説明

印刷装置、ドライバープログラム、および、印刷方法

【課題】トナーセーブ時など色の淡い文字を印刷する場合において、なるべく色味を変えずに滑らかに再現する技術を提供する。
【解決手段】本発明の印刷装置は、印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定部と、異なるサイズの印字ドットを所定の比率Aで分配して、印刷対象の画像に含まれる各画素を2値化する2値化処理部と、2値化処理部で2値化された画像を印刷する印刷部と、を備え、2値化処理部は、エッジ領域について2値化する場合には、小サイズの印字ドットの上記比率Aを高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、ドライバープログラム、および、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置では、トナーセーブ時など色の淡い文字を印刷する場合には、2値化処理により、文字の輪郭がギザギザになることがある。また、文字の大きさによっては、つぶれてしまうこともある。
【0003】
これを改善するために、トナーセーブ時など色の淡い文字を印刷する場合には、色の階調値を最大濃度に変更して、滑らかに再現する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、色の階調値を最大濃度に変更してしまうと、色味が大きく変わってしまうことがある。
【0006】
本発明は、トナーセーブ時など色の淡い文字を印刷する場合において、なるべく色味を変えずに滑らかに再現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本願発明は、印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定部と、異なるサイズの印字ドットを所定の比率で分配して、前記画像に含まれる各画素を2値化する2値化処理部と、前記2値化処理部で2値化された画像を印刷する印刷部と、を備え前記2値化処理部は、前記エッジ領域について2値化する場合には、小サイズの印字ドットの前記比率を高くする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の印刷システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】印刷処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】(A)入力画像(CMYK画像)の一例を示す図である。(B)オブジェクトのエッジ領域を示す図である。(C)滲み軽減領域を示す図である。(D)出力画像を示す図である。
【図4】(A)通常領域(エッジ領域以外)用の濃淡分配テーブルの一例をグラフ化した図である。(B)エッジ領域用の濃淡分配テーブルの一例をグラフ化した図である。
【図5】(A)通常領域(エッジ領域以外)用のドットサイズ分配テーブルの一例をグラフ化した図である。(B)エッジ領域用のドットサイズ分配テーブルの一例をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態が適用された印刷システム10の概略構成の一例を示すブロック図である。図示するように、印刷システム10は、情報処理装置(ホストPC)100と、プリンター200と、を備える。情報処理装置100は、プリンター100のホストコンピューターとして機能する。そして、情報処理装置100には、例えば、LAN等のコンピューターネットワークやUSBケーブルを介して通信可能に、プリンター200が接続されている。
【0011】
情報処理装置100は、不図示の、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、ハードディスクと、ディスプレイ等からなる出力装置と、キーボード、マウス等からなる入力装置と、プリンター200とデータの送受信を行う通信インターフェイスと、を備える一般的なコンピューターである。
【0012】
そして、情報処理装置100には、図示するように、画像記憶部101と、入力受付部102と、色変換部103と、トナーセーブ処理部104と、2値化処理部105と、印刷処理部106と、が構築される。画像記憶部101は、RAM、ROM、ハードディスクなどの記憶装置により構築される。また、画像記憶部101以外の各ユニット102〜106は、情報処理装置100が備えるROMなどからRAMにロードされたコンピュータープログラムを、CPUが実行することにより構築される。
【0013】
画像記憶部101は、印刷対象の画像を記憶する。印刷対象の画像には、例えば、写真やイラスト等の画像が含まれる。また、印刷対象の画像には、画像内のオブジェクト(「処理対象」ともよぶ。例えば、グラフィックや文字)を特定可能な情報(以下では「属性情報X」とよぶ)が、画素ごとに付加されている。
【0014】
入力受付部102は、上述した入力装置(キーボード、マウス等)を介して、ユーザーからの指示を受け付ける。
【0015】
色変換部103は、RGB画像である印刷対象の画像を、CMYK画像に変換する。なお、色変換部103は、印刷対象の画像に付加されていた属性情報Xを、そのままCMYK画像に付加しておく。
【0016】
トナーセーブ処理部104は、CMYK画像を、色(シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックK)ごとに補正する。具体的には、トナーセーブ処理部104は、濃色と淡色のトナーが用意されている色については、濃色と淡色を所定の濃淡比率で分配して、CMYK画像に含まれる各画素の階調値を決定する。また、トナーセーブ処理部104は、トナーセーブ時においては、印刷対象の画像に含まれるオブジェクトのエッジ領域と、それ以外の領域とで、濃色と淡色を分配する濃淡比率を異ならせる。こうして、オブジェクトのエッジ領域を、色味を変えずに滑らかに再現できる。
【0017】
なお、濃色の濃淡比率は、例えば、「(濃色の階調値)/(濃色の階調値の上限値)」で計算でき、淡色の濃淡比率は、例えば、「(淡色の階調値)/(淡色の階調値の上限値)」で計算できる。
【0018】
また、トナーセーブ処理部104は、オブジェクトのエッジ領域の周辺に、特定の領域(以下では、「滲み軽減領域」とよぶ)を設け、その領域については色を発生させないように補正する。こうすることにより、オブジェクトのエッジ領域についての滑らかさが向上する。
【0019】
なお、トナーセーブ処理部104による補正後のCMYK画像を、C’M’Y’K’画像とよぶ。
【0020】
2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像を、2値化する処理を行う。具体的には、2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像の階調値に応じて、印字ドットの発生数を決定する。ただし、本実施形態のプリンター200は、異なるサイズ(例えば、「大」、「中」、「小」)の印字ドットで印字可能であり、2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像の色ごとの階調値に応じて、異なるサイズの印字ドットを所定の分配比率で分配する。また、2値化処理部105は、トナーセーブ時においては、印刷対象の画像に含まれるオブジェクトのエッジ領域と、それ以外の領域とで、異なるサイズの印字ドットの分配比率を異ならせる。こうして、オブジェクトのエッジ領域を、色味を変えずに、いっそう滑らかに再現できる。
【0021】
なお、小ドットの分配比率は、例えば、「(小サイズの印字ドットの発生数)/(小サイズの印字ドットの上限数)」で計算でき、中ドットの分配比率は、例えば、「(中サイズの印字ドットの発生数)/(中サイズの印字ドットの上限数)」で計算でき、大ドットの分配比率は、例えば、「(大サイズの印字ドットの発生数)/(大サイズの印字ドットの上限数)」で計算できる。
【0022】
印刷処理部106は、プリンター200で印刷可能な形式の印刷データを生成し、プリンター200に送信する。例えば、印刷処理部106は、2値化処理部105で2値化された後のデータから印刷データを生成する。また、印刷処理部106は、通信インターフェイスを介して印刷データをプリンター200に出力する。なお、ここで、印刷データとは、例えば、ページ記述言語で記述され、プリンター200を制御するコマンド群から構成されている。もちろん、印刷処理部106は、印刷データとコマンド群を、それぞれ別個にプリンター200に出力してもよい。
【0023】
また、プリンター200は、不図示の、CPUと、RAMと、ROMと、通信インターフェイスと、印刷エンジンと、入力装置と、出力装置と、を備える。プリンター200は、情報処理装置100から出力された印刷データとコマンド群を受け付けると、受け付けたコマンド群に従って印刷データを印刷する。なお、プリンター200の構成はこれに限定されるものではない。例えば、プリンター200は、さらに、USBインターフェイスなどを備えていてもよい。また、プリンター200は、印刷機能を有していれば、例えば、スキャナー装置、複合機、FAX装置などでもよい。
【0024】
本実施形態が適用された印刷システム10は、以上のような構成からなる。ただし、印刷システム10の構成はこれに限定されない。
【0025】
また、上記した各構成要素は、印刷システム10の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。印刷システム10の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0026】
次に、上記構成からなる印刷システム10の特徴的な動作について説明する。
【0027】
<印刷処理>
図2は、本実施形態の情報処理装置100で実行される印刷処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0028】
情報処理装置100は、所定のタイミングで本フローを開始する。例えば、画像記憶部101に格納された印刷対象の画像(RGB画像)が、色変換部103でCMYK画像に変換されたタイミングで本フローを開始する。
【0029】
本フローを開始すると、情報処理装置100のトナーセーブ処理部104は、画像記憶部101からCMYK画像を入力画像として読み出す(ステップS101)。なお、ここで読み出されたCMYK画像には、画素ごとの属性情報Xが付加されている。
【0030】
次に、トナーセーブ処理部104は、ステップS101で読み出したCMYK画像に付加されている属性情報Xを用いて、各画素を分類する(ステップS102)。具体的には、トナーセーブ処理部104は、オブジェクト(例えば、グラフィックや文字)であることを示す属性情報Xが付加されている画素については、オブジェクト領域に属する画素として分類する。また、背景であることを示す属性情報Xが付加されている画素については、背景の領域に属する画素として分類する。
【0031】
図3(A)は、入力画像(CMYK画像)の一例を示す図である。入力画像に含まれる各画素を、正方形で表している。また、CMYK画像には、属性情報Xが付加されており、図示する斜線部分の画素は、オブジェクト領域に分類されたことを表す。一方、斜線部分以外の画素については、背景の領域に分類されたことを表す。
【0032】
また、トナーセーブ処理部104は、オブジェクト領域に分類した画素のうち、オブジェクトのエッジ部分の画素については、エッジ領域に属する画素として分類する。このとき、トナーセーブ処理部104は、エッジ領域に分類された画素に付加されている属性情報Xを、オブジェクトのエッジ部分であることを示す情報に書き換える。
【0033】
図3(B)は、オブジェクトのエッジ領域の一例を示す図である。図示する黒塗り部分の画素は、エッジ領域に分類されたことを表す。
【0034】
また、トナーセーブ処理部104は、オブジェクトのエッジ領域周辺の画素について、滲み軽減領域に属する画素として分類する。このとき、トナーセーブ処理部104は、滲み軽減領域に分類された画素に付加されている属性情報Xを、滲み軽減領域に分類されたことを示す情報に書き換える。
【0035】
図3(C)は、滲み軽減領域の一例を示す図である。図示する網掛け部分の画素は、滲み軽減領域に分類されたことを表す。
【0036】
トナーセーブ処理部104は、上記のように各画素を分類後、処理をステップS103に移行する。
【0037】
処理がステップS103に移行すると、トナーセーブ処理部104は、トナーセーブ処理(後述するステップS104)で用いる濃淡分配テーブルを読み出す(ステップS103)。具体的には、トナーセーブ処理部104は、トナーセーブの設定がされているか否か判定し、トナーセーブの設定がされている場合には、通常領域用の濃淡分配テーブルと、エッジ領域用の濃淡分配テーブルと、をROM等の記憶装置から読み出す。一方、トナーセーブの設定がされていない場合には、通常領域用の濃淡分配テーブルのみをROM等の記憶装置から読み出す。なお、通常領域用の濃淡分配テーブルおよびエッジ領域用の濃淡分配テーブルは、それぞれ予めROM等の記憶装置に格納されているものとする。
【0038】
続いて、トナーセーブ処理部104は、トナーセーブの設定がされている場合に、トナーセーブ処理を行う(ステップS104)。
【0039】
具体的には、トナーセーブ処理部104は、ステップS102でエッジ領域以外の領域に分類された画素について、通常領域用の濃淡分配テーブルを用いて、各色(C、M、Y、K)の階調値を補正する。また、トナーセーブ処理部104は、ステップS102でエッジ領域に分類された画素については、エッジ領域用の濃淡分配テーブルを用いて、各色(C、M、Y、K)の階調値を補正する。
【0040】
すなわち、トナーセーブ処理部104は、エッジ領域と、エッジ領域以外の領域で、異なる濃淡分配テーブルを用いて補正を行う。こうして、エッジ領域に分類された画素と、それ以外の領域に分類された画素で、濃色と淡色を分配する濃淡比率を異ならせることができる。
【0041】
図4(A)は、通常領域用の濃淡分配テーブルの一例をグラフ化した図である。点線は、濃色トナー用の濃淡分配テーブルに対応し、実線は、淡色トナー用の濃淡分配テーブルに対応する。また、図4(B)は、エッジ領域用の濃淡分配テーブルの一例をグラフ化した図である。点線は、濃色トナー用の濃淡分配テーブルに対応し、実線は、淡色トナー用の濃淡分配テーブルに対応する。
【0042】
図示するように、エッジ領域用の濃淡分配テーブルでは、淡色トナー用のテーブルにおいて出力階調値が頂点となるときの入力階調値(図示する「B」)は、通常領域用の濃淡分配テーブルを用いる場合(図示する「A」)よりも小さい。そのため、エッジ領域に分類された画素の濃淡比率は、低階調値において、エッジ領域以外の領域に分類された画素よりも、淡色の比率が高くなる。
【0043】
なお、ステップS104の具体的な処理手順について説明すると、例えば、トナーセーブ処理部104は、まず、CMYK画像(入力画像)に含まれる画素のうち、ステップS102でエッジ領域以外に分類された画素について、色ごとに階調値を読み出す。すなわち、トナーセーブ処理部104は、CMYK画像のエッジ領域以外の各画素から、シアンCの階調値、マゼンタMの階調値、イエローYの階調値、ブラックKの階調値を、それぞれ読み出す。
【0044】
それから、トナーセーブ処理部104は、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されている色(例えば、シアンCとマゼンタM)については、読み出した階調値(入力階調値「x1」)に対応付けられている、濃色トナー用の出力階調値「y1」を、濃色トナー用の濃淡分配テーブル(通常領域用)から特定する(図4Aの点線)。
【0045】
これとともに、トナーセーブ処理部104は、読み出した階調値(入力階調値「x1」)に対応付けられている、淡色トナー用の出力階調値「y2」を、淡色トナー用の濃淡分配テーブル(通常領域用)から特定する(図4Aの実線)。
【0046】
ただし、トナーセーブ処理部104は、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されていない色(例えば、イエローYとブラックK)については、読み出した階調値(入力階調値「x1」)を、そのまま出力階調値とする。
【0047】
また、トナーセーブ処理部104は、ステップS102で滲み軽減領域に分類された画素については、色を発生させない出力階調値(例えば、「0」)とする。
【0048】
次に、トナーセーブ処理部104は、CMYK画像(入力画像)に含まれる画素のうち、ステップS102でエッジ領域に分類された画素について、色ごとに階調値を読み出す。すなわち、トナーセーブ処理部104は、CMYK画像のエッジ領域の各画素から、シアンCの階調値、マゼンタMの階調値、イエローYの階調値、ブラックKの階調値を、それぞれ読み出す。
【0049】
それから、トナーセーブ処理部104は、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されている色(例えば、シアンCとマゼンタM)については、読み出した階調値(入力階調値「x1」)に対応付けられている、濃色トナー用の出力階調値「y1’」を、濃色トナー用の濃淡分配テーブル(エッジ領域用)から特定する(図4Bの点線)。
【0050】
これとともに、トナーセーブ処理部104は、読み出した階調値(入力階調値「x1」)に対応付けられている、淡色トナー用の出力階調値「y2’」を、淡色トナー用の濃淡分配テーブル(エッジ領域用)から特定する(図4Bの実線)。
【0051】
ただし、トナーセーブ処理部104は、エッジ領域の画素においても、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されていない色(例えば、イエローYとブラックK)については、読み出した階調値(入力階調値「x1」)を、そのまま出力階調値とする。
【0052】
そして、トナーセーブ処理部104は、画素ごとに特定した各色の出力階調値を、補正後の画像(C’M’Y’K’画像)として2値化処理部105へ出力する。もちろん、本実施形態では、シアンCとマゼンタMについては、濃色と淡色の2色の出力階調値が出力される。
【0053】
以上のように、トナーセーブ処理部104は、ステップS104の処理を行う。ただし、トナーセーブの設定がされていない場合には、トナーセーブ処理部104は、エッジ領域に分類された画素についても、通常領域用の濃淡分配テーブルを用いて、各色(C、M、Y、K)の階調値を補正するようにする。
【0054】
また、トナーセーブ処理部104は、オブジェクト内の領域であって、エッジ領域でも滲み軽減領域でもない領域に対して、印刷時のトナー消費量を削減する処理を施す。
【0055】
図3(D)は、トナーセーブ処理部104から出力される画像(C’M’Y’K’画像)の一例を示す図である。図示する縦線部分の画素は、エッジ領域であり、ステップS104で決定された濃淡比率で濃色と淡色が分配されている。また、図示する横線部分の画素は、エッジ領域でも滲み軽減領域でもない領域であり、トナー消費量を一定量削減するための色が指定されている。また、滲み軽減領域については色を発生させていない。
【0056】
次に、2値化処理部105は、2値化処理(後述するステップS106)で用いるドットサイズ分配テーブルを読み出す(ステップS105)。具体的には、2値化処理部105は、トナーセーブの設定がされているか否か判定し、トナーセーブの設定がされている場合には、通常領域用のドットサイズ分配テーブルと、エッジ領域用のドットサイズ分配テーブルと、をROM等の記憶装置から読み出す。一方、トナーセーブの設定がされていない場合には、通常領域用のドットサイズ分配テーブルのみをROM等の記憶装置から読み出す。なお、通常領域用のドットサイズ分配テーブルおよびエッジ領域用のドットサイズ分配テーブルは、それぞれ予めROM等の記憶装置に格納されているものとする。
【0057】
続いて、2値化処理部105は、2値化処理を行う(ステップS106)。
【0058】
具体的には、2値化処理部105は、ステップS102でエッジ領域以外の領域に分類された画素について、通常領域用のドットサイズ分配テーブルを用いて、異なるサイズ(例えば、「大」、「中」、「小」)の印字ドットを分配する。また、2値化処理部105は、ステップS102でエッジ領域に分類された画素については、エッジ領域用のドットサイズ分配テーブルを用いて、異なるサイズの印字ドットを分配する。
【0059】
すなわち、2値化処理部105は、エッジ領域と、エッジ領域以外の領域で、異なるドットサイズ分配テーブルを用いて、異なるサイズの印字ドットを分配する。こうして、エッジ領域に分類された画素と、それ以外の領域に分類された画素で、異なるサイズの印字ドットの分配比率を異ならせることができる。
【0060】
図5(A)は、通常領域用のドットサイズ分配テーブルの一例をグラフ化した図である。実線は、小ドット(小サイズの印字ドット)用のドットサイズ分配テーブルに対応し、点線は、中ドット(中サイズの印字ドット)用のドットサイズ分配テーブルに対応し、一点鎖線は、大ドット(大サイズの印字ドット)用のドットサイズ分配テーブルに対応する。また、図5(B)は、エッジ領域用のドットサイズ分配テーブルの一例をグラフ化した図である。実線は、小ドット用のドットサイズ分配テーブルに対応し、点線は、中ドット用のドットサイズ分配テーブルに対応し、一点鎖線は、大ドット用のドットサイズ分配テーブルに対応する。
【0061】
図示するようなエッジ領域用のドットサイズ分配テーブルを採用することにより、エッジ領域に分類された画素については、エッジ領域以外の領域に分類された画素よりも、小ドットの発生率が高くなる。
【0062】
なお、ステップS106の具体的な処理手順について説明すると、例えば、2値化処理部105は、まず、C’M’Y’K’画像に含まれる画素のうち、ステップS102でエッジ領域以外に分類された画素について、色ごとに階調値(上述の出力階調値)を読み出す。すなわち、2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像のエッジ領域以外の各画素から、シアンCの出力階調値、マゼンタMの出力階調値、イエローYの出力階調値、ブラックKの出力階調値を、それぞれ読み出す。
【0063】
それから、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、小ドットの発生数「z1」を、小ドット用のドットサイズ分配テーブル(通常領域用)から特定する(図5Aの実線)。
【0064】
これとともに、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、中ドットの発生数「z2」を、中ドット用のドットサイズ分配テーブル(通常領域用)から特定する(図5Aの点線)。
【0065】
さらに、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、大ドットの発生数「z3」を、大ドット用のドットサイズ分配テーブル(通常領域用)から特定する(図5Aの一点鎖線)。
【0066】
次に、2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像に含まれる画素のうち、ステップS102でエッジ領域に分類された画素について、色ごとに階調値(上述の出力階調値)を読み出す。すなわち、2値化処理部105は、C’M’Y’K’画像のエッジ領域の各画素から、シアンCの出力階調値、マゼンタMの出力階調値、イエローYの出力階調値、ブラックKの出力階調値を、それぞれ読み出す。
【0067】
それから、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、小ドットの発生数「z1’」を、小ドット用のドットサイズ分配テーブル(エッジ領域用)から特定する(図5Aの実線)。
【0068】
これとともに、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、中ドットの発生数「z2’」を、中ドット用のドットサイズ分配テーブル(エッジ領域用)から特定する(図5Aの点線)。
【0069】
さらに、2値化処理部105は、読み出した出力階調値(例えば、「y1」)に対応付けられている、大ドットの発生数「z3’」を、大ドット用のドットサイズ分配テーブル(エッジ領域用)から特定する(図5Aの一点鎖線)。
【0070】
そして、2値化処理部105は、各画素について色ごとに特定したドットサイズの発生数に従って、「大」、「中」、「小」の印字ドットの発生数を決定する。そして、2値化処理部105は、決定した印字ドットの発生数(すなわち、2値化処理後の画像データ)を、印刷処理部106に通知する。
【0071】
以上のように、2値化処理部105は、ステップS106の処理を行う。ただし、トナーセーブの設定がされていない場合には、2値化処理部105は、エッジ領域に分類された画素についても、通常領域用のドットサイズ分配テーブルを用いて、各ドットサイズの発生数を決定するようにする。
【0072】
印刷処理部106は、2値化処理部105で2値化された後の画像データに基づいて、プリンター200で印刷可能な形式の印刷データを生成し、出力する(ステップS107)。具体的には、印刷処理部106は、ステップS106で決定された発生数分、「大」の印字ドットと、「中」の印字ドットと、「小」の印字ドット、を発生させるコマンドを、印刷データとともに出力する。
【0073】
印刷データの出力後、印刷処理部106は、本フローを終了する。
【0074】
プリンター200側では、情報処理装置100から出力されたコマンドを受け付けると、当該コマンドとともに受信した印刷データを印刷する。
【0075】
こうして、本実施形態の印刷システム10では、トナーセーブ時において、エッジ領域の画素については、それ以外の領域と比較して、淡色の比率を高くし、かつ、小サイズの印字ドットの比率を高くして、印刷することができる。そのため、オブジェクトのエッジ部分について、色味を変えずに滑らかに再現できる。さらに、エッジ部分の周辺に滲み軽減領域を設けているため、エッジ部分の滑らかさが従来よりも向上する。
【0076】
なお、上記実施形態におけるフローの各処理単位は、印刷システム10を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。印刷システム10が行う処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。また、処理ステップの順序についても、これに制限されるものではなく、可能な限り変更することができる。
【0077】
また、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【0078】
例えば、上記実施形態で説明した「大」の印字ドットを「中」の印字ドットで印字するように変更し、上記実施形態で説明した「中」の印字ドットを「小」の印字ドットで印字するように変更し、上記実施形態で説明した「小」の印字ドットについては、印字しないように変更してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、オブジェクトの縁に位置する1画素分の画素を、エッジ領域としている。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、エッジ領域は、オブジェクトの縁に位置する2画素分の画素としてもよい。また、主走査方向と副走査方向で解像度が異なり、2値化処理において拡大処理が行われる場合においては、オブジェクトの縁に位置する半画素分(或いは、1/N画素分)の画素としてもよい。ただし、エッジ領域の幅を、1画素より小さくする場合には、本来の1画素分のエッジ領域のうち、オブジェクトの内側部分(例えば、内側の半画素分)をエッジ領域とすることが好ましい。
【0080】
また、上記実施形態では、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されている色が、シアンCとマゼンタMとして説明している。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、全ての色について、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されていてもよい。また、上記実施形態とは異なる色について、プリンター200に濃色と淡色のトナーが用意されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
100・・・情報処理装置、101・・・画像記憶部、102・・・入力受付部、103・・・色変換、104・・・トナーセーブ処理部、105・・・2値化処理部、106・・・印刷処理部、200・・・プリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定部と、
異なるサイズの印字ドットを所定の比率で分配して、前記画像に含まれる各画素を2値化する2値化処理部と、
前記2値化処理部で2値化された画像を印刷する印刷部と、を備え
前記2値化処理部は、
前記エッジ領域について2値化する場合には、小サイズの印字ドットの前記比率を高くする、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
濃色と淡色を所定の濃淡比率で分配して、前記画像に含まれる各画素の色を決定する色決定部をさらに備え、
前記色決定部は、
前記エッジ領域については、淡色の前記濃淡比率を高くする、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記色決定部は、
前記エッジ領域の周辺領域に色を発生させない領域を設ける、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定部と、
前記画像を構成する各画素の色について決定する色決定部と、
前記色決定部で決定された色に基づいて前記画像を印刷する印刷部と、を備え
前記色決定部は、
前記エッジ領域の周辺領域に色を発生させない領域を設ける、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
コンピューターを、印刷装置を制御する印刷制御装置として機能させるためのドライバープログラムであって、
印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定ステップと、
異なるサイズの印字ドットを所定の比率で分配して、前記画像に含まれる各画素を2値化する2値化処理ステップと、
前記2値化処理ステップで2値化された画像を出力する出力ステップと、を前記コンピューターに実行させ、
前記2値化処理ステップでは、
前記エッジ領域について2値化する場合には、小サイズの印字ドットの前記比率を高くする、
ことを特徴とするドライバープログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のドライバープログラムであって、
濃色と淡色を所定の濃淡比率で分配して、前記画像に含まれる各画素の色を決定する色決定ステップを、さらに前記コンピューターに実行させ、
前記色決定ステップでは、
前記エッジ領域については、淡色の前記濃淡比率を高くする、
ことを特徴とするドライバープログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のドライバープログラムであって、
前記色決定ステップでは、
前記エッジ領域の周辺領域に色を発生させない領域を設ける、
ことを特徴とするドライバープログラム。
【請求項8】
印刷対象の画像に含まれる処理対象のエッジ領域を特定するエッジ特定ステップと、
異なるサイズの印字ドットを所定の比率で分配して、前記画像に含まれる各画素を2値化する2値化処理ステップと、
前記2値化処理ステップで2値化された画像を印刷する印刷ステップと、を行い、
前記2値化処理ステップでは、
前記エッジ領域について2値化する場合には、前記比率を他の領域と異ならせる、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷方法であって、
濃色と淡色を所定の濃淡比率で分配して、前記画像に含まれる各画素の色を決定する色決定ステップをさらに行い、
前記色決定ステップでは、
前記エッジ領域については、淡色の前記濃淡比率を高くする、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷方法であって、
前記色決定ステップでは、
前記エッジ領域の周辺領域に色を発生させない領域を設ける、
ことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148463(P2012−148463A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8477(P2011−8477)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】