説明

印刷用凸版及びその印刷用凸版の製造方法及び精密印刷製造物

【課題】
低粘度のインキ液を用いて印刷用凸版を用いて印刷する際における上記のような印刷再現性の低下、特に精密部品に対するパターン印刷における再現性の低下やパターン膜の不均一の発生を解消する印刷用凸版及びその印刷用凸版の製造方法及び精密印刷製造物を提供する。
【解決手段】
凸状部を備えた電子材料の印刷用凸版であって、該凸版の凹状部に、該電子材料インキとの接触角が30°〜90°である撥液剤層が形成されていることを特徴とする電子材料の印刷用凸版を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子など精密部品製造用の基板等の被印刷体に、インキ化した材料を印刷方式にてパターン印刷するために使用する印刷用凸版及びその印刷用凸版の製造方法及び精密印刷製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機EL素子は、二つの対向する電極基板の間に、有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことにより発光させるものであるが、効率良く発光させるには、発光層の膜厚のコントロールが重要であり、例えば膜厚100nm程度に極めて薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには、高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
基板等に形成する有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は、基板に抵抗加熱蒸着法(真空蒸着法)等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほど、パターニング精度が出難いという問題がある。
【0004】
そこで、最近では基板等に形成する有機発光材料に高分子材料を用い、この有機発光材料を溶剤に溶かしてインキ化して塗工インキ液にした後、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたり、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しいく、塗り分けパターニングを得意とする印刷法によるパターン印刷による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
【0005】
さらに、各種印刷法の中でも、有機EL素子やディスプレイでは、基板としてガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きである。そのために、弾性を有するゴム製の印刷版を用いた印刷法や、ゴム製の印刷用ブランケットを用いたオフセット印刷法や、弾性を有するゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法等が適性な印刷法として採用することができる。実際に、これらの印刷法の試みとして、オフセット印刷によるパターン印刷方法(特許文献1)、凸版印刷によるパターン印刷方法(特許文献2)などが提唱されている。
【0006】
以下に、本発明に関連する特許文献を記載する。
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【特許文献3】特開2001−155861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法といった各印刷法に使用する印刷、塗工用の粘稠状(又はチクソトロピー状)のインキ又は液状のインキ(インキ液)には、最適な粘度があることが知られており、特に液状のインキには、増粘剤といった粘度調整剤を添加するのが一般的である。
【0008】
一方、有機発光材料を印刷法により印刷して成膜する場合、有機発光材料は、水やアルコール、有機溶剤といった溶媒(必要に応じてバインダー樹脂)中に、分散もしくは溶解させることにより、印刷、塗工用のインキ液としてインキ化するものである。
【0009】
しかしながら、一般的なインキ化可能な有機発光材料は、溶媒に対する溶解性が高い場合であっても、溶媒に対する最大固形分比が5%程度であり、これを超えると有機発光材料が固体として析出してしまい、インキ液の高粘度化は難しい。
【0010】
特に有機発光材料をパターン成膜し、素子として駆動させる場合、その素子の耐久性は有機発光材料により成膜される膜の純度が高い方が良いとされているため、有機発光材料の膜中に残留する増粘剤などは純度を低下させる要因となるため添加することができず、この理由からも有機発光材料のインキ液の高粘度化は難しい。
【0011】
その結果、有機発光材料のインキ液を用いて凸版印刷法により印刷しようとした場合、インキ液が低粘度であるために、印刷用凸版の凸状部の頂部面に付着したインキ液が、非画線部である低位部や凹状部にまで流れ込んで、そのまま残留してしまい、有機発光材料の膜パターンの印刷再現性が悪く、膜パターンの膜厚の不均一が発生したりして、印刷物を再現性良く生産することが難しい。
【0012】
本発明の課題は、上記問題を解決するための印刷用凸版及びその印刷用凸版を用いて印刷した精密印刷製造物を提供することにあり、低粘度のインキ液を用いて印刷用凸版を用いて印刷する際における上記のような印刷再現性の低下、特に精密部品に対するパターン印刷における再現性の低下やパターン膜の不均一の発生を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、凸状部を備えた印刷用凸版であって、該凸版の凹状部に、インキとの接触角が30°〜90°である撥液剤層が形成されていることを特徴とする印刷用凸版である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の印刷用凸版において、凸状部の頂部面と凹状部の表面自由エネルギーの差が15mN/mであることを特徴とする印刷用凸版である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の撥液剤層がフッ素系素材からなることを特徴とする印刷用凸版である。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載の撥液剤層がシリコーン系素材からなることを特徴とする印刷用凸版である。
【0017】
本発明の請求項5に係る発明は、凸状部を備えた印刷用凸版であって、該凸版の凹状部に、インキとの接触角が30°〜90°である撥液剤層が形成されており、凸状部の頂部面と凹状部の表面自由エネルギーの差が15mN/mであることを特徴とする印刷用凸版の製造方法において、該凸版に撥液材料をコーティングした後、サンドペーパにて、該凸状部の頂部面より撥液剤を除去して撥液剤層を形成したことを特徴とする印刷用凸版の製造方法である。
【0018】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1から4何れかに記載の印刷用凸版を用いて、印刷方式により、インキ液化した材料が、精密部品製造用の基板等の被印刷体にパターン印刷されていることを特徴とする精密印刷製造物である。
【0019】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項5記載の方法で製造された印刷用凸版を用いて、印刷方式により、インキ液化した材料が、精密部品製造用の基板等の被印刷体にパターン印刷されていることを特徴とする精密印刷製造物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の印刷用凸版は、凸状部の周囲の低位部や凹部に有機発光材料のインキ液が流入して付着しないように、凹部に対して撥液性を有する材料をコーティングして形成されている。
【0021】
本発明の印刷用凸版にて、有機発光材料インキ液などの低粘度のインキ液を用いて凸版印刷法(又は凸版オフセット印刷法)により印刷した場合、たとえインキ液が低粘度であっても、凸状部における頂部面以外の非画線部である低位部及び凹状部が、インキ液撥液性材料をコーティングして形成されているため、インキ供給手段にて凸状部の頂部面に付着したインキは、その頂部面から低位部及び凹状部内に向かって流れ込もうとする際に、インキ液撥液性を有する前記低位部及び凹状部内によって弾かれて流れ込むことがない。
【0022】
本発明の印刷用凸版は、凹状部へのインキ流入を防げる構造となっている為、低粘度のインキ液を用いた凸版オフセット印刷方式による印刷においては、従来のような単層構成の印刷用凸版と比較して、画像やパターンの印刷再現性を向上させることができ、印刷されたインキ膜厚の均一性が向上でき、例えば、有機発光材料等の低粘度インキ液を用いた凸版印刷方式(又は凸版オフセット印刷方式)による膜パターンの印刷や、精密部品製造用の基板等の被印刷体に対する膜パターンの印刷において再現性が良く、精密印刷製造物をパターン再現性良く生産することができる効果がある。
【0023】
凸版印刷法により印刷を行う際、凸版の側面にインキが流入することにより、膜厚が所望の膜厚からずれてしまうという減少を防ぐことが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態における有機EL素子作製のための印刷用凸版の側断面図であり、1aは凸版のベース基材層であり、1bはベース基材層1a上の凸状部形成材層(以下単に凸状部と云う)であり、2は有機発光材料を含む塗工インキ液に対して撥液性を有するインキ撥液性層である。
【0026】
版の作製は、図1に示す通りであり、ベース基材層1aと凸状部形成層1bからなる凸版に後に示すようなインキ撥液性材料をコーティングし、凸状部の頂部面のインキ撥液性材料を除去することにより製造される。
【0027】
撥液性材料のコーティング方法としては、一般的なスプレーコート、カーテンコート、ダイコート、ディップコート法など、一般的なコーテイング方法が適用される。中でも、スプレーコート、ディップコートは簡便であるため好ましい。
【0028】
凸状部の頂部面のインキの除去には、サンドペーパを用いることが簡便で好ましい。凸状部の頂部面の表面粗さが、インキの転移量に大きく影響する為、サンドペーパの粗さを変えることで、インキの転移量を制御することが可能である。
【0029】
インキ撥液性層には、使用する塗工インキ液に対する撥液性を有する材料を用いるが、フッ素原子を分子骨格に有する添加剤を加えた樹脂材料や、フッ素系エラストマーや、ポ
リ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンや、それらの共重合体といったフッ素系ポリマーなどから一種類以上を選択することが望ましい。また、シリコーン系の材料も撥インキ性を示す為用いることができる。
【0030】
凸状部形成材層としては、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子を用いることができる。
【0031】
なかでも、水溶性ポリマーを主成分として含む材料は、塗工インキ液の成分である有機発光材料の溶液や分散液を構成している有機溶剤への耐性も高いため、これを用いることも望ましい。
【0032】
ただし、有機発光材料を含む塗工インキ液に対する側面部の接触角の大きさは、インキ撥液剤層により30°から90°であることが望ましい。さらには60°から90°の間にあることがより好ましい。凸状部の頂部面の濡れ接触角の大きさは、側面部よりも小さいことが望ましく、20°以下であることがより好ましい。
【0033】
ここで塗工インキ液としては、例えば、有機発光材料と、沸点が70℃以上180℃未満の溶剤と、沸点が180℃以上270℃以下の溶剤とからなるものがある。その場合、沸点が180℃以上270℃以下の溶剤のインキに対する重量比は、5wt%以上30wt%以下が適当である。
【0034】
沸点が180℃以上270℃以下の溶剤としては、例えば、2,3−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、トリメチルアニソール、テトラリン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、シクロヘキシルベンゼン、n−アミルベンゼン、tert−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジメチルスルホキシドの中から1種、又は複数種を選択したものである。
【0035】
有機発光材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子中に低分子の蛍光色素を溶解させたものや、ポリフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリアルキルフルオレン誘導体(PAF)等の高分子発光体が用いられる。これらの高分子有機発光材料(高分子EL素子用発光材料)は、溶剤に溶解又は安定して分散でき、インキ化することによって塗布法や印刷法により製膜することができるため、低分子発光材料を用いた有機EL素子の製造と比較して、大気圧下での製膜が可能であり、設備コストが安いという利点がある。
【0036】
凸版Sとしては、先に記述した、材質を用いることが出来るが、市販のフレキソ版や樹脂凸版を用いることが出来る。
【0037】
本発明の印刷用凸版は、凸版印刷法(印刷用凸版を用いて印刷する印刷機)による印刷機に装着して印刷することができ、例えば、円圧式の凸版印刷機、又は円圧式の凸版オフセット印刷機などに装着して印刷することができる。
【0038】
例えば、円圧式の凸版印刷機としては、図2に示すような印刷機がある。図示するように、インキタンク3とインキ供給部であるインキ吐出部4(チャンバー)と矢印方向に回転するアニロックスロール5(金属製又は樹脂製の硬質ロール、又は適度な弾力性のある
硬質ロール)と、本発明の印刷用凸版を周面に装着可能な矢印方向に回転する版胴6を備えている。版胴6の下方には、水平方向(矢印方向)に反復移動する被印刷体固定定盤8を備え、該定盤8上には被印刷体7が装着固定されている。
【0039】
インキタンク3にはインキが収容されており、インキ吐出部4にはインキタンク3よりインキが送り込まれるようになっている。アニロックスロール5は、インキ吐出部4に近接し、版胴6の印刷用凸版に接して回転するようになっている。
【0040】
アニロックスロール5の回転に伴い、インキ吐出部4からアニロックスロール5の周面に吐出したインキ5aは、ドクター9などにより均一な膜厚に掻き取られ、アニロックスロール5の周面に均一な膜厚のインキ膜として転移する。その後、版胴6に取り付けられた印刷用凸版の凸状部の頂部面に、前記アニロックスロール5周面のインキ5aが均一な膜厚にて転移する。
【0041】
さらに、被印刷体固定定盤8上の被印刷体7(印刷基板)は、印刷用凸版の凸状部による凸部パターンと被印刷体7との位相位置を調整する位置調整機構により位相位置を調整しながら図2に示すように印刷開始位置まで図面左方向に水平移動する。
【0042】
その後に、被印刷体固定定盤8は、被印刷体7面に版胴6の印刷用凸版の凸状部を所定印圧にて接触させながら、版胴6の回転速度に整合して図面右方向に水平移動し、印刷用凸版の凸状部の頂部面のインキ5aによる凸状部パターンを被印刷体7面に印刷し、撥液剤層を形成する。
【0043】
印刷後の前記被印刷体7は、被印刷体固定定盤8上から取り除かれた後、次の被印刷体7が被印刷体固定定盤8上に装着固定される。この動作を繰り返すことにより印刷が実施される。
【0044】
また、円圧式の凸版オフセット印刷機としては図示しないが、シリンダー状の回転するブランケット胴と、定位置に固定配置された平坦な圧定盤とによる印刷機がある。これは平坦な印刷用凸版を水平に載置して位置決め固定する平坦な版固定定盤と、被印刷体(印刷基板)を水平に載置して位置決め固定する平坦な被印刷体固定定盤(圧定盤)と、前記版固定定盤上に載置固定した印刷用凸版を周接移動(転動)して、凸状部の頂部面にインキを付着させるインキ供給ローラーと、インキ供給ローラーが待機中に印刷用凸版を周接移動(転動)して凸状部の頂部面に付着しているインキを表面ゴム製のブランケット面に転移させ、さらに転動してブランケット面に転移した前記インキを被印刷体固定定盤上に載置固定した被印刷体(印刷基板)に転写して印刷するブランケット胴を備えている。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の印刷用凸版の具体的実施例について説明する。
【0046】
<実施例1>
(発光層形成用塗工インキ液の調製)
高分子蛍光体(又は高分子蛍光体と結着用の高分子樹脂)をキシレンに塗工インキ液濃度が1.0重量%となるように溶解させ、発光層形成用塗工インキ液5aを調製した。ここで高分子蛍光体とは、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる発光材料を示す。
【0047】
(被印刷基板の作製)
150mm角、厚さ0.4mmのガラス基板上に、表面抵抗率15ΩのITO膜を回路パターン状に成膜した透明電極作製用基材(ジオマテック(株)製)の前記ITO膜面に
、スピンコーターを用いて正孔輸送層として、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらに、この成膜されたPEDOT/PSS薄膜を、減圧下180℃にて、1時間乾燥することにより、被印刷基板7(印刷基板)を作製した。
【0048】
(印刷用凸版の作製;凸状部として、水溶性ポリマーを使用し、インキ撥液剤として、フッ素含有物を用いた。)
ベース基材1aとして、厚さ0.3mmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に、凸状部1bとして水溶性ポリマー(水溶性樹脂)を150℃で過熱溶融したものを、スピンコート法により0.1μmの厚さで形成して、凸状部1bの形成層を積層形成した。
【0049】
続いて、レーザーアブレーション法により、1bを凸型に成形し、凸版Sを作製した。続いて、凸版Sを3M社製フッ素樹脂コーティング剤EGC−1720にディップコートし、同社溶剤HFE−7100にて何度か洗い流した。室温放置にて、乾燥し#3000サンドペーパにて表面を削り落とし、本発明の凸版を作製した。
【0050】
(印刷用凸版Sによる発光層形成用塗工インキ液の印刷)
まず、図1に示すような本発明の印刷用凸版を、凸版印刷法による円圧式凸版印刷機(図2参照)の版胴6の周面に装着固定し、被印刷体7(印刷基板)を、被印刷体固定定盤7上に載置固定した。
【0051】
そして、アニロックスロール5及び版胴6を回転させて、発光層形成用の塗工インキ液5aを、アニロックスロール5(インキ供給ローラー)の周面に均一膜にて供給し、該アニロックスロール5を介して、印刷用凸版の凸状部の頂部面にインキ液5a供給した。その後、被印刷体7(印刷基板)のITO膜パターン形成面側に該ITO膜パターンに整合させて、前記頂部面によるパターン状の塗工インキ液5aの印刷を行った。
【0052】
印刷した後の被印刷基板7(印刷基板)は、150℃にて5時間の環境下にて塗工インキ液5aを乾燥した後、該塗工インキ液14aによる発光層上から、カルシウム7nm、アルミニウム80nmを積層形成して、陰極用の発光層基板である有機EL素子とした。
【0053】
<比較例1>
(フッ素樹脂をコーティングしない場合)
実施例1におけるフッ素樹脂のコーティングを行わない以外は、上記実施例1と同様にして印刷用凸版を作製し、該印刷用凸版による発光層形成用塗工インキ液の印刷を行って、陰極用の発光層基板である有機EL素子とした。
【0054】
<比較結果>
上記実施例1により作製した有機EL素子は、ITO膜を介して電圧をかけ、発光状態の確認を行ったところ、発光層の膜厚が均一であり、発光ムラは見られなかったが、比較例1により作製した有機EL素子は、ITO膜を介して電圧をかけ、発光状態の確認を行ったところ、発光層の膜厚が不均一なことによる発光ムラが見られた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の印刷用凸版の概要側断面図。
【図2】印刷機模式図
【符号の説明】
【0056】
S…印刷用凸版
1a…ベース基材層
1b…凸状部形成材層
2…インキ撥液性層
3…インキタンク
4…インキ吐出部
5…アニックスロール
5a…インキ
6…版胴
7…被印刷体
8…定盤
9…ドクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状部を備えた印刷用凸版であって、該凸版の凹状部に、インキとの接触角が30°〜90°である撥液剤層が形成されていることを特徴とする電子材料の印刷用凸版。
【請求項2】
請求項1記載の印刷用凸版において、凸状部の頂部面と凹状部の表面自由エネルギーの差が15mN/mであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項3】
請求項1に記載の撥液剤層がフッ素系素材からなることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項4】
請求項1に記載の撥液剤層がシリコーン系素材からなることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項5】
凸状部を備えた印刷用凸版であって、該凸版の凹状部に、インキとの接触角が30°〜90°である撥液剤層が形成されており、凸状部の頂部面と凹状部の表面自由エネルギーの差が15mN/mであることを特徴とする印刷用凸版の製造方法において、該凸版に撥液材料をコーティングした後、サンドペーパにて、該凸状部の頂部面より撥液剤を除去して撥液剤層を形成したことを特徴とする印刷用凸版の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4何れかに記載の印刷用凸版を用いて、印刷方式により、インキ液化した材料が、精密部品製造用の基板等の被印刷体にパターン印刷されていることを特徴とする精密印刷製造物。
【請求項7】
請求項5記載の方法で製造された印刷用凸版を用いて、印刷方式により、インキ液化した材料が、精密部品製造用の基板等の被印刷体にパターン印刷されていることを特徴とする精密印刷製造物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−299567(P2007−299567A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125174(P2006−125174)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】