説明

印刷装置

【課題】印刷装置において適切なタイミングで効率よく補正を実行することにより、印刷の中断をできるだけ抑制するとともに、印刷出力特性の低下を適切に防止する。
【解決手段】印刷中に読取中断が発生したと判断すると、補正猶予期間内の補正要求がある場合は、最も必要な補正ジョブが選択され、画像形成部10が印刷可能かどうかを判断することによって、補正ジョブを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関して、詳しくは、画像の品質を維持するための画調整を行う補正機能を備えた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式やインクジェット方式などを用いた印刷装置では、一般に、印刷環境の変化や印刷処理の進行に伴い、印刷結果における位置ずれや出力濃度変化等が発生することが知られている。このような印刷出力特性に関する問題を解決するものとして、レジストレーションやキャリブレーション等(以下、「補正」と記述する)を行なうことがある。このような画像補正は印刷装置において、所定のタイミングで自動的に行われることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一つの印刷ジョブの開始と終了時に、印刷ジョブの途中で濃度等の再調整処理が発生すると判断する場合、ジョブ中の補正を実行しないという制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−15896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、補正の実行の前後では、印刷結果における濃度や色味など印刷出力特性の違いが生じる。従って、連続して印刷される枚数について、無制限にこのような制御を行なうことは、階調性や色見などが比較的大きく変化し印刷品位を顕著に低下させるなどの点から好ましくない。また、連続的に実行される複数印刷ジョブの間で補正が実行されると、印刷の中断を発生することとなり、印刷待ちとなるため、ユーザにとって好ましくない。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、印刷中での補正の実行による印刷の中断をできるだけ抑制するとともに、印刷出力特性の低下を適切に防止できるように、適切なタイミングで効率よく補正を実行可能となる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の請求項1に記載の印刷装置は,原稿に記録された画像の読取を実行する読取手段と、前記読取手段にて読み取った画像を被記録媒体に対して印刷を実行する印刷手段と、前記印刷手段が印刷を実行する際の画調整のための補正を実行する補正手段と、前記読取手段による読取が中断されたことを検出する検出手段と、前記検出手段が前記読取の中断を検出したことを契機に、前記補正手段に補正を実行させる制御手段とを備える。
【0008】
この印刷装置によれば、読取中断が発生する場合、補正を開始すれば、ユーザが読取中断を解除するまでの間に補正を行うことができる。即ち、読取中断の発生のためにもともと印刷ができない時間を利用して補正を行うために、全体としてユーザの待ち時間の負荷を軽減することができる。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置であって、予め決められた実行条件に基づいて、前記補正が実行の対象となるか否かを判定する実行判定手段を備え、前記補正手段は、前記検出手段が前記読取の中断を検出した場合に限り、前記実行判定手段により実行の対象となった補正を実行する。即ち、読取中断が発生する度に補正を行うと不要な補正を実行してしまう可能性があるが、別に実行条件を設けることで補正を適切なタイミングで実行することができる。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の印刷装置は、請求項2に記載の印刷装置であって、前記印刷手段の印刷環境の変化を検知する検知手段を備え、前記実行判定手段は、前記実行条件として、前記検知手段による検知結果が予め定められた基準値に対して予め決められた規定範囲内であれば、前記補正が実行の対象となると判定する。即ち、読取中断の発生のためにもともと印刷ができない時間を利用して、所定の実行条件が満たされる直前の段階で補正が実行される。そのため、印刷中での補正の実行による印刷の中断をできるだけ抑制するとともに、印刷出力特性の低下を適切に防止できる。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の印刷装置は、請求項3に記載の印刷装置であって、前記補正手段は、前記検出手段が前記読取の中断を検出しない場合、前記検知手段による検知結果が前記基準値を超えると、前記補正を実行する。即ち、読取中断が検出されない場合であっても、補正の実行が必要であると判断された場合に補正を実行することで、印刷出力特性の低下を適切に防止できる。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の印刷装置は、請求項2または請求項3のいずれかに記載の印刷装置であって、前記実行判定手段により実行の対象となった補正が複数ある場合、予め設定された選択条件により、実行する補正を選択する選択手段を備える。印刷を実行している場合、ユーザが装置の近くにいるために早期に読取中断が解除される可能性が高いと考えられる。複数の補正の実行が必要であると判断された場合、複数の補正を順番に実行すると、時間がかかるため、読取中断が早期に解除されると補正が終了せずにユーザに待ち時間を発生させることになる。従って、最も必要となる補正のみを実行することで、印刷出力特性の低下を適切に防止するとともに、そのような待ち時間の発生を回避できる。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の印刷装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置であって、前記印刷手段が印刷可能か否かを判定する状態判定手段を備え、前記検出手段により前記読取の中断を検出され、かつ、前記状態判定手段により印刷可能と判定された場合、前記補正手段が補正を実行する。補正は、搬送ベルトにレジストパターンを形成する必要があるので、印刷が可能でない状態であれば、補正の実行はできない。この場合、印刷が可能になるまで、補正の実行を待機させ、印刷が可能になってから、補正を実行すると、ユーザの待ち時間が長くなるので好ましくない。この印刷装置では、印刷可能である状態で補正を実行することで、そのよう事態を回避できるとともに、効率よく自動で補正を実行できる。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載の印刷装置は、請求項6に記載の印刷装置であって、前記検出手段により前記読取の中断を検出された場合、前記状態判定手段により印刷可能ではないと判定された場合であっても、前記補正の実行の要否を判定する要否判定手段を備え、前記要否判定手段により補正の実行が必要であると判断された場合、前記補正手段が補正を実行する。即ち、読取中断が検知された場合において、印刷可能でない場合に、補正の実行に関して、ユーザが補正を実行するか否かを選択でき、ユーザに利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、読取および印刷を実行する際に、読取中断を検出したことを契機に、補正を実行する。このように、読取中断が検知された場合に、必要な補正を実行すれば、印刷特性の低下を防止することができる。また、読取中断のためにもともと印刷ができない時間を利用して補正を行うために、印刷中での補正の実行による印刷の中断をできるだけ抑制することができる。その結果、全体としてユーザの印刷待ちの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した複合機にかかる画像形成部の内部構成を示す概念図である。
【図3】図1に示した複合機にかかる画像読取部の内部構成を示す概念図である。
【図4】図1に示した複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態にかかる補正の選択条件にかかる各種テーブルである。
【図6】実施形態にかかる印刷時読取中断が発生しない場合に実行される補正処理を示すタイムチャートである。
【図7】実施形態にかかる印刷時読取中断が発生する場合に実行される補正猶予期間内の補正処理を示すタイムチャートである。
【図8】実施形態にかかるジョブ実行処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(複合機の全体構成)
図1は、本実施形態の複合機100(印刷装置)の概略構成を示す斜視図である。複合機100は,用紙(被記録媒体)に画像を形成する画像形成部10(印刷手段、補正手段)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20(読取手段)とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部や,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群から構成される操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0019】
(画像形成部の構成)
図2は、複合機100の画像形成部10の内部構成を示す概念図である。画像形成部10は,トナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,用紙上の未定着のトナーを定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙トレイ91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。
【0020】
プロセス部50は,カラー画像の形成が可能であり,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応するプロセス部を並列に配置している。具体的には,Y色の画像を形成するプロセス部50Yと,M色の画像を形成するプロセス部50Mと,C色の画像を形成するプロセス部50Cと,K色の画像を形成するプロセス部50Kとを備えている。
【0021】
さらに,画像形成部10は,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kに光を照射する露光装置53と,搬送ローラ73,74によって張架され,用紙を各プロセス部50Y,50M,50C,50Kの転写位置に搬送する搬送ベルト7と,搬送ベルト7上に形成されたレジストパターンを検出する画調整センサ61とを備えている。各プロセス部50K,50Y,50M,50Cは,周知の電子写真方式によってトナー像を形成するものである。
【0022】
画像形成部10は,給紙トレイ91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用
紙を搬送路11に沿って、プロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。その後は,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0023】
画調整センサ61は,用紙の搬送方向におけるプロセス部50Y,50M,50C,50Kよりも下流であって定着装置8よりも上流に位置し,搬送ベルト7上に形成されたレジストパターンを検知する。すなわち,複合機100では,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kが画調整用の画像パターンであるレジストパターンを形成し,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kがそれぞれのレジストパターンを搬送ベルト7上に転写する。画調整センサ61は,各レジストパターンの位置及び濃度などを読み取る。この処理過程は補正としてよく知られている。
【0024】
なお,本形態の複合機100では,トナー消費を抑えるため,画像形成部10が印刷ジョブ(印刷)を受け付けた際に画調整用の印刷環境がある閾値(基準値)以上かどうかを判断し,閾値以上と判断された場合に限り補正ジョブ(補正)を実行する。この印刷環境は、タイマー37(図4参照)により計測される前回の補正ジョブの実行からの経過時間、カウンタ38(図4参照)によりカウンタされる前回の補正ジョブの実行からの印刷枚数、および環境センサ39(図4参照)により複合機100の内部環境を検出した出力信号などである。環境センサ39とは、複合機100の内部の各所に設置され、各搬送路上の各エンジン(読取エンジン、記録エンジンなど)の温度、湿度、また感光体の帯電特性などを検出するためのセンサである。これら、タイマー37、カウンタ38および環境センサ39は、本発明の検知手段に相当する。
【0025】
(画像読取部の構成)
図3は、複合機100の画像読取部20の内部構成を示す概念図である。画像読取部20は,原稿の画像を読み取るスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22とを備えている。スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するCCDユニット25とを備えている。
【0026】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。具体的に,原稿トレイ221は,排出トレイ222の上方に配設されている。ADF22は,原稿トレイ221に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿をADF22内の搬送路27に搬送し,その原稿の読み取りが行われた後,その原稿を排出トレイ222上に排出する。
【0027】
原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつプラテンガラス24(以下,「FBガラス24」とする)上に載置する。その状態で,CCDユニット25が副走査方向(主走査方向に直交方向,図3の矢印A方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ221に載置する。そして,CCDユニット25がプラテンガラス23(以下,「ADFガラス23」とする)に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,原稿が1枚ずつADFガラス23に対向する位置(読取位置)に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0028】
また,ADF22は,原稿トレイ221に向けて光を出射する発光部と、その光の受光量を検出する受光部とを有し、原稿トレイ221上に原稿がセットされたことを光学的に検知する第1原稿センサ62と,FBガラス24に向けて光を出射する発光部と、その光
の受光量を検出する受光部とを有し、FBガラス24上に原稿がセットされたことを光学的に検知する第2原稿センサ63と,搬送路27に設けられた用紙ジャムを検知する複数のジャムセンサ64を備えている。ジャムセンサ64は,読取中にADFがジャムを発生することを検知される場合に検出信号を出力する。
【0029】
(複合機の電気的構成)
図4は、複合機100の電気的構成を示すブロック図である。複合機100は,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,画像形成部10,画像読取部20、および操作パネル40等と電気的に接続されている。画像形成部10および画像読取部20は,制御部30によって制御され,それぞれが独立して動作する。
【0030】
ROM32には,複合機100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0031】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,複合機100の各構成要素(例えば,画像読取部20における読取ジョブ(読取)を実行させる読取エンジン(不図示),画像形成部10における印刷ジョブまたは補正ジョブを実行させる記録エンジン(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0032】
また、NVRAM34には、図5A〜図5Dに示す各種テーブルが記憶されている。図5Aは補正ジョブの優先順位の重みを決定する優先順位テーブルである。図5Bは補正猶予期間における進行度の重みを決定する進行度テーブルである。図5Cは補正要求順の重みを決定する要求順テーブルである。また、図5Dは一例として、各種補正ジョブの優先順位、補正猶予期間の進行度、および補正要求順といった各項目の状態を示す補正ジョブの状態テーブルである。補正および補正猶予期間内の補正の詳細については後述する。
【0033】
これらのテーブルは、読取中断時に実行する補正ジョブの選択処理(選択手段)(S105)で用いられるが、詳しくは後述する。補正ジョブの選択処理では、補正ジョブはそれぞれ図5Dに示される各項目の状態について図5A〜図5Cに基づいて重み付け加算され、その合計値が最も多い補正ジョブが読取中断時に実行する補正ジョブとして選択される。
【0034】
ネットワークインターフェース36は,LAN等のネットワークに接続され,複合機100用のドライバが組み込まれた外部装置との接続を可能にしている。複合機100は,ネットワークインターフェース36を介して印刷ジョブのやりとりを行うことができる。
【0035】
(補正および補正猶予期間内の補正)
本実施形態の複合機100は、複数の補正ジョブをそれぞれ実行可能である。補正ジョブとは、例えば、位置ずれ補正と濃度補正がよく知られている。また、位置ずれ補正には、主走査方向位置ずれ補正と副走査方向位置ずれ補正との2種類があり、同時に実行される場合が多く、それぞれ実行されることも可能となっている。各補正ジョブには、異なる補正実行条件を有する。
【0036】
ここで、補正実行条件(実行条件)とは、画像品質を確保するために、補正ジョブの実行が必要な(若しくは実行が望ましい)状態になっているかを判断するための条件であって、具体的には、タイマー37およびカウンタ38からそれぞれ取得した前回の補正ジョ
ブの実行からの経過時間、印刷枚数、若しくは環境センサ39からの出力信号(複合機100の内部の温度、湿度など)などの印刷環境が閾値以上であることである。この閾値とは、複合機メーカーが予め設定された値、もしくはユーザにより設定された値である。
【0037】
通常、CPU31は、補正実行条件を満たす補正要求を発生させ、それに応じた補正ジョブを実行させる。複数の補正実行条件を満たす場合、複数の補正要求を発生させ、順番に実行させる。
【0038】
ここで、複合機100で実行される補正ジョブについて、図6および図7を参照して説明する。図6は印刷ジョブの実行中に読取中断を発生しない場合に実行される補正(S117)を示すタイムチャートであり、図7は印刷ジョブ中に読取中断を契機に実行される補正猶予期間内の補正(S112)を示すタイムチャートである。
【0039】
前述の通り、補正ジョブはそれぞれ異なる補正実行条件を有しているが、説明の簡略化のため、図6および図7では補正実行条件として「前回実行した補正ジョブからの印刷枚数が1000枚」が設定されている。また、1000枚という閾値に対して予め定められた範囲(規定範囲)内であれば、読取中断を発生した場合に限り補正実行条件を満たすとみなされる。この範囲を以降補正猶予期間と称する。図6および図7では、補正猶予期間として800〜999枚が設定されている。
【0040】
以上の図6および図7の補正共通の動作は、次の通りである。まず、補正ジョブが実行されたら、カウンタ38に記憶された印刷枚数を0とする。そして、次回の補正ジョブまで印刷枚数がカウントされる。
【0041】
ここで、読取中断が発生しない場合、図6に示すように、前回実行した補正ジョブからの印刷枚数が1000枚の達した時点で補正要求が発生し、所定のタイミングで補正ジョブが実行される。所定のタイミングとは、印刷ジョブの開始時や終了時や、電源投入時や、新品のプロセス部50Y〜50Kが検知されたとき、上面カバーの開閉が検知されたとき、あるいはユーザにより補正実行指示が入力された場合などである。なお、所定のタイミングに達するまで補正要求は記憶され、補正ジョブが実行されると補正要求は削除される。
【0042】
一方、読取中断が発生した場合、図7に示すように、補正猶予期間内であれば、補正猶予期間内の補正要求が発生し、補正ジョブを実行する。その後、カウンタ38を0にして、印刷枚数のカウントを繰り返す。
【0043】
このように、複合機100は読取中断時に限り補正猶予期間内の補正を実行することができる。
【0044】
(ジョブ実行処理)
以下、複合機100におけるジョブ実行処理を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0045】
まず、ユーザにより操作パネル40を介して印刷ボタンが押下されると、図8に示すジョブ実行処理を開始する。ジョブ実行処理では、CPU31は、まず読取エンジンを起動させる。読取エンジンの起動が完了すると、ADF方式による読取ジョブの実行を開始する(S101)。
【0046】
また、CPU31は、記録エンジンを読取エンジンと同時に起動させる。記録エンジンは起動すると、画像形成部10の印刷準備を行う。印刷準備が完了し、かつ画像読取部2
0から読み取った画像を受信した時点で印刷ジョブの実行が開始される。なお、印刷準備には所定時間が必要なため、読み取り中であっても、印刷ジョブが開始できるまでに空き時間が発生することがある。
【0047】
次に、読取中断の発生が検知されたかをADFに設置されるジャムセンサ64の出力信号に基づいて判断する(S102)。ここで、読取中断とは、CPU31において検出可能な各種のエラーによって、読取動作を停止するとして定められたものであって、主として読取動作の続行が不能になる故障である。具体的には、例えば、給紙ジャムエラーなどが読取中断を起こさせる。
【0048】
読取中断の発生が検知されない場合(S102:No)には、印刷ジョブの実行が完了したかを判断し(S115)、完了していなければ(S115:No)、印刷ジョブを開始/継続し(S114)、同様の処理を繰り返す(S102)。また、印刷ジョブの実行が完了した場合(S115:Yes)、補正要求判断処理(実行判定手段)を実行する(S116)。
【0049】
ここで、補正要求判断処理は、複合機100に設置された各環境センサ39からの出力信号や、カウンタ38に記憶された印刷枚数のカウントなどの印刷環境を検出し、さらに、CPU31はこれらの検出結果が所定の補正実行条件を満たすかを判定し、その判定に従って補正の制御を行う処理である。
【0050】
CPU31は、補正実行条件が満たされない場合、補正要求が発生しないと判断する(S116:No)。この場合、補正ジョブを実行せず、このジョブ実行処理を終了する。補正要求が発生する場合(S116:Yes)、補正ジョブを実行し(S117)、このジョブ実行処理を終了する。
【0051】
また、CPU31は、読取中断の発生が検知された場合(S102:Yes)には、ユーザにそのエラー情報と解除手順とを操作パネル40の表示部に表示する(S103)。エラー情報及び解除手順がユーザに通知されることにより、ユーザは、エラーの解除作業に取りかかることができる。
【0052】
CPU31は、エラー情報等をユーザに通知した後、補正猶予期間内の補正要求判断処理を実行する(S104)。即ち、各補正ジョブについて、補正猶予期間内であるか否かが判断され、期間内であれば、補正猶予期間内の補正要求を発生させる。補正猶予期間内の補正要求が発生しない場合(S104:No)、補正ジョブを実行せず、エラーの解除が完了したかを判断する(S113)。
【0053】
エラーが解除されたかはジャムセンサ64からの出力信号に基づいて判断される(S113)。エラーの解除が完了していない場合(S113:No)には、エラーの解除が完了するまで待機する。
【0054】
そして、CPU31は、エラーが解除された場合(S113:Yes)には、中断していた印刷ジョブを開始/継続する(S114)。その後、S102に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0055】
CPU31は、補正猶予期間内の補正要求が発生すると判断した場合(S104:Yes)、予め定められた選択条件に基づいて実行する補正ジョブを選択する(S105)。
【0056】
この選択条件には、NVRAM34に記憶された図5A〜図5Cに示すように複数の条件がある。例えば、実行優先度とは、実行すべき補正ジョブの重要度により、どの補正ジ
ョブをまず実行すべきという順番を示すものである。補正猶予期間進行度とは、補正猶予期間における現時点での割合を表すものである。また、補正要求順とは、各補正ジョブが補正猶予期間内に入った順番である。
【0057】
また、補正ジョブの状態テーブル(図5D)には、複合機100が備える全ての補正ジョブについて、各選択条件における状態が格納されている。補正ジョブは、これらの選択条件における状態について、それぞれ重みが付与される。
【0058】
具体的には、例えば、補正ジョブAについては、実行優先度が高、補正猶予期間進行度が30%、補正要求順が2と設定されている。このため、図5A〜図5Cに基づくと、補正ジョブAの重みは80+30+20=130となる。その他の補正ジョブについても同様に重み付けがなされる。
【0059】
CPU31は、以上の重み付けされた各補正ジョブ中から、重みの高い補正ジョブを決定する(S105)。
【0060】
なお、本実施形態では、複数の選択条件の重みを加算して、重みの高い補正ジョブを決定したが、いずれか1つの選択条件の重みに基づいて補正ジョブを決定してもよい。また、補正猶予期間内の補正要求を発生した補正ジョブが1つしかない場合は、その補正ジョブが選択される。
【0061】
前述の通り、画像の読取開始から印刷開始まで、空き時間が発生する。従って、読取中断が発生した時点で画像形成部10の印刷準備が完了しているとは限らない。補正ジョブの実行には、搬送ベルト7にレジストパターンを形成する必要があるので、印刷準備が完了している必要がある。ここで、CPU31は、画像形成部10の印刷準備完了かを判断する(判定手段)(S106)。
【0062】
CPU31は、印刷準備完了を判断する(S106:Yes)場合、画像形成部10は印刷ジョブを実行しているかを判断する(S107)。補正ジョブを行っている間は印刷ジョブを行うことができないため、印刷ジョブが実行中と判断する(S107:Yes)場合には、印刷ジョブを停止させ(S111)、図8の(S105)において選択された補正ジョブを実行する(S112)。CPU31は、補正ジョブを実行した後(S112)、エラーの解除完了の判断(S113)に移行する。なお、読取中断時にRAM33に登録された印刷ジョブが終了するまで、補正ジョブの実行を待機してもよい。
【0063】
CPU31は、印刷ジョブを実行していないと判断する(S107:No)と、直ちに選択された補正ジョブを実行し(S112)、エラーの解除完了の判断(S113)に移行する。
【0064】
また、CPU31は、印刷準備が完了ではないと判断する(S106:No)場合には、以降の処理は
(1)「必ず実行」
(2)「AUTO」
(3)「実行しない」
の3つの補正実行モード(要否判定手段)の設定状態に応じて変わる。ここで、実行するモードは複合機メーカーにより予め設定されている、もしくはユーザにより予め設定されていてもよい。また、CPU31は補正猶予期間内の補正要求が発生したことを操作パネル40の表示部に表示し、ユーザに補正ジョブを実行するかを決定させることも可能である。
【0065】
「必ず実行」の補正実行モードが選択されている(S108:Yes)場合、図8の(S105)において選択された補正ジョブを実行する(S112)。
【0066】
一方、「必ず実行」の補正実行モードではなく(S108:No)、「AUTO」の補正実行モードであれば(S109:Yes)、補正猶予期間内の補正要求が発生した時点での補正猶予期間内の進行度が51%以上かを判断する(S110)。補正猶予期間内の進行度が51%以上であると判断した(S110:Yes)場合、補正ジョブの実行(S112)に移行する。補正猶予期間内の進行度が51%以上ではないと判断した(S110:No)場合、図8の(S114)に移行する。
【0067】
なお、本実施形態では、補正猶予期間の進行度が51%以上ならば、補正ジョブを実施するが、ユーザにより予めこの値を決定してもよい。
【0068】
「実行しない」の補正実行モードであれば(S109:No)、補正ジョブを実行せず、図8の(S114)に移行する。
【0069】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、読取中断が発生することを契機に、画調整のための補正ジョブを実行する。例えば、ADFに給紙ジャムエラーが検知された場合に、印刷ジョブを中断した後、補正ジョブを開始すれば、ユーザがジャムエラーを解除するまでの間に補正ジョブを行うことができる。即ち、読取中断の発生のためにもともと印刷ができない時間を利用して補正ジョブを行うために、全体としてユーザの待ち時間の負荷を軽減することができる。
【0070】
また、読取中断が検知された場合において、所定の補正実行条件が満たされた場合にのみ補正ジョブを実行する。即ち、読取中断が発生する度に補正ジョブを行うと不要な補正ジョブを実行してしまう可能性があるが、別に補正実行条件を設けることで補正ジョブを適切なタイミングで実行することができる。
【0071】
また、本実施形態では、補正猶予期間が設定され、読取中断が検知された場合において、補正猶予期間内の補正要求が発生する場合に補正ジョブを実行する。即ち、読取中断の発生のためにもともと印刷ができない時間を利用して、所定の補正実行条件が満たされる直前の段階で補正ジョブが実行される。そのため、印刷中での補正ジョブの実行による印刷の中断をできるだけ抑制するとともに、印刷特性の低下を適切に防止できる。
【0072】
また、読取中断が検知された場合において、予め設定された選択条件により選択された補正ジョブのみを実行する。印刷を実行している場合、ユーザが装置の近くにいるために早期にエラーが解除される可能性が高いと考えられる。複数の補正要求が発生する場合、複数の補正ジョブを順番に実行すると、時間がかかるため、エラーが早期に解除されると補正が終了せずにユーザに待ち時間を発生させることになる。従って、最も必要となる補正ジョブのみを実行することで、印刷特性の低下を適切に防止するとともに、そのような待ち時間の発生を回避できる。
【0073】
また、読取中断が検知された場合において、画像形成部10が印刷可能である場合に補正ジョブを実行する。補正ジョブは、搬送ベルト7にレジストパターンを形成する必要があるので、印刷準備完了ではないと、補正の実行はできない。この場合、印刷準備が完了するまで、補正ジョブの実行を待機させ、印刷準備が完了してから、補正ジョブを実行すると、ユーザの待ち時間が長くなるので好ましくない。本実施形態では、印刷可能である状態で補正ジョブを実行することで、そのよう事態を回避できるとともに、効率よく自動で補正を実行できる。
【0074】
また、読取中断が検知された場合において、印刷可能ではない場合に、補正実行に関して、3つの実行モードを有する。即ち、実行モードにより補正ジョブを実行するかが決定され、設定された補正実行モードに応じて補正ジョブを実行することができる。
【0075】
(他の実施形態)
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機に限らず,読取機能と印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,プロセス部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。
【0076】
また、エラーの検知により読取中断が検知され、補正猶予期間内の補正要求が発生した場合であっても、ユーザが装置の近くにいるために早期にエラーが解除される可能性が高いと考えられ、エラーが早期に解除されると補正が終了せずにユーザに待ち時間を発生させることになる。従って、エラーが早期に解除された場合には補正ジョブを実行しないことでそのような待ち時間の発生を回避できることもよい。
【0077】
また、図8の(S102)において、用紙の給紙ジャムなどのエラーが発生すると、読取中断が発生したと判断していたが、ユーザのキャンセルボタンの押下により、読取中断が発生したと判断してもよい。この場合、図8の(S112)で補正ジョブを実行した後は、ジョブ実行処理を終了することになる。
【0078】
また、本実施形態では、印刷準備が完了していないと判断された(S106:No)場合、図8の(S108)〜(S110)の処理を実行し、補正ジョブを実行するか否かを判断していたが、印刷準備が完了するまで待機し、必ず補正ジョブを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 画像形成部
20 画像読取部
37 カウンタ
38 環境センサ
64 ジャムセンサ
100 複合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に記録された画像の読取を実行する読取手段と、
前記読取手段にて読み取った画像を被記録媒体に対して印刷を実行する印刷手段と、
前記印刷手段が印刷を実行する際の画調整のための補正を実行する補正手段と、
前記読取手段による読取が中断されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段が前記読取の中断を検出したことを契機に、前記補正手段に補正を実行させる制御手段と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
予め決められた実行条件に基づいて、前記補正が実行の対象となるか否かを判定する実行判定手段を備え、
前記補正手段は、
前記検出手段が前記読取の中断を検出した場合に限り、前記実行判定手段により実行の対象となった補正を実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷手段の印刷環境の変化を検知する検知手段を備え、
前記実行判定手段は、前記実行条件として、前記検知手段による検知結果が予め定められた基準値に対して予め決められた規定範囲内であれば、前記補正が実行の対象となると判定することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記検出手段が前記読取の中断を検出しない場合、前記検知手段による検知結果が前記基準値を超えると、前記補正を実行することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記実行判定手段により実行の対象となった補正が複数ある場合、予め設定された選択条件により、実行する補正を選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷手段が印刷可能か否かを判定する状態判定手段を備え、
前記検出手段により前記読取の中断を検出され、かつ、前記状態判定手段により印刷可能と判定された場合、前記補正手段が補正を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記検出手段により前記読取の中断を検出された場合、前記状態判定手段により印刷可能ではないと判定された場合であっても、前記補正の実行の要否を判定する要否判定手段を備え、
前記要否判定手段により補正の実行が必要であると判断された場合、前記補正手段が補正を実行することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−110822(P2011−110822A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269691(P2009−269691)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】