説明

印刷用凸版の製造方法及び印刷用凸版、並びにそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法

【課題】サイズが大型化した有機EL素子を凸版印刷法によって形成するための樹脂凸版を、フォトリソグラフィー法でパターニングする際に、スプレー式現像方法をもちいながら、パターン精度が高く、かつ現像ムラ等を無くした製版を行う方法とその方法で得られる印刷用凸版を提供する。
【解決手段】版材の感光性樹脂を露光する露光工程と、露光後の感光性樹脂を現像する現像工程とを供え、現像工程は版材全体を現像液に浸漬させる浸漬段階と、浸漬後の感光性樹脂の不要箇所をスプレー型の噴出口より噴射される現像液により除去し現像する現像段階と、現像後の感光性樹脂上の現像液の残渣をスプレー型の噴出口より噴射される洗浄液により除去する洗浄段階と、洗浄後の感光性樹脂表面に気体を吹き付け洗浄液を除去する洗浄液除去段階とを具備し、少なくとも現像段階と洗浄段階との版材搬送部が版材搬送方向と直行する水平面に対して傾斜した角度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用凸版の製造方法及び印刷用凸版、並びにそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)の製造方法に関し、特に基板サイズが大型化した有機EL素子を凸版印刷法によって形成するのに適した印刷用凸版を、フォトリソグラフィー法で形成する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精細加工技術を用いた電子デバイス開発が急速な進化を遂げている。このような電子デバイスは次世代のエレクトロニクス分野、バイオテクノロジー分野、オプトロニクス分野などの発展へ貢献することが期待される。
【0003】
有機EL素子は、少なくともどちらか一方が透光性を有する二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層が形成され、両電極間に電圧を印加して有機発光層に電流を流すことにより発光が生じる自発光型の表示素子である。この有機EL素子で何らかの画像表示を行うためには、画素毎に発光のオンオフを調整する必要がある。そのため、少なくとも一方の電極はパターンニングされて設けられる必要がある。また、これを効率よく発光させるには、有機発光層の膜厚のコントロールが重要であり、例えば膜厚100nm程度に極めて薄膜にする必要がある。さらに、これをフルカラー化するには、例えば各画素が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)となるように、有機発光層を高精細にパターニングする必要がある。
【0004】
有機発光層を形成する有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。
【0005】
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に分散または溶解させて塗工液にし、これを湿式成膜法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するための湿式成膜法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等がある。しかし、高精細にパターニングしたりR、G、B3色に塗り分けをするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗り分け・パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
【0006】
さらに、有機EL素子等のディスプレイでは、基板としてガラス基板を用いることが多いため、各種印刷法の中でも、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きである。そのために、弾性を有するゴム製の印刷版を用いた印刷法や、ゴム製の印刷用ブランケットを用いたオフセット印刷法、あるいは弾性を有するゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が適性な印刷法として採用することができる。実際にこれらの印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(例えば、特許文献1参照)、凸版印刷による方法(例えば、特許文献2参照)などが提唱されている。
【0007】
また、上記した凸版印刷法においては、これまでは版材料の主成分が疎水性のゴムにより形成された凸版である場合が多く、有機溶剤を用いた現像方法が主流であった。近年では、国際的にVOC(揮発性有機化合物)の規制が強くなるにつれ、水を主成分とする現像液を用いた現像方法が主流となりつつある(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
一方、有機ELディスプレイといった電子デバイスを、凸版印刷法によって作製しようとした場合、例えば、携帯電話のメインディスプレイ用途として主流となりつつある、2型で320画素×240画素(QVGA)の場合、一つの画素サイズは120μm、一色あたりの表示部幅は20〜40μm程度の微細さが要求される。
【0009】
一般的な印刷用途での感光性樹脂を用いた凸版の現像方法としては、古くはスプレー式の現像方法が用いられてきたが、スプレー式の現像方法に独特な現像ムラが凸版上に見られた。ディスプレイの大型化が進むにつれ、要求される画素一つ一つは大きくなることで低精細化されていくのが一般的であるが、しかし、同時に印刷用凸版も大型化し、大型化での問題点として面内バラツキの精度が要求される。印刷用凸版が大型化することで現像工程に用いた現像液が基板上で滞留し、現像状態による面内バラツキ精度の悪化が発生する問題があった。ここで、面内バラツキの精度とは面内を露光、現像した際に面内のパターンの形状、線幅の均一さのことを示す。
【0010】
この課題解決のために、ブラシ式の現像方法が考案され、均一かつ短時間で現像を行うことが可能となった。しかしながら、従来の印刷用凸版の現像に用いられてきたブラシ式の現像方法においては、そのブラシの一本あたりの直径は30から100μm程度のものが多い。このようなブラシを用いて有機ELディスプレイといった微細なパターンを要求する印刷物を形成するための凸版を現像しようとした場合、ブラシの当たり方によっては、凸版のパターンの一部が欠け、版欠陥となってしまい、これが印刷欠陥を引き起こすこととなり、均一な印刷物の形成をすることができない別な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【特許文献3】特開2004−70231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した問題点に鑑み行われたものである。本発明者らは、有機EL素子といった微細なパターニングを必要とする回路パターンの印刷に凸版印刷法を適用する場合、その感光性樹脂よりなる版材を現像するための方法を鋭意検討した結果、噴射式ノズルを備えたスプレー式の現像装置を特定の形態で用いることで、凸版の凸形状を崩すことなく印刷に適した比較的高精細な凸版を形成可能なことを見出し本発明を完成した。
【0013】
本発明は、製版基板サイズが大型化した有機EL素子を凸版印刷法によって形成するための樹脂凸版を、フォトリソグラフィー法でパターニング形成する際に、スプレー式の現像方法をもちいながら、パターン精度が高く、かつ、現像ムラ等を無くした製版を行う方法とその方法で得られる印刷用凸版を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る発明は、基板サイズが大型化した有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するための感光性樹脂を具備した版材から成る印刷用凸版の製造方法であって、
前記版材の前記感光性樹脂をストライプパターン状に露光する露光工程と、露光後前記版
材の前記感光性樹脂を現像する現像工程とを供え、前記現像工程は前記版材全体を現像液に浸漬させる浸漬段階と、浸漬後の前記感光性樹脂の不要箇所をスプレー型の噴出口より噴射される現像液により除去し現像する現像段階と、現像後の前記感光性樹脂上の現像液の残渣をスプレー型の噴出口より噴射される洗浄液により除去する洗浄段階と、洗浄後の前記感光性樹脂表面に気体を吹き付け洗浄液を除去する洗浄液除去段階とを具備し、
少なくとも、前記現像段階と前記洗浄段階との版材搬送部が版材搬送方向と直行する水平面に対して傾斜した角度を有していることを特徴とする印刷用凸版の製造方法である。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は前記現像工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、前記洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は前記洗浄工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、搬送される版材の面内に対して、現像液と洗浄液とがそれぞれ均一に当たる機構を有することを特徴とする請求項1に記載する印刷用凸版の製造方法である。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は前記現像段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有し、かつ、前記洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は前記洗浄段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有することを特徴とする請求項1または2に記載する印刷用凸版の製造方法である。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記浸漬段階と前記現像段階とで使用する現像液が、純水又は弱アルカリ性現像液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法である。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記洗浄段階で使用する洗浄液が、純水であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法である。
【0019】
次に、本発明の請求項6に係る発明は、感光性樹脂を具備した版材から成る印刷用凸版であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法を用いて作製されたことを特徴とする印刷用凸版である。
【0020】
また、本発明の請求項7に係る発明は、感光性樹脂を具備した前記版材が、現像されパターンニングされた感光性樹脂層と、その下に少なくとも一層以上の耐溶剤性層と、前記耐溶剤性層の下に少なくとも一層以上の接着性層と、さらに前記接着性層を介してその下部に基材を有することを特徴とする請求項6に記載する印刷用凸版である。
【0021】
次に、本発明の請求項8に係る発明は、請求項6または7に記載する印刷用凸版を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子基板上にパターンを形成する印刷工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の印刷用凸版の製造方法は、基板サイズが大型化した有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するための感光性樹脂を具備した版材から成る印刷用凸版をフォトリソグラフィー法でパターニング形成する際に、露光後感光性樹脂の不要箇所をスプレー型の噴出口より噴射される現像液により除去し現像する現像段階と、現像後の感光性樹脂上の現像液の残渣をスプレー型の噴出口より噴射される洗浄液により除去する洗浄段階において、版材搬送部が搬送方向と直行する水平面に対して傾斜した角度を有していることで、従来のスプレー式の現像方法で見られた現像液が基板上で滞留し現像状態による面内バラツキ精度の悪化が発生する問題がなく、パターン精度が高く現像ムラの無い樹脂凸版の製版を行うことが可能となった。
【0023】
また、本発明においては、感光性樹脂を主原料として成る樹脂凸版の凸部に、少なくとも水溶性ポリマーを含有させることにより、有機溶剤を用いない水による現像を可能とした。
【0024】
さらに、本発明の印刷用凸版を用いることで、微細なパターニングを必要とする有機EL素子を印刷法で作製することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の印刷用凸版の製造方法に係る、現像装置の一例を示した説明図である。
【図2】発明に係る印刷用凸版の現像装置の現像・洗浄槽の一例を示した説明図であり、(a)は斜視で示した説明図、(b)は版材版双方向と直行する断面で示した説明図である。
【図3】本発明に係る印刷用凸版の露光・現像の一例を示した説明図であり、(a)は露光時を示す断面説明図であり、(b)は現像後を示す断面説明図である。
【図4】本発明の印刷用凸版を用いた、有機EL素子作成する一例の凸版印刷装置を説明する概略図である。
【図5】本発明に係る印刷用凸版のストライプパターンの一例の概略図であり、(a)は現像搬送方向に対して平行なストライプパターンを示し、(b)は現像搬送方向に対して直行するストライプパターンを示す。
【図6】本発明の有機EL素子の製造方法に係る、有機ELディスプレイの一例を断面で示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の印刷用凸版の製造方法を、一実施形態に基づいて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態のみに限定されるものではない。
【0027】
本発明の印刷用凸版の製造方法に係る、現像装置の一例として、ネガ型の感光性樹脂を用い、平板型枚葉式の現像装置について説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
【0028】
図1は、本発明に係る、露光後の現像工程の一例を示した説明図である。本例の現像工程は以下の構成である。すなわち、露光済みの版材を現像液に浸漬する浸漬段階1と、露光後の不要箇所を図示しないスプレー型の噴出口より噴射される現像液により除去する現像段階2と、現像後の現像液が図示しないスプレー型の噴出口より噴射される洗浄液により洗浄される洗浄段階3と、図示しない噴射口より噴射される気体により洗浄液を除去する洗浄液除去段階4とを有する。これを用いた現像工程について以下に述べる。
【0029】
まず、図1で、投入口5から投入された露光済みの版材を、浸漬段階1では、浸漬するのに充分な量の現像液が充填された図示しない浸漬層に浸漬する。なお、同時刻に版全体が浸漬されている必要はなく、少なくとも露光済みの版材の一部が浸漬されていれば良い。
【0030】
次に、現像段階2では、図2(a)に示すように、現像液を用いた少なくとも一つ以上のスプレー噴射装置による現像を行う。この時現像液は複数のマニホールド11を通して
複数のスプレーノズル12からスプレー噴射16となって複数のシャフト15に複数の搬送用コロ14が配設された搬送手段上を搬送される版材13に噴射される。このときのスプレー噴射パターンは円形拡散型、扇状拡散型、乱射型、噴霧型といった公知のものを任意に選択することができる。また、スプレーノズル12の噴射口と露光済みの版材13との距離についても任意に選択することができる。なお、この間版材の全面は常に現像液に曝されていることが望ましい。また、図2(b)に示すように、この時の搬送角度が傾斜を有することで、現像液が版材上に滞留することなく、常に新しい現像液が版材上に存在する。また、実質的に現像液に曝される現像時間が版材の場所(面内)によって変動することがなくなる。これにより、ムラの発生や異物の滞留によるパターンに与える影響を無くすことが可能となる。
【0031】
現像段階2では純水や弱アルカリ現像液を用いることが可能であるが、環境的側面や装置の簡易さを考えると純水現像を行なうことが望ましい。現像液の使用量を削減することに鑑み、また、現像液に含まれる不要な感光性樹脂の回収を可能にするために、現像液としてpHが5.8以上8.6以下のものを用い循環槽で循環させながら現像を行うことがもっとも望ましい。なお、これを用いることで、現像後の廃液の大部分はpHがほぼ中性であり、また有害な化学物質をほとんど含まないため、産業廃棄物回収業者への依頼の他に、希釈、薬剤処理等を行うことで各自治体の環境基準に従い排出することもできる。
【0032】
次に、洗浄段階3では、現像段階2と同様にして、図2(a)に示すように、洗浄液を用いた少なくとも一つ以上のスプレー噴射装置による洗浄を行う。このときのスプレー噴射パターンは、スプレー円形拡散型、扇状拡散型、乱射型、噴霧型といった公知のものを任意に選択することができる。また、スプレーの噴射口12と露光済みの版材13との距離についても任意に選択することができる。なお、この間版材の全面は常に洗浄液に曝されていることが望ましい。また、現像段階と同様にして、図2(b)に示すように、この時の搬送角度が傾斜を有することで、洗浄液が版材上に滞留することなく、常に新しい洗浄液が版材上に存在する。また、実質的に洗浄液に曝される洗浄時間が版材の場所(面内)によって変動することがなくなる。これにより、洗浄ムラの発生によるパターンに与える影響を無くすことが可能となる。
【0033】
洗浄段階3では、現像液中に溶存する不要な感光性樹脂成分の凸版への再付着を防止するために、洗浄液としてpHが5.8以上8.6以下のものを用い、非循環槽を用いて常に洗浄液の交換を行いながら洗浄を行うことが望ましい。しかし、パターンの現像状態を確認し、現像の要求パターン精度の違いまたは洗浄液の使用寿命を鑑みた結果、循環槽を用いても良い。
【0034】
次に、洗浄液除去段階4で、図示しない噴射口より噴射される気体により洗浄液を除去することにより、洗浄液の除去を行う。この時の噴射口の形状は点状でも線状でも良く、また、噴射圧力は形成するパターンに合わせて任意に選択することができる。なお、噴射口の数は少なくとも一つ以上を必要とする。
【0035】
また、前述した現像工程の第一の浸漬段階から第四の洗浄液除去段階までのそれぞれの段階の間において、どのような処理も行わないブランクが存在していても良く、また、簡易的な洗浄、乾燥などの段階を含んでも良い。以上の段階を経た後版材13は回収口6から排出されることになる。
【0036】
上記したように、本発明では、少なくとも、現像段階2と洗浄段階3との版材搬送部が版材搬送方向と直行する水平面に対して傾斜した角度を有していることを特徴としている。m角を超える大型版材の現像においてはこの傾斜が重要であり、角度θとしては、少なくとも3度以上45度以下の範囲で、現像効果と装置駆動上の適性を考慮して選択することができる。露光済みの版材の現像装置内での搬送は、材質として、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)やポリエステル等の搬送コロによる搬送や、マグネット式の搬送といった公知のものを利用することができる。設備費用やその他ユーティリティを鑑みると、搬送コロを用いるのがより望ましい。搬送コロを用いる場合、傾斜角度は30度以下とすることが好ましい。
【0037】
上記した現像装置において、現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は現像工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、また、洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は洗浄工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、搬送される版材の面内に対して、現像液と洗浄液とがそれぞれ均一に当たる機構を有する必要がある。すなわち、前記した傾斜角度をつけることは、現像槽及び洗浄槽全体を傾斜させることを意味しており、搬送面のみを傾斜させることでは本発明の目的は達成されない。
【0038】
また、現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は現像段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有し、かつ、洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は洗浄段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有していることが好ましい。このような機構を有することで現像の均一性をより高めることが可能となる。
【0039】
次に、本発明に係る印刷用凸版に用いられる版材について説明する。本発明の印刷用凸版は、その一例として、現像されパターンニングされた凸部となる感光性樹脂層と、その下に少なくとも一層以上の樹脂製の耐溶剤性層と、耐溶剤性層の下に少なくとも一層以上の接着性層と、さらに接着性層を介してその下部に基材を有する積層構成を有する。基材に金属製のものを用いた場合、ポリエステルウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等公知の接着剤からなる接着性層を耐溶剤性層と基材との間に設けることで金属製の基材と樹脂製の耐溶剤性層との密着性を高めることが出来るが、樹脂製の基材を用いた場合には、耐溶剤性層自体を接着性層として、特に別に接着性層を設けなくてもよい。
【0040】
本発明の印刷用凸版の凸部材料に使用される樹脂としては感光性樹脂を用いる。高精細な凸部パターンを容易に加工できることから、版材に具備する樹脂層として感光性樹脂を主として用いる。感光性樹脂としては、例えば、ポリマーと不飽和結合を含むモノマーと光重合開始材を構成要素とする感光性樹脂が挙げられる。このとき、ポリマーとしては、後ほど示す樹脂材料の中から適宜選択することができる。また、ポリマーとしては、後述の場合と同様に有機溶剤に対する耐性が高いという点で水溶性ポリマーを好適に用いることができ、水溶性ポリマーを用いた場合においては、前述した現像工程において現像液として純水を使用することが可能となる。また、不飽和結合を含むモノマーとしては例えばビニル結合を有するメタクリレート類を用いることができ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物を用いることができる。
【0041】
また、感光性樹脂としては、光照射部分が硬化し非照射部分が現像液に溶解するネガ型であっても、光照射部分が現像液に溶解し非照射部分が硬化状態を維持するポジ型のどちらを選ぶことも可能であるが、良好な凸形状を得るためにはネガ型の感光性樹脂を用いることが望ましい。
【0042】
この感光性樹脂層の一成分となるポリマーは、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などから一種類以上を選択
することができるが、有機発光材料などといった塗工液を塗布する場合、有機溶剤に対する耐溶剤性の観点から、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂が望ましい。
【0043】
また、この感光性樹脂層に少なくとも、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミドやこれらの誘導体といった水溶性溶剤に可溶なものを一種類以上含有することにより水を用いた現像が可能となるため、これらの内から一つ以上を選択し用いることが最も望ましい。
【0044】
上記した感光性樹脂には感光性樹脂の重合のために光重合開始剤が添加される。例としては、本発明を適用する用途に適するものであれば特に制限は無く、各種文献に報告されているものを用いることができる。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、2−クロロキサントン、2−エチルアントラキノン、ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX:日本化薬製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)又はビイミダゾール化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの光重合開始剤は、必要に応じて適宜に複数のものを混合して使用してもよい。
【0045】
凸パターン形成部の感光性樹脂層の厚みとしては、10μm以上50μm以下であることが好ましい。パターン形成部の感光性樹脂層の厚みが10μm未満の場合、パターンに印圧が局所的にかかることで安定したパターンの印刷ができない。厚みが50μmを超える場合は、印圧がかかると凸パターンの倒れや変形が発生し、安定したパターンの印刷ができない。
【0046】
本発明の印刷用凸版では、耐溶剤性層を設けることで、発光材料と接触する面が溶媒により溶出することを防止できる。また、印刷用凸版の構造として凸部となる樹脂層の下部にクッション性のある樹脂製の耐溶剤性層を設けたことにより、印刷時に凸版にかかる印圧を均一なものとし、被印刷物において、直進性の悪化や印刷精度の悪化を防ぎ、膜厚ムラ及び発光ムラを改善することができる。耐溶剤性層の厚みとしては、50μm以上100μm以下であることが好ましい。厚みが50μm未満の場合、クッション性が不十分なため、凸版に局所的な印圧がかかるおそれがある。また、厚みが100μmより大きい場合、クッション性が高すぎるために、印刷工程において印圧がかかることで上部の凸版の凸パターンの倒れや変形が生じ、安定したパターンの印刷ができない。
【0047】
耐溶剤性層の材料としては、発光材料の印刷溶剤に対する耐性があるものが使用でき、フッソ系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミドといった水溶性溶剤に可溶なものなど、前記した凸パターン形成部の感光性樹脂層と同様な材料の硬化物を用いてもよい。
【0048】
次に、版材の下地層としての基材としては、印刷に対する機械的強度を有すれば良く、
ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの公知の合成樹脂フィルムや、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、金、銀やそれらの合金や積層体からなる公知の金属薄板を用いることができる。
【0049】
上記した基材は、現像されパターンニングされた感光性樹脂部分の寸法変化を抑えるのに十分な剛性をもっていることと、基材自身も寸法変化しにくいことが要求される。また、インキに含まれる溶媒への耐性が高いものが望ましい。したがって、基材として用いられる材料としては金属が好適に使用される。また、金属材料からなる基材の中でも、加工性、経済性からスチール基材やアルミ基材を好適に用いることができる。
【0050】
図3は、本発明に係る印刷用凸版の露光・現像の一例を示した説明図であり、感光性樹脂を用いフォトリソグラフィー法により凸部パターン形成をする場合において、本発明の印刷用凸版の一例としてネガ型の感光性樹脂を用いた場合を示す。(a)は露光時を示す断面説明図であり、(b)は現像後を示す断面説明図である。まず、基材28上に、接着層27、耐溶剤層26を介して感光性樹脂25が一面に形成された版材を用意する。次に、図3(a)に示すように、遮光部22と透光部23を有しており、且つ、透光部によってパターンが形成されたフォトマスク21を版材の感光性樹脂上に配置する。フォトマスクは、透光性を有するガラス上に例えばクロム薄膜からなる遮光部22がパターニングされた構造をしており、クロム薄膜が形成されている箇所が遮光部22、クロム薄膜が形成されていない箇所が透光部23となる。
【0051】
次に、フォトマスク21を介して、紫外光に代表される活性エネルギー線24を照射し、露光する。このとき、フォトマスク21の透光部23を通過し活性エネルギー線が照射された部分が硬化される。露光方式としては、版材とフォトマスクを完全に密着させるコンタクト露光方式と、フォトマスクにダメージを与えないように少し距離をおいたプロキシミティ露光方式があるが、露光光の方向がそろっているプロキシミティ露光方式により露光を行うことが好ましい。
【0052】
次にフォトマスク21を版材から外し、前述した現像装置を用いて現像工程を実施する。現像により、露光によって光が照射されなかった未硬化部分を除去し、図3(b)に示すように、活性エネルギー線が照射され硬化した部分25’が樹脂凸版となる。このとき、未硬化部分が溶解、除去可能な現像タイプの樹脂凸版を用いた場合には、現像液として水が用いられる。また、現像後に、樹脂層を更に硬化させることを目的としてベークや後露光をおこなっても良い。
【0053】
なお、凸版を印刷用シリンダー上に形成させるための手段は、シリンダー上で直接製版を行う工程、もしくは、別途製版した版をシリンダーに設置する工程があるが、本発明の印刷用凸版の製造方法の効果を得る点から、また製造の簡便さから、版材を平板の状態で露光、現像、乾燥、後露光といった一連の製版作業を行い、その後にシリンダー上に巻きつけ設置することが望ましい。
【0054】
次に、本発明の印刷用凸版の製造方法によりパターン形成された樹脂製の凸版を用いた回路パターンの製造方法の一例として、有機EL素子の作製方法について説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
【0055】
本発明に係る凸版は、凸部パターンを樹脂製とすることにより、ガラス基板のような硬質な被印刷体に対しても、被印刷体を傷つけることなくインキ印刷パターンを形成することができる。従って、本発明の印刷用凸版を用い、凸版印刷法により有機ELディスプレ
イ用電極基板といった高い精度を必要とする被印刷基板表面にインキパターンを形成する印刷物を製造することができる。以下にその製造方法について示す。
【0056】
図4は、本発明に係る、印刷物の製造に用いられる凸版印刷装置を斜視で示した概略図である。定盤44には被印刷基板45が固定されており、本発明の製造方法によってパターン形成された印刷用凸版41は版胴42に固定され、印刷用凸版41はインキ供給体であるアニロックスロール43と接しており、アニロックスロール43はインキ補充装置から通液部47を通過し、供給されている。
【0057】
まず、インキ補充装置から通液部47を通過して、アニロックスロール43へインキが補充される。アニロックスロール43に供給されたインキのうち余分なインキは、図示しないドクター装置によりドクタリングされ除去される。インキ補充装置には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクタリングするにはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール43は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。また、印刷用凸版へのインキ供給体としてシリンダー状のアニロックスロールではなく、平版のアニロックス版を用いることも可能である。
【0058】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール43表面にドクタリングによって均一に保持されたインキは、版胴42に取り付けられた印刷用凸版41の凸部パターンに転移、供給される。そして、版胴42の回転に合わせて印刷用凸版41の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキは定盤44上にある被印刷基板45の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターンを形成する。被印刷基板にインキパターンが設けられた後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
【0059】
本発明の印刷用凸版の製造方法に係る現像方式においては、現像搬送方向に対し、ストライプパターンは平行および垂直でも使用することができる。転写される被印刷基板のインキパターンの版パターン例を、図5の(a)(b)に示す。図5(a)は現像搬送方向に対して平行なストライプパターンを示す。図5(a)のパターン無し部31は現像されることで除去されており、図5(a)のパターン有り部32は露光された際に硬化した部分である。同様に図5(b)は現像搬送方向に対して、垂直なストライプパターンを示す。図5(b)のパターン無し部33は現像されることで除去されており、図5(b)のパターン有り部34は露光された際に硬化した部分である。
【0060】
ここで、印刷用凸版上にあるインキを被印刷基板45に印刷するときにおいては、版胴42の回転にあわせ被印刷基板45が固定された定盤44を移動させる方式であってもよいし、図5上部の版胴42、印刷用凸版41、アニロックスロール43、インキ補充装置からなる印刷ユニットを版胴42の回転に合わせ移動させる方式であってもよい。
【0061】
なお、図4は1枚毎に被印刷基板にインキパターンを形成する枚葉式の凸版印刷装置であるが、本発明に係る印刷物の製造方法にあって、被印刷基板がウェブ状で巻き取り可能である場合には、ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いることもできる。ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いた場合には連続してインキパターンを形成することが可能となり、製造コストを低くすることが可能となる。
【0062】
次に、本発明によってパターン形成した印刷用凸版を用いた印刷物の製造方法の一例として、有機EL素子の製造方法について更に説明する。図6に、本発明の有機EL素子の製造方法に係る有機ELディスプレイの一例を断面で示した概略図を示した。有機EL素子の駆動方法としては、パッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式がある
が、本発明の有機EL素子はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。
【0063】
パッシブマトリックス方式とはストライプ状の電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。
【0064】
図6に示すように、本発明に係る有機EL素子は、基板60の上に、陽極としてストライプ状に第一電極59を有している。隔壁58は第一電極間に設けられ、第一電極端部のバリ等よるショートを防ぐことを目的として第一電極端部を覆うことがましい。
【0065】
そして、本発明の有機EL素子は、第一電極59上であって、隔壁58で区画された領域(発光領域L、画素部)に有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を有している。電極間に挟まれる有機EL層は、有機発光層単独から構成されたものであってもよいし、有機発光層と発光補助層との積層構造から構成されたものでもよい。発光補助層としては正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層が挙げられる。図6では発光補助層である正孔輸送層55と有機発光層(51、52、53)との積層構造からなる構成を示している。第一電極59上に正孔輸送層55が設けられ、正孔輸送層55上に赤色(R)有機発光層51、緑色(G)有機発光層52、青色(B)有機発光層53がそれぞれ設けられている。
【0066】
次に、有機発光媒体層上に陽極である第一電極59と対向するように陰極として第二電極54が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極と直交する形で第二電極はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極は、有機EL素子全面に形成される。更に、環境中の水分、酸素の第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極への侵入を防ぐために有効画素全面に対してガラスキャップ等による封止体57が設けられ、接着剤56を介して基板60と貼りあわされる。
【0067】
本発明に係る有機EL素子は、少なくとも基板と、当該基板に支持されたパターン状の第一電極と、有機発光層と、第二電極を具備する。本発明に係る有機EL素子は、図6とは逆に、第一電極を陰極、第二電極を陽極とする構造であっても良い。また、ガラスキャップ等の封止体の代わりに有機発光媒体層や電極を外部の酸素や水分の浸入から保護するためにパッシベーション層や外部応力から保護する保護層、あるいはその両方の機能備えた封止基材を備えてもよい。
【0068】
次に、有機EL素子の製造方法を更に詳しく説明する。
【0069】
本発明に係る有機EL素子の基板としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
【0070】
例えば、基板としてはガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
【0071】
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0072】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL素子用の基板とすることが可能である。
【0073】
また、隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。
【0074】
感光性材料を用いてフォトリソ法により隔壁を形成する場合、その形状は露光条件や現像条件により制御可能である。例えば、ネガ型の感光性樹脂を塗布し、露光・現像した後、ポストベークして、隔壁を得るときに、隔壁端部の形状を順テーパー形状としたい場合には、この現像条件である現像液の種類、濃度、温度、あるいは現像時間を制御すればよい。現像条件を穏やかなものとすれば、隔壁端部は順テーパー形状となり、現像条件を過酷にすれば、隔壁端部は逆テーパー形状となる。
【0075】
また、隔壁形成材料がSiO、TiOの場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0076】
次に、有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を形成する。電極間に挟まれる有機EL層としては、有機発光層単独から構成されたものでもよいし、有機発光層と正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層は必要に応じて適宜選択される。
【0077】
そして、本発明は有機発光層や正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層からなる有機EL層のうち少なくとも1層を、有機EL層材料を溶媒に溶解、または分散させたインキを用い、基材上に感光性樹脂からなる凸部パターンを有する樹脂凸版を前述した本発明の製造方法で印刷用凸版とした凸版印刷法により、前記第一電極の上方に印刷して形成する際に適用することができる。以降、本発明において、有機発光材料を溶媒に溶解、または分散させた有機発光インキを用いた場合について示す。
【0078】
有機発光層は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウ錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノー8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0079】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0080】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)やポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイドなどのPPP誘導体、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリスピロフルオレンなどの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0081】
正孔輸送層を形成する正孔輸送材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、チオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0082】
また、電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0083】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0084】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0085】
有機発光層や発光補助層は湿式成膜法により形成される。なお、これらの層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、RGB三色の有機発光層をパターン形成する場合、印刷法によって画素部に選択的に形成することができ、カラー表示のできる有機EL素子を製造することが可能となる。有機発光媒体層の膜厚は、単層又は積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50nm〜150nmである。
【0086】
繰り返しになるが、本発明は有機発光インキを用い凸版印刷法により有機発光層形成する場合だけでなく、正孔輸送インキや電子輸送インキを用い凸版印刷法により正孔輸送層や電子輸送層といった発光補助層を形成する場合にも使用することができる。
【0087】
次に、第二電極を形成する。第二電極を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg、AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0088】
第二電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。また、第二電極をパターンとする必要がある場合には、マスク等によりパターニングすることができる。第二電極の厚さは10nm〜1000nmが好ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0089】
有機EL素子としては電極間に有機発光層を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料や発光補助層形成材料、電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。
【0090】
封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、凹部を有するガラスキャップ、金属キャップを用いて、第一電極、有機発光媒体層、第二電極上空に凹部があたるようにして、その周辺部についてキャップと基板を接着剤を介して接着させることにより封止がおこなわれる。
【0091】
また、封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、封止材上に樹脂層を設け、該樹脂層により封止材と基板を貼りあわせることによりおこなうことも可能である。
【0092】
このとき封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のある
フィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。
【0093】
樹脂層としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。
【0094】
第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板と封止体の貼り合わせは封止室でおこなわれる。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。なお、ここでは封止材上に樹脂層を形成したが、基板上に樹脂層を形成して封止材と貼りあわせることも可能である。
【0095】
封止体を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、CVD法を用いて、窒化珪素膜を150nm成膜するなど、無機薄膜による封止体とすることも可能であり、また、これらを組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0096】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0097】
[印刷用凸版の作製]
基材として厚さ250μmのスチール材を用い、耐溶剤性層として樹脂厚50μmのポリアミド樹脂が形成され、その上に市販の水溶性の光硬化性樹脂30μmが形成された版材ベースを用意した。この版材に対し、ライン幅20μm、スペース幅130μmのネガ版を用い、露光した。この時用いた版サイズは1000mm×1000mmとした。
【0098】
<実施例1>
露光済みの版材ベースを、現像段階と洗浄段階の搬送部に、版材搬送方向と直行する水平面に対して10度の傾斜を持たせた本発明の現像装置を用いて現像し、感光性樹脂の凸パターンが形成された実施例1の印刷用凸版を作成した。現像後の目視観察では、面内均一な線幅のパターンが得られた。
【0099】
<比較例1>
実施例1と露光までは同様にした露光済みの版材ベースを、現像段階と洗浄段階の搬送部の傾斜を0度と傾斜させない現像装置を用いて現像し、感光性樹脂の凸パターンが形成された比較例1の印刷用凸版を作成した。現像段階及び洗浄段階において版材上に液の滞留が見られたが、現像後の目視観察では、特に面内での不均一な線幅パターンは観察されなかった。
[発光層形成用インキの調整]
高分子蛍光体をキシレンに濃度が1.0質量%となるように溶解させ、発光層形成用インキを調整した。高分子蛍光体としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる
発光材料を使用した。
【0100】
[被転写基板(デバイス基板)の作製]
1100mm角、厚さ0.7mmのガラス基板上に、表面抵抗率15ΩのITOを成膜した。この基板上にスピンレスコーターを用いて、正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被転写基板(デバイス基板)を作製した。
【0101】
[有機ELデバイスの作製]
上記した実施例1の印刷用凸版と、比較例1の印刷用凸版とをそれぞれ用いて、有機ELデバイスを作成した。実施例1の印刷用凸版と、比較例1の印刷用凸版とをそれぞれ、凸版印刷機の印刷シリンダに両面テープを用いて固定し、上記した発光層形成用インキを用いて、上記した被転写基板に対して印刷を行った。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機ELデバイスを作製した。
【0102】
実施例1及び比較例1の印刷用凸版を用いて作成した有機ELデバイスについて、発光ムラの有無による面内バラツキを評価した。その結果を表1に示す。傾斜のある搬送部を有する現像・洗浄段階を有する本発明の現像装置で現像・作成した実施例1の印刷用凸版の印刷結果は良好で発光の面内バラツキがなく、精度よくパターンの作成が可能であった。それに対して、搬送部に傾斜をつけない比較例1の印刷用凸版の印刷結果は、基板面内で発光ムラが確認された。これは、今回対象とした、1000mm角の大型の製版では、基板上で現像液や洗浄液が滞留しているため、現像液や洗浄液の更新されていない部分が存在し、高精細なパターンに対して線幅の面内バラツキとなることが確認された。
【0103】
【表1】

以上説明したように、本発明は有機EL素子の作製に適したものであるが、その他にも液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)などを作製する際に要される微細パターンの形成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1・・・浸漬段階 2・・・現像段階 3・・・洗浄段階
4・・・洗浄液除去段階 5・・・投入口 6・・・回収口
11・・・マニホールド 12・・・スプレーノズル 13・・・版材
14・・・搬送用コロ 15・・・シャフト 16・・・スプレー噴射
21・・・フォトマスク 22・・・遮光部 23・・・透光部
24・・・露光光 25・・・感光性樹脂層 25’・・・凸部(硬化部分)
26・・・耐溶剤層 27・・・接着性層 28・・・・・下地層(基材)
31・・・パターン無し部 32・・・パターン有り部(横)
33・・・パターン無し部 34・・・パターン有り部(縦)
41・・・印刷用凸版 42・・・版胴(シリンダ)
43・・・アニロックスロール 44・・・定盤 45・・・被印刷基板
46・・・インキ補充装置(インキチャンバー) 47・・・通液部
51・・・有機発光層 52・・・有機発光層 53・・・有機発光層
54・・・第二電極層 55・・・正孔輸送層 56・・・接着剤
57・・・封止体 58・・・隔壁 59・・・第一電極 60・・・基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板サイズが大型化した有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するための感光性樹脂を具備した版材から成る印刷用凸版の製造方法であって、
前記版材の前記感光性樹脂をストライプパターン状に露光する露光工程と、露光後前記版材の前記感光性樹脂を現像する現像工程とを供え、前記現像工程は前記版材全体を現像液に浸漬させる浸漬段階と、浸漬後の前記感光性樹脂の不要箇所をスプレー型の噴出口より噴射される現像液により除去し現像する現像段階と、現像後の前記感光性樹脂上の現像液の残渣をスプレー型の噴出口より噴射される洗浄液により除去する洗浄段階と、洗浄後の前記感光性樹脂表面に気体を吹き付け洗浄液を除去する洗浄液除去段階とを具備し、
少なくとも、前記現像段階と前記洗浄段階との版材搬送部が版材搬送方向と直行する水平面に対して傾斜した角度を有していることを特徴とする印刷用凸版の製造方法。
【請求項2】
前記現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は前記現像工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、前記洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は前記洗浄工程の版材搬送部の搬送面に対して平行に設置され、搬送される版材の面内に対して、現像液と洗浄液とがそれぞれ均一に当たる機構を有することを特徴とする請求項1に記載する印刷用凸版の製造方法。
【請求項3】
前記現像段階で現像液を噴射するスプレー型の噴出口は前記現像段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有し、かつ、前記洗浄段階で洗浄液を噴出するスプレー型の噴出口は前記洗浄段階の版材搬送部の搬送面に対して平行に揺動する機構を有することを特徴とする請求項1または2に記載する印刷用凸版の製造方法。
【請求項4】
前記浸漬段階と前記現像段階とで使用する現像液が、純水又は弱アルカリ性現像液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄段階で使用する洗浄液が、純水であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法。
【請求項6】
感光性樹脂を具備した版材から成る印刷用凸版であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載する印刷用凸版の製造方法を用いて作製されたことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項7】
感光性樹脂を具備した前記版材が、現像されパターンニングされた感光性樹脂層と、その下に少なくとも一層以上の耐溶剤性層と、前記耐溶剤性層の下に少なくとも一層以上の接着性層と、さらに前記接着性層を介してその下部に基材を有することを特徴とする請求項6に記載する印刷用凸版。
【請求項8】
請求項6または7に記載する印刷用凸版を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子基板上にパターンを形成する印刷工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−248199(P2011−248199A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122711(P2010−122711)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】