け、前記スライダに前記シャッターを開口から外方に遊離させるガイド部を設けることにより前記スライダを前記シャッターの開口からの遊離部と前記ケースとの開放空間を介してケース内からケース外に延在させるようにしたものである。
【0012】
請求項4に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項3に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、前記ケースの内部空間を前記スライダによって二つに仕切るとともに、前記スライダ本体の外面にスライダの移動方向に延びるフィンを突設したものである。
【0013】
請求項5に記載した発明に係る単軸ロボットは、請求項4に記載した発明に係る単軸ロボットにおいて、ケース内の二つの空間のうち少なくとも一方の空間をケースの外に連通させたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スライダにおけるコイル接着用合成樹脂と接する部位の表面積が増大する。このため、前記合成樹脂とスライダとの接着部分の面積、言い換えれば熱伝達部分の面積が増大するから熱抵抗が低減され、コイルを放熱によって効率よく冷却することができる。
本発明に係る単軸ロボットにおいては、スライダのフィンと、スライダにおける前記フィンの基部に隣接する壁部分とのうち、渦電流が発生し易いのは前記壁部分である。この壁部分は、ステータとの距離が相対的に長くなるから、この壁部分内で発生する渦電流は小さくなる。
したがって、本発明に係る単軸ロボットは、スライダで渦電流が発生することがないか、発生したとしても小さく抑えることができることから高性能で、しかもコイルを充分に冷却することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、フィンは、スライダの移動方向(ステータの磁束に対して垂直な方向)の断面積が相対的に小さくなるように形成される。このため、この発明によれば、フィンで発生する渦電流を可及的小さく抑えることができるから、コイルの放熱性を向上させながら、単軸ロボットの動力性能(加速能力、最高速度など)を向上させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、スライダをケース外に突出させるためにケースに形成される開口をシャッターによって塞ぐことができるから、前記開口からケース内に異物が入ることをシャッターによって確実に防ぐことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、スライダ本体がケース内を一方から他方へ移動することによって、ケース内の空気がスライダ本体とケースとの間の隙間を通って前記他方から一方へ流れる。この空気は、スライダ本体の外面に突設されたフィンに沿い、一部がフィンに接触する状態で流れる。
このため、スライダ本体に伝達されたコイルの熱がスライダ本体の外に効率よく放熱されるようになる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、スライダの往復動によるポンプ作用によってケース内を換気することができるから、換気を行うためのファンを使用することなく、ケース内の温度を外気温度に保つことができる。このため、コスト低減を図りながら、ケース内を適温に保つことができる単軸ロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る単軸ロボットの一実施の形態を図1ないし図10によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る単軸ロボットの平面図、図2は同じく側面図、図3は単軸ロボットの要部を拡大して示す断面図である。図4はスライダの断面図、図5はスライダ本体とシール部材との接続部分を示す断面図、図6はシール部材を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は底面図である。図7はスライダ本体を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図、同図(c)は底面図、同図(d)は(b)図におけるD−D線断面図、同図(e)は(b)図におけるE−E線断面図である。図8はスライダのステータ貫通部を拡大して示す断面図、図9はコイルの結線図、図10はスライダの組立方法を説明するための斜視図である。
【0020】
これらの図において、符号11で示すものは、この実施の形態による単軸ロボットを示す。このロボット11は、図1〜図4に示すように、水平な一方向(以下、この方向を前後方向という)に延びるケース12と、このケース12内に設けられたリニアガイド13と、このリニアガイド13と同一方向に配置された棒状のステータ22と、この棒状のステータ22が貫通する環状のコイル21と、このコイル21を内蔵しリニアガイド13に往復動自在に支持されたスライダ本体51とを備え、このスライダ本体51と前記コイル21とを一体化して構成されたスライダ14が可動コイル形リニアモータ15により往復駆動されるものである。前記スライダ14は、図3および図4に示すように、前記コイル21を内蔵しかつステータ22が貫通するスライダ本体51と、このスライダ本体51の上端部に取付けられたテーブル52とから構成されている。
【0021】
前記リニアモータ15は、前記スライダ本体51内に設けられた後述する複数の環状のコイル21と、これらのコイル21の中心部を遊嵌状態で貫通する前記ステータ22と、前記コイル21の近傍に配設されたコイル結線用基板23などによって構成されている。前記基板23の配線回路は、リード線24(図4参照)によってロボット用制御装置25(図2参照)に接続されている。前記リード線24は、後述するスライダ14の上部から側方に延び、図1および図2に示すように、前記ケース12の側部に設けられたチェーン式ケーブル保持部材26の内部を通ってケース12の外に導出されている。
【0022】
前記ケース12は、前記前後方向に延びる細帯状に形成された底板31(図3および図4参照)と、この底板31の両側部に取付けられた一対の側壁部材32,32と、前記底板31の長手方向の両端部に取付けられた前壁部材33および後壁部材(図示せず)とによって上方に向けて開口する箱状に形成されている。
【0023】
この実施の形態によるケース12の上端部の開口12aは、ステンレス鋼によって細長い膜状に形成されたシャッター34によって上方から覆われている。このシャッター34は、ケース12内に塵埃や異物が入るのを防止するためのもので、後述するスライダ14の挿通路35(図4参照)内に挿通された状態で前記前壁部材33と前記後壁部材とに固定されている。この実施の形態によるシャッター34は、前記側壁部材32の上端面に上方から接触し、上方へ容易に撓むことができるように構成されている。ケース12の内部には、前記シャッター34によってケース上端部の開口12aが覆われることにより、前記スライダ14の前方と後方とに閉空間36,37(図3参照)が形成される。
【0024】
前記底板31の上面には、図3および図4に示すように、前記リニアガイド13が設けられている。このリニアガイド13は、底板31に固定された1本のレール部材41と、このレール部材41の上に図示していない軸受によって移動自在に支持された2個のスライド部材42とから構成されている。この軸受は、ボール循環式軸受が平行に複数条設けられたもので、スライダ本体51側に設けられている。
前記前壁部材33は、図3に示すように、前記ステータ22の前端部を支持し、前記後壁部材は、図示してはいないが、前記ステータ22の後端部を支持している。
【0025】
前記ステータ22は、図3および図4に示すように、前記前壁部材33と後壁部材とによって両端部が支持されたパイプ43と、このパイプ43の内部に嵌入された複数の永久磁石44とによって構成されている。これらの永久磁石44は、円筒状に形成されており、同じ極性の磁極が互いに対向する状態でパイプ43内に嵌合されている。この実施の形態においては、これらの永久磁石44は、軸心部を貫通する固定用ボルト45によって軸線方向の両側から挟圧され、所定の位置に固定されている。
【0026】
前記スライダ14のテーブル52は、この実施の形態による単軸ロボット11が駆動する被駆動部材(図示せず)を取付けるためのものである。このテーブル52は、前記シャッター34をケース12の開口12aから外方(上方)に遊離させるガイド部52aを備えている。このガイド部52aは、図3に示すように、上方に向けて凸になる凸曲面が形成され、この凸曲面にシャッター34の下面が摺接する状態でスライダ本体51の上面に取付けられている。このガイド部52aによってシャッター34が上方に遊離させられることにより、シャッター34の両側端とケース12との間に開放空間が形成される。テーブル52には、図4に示すように、前記開放空間を通る開放空間通過部52bが形成されている。この開放空間通過部52bは、一方がケース12内のスライダ本体51の上面に接続され、他方が被駆動部材取付用の取付座52cとして形成されている。テーブル52における取付座52cとなる部位は、前記側壁部材32の上面との間に微小なクリアランスを有する状態で側方に延設されている。クリアランスが微小であることにより、異物が外方からケース12内に侵入するのを防いでいる。
【0027】
前記テーブル52の上端部には、保護カバー52dが取付けられている。この保護カバー52dとテーブル52の上面との間に、上述したシャッター34が挿通する前記挿通路35が形成されている。また、テーブル52の上端部であって、前記ガイド部52a前方と後方には、シャッター34を前記側壁部材32の上面(開口12aの開口縁部)に密着させるためのローラ53が設けられている。スライダ14が移動するときにもシャッター34によってスライダ14の前後のケース12の上端開口が閉塞された状態を保つことができる。また、開放空間通過部52bをテーブル52に設けることにより、シャッター34を上方へ遊離させた結果生じた開放空間が略塞がれ、テーブル52とケース12との間は小さな隙間とされることにより、ケース12内を外方に対して略密閉状態とすることができる。
【0028】
前記スライダ本体51は、アルミニウム合金を材料として所定の形状に成形されており、図4および図7に示すように、下方へ向けて開放する断面コ字状に形成され、内部に前記複数のコイル21がエポキシ樹脂54によって固着されている。詳述すると、このスライダ本体51は、例えば図7(a)に示すように、互いに対向する一対の側板55,56と、これらの側板55,56の上端部どうしを接続する上板57とが一体に形成されており、内部に前記コイル21が取付けられた状態で前記リニアガイド13の二つのスライド部材42の上面に固定されている。前記両側板55,56の下端部の一端側(前端側)と他端側(後端側)には、図7(c)に示すように、前記スライド部材42に載せて固定するための取付座58が形成されている。また、前記両側板55,56におけるスライダ本体51の両端側の内面には、図5および図7(c),(d)に示すように、後述するシール部材59が嵌合する凹溝60が上下方向に延びるように形成されている。
【0029】
また、このスライダ本体51の内面と両側板55,56の外面には、スライダ14の移動方向に延びる複数のフィン61,62が一体に形成されている。スライダ本体51の内側のフィン61は、図4に示すように、前記コイル21の中心(ステータ22の軸心)を指向するように、スライダ本体51の内面に突設されている。一方、外面側のフィン62は、側方に向けて水平に突出するように前記外面に突設されている。
【0030】
このスライダ本体51の内側の横幅(図4において左右方向の幅)は、スライダ本体51のコイル21の外径より大きくなるように形成されている。一方、このスライダ本体51の外側の横幅は、前記ケース12の内部にスライダ本体51を収容させた状態で両側板55,56のフィン62の先端がケース12の側壁部材32,32に接近するように形成されている。このように形成されたスライダ本体51をケース12内のリニアガイド13に取付けることによって、スライダ本体51がケース12内を長手方向の一端側と他端側とに区画する実質的な区画壁として機能するようになる。
【0031】
スライダ本体51内に設けられた複数(この実施の形態では12個)のコイル21は、それぞれ円環状に形成されている。これらのコイル21の内径は、前記ステータ22の外径より大きくなるように形成されている。また、これらのコイル21は、図9中にC1〜C12として示すように、いわゆるU線と共通線Aとに接続される第1群に属するもの(C1,C4,C7およびC10)と、いわゆるW線と共通線Aとに接続される第2群に属するもの(C2,C5,C8およびC11)と、いわゆるV線と共通線Aとに接続される第3群に属するもの(C3,C6,C9およびC12)とに分けられ、スライダ14の移動方向に所定の順序で並べられている。
【0032】
これらのコイルC1〜C12が並ぶ順序は、第1群に属するコイル21と、第2群に属するコイル21と、第3群に属するコイル21とがこの順序で並び、かつこれらの第1群〜第3群のコイル21を一組としてこの組が複数一列に並ぶように設定されている。これらのコイル21は、図9に示すように、いわゆるスター結線によって配線されており、U相(第1群)と、W相(第2群)と、V相(第3群)の各相において、それぞれ4個のコイル21が直列に接続され、全相が互いに接続されている。図9において、符号Sはコイル21の開始端を示し、Eはコイル21の終端を示す。なお、U線、V線、W線および各コイル21の共通線Aは、それぞれ制御装置25に接続されている。また、これらのコイル21は、図3に示すように、U相のコイル21と、W相のコイル21と、V相のコイル21とからなる1組のコイル21の軸線方向の長さと、ステータ22内のそれぞれの永久磁石44の1個分の磁石全長と一致するように形成されている。
【0033】
これらのコイル21のリードは、図3および図4に示すように、コイル21の近傍に配設されたコイル結線用基板23に半田付けされ、この基板23を介してU線、V線、W線および共通線Aに接続されている。これらの配線は、前記リード線24としてスライダ14の外に導出され、制御装置25に接続されている。
【0034】
前記第1〜第3群のコイル21は、前記制御装置25によって位相が120°異なる交流電流が供給されることにより、ステータ22の軸線方向に推力を発生させる。スライダ14は、この推力によって前後方向に移動する。前記推力の大きさは、前記交流電流のピーク値に相関し、スライダ14の移動速度は、前記交流電流の周波数に相関する。制御装置25は、スライダ14に設けられたリニアセンサ(図示せず)によって検出された位置情報に基づいてスライダ14の位置を確認しながら、前記ピーク値および前記周波数を制御する。制御装置25は、例えばスライダ14を停止させる場合は、制動力が発生するように、UVW線に供給する電流を制御し、制動力を発生させる必要がない場合には、全ての群(第1群〜第3群)の電流値を0とする。
【0035】
これらのコイル21を前記スライダ本体51内に取付けるための前記エポキシ樹脂54は、スライダ本体51内の所定位置にコイル21が位置決めされている状態で液状のものをスライダ本体51内に注入し、その後、加熱することにより硬化させる。このときの液状のエポキシ樹脂54の粘度は、コイル21の素線どうしの間に含浸するように設定されている。このように流動性が高い液状のエポキシ樹脂54を断面コ字状のスライダ本体51の内部に貯留するためには、コ字状の開放部分が上方を指向するようにスライダ本体51を上下方向に反転させ、このスライダ本体51の前後方向の両端部にいわゆる堰となるシール部材59(図3および図5参照)を取付ける。このシール部材59は、エポキシ樹脂54を貯留するためばかりではなく、スライダ本体51内に嵌合することにより、樹脂注入時にコイル21をスライダ本体51内に位置決めするためにも使用している。
【0036】
この実施の形態によるシール部材59は、合成樹脂によって所定の形状に成形され、図3、図5および図6に示すように、フランジ63とボス64とが一体に形成されている。前記フランジ63は、外縁部分が全域にわたってスライダ本体51の前記凹溝60に嵌合するように形成されている。また、このフランジ63の下端部には、図3および図6(b)に示すように、前記コイル結線用基板23を取付けるための取付座65が形成されている。
【0037】
前記ボス64は、フランジ63からスライダ本体51の外側へ向けて突出するように形成されており、製造工程においてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の注入時に流出するのを防止するためのものであり、熱硬化後においては図3および図8に示すように、コイル側と外側とを画成するための仕切壁64aが形成されるとともに、内部に樹脂ベアリング66が取付けられている。前記仕切壁64aには、コイル21の内径と同径の貫通孔64bが穿設されている。前記樹脂ベアリング66は、鍔66aを有する円筒状に形成されており、前記ボス64に外側から嵌合された状態で前記鍔の移動を規制する固定用ねじ67(図3参照)によって、ボス64に外れることがないように固定されている。図8に示すように、この樹脂ベアリング66の内径D1は、ステータ22のパイプ43の外径D2より大きく、かつコイル21の内径D3より小さくなるように形成されている。このように樹脂ベアリング66をシール部材59に取付けることにより、スライダ14のステータ22に対する位置が例えばリニアガイド13内の摺動または転動部分の磨耗などにより変化したときには、樹脂ベアリング66の内周面がステータ22の外周面に接触する。このため、このような場合であっても、コイル21の内周面がステータ22に接触することがなく、コイル21の素線の絶縁膜がステータ22との接触により破れて絶縁不良を起こすことを防ぐことができる。
【0038】
ここで、コイル21をスライダ本体51にエポキシ樹脂54によって接着し固定する方法を図10によって説明する。なお、図10に示す各部材の形状は、理解を容易にするために簡略化してあり、実際の形状とは相違する。
スライダ本体51にコイル21を装着するためには、先ず、図10(a)に示すように、断面円形のロッド71とストッパー72とからなる治具73に円筒状の絶縁フィルム74を嵌合させ、次いで、同図(b)に示すように、前記絶縁フィルム74の外周面に前記一方のシール部材59を嵌合させる。前記絶縁フィルム74は、ロッド71が後述するコイル21に接着することを防ぐためのものである。この状態で、シール部材59と絶縁フィルム74の境界部分に液状のシール剤を塗布しておく。このシール剤としては、例えばエポキシ樹脂54と同等の材料やあるいはシリコン系樹脂を主成分とする材料のものを使用する。
【0039】
その後、図10(c)に示すように、複数のコイル21を前記治具73のロッド71(絶縁フィルム74の外周部)に嵌合させる。このとき、各コイル21のリードは、予めコイル結線用基板23に半田付けしておく。前記ロッド71の外径は、絶縁フィルム74の厚みを加えた状態で、コイル21の内径と、シール部材59の前記貫通孔64bの孔径と同径になるように形成されている。このため、このロッド71にコイル21とシール部材59とを嵌合させることによって、シール部材59とコイル21とを同一軸線上に位置付けることができる。
【0040】
コイル21をロッド71に装着した後、図10(d)に示すように、他方のシール部材59を前記ロッド71に嵌合させ、このシール部材59と絶縁フィルム74との境界部分に前記液状のシール剤を塗布し、両端側に位置する二つのシール部材59に前記基板23を取付用ねじ23aによって固定する。しかる後、図10(e)に示すように、スライダ本体51の開口部分に前記二つのシール部材59をそれぞれ嵌合させる。このシール部材59がスライダ本体51内に嵌合することにより、全てのコイル21がスライダ本体51の仮想軸心(ステータ22の軸心)と同一軸線上に位置付けられる。
【0041】
次に、スライダ本体51をその開口部が上方を指向する状態として前記開口部内に液状のエポキシ樹脂54を注入する。この注入行程では、コイル結線用基板23をエポキシ樹脂54内に埋没させる。
このようにエポキシ樹脂54をスライダ本体51内に注入した後、この熱硬化性のエポキシ樹脂54を硬化させるために、スライダ本体51を加熱炉(図示せず)などに装填する。そして、前記エポキシ樹脂54を加熱して硬化させ、冷却後に前記治具73をスライダ本体51側から引抜いて取外す。このように治具73を取外した後、樹脂ベアリング66を両シール部材59に取付けることによって、スライダ本体51が完成する。このスライダ本体51は、前記ステージ52が取付けられた後に前記ステータ22が挿通され、このステータ22とともにケース12に装着される。
【0042】
上述したように構成された単軸ロボット11においては、スライダ14内のコイル21に制御装置25によって所定の交流電流が供給されることにより、スライダ14がリニアガイド13に沿って前後方向に移動する。この移動時、すなわち、コイル21が通電されるときにはコイル21が発熱する。
コイル21の熱の大部分は、エポキシ樹脂54を介してスライダ本体51に伝導され、このスライダ本体51内を内側から外側へ伝導した後にスライダ本体51の外表面からケース12内に放散する。この実施の形態によるスライダ本体51は、内面に複数のフィン61が突設されているから、フィンが設けられていない場合に較べるとエポキシ樹脂54と接する部位の表面積が増大する。
【0043】
このため、この単軸ロボット11においては、前記エポキシ樹脂54とスライダ14との接着部分の面積、言い換えれば熱伝達部分の面積が増大するから、熱抵抗が低減され、コイル21の熱がエポキシ樹脂54を介してスライダ本体51に伝わり易くなる。この結果、この単軸ロボット11のコイル21は、従来の単軸ロボットのコイルに較べて冷却され易くなる。
【0044】
この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ本体51が導電性を有する材料によって形成されているために、スライダ14が移動するときにスライダ本体51内に微弱ながらも渦電流が発生する。スライダ本体51の内面に突設された前記フィン61と、スライダ本体51における前記フィン61の基部に隣接する壁部分のうち、渦電流が発生し易いのは壁部分である。この壁部分は、ステータ22との距離が相対的に長くなるから、この壁部分内で発生する渦電流は相対的に小さくなる。また、前記フィン61は、スライダ14の移動方向の断面積が相対的に小さくなるように形成されているから、このフィン61で発生する渦電流を無視できるように小さく抑えることができる。
したがって、この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ14(スライダ本体51)で渦電流が発生することがないか、発生したとしても小さく抑えることができる。
【0045】
さらに、この実施の形態による単軸ロボット11は、スライダ本体51によってケース12内が前方と後方とに仕切られているから、スライダ14がケース12内を例えば前方から後方へ移動することによって、ケース12内の空気がスライダ本体51とケース12との間の隙間を通って前記後方から前方へ流れる。この空気は、スライダ本体51の外面に突設されたフィン62に沿い、一部がこのフィン62に接触する状態で流れる。このため、スライダ本体51に伝達されたコイル21の熱をフィン62によってスライダ本体51の外に効率よく放熱することができる。スライダ本体51は鋳造により形成してもよいが、フィン61およびフィン62を長手方向に形成しているので、フィン形状を設けた口金型からの押し出し棒を切断することにより価格を抑えて形成すると良い。
【0046】
加えて、この実施の形態による単軸ロボット11は、前記スライダ14がケース12内を一端側と他端側とに区画する実質的な区画壁として機能するから、スライダ本体51が前進したときに前方に位置する気室(閉空間36)の空気が圧縮されるようになり、この気室内の空気の一部が例えばケース12の側板55,56とシャッター34との間の隙間を通ってケース12外に排出される。この場合、ケース12に異物の吸入を阻止するチャンバーが途中に設けられた換気管(図示せず)をケース12内の少なくとも一方の気室設けることにより、この換気管を通ってケース12内と外が連通することになる。このため、この構成を採ることにより、スライダ本体51がケース12内で往復することによるポンプ作用によってケース12内を換気することができ、換気を行うためのファンを使用することなく、ケース12内の温度を外気温度に保つことができる。
【0047】
なおさらに、この実施の形態における単軸ロボットにおいては、シール部材59を外形円筒状とすることなく異形形状とすることで、スライダ本体51内部の空間を大きく取り、渦電流による動作抵抗を小さくすることができた。また、シール部材59の外形を円筒状でなく異形形状としており、コイル21、21‥‥と絶縁フィルム74との間で使用している液状シールを、シール部品59の外形部とスライダ本体51との間でも使用している。シール部材59の外縁には液状シールのシール性を確実なものとするために段を設けている。しかし、シール性の向上のためには段つき形状を採る方法のほかに、溝を設けても良い。
【0048】
また、この実施の形態におけるスライダ本体51は全長にわたってコの字状断面を採用しており、絶縁フィルム74、シール部材59およびコイル結線用基板23のスライダ本体51内への組付け作業性が良い。特に、スライダ本体51へコイル21、21‥‥を組込む前に結線作業をすることができ、作業性および製品信頼性が向上する。
【0049】
この実施の形態における単軸ロボットにおいては、シール部材59に樹脂ベアリング66を嵌合保持させるようにしているので、コイル21の中心穴のセンター軸と樹脂ベアリング66の中心軸を完全に一致させることができる。これにより、樹脂ベアリング66の機能を十分に果たすことができるとともに、下記する第2の実施の形態のベアリングホルダ92を使用しておらず、部品点数を減らすことができる。本実施の形態では、シール部材59の外縁に設けた段つき形状をスライダ本体51の溝に嵌合させることで、下記する第2の実施の形態のストッパープレート91をも廃止している。また、樹脂ベアリング66の内周に周方向に複数箇所、長手方向の縦溝を形成しており、スライダ14の移動に伴い、スライダ本体51がケース12内で往復することによるポンプ作用により、ステータ22の外周と樹脂ベアリング66内周の間のクリアランスおよび縦溝、ステータ22外周と絶縁フィルム74内周の間のクリアランスを通り、ケース12内の空気が往復流動し、コイル21、21‥‥を冷却することができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
本発明に係る単軸ロボットは図11ないし図13に示すように構成することができる。
図11は単軸ロボットの他の実施の形態を示す縦断面図、図12はスライダの横断面図、図13はスライダ本体を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は側面図、同図(c)は背面図、同図(d)は(b)図におけるD−D線断面図、同図(e)は(b)図におけるE−E線断面図である。これらの図において、前記図1〜図10によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0051】
この実施の形態による単軸ロボット11のケース12は、図12に示すように、上方に向けて開放する断面コ字状に形成されて前後方向に延びるベースブロック81と、このベースブロック81の両側部に取付けられた一対のカバー82,82とから構成されている。前記ベースブロック81の両側部の上面には、リニアガイド13のレール部材41がそれぞれ固定されている。これらのレール部材41に移動自在に支持された一対のスライド部材42は、横方向に延びるプレート83によって互いに接続されている。このプレート83は、スライダ本体51の上端部に取付けられ、テーブル52を支持している。また、このプレート83の上面には、前後方向に延びる複数の放熱用フィン84が立設されている。
【0052】
この実施の形態によるスライダ本体51は、前記プレート83から下方に延び、前記ベースブロック81の凹部85内に挿入されている。このスライダ本体51は、図13に示すように、前後方向(スライダ14の移動方向)の端部86,86を除く中央部分87が上方に向けて開放する断面コ字状に形成されている。前記両端部86は、図13(b)に示すように、このスライダ本体51の両側板55,56の上端部どうしを接続するクロスメンバ88が設けられており、図13(e)に示すように、閉じた断面形状となるように形成されている。すなわち、この実施の形態によるスライダ本体51は、第1の実施の形態で示したスライダ本体に較べると剛性が高く、相対的に大型に形成することが可能な構成が採られている。前記中央部分87、すなわちスライダ本体開口51aの長さLは、コイル21、21‥‥の全長より長くなるように形成されている。
【0053】
前記クロスメンバ88が設けられた前記両端部86は、円形孔89{図13(c)参照}が穿設され、この円形孔89内に、円環状に形成されたシール部材59(図11参照)が嵌合されている。このスライダ本体51は、前記シール部材59と両側板55,56とによって囲まれた空間内にコイル21とコイル結線用基板23とが配設されるとともに、エポキシ樹脂54が充填されている。前記基板23は、スライダ本体51の上端部に形成された取付座90{図14および図13(a),(d)参照}に取付用ねじ23a(図11参照)によって取付けられている。
【0054】
この実施の形態において、コイル21をスライダ本体51内の所定の位置に取付けるためには、第1の実施の形態を採るときと同様に治具73を使用して行う。すなわち、スライダ本体51にコイル21を取付けるためには、先ず、前記治具73に絶縁フィルム74と、二つのシール部材59,59と、複数のコイル21,21‥‥とを装填することによってコイル組立体を形成する。
【0055】
次に、前記コイル組立体をスライダ本体51の一方の円形孔89に外側から挿入するとともに、スライダ本体51内で軸線方向に平行移動させ、前端部のシール部材59と後端部のシール部材59とをスライダ本体51の両端部の86,86の円形孔89にそれぞれ嵌合させる。この状態で、図11に示すように、スライダ本体51の前端面と後端面とに外周にOリングを装着したストッパープレート91と、樹脂ベアリング66を有するベアリングホルダ92とを取付ける。前記ストッパープレート91は、樹脂ベアリング66の移動を規制するためのものである。その後、各コイル21のリード線をコイル結線用基板23に半田付けする。この基板23には、制御装置25からのU,V,Wおよび共通線Aを予め結線しておく。前記半田付けは、各コイル21の両端(図9において符号S,Eで示す両端)をそれぞれ前記基板上の所定端子部に接続することによって行う。この半田付け作業が終了することにより、図9に示す回路が構成される。次に、前記基板23をスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入して固定し、液状のエポキシ樹脂54をスライダ本体51内に注入する。このエポキシ樹脂54を加熱することにより硬化させた後に治具73を取外す。
【0056】
なお、図13におけるスライダ本体開口51aの長手方向長さLが、装着する全てのコイル21、21‥‥の全長、および基板23の長手方向長さより長い場合には、上述した第1の実施の形態と一部同じようにスライダ14を形成する。すなわち、治具73を互いに脱着可能な3ピースで形成し、中央のピースに絶縁フィルム74、複数のコイル21、21‥‥とを装填してコイル組立体を形成し、U、V、Wおよび共通線Aが結線された基板23へ各コイル21の両端を半田付けし、コイル組立体と基板23を一緒にスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し、基板23をスライダ本体51に固定する。
【0057】
その後、中央のピースの両側から、外周にOリングを取付けたシール部材59と、樹脂ベアリング66を有し外周にOリングを取付けたベアリングホルダ92とを装着した端部ピースをそれぞれ組付け、ストッパープレート91をスライダ本体51に取付ける。その後からエポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化する。中央のピース、両側のピースからなる治具73を除去して、スライダ14を完成させる。シール部材59とベアリングホルダ92を円形孔89に嵌合させることと、ストッパープレート91を取付けることで、コイル21のスライダ本体51に対する位置決めができる。
【0058】
また、スライダ本体開口51aの長手方向長さLが、装着する全てのコイル21、21と両シール部材59との全長より長い場合には、治具73を互いに脱着可能な3ピースで形成し、中央のピースに絶縁フィルム74、複数のコイル21、21‥‥、両シール部材59とを装填してコイル組立体を形成し、コイル組立体を一緒にスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し、樹脂ベアリング66を有し、外周にOリングを取付けたベアリングホルダ92を装着した端部ピースをそれぞれ組付け、ストッパープレート91をスライダ本体51に取付ける。
【0059】
このうえで、U、V、Wおよび共通線Aが結線され、各コイル21の両端が半田付けされた基板23も、スライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入し固定し、エポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化する。基板23をスライダ本体開口51aからスライダ本体51内に挿入しない場合には、エポキシ樹脂54をスライダ本体内に注入し、その後加熱硬化した後、U、V、Wおよび共通線Aが結線された基板23へ各コイル21の両端を半田付けする。
【0060】
前記スライダ本体51におけるエポキシ樹脂54が充填される部分の内面は、図12に示すように、ステータ22の軸線方向から見てコイル21と同心円状に形成され、複数のフィン61が突設されている。これらのフィン61は、コイル21の中心部を指向しかつスライダ14の移動方向に延びるように形成されている。また、この実施の形態においても、スライダ本体51の外面に複数の放熱用フィン62が立設されている。
この実施の形態で示したようにスライダ14を構成しても第1の実施の形態を採る場合と同等の効果を奏する。
【0061】
上述した各実施の形態ではケース12のシャッター34と側板55との間に形成される隙間によりケース12内が少しずつ換気される例を示したが、ケース12の前壁部材33と後壁部材の少なくとも一方にケース12の内外を連通する連通管(図示せず)を設け、この連通管を用いてケース12内の換気を行うこともできる。また、本発明に係る単軸ロボット11は、上述したようにスライダ14の移動に依存する換気装置を装備する他に、電動ファンによって強制的にケース12内を換気する換気装置を装備することができる。この構成を採る場合は、ケース12内の温度が予め定めた温度を上回ったときに電動ファンによって換気を行うことができる。これらの連通管や換気装置には、外部の塵埃のケース12内への侵入を防止するフィルタを設ける。
【0062】
上述した各実施形態においては、コイル21をエポキシ樹脂54にスライダ本体51に固定する例を示したが、この樹脂材料としては、エポキシ樹脂に限定されることはなく、耐熱性、絶縁性および機械的強度の条件を満たすものであれば、どのようなものでも用いることができる。また、図12に示すように、テーブル52のプレート83への接続部に断熱材93を介装し、テーブル52にコイル21の熱が伝達されることを防止するようにすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る単軸ロボットの平面図である。
【図2】本発明に係る単軸ロボットの側面図である。
【図3】単軸ロボットの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】スライダの横断面図である。
【図5】スライダ本体とシール部材との接続部分を示す断面図である。
【図6】シール部材を示す図である。
【図7】スライダ本体を示す図である。
【図8】スライダのステータ貫通部を拡大して示す断面図である。
【図9】コイルの結線図である。
【図10】スライダの組立方法を説明するための斜視図である。
【図11】単軸ロボットの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図12】スライダの横断面図である。
【図13】スライダ本体を示す図である。
【図14】従来の単軸ロボットのスライダの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11…単軸ロボット、12…ケース、13…リニアガイド、14…スライダ、15…可動コイル形リニアモータ、21…コイル、22…ステータ、44…永久磁石、51…スライダ本体、52…テーブル、54…エポキシ樹脂、61,62…フィン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアガイドと、このリニアガイドと同一方向に配置された棒状のステータと、この棒状のステータが貫通するコイルと、このコイルを内蔵しリニアガイドに往復動自在に支持されたスライダ本体とを備え、このスライダ本体の内面と前記コイルとの間に含浸させた合成樹脂によって前記コイルと前記スライダ本体とを一体化して構成されるスライダが、前記コイルと棒状のステータからなる可動コイル形リニアモータにより往復駆動される単軸ロボットにおいて、前記スライダ本体の内面に複数のフィンを突設したことを特徴とする単軸ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の単軸ロボットにおいて、フィンをコイルの中心部を指向しかつスライダの移動方向に延びるように形成してなる単軸ロボット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の単軸ロボットにおいて、リニアガイドと前記棒状のステータを開口を設けたケース内に収納し、前記開口に外方からこの開口を塞ぐ可撓性のシャッターを設け、前記スライダに前記シャッターを開口から外方に遊離させるガイド部を設けることにより前記スライダを前記シャッターの開口からの遊離部と前記ケースとの開放空間を介してケース内からケース外に延在させるようにしたことを特徴とする単軸ロボット。
【請求項4】
請求項3記載の単軸ロボットにおいて、前記ケースの内部空間を前記スライダによって二つに仕切るとともに、前記スライダ本体の外面にスライダの移動方向に延びるフィンを突設してなる単軸ロボット。
【請求項5】
請求項4記載の単軸ロボットにおいて、ケース内の二つの空間のうち少なくとも一方の空間をケースの外に連通させてなる単軸ロボット。
【請求項1】
リニアガイドと、このリニアガイドと同一方向に配置された棒状のステータと、この棒状のステータが貫通するコイルと、このコイルを内蔵しリニアガイドに往復動自在に支持されたスライダ本体とを備え、このスライダ本体の内面と前記コイルとの間に含浸させた合成樹脂によって前記コイルと前記スライダ本体とを一体化して構成されるスライダが、前記コイルと棒状のステータからなる可動コイル形リニアモータにより往復駆動される単軸ロボットにおいて、前記スライダ本体の内面に複数のフィンを突設したことを特徴とする単軸ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の単軸ロボットにおいて、フィンをコイルの中心部を指向しかつスライダの移動方向に延びるように形成してなる単軸ロボット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の単軸ロボットにおいて、リニアガイドと前記棒状のステータを開口を設けたケース内に収納し、前記開口に外方からこの開口を塞ぐ可撓性のシャッターを設け、前記スライダに前記シャッターを開口から外方に遊離させるガイド部を設けることにより前記スライダを前記シャッターの開口からの遊離部と前記ケースとの開放空間を介してケース内からケース外に延在させるようにしたことを特徴とする単軸ロボット。
【請求項4】
請求項3記載の単軸ロボットにおいて、前記ケースの内部空間を前記スライダによって二つに仕切るとともに、前記スライダ本体の外面にスライダの移動方向に延びるフィンを突設してなる単軸ロボット。
【請求項5】
請求項4記載の単軸ロボットにおいて、ケース内の二つの空間のうち少なくとも一方の空間をケースの外に連通させてなる単軸ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−6058(P2006−6058A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181385(P2004−181385)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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