説明

印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法

【課題】印刷部を有する合成樹脂発泡成形体表面の印刷部が簡単に剥がれ落ちることのなく鮮明な印刷部を維持し得る印刷部を有する合成樹脂発泡成形体を提供する。
【解決手段】合成樹脂発泡成形体表面の少なくとも印刷形成部分にコーティング材を塗布し、乾燥して皮膜を形成し、該皮膜上にホットメルト型インクにより印刷部を形成する方法である。これにより合成樹脂発泡成形体に形成された印刷部は、耐久性に優れ成形体同士が接触し印刷部が擦られることがあっても印刷部が簡単に剥がれることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂発泡成形体表面に印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法に関する。さらに詳しくは、印刷部が耐久性に優れ長期間にわたって鮮明な印刷部を維持し得る印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運搬用容器、保冷容器、あるいは食品容器等に使用される合成樹脂発泡成形体からなる容器表面に、内容物の表示、識別などの情報や宣伝等の目的で、文字、絵柄等を表示する場合、例えば、特許文献1に示されるような、印刷が施されたラベルを、対象となる発泡成形体の表面に貼るという方法がある。しかしながら、その方法では近年の増え続ける製品の品種の多様化、物流の高速化に対応するために、多種多様にわたる印刷ラベルを用意しておかねばならないこと等により、印刷ラベルの在庫管理が頻雑になり、また、印刷ラベルの保管場所を必要とし、さらに品種の多様化に伴う煩雑な貼り付け作業を要する等といった問題がある。
【0003】
また、特許文献2、特許文献3に示されるように、スクリーン印刷により合成樹脂発泡成形体の表面へ印刷する方法がある。スクリーン印刷による方法も印刷ラベルを貼り付ける方法と同様に、品種の多様化、多種品目への対応に合わせて、何種類ものスクリーン印刷の版を用意しなければならないため、版の在庫管理や保管場所の確保を要するなどの問題がある。
【0004】
そこで、印刷ラベルや版等を用意する必要がなく、品目が多種にわたっていても、コンピューター等に入力された印刷情報を即座に被印刷物に印刷するために、多岐にわたる製品品目の印刷に対応でき、成形体の製造に連続しライン上で印刷部が形成でき、また被印刷物表面が平滑でなく凹凸があるような被印刷物にも凹凸の影響をさほど受けずに印刷部を形成できる、インクジェット印刷装置を使用した印刷方法が考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−123326号公報
【特許文献2】特許第3717580号公報
【特許文献3】特開平7−171945号公報
【0006】
しかしながら、合成樹脂発泡成形体にインクジェット印刷により印刷した場合、印刷部の耐久性に難点があり、合成樹脂発泡成形体からなる容器等を使用する際に、合成樹脂発泡成形体同士が擦れ合ったり、合成樹脂発泡成形体や印刷部に衝撃を受けたりすることによりその印刷部が剥がれ落ち印刷部が不鮮明になったり、消えたりし易いという問題点が認められた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、印刷部が擦れ合ったりしても簡単に剥がれ落ちることがなく鮮明な印刷部を維持し得る耐久性に優れる印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂発泡成形体にコーティング材を塗布して被膜を形成し、該被膜上に印刷部を形成することにより耐久性に優れる印刷部を有する合成樹脂発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)合成樹脂発泡成形体の表面にコーティング材を塗布して被膜を形成した後、該被膜上にインクジェット印刷にて印刷部を形成することを特徴とする印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法;
(2)コーティング材の塗布量が10g/m2以上であることを特徴とする上記(1)に記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法;
(3)コーティング材が、合成樹脂水性エマルジョンであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法;
(4)インクジェット印刷に使用されるインクがホットメルト型インクであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法;
(5)コーティング材は、乾燥促進剤が添加されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法においては、インクジェット印刷装置により合成樹脂発泡成形体に印刷部が施されるので、印刷ラベルやスクリーン印刷用の版を用意する必要がなく、またこれらの頻雑な在庫管理や保管場所の確保が不要である。
【0011】
本発明の方法は、合成樹脂発泡成形体表面にコーティング材にて被膜を形成し、該被膜上に印刷部を形成するもので、被膜の発泡成形体表面に対する付着力が高く、また印刷部との付着性が良好であることから、発泡成形体同士が擦れ合ったりした場合にも印刷部が発泡成形体から簡単に剥がれ落ちたりすることがなく、鮮明な印刷部を維持することができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法について説明する。
【0013】
先ず、本発明に使用し得る合成樹脂発泡成形体(以下、単に「発泡成形体」と称することがある。)について説明する。合成樹脂発泡成形体としては、例えば、スチレン及び/またはその誘導体の成分比率が少なくとも50モル%である、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)やポリスチレンやポリメチルスチレン等のポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体;アクリル酸及び/またはその誘導体の成分比率が少なくとも50モル%である、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂発泡成形体;ポリカーボネート樹脂からなるポリカーボネート系樹脂発泡成形体;ポリ乳酸樹脂からなるポリ乳酸系樹脂発泡成形体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂からなるポリエステル系樹脂発泡成形体;オレフィンの成分比率が少なくとも50モル%である、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂発泡成形体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂からなるポリアミド系樹脂発泡成形体;アクリロニトリル樹脂からなるアクリロニトリル系樹脂発泡成形体;ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン系樹脂発泡成形体等が挙げられる。尚、上記合成樹脂発泡成形体を構成するそれぞれの合成樹脂には、本発明の目的を達成できる範囲においてその他の重合体を50重量%以下、特に30重量%以下の割合で混合することができる。
【0014】
これらの中、合成樹脂発泡成形体として、通い箱等の運搬用容器、保冷用容器、あるいは食品用容器や日用品容器等に汎用され、印刷部を施されることの多いものとしてポリスチレン系樹脂発泡成形体、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体が挙げられ、特にポリスチレン系樹脂発泡成形体は、軽量化が容易で、かつ強度が大きく、安価であり、本発明では特に有効なものである。
【0015】
上記の発泡成形体は、従来から一般に知られている方法によって製造され、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡成形体やポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、該発泡成形体を構成する基材樹脂と発泡剤とを混合した発泡性組成物を押出機で押出す押出発泡法により得られる単層又は多層のシート状発泡体を、熱成形することにより形成された容器状の成形体や、シート状発泡体と同様に押出発泡法により得られる板状発泡体を二次加工等することにより形成された容器状の成形体や、発泡剤を含浸させた粒子状樹脂を予備発泡させ、該予備発泡させた発泡樹脂粒子を金型内に充填し、加熱蒸気により発泡成形させた発泡粒子成形体が挙げられる。また、発泡成形体としては、軟化状態の単層又は多層の発泡性組成物を金型間に筒状に押出発泡させると共に、金型に挟みこみ、発泡体の内部に空気、窒素ガス等を吹き込んで成形される発泡ブロー成形体が例示される。また、発泡成形体としては、軟化状態の単層または多層の発泡性組成物を金型間に筒状に押出し、金型間で圧縮成形して金型の形状に相応した発泡成形体が例示される。また、発泡成形体としては、ブロー成形体中にポリスチレン系樹脂粒子やポリオレフィン系樹脂発泡粒子を充填してスチーム加熱することにより得られる複合発泡成形体も例示される。
【0016】
ここで、本発明における発泡成形体の表面にはコーティング材が塗布され、その被膜上にインクジェット印刷にて印刷部が形成されるが、コーティング材が塗布される前に発泡成形体表面の印刷部となる位置を含むように凹部を形成して、該凹部にコーティング材の塗布と所要の印刷を行うこともできる。本明細書では、以下、発泡成形体表面(実際はコーティング材上)においてインクジェット印刷により印刷部となる位置を印刷形成部という。発泡成形体は、運搬用容器や保冷容器等のように成形体が大量に積まれて運搬されたり、保存されたりすることが多く、隣接して積まれた成形体同士が接触し印刷部が擦られ印刷部の剥がれが起こり易い。上記したように、凹部内にコーティング材の塗布と所要の印刷を行えば、他の成形体による印刷部への接触自体を減らすこともできる。このような凹部は、例えば、発泡成形体が発泡粒子成形体である場合や、発泡ブロー成形体である場合、発泡成形体の成形時に使用される金型に予め凹部となる部分を形成して成形すればよい。また、発泡成形体が押出発泡により得られたシート状発泡体を熱成形した発泡成形体である場合は、熱成形する際に凹部を形成すればよく、板状の発泡体を成形して得られる発泡成形体からなる場合には、二次加工等する成形工程中に凹部を形成する工程を加えて成形すればよい。
【0017】
印刷部を形成する凹部の深さは同等サイズの成形体同士が擦れ合ったりした際に印刷部分が擦り合わされることがない程度の深さであればよく、0.2mm以上であることが好ましい。また、インク噴射口であるインクヘッダー(印刷機ヘッダー)と発泡成形体表面との距離は、インクがコーティング材で形成された被膜に付着するまで必要な粘度を保持していることが好ましいため、凹部の最大深さは概ね25mm程度であることが好ましい。また、凹部の深さは0.3mm以上10mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上5mm以下であることが更に好ましい。凹部の大きさは印刷される文字、絵柄等の所望される内容に応じて適宜の大きさに形成すればよい。この凹部は成形体の補強リブとしての機能を持たせることもできる付加的効果もある。
【0018】
本発明におけるコーティング材は、例えば、油性塗料、酒精塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料等が使用される。それらの中でも、合成樹脂発泡成形体に対する濡れ性がよく、付着力が高く、耐水性、耐候性などの特性を有する水性塗料や合成樹脂塗料を使用することが好ましく、特に、発泡成形体及び使用されるホットメルト型インクに対して、濡れ性がよく付着性の高い、合成樹脂水性エマルジョンが好ましい。また、合成樹脂水性エマルジョンは有機溶剤が含まれない、若しくは含まれていても少量であるために、作業環境面で好ましく、更に、合成樹脂発泡成形体が溶剤に侵されやすいものである場合に好適である。
【0019】
合成樹脂水性エマルジョンを構成する合成樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、エチレンの成分比率が少なくとも50モル%である、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂;スチレン成分比率が少なくとも50モル%である、スチレン‐ブタジエン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂;ジエン成分比率が少なくとも50モル%である、ブタジエンゴムやブタジエン‐スチレンラバー等のジエン系ゴム;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;酢酸ビニルの成分比率が少なくとも50モル%である、酢酸ビニル樹脂や酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂等の酢酸ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;アクリロニトリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;フッ素化塩化エチレン等のフッ素樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂等のうち1または2以上の混合物が挙げられる。
【0020】
本発明においては、これらの合成樹脂水性エマルジョンの中でも、合成樹脂発泡成形体に対して、濡れ性がよく付着性があり、さらに使用されるホットメルト型インクに対しても濡れ性がよい合成樹脂水性エマルジョンが選択されることが好ましい。また乾燥後の被膜は柔軟性を有しており、且つ埃などの異物が付着するようなべたつきがないことが好ましい。このような特性を有する合成樹脂水性エマルジョンとしては、エチレンの成分比率が少なくとも50モル%であるエチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂を樹脂成分とする合成樹脂水性エマルジョン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂を樹脂成分とする合成樹脂水性エマルジョン;酢酸ビニルの成分比率が少なくとも50モル%である、酢酸ビニル樹脂や酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂等の酢酸ビニル系樹脂を樹脂成分とする合成樹脂水性エマルジョン;ジエン成分比率が少なくとも50モル%であるブタジエン‐スチレンラバー等のジエン系ゴムを樹脂成分とする合成樹脂水性エマルジョンが挙げられ、これらは単体で使用されてもよいし、またこれらの群から選ばれる2以上を併用してもよい。更にこれらの合成樹脂水性エマルジョンは、ポリスチレンに対する濡れ性がよく付着性が高いため、ポリスチレン系樹脂発泡成形体に対してより好ましく使用される。また、これらの合成樹脂水性エマルジョンは、発泡成形体の発泡粒子間の隙間にエマルジョンが侵入し易く強固なコーティングを施せるので、発泡成形体がポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体である場合に好ましく使用される。
【0021】
また特開平6−179852、特開平6−207139に示されるような、塩素化ポリオレフィン系樹脂から構成される合成樹脂水性エマルジョンは、発泡成形体がポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体である場合に、より好ましく使用され、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体と同様に、エマルジョンが、発泡成形体を形成する発泡粒子間の隙間に侵入し易く強固なコーティングが施せることから、発泡成形体がポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体である場合には特に好ましく使用される。
【0022】
また、本発明のコーティング材には、その他の成分として、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、中和剤、安定剤、触媒、フィラー、顔料または染料等の各種公知の添加剤を適宜含有してもよい。
【0023】
本発明に使用されるコーティング材は、発泡成形体の垂直面に塗布した場合でも発泡成形体表面から容易に垂れ落ちることがなく、しかも均一に塗布できるものであることが好ましい。そのような観点から、コーティング材の固形分は30重量%〜70重量%が好ましく、塗布する際の粘度は、100mPa・s〜1000mPa・sの範囲であることが好ましく、300mPa・s〜700mPa・sであることがより好ましい。なお、ここでいう粘度とは、粘度100mPa・s〜1000mPa・sの場合、株式会社東京計器(現株式会社トキメック)製BM型回転粘度計にて測定され、粘度10mPa・s以上100mPa・s未満の場合には、同社のBL型回転粘度計測定にて測定された値のことである。粘度測定に際しては、温度23℃、湿度50%の室内で、容器中にコーティング材のサンプルを密閉して48時間おき、その後、サンプルを容器から取り出して同室内にて測定される。
コーティング材の粘度が100mPa・s未満の場合は、増粘剤を添加し、粘度を好ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、より好ましくは300mPa・s〜700mPa・sに調整して塗布に用いることができる。又、コーティング材の粘度が1000mPa・sを超える場合は、水等の水性の液体を混ぜ、粘度を好ましくは100mPa・s〜1000mPa・s、より好ましくは300mPa・s〜700mPa・sに調整して塗布に用いることができる。
【0024】
塗布に使用されるコーティング材の塗布量は、発泡成形体表面に均一に塗布できるようにするため、10g/m2以上であることが好ましく、通常10g/m2〜60g/m2が使用される。塗布量が少な過ぎる場合には、被膜の状態が不均一となる虞がある。また、塗布量の上限は特に制限されないが、概ね100g/m2程度である。塗布量が100g/m2を超える量では乾燥効率が低くなる。
【0025】
本発明のコーティング材には、易揮発性の有機溶剤等の乾燥促進剤を添加することにより、コーティング材中の水分等の蒸発を助けて、蒸発速度を調整する蒸発調整剤として作用させることで、コーティング材の乾燥を速めることができ、延いては、印刷部を有する発泡成形体の生産効率を向上させることができる。
【0026】
乾燥促進剤としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、ジエチルケトン等のケトン類またはケトンアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;塩化メチレン、ジクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;アンモニア、ジエタノールアミン等のアミン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;n−ヘキサン等の炭化水素類;コバルト金属石鹸、カルシウム金属石鹸等の有機酸金属塩等が挙げられる。これらの乾燥促進剤は、単体であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
乾燥促進剤は、発泡成形体を侵さない程度の添加量に留めることが必要である。そのため上記乾燥促進剤の割合は、コーティング材の総量中で20重量%以下、好ましくは1〜10重量%の範囲であり、より好ましくは1〜5重量%である。
【0028】
乾燥促進剤としては成形体が溶剤に侵されやすいポリスチレン系発泡粒子成形体等である場合には、低級アルコール類が使用されることが好ましく、その中でも安全性の面から、エタノールを使用することが、特に好ましい。
【0029】
次に、本発明におけるインクジェット印刷について説明する。インクジェット印刷は、それ自体公知の方法、装置により実施することができる。すなわち、コンピューターに入力された文字や絵柄等の情報に基づき、被印刷物に所要の文字や絵柄等を印刷することができるようになっているインクジェット印刷装置が使用できる。
【0030】
インクジェット印刷の印刷方法は、色材、基材(分散媒又はワックス、或いは樹脂など)、また、その他の添加物などを含有してなるインク組成物を用いて、インクを被印刷物に噴射し、文字や絵柄等を印刷記録する方法である。
【0031】
インクジェット印刷に使用されるインクとしては、水性インク、油性インク、熱可塑性インク等が挙げられる。特に、熱可塑性インク、すなわち常温で固体であるホットメルト型インクは、本発明で対象とするコーティング材上に噴射された後速やかに固化し付着されるため、特に好ましく使用される。また、ホットメルト型インクは、コーティング材の中でも特に合成樹脂を構成成分とする合成樹脂水性エマルジョンなどによる被膜上に鮮明な印刷部を形成することができ、また合成樹脂水性エマルジョンが固化状態で柔軟性を有するものであれば、ホットメルト型インクが被膜上で常温に触れ固化していく際のホットメルト型インクの変形(収縮)に合成樹脂水性エマルジョンが追従できるため、ホットメルト型インクと被膜の間に隙間がない強固な印刷部が形成されると考えられるため好ましい。また、ホットメルト型インクはインク組成物の構成成分として有機溶剤がほとんど使用されないために、有機溶剤が塗装作業中に大気中に拡散して、安全性が損なわれるなどの問題もなく、作業環境上においても好ましい。
【0032】
ここで、本発明に最も好ましく使用されるインクであるホットメルト型インクの組成について説明する。ホットメルト型インク組成物(単に、「インク組成物」と称することがある。)は、一般に、有機顔料、無機顔料、染料等の色材、常温で固体のワックス等の、単体若しくは2以上の混合物から構成される。
色材としては、アゾ類、ニトロソ類、ベンゾイミダゾロン類、ジオキサジン類、ピロロピロール類等の有機顔料、酸化物類、ケイ酸塩類、炭素類、金属粉類等の無機顔料、アントラキノン類、フタロシアニン類、アミノケトン類、カチオン染料等の染料等が挙げられる。
【0033】
常温で固体のワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;ポリエチレンワックス、フィッシャートロプスワックス等の合成ワックス;ガンデリラワックス、カルナウバワックス等の植物系ワックス;蜜蝋等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス等が挙げられる。
【0034】
インク組成物には、上述した色材やワックスに加えて、付着性及び可撓性を向上させるために樹脂等が添加されることがある。前記樹脂等としては例えば、ポリエチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などの酢酸ビニル系樹脂;メタクリル酸エステル樹脂などのアクリル系樹脂;フェノール樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ケトン;アルキド樹脂;ロジン;石油樹脂;炭化水素系樹脂;スチレン系熱可塑性エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いられるが、使用するワックスとの相溶性が高いものが主に選定される。
【0035】
その他、インク組成物には、必要に応じて乾燥剤、分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0036】
本発明で使用されるホットメルト型インクとしては、融点が70℃から150℃であるものが一般的に使用される。インクの融点が70℃以上であれば、発泡成形体を常温より高温下で使用する際にもインクが固化した状態を維持できるのに十分であるために好ましく、150℃以下であれば、インクジェット印刷装置でのインクの目詰まりを防ぐ目的でインク組成物を液状に維持する必要があるが、その温度をそれ程高い温度に設定する必要がなく好ましい。
【0037】
本発明の印刷部を有する発泡成形体の製造方法は、発泡成形体の成形工程に続いて、コーティング材塗布工程、乾燥工程、印刷工程の流れによって実施されるが、発泡成形体の成形工程に続いて、前乾燥工程、コーティング材塗布工程、乾燥工程、印刷工程を連続したライン上で実施することが印刷部を有する発泡成形体の生産効率上好ましい。しかし、上記の各工程の順序を変えない限り、各工程を個別に実施することもできる。
【0038】
本発明の印刷部を有する発泡成形体の製造方法の流れを図1によって、発泡粒子成形体を例に説明する。
発泡成形体の成形工程を終えた箱状容器等の発泡成形体は順次印刷工程に搬送される。搬送された発泡成形体1は、供給手段2により、ベルトコンベヤー3などの搬送具に移動され、前乾燥用の乾燥工程4(図では単に工程4と示す)に移動され乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥は、搬送された発泡成形体が発泡成形工程において加熱に使用された蒸気の凝縮水が発泡成形体表面に付着している場合に、この水分を除去するために、発泡成形体1の表面にコーティング材を塗布するのに先立って乾燥される工程である。発泡成形体表面を乾燥することにより余分な水分を減らすことで、被膜状態の不均一性やコーティング材の接着力の低下を防止できるため、この前乾燥を行なうことが望ましい。
【0039】
上記の前乾燥工程は、例えば、発泡成形体1を、発泡成形体1の両側面及び上面を囲むようなトンネル状の前乾燥機40中を移動させながら、熱風乾燥等により乾燥させる。熱源は電熱ヒーターや、スチームによる熱交換設備、ブロアー送風などの手段が適宜利用される。熱風温度は、乾燥速度を速める目的から、10℃〜80℃が好ましく、25℃〜75℃がより好ましく、40℃〜70℃が最も好ましい。
【0040】
乾燥後、続いてベルトコンベアー3によってコーティング材塗布工程5(図面では工程5と示す)に発泡成形体1を移動させる。塗布工程5では、前記したコーティング材のうち発泡成形体1の物性に応じたコーティング材を、コーティング材塗布装置50により発泡成形体表面に塗布する。塗布方法は、例えば、吹き付け、刷毛塗り、ロール塗り、または発泡成形体1をコーティング材に浸す浸漬など、印刷形成部に塗布することができる方法であれば何れでもよいが、印刷形成部の形態に影響されずにコーティング材を均一に塗布するためには、吹き付けによる方法が最も好ましい。吹き付けによる塗布であれば、印刷形成部が平らでない場合や、印刷形成部が凹部内である場合にも、塗布することが容易である。コーティング材は発泡成形体表面に塗布され、続く印刷工程において発泡成形体表面のコーティング材が塗布された任意の位置に印刷部を形成することができる。コーティング材は、印刷部が形成される表面の全面に塗布することは不経済であり、また乾燥の所要時間が長くなるため必ずしも全面に塗布する必要はなく、コーティング材は原則的には印刷形成部のみに存在しておればよいが、印刷部のずれ等を考慮して少なくとも印刷形成部よりもやや広範囲に塗布されていることが好ましい。
ここで、発泡成形体が発泡粒子成形体であれば、コーティング材の塗布によって、成形体の粒子間が形成する微細な隙間にコーティング材が入り込み、アンカー効果の作用により強固に発泡成形体に付着され、本発明の効果がより発揮される。
【0041】
コーティング材が塗布された発泡成形体1は続いて乾燥工程6(図面では工程6と示す)に移動される。乾燥工程6では、コーティング材が塗布された発泡成形体1をベルトコンベヤー3でトンネル状の乾燥機60内を移動させながらコーティング材を乾燥させ被膜を形成する。使用される乾燥機は一般には熱風乾燥装置が使用され、熱源は電熱ヒーターや、スチームによる熱交換設備、ブロアー送風などの手段が適宜利用される。
【0042】
送風温度は、発泡成形体1が軟化する温度より低く、且つコーティング材の乾燥を速みやかに行うこと等を考慮し、10℃〜80℃であることが好ましく、25℃〜75℃であることがより好ましく、40℃〜70℃であることが特に好ましい。乾燥に要する時間としては、60秒以内であることが乾燥効率の面から好ましく、55秒以内であることがより好ましく、50秒以内であることが特に好ましい。
【0043】
次に、コーティング材の被膜が形成された発泡成形体1は、ベルトコンベアー3によって印刷工程7(図面では工程7と示す)に移動される。印刷工程7では、発泡成形体表面の所定の位置にインクジェット印刷装置70により所要の文字や絵柄の印刷を施す。
【0044】
インクジェット印刷方法としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式など、一般的に知られたいずれの方式も採用可能であり、インクヘッダーをインクの溶融温度以上に保持して、インクを溶融させてコーティング材による被膜上の所定の個所にインクを吹き付け印刷部が形成される。
【0045】
発泡成形体の印刷形成部の被膜上にインクを吹き付ける際のインクヘッダー71とコーティング材による被膜との距離は、0.5mm〜30mm程度であることが好ましく、1mm〜15mmであることがより好ましく、2mm〜10mmであることが特に好ましい。インクヘッダーと被膜との距離が0.5mm〜30mmであれば、インクが空気に触れる時間が必要以上に長くないため、インクの粘度を適正な状態に保ちながら被膜上にインクを吹き付けることができる。被膜上に吹き付けられたインクによっては、発泡成形体の印刷部に必要に応じて乾燥工程を設けることが好ましいが、インクがホットメルト型インクなどのように常温で固体である性質を持つ場合は短時間に固化するため、特に乾燥工程は必要ではない。
【0046】
次いで、印刷部が形成された発泡成形体1は、ベルトコンベヤー3で移動されてパレット8等に積まれ、適宜梱包される。
【0047】
このようにして製造された本発明の印刷部を有する発泡成形体は、印刷部の耐久性に優れ、印刷部が擦れ合ったりしても簡単に剥がれたり消えたりすることがなく長期間にわたって、鮮明な印刷部を維持することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を示す。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
株式会社ジェイエスピー製の発泡性ポリスチレン樹脂粒子、商品名「スチロダイア JQ250NX」を予備発泡機(ダイセン工業株式会社製:DYH1000)で嵩密度16.7kg/m3に発泡させたポリスチレン樹脂発泡粒子を用い、型内成形法により、見かけ密度16.7kg/m3、縦方向長さ500mm、横方向長さ350mm、高さ120mm、厚み15mmの上面に開口部を有する箱型ポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。
【0050】
次に、上記発泡成形体をベルトコンベヤーに載せて移動させながら、トンネル状の乾燥機内を通過させて、10秒間発泡成形体表面を乾燥させ(前乾燥工程)、発泡成形体表面の水分を飛ばした。この前乾燥工程は、ユニットヒーター(荒川鉄工所製 PF−2−12;スチーム圧力0.19MPa;出口温度75℃)と、トンネル状の乾燥機とを配管で接続し、配管の途中にブロアー(高木鐵工製;1.5kw;送風配管直径100mm)を取り付け、熱風の乾燥機入口温度が65〜70℃となるように、熱風を乾燥機に導くことにより行なった。
【0051】
続いて、アクリル系樹脂水性エマルジョン(製品名:BASF JAPAN社製 アクロナールJY2072、性状:固形分50重量%、粘度500mPa・s)100重量部に対して、乾燥促進剤としてエタノール3重量部をアクリル系樹脂水性エマルジョンに添加したコーティング材を、発泡成形体の一側面に縦70mm横70mmの範囲に吹き付け法で11.3g/m2塗布した。上記粘度は、株式会社東京計器(現株式会社トキメック)製BM型回転粘度計(ロータ:No.1、回転速度:6rpm)を使用し、容器に密閉されたサンプルを48時間、温度23℃、湿度50%の室内に置き、容器から取り出して同室内にて測定した。
【0052】
次に、コーティング材が塗布された発泡成形体をトンネル状の乾燥機内を通過させて、7秒間熱風を当て、コーティング材を乾燥し(後乾燥工程)、被膜を形成した。この後乾燥工程は、ユニットヒーター(荒川鉄工所製 PF−2−12;スチーム圧力0.19MPa;出口温度75℃)と、トンネル状の乾燥機とを配管で接続し、配管の途中にブロアー(高木鐵工製;1.5kw;送風配管直径100mm)を取り付け、熱風の乾燥機入口温度が65〜70℃となるように、熱風を乾燥機に導くことにより行なった。
【0053】
引き続いて、インクジェット印刷装置(イーディーエム社製 MDL5000)にてホットメルト型インク(イーディーエム社製 サーモンインク5003黒;インク濃度6)で図2に示す摩耗試験用のパターン図を前記被膜上に印刷した(図の大きさは試験片の寸法50mm×50mmと略同一寸法の縦50mm横49mmとした)。その際の、印刷形成部とインクジェット印刷機のインクの出口である印刷機ヘッダーの最外部との距離(ヘッダー距離)を5mmとし、インクの設定温度(印刷機ヘッダーの設定温度)は125℃に設定した。
【0054】
印刷部を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体から、摩耗試験に使用する試験片として、印刷部を全て含むようにして、縦50mm、横50mm、厚み15mmを切り出した。次に、摩耗試験機(新東化学株式会社製トライボギア HEIDON−TYPE30)の可動部に、試験片の印刷部が下を向くように固定し、その下に印刷部と対向するように、白色のポリスチレン系樹脂発泡体(見かけ密度16.7kg/m3、移動方向100mm、移動方向に対する直行方向70mm、厚み15mm)を摩擦板として設置した。次に、可動部に固定され、摩擦板上に載置された試験片への上からの垂直荷重を500gとし、移動幅20mm、移動速度6000mm/minの条件にて摩擦板を直線往復させながら試験片に摺動させて、発泡成形体印刷部の耐摩耗性試験を行った。
【0055】
発泡成形体印刷部の耐摩耗性を下記により評価した。
直線往復50回を1サイクルとして、1サイクル毎に摩擦板を観察した。1サイクル目とは往復回数が1回以上50回未満であり、2サイクル目とは往復回数が51回以上100回未満であり、3サイクル目以降も同様となる。毎サイクル終了時に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の摩擦板を観察し、試験片から摩擦板に印刷物の付着が認められた時点で、そのサイクル数を印刷部の摩耗耐久範囲とする。即ち、サイクル数が多いほど印刷部の耐摩耗性が高いということとなる。結果を表1に示した。
【0056】
また、摩耗耐久範囲の結果から、それぞれの実施例、比較例の印刷部が実用に耐えうるものであるかを判断し、下記のように評価をし、結果は表1に示した。
○・・印刷部の摩耗耐久範囲が2サイクル以上であり、十分実用に耐えうるものである。
×・・印刷部の摩耗耐久範囲が1サイクルであり、実用に耐えうるものでない。
【0057】
実施例2
コーティング材の塗布量を15.0g/m2とし、後乾燥工程にて10秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0058】
実施例3
コーティング材の塗布量を25.0g/m2とし、後乾燥工程にて20秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0059】
実施例4
コーティング材の塗布量を35.0g/m2とし、後乾燥工程にて20秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0060】
実施例5
スチレン‐ブタジエン共重合樹脂水性エマルジョン(製品名:(株)イーテック社製トマックスーパー、性状:固形分45重量%、粘度50mPa・s)に、粘度調整の為、増粘剤として信越化学工業(株)社製ハイメトローズを添加し、500mPa・sに調整し、スチレン‐ブタジエン共重合樹脂水性エマルジョン100重量部に対して、乾燥促進剤としてエタノール3重量部を添加したコーティング材を発泡成形体の一側面に縦70mm横70mmの範囲に吹き付け法で15.0g/m2塗布し、後乾燥工程にて15秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0061】
実施例6
酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂水性エマルジョン(製品名:住化ケムテックス(株)社製スミカフレックス401HQ、性状:固形分52重量%、粘度2000mPa・s、エチレン含有量15wt%)に、粘度調整の為に純水を加え500mPa・sに調整し、酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂水性エマルジョン100重量部に対して、乾燥促進剤としてエタノール3重量部を添加したコーティング材を発泡成形体の一側面に縦70mm横70mmの範囲に吹き付け法で30.0g/m2塗布し、後乾燥工程にて25秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0062】
実施例7
酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂水性エマルジョン(製品名:住化ケムテックス(株)社製スミカフレックス305HQ、性状:固形分50重量%、粘度3500mPa・s、エチレン含有量5wt%)に、粘度調整の為に純水を加え500mPa・sに調整し、酢酸ビニル‐エチレン共重合樹脂水性エマルジョン100重量部に対して、乾燥促進剤としてエタノール3重量部を添加したコーティング材を発泡成形体の一側面に縦70mm横70mmの範囲に吹き付け法で30.0g/m2塗布し、後乾燥工程にて25秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0063】
実施例8
アクリル系樹脂水性エマルジョン(製品名:BASF JAPAN社製 アクロナールJY2072、性状:固形分50重量%、粘度500mPa・s)を、エタノールを添加せずに、発泡成形体の一側面に縦70mm横70mmの範囲に吹き付け法で25.0g/m2塗布し、後乾燥工程にて55秒間熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果を表1に示した。
【0064】
比較例1〜3
前乾燥の後にコーティング材塗布工程と乾燥工程を行わずに印刷工程を行い、ヘッダー距離をそれぞれ2mm、5mm、10mmとした以外は実施例1と同様にして印刷部をそれぞれ形成した。実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果は表1に示した。
【0065】
比較例4、5
前乾燥の後にコーティング材塗布工程と乾燥工程を行わずに印刷工程を行い、インクジェット印刷機ヘッダーの温度をそれぞれ100℃、140℃に設定した以外は、実施例1と同様にして印刷部をそれぞれ形成し、それぞれの印刷部を有する発泡成形体について実施例1と同様にして印刷部の耐摩耗性を評価した。結果は表1に示した。
【0066】
(表1)


【0067】
実施例1〜8では往復運動51回以上100回以内(2サイクル目)で初めて摩擦板にインクの付着が僅かに確認され、後述する比較例に比べて磨耗耐久性に優れていることが確認された。
また、実施例3と実施例8との比較より、乾燥促進剤が添加されていないコーティング材を使用した際の後乾燥工程の乾燥時間は、乾燥促進剤を添加しなかったものに比べて短縮されていることが分かった。
【0068】
一方比較例はコーティング材の塗布を行なわなかった例を示す。結果として比較例では、1回以上50回以内(1サイクル目)で発泡成形体からのインクの剥離が確認された。確認の際、摩擦板には試験片の印刷部からのインクの付着が多く、試験片の印刷部は、原形を留めるものではなかった。
【0069】
比較例1、2、3はそれぞれヘッダー距離を変更し、ヘッダーと印刷形成部との距離を変更することでインクの付着に差異があるかを確認するものである。ヘッダー距離が小さい程、インクが印刷形成部に達する瞬間の温度が高くなり、ヘッダー距離が大きいものとの付着性に差が生じるのではないかと考えられたが、ヘッダー距離が何れの場合もインクの剥離が1回以上50回以内(1サイクル目)で確認された。比較例1、2、3の結果から、上記実験の範囲内においてはインクの印刷形成部における初期温度がインクと印刷形成部の付着性に影響を与えることはないことが認められた。
【0070】
比較例4と5はそれぞれインクヘッダー温度を変えた場合にインクの付着性に差異があるかを確認するものである。ヘッダー温度が何れの場合もインクの剥離が1回以上50回以内(1サイクル目)で確認されたことから、上記実験の範囲内においてはインクヘッダーの温度がインクと印刷形成部の付着性に影響を与えることはないことが認められた。
【0071】
以上のことから、コーティング材を塗布して被膜を形成し、該被膜上に印刷部を形成することにより、印刷部の発泡成形体表面に対する付着性が向上し、耐久性の優れた印刷部を有する発泡成形体を得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施態様を説明する工程図を示す。
【図2】本発明の印刷部摩耗試験に使用したパターン図を示す。
【符号の説明】
【0073】
1 発泡成形体
2 供給手段
3 コンベアーベルト
4 前乾燥工程
40 乾燥機
5 塗布工程
50 塗布装置
6 乾燥工程
60 乾燥機
7 印刷工程
70 印刷装置
71 インクヘッダー
8 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡成形体の表面にコーティング材を塗布して被膜を形成した後、該被膜上にインクジェット印刷にて印刷部を形成することを特徴とする印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
コーティング材の塗布量が10g/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
コーティング材が、合成樹脂水性 エマルジョンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
インクジェット印刷に使用されるインクがホットメルト型インクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
コーティング材は、乾燥促進剤が添加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷部を有する合成樹脂発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−283172(P2007−283172A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110892(P2006−110892)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】