説明

印字物の検査方法及びその検査装置

【課題】印字された文字や符号等の変形を確実に検査することができる検査方法を提供する。
【解決手段】本発明は、シート片を搬送しながら印字が行われる印字物の検査方法である。本発明の検査方法では、印字対象が含まれる印字面の領域を撮像し(ステップS10)、その画像をマトリクス状に配列された複数の画素に分解して認識するとともに、個々の画素について印字対象が含まれるか否かを判別する(ステップS12)。そして、印字対象が含まれると判別された画素数から印字の品質を判定する(ステップS14)。画素数が極端に少なかったり、極端に多かったりすると、印字不良が生じていると判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字物の品質を検査するための検査方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印字物の品質検査に関して、従来から文字や記号等の印字された対象を画像により認識し、その結果から検査を行う手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この公知の検査手法では、印字された文字パターン列の画像を複数のブロックに分割して認識し、分割したブロックごとに文字パターン列の行範囲を抽出することで、その結果から文字品質を検査している。
【特許文献1】特開平11−272795号公報(第6−7頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した公知の検査手法によれば、実際の印字物において文字パターン列が全体として傾いているかどうかを検査したり、文字パターン列とは別に印字上の汚れがあるかどうかを検査したり、もしくは文字パターン列の一部に欠けがあるかどうかを検査することができる。しかしながら公知の検査手法は、印字された文字の一部分又は全体につぶれや伸び等の変形があるかどうかを検査することはできない。すなわち、文字パターン列に含まれる1つ1つの文字が部分的又は全体的につぶれた状態で印字されていたり、逆に伸びた状態で印字されていたりした場合であっても、公知の検査手法ではブロックごとの行範囲を抽出して傾斜を検出するだけであり、文字そのものの印字不良を検査することはできない。
【0004】
そこで本発明は、印字された文字や符号等の変形を検査する用途に適した検査方法及び検査装置の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、印字物となる印字用片を一定方向(例えば辺に沿う方向)へ一定の速度で搬送し、この搬送過程で、印字用片の印字面に印字用のヘッドを押し付けながら印字が行われる印字物の検査に適用される。このように、印字用片の搬送に伴って印字が行われる場合、その搬送状態の変動(搬送速度の変動)に起因して印字の不具合が発生する。具体的には、搬送速度の低下による印字対象(文字・符号等)のつぶれ不良や、反対に搬送速度の増加による印字対象の伸び不良である。なお本発明でいう「印字」には、文字や符号のみならず、絵柄や図形、記号等を印字することも含まれる。この点、公知技術で検査を行っている文字パターン列の傾きといった程度の不具合であれば、最終的に1つ1つの文字がつぶれたり、伸びたりしていなければ、そのまま文字を判読可能である場合もある。しかしながら、本発明で取り扱うつぶれ不良や伸び不良等は単なる傾斜とは性質が異なり、印字された文字や符号、絵柄、図記号等の判読を困難にする不具合であることから、これを確実に検査することの意義は大きい。
【0006】
このような印字の不具合を検査するため、本発明は印字対象が含まれる印字面の領域を撮像する撮像工程と、この撮像工程で撮像された画像を、マトリクス状に配列された複数の画素に分解して認識する認識工程と、この認識工程で認識された個々の画素につき、印字対象が含まれるか否かを判別する判別工程と、この判別工程で印字対象が含まれると判別された画素の数に基づいて印字の品質を判定する判定工程とから構成される印字物の検査方法を提供する。
【0007】
また本発明は、上記の検査方法を実行するための構成として、印字機構により印字された印字対象を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された印字対象の画像を複数の画素に分解して認識するとともに、認識した個々の画素について印字対象が含まれるか否かを判断した結果、印字対象が含まれると判断された画素の数に基づいて印字の品質を判定する検査手段とを備えた印字物の検査装置を提供する。
【0008】
上記のつぶれ不良や伸び不良といった不具合は、印字対象を画像で認識した際の画素数に反映される。すなわち、正常な印字結果に対して実際の印字対象につぶれ不良が発生していれば、全体としてその画素数は少なくなる傾向にある。また、実際の印字対象に伸び不良が発生していれば、全体としてその画素数は多くなる傾向にある。このような背景から、本発明の印字物の検査方法及びその検査装置によれば、正常な場合に比較して画素数が多いか少ないかを判断することによって印字不良を検査することができる。
【0009】
より好ましくは、印字対象が含まれると判断された画素の数を印字用片の搬送方向に対応するマトリクスの配列方向に積算して得た結果に基づいて印字の品質を判定する手法が挙げられる。
【0010】
さらに好ましい検査の手法として、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を予め判定の基準とするべき基準値として設定しておき、印字対象が含まれると判断された画素の数と基準値とを比較することで印字の品質を判定するものがある。
【0011】
いずれにしても、上記のような搬送状態の変動に基づく印字不良をより確実に検査することができる点で優れた検査手法といえる。
【0012】
上述したつぶれ不良又は伸び不良のいずれに該当するかを検査するには、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を含んだ数値範囲を予め判定の基準とするべき許容範囲として設定しておき、印字対象が含まれると判断された画素の数が許容範囲内に含まれるか否かによって印字の品質を判定する手法が適する。またこの場合、予め設定された許容範囲内では正常と判定されることになる。
【0013】
より具体的な検査手法は以下の内容である。すなわち、検査において印字対象が含まれると判断された画素の数が許容範囲を超えている場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に伸長された状態にある(伸び不良)と判定する一方、印字対象が含まれると判断された画素の数が許容範囲に到達していない場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に短縮された状態にある(つぶれ不良)と判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の印字物の検査方法及びその検査装置は、実際に印字された印字対象の画素数から印字品質を判定しているため、印字結果が部分的又は全体的に変形しているか否かを確実に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
〔装置の概要〕
図1は、一実施形態として印字機に適用された検査装置の構成を概略的に示している。図1に示される印字機は、例えば長方形状のシート片Sを水平方向へ搬送しながらその上面(印字面)に文字や符号等を印字することができる。印字面を有したシート片Sとしては、紙片やフィルムシート、樹脂シート等を使用することができる。なお、ここでいう「印字面」は、これから印字が行われる面のことである(ただし、他の絵柄が先に印字されていてもよい。)。また印字機は、シート片Sとは別に金属板や樹脂板、板状材、箱状体等の印字面を有した各種の印字用片を搬送しながら印字を行うものであってもよい。
【0017】
印字機はシート搬送機構2を備えている。シート搬送機構2は、シート片Sを搬送しながら印字を行うためのものである。シート搬送機構2は複数の搬送ローラ4とこれに対向するピンチローラ6とを等間隔で搬送方向(この例では水平方向)に配列して構成されている。これら搬送ローラ4及びピンチローラ6の配列により、シート片Sの搬送経路が形成されている。個々の搬送ローラ4とピンチローラ6とは上下で一対になっており、これらの間にはシート片Sが1枚だけ通過できる隙間が確保されている。なお隙間は、シート片Sの厚みに合わせて適宜に調節可能である。
【0018】
個々の搬送ローラ4は、図示されていないモータ等の駆動源から動力を受けて一定速度で同じ方向(図1でみて反時計回り方向)に回転する。シート搬送機構2には、図示されていないシートフィーダからシート片Sが1枚ずつ供給される。シートフィーダには、多数のシート片Sが積層された状態で蓄積されており、そこから1枚ずつシート片Sが間欠的に繰り出されてシート搬送機構2に供給される。供給されたシート片Sは、搬送ローラ4とピンチローラ6との間に受け入れられ、これらの回転に伴って次々に隣の搬送ローラ4へ受け渡しされながら搬送される。なお、シート搬送機構2の終端から排出されたシート片Sは、例えば図示されていないシートスタッカに積層される。
【0019】
また、印字機は印字機構8を備えている。印字機構8は、サーマルヘッド10とインクリボンロール12、リボン回収リール14等から構成されている。複数ある搬送ローラ4のうち、ある1箇所の搬送ローラ4の直上にサーマルヘッド10が設けられており、この位置には搬送ローラ4に対応するピンチローラ6が設けられていない。また、インクリボンロール12及びリボン回収リール14はサーマルヘッド10の上方に設置されている。インクリボンRは、インクリボンロール12から下方に繰り出され、シート片Sの搬送方向でみて後側からサーマルヘッド10の下方に回り込み、そして、サーマルヘッド10の前側で上方に引き上げられるようにしてリボン回収リール14に巻き取られている。
【0020】
印字機は、シート搬送機構2や印字機構8の動作を制御するために制御ユニット20を備えている。制御ユニット20は、中央演算処理装置(CPU)や記憶装置(ROM,RAM)、入出力インタフェース(I/O)等を有した電子計算機から構成されている。電子計算機の例として、好ましくはパーソナルコンピュータ、ワークステーション等が挙げられる。
【0021】
また印字機は、ロータリエンコーダ22や上流シートセンサ24、印字マークセンサ26、下流シートセンサ27等を有している。このうちロータリエンコーダ22は、例えば搬送ローラ4の駆動軸に連結されている。ロータリエンコーダ22は、搬送ローラ4の回転に同期したエンコーダパルスを生成し、これを制御ユニット20に入力する。また上流シートセンサ24は、シート片Sの搬送方向でみて印字機構8の上流に配置されている。この位置で上流シートセンサ24はシート片Sの有無を検出し、その検出信号を制御ユニット20に入力する。また、印字マークセンサ26及び下流シートセンサ27は、シート片Sの搬送方向でみて印字機構8の下流に配置されている。この位置で下流シートセンサ27はシート片Sの有無を検出し、その検出信号を制御ユニット20に入力する。一方の印字マークセンサ26は、シート片Sの有無を検出するほか、その印字面に付された印字マークの有無を検出し、それらの検出信号を制御ユニット20に入力する。以上の上流シートセンサ24、下流シートセンサ27及び印字マークセンサ26は例えば反射型のフォトスイッチから構成されている。
【0022】
図1の印字機に適用された印字装置は、印字の品質(例えば、印字の品質)を検査するため検査ユニット30を備えている。検査ユニット30もまた、中央演算処理装置(CPU)や記憶装置(ROM,RAM)、入出力インタフェース(I/O)等を有した電子計算機から構成されており、その具体例としてパーソナルコンピュータ、ワークステーション等が挙げられる。
【0023】
検査ユニット30に付随して、検査装置は上流シートセンサ28や印字マークセンサ29、CCDカメラ32及び下流シートセンサ33を備えている。シート片Sの搬送方向でみて、各種センサ28,29,33及びCCDカメラ32は印字機構8の下流に配置されている。その中で上流シートセンサ28CCDカメラ32よりもシート片Sの搬送方向でみて上流に配置されており、印字マークセンサ29及び下流シートセンサ33はCCDカメラ32よりも下流に配置されている。上流シートセンサ28及び下流シートセンサ33は、それぞれの位置でシート片Sの有無を検出し、その検出信号を検査ユニット30に入力する。また印字マークセンサ29はシート片Sの有無を検出するほか、その印字面に付された印字マークの有無を検出し、それらの検出信号を検査ユニット30に入力する。CCDカメラ32はシート片Sの印字面の一定範囲内を撮像し、その画像データを検査ユニット30に入力する。
【0024】
〔印字動作〕
次に、印字動作について説明する。
図2は、印字機による印字動作を概略的に示している。図2中(A)に示されているように、印字機構8のサーマルヘッド10は、その後端位置にあるヒンジを中心にして上下に動く機能を有している。サーマルヘッド10は、図示しないアクチュエータ(ソレノイド、モータ等)によって上下動させられる。サーマルヘッド10が下がると、その先端部分がインクリボンRを介してシート片Sに接触し、これによりインクリボンRがシート片の印字面に押し付けられた状態になる。このときサーマルヘッド10の圧力は、下側の搬送ローラ4で受けられる。この状態で搬送ローラ4が回転すると、シート片Sの搬送に同調してインクリボンRが走行する。
【0025】
サーマルヘッド10は、制御ユニット20から出力される印字指示信号に基づいて、シート片Sの印字面上にインクを転写する。制御ユニット20は、ロータリエンコーダ22から入力されるエンコーダパルスに同期してサーマルヘッド10の転写パターン(ラインパターン)を制御する。これにより、シート片Sの搬送動作に伴って線状の転写パターンが順番に印字面上に形成されていく。全ての転写パターンが形成されると、最終的に図2中(B)に示されているような印字対象(ここでは数字の「5」である。)が印字面上に印字される。
【0026】
印字動作が終わると、サーマルヘッド10が上方へ持ち上げられる。この場合、インクリボンRはシート片Sの印字面から上方へ離れた状態になり、シート片Sが搬送されていてもインクリボンRの走行は停止する。なお図2中(B)に示されているように、搬送方向でみてシート片Sの右側縁部にブロックパターンの印字マークMが付されている。
【0027】
図3は、印字動作の制御に関連して発生する各種の信号や状態の時間的な変化を示している。本実施形態では、印字動作を行う間の搬送ローラ4の回転速度は一定に制御されている。このため、ロータリエンコーダ22から入力されるエンコーダパルスは、一定の周期とパルス幅で連続的な波形を描いている。なお、エンコーダパルスは分周されたものであってもよい。
【0028】
シート搬送機構2によるシート片Sの搬送に伴い、上流シートセンサ24によってシート片Sが検出されると、制御ユニット20にシート検出信号が入力される(図3中の時刻t0)。同様にして、シート片Sの搬送に伴い印字マークセンサ26及び下流シートセンサ27からそれぞれシート片Sの検出信号が時間差をおいて入力される(時刻t1,t2)。下流シートセンサ27からシート検出信号が入力されると(時刻t2)、これに応じて制御ユニット20はサーマルヘッド接触指示信号を出力する。これにより、上記のようにサーマルヘッド10が下降してインクリボンRがシート片Sの印字面に押し付けられる。
【0029】
次に、印字マークセンサ26によって印字マークMが検出(黒色パターンのため信号レベルが低下)されると、その検出信号が制御ユニット20に入力される(時刻t3)。これを受け、制御ユニット20はサーマルヘッド10に対する印字指示信号(転写パターン)の出力を開始する。印字指示信号はエンコーダパルスの出力に同期して出力される。制御ユニット20は、予め決められた印字対象(ここでは数字の「5」の文字)を印字データの形式で記憶しておき、この印字データから1パルスごとの線状の転写パターンを生成することができる。例えば、印字データがm×nマトリクス状のドットパターンデータとして記憶されていると、1つの転写パターンは1ライン上に配列されたドット(最大n個)の集まりとして生成され、このような線状の転写パターンが最大でm個だけ生成される。そして、シート片Sの搬送に伴い、制御ユニット20が全ての転写パターンに基づいて印字指示信号を出力し終えると(時刻t4)、上記のように印字対象がシート片Sの印字面上に印字される。
【0030】
この後、シート片Sの搬送が進むと、上流シートセンサ24からシート検出信号が入力されなくなる(時刻t5)。これを受けて、制御ユニット20はサーマルヘッド接触指示信号の出力を停止する。これにより、サーマルヘッド10が上方へ持ち上がり、サーマルヘッド10とともにインクリボンRがシート片Sから離れる。
【0031】
〔印字結果の撮像〕
上記のようにして印字動作が行われた後、CCDカメラ32によって印字された文字の画像が撮像される。図には示されていないが、検査ユニット30にも同様にして、上流シートセンサ28、印字マークセンサ29及び下流シートセンサ33からそれぞれ時間差をおいてシート検出信号が入力される。このとき、シート片Sの先頭が下流シートセンサ33の真下位置まで到達し、下流シートセンサ33から検査信号が入力されると、検査ユニット30はCCDカメラ32を起動し、撮像スタンバイ状態にする。次に、印字マークセンサ29から印字マークMの検出信号が入力されると、これに応じて検査ユニット30はCCDカメラ32による撮像及び画像データの記録を行う。そして、上流シートセンサ28から検出信号が入力されなくなると、検査ユニット30はCCDカメラ32を休止状態にする。このようにして、印字結果の撮像が行われる。
【0032】
〔印字品質に変動が生じる理由〕
以上が印字動作とその印字結果を撮像する手順の概略であるが、実際にサーマルヘッド10が下降している間(時刻t3〜t4)、その圧力がシート片Sに付加されているため、このときの抵抗(摩擦抵抗)がシート片Sの搬送状態に影響を及ぼすことがある。例えば図3に示されているように、搬送ローラ4の回転は一定速度に制御されているため、通常は図中に1点鎖線で示されるように、常に一定の速度Vaでシート片Sが搬送されることが期待される。しかしながら、サーマルヘッド10の圧力がシート片Sに加わると、その抵抗によってシート片Sにブレーキが作用し、実際の搬送速度が変動(速度Vaより低下)することがある。図3には、このような搬送速度の変動が実線で示されている。
【0033】
あるいは、上記とは逆にシート片Sの実際の搬送速度が通常よりも高くなる場合もあり得る。例えば、搬送ローラ4の変形によって搬送ローラ4の断面形状が真円でなくなったり、回転軸の中心が偏ったりすると、本来よりも回転軸の中心からの距離(半径)が伸びた部分の周速が高くなる。このため、その部分でシート片Sが搬送される際は、本来の搬送速度よりも実際のシート片Sの搬送速度が高くなる。
【0034】
これに対し、搬送ローラ4は機械的に一定の回転速度で駆動されており、これに同期して制御ユニット20から一定の周期で印字指示信号が出力されていることから、シート片Sの搬送状態(搬送速度)に変動が生じると、予め期待されたとおりの印字結果が得られなくなる。具体的には、印字された文字のつぶれ不良や伸び不良といった印字不良を招くことになる。
【0035】
〔印字品質の変動例〕
図4は、CCDカメラ32により撮像された印字結果の第1サンプル(3つ)を示している。図1の検査装置において、CCDカメラ32は予め規定された撮像範囲(図中1点鎖線で囲まれた部分)の内側に印字結果(文字画像)が収まるようにその位置や角度、焦点距離等が調整されている。
【0036】
先ず、搬送ローラ4の回転にシート片Sが安定して追随している場合、シート片Sは予定された一定速度Vaで実際に搬送される。この場合、図4中(A)に示されているように、印字結果は「正常」、つまり、印字された文字が印字データによって規定された正規の画像として現れる。
【0037】
ところが、サーマルヘッド10から受ける抵抗などによって搬送ローラ4の回転にシート片Sが追随できなかった場合、シート片Sは予定された一定速度Vaよりも低い速度で搬送されることになる。この場合、図4中(B)に示されているように、印字結果は「つぶれ不良」となる。このような「つぶれ不良」が生じると、印字された文字は印字データによって規定された正規の画像ではなく、これよりも搬送方向につぶれて変形した画像として現れる。
【0038】
あるいは、上記のような搬送ローラ4の変形や回転軸の偏心等によって本来の搬送速度に比較して実際のシート片Sの搬送速度が通常よりも高くなった場合、図4中(C)に示されているように印字結果は「伸び不良」となる。このような「伸び不良」が生じると、印字された文字は印字データによって規定された正規の画像ではなく、これよりも搬送方向に伸長して変形した画像として現れる。
【0039】
また図5は、CCDカメラ32により撮像された印字結果の第2サンプル(3つ)を示している。この第2例では、印字対象としてアルファベット文字の「S」を取り上げており、図5中(A)の印字結果が「正常」の場合のサンプルである。
【0040】
シート片Sの搬送速度の変動は、サーマルヘッド10による文字の印字途中にも発生する可能性がある。例えば、サーマルヘッド10により印字が開始されて、最初のうちは搬送ローラ4にシート片Sが安定して追随していたものの、途中からシート片Sの搬送に遅れが生じることもある。このような場合、図5中(B)に示されているように、搬送方向でみて途中(ここでは上側部分)から文字がつぶれてしまうため、印字結果は「つぶれ不良」となる。
【0041】
逆に、サーマルヘッド10により印字が開始されて、最初のうちは搬送ローラ4の変形がない部分でシート片Sが通常の速度で搬送されていたものの、途中から搬送ローラ4の変形した部分(通常より半径が大きくなった部分)でシート片Sが搬送されると、その部分での搬送速度は通常より高くなる。このような場合、図5中(C)に示されているように、搬送方向でみて途中(ここでは上側部分)から文字が伸びてしまうため、印字結果は「伸び不良」となる。
【0042】
なお、ここでは特にサンプルとして示していないが、最初のうちはシート片Sの搬送に遅れが生じていたものの、途中から搬送ローラ4の回転にシート片Sが安定して追随し、本来の一定速度Vaに復帰する場合もある。あるいは、最初のうちはシート片Sの搬送速度が通常よりも高かったものの、途中から本来の一定速度Vaに安定する場合もある。これらの場合、図5中(B)とは反対に文字の下側部分がつぶれてしまったり(つぶれ不良)、図5中(C)とは逆に文字の下側部分が伸びてしまったりする(伸び不良)。この他にも、文字の中央部分だけにつぶれ不良や伸び不良が生じたり、逆に上部又は下部につぶれ不良や伸び不良が生じたりする場合もある。
【0043】
いずれにしても、上記のような「つぶれ不良」や「伸び不良」が生じると、印字結果としての文字の判読が困難となったり、外観が悪くなったりして印字文字の品質を低下させる。このため本実施形態では、以下の手順により印字物の検査を行うことで、印字品質の管理に資するものとしている。以下、検査装置を用いて実施することができる印字物の検査方法について説明する。
【0044】
〔検査方法〕
図6は、検査ユニット30による画像認識処理の一例を示している。検査ユニット30は、CCDカメラ32により撮像された画像データをマトリクス状の画素に分解して認識する。分解画素数は、印字するべき文字や符号等の大きさに合わせて適宜に設定すればよい。検査ユニット30は、認識した画素の1つ1つを白(=0)か黒(=1)のいずれかに判別して二値化したデータを生成すると、この二値化したデータを内蔵のバッファメモリにシフトする。次に検査ユニット30は、マトリクスの列(縦方向)ごとにバッファメモリ上のデータを積算し、その結果から撮像範囲内で黒(=1)と判別された高さ方向の画素数を求める。なお、ここでいうマトリクスの高さ方向は、シート片Sの搬送方向に対応する。
【0045】
次に検査ユニット30は、列ごとに求めた高さ方向の画素数の中から最大値(平均値でもよい)を抽出し、この抽出した値を所定の基準値Hと比較する。例えば、印字対象ごとに印字結果が「正常」である場合に得られる最大(又は平均)の画素数を基準値Hとすると、この基準値Hと実際に抽出された最大値とがほぼ一致していれば、その印字結果は「正常」であると判定することができる。これに対し、実際に抽出された最大値が基準値Hと比較して極端に小さければ、その印字結果は「つぶれ不良」であると判定することができる。あるいは、実際に抽出された最大値が基準値Hと比較して極端に大きければ、その印字結果は「伸び不良」であると判定することができる。
【0046】
本実施形態の場合、予め基準値Hを中心として上限値と下限値とを定めた許容範囲を規定し、この許容範囲内に最大値が含まれていれば、その印字結果を「正常」と判定し、逆に最大値が許容範囲から外れていれば、その印字結果を「不良」、つまり「つぶれ不良」又は「伸び不良」であると判定する手法を採用している。なお、許容範囲の上限値及び下限値については、一例として概ね基準値Hから±10%程度まで増減した値に設定することができるが、特にこれに限るものではない。
【0047】
図7は、検査ユニット30により実行される検査手順を示している。検査ユニット30は、例えば印字マークセンサ26から入力される検出信号をトリガとして、この検査手順を実行することができる。
【0048】
検査手順を開始すると、先ず検査ユニット30はCCDカメラ32による撮像を行う(ステップS10)。本実施形態の場合、CCDカメラ32により撮像を行うタイミングは、例えば印字マークの検出信号が入力されてから一定数のエンコーダパルスがカウントされた時点とすることができる。
【0049】
次に検査ユニット30は、CCDカメラ32により撮像された画像データをもとに画像認識処理を行う(ステップS12)。画像認識処理では、上記のように画像データから白黒の二値化データが生成される。そして、検査ユニット30は画像認識処理に続いて判定処理を行う(ステップS14)。判定処理では、上記のように二値化データから抽出された高さ方向の画素数の最大値が許容範囲に含まれるか否かの判断が行われる。なお、ここでは二値化データを例に挙げているが、検査ユニット30は連続調データを用いることもできる。
【0050】
上記の印字検査を行うことで、シート片Sの搬送速度の変動に伴う印字品質の変化を確実に監視することができる。特に、印字の対象が文字・符号等のように何らかの意味を有するものである場合、印字結果の「つぶれ不良」や「伸び不良」によって文字・符号の判読が困難になることは印字物としての品質を大きく低下させることになる。この点、本実施形態では印字結果を画像データに基づいて検査し、その良否の判定を行っていることから、印字不良を確実に発見することができ、その品質管理に大きく寄与することができる。
【0051】
一実施形態では、搬送経路上の1箇所のみに印字機構8が設けられているが、印字機構8は2箇所以上に設けられていてもよい。また、一実施形態では制御ユニット20と検査ユニット30とが互いに別々の装置として例示されているが、これらの機能を1台の電子計算機に集約してもよい。
【0052】
一実施形態では、印字対象として数字の「5」(又はアルファベットの「S」)が例示されているが、印字対象はその他の文字、符号、図形、記号、図柄等であってもよい。また、印字対象が文字や符号である場合、シート片Sの搬送方向又は搬送経路の横断方向(幅方向)に複数のものが印字される態様であってもよい。この場合であっても、CCDカメラ32により特定の位置の印字対象(文字、符号等)を撮像し、その搬送方向でみた画素数から印字の品質を判定することができる。
【0053】
また検査ユニット30は、図7の判定処理に続いて判定結果を出力することもできる。判定結果を出力する態様としては、例えばディスプレイ装置に判定結果を文字情報として表示したり、表示ランプを点灯させたり、エラー音を出力させたりするものが挙げられる。
【0054】
その他、一実施形態で挙げた各種センサやカメラ等の機器の配置はいずれも好ましい例示であり、本発明の実施に際して機器の配置を適宜に変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】印字機及び検査装置の構成を概略的に示した図である。
【図2】印字機構による印字動作を説明するための図である。
【図3】印字機及び検査装置の作動に伴う各種信号・状態の変化を表すタイミングチャートである。
【図4】CCDカメラにより撮像された画像データの第1サンプルである。
【図5】CCDカメラにより撮像された画像データの第2サンプルである。
【図6】画像データをマトリクス状の画素に分解して示した図である。
【図7】検査方法を実行するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
2 シート搬送機構
4 搬送ローラ
6 ピンチローラ
8 印字機構
10 サーマルヘッド
12 インクリボンロール
20 制御ユニット
22 ロータリエンコーダ
24 上流シートセンサ
26 印字マークセンサ
27 下流シートセンサ
30 検査ユニット
28 上流シートセンサ
29 印字マークセンサ
32 CCDカメラ
33 下流シートセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字用片の印字面に対し、印字用のヘッドを押し付けた状態で印字用片を一定方向に搬送することで印字対象が印字される印字物の検査方法において、
前記印字面を撮像して得た画像を複数の画素に分解して認識し、その結果、印字対象が含まれると判断された画素の数に基づいて印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印字物の検査方法において、
印字対象が含まれると判断された画素の数を印字用片の搬送方向に積算して得た結果に基づいて印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印字物の検査方法において、
正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を予め判定の基準とするべき基準値として設定しておき、前記印字対象が含まれると判断された画素の数と前記基準値とを比較することで印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の印字物の検査方法において、
正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を含んだ数値範囲を予め判定の基準とするべき許容範囲として設定しておき、印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲内に含まれるか否かによって印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の印字物の検査方法において、
前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲を超えている場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に伸長された状態にあると判定する一方、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲に到達していない場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に短縮された状態にあると判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項6】
印字用片の印字面に対し、印字用のヘッドを押し付けた状態で印字用片を一定方向に延びる搬送経路に沿って搬送し、この搬送過程で印字用片の搬送方向に対して前記搬送経路の横断方向に延びる印字パターンを搬送方向へ順次印字することにより、印字用片の印字面上に搬送方向及び前記搬送経路の横断方向に拡がる印字対象が印字される印字物の検査方法において、
前記印字対象が含まれる前記印字面の領域を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された画像を、マトリクス状に配列された複数の画素に分解して認識する認識工程と、
前記認識工程で認識された個々の画素につき、前記印字対象が含まれるか否かを判別する判別工程と、
前記判別工程で前記印字対象が含まれると判別された画素の数に基づいて印字の品質を判定する判定工程と
から構成される印字物の検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の印字物の検査方法において、
前記判定工程では、前記印字対象が含まれると判断された画素の数を印字用片の搬送方向に対応するマトリクスの配列方向に積算して得た結果に基づいて印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の印字物の検査方法において、
前記判定工程では、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を予め判定の基準とするべき基準値として設定しておき、前記印字対象が含まれると判断された画素の数と前記基準値とを比較することで印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の印字物の検査方法において、
前記判定工程では、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を含んだ数値範囲を予め判定の基準とするべき許容範囲として設定しておき、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲内に含まれるか否かによって印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載の印字物の検査方法において、
前記判定工程では、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲を超えている場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に伸長された状態にあると判定する一方、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲に到達していない場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に短縮された状態にあると判定することを特徴とする印字物の検査方法。
【請求項11】
印字用片を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される印字用片の印字面に接触し、その搬送動作に伴い前記印字面上に所定の印字対象を印字する印字機構とを備えた印字機により印字される印字物の検査装置において、
前記印字機構により印字された印字対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された印字対象の画像を複数の画素に分解して認識するとともに、認識した個々の画素について前記印字対象が含まれるか否かを判断した結果、前記印字対象が含まれると判断された画素の数に基づいて印字の品質を判定する検査手段と
を備えたことを特徴とする印字物の検査装置。
【請求項12】
請求項11に記載の印字物の検査装置において、
前記検査手段は、前記撮像手段により撮像された画像をマトリクス状に配列された複数の画素に分解して認識し、前記印字対象が含まれると判断された画素の数を印字用片の搬送方向に対応するマトリクスの配列方向に積算して印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の印字物の検査装置において、
前記検査手段は、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を予め判定の基準とするべき基準値として記憶しておき、前記印字対象が含まれると判断された画素の数と前記基準値とを比較することで印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査装置。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の印字物の検査装置において、
前記検査手段は、正常に印字された印字対象を撮像した画像から得られる画素数を含んだ数値範囲を予め判定の基準とするべき許容範囲として記憶しておき、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲内に含まれるか否かによって印字の品質を判定することを特徴とする印字物の検査装置。
【請求項15】
請求項14に記載の印字物の検査装置において、
前記検査手段は、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲を超えている場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に伸長された状態にあると判定する一方、前記印字対象が含まれると判断された画素の数が前記許容範囲に到達していない場合は、正常に印字された印字対象に比較して実際の印字結果が印字用片の搬送方向に短縮された状態にあると判定することを特徴とする印字物の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326327(P2007−326327A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160560(P2006−160560)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】