印刷装置、印刷制御装置および印刷方法
【課題】ユーザによる特別な操作なしにメタリックカラーを効果的に使用した印刷を行う。
【解決手段】メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置は、画像データを入力する入力部と、入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、特定領域と非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて画像データの印刷を行う印刷部とを備える。
【解決手段】メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置は、画像データを入力する入力部と、入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、特定領域と非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて画像データの印刷を行う印刷部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真の分野において、印刷しようとする画像データのうちの、メタリックカラーが指定された部分については、プロセスカラートナーとメタリックトナーとの両者を用いて印刷し、それ以外の部分は、プロセスカラートナーのみを用いて画像を印刷する技術が提案されている(下記、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−50347号公報
【0004】
しかし、このような技術では、メタリックカラーによって印刷を行う部分を、予めユーザが指定する必要があった。そのため、例えば、コンピュータにインストールされた所定のアプリケーションを利用してメタリックカラーによって印刷する部分を予め指定するという煩雑な作業を、印刷しようとする画像データごとに行う必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、ユーザによる特別な操作なしに、メタリックカラーを効果的に使用した印刷を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と、該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷部とを備える印刷装置。
【0008】
このような態様の印刷装置であれば、所定の特徴を有する特定領域を自動的に抽出し、その特定領域もしくは非特定領域に対して、メタリックインクによる印刷を行うことができる。したがって、ユーザによる特別な操作なしに、特定領域もしくは非特定領域を目立たせることが可能になる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、肌色領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された肌色領域に対する前記メタリックインクの使用を制限し、前記カラーインクによって該肌色領域に対する印刷を行う印刷装置。
【0010】
このような態様の印刷装置であれば、人間の顔や手足など、肌が露出した部分に対してメタリックインクの使用が制限されるので、メタリックインクの使用により不自然な画像が印刷されてしまうことを抑制することが可能になる。
【0011】
[適用例3]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、前記画像データ内の輪郭部分を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された輪郭部分を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0012】
このような態様の印刷装置によれば、建物や山などの画像データ内の被撮像物の輪郭部分を抽出し、この輪郭部分の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷することができる。そのため、被撮像物の存在を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0013】
[適用例4]適用例3に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記抽出された輪郭部分を強調する処理を行う印刷装置。このような態様であれば、被撮像物の存在を更に目立たせることができる。
【0014】
[適用例5]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された文字領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0015】
このような態様の印刷装置によれば、画像中の文字領域について、文字領域の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像内に含まれる文字部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0016】
[適用例6]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、所定の形状を有する所定形状領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された所定形状領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0017】
このような態様の印刷装置によれば、画像中の所定の形状の領域について、その領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の所定の形状部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0018】
[適用例7]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域と、輪郭部分と、肌色領域とを抽出し、前記印刷部は、前記抽出された文字領域と輪郭部分とを、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記抽出された肌色領域に対しては、前記メタリックインクの使用を制限しつつ、前記カラーインクによって該肌色領域に対する印刷を行う印刷装置。
【0019】
このような態様の印刷装置であれば、画像内の様々な特徴部分に応じて、メタリックインクとカラーインクとを効果的に使い分けることができる。
【0020】
なお、本発明は、上述した印刷装置としての態様のほか、印刷装置に印刷を行わせる印刷制御装置や、印刷方法、コンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】印刷システム10の概略構成を示すブロック図である。
【図2】印刷制御装置としてのコンピュータ100の構成を示す説明図である。
【図3】プリンタ200の構成を示す説明図である。
【図4】第1実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図5】L*a*b*色空間における肌色領域の範囲を示す説明図である。
【図6】第2実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図7】第3実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図8】第4実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図9】変形例における印刷処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.実施形態の概要:
B.装置構成:
C.実施例(第1実施例〜第4実施例):
D.変形例:
【0023】
A.実施形態の概要:
図1は、本発明の実施形態としての印刷システム10の概略構成を示すブロック図である。図示するように、本実施形態の印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピュータ100と、コンピュータ100の制御の下で実際に画像を印刷するプリンタ200などから構成されている。印刷システム10は、全体が一体となって広義の印刷装置として機能する。
【0024】
本実施形態のプリンタ200には、カラーインクとして、顔料系シアンインクと、顔料系マゼンタインクと、顔料系イエロインクと、顔料系ブラックインクとが備えられており、更に、光沢を有するメタリックインクが備えられている。メタリックインクとしては、例えば、顔料と有機溶剤と定着樹脂とを含有し、顔料として、平均厚みが30nm以上100nm以下であり、50%体積平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下であり、かつ、粒度分布における最大粒子径が12μm以下の金属箔片を採用するインク組成物を用いることができる。なお、前述のように、本実施形態において「カラーインク」という場合には、ブラックインクも含む意味であるものとする。
【0025】
コンピュータ100には、所定のオペレーティングシステムがインストールされており、このオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム20が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ22やプリンタドライバ24が組み込まれている。アプリケーションプログラム20は、例えば、周辺機器インタフェース108を通じて、デジタルカメラ120から画像データORGを入力する。すると、アプリケーションプログラム20は、ビデオドライバ22を介して、この画像データORGによって表される画像をディスプレイ114に表示する。また、アプリケーションプログラム20は、プリンタドライバ24を介して、画像データORGをプリンタ200に出力する。アプリケーションプログラム20がデジタルカメラ120から入力する画像データORGは、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0026】
プリンタドライバ24の内部には、特定領域抽出モジュール40と、色変換モジュール42と、ハーフトーンモジュール44と、印刷制御モジュール46とが備えられている。
【0027】
特定領域抽出モジュール40は、アプリケーションプログラム20から受け取った画像データORGの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する。特定領域の具体例については、後述する各実施例において説明する。
【0028】
色変換モジュール42は、予め用意された色変換テーブルLUTに従って、画像データORGの色成分R,G,Bをプリンタ200が表現可能な色成分(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各色)に変換する。
【0029】
ハーフトーンモジュール44は、色変換された画像データの階調をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う。本実施形態では、このハーフトーン処理として、周知の組織的ディザ法を用いる。なお、ハーフトーン処理としては、組織的ディザ法以外にも、誤差拡散法や濃度パターン法その他のハーフトーン技術を利用することができる。
【0030】
印刷制御モジュール46は、ハーフトーン処理された画像データのデータの並びを、プリンタ200に転送すべき順序に並べ替えて、印刷データとしてプリンタ200に出力する。また、印刷制御モジュール46は、印刷開始コマンドや印刷終了コマンドなどの種々のコマンドをプリンタ200に出力することで、プリンタ200の制御を行う。
【0031】
本実施形態では、プリンタドライバ24は、特定領域抽出モジュール40によって抽出された特定領域と、この特定領域以外の他の領域(非特定領域)とで、プリンタ200に備えられたメタリックインクとカラーインクとを使い分けて印刷を行う。
【0032】
B.装置構成:
図2は、印刷制御装置としてのコンピュータ100の構成を示す説明図である。コンピュータ100は、CPU102を中心に、ROM104やRAM106などを、バス116で互いに接続することによって構成された周知のコンピュータである。
【0033】
コンピュータ100には、フレキシブルディスク124やコンパクトディスク126等のデータを読み込むためのディスクコントローラ109や、周辺機器とデータの授受を行うための周辺機器インタフェース108、ディスプレイ114を駆動するためのビデオインターフェース112が接続されている。周辺機器インタフェース108には、プリンタ200や、ハードディスク118が接続されている。また、デジタルカメラ120やカラースキャナ122を周辺機器インタフェース108に接続すれば、デジタルカメラ120やカラースキャナ122で取り込んだ画像に対して画像処理を施すことも可能である。また、ネットワークインターフェースカード110を装着すれば、コンピュータ100を通信回線300に接続して、通信回線に接続された記憶装置310に記憶されているデータを取得することもできる。コンピュータ100は、印刷しようとする画像データを取得すると、上述したプリンタドライバ24の働きにより、プリンタ200を制御して、この画像データの印刷を行う。
【0034】
次に、プリンタ200の構成について図3を参照して説明する。図3に示すように、プリンタ200は、紙送りモータ235によって印刷用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ230によってキャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ240に搭載された印字ヘッド241を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ235,キャリッジモータ230,印字ヘッド241および操作パネル256との信号のやり取りを司る制御回路260とから構成されている。
【0035】
キャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構は、プラテン236の軸と並行に架設されキャリッジ240を摺動可能に保持する摺動軸233と、キャリッジモータ230との間に無端の駆動ベルト231を張設するプーリ232と、キャリッジ240の原点位置を検出する位置検出センサ234等から構成されている。
【0036】
キャリッジ240には、カラーインクとして、シアンインク(C)と、マゼンタインク(M)と、イエロインク(Y)と、ブラックインク(K)とをそれぞれ収容したカラーインク用カートリッジ243が搭載される。また、キャリッジ240には、メタリックインク(S)を収容したメタリックインク用カートリッジ242が搭載される。キャリッジ240の下部の印字ヘッド241には、これらの各色に対応する計5種類のインク吐出用ヘッド244ないし248が形成されている。キャリッジ240にこれらのインクカートリッジ242,243を上方から装着すると、各カートリッジから吐出用ヘッド244ないし248へのインクの供給が可能となる。
【0037】
プリンタ200の制御回路260は、CPUや、ROM、RAM、PIF(周辺機器インタフェース)等がバスで相互に接続されて構成されており、キャリッジモータ230および紙送りモータ235の動作を制御することによってキャリッジ240の主走査動作および副走査動作の制御を行う。また、PIFを介してコンピュータ100から出力された印刷データを受け取ると、キャリッジ240が主走査あるいは副走査する動きに合わせて、印刷データに応じた駆動信号をインク吐出用ヘッド244ないし248に供給することによって、これらのヘッドを駆動することが可能となっている。
【0038】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンタ200は、キャリッジモータ230を駆動することによって、各色のインク吐出用ヘッド244ないし247を印刷用紙Pに対して主走査方向に往復動させ、また紙送りモータ235を駆動することによって、印刷用紙Pを副走査方向に移動させる。制御回路260は、キャリッジ240が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷用紙P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンタ200は印刷用紙P上にカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0039】
尚、本実施形態のプリンタ200は、印刷媒体に向けてインク滴を吐出することにより、インクドットを形成する所謂インクジェットプリンタであるものとして説明するが、どのような手法を用いてドットを形成するプリンタであっても構わない。例えば、本願発明は、インク滴を吐出する代わりに、静電気を利用して各色のトナー粉を印刷媒体上に付着させることでドットを形成するプリンタや、ラインプリンタに対しても好適に適用することが可能である。
【0040】
以下、コンピュータ100に組み込まれたプリンタドライバ24の働きにより実行される印刷処理の実施例をいくつか説明する。
【0041】
C.実施例:
(C1)第1実施例:
図4は、第1実施例における印刷処理のフローチャートである。この第1実施例では、コンピュータ100は、特定領域として肌色の領域を抽出し、この肌色領域について、メタリックインクの使用を制限する処理を行う。
【0042】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS100)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、肌色の領域を抽出する(ステップS102)。この抽出処理では、コンピュータ100は、ステップS100で入力したRGB形式の画像データの色空間を、L*a*b*色空間に変換し、変換後のL*,a*,b*の各値が、所定の範囲に含まれる領域を肌色領域として抽出する。図5は、L*a*b*色空間における肌色領域の範囲を示す説明図である。本実施例では、図示するように、L*値が55〜85、a*値が5〜25、b*値が5〜25の直方体内に接する略球形状の範囲を肌色領域とする。
【0043】
肌色領域を抽出すると、続いて、コンピュータ100は、色変換モジュール42を用いて、ステップS100で入力したRGB形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する(ステップS104)。CMYK形式の画像データが得られると、コンピュータ100は、ハーフトーンモジュール44を用いてハーフトーン処理を行い、プリンタ200に転送可能なデータを生成する(ステップS106)。
【0044】
ハーフトーン処理が終了すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS108)。
【0045】
コンピュータ100は、印刷を開始すると、ステップS102で抽出された肌色領域と、現在印刷対象となっている画素(印刷対象画素)の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、肌色領域か非肌色領域かを判断する(ステップS110)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、肌色領域であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素に対するメタリックインクの使用を禁止して(ステップS112)、カラーインクのみでドットを形成する(ステップS114)。
【0046】
一方、現在の印刷対象画素が、非肌色領域であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS116)、メタリックインクとカラーインクとを用いてドットを形成する(ステップS118)。具体的には、現在の印刷対象画素に対して、一定濃度のメタリックインクによるドットを形成し、その上から、カラーインクを用いて、通常のドットを形成する。
【0047】
上記ステップS114あるいはステップS118によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS120)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS110に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0048】
以上で説明した第1実施例の印刷処理によれば、人間の顔や手足など、肌が露出した部分に対するメタリックインクの使用が制限されるので、メタリックインクの使用によって不自然な画像が印刷されてしまうことを抑制することが可能になる。また、肌色以外の領域には、通常のカラーインクに加えて、メタリックインクが一定量付加されるため、印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0049】
(C2)第2実施例:
図6は、第2実施例における印刷処理のフローチャートである。この第2実施例では、コンピュータ100は、特定領域として画像中の被撮像物の輪郭部分(エッジ)を抽出し、この輪郭部分に対してメタリックインクを付与する処理を行う。本実施例では、特定領域抽出モジュール40は、抽出した輪郭部分を強調する機能を有している。
【0050】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS200)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、画像中の被撮像物の輪郭部分を抽出する(ステップS202)。輪郭の抽出は、画像データ中の各画素に、周知のエッジ抽出フィルタ(例えば、ラプラシアンフィルタ)を適用することで抽出することができる。輪郭を抽出すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、抽出された輪郭の全体を、所定の割合(例えば、1.5倍)で太くすることで、輪郭を強調する処理を行う(ステップS204)。
【0051】
続いて、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS206)。
【0052】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS202で抽出されてステップS204で強調された輪郭の領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、輪郭内であるか、輪郭外であるかを判断する(ステップS208)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、輪郭内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS210)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS212)。つまり、現在の印刷対象画素の本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0053】
一方、現在の印刷対象画素が、輪郭外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS214)、および、ハーフトーン処理(216)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS218)。
【0054】
上記ステップS212あるいはステップS218によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS318)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS306に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0055】
以上で説明した第2実施例の印刷処理によれば、建物や山などの被撮像物の輪郭部分を抽出し、この輪郭本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、被撮像物の存在を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。本実施例では、このように、輪郭本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、もちろん、輪郭部分に、輪郭本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加することも可能である。こうすることで、輪郭部分の本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。また、本実施例では、抽出された輪郭を強調する処理を行うため、被撮像物の存在を更に、目立たせることができる。なお、この輪郭の強調処理は、省略することとしてもよい。
【0056】
本実施例では、抽出された輪郭の全体を、所定の割合で太くすることで輪郭の強調を行っている。これに対して、ユーザが輪郭の強調度合いを調整可能な構成としてもよい。具体的には、プリンタドライバの設定画面において、輪郭の強調度合いを調整可能なユーザインタフェース(例えば、スライドバー)を画面に表示し、このユーザインタフェースを介して、ユーザから強調度合いの設定を受け付ける。こうすることで、ユーザが所望する強調度合いで、輪郭を強調することができる。
【0057】
(C3)第3実施例:
図7は、第3実施例における印刷処理のフローチャートである。この第3実施例では、コンピュータ100は、特定領域として文字領域を抽出し、この文字領域に対してメタリックインクを付与する処理を行う。
【0058】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS300)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、画像中の文字領域を抽出する(ステップS302)。文字領域とは、文字がそのアウトライン内に内包する領域のことをいう。文字領域の抽出は、周知のOCR技術を適用することができる。文字領域を抽出すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS304)。
【0059】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS302で抽出された文字領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、文字領域内であるか、文字領域外(画像領域)であるかを判断する(ステップS306)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、文字領域内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS308)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS310)。つまり、画像中の文字領域については、文字本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0060】
一方、現在の印刷対象画素が、文字領域外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS312)、および、ハーフトーン処理(ステップS314)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS316)。
【0061】
上記ステップS310あるいはステップS316によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS318)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS306に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0062】
以上で説明した第3実施例の印刷処理によれば、画像中の文字領域について、文字の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の文字を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0063】
なお、本実施例では、文字本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、文字領域に、文字本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加してもよい。こうすることで、文字本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。
【0064】
(C4)第4実施例:
図8は、第4実施例における印刷処理のフローチャートである。この第4実施例では、コンピュータ100は、特定領域として所定の形状を有する領域(以下、所定形状領域という)を抽出し、この所定形状領域に対してメタリックインクを付与する処理を行う。
【0065】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS400)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、所定形状領域を抽出する(ステップS402)。本実施例では、所定形状領域として、円形の領域(円の内部を含む)を抽出する。円領域の抽出は、予め用意した円形のパターンを、画像内で移動や拡大/縮小して該当部分を抽出する周知のパターンマッチング法を適用することができる。円領域を抽出すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS404)。
【0066】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS402で抽出された円領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、円領域内であるか、円領域外であるかを判断する(ステップS406)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、円領域内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS408)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS410)。つまり、画像中の円領域については、円領域本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0067】
一方、現在の印刷対象画素が、円領域外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS412)、および、ハーフトーン処理(ステップS414)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS416)。
【0068】
上記ステップS410あるいはステップS416によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS418)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS406に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0069】
以上で説明した第4実施例の印刷処理によれば、画像中の所定形状の領域について、その領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の所定の形状部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0070】
なお、本実施例では、円領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、円領域に、円領域本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加してもよい。こうすることで、円領域本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。
【0071】
以上、本実施形態における種々の実施例を説明した。これらの実施例によれば、肌色領域など、メタリックインクの使用に不向きと考えられる領域については、通常のカラーインクによって自然な印刷を行うことができる。また、メタリックインクを付与する領域を限定することができるので、比較的高価なメタリックインクの使用量を削減しつつ、目立たせたい部分だけを強調することができる。また、メタリックインクを使用するか否かの判断基準となる特定領域については、印刷システム10が自動的に抽出するので、ユーザは、特別な操作を行うことなく、メタリックカラーを効果的に使用した印刷を行うことが可能になる。
【0072】
D.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0073】
(D1)変形例1:
上述した各実施例における印刷処理は適宜組み合わせることが可能である。例えば、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、肌色領域、文字領域、輪郭、所定形状領域のうち、2以上の領域を抽出し、文字領域と輪郭と所定形状領域については、メタリックインクによって印刷し、肌色領域に対しては、メタリックインクの使用を禁止してカラーインクだけで印刷を行うことが可能である。
【0074】
また、コンピュータ100は、例えば、図9に示すフローチャートのように印刷処理を行うことが可能である。すなわち、コンピュータ100は、画像データを入力すると(ステップS500)、最初に、文字領域だけを抽出し(ステップS502)、抽出された文字領域をメタリックインクによって印刷する(ステップS504)。そして、その後、コンピュータ100は、文字領域以外の領域から輪郭と肌色領域とを抽出し(ステップS506)、輪郭部分をメタリックインクによって印刷を行う(ステップS508)。続いて、コンピュータ100は、色変換処理(ステップS510)とハーフトーン処理(ステップS512)とを実行した上で、文字領域、輪郭および肌色領域以外の領域について、第1実施例と同様に、メタリックインクとカラーインクとを用いて印刷を行う(ステップS514)。最後に、コンピュータ100は、肌色領域について、メタリックインクの使用を禁止して、カラーインクだけで印刷を行う(ステップS516)。このような印刷処理によれば、画像内の様々な特徴部分に応じて、メタリックインクとカラーインクとを効果的に使い分けることができる。
【0075】
(D2)変形例2:
上述した実施形態および実施例では、メタリックインクを用いて特定領域あるいは非特定領域について印刷を行っている。これに対して、メタリックインクに代えて、ホワイトインクや透明インクを用いることとしてもよい。
【0076】
(D3)変形例3:
上述した実施形態および実施例では、画像内において、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出している。つまり、特定領域は、画像の性質上、所定の特徴を有していればよい。例えば、カラーインクが凝集し易い領域、つまり、カラーインクの濃度が高い領域を特定領域として抽出してもよい。具体的には、例えば、CMYK値のいずれかが高濃度の状態が一定範囲で連続する領域を画像データから抽出することで、カラーインクが凝集しやすい領域を抽出することができる。このような領域に対して、メタリックインクの付与を制限することで、インクの混合による彩度の低下や光沢感の低下を抑制することが可能になる。
【0077】
(D4)変形例4:
上述した各実施例では、印刷対象画素が特定領域に含まれるか否かを印刷対象画素の移動の都度判断し、その判断結果に基づいて、メタリックインクもしくはカラーインクによる印刷を行っている。これに対して、メタリックインクを印刷する領域と印刷しない領域とで2回に分けて印刷を行うこととしてもよい。つまり、先に、メタリックインクによって印刷を行う領域をまとめて印刷し、その後、印刷用紙をドット形成の初期位置に戻した上で、カラーインクによる印刷を行うこととしてもよい。このような順序で印刷すれば、メタリックインクの乾燥を促進させることができるので、その上に着色する場合のあるカラーインクの発色性を向上させることができる。
【0078】
(D5)変形例5:
上述した実施形態の印刷システムでは、プリンタドライバ24の設定画面で、どの実施例による印刷処理を行うかを選択可能としてもよい。つまり、肌色領域についてメタリックインクの使用を禁止しつつ、非肌色領域に一定量のメタリックインクを加えるモードや、輪郭部分、文字領域、所定形状領域の少なくともいずれか1種類の領域を抽出して自動的にメタリックインクを付与するモードをプリンタドライバ24に設定可能としてもよい。こうすることで、ユーザは、所望のモードで自動的にメタリックインクを使用した印刷を行うことが可能になる。
【0079】
(D6)変形例6:
上述した第2実施例ないし第4実施例では、特定領域(輪郭部分、文字領域、所定形状領域)に対して、メタリックインクのみを用いた印刷を行っている。これに対して、メタリックインクに、所定量のイエロインクを加えて印刷を行うこととしてもよい。こうすることで、特定領域にゴールドカラーの印刷を行うことが可能になる。
【0080】
(D7)変形例7:
上述した実施形態では、コンピュータ100とプリンタ200とによって構成される印刷システム10において、メタリックインクを用いた印刷を行っている。これに対して、プリンタ200自体が、画像データをデジタルカメラや各種メモリカードから入力してメタリックインクによる印刷を行うこととしてもよい。つまり、プリンタ200の制御回路260内のCPUが、上述した各実施例における印刷処理と同等の処理を実行することで、メタリックインクを用いた印刷を行ってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10...印刷システム 20...アプリケーションプログラム 22...ビデオドライバ 24...プリンタドライバ 40...特定領域抽出モジュール 42...色変換モジュール 44...ハーフトーンモジュール 46...印刷制御モジュール 100...コンピュータ 120...デジタルカメラ 200...プリンタ 242...メタリックインク用カートリッジ 243...カラーインク用カートリッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真の分野において、印刷しようとする画像データのうちの、メタリックカラーが指定された部分については、プロセスカラートナーとメタリックトナーとの両者を用いて印刷し、それ以外の部分は、プロセスカラートナーのみを用いて画像を印刷する技術が提案されている(下記、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−50347号公報
【0004】
しかし、このような技術では、メタリックカラーによって印刷を行う部分を、予めユーザが指定する必要があった。そのため、例えば、コンピュータにインストールされた所定のアプリケーションを利用してメタリックカラーによって印刷する部分を予め指定するという煩雑な作業を、印刷しようとする画像データごとに行う必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、ユーザによる特別な操作なしに、メタリックカラーを効果的に使用した印刷を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と、該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷部とを備える印刷装置。
【0008】
このような態様の印刷装置であれば、所定の特徴を有する特定領域を自動的に抽出し、その特定領域もしくは非特定領域に対して、メタリックインクによる印刷を行うことができる。したがって、ユーザによる特別な操作なしに、特定領域もしくは非特定領域を目立たせることが可能になる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、肌色領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された肌色領域に対する前記メタリックインクの使用を制限し、前記カラーインクによって該肌色領域に対する印刷を行う印刷装置。
【0010】
このような態様の印刷装置であれば、人間の顔や手足など、肌が露出した部分に対してメタリックインクの使用が制限されるので、メタリックインクの使用により不自然な画像が印刷されてしまうことを抑制することが可能になる。
【0011】
[適用例3]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、前記画像データ内の輪郭部分を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された輪郭部分を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0012】
このような態様の印刷装置によれば、建物や山などの画像データ内の被撮像物の輪郭部分を抽出し、この輪郭部分の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷することができる。そのため、被撮像物の存在を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0013】
[適用例4]適用例3に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記抽出された輪郭部分を強調する処理を行う印刷装置。このような態様であれば、被撮像物の存在を更に目立たせることができる。
【0014】
[適用例5]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された文字領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0015】
このような態様の印刷装置によれば、画像中の文字領域について、文字領域の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像内に含まれる文字部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0016】
[適用例6]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、所定の形状を有する所定形状領域を抽出し、前記印刷部は、前記抽出された所定形状領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する印刷装置。
【0017】
このような態様の印刷装置によれば、画像中の所定の形状の領域について、その領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の所定の形状部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0018】
[適用例7]適用例1に記載の印刷装置であって、前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域と、輪郭部分と、肌色領域とを抽出し、前記印刷部は、前記抽出された文字領域と輪郭部分とを、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記抽出された肌色領域に対しては、前記メタリックインクの使用を制限しつつ、前記カラーインクによって該肌色領域に対する印刷を行う印刷装置。
【0019】
このような態様の印刷装置であれば、画像内の様々な特徴部分に応じて、メタリックインクとカラーインクとを効果的に使い分けることができる。
【0020】
なお、本発明は、上述した印刷装置としての態様のほか、印刷装置に印刷を行わせる印刷制御装置や、印刷方法、コンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】印刷システム10の概略構成を示すブロック図である。
【図2】印刷制御装置としてのコンピュータ100の構成を示す説明図である。
【図3】プリンタ200の構成を示す説明図である。
【図4】第1実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図5】L*a*b*色空間における肌色領域の範囲を示す説明図である。
【図6】第2実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図7】第3実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図8】第4実施例における印刷処理のフローチャートである。
【図9】変形例における印刷処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.実施形態の概要:
B.装置構成:
C.実施例(第1実施例〜第4実施例):
D.変形例:
【0023】
A.実施形態の概要:
図1は、本発明の実施形態としての印刷システム10の概略構成を示すブロック図である。図示するように、本実施形態の印刷システム10は、印刷制御装置としてのコンピュータ100と、コンピュータ100の制御の下で実際に画像を印刷するプリンタ200などから構成されている。印刷システム10は、全体が一体となって広義の印刷装置として機能する。
【0024】
本実施形態のプリンタ200には、カラーインクとして、顔料系シアンインクと、顔料系マゼンタインクと、顔料系イエロインクと、顔料系ブラックインクとが備えられており、更に、光沢を有するメタリックインクが備えられている。メタリックインクとしては、例えば、顔料と有機溶剤と定着樹脂とを含有し、顔料として、平均厚みが30nm以上100nm以下であり、50%体積平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下であり、かつ、粒度分布における最大粒子径が12μm以下の金属箔片を採用するインク組成物を用いることができる。なお、前述のように、本実施形態において「カラーインク」という場合には、ブラックインクも含む意味であるものとする。
【0025】
コンピュータ100には、所定のオペレーティングシステムがインストールされており、このオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム20が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ22やプリンタドライバ24が組み込まれている。アプリケーションプログラム20は、例えば、周辺機器インタフェース108を通じて、デジタルカメラ120から画像データORGを入力する。すると、アプリケーションプログラム20は、ビデオドライバ22を介して、この画像データORGによって表される画像をディスプレイ114に表示する。また、アプリケーションプログラム20は、プリンタドライバ24を介して、画像データORGをプリンタ200に出力する。アプリケーションプログラム20がデジタルカメラ120から入力する画像データORGは、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0026】
プリンタドライバ24の内部には、特定領域抽出モジュール40と、色変換モジュール42と、ハーフトーンモジュール44と、印刷制御モジュール46とが備えられている。
【0027】
特定領域抽出モジュール40は、アプリケーションプログラム20から受け取った画像データORGの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する。特定領域の具体例については、後述する各実施例において説明する。
【0028】
色変換モジュール42は、予め用意された色変換テーブルLUTに従って、画像データORGの色成分R,G,Bをプリンタ200が表現可能な色成分(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各色)に変換する。
【0029】
ハーフトーンモジュール44は、色変換された画像データの階調をドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う。本実施形態では、このハーフトーン処理として、周知の組織的ディザ法を用いる。なお、ハーフトーン処理としては、組織的ディザ法以外にも、誤差拡散法や濃度パターン法その他のハーフトーン技術を利用することができる。
【0030】
印刷制御モジュール46は、ハーフトーン処理された画像データのデータの並びを、プリンタ200に転送すべき順序に並べ替えて、印刷データとしてプリンタ200に出力する。また、印刷制御モジュール46は、印刷開始コマンドや印刷終了コマンドなどの種々のコマンドをプリンタ200に出力することで、プリンタ200の制御を行う。
【0031】
本実施形態では、プリンタドライバ24は、特定領域抽出モジュール40によって抽出された特定領域と、この特定領域以外の他の領域(非特定領域)とで、プリンタ200に備えられたメタリックインクとカラーインクとを使い分けて印刷を行う。
【0032】
B.装置構成:
図2は、印刷制御装置としてのコンピュータ100の構成を示す説明図である。コンピュータ100は、CPU102を中心に、ROM104やRAM106などを、バス116で互いに接続することによって構成された周知のコンピュータである。
【0033】
コンピュータ100には、フレキシブルディスク124やコンパクトディスク126等のデータを読み込むためのディスクコントローラ109や、周辺機器とデータの授受を行うための周辺機器インタフェース108、ディスプレイ114を駆動するためのビデオインターフェース112が接続されている。周辺機器インタフェース108には、プリンタ200や、ハードディスク118が接続されている。また、デジタルカメラ120やカラースキャナ122を周辺機器インタフェース108に接続すれば、デジタルカメラ120やカラースキャナ122で取り込んだ画像に対して画像処理を施すことも可能である。また、ネットワークインターフェースカード110を装着すれば、コンピュータ100を通信回線300に接続して、通信回線に接続された記憶装置310に記憶されているデータを取得することもできる。コンピュータ100は、印刷しようとする画像データを取得すると、上述したプリンタドライバ24の働きにより、プリンタ200を制御して、この画像データの印刷を行う。
【0034】
次に、プリンタ200の構成について図3を参照して説明する。図3に示すように、プリンタ200は、紙送りモータ235によって印刷用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ230によってキャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ240に搭載された印字ヘッド241を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ235,キャリッジモータ230,印字ヘッド241および操作パネル256との信号のやり取りを司る制御回路260とから構成されている。
【0035】
キャリッジ240をプラテン236の軸方向に往復動させる機構は、プラテン236の軸と並行に架設されキャリッジ240を摺動可能に保持する摺動軸233と、キャリッジモータ230との間に無端の駆動ベルト231を張設するプーリ232と、キャリッジ240の原点位置を検出する位置検出センサ234等から構成されている。
【0036】
キャリッジ240には、カラーインクとして、シアンインク(C)と、マゼンタインク(M)と、イエロインク(Y)と、ブラックインク(K)とをそれぞれ収容したカラーインク用カートリッジ243が搭載される。また、キャリッジ240には、メタリックインク(S)を収容したメタリックインク用カートリッジ242が搭載される。キャリッジ240の下部の印字ヘッド241には、これらの各色に対応する計5種類のインク吐出用ヘッド244ないし248が形成されている。キャリッジ240にこれらのインクカートリッジ242,243を上方から装着すると、各カートリッジから吐出用ヘッド244ないし248へのインクの供給が可能となる。
【0037】
プリンタ200の制御回路260は、CPUや、ROM、RAM、PIF(周辺機器インタフェース)等がバスで相互に接続されて構成されており、キャリッジモータ230および紙送りモータ235の動作を制御することによってキャリッジ240の主走査動作および副走査動作の制御を行う。また、PIFを介してコンピュータ100から出力された印刷データを受け取ると、キャリッジ240が主走査あるいは副走査する動きに合わせて、印刷データに応じた駆動信号をインク吐出用ヘッド244ないし248に供給することによって、これらのヘッドを駆動することが可能となっている。
【0038】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンタ200は、キャリッジモータ230を駆動することによって、各色のインク吐出用ヘッド244ないし247を印刷用紙Pに対して主走査方向に往復動させ、また紙送りモータ235を駆動することによって、印刷用紙Pを副走査方向に移動させる。制御回路260は、キャリッジ240が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷用紙P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンタ200は印刷用紙P上にカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0039】
尚、本実施形態のプリンタ200は、印刷媒体に向けてインク滴を吐出することにより、インクドットを形成する所謂インクジェットプリンタであるものとして説明するが、どのような手法を用いてドットを形成するプリンタであっても構わない。例えば、本願発明は、インク滴を吐出する代わりに、静電気を利用して各色のトナー粉を印刷媒体上に付着させることでドットを形成するプリンタや、ラインプリンタに対しても好適に適用することが可能である。
【0040】
以下、コンピュータ100に組み込まれたプリンタドライバ24の働きにより実行される印刷処理の実施例をいくつか説明する。
【0041】
C.実施例:
(C1)第1実施例:
図4は、第1実施例における印刷処理のフローチャートである。この第1実施例では、コンピュータ100は、特定領域として肌色の領域を抽出し、この肌色領域について、メタリックインクの使用を制限する処理を行う。
【0042】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS100)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、肌色の領域を抽出する(ステップS102)。この抽出処理では、コンピュータ100は、ステップS100で入力したRGB形式の画像データの色空間を、L*a*b*色空間に変換し、変換後のL*,a*,b*の各値が、所定の範囲に含まれる領域を肌色領域として抽出する。図5は、L*a*b*色空間における肌色領域の範囲を示す説明図である。本実施例では、図示するように、L*値が55〜85、a*値が5〜25、b*値が5〜25の直方体内に接する略球形状の範囲を肌色領域とする。
【0043】
肌色領域を抽出すると、続いて、コンピュータ100は、色変換モジュール42を用いて、ステップS100で入力したRGB形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する(ステップS104)。CMYK形式の画像データが得られると、コンピュータ100は、ハーフトーンモジュール44を用いてハーフトーン処理を行い、プリンタ200に転送可能なデータを生成する(ステップS106)。
【0044】
ハーフトーン処理が終了すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS108)。
【0045】
コンピュータ100は、印刷を開始すると、ステップS102で抽出された肌色領域と、現在印刷対象となっている画素(印刷対象画素)の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、肌色領域か非肌色領域かを判断する(ステップS110)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、肌色領域であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素に対するメタリックインクの使用を禁止して(ステップS112)、カラーインクのみでドットを形成する(ステップS114)。
【0046】
一方、現在の印刷対象画素が、非肌色領域であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS116)、メタリックインクとカラーインクとを用いてドットを形成する(ステップS118)。具体的には、現在の印刷対象画素に対して、一定濃度のメタリックインクによるドットを形成し、その上から、カラーインクを用いて、通常のドットを形成する。
【0047】
上記ステップS114あるいはステップS118によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS120)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS110に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0048】
以上で説明した第1実施例の印刷処理によれば、人間の顔や手足など、肌が露出した部分に対するメタリックインクの使用が制限されるので、メタリックインクの使用によって不自然な画像が印刷されてしまうことを抑制することが可能になる。また、肌色以外の領域には、通常のカラーインクに加えて、メタリックインクが一定量付加されるため、印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0049】
(C2)第2実施例:
図6は、第2実施例における印刷処理のフローチャートである。この第2実施例では、コンピュータ100は、特定領域として画像中の被撮像物の輪郭部分(エッジ)を抽出し、この輪郭部分に対してメタリックインクを付与する処理を行う。本実施例では、特定領域抽出モジュール40は、抽出した輪郭部分を強調する機能を有している。
【0050】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS200)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、画像中の被撮像物の輪郭部分を抽出する(ステップS202)。輪郭の抽出は、画像データ中の各画素に、周知のエッジ抽出フィルタ(例えば、ラプラシアンフィルタ)を適用することで抽出することができる。輪郭を抽出すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、抽出された輪郭の全体を、所定の割合(例えば、1.5倍)で太くすることで、輪郭を強調する処理を行う(ステップS204)。
【0051】
続いて、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS206)。
【0052】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS202で抽出されてステップS204で強調された輪郭の領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、輪郭内であるか、輪郭外であるかを判断する(ステップS208)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、輪郭内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS210)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS212)。つまり、現在の印刷対象画素の本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0053】
一方、現在の印刷対象画素が、輪郭外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS214)、および、ハーフトーン処理(216)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS218)。
【0054】
上記ステップS212あるいはステップS218によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS318)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS306に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0055】
以上で説明した第2実施例の印刷処理によれば、建物や山などの被撮像物の輪郭部分を抽出し、この輪郭本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、被撮像物の存在を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。本実施例では、このように、輪郭本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、もちろん、輪郭部分に、輪郭本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加することも可能である。こうすることで、輪郭部分の本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。また、本実施例では、抽出された輪郭を強調する処理を行うため、被撮像物の存在を更に、目立たせることができる。なお、この輪郭の強調処理は、省略することとしてもよい。
【0056】
本実施例では、抽出された輪郭の全体を、所定の割合で太くすることで輪郭の強調を行っている。これに対して、ユーザが輪郭の強調度合いを調整可能な構成としてもよい。具体的には、プリンタドライバの設定画面において、輪郭の強調度合いを調整可能なユーザインタフェース(例えば、スライドバー)を画面に表示し、このユーザインタフェースを介して、ユーザから強調度合いの設定を受け付ける。こうすることで、ユーザが所望する強調度合いで、輪郭を強調することができる。
【0057】
(C3)第3実施例:
図7は、第3実施例における印刷処理のフローチャートである。この第3実施例では、コンピュータ100は、特定領域として文字領域を抽出し、この文字領域に対してメタリックインクを付与する処理を行う。
【0058】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS300)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、画像中の文字領域を抽出する(ステップS302)。文字領域とは、文字がそのアウトライン内に内包する領域のことをいう。文字領域の抽出は、周知のOCR技術を適用することができる。文字領域を抽出すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS304)。
【0059】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS302で抽出された文字領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、文字領域内であるか、文字領域外(画像領域)であるかを判断する(ステップS306)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、文字領域内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS308)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS310)。つまり、画像中の文字領域については、文字本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0060】
一方、現在の印刷対象画素が、文字領域外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS312)、および、ハーフトーン処理(ステップS314)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS316)。
【0061】
上記ステップS310あるいはステップS316によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS318)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS306に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0062】
以上で説明した第3実施例の印刷処理によれば、画像中の文字領域について、文字の本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の文字を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0063】
なお、本実施例では、文字本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、文字領域に、文字本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加してもよい。こうすることで、文字本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。
【0064】
(C4)第4実施例:
図8は、第4実施例における印刷処理のフローチャートである。この第4実施例では、コンピュータ100は、特定領域として所定の形状を有する領域(以下、所定形状領域という)を抽出し、この所定形状領域に対してメタリックインクを付与する処理を行う。
【0065】
印刷処理を開始すると、コンピュータ100は、まず、RGB形式の画像データを入力する(ステップS400)。画像データを入力すると、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、特定領域として、所定形状領域を抽出する(ステップS402)。本実施例では、所定形状領域として、円形の領域(円の内部を含む)を抽出する。円領域の抽出は、予め用意した円形のパターンを、画像内で移動や拡大/縮小して該当部分を抽出する周知のパターンマッチング法を適用することができる。円領域を抽出すると、コンピュータ100は、印刷制御モジュール46を用いてプリンタ200を制御し、印刷を開始する(ステップS404)。
【0066】
コンピュータ100は、実際の印刷に先立ち、まず、ステップS402で抽出された円領域と、現在の印刷対象画素の位置とを比較することで、現在の印刷対象画素が、円領域内であるか、円領域外であるかを判断する(ステップS406)。かかる判断により、現在の印刷対象画素が、円領域内であると判断されれば、コンピュータ100は、メタリックインクを使用すると決定し(ステップS408)、現在の印刷対象画素について、メタリックインクのみでドットを形成する(ステップS410)。つまり、画像中の円領域については、円領域本来の色をメタリック色に置き換えてドットの形成を行うのである。
【0067】
一方、現在の印刷対象画素が、円領域外であると判断されれば、コンピュータ100は、現在の印刷対象画素について、色変換処理(ステップS412)、および、ハーフトーン処理(ステップS414)を行い、カラーインクのみを用いてドットを形成する(ステップS416)。
【0068】
上記ステップS410あるいはステップS416によって現在の印刷対象画素に対するドットの形成が完了すれば、コンピュータ100は、画像データ全体の印刷が終了したかを判断する(ステップS418)。画像データ全体の印刷が終了していなければ、コンピュータ100は、処理をステップS406に戻して、引き続き、他の画素についてドットの形成を続行する。一方、画像データ全体の印刷が終了すれば、当該印刷処理を終了する。
【0069】
以上で説明した第4実施例の印刷処理によれば、画像中の所定形状の領域について、その領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うことができる。そのため、画像中の所定の形状部分を目立たせた印象的な画像を印刷することが可能になる。
【0070】
なお、本実施例では、円領域本来の色をメタリック色に置き換えて印刷を行うこととしたが、円領域に、円領域本来の色をカラーインクによって付与しつつ、一定濃度のメタリックインクを付加してもよい。こうすることで、円領域本来の色を活かしつつ、その部分に光沢感を与えることが可能になる。
【0071】
以上、本実施形態における種々の実施例を説明した。これらの実施例によれば、肌色領域など、メタリックインクの使用に不向きと考えられる領域については、通常のカラーインクによって自然な印刷を行うことができる。また、メタリックインクを付与する領域を限定することができるので、比較的高価なメタリックインクの使用量を削減しつつ、目立たせたい部分だけを強調することができる。また、メタリックインクを使用するか否かの判断基準となる特定領域については、印刷システム10が自動的に抽出するので、ユーザは、特別な操作を行うことなく、メタリックカラーを効果的に使用した印刷を行うことが可能になる。
【0072】
D.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0073】
(D1)変形例1:
上述した各実施例における印刷処理は適宜組み合わせることが可能である。例えば、コンピュータ100は、特定領域抽出モジュール40を用いて、肌色領域、文字領域、輪郭、所定形状領域のうち、2以上の領域を抽出し、文字領域と輪郭と所定形状領域については、メタリックインクによって印刷し、肌色領域に対しては、メタリックインクの使用を禁止してカラーインクだけで印刷を行うことが可能である。
【0074】
また、コンピュータ100は、例えば、図9に示すフローチャートのように印刷処理を行うことが可能である。すなわち、コンピュータ100は、画像データを入力すると(ステップS500)、最初に、文字領域だけを抽出し(ステップS502)、抽出された文字領域をメタリックインクによって印刷する(ステップS504)。そして、その後、コンピュータ100は、文字領域以外の領域から輪郭と肌色領域とを抽出し(ステップS506)、輪郭部分をメタリックインクによって印刷を行う(ステップS508)。続いて、コンピュータ100は、色変換処理(ステップS510)とハーフトーン処理(ステップS512)とを実行した上で、文字領域、輪郭および肌色領域以外の領域について、第1実施例と同様に、メタリックインクとカラーインクとを用いて印刷を行う(ステップS514)。最後に、コンピュータ100は、肌色領域について、メタリックインクの使用を禁止して、カラーインクだけで印刷を行う(ステップS516)。このような印刷処理によれば、画像内の様々な特徴部分に応じて、メタリックインクとカラーインクとを効果的に使い分けることができる。
【0075】
(D2)変形例2:
上述した実施形態および実施例では、メタリックインクを用いて特定領域あるいは非特定領域について印刷を行っている。これに対して、メタリックインクに代えて、ホワイトインクや透明インクを用いることとしてもよい。
【0076】
(D3)変形例3:
上述した実施形態および実施例では、画像内において、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出している。つまり、特定領域は、画像の性質上、所定の特徴を有していればよい。例えば、カラーインクが凝集し易い領域、つまり、カラーインクの濃度が高い領域を特定領域として抽出してもよい。具体的には、例えば、CMYK値のいずれかが高濃度の状態が一定範囲で連続する領域を画像データから抽出することで、カラーインクが凝集しやすい領域を抽出することができる。このような領域に対して、メタリックインクの付与を制限することで、インクの混合による彩度の低下や光沢感の低下を抑制することが可能になる。
【0077】
(D4)変形例4:
上述した各実施例では、印刷対象画素が特定領域に含まれるか否かを印刷対象画素の移動の都度判断し、その判断結果に基づいて、メタリックインクもしくはカラーインクによる印刷を行っている。これに対して、メタリックインクを印刷する領域と印刷しない領域とで2回に分けて印刷を行うこととしてもよい。つまり、先に、メタリックインクによって印刷を行う領域をまとめて印刷し、その後、印刷用紙をドット形成の初期位置に戻した上で、カラーインクによる印刷を行うこととしてもよい。このような順序で印刷すれば、メタリックインクの乾燥を促進させることができるので、その上に着色する場合のあるカラーインクの発色性を向上させることができる。
【0078】
(D5)変形例5:
上述した実施形態の印刷システムでは、プリンタドライバ24の設定画面で、どの実施例による印刷処理を行うかを選択可能としてもよい。つまり、肌色領域についてメタリックインクの使用を禁止しつつ、非肌色領域に一定量のメタリックインクを加えるモードや、輪郭部分、文字領域、所定形状領域の少なくともいずれか1種類の領域を抽出して自動的にメタリックインクを付与するモードをプリンタドライバ24に設定可能としてもよい。こうすることで、ユーザは、所望のモードで自動的にメタリックインクを使用した印刷を行うことが可能になる。
【0079】
(D6)変形例6:
上述した第2実施例ないし第4実施例では、特定領域(輪郭部分、文字領域、所定形状領域)に対して、メタリックインクのみを用いた印刷を行っている。これに対して、メタリックインクに、所定量のイエロインクを加えて印刷を行うこととしてもよい。こうすることで、特定領域にゴールドカラーの印刷を行うことが可能になる。
【0080】
(D7)変形例7:
上述した実施形態では、コンピュータ100とプリンタ200とによって構成される印刷システム10において、メタリックインクを用いた印刷を行っている。これに対して、プリンタ200自体が、画像データをデジタルカメラや各種メモリカードから入力してメタリックインクによる印刷を行うこととしてもよい。つまり、プリンタ200の制御回路260内のCPUが、上述した各実施例における印刷処理と同等の処理を実行することで、メタリックインクを用いた印刷を行ってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10...印刷システム 20...アプリケーションプログラム 22...ビデオドライバ 24...プリンタドライバ 40...特定領域抽出モジュール 42...色変換モジュール 44...ハーフトーンモジュール 46...印刷制御モジュール 100...コンピュータ 120...デジタルカメラ 200...プリンタ 242...メタリックインク用カートリッジ 243...カラーインク用カートリッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と、該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷部と
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、前記画像データ内の輪郭部分を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された輪郭部分を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記抽出された輪郭部分を強調する処理を行う
印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された文字領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、所定の形状を有する所定形状領域を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された所定形状領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項6】
メタリックインクとカラーインクとを備える印刷装置に画像を印刷させる印刷制御装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けさせて、印刷装置に前記画像データの印刷を行わせる印刷部と
を備える印刷制御装置。
【請求項7】
印刷装置が、メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷方法であって、
画像データを入力する入力工程と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出工程と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷工程と
を備える印刷方法。
【請求項8】
メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷するためのコンピュータプログラムであって、
画像データを入力する入力機能と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出機能と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷機能と
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されたコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項1】
メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と、該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷部と
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、前記画像データ内の輪郭部分を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された輪郭部分を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記抽出された輪郭部分を強調する処理を行う
印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、文字領域を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された文字領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記抽出部は、前記特定領域として、所定の形状を有する所定形状領域を抽出し、
前記印刷部は、前記抽出された所定形状領域を、前記メタリックインクを用いて印刷し、前記非特定領域を前記カラーインクによって印刷する
印刷装置。
【請求項6】
メタリックインクとカラーインクとを備える印刷装置に画像を印刷させる印刷制御装置であって、
画像データを入力する入力部と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出部と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けさせて、印刷装置に前記画像データの印刷を行わせる印刷部と
を備える印刷制御装置。
【請求項7】
印刷装置が、メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷する印刷方法であって、
画像データを入力する入力工程と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出工程と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷工程と
を備える印刷方法。
【請求項8】
メタリックインクとカラーインクとを用いて画像を印刷するためのコンピュータプログラムであって、
画像データを入力する入力機能と、
前記入力した画像データの中から、所定の特徴を有する領域を特定領域として抽出する抽出機能と、
前記抽出された特定領域と該特定領域以外の領域である非特定領域とで、メタリックインクとカラーインクとを使い分けて前記画像データの印刷を行う印刷機能と
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されたコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−10354(P2013−10354A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168070(P2012−168070)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−67825(P2008−67825)の分割
【原出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−67825(P2008−67825)の分割
【原出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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