説明

単軸ロボット

【課題】シャッタ部材を円滑に案内できるようにする一方で、可動部材の構成を簡素化し、生産性やメンテナンス性を向上させる。
【解決手段】単軸ロボットは、ケース部材と、これに収容される可動部材10と、ケース部材の開口部を塞ぐシャッタ6とを備える。可動部材10は、一対の工具取付部12(突出部)および樹脂材料からなるシャッタ案内面を備える本体11と、シャッタ案内面Fgを覆うように本体11に装着されてシャッタ通過用の隙間Sを形成する樹脂材料からなるテーブルカバー16とを含む。本体11およびカバー16は、カバー16を本体11の上部に重ねた状態で互いに係合し、カバー16を本体11に対して係止する係止部をそれぞれ備える。カバー16は、その上面部に、工具取付部12に取付けられる工具が当接することにより本体11に対するカバー16の上方への変位を規制する変位規制部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動により可動部材を一軸方向に移動させる単軸ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータ駆動によりスライダ(可動部材)を一軸方向に移動させるように構成された単軸ロボットが知られており、例えば特許文献1には、この種の単軸ロボットの一形態が記載されている。この文献1に記載される単軸ロボットは、上方に開口する略直方体形状のケース部材(ハウジング)を有し、このケース部材の内部にスライダ及びその駆動手段が収容されている。可動部材の一部は前記開口から外部に突出しており、この突出部分に各種工具や機器等の取付部が設けられている。
【0003】
ケース部材の上記開口は薄板状のシャッタ部材(シールプレート)で塞がれている。このシャッタ部材は、可動部材の内部、詳しくは可動部材の本体部分とこれに装着されるカバー部材(スライダカバー)との隙間を通過した状態でその両端部(一軸方向両端部)でケース部材等に固定されており、これによって可動部材の移動を許容しつつ上記開口を塞いでケース内部への異物侵入等を防止できるようになっている。なお、可動部材の本体部分や上記カバー部材には、ガイドローラが設けられおり、これらのガイドローラでシャッタ部材を案内することにより、可動部材とシャッタ部材との摩擦抵抗を低減しつつ可動部材を円滑に移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−197304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の単軸ロボットでは、構成部品を減らして組立時の作業工数を低減することが生産コストの低廉化、生産性やメンテナンス性の向上を図る上で望ましい。しかし、上記文献1に記載の単軸ロボットでは、ビス等でガイドローラをカバー部材に組付けた上で、さらにこのカバー部材をビス等で可動部材に固定する必要があり、必ずしも上記の要請に応え得る構成とはなっていない。従って、この点に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、可動部材においてシャッタ部材を円滑に案内できるようにする一方で、当該可動部材の構成をより簡素化し、生産性やメンテナンス性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、上面に一軸方向に延びる開口部を備えたケース部材と、このケース部材に収容されて前記開口部に沿って移動可能に支持される可動部材と、この可動部材を前記一軸方向に貫通するように配置されて前記開口部を塞ぐシャッタ部材とを備えた単軸ロボットにおいて、前記可動部材は、前記開口部から上方に突出して前記一軸方向と直交する方向である幅方向に並ぶ一対の工具取付部およびこれら工具取付部の間で前記シャッタ部材を支持しながら前記一軸方向に案内する樹脂材料から形成されるシャッタ案内面とを備える可動部材本体と、樹脂材料から形成され、前記シャッタ案内面を覆うように前記可動部材本体上に配置されて前記シャッタ案内面との間に前記シャッタ部材を貫通させるための隙間を形成するカバー部材と、を含み、前記可動部材本体およびカバー部材は、前記カバー部材を前記可動部材本体の上部に重ねた状態で互いに係合し、前記隙間を形成した状態で前記カバー部材を可動部材本体に対して係止する係止部をそれぞれ備えており、前記カバー部材は、その上面部にカバー部材の変位を規制するための規制部を備え、この規制部は、前記工具取付部に取付けられる工具又は機器が当接することにより前記可動部材本体に対するカバー部材の上方への変位を規制するように形成されているものである。
【0008】
この構成では、シャッタ部材を通過させるための可動部材内の隙間が、それぞれ樹脂材料からなるシャッタ案内面及びカバー部材により形成されており、これによりシャッタ部材と可動部材との摩擦抵抗が抑えられる。従って、従来のようなガイドローラを設けることなくシャッタ部材を円滑に案内することができる。しかも、カバー部材を可動部本体に簡単に装着することができる。その上、工具取付部に工具等が組付けられると、規制部に工具が当接してカバー部材の上方への変位(浮き上がり)が規制されるので、カバー部材と可動部材本体との係止状態を確実に維持することができる。
【0009】
上記構成において、前記カバー部材は、前記シャッタ部材が前記シャッタ案内面に沿って摺接するように、前記一軸方向における前記シャッタ案内面よりも外側の位置で前記シャッタ部材を上側から押圧する押圧部を備えている。
【0010】
この構成では、シャッタ案内面の両側でそれぞれカバー部材の各押圧部によりシャッタ部材が押さえ込まれ、これによりシャッタ部材がシャッタ案内面に沿って確実に摺接し、シャッタ部材が振動等を伴うことなく安定的に案内されることとなる。この構成では、シャッタ部材の反発力でカバー部材に上向きの力が作用するが、上記のように工具取付け後は、規制部に工具が当接してカバー部材の上方への変位(浮き上がり)が規制される構成となっている結果、カバー部材と可動部材本体との係止状態が意図せず解除されるといった不都合が未然に防止されることとなる。
【0011】
なお、上記構成において、前記可動部材本体は、前記工具取付部を有する母体部分に形成される所定の載置面上に載置されることにより前記シャッタ案内面を形成する案内面構成部材を含み、この案内面構成部材は、前記シャッタ案内面に沿って案内されるシャッタ部材により前記載置面に押し付けられることによって上下方向への変位が規制されるものであるのが好適である。
【0012】
この構成によれば、可動部材本体のうちシャッタ案内面の部分だけを樹脂材料により構成することができるので、他の部分を金属材料で構成することで、可動部材本体の強度を確保しつつシャッタ部材を円滑に案内できるようになる。特に、この構成では、可動部材本体の母体部分に案内面構成部材を載置し、これをシャッタ部材により押さ込む構成であるため、ビス等を用いることなく案内面構成部材を前記母体部分に保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の単軸ロボットによれば、可動部材にガイドローラを設けることなくシャッタ部材を円滑に案内することができる。しかも、ビス等を用いることなくカバー部材を簡単に可動部材本体に装着することができ、また、その装着状態を長期的に良好に維持することができる。従って、可動部材の構成をより簡素化することができ、また、生産性やメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る単軸ロボットを示す平面図である。
【図2】単軸ロボットを示す側面図である。
【図3】単軸ロボットを示す図1のIII−III線断面である。
【図4】単軸ロボットを示す図3のIV−IV線断面である。
【図5】可動部材を示す分解斜視図である。
【図6】可動部材を示す図3の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0016】
図1〜図3は、本発明に係る単軸ロボットを概略的に示しており、図1は平面図、図2は側面図、図3は断面図でそれぞれ単軸ロボットを示している。
【0017】
同図に示す単軸ロボットは、一軸方向に延びる細長のケース部材1と、このケース部材1に直線的に移動可能に支持される可動部材10と、この可動部材10を駆動するための駆動手段とを含む。なお、この実施形態では、便宜上、ケース部材1が延びる一軸方向を前後方向(図1中の左方を「前」、右方を「後」とする)、これと直交する水平な方向(図1の上下方向)を幅方向(又は左右方向)として説明する。
【0018】
前記ケース部材1は、主にガイドレール2等からなるベース部材と、このベース部材の幅方向両側にそれぞれ配置されて当該ベース部材に沿って延びる一対の側面カバー3,3と、ベース部材の前後方向末端部分にそれぞれ固定される端面カバー4,5(適宜、前端カバー4、後端カバー5と呼ぶ)とを含み、前後方向に延びる断面矩形の箱形形状を有している。
【0019】
可動部材10は、このケース部材1の内部に収容され、前記ガイドレール2に移動可能に支持されている。具体的には、図4に示すように、可動部材10はその下面に一対のスライダ101,101を備えており、これらスライダ101,101がガイドレール2を幅方向両側から挟み込んだ状態でそれぞれ当該ガイドレール2に対して摺動可能に係合している。これにより可動部材10がガイドレール2に対して移動可能に支持され、駆動手段により駆動されるようになっている。
【0020】
可動部材10の前記駆動手段は、可動部材10の後記本体11に組込まれ固定されるナット部材21と、ガイドレール2に沿って前後方向に延び、かつ前記ナット部材21に螺合挿入されるねじ軸22と、このねじ軸を回転駆動するためのモータ24とを含む。つまり、駆動手段は、モータ24によるねじ軸22の正逆回転駆動を、ナット部材21と前記ガイドレール2とで前後方向の推進力に変換し、この推進力により可動部材10を移動させる。
【0021】
前記ねじ軸22及びモータ24は、それぞれガイドレール2に固定されている。詳しくは、ガイドレール2の前後方向両端部に支持ブロック26がボルトB11により、支持ブロック27が不図示のボルトによりそれぞれ固定されており、前記ねじ軸22の前端が軸受23aを介して前側の支持ブロック26(適宜、前側ブロック26という)に回転可能かつ軸方向に固定(拘束された状態で)支持されると共に、ねじ軸22の後端が軸受23bを介して後側の支持ブロック27(適宜、後側ブロック27という)に回転可能かつ軸方向に支持されている。そして、モータ24がねじ軸22の前端側に配置されてモータ取付用のブラケット28を介して前側ブロック26に固定されている。前側ブロック26及びブラケット28には貫通穴261,281が形成されており、モータ24の出力軸24aとねじ軸22の前端とがこれら貫通穴261,281を通じて互いに対向し、この状態でカップリング25を解して出力軸24aとねじ軸22とが互いに連結されている。この構成によってねじ軸22がモータ24により回転駆動されるようになっている。
【0022】
なお、図2及び図3に示すように、ケース部材1を構成する前記カバー3〜5のうち、前端カバー4はブラケット28を挟み込むように前側ブロック26にボルトB1で固定され、後端カバー5は後側ブロック27にボルトB2で固定されている。詳しく図示していないが、端面カバー4,5にはそれぞれ側面カバー3,3の嵌合部が形成されており、当該嵌合部に各側面カバー3,3の末端部分が嵌合することにより、各側面カバー3,3が両端面カバー4,5の間に挟持され、前後方向に延びる箱形形状の前記ケース部材1が構成されている。
【0023】
前端カバー4は、図3に示すように、カバー本体部4Aと蓋部4Bとを含み、前記側面カバー3と協働してモータ24を収容するための収容部を形成している。
【0024】
カバー本体部4Aは、モータ24の単軸ロボットの前端面を形成し、かつ前記側面カバー3,3との嵌合部を具備する前面部40と、その下端から後方に延びて前記モータ24の下方を覆う下面部41とを有しており、当該下面部41の先端を前記ブラケット28に突き当てた状態で当該ブラケット28の図外の嵌合部に嵌合しており、この状態で前面部40に係止された前記蓋部4BがボルトB1により前側ブロック26に固定されることによって蓋部4Bと一体に前側ブロック26及びブラケット28に固定されている。
【0025】
なお、図4に示すように、前側ブロック26より後側の部分において、両側面カバー3,3の上面部33、33の間にはスペースが形成されており、これによりケース部材1の上面に前後方向に延びる開口部1aが形成されている。そして、前記可動部材10がその一部を前記開口部1aからケース部材1の上方に突出させた状態で前記ケース部材1に収容されている。なお、前記開口部1aのうち前側ブロック26より前方部分の開口幅は、ブラケット28やモータ24の幅より大きく、前記蓋部4Bはこの開口部1aの前方部分を上方から塞ぐように設けられている。
【0026】
図4〜図6に示すように、可動部材10は、ガイドレール2に移動可能に支持される本体11(本発明に係る可動部材本体に相当する)と、この本体11のうちケース部材上方に突出する部分(テーブル部11aと称す)に装着されるテーブルカバー16(本発明に係るカバー部材に相当する)とを含む。
【0027】
テーブル部11aには、その幅方向両端にそれぞれ前後方向に延びる一対の工具取付部12が形成されている。これらの工具取付部12は、テーブル部11aの他の部分よりも上方に突出しており、それぞれ略水平な工具取付面が上端部に形成されている。各工具取付面にはそれぞれ複数のねじ孔12aが穿設されており、これにより用途に応じた各種工具や機器等が可動部材10に対して取付可能となっている。
【0028】
テーブル部11aのうち両工具取付部12の間は、後記シャッタ6を支持しつつ案内するためのシャッタ案内面Fg(図5に示す)となっている。このシャッタ案内面Fgは、工具取付部12等を有する本体11の金属製の母体部分に樹脂材料から形成される板状の案内面形成部材14が組付けられることにより、この案内面形成部材14の上面により形成されている。詳しくは、図6に示すように、上記テーブル部11aのうち両工具取付部12の間の部分に案内面形成部材14の載置面111が形成され、案内面形成部材14の下面に突設されたボス14aを前記載置面111に形成された凹部112に若干の締代を持って差し込むことで、案内面形成部材14が当該載置面111上に載置固定されている。これにより各工具取付部12の間に案内面形成部材14が前後左右に位置決めされた状態で載置され、この案内面形成部材14の上面が上記シャッタ案内面Fgとなっている。
【0029】
前記テーブルカバー16は、全体が弾性を有する樹脂材料からなり、テーブル部11aのうち前記工具取付部12以外の部分を覆うように形成されている。具体的には、図1及び図5に示すように、テーブルカバー16は、両工具取付部12の間に介在してシャッタ案内面Fgを覆う中央部16aとその前後両端に設けられて両工具取付部12を前後両側から挟む挟持部16b,16bとを一体に備えた平面視H形の形状を有している。各挟持部16b,16bのうち各工具取付部12の前後端面に対向する部分にはそれぞれフック18が一体形成される一方、各工具取付部12の前後端面のうち前記フック18に対応する部分には係止溝12bがそれぞれ形成されており、各フック18が係止溝12bに入り込むことによりテーブルカバー16がテーブル部11aに係止されている(図2参照)。つまり、中央部16aがシャッタ案内面Fgに重なるようにテーブルカバー16をテーブル部11aに重ね、中央部16aを下方に押さえた状態で、フック18が一体形成されている挟持部16b,16bを上方に弾性変形させると4箇所のフック18がそれぞれ前後方向外方に広がり、当該フック18がそれぞれテーブル部11aの側面部分の係止溝12bに係合可能となり、挟持部16b,16bの上方への弾性変形を解除することによってテーブルカバー16がテーブル部11aに装着されている。なお、この実施形態では、前記フック18及び係止溝12bが本発明に係る係止部に相当する。
【0030】
このようにテーブル部11aに装着されたテーブルカバー16と前記シャッタ案内面Fg(案内面形成部材14)の間に、可動部材10を前後方向に貫通する上下方向に扁平な隙間Sが形成され、シャッタ6(本発明に係るシャッタ部材に相当する)がこの隙間Sを貫通するように配置されている。
【0031】
シャッタ6は、ケース部材1の前記開口部1aを塞ぐものである。シャッタ6は、前後方向に細長でかつ可撓性を有するステンレス製の薄板からなり、図1及び図3に示すに、ケース部材1の上面部分に配置され、可動部材10の上記隙間Sを通過した状態で、その前後両端が上記支持ブロック26,27に対して固定されている。具体的には、シャッタ6は、その前端部が前記前側ブロック26に形成されたボス262に係止された状態で当該前側ブロック26と前端カバー4(蓋部4B)との間に挟持されている。また、後端部が後側ブロック27と後端カバー5との間に差し込まれた状態で、前記ボルトB2により後端カバー5と共に後側ブロック27に固定されている。これによりシャッタ6がその前後両端のみで固定され、可動部材10の移動を許容しつつ上記開口部1aを塞いでケース部材1内への異物侵入等を防止するようになっている。
【0032】
シャッタ案内面Fg(案内面形成部材14の上面)及びテーブルカバー16の下面は、それらの高さが前後方向に変化するように、具体的にはテーブル部11aの前後方向中間位置が最も高く、当該中間位置から前後方向両端に近づくほど低くなるように形成されている。これにより前後方向に沿った前記隙間Sの断面形状が上向きに凸となる湾曲した形状に形成されている。従って、可動部材10が移動すると、シャッタ案内面Fgに沿ってシャッタ6が持ち上げられ、その前後両側では前記開口部1aがシャッタ6により閉じられることとなる。
【0033】
テーブルカバー16のうちその前後方向両端はシャッタ案内面Fgよりも外側に延設されており、当該部分にシャッタ6の押圧部161,161が一体に形成されている。これらの押圧部161,161は、その下面の高さ位置がシャッタ案内面Fgの前後両端の高さ位置よりも低くなるように形成されている。つまり、シャッタ案内面Fgの前後外側の位置で前記押圧部161,161によってシャッタ6を下方に押さえ込んでシャッタ案内面Fgにシャッタ6を摺接させることで、シャッタ6の振動等の発生が防止され、可動部材10の移動時の静穏化が図られている。
【0034】
なお、テーブルカバー16の上面部は、その下面と同様に、前後方向中間位置が最も高く、当該中間位置から前後方向両端に近づくほど低くなるように形成されている。そして、図5に示すように、前記中央部16aの幅方向両端部には、上方に突出して前後方向に延びる変位規制部17,17(本発明に係る規制部に相当する)が一体に形成されている。
【0035】
これらの変位規制部17,17は、テーブルカバー16を上下方向に拘束するためのものである。すなわち、この変位規制部17,17の上部には前記工具取付部12の工具取付面とほぼ面位置となる面が形成されており、工具取付部12に工具や機器(図4、図6中に二点鎖線で示す)が取付けられると、当該工具が変位規制部17,17に上側から当接し、本体11に対するテーブルカバー16の上方への変位が規制されるようになっている。
【0036】
以上のような単軸ロボットによれば、可動部材10の本体11とこれに装着されるテーブルカバー16との間に隙間Sが形成され、この隙間Sを通過するようにシャッタ6が設けられるが、上記のように、可動部材10のうちシャッタ6を案内する部分、つまりシャッタ案内面Fgおよびテーブルカバー16(押圧部161)が共に樹脂材料により形成されているため、ガイドローラを設けることなくシャッタ6を円滑に案内することができる。しかも、テーブルカバー16は、上記の通り、これをテーブル部11aの上部に重ねて押さえ込むだけで本体11に装着することができるため、ビス等を用いることなく簡単に本体11に組付けることができる。
【0037】
従って、ビス等でカバー部材にガイドローラを組付けた上で、さらにこのカバー部材をビス等で可動部材に固定する必要がある従来のこの種の単軸ロボットと比較すると、シャッタ6を円滑に案内する一方で、可動部材10の構成を簡素化し、単軸ロボットの生産性やメンテナンス性を向上させることができるという利点がある。
【0038】
その上、この単軸ロボットでは、テーブルカバー16に変位規制部17,17が形成されており、テーブル部11a(工具取付部12)に工具が取付られると、当該変位規制部17,17に工具が当接し、これによりテーブルカバー16の上方への変位、つまり浮き上がりが防止されるため、上記のようにビス等を用いることなく簡単にテーブルカバー16を本体11に係止するようにしながらも、当該係止状態が意図せず解除されるといった不都合を確実に防止でき、その結果、シャッタ6を長期的に安定して案内することができるという利点がある。特に、この単軸ロボットでは、前後方向におけるシャッタ案内面Fgの両外側の位置でシャッタ6をテーブルカバー16(押圧部161,161)で押さえ込むことによりシャッタ6をシャッタ案内面Fgに摺接させるようにしているため、上記のようにテーブルカバー16を本体11に係止する構成では、シャッタ6の撓みによる弾発力によってテーブルカバー16に上向きの力が作用し、テーブルカバー16の係止状態が意図せず解除されることが危惧されるが、上記の通り、この単軸ロボットでは、前記変位規制部17,17に工具が当接して本体11からのテーブルカバー16の浮き上がりが確実に防止される結果、上記のような不都合の発生が未然に防止される。
【0039】
また、この単軸ロボットでは、本体11(母体部分)に案内面形成部材14が装着されることにより本体11にシャッタ案内面Fgが形成されているが、この案内面形成部材14も、上記の通りボス14a及び凹部112により前後左右に位置決めされた状態で載置面111上に載置され、被案内物であるシャッタ6によって押さえ込まれることにより上下方向への変位が規制される構成となっている。つまり、案内面形成部材14は、ビス等を用いることなく可動部材10に組込まれている。従って、この点でも可動部材10の構成を簡素化し、生産性やメンテナンス性を向上させることができるという利点がある。
【0040】
なお、以上説明した単軸ロボットは、本発明の好ましい実施形態の一例であってその具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0041】
例えば、テーブルカバー16の本体11に対する具体的な係止構造や、案内面形成部材14の本体11(母体部分)への具体的な組付構造は、ビス等を用いることなく組付けることができれば、上記実施形態以外の構造であってもよい。
【0042】
また、実施形態の単軸ロボットでは、可動部材10を移動させるための駆動手段として、回転モータを用いた所謂ねじ送り機構を採用しているが、可動部材10をリニアモータでダイレクト駆動する構成でもよい。この場合には、アルミニウム等の押出し材からなる基台を設け、この基台上にガイドレール2及びリニアモータの固定子(長尺の磁性体の上に複数の永久磁石を並べて固定したもの)を配置する一方、可動部材10にリニアモータの可動子(電機子)を固定する。そして、基台の長手方向両端に、ねじ軸22の支持ブロック26,27の代わりに軸受のない単なる駒部材となるカバー固定用部材を基台上に設け、これらに端面カバー4,5を固定する。なお、この構成の場合には、実施形態のようなモータ24の収容部が不要となるため、前端カバー4については、後端カバー5に準じた構造の前端カバー4を設けるようにすればよい。
【0043】
また、実施形態の単軸ロボットでは、テーブルカバー16の中央部16aがシャッタ案内面Fgに重なるようにテーブルカバー16をテーブル部11aに重ね、中央部16aを下方に押さえた状態で、フック18が一体形成されている挟持部16b,16bを上方に弾性変形させて4箇所のフック18をそれぞれ前後方向外方に広げて、当該フック18をテーブル部11aの側面部分等に係合させるようにしているが、テーブルカバー16の中央部16aの剛性を高めることで、中央部16aがシャッタ案内面Fgに重なるようにテーブルカバー16をテーブル部11aに重ね、上から中央部16aを押さえ込んで、テーブルカバー16をテーブル部11aに装着するようにしても良い。すなわち、中央部16aを押さえ込むと、両工具取付部12の前後端で挟持部16b,16bの4箇所のフック18がそれぞれ前後方向外方に弾性変形して広がり、当該フック18が上下方向においてテーブル部11aの側面部分の係止溝12bに一致すると、弾性力で当該フック18がそれぞれ当該係止溝12bに係合する。
【符号の説明】
【0044】
1 ケース部材
2 ガイドレール
3 側面カバー
4 前端カバー
4A カバー本体部
4B 蓋部
5 後端カバー
6 シャッタ
10 可動部材
11 本体(可動部材本体)
12 工具取付部
16 テーブルカバー(カバー部材)
24 モータ
S 隙間
Fg シャッタ案内面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に一軸方向に延びる開口部を備えたケース部材と、このケース部材に収容されて前記開口部に沿って移動可能に支持される可動部材と、この可動部材を前記一軸方向に貫通するように配置されて前記開口部を塞ぐシャッタ部材とを備えた単軸ロボットにおいて、
前記可動部材は、前記開口部から上方に突出して前記一軸方向と直交する方向である幅方向に並ぶ一対の工具取付部およびこれら工具取付部の間で前記シャッタ部材を支持しながら前記一軸方向に案内する樹脂材料から形成されるシャッタ案内面とを備える可動部材本体と、樹脂材料から形成され、前記シャッタ案内面を覆うように前記可動部材本体上に配置されて前記シャッタ案内面との間に前記シャッタ部材を貫通させるための隙間を形成するカバー部材と、を含み、
前記可動部材本体およびカバー部材は、前記カバー部材を前記可動部材本体の上部に重ねた状態で互いに係合し、前記隙間を形成した状態で前記カバー部材を可動部材本体に対して係止する係止部をそれぞれ備えており、
前記カバー部材は、その上面部にカバー部材の変位を規制するための規制部を備え、この規制部は、前記工具取付部に取付けられる工具又は機器が当接することにより前記可動部材本体に対するカバー部材の上方への変位を規制するように形成されていることを特徴とする単軸ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の単軸ロボットにおいて、
前記カバー部材は、前記シャッタ部材が前記シャッタ案内面に沿って摺接するように、前記一軸方向における前記シャッタ案内面よりも外側の位置で前記シャッタ部材を上側から押圧する押圧部を備えていることを特徴とする単軸ロボット。
【請求項3】
請求項2に記載の単軸ロボットにおいて、
前記可動部材本体は、前記工具取付部を有する母体部分に形成される所定の載置面上に載置されることにより前記シャッタ案内面を形成する案内面構成部材を含み、この案内面構成部材は、前記シャッタ案内面に沿って案内されるシャッタ部材により前記載置面に押し付けられることによって上下方向への変位が規制されることを特徴とする単軸ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214502(P2010−214502A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62615(P2009−62615)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】