説明

厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用のバリア層

厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの新規な副構造体及びそれを組み込んだ厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを提供する。この副構造体は、基板と厚膜誘電体層との間にバリア層を備えている。このバリア層は、基板及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。この副構造体により、厚い誘電体層の容量が大きくなり、それによって、ディスプレイの輝度が高くなり、厚い誘電体層が絶縁破壊する傾向が低くなる。 このバリア層により、ガラスなどのより低コストの基板を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。
詳細には、本発明は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用のバリア層、及びそれを組み込んだ厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばテレビジョン用途の大面積厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作するには、その製作工程の熱処理ステップ中で寸法安定性を維持しながら、依然として大面積で製作し得る基板と必要とする。
特に、これらのディスプレイの製造コストを下げるために、このような特性を示す比較的低コストの基板が好ましい。
【0003】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイでは、蛍光層の両側の選択されるアドレス指定行と選択されるアドレス指定列との間に電圧を印加することによってディスプレイの画素をアドレス指定する。
この蛍光層は、2つの誘電体層に挟まれ、その一方が厚膜誘電体層である。
この印加電圧により、選択された行と列の交差位置に配置された画素で蛍光膜を横断する電界が生成される。
この画素を横断する電圧が閾値電圧よりも大きくなると、蛍光層と、それに隣接する誘電体層との界面から電子が蛍光層中に注入され、それによってこの蛍光層は電気的に導通し、全電圧がこれらの誘電体層を横断して印加される。
【0004】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイは一般に、ガラス、ガラスセラミック、セラミックその他の耐熱基板などの上に構築される。
ディスプレイの製作工程では、まず、この基板上に一組の下部電極を蒸着させる必要がある。
次に、特許文献1(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に例示されている厚膜蒸着技術を利用して、厚膜誘電体層を蒸着する。
次いで、一つまたは複数の薄い蛍光膜を挟む一つまたは複数の薄膜誘電体層からなる薄膜構造を蒸着し、その後、特許文献2(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に例示されている真空技術を利用して、一組の光学的に透明な上部電極を蒸着する。
そして得られた構造全体を、湿気その他の大気汚染物による劣化から厚膜構造及び薄膜構造を保護する密封層で覆う。
【0005】
従来の薄膜エレクトロルミネッセンス(thin film electroluminescent:TFEL)ディスプレイと比べて、厚膜誘電体層を有するエレクトロルミネッセンスディスプレイの大きな利点は、厚膜高誘電率層を、ディスプレイの動作電圧を大きく増加させることなく絶縁破壊を防ぐよう、十分に厚くし得ることである。
使用する材料の比誘電率を高くすると、画素が発光したときに、誘電体層の両端の電圧降下が最小限に抑えられる。
絶縁破壊を防ぐために厚膜誘電体層は一般に、焼結した圧電性または強誘電性のペロブスカイト(perovskite)材料、例えば、マグネシウムチタン酸ジルコン酸鉛(PMN-PT)またはマグネシウムニオブ酸鉛(PMN)からなり、比誘電率は数千であり、厚さは約10μmよりも厚い。
ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)など、適合する圧電性または強誘電性の材料のより薄い追加の上層を、有機金属蒸着(metal organic deposition:MOD)技術またはゾルゲル(sol-gel)技術を利用して蒸着し、それによって後に薄膜蛍光体構造を蒸着するために厚膜の表面を滑らかにする。
【0006】
一般に、アルミナ基板上に厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを構築するとき、このアルミナ基板上に薄膜金電極を蒸着し、その上に厚膜誘電体層を蒸着する。
特にこの厚膜誘電体層の上部に残存する細孔を充填し得るのに十分に高い焼結厚膜密度が、ゾルゲル技術またはMOD技術を利用して蒸着されるより薄い上層によって得られるように、この厚膜誘電体層を約850℃で焼結する。
しかし、より薄い前記上層では、焼結材料の細孔は完全には充填されない。
というのは、より薄い前記上層は、ゾルゲルまたはMODによる前駆体材料を加熱して、この上層の圧電性または強誘電性の材料を形成するときに、体積が極めて大きく減少するからである。
この欠点を克服するために、特許文献3(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されているように、厚膜誘電体層を蒸着し、この層を焼結する前に機械的に圧縮するために静水圧加圧プロセスが利用される。
これは、厚膜誘電体層の密度を高め、多孔性を低くする役割を果たし、その結果、このより薄い上層を蒸着するときに、厚膜誘電体層の比誘電率及び絶縁耐力の双方が増大される。
絶縁破壊は、誘電体層中のランダムな欠陥に関連するので、破壊の確度はディスプレイの面積が大きくなると共に高くなり、そのため、この傾向を是正するために、より大きな面積のディスプレイには、ノミナルの絶縁耐力がより大きい層が使用される。
【0007】
ガラス基板上で厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを構築するときには、好ましくはガラスの軟化点に近いが、ディスプレイの加工中にガラスが変形しない程度の温度で厚膜誘電体層を焼結する。
典型的にはこの温度は、ほぼ700℃である。
しかし、この温度付近では、ガラス基板中の原子種、特に周期表のIA族の元素が移動しやすくなり、ディスプレイ構造中に拡散することがあり、これらの原子種により、ディスプレイ構造内で機能的な劣化が生じる場合がある。
【0008】
マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)及びマグネシウムチタン酸ジルコン酸鉛(PMN-PT)など、厚膜誘電体層の構成材料はすべて、それらのペロブスカイト結晶構造のために強誘電性または常誘電性の高誘電率材料である。
ただし、PMNは、強誘電性ではなく、且つ比誘電率が低いパイロクロア(pyrochlore)結晶構造も形成し得る。
パイロクロア相の形成は、厚膜ペースト内のPMNにチタン酸鉛を添加して焼結し、PMN−PTを形成することによって抑制されることが報告されているが、この材料の比誘電率は、チタン酸鉛の濃度が高すぎる場合には、十分なディスプレイの性能を得るには低すぎる。
パイロクロアが形成される傾向は、ガラス基板から原子種が導入されることによっても高くなることがある。
【0009】
したがって、明らかに、上記で論じた欠点の一部がなくなり、また軽減される厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイが求められている。
【特許文献1】米国特許第5,432,015号明細書
【特許文献2】国際公開第00/70917号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,771,019号明細書
【特許文献4】米国特許第6,610,352号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ内で使用するバリア層を提供するものである。
このバリア層により、少なくとも一種の化学種がディスプレイ中を通って拡散することが抑制されている。
【0011】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用のバリア層が提供される。
このバリア層は、その隣接層に関して化学的に不活性であり、このバリア層により、少なくとも一種の化学種が、基板からディスプレイの残りの部分に、且つ/または、ディスプレイの残りの部分から基板に拡散し、そのため反応することが最小化されるか、または抑制される。
【0012】
本発明の別の態様では、厚膜誘電体層中の少なくとも一種の化学種と、基板の少なくとも一種の化学種との反応を抑制する厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用のバリア層が提供される。
【0013】
本発明の別の態様では、厚膜誘電体層からガラス基板への、またその逆の方向の少なくとも一種の化学種の拡散を抑制することによって、この厚膜誘電体層中の少なくとも一種の化学種と、ガラス基板からの少なくとも一種の化学種との反応が抑制される厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用のバリア層が提供される。
これにより、厚い誘電体層の容量が大きくなり、それによって、ディスプレイの輝度が高くなり、厚い誘電体層にクラックが生じる傾向が低くなっている。
【0014】
本発明の態様によれば、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体が提供される。
この副構造体は、
基板と、
前記基板上のバリア層と、
前記バリア層上に設けられた下部電極と、
前記下部電極上に設けられた厚膜誘電体層とを備えている。
【0015】
他の実施形態では、この副構造体は、下部電極上にバリア層を存在させることができる。
他の実施形態では、このバリア層は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ内で、基板及び下部電極の双方の上に存在し得る。
【0016】
本発明の別の態様によれば、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体が提供される。
この副構造体は、
基板と、
バリア層と、
下部電極と、
厚膜誘電体層とを順に備えている。
このバリア層は、基板及び下部電極に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
【0017】
本発明の別の態様では、バリア層は、基板及び下部電極層の双方に隣接している。
【0018】
本発明の別の態様では、バリア層の物理的特性により、副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、このバリア層、ならびにこの副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されている。
【0019】
本発明の別の態様では、バリア層の熱膨張係数は、内部応力を最小限に抑えるために、他の層の熱膨張係数に一致している。
【0020】
本発明の別の態様では、バリア層の熱膨張係数は、約4×10−6/℃〜約10×10−6/℃である。
【0021】
本発明の別の態様では、バリア層は、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0022】
本発明の別の態様では、バリア層の厚さは、少なくとも約50nm、好ましくは、少なくとも約100nmである。
【0023】
本発明の別の態様では、厚膜誘電体層の比誘電率は、約50よりも大きい。
典型的には、この厚膜誘電体層の比誘電率は、少なくとも約1000である。
【0024】
本発明の別の態様では、この厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層である。
【0025】
本発明の別の態様では、副構造体は更に、厚膜誘電体層に隣接する後続の平滑層を備えている。
【0026】
本発明の別の態様では、少なくとも一種の化学種は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される。
【0027】
本発明の別の態様では、当業者には理解されるように様々な基板を使用することができる。
本発明のバリア層と共に使用するのに好ましい基板は、IA族(アルカリ金属)、IIA族(アルカリ土類金属)、シリコン、及びアルミニウムからなる群から選択される元素を含んでいるガラス基板である。
他の基板の例には、アルミナ、金属セラミック複合物、ガラス材料、ガラスセラミック材料などのセラミックやその他の耐熱材料などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の別の態様では、他のバリア層が、下部電極と厚膜誘電体層との間に介在される。
この他のバリア層は、下部電極及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
好ましくは、この他のバリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択される。
より好ましくは、この他のバリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含むか、あるいは、この他のバリア層は、最大で約50nm(ある種の態様では、約20nm〜約50nm)の厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0029】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体が提供される。
この副構造体は、
基板と、
下部電極と、
バリア層と、
厚膜誘電体層とを順に備えている。
このバリア層は、下部電極及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
好ましくは、このバリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択される。
より好ましくは、このバリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含むか、あるいは、このバリア層は、最大で約50nm、ある種の態様では約20nm〜約50nmの厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0030】
本発明の別の態様では、この厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層である。
【0031】
本発明の別の態様では、上記で論じた副構造体を備えている厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイが提供される。
【0032】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイで使用する副構造体を作製する方法が提供される。
この方法は、
i)基板上にバリア層を蒸着させるステップと、
ii)このバリア層上に下部電極を蒸着させるステップと、
iii)この下部電極上に厚膜誘電体層を蒸着させるステップとを含む。
このバリア層は、基板及び下部電極に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
このバリア層は、高密度の連続層を形成するための当業者に周知の方法を用いて蒸着する。
【0033】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイで使用する副構造体を作製する方法が提供される。
この方法は、
i)基板上に下部電極を蒸着させるステップと、
ii)この下部電極上にバリア層を蒸着させるステップと、
iii) この下部電極上に厚膜誘電体層を蒸着させるステップとを含む。
このバリア層は、下部電極及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制する。
好ましくは、このバリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択される。
より好ましくは、このバリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含むか、あるいは、このバリア層は、最大で約50nm(ある種の態様では、約20nm〜約50nm)の厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0034】
本発明の別の態様では、この方法のバリア層の物理的特性により、副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、このバリア層、ならびにこの副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されている。
【0035】
本発明の別の態様では、この方法の厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層とされている。
【0036】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体が提供される。
この副構造体は、基板と厚膜誘電体層との間にバリア層を備え、このバリア層は、基板及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
好ましくは、このバリア層の物理的特性により、副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、このバリア層、ならびにこの副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されている。
好ましくは、この厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層である。
【0037】
本発明の別の態様では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体が提供される。
この副構造体は、
基板と、
少なくとも一種の化学種の拡散を抑制しているバリア層と、
下部電極と、
複合厚膜誘電体層とを順に備えている。
このバリア層は、基板及び下部電極に関して化学的に不活性である。
このバリア層の物理的特性により、副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、このバリア層、ならびにこの副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されている。
【0038】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
ただし、本発明の実施形態を示す詳細な説明及び特定の実施例は単なる例であることを理解されたい。
というのは、本発明の趣旨及び範囲に含まれる様々な変更及び改変は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるからである。
【0039】
本発明は、本明細書で示す詳細な説明及び添付の図面から、より詳細に理解されよう。
これらの説明及び図面は、単なる例であり、本発明の意図する範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ中の新規な副構造体を提供する。
この副構造体は、基板と厚膜誘電体層との間にバリア層を備えている。
このバリア層は、基板及び厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散することを最小化されるか、及び/または抑制される。
このように、ディスプレイの一つの区域から別の区域に化学種が本質的に拡散せず、そのため、潜在的に有害な影響がなくなる。
【0041】
また、このバリア層は、行電極(row electrodes)が金である場合には、このような電極の電気抵抗の増加も最小化する。
抵抗のこのような増加は、望ましいものではなく、厚膜誘電体層及びディスプレイの他の層の熱処理中に生じる場合がある。
バリア層は、焼結した厚膜誘電体層上に設けられたPZT平滑層にクラックが生じることを防ぐ助けにもなる。
一般に、このPZT層は、厚膜誘電体よりも広い部分の基板区域を覆う。
そのため、ディスプレイ全体の上面にITO列電極(column electrodes)が蒸着され、パターン化されるときに、アクティブなディスプレイ区域の外側のこれらのITO列電極は、列駆動部(column drivers)との接続を行うために、むき出しの、または被覆されたガラス基板の上面に直接載っているPZT層の上面の上に蒸着されなければならない。
この区域内のPZT層にクラックが生じていると、これらの列電極にもクラックが生じ、電気的に遮断されることになり、望ましくない。
ガラス基板に本発明のバリア層が被覆されていない場合、このガラスに直接重なるPZT層にクラックが生じることがある。
このように、基板にバリア層が被覆されている場合には、このバリア層により、PZT層にクラックが生じることがなくなる。
【0042】
まず、図1を参照して、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ20の副構造体10の第1実施形態を説明する。
副構造体10は、基板22、バリア層24、下部電極26、及び厚膜誘電体層28を順に備えている。
バリア層24は、基板22及び下部電極26に関して化学的に不活性であり、化学種がバリア層24を通って拡散することを抑制している。
【0043】
次に、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ20をより詳細に説明する。
図1に示すように、基板22は、シリカ、アルミナ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の化学種を含んでいるガラス基板である。
基板22の上にはバリア層24が蒸着されている。
バリア層24は、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
下部電極26は金電極であり、バリア層24上に蒸着されている。
厚膜誘電体層28は、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)であり、下部電極26上に蒸着されている。
平滑層30は、厚膜誘電体層28上に蒸着されている。
平滑層30は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含んでいる。
厚膜誘電体層28と平滑層30との組合せを複合厚膜誘電体層32と称する。
薄膜誘電体層34は、平滑層30の上に蒸着されている。
薄膜誘電体層34はチタン酸バリウムである。
次いで、薄膜誘電体層34上に蛍光層36が蒸着され、その後、上部誘電体層37、次いで、上部電極38が蒸着されている。
蛍光層36は、テルビウムにより活性化された硫化亜鉛蛍光層であり、上部誘電体層37は窒化アルミニウム、上部電極38は酸化インジウムスズ(ITO)である。
ディスプレイ20は、湿気及び/または他の大気汚染物による劣化からディスプレイ20を保護する(図示しない)密封層によって覆われている。
基板22は、ディスプレイ20の観察面40の反対側に設けられている。
【0044】
バリア層24は、基板から厚膜誘電体層28及びディスプレイの他の要素への化学種の拡散を抑制する助けとなり、厚膜誘電体層28から基板22への化学種の拡散を抑制している。
厚膜誘電体層28から基板22への化学種の拡散により、基板22の軟化温度が低くなることがあり、その結果、ディスプレイ20の製作中に基板22が変形し、基板22自体からの化学種の拡散が増加する場合がある。
【0045】
次に、図2を参照して、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ120の副構造体100の第2実施形態を説明する。
副構造体100は、基板22、下部電極26、バリア層42、及び厚膜誘電体層28を順に備えている。
バリア層42は、下部電極26及び厚膜誘電体層28に関して化学的に不活性である。
バリア層42は、化学種がバリア層42を通って拡散することを抑制している。
この特定の実施形態は、下部電極26が、基板22からの化学種の拡散による劣化を受けにくい場合に有用である。
この実施形態のバリア層42以外の要素は、前の実施形態で説明したものと同じであることを理解されたい。
【0046】
次に、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ120をより詳細に説明する。
図2に示すように、基板22の上に蒸着された下部電極26を有している。
バリア層42は、下部電極26上に蒸着されている。
バリア層42は、基板から厚膜誘電体層28及びディスプレイの他の要素への化学種の拡散を抑制し、厚膜誘電体層28から基板22への化学種の拡散を抑制している。
バリア層42は、比較的高い誘電率を有し、結晶質チタン酸バリウムを含んでいる。
この実施形態のバリア層42の比誘電率が比較的低いと、バリア層42が厚膜誘電体層28の容量を低下させることにより、ディスプレイの性能が悪くなる場合がある。
このように容量がより低くなると、一定の動作電圧でのディスプレイ120の輝度が低下するように作用する。
【0047】
次いで、厚膜誘電体層28がバリア層42上に蒸着され、その後、その上に平滑層30が蒸着される。
次いで、薄膜誘電体層34が平滑層30上に蒸着され、その後、蛍光層36、上部誘電体層37、及び上部電極38が順に蒸着される。
ディスプレイ120は、湿気及び/または他の大気汚染物による劣化からディスプレイ120を保護する(図示しない)密封層によって覆われている。
基板22は、ディスプレイ120の観察面40の反対側に設けられている。
【0048】
別の実施形態では、バリア層42は、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
バリア層42の厚さは、ディスプレイ20の輝度が実質的に影響を受けることがないように約50nm程度までとされている。
【0049】
また、図2の第2実施形態では、基板22と下部電極26との間に、バリア層24に類似の他のバリア層を介在させることもできる。
この他のバリア層は、基板22及び下部電極26に関して化学的に不活性であり、化学種がこのバリア層を通って拡散することを抑制している。
【0050】
第1実施形態に類似の別の実施形態では、基板22は、化学種の混合物を含むガラス基板である。
この化学種の混合物は、約55〜93(55%及び93%を含む)重量パーセントのシリカ、約7〜45(7%及び45%を含む)重量パーセントのアルミナ、アルカリ金属酸化物、及びアルカリ土類酸化物を含んでいる。
バリア層24は、アルミナ、窒化アルミニウム、及びフッ化アルミニウムからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0051】
別の実施形態では、基板22は焼結したアルミナであり、バリア層24はスパッタリングされたアルミナである。
バリア層24は、基板22及び下部電極26に関して化学的に不活性であり、このバリア層は驚くべきことに、基板から厚膜誘電体層へのアルミニウムの拡散を抑制している。
【0052】
一般に、上記で説明した実施形態に関して、バリア層は、その隣接する層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種がこのバリア層を通って拡散すること、すなわち、基板からディスプレイへの少なくとも一種の化学種の拡散、及びディスプレイから基板への少なくとも一種の化学種の拡散を共に抑制している。
理論に拘泥することなく、このバリア層は、厚膜誘電体層内の化学種と基板の化学種との反応を抑制していると考えられる。
【0053】
抑制される化学種は、ディスプレイの動作に有害な任意の化学種とされ得る。
好ましくは、抑制される化学種は、周期表のIA族(アルカリ金属)及びIIA族(アルカリ土類金属)からの元素、アルミニウム、ならびにシリコンを含む。
好ましくは、このバリア層は隣接層に付着し、このバリア層の物理的特性により、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの製作中にこのバリア層に実質的にクラックが生じず、また、このバリア層がディスプレイ自体の各層に実質的にクラックを生じさせないことが保証される。
クラックは、ディスプレイの内部応力を最小限に抑えることによって回避し得る。
これは、ディスプレイの異なる層の熱膨張係数を適切に整合させて、ディスプレイ製作の加熱ステップ中の温度変化により生じる内部応力を最小限に抑えることによって実施され得る。
バリア層の熱膨張係数は、好ましくは、約4×10−6/℃〜約10×10−6/℃(4×10−6/℃及び10×10−6/℃を含む)の範囲であり、より好ましくは、約5.5×10−6/℃〜約9×10−6/℃(5.5×10−6/℃及び9×10−6/℃を含む)の範囲である。
(バリア層の熱膨張係数と、基板の熱膨張係数が良好に整合していない場合には、バリア層にクラックが生じる場合がある。)
【0054】
バリア層は、高密度の連続層を形成するための当業者に周知の様々な方法を用いて蒸着され得る。
このバリア層は、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含み得る。
【0055】
バリア層が基板と下部電極との間にある場合、このバリア層の好ましい厚さは、少なくとも約50nmであり、より好ましくは少なくとも約100nmである。
これは、50nmから100nmを越える厚さまでの任意の範囲、またはその部分的な範囲が含まれる。
【0056】
バリア層が下部電極と厚い誘電体層との間にある場合、このバリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択され得る。
より好ましくは、この他のバリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含むか、あるいは、この他のバリア層は、最大で約50nm(より好ましくは、約20nm〜約50nm)の厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含まれる。
【0057】
バリア層は、2つ以上のバリア層も含むこともできる。
例えば、いくつかのバリア層を相互に積み重ねることができ、各バリア層は、特定の化学種に対する選択性を備えている。
【0058】
基板に関しては、当業者に理解されているような様々な基板が使用され得る。
本発明のバリア層と共に使用する典型的な基板は、IA族(アルカリ金属)、IIA族(アルカリ土類金属)、シリコン、及びアルミニウムからなる群から選択される元素を含んでいるガラス基板である。
他の基板の例には、アルミナ、金属セラミック複合物、ガラス材料、ガラスセラミック材料などのセラミックやその他の耐熱材料などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
下部電極は、当業者に周知の任意の適切な導電被膜とされ得る。
好ましくは、下部電極は、金または銀合金を含んでいる。
【0060】
厚い誘電体層は、ディスプレイ輝度を得るのに必要とされる電圧でディスプレイを動作させるときに、絶縁破壊に対する高い耐力を有するように設計される。
典型的には、この厚い誘電体被膜層は、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)またはマグネシウムニオブ酸チタン酸鉛(PMN-PT)などの焼結した圧電性または強誘電性のペロブスカイト材料を含み、比誘電率は約50よりも大きく、典型的には数千であり、厚さは、絶縁破壊を防ぐために約10μmよりも厚く形成されている。
【0061】
好ましくは、低コストのガラス材料基板では、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの厚膜誘電体層を形成するのに使用する厚膜ペーストの組成は、2001年12月21日出願の本出願人の同時係属米国特許出願第60/341,790号明細書(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載のものである。
この厚膜ペーストは、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛(PMN-PT)、チタン酸鉛、及びチタン酸バリウム、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される一種または複数種のペロブスカイト形成用前駆体の粉体を含み、任意選択で、後続の焼結ステップまたは熱処理のステップ中にこの粉体から蒸発する酸化鉛を補償する酸化鉛を含んでいる。
この厚膜ペーストは、酸化鉛、酸化ホウ素、及び酸化シリコンを含む融点が約550℃未満のガラスフリット組成物も含み得る。
厚膜誘電体層を求められる厚さ及び均一性で蒸着させるために、スクリーン印刷、吹付け、及びロールコーティングからなる群から選択される蒸着方法が用いられる。
この蒸着方法の実施中に、溶剤を含む担体、焼結前に、蒸着させた厚膜誘電体層を全体として保持するポリマー結合剤、ならびに任意選択で、粘性及び表面張力を改変する作用物質が使用される。
【0062】
厚膜ペーストの構成前駆体材料はそれぞれ、異なる割合で使用され得る。
主相は、PMNまたはPMT-PTとすることができ、前駆体材料の総重量の約85〜約95重量パーセントの範囲で存在させることができる。
好ましくは、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作するのに使用する厚膜ペーストの組成は、ノミナルの化学式がPb(Mg0.33Nb.6671−xTiの焼結材料が得られるように、PMN及びチタン酸鉛の粉体を含む。
ただし、0<x<0.15、より好ましくは、0<x<0.10である。
ノミナルの化学式が(Pb(Mg0.33Nb.6671−xTi1−y(BaTiOの焼結材料が得られるように、チタン酸バリウムも十分な濃度で添加することができる。
ただし、0<x<0.15及び0<y<0.10、より好ましくは、0.01<x<0.10及び0.01<y<0.1である。
【0063】
好ましくは、平滑層は、2001年12月21日出願の本出願人の同時係属米国特許出願第60/341,790号明細書(引用により、その内容が本明細書に組み込まれる。)に記載のゾルゲル技術または有機金属蒸着(metal organic deposition:MOD)技術を利用して、厚膜誘電体層上に蒸着されたいくつかの薄い層を含む。
このゾルゲルまたはMODによる薄い層は、特許文献2(引用により、その内容が本明細書に組み込まれる。)に記載のジルコン酸チタン酸鉛(PZT)平滑層及び/または特許文献4(引用により、その内容が本明細書に組み込まれる。)に記載のチタン酸バリウム層が得られるように調製され得る。
簡単に言うと、この平滑層は、PZTを含む前駆体平滑化溶液として提供される。
適切な温度で焼結した後で、この平滑化溶液は、厚い層の組成物と反応して、細孔及び/または空隙を充填する助けとなり、中間ゾーン及びPZT上部層を形成する。
MOD層を蒸着させるのに使用するMOD溶液の挙動は、先行技術に記載のアルミナ基板に対する挙動に比べて、ガラス材料基板ではかなり異なっている。
このような差異は一つには、異なる基板材料には異なる厚膜誘電体加熱温度が用いられることによるものである。
最適なMOD溶液粘度は、基板材料によって異なっている。
【0064】
蛍光層は、任意の適切な赤、緑、及び青の蛍光体材料を含み得る。
これらの蛍光体材料は、青色の発光用のユーロピウムにより活性化したバリウム・チオアルミ酸塩(barium thioaluminate)ベースの材料、緑色の発光用のテルビウムにより活性化した硫化亜鉛、マンガンにより活性化した硫化マグネシウム亜鉛、またはユーロピウムにより活性化したカルシウム・チオアルミ酸塩(calcium thioaluminate)ベースの材料、ならびに、赤色の発光用に適切にフィルタリングし得る従来型のマンガンにより活性化した硫化亜鉛を含み得る。
【0065】
本明細書で使用する薄い誘電体層及び上部誘電体層は、チタン酸バリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、酸窒化シリコン、タンタル酸バリウム、酸化タンタルなどを含み得る。
【0066】
本発明で使用する適切な基板、下部電極、厚い誘電体層、及び蛍光層の別の例は、本出願人の特許文献1、及び2001年12月21日出願の本出願人の同時係属米国特許出願第60/341,790号(これらは、引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0067】
上部電極は、透明な導電層であり、典型的には、酸化インジウムスズ(ITO)またはドープした酸化亜鉛などの酸化物である。
【0068】
まとめると、本発明は、基板及び/または厚膜誘電体層からディスプレイの残りに部分への、あるいは、ディスプレイの残りの部分から厚膜誘電体層または基板への化学種の拡散を最小化する助けとなるバリア層を提供している。
更に、このバリア層は、基板上に設けられた行電極の電気抵抗の増加を最小限に抑える。
この電気抵抗の増加は、特にこれらの行電極が金の場合に発生するが、このような電気抵抗の増加は望ましくない。
これは、厚い誘電体層及びエレクトロルミネッセンスディスプレイの他の層が加熱されるときに生じ得る作用である。
最後に、本発明のバリア層は、焼結した厚膜誘電体層上に形成されたPZT平滑層のクラックを最小限に抑え、且つ/または防止する助けとなる。
【0069】
上記開示は全体的に、本発明の好ましい実施形態を説明しているものである。
以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができよう。
これらの実施例は、単なる例として説明するものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
状況に応じて、あるいは状況により適切な場合には、形態の変更及び均等物の置換が企図されている。
本明細書では特定の用語を用いてきたが、このような用語は、説明的な意味を意図しており、限定するためのものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
概ね図1に示すタイプの厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを作製した。
【0071】
この厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイは、米国オレゴン州Hillsboro所在のAsahi Glass社から入手した5cm×5cm×厚さ1.8mmのPD200ガラス基板上で構築した。
このガラス基板上に、厚さ2000Åのアルミナ(Al2O3)バリア層を蒸着させた。
このアルミナは、酸素/アルゴンの混合気中で高周波マグネトロンスパッタリングを利用して、圧力6ミリトール(0.8Pa)で蒸着させた。
酸素とアルゴンの比は、スパッタチャンバ内に、アルゴンを50sccmの割合で、酸素を2sccmの割合で導入することによって設定し、ポンプ速度は、上記圧力が維持されるように設定した。
スパッタリングターゲットに供給した電力は2kW(すなわち、1平方センチメートル当たり4.4ワット)であった。
【0072】
この被覆した基板上に、日本国東京所在の田中貴金属インターナショナル社のTR1207金含有ペーストを印刷し加熱することによって、厚さ0.8μmの金電極被膜を形成した。
次に、この金の下部電極上に、複合厚膜誘電体層を製作した。
これには、引用により、本明細書に組み込まれる2001年12月21日出願の本出願人の同時係属米国特許出願60/341,790号に記載の汎用の方法を用いたが、以下で説明するように、プロセスに特定の改変を加えた。
この厚い誘電体層上に、特許文献4に記載されているように、チタン酸バリウム層を蒸着させ、2002年8月29日出願の米国特許出願第60/406,661号明細書(引用により、その内容が本明細書に組み込まれる。)の方法に従って、厚さ0.7μmのテルビウムにより活性化した硫化亜鉛蛍光層を蒸着させた。
この蛍光層上に、2002年9月12日出願の米国特許出願第60/409,991号明細書の方法を用いて、厚さ500ÅのSi(窒化シリコン)層を蒸着させた。
ディスプレイを完成させるために、この窒化シリコン層上に酸化インジウムスズを含む上部電極を蒸着させ、周囲環境から保護するためにディスプレイを密封した。
【0073】
アルミナを被覆した基板上に複合厚膜誘電体層を形成するには、以下のプロセスを用いた。
PMN粉体の混合物を使用して、この構造用の厚膜ペーストを準備した。
このPMN粉体は、一方が、0.45μmについてはd50、0.63μmについてはd90の粒子サイズ分布であり、他方は、0.36μmについてはd50、0.63μmについてはd90の粒子サイズ分布であった。
各粉体は、遊星ボールミル内でそれぞれ2時間及び16時間粉砕することによって準備した。
次いで、これらの粉体を重量比1.14:1で混合し、これらを使用して厚膜ペーストを調製した。
厚さ約5μmの第1厚膜誘電体層を基板上に印刷し、圧縮により密度を高め、約700℃〜約720℃の範囲で約18分間加熱した。
【0074】
複合厚膜誘電体層を形成する第2ステップとして、厚さ約0.5μmの第1のPZT層を蒸着させ、約700℃で約7分間加熱した。
この蒸着は、引用により本明細書に組み込まれる特許文献3に記載のMODプロセスを用いて行った。
このMOD溶液は、粘度が約9〜約15センチポアズの範囲に入るように調整された。
【0075】
複合厚膜誘電体層を形成する第3ステップとして、やはり厚さ約5μmの第2のPMN厚膜誘電体層を蒸着させ、密度を高め、加熱した。
第4ステップとして、第2ステップの場合と同じプロセスを用いて、厚さ約1.6μmの第2のPZT層を形成した。
第5ステップとして、厚さ約0.5μmの第3のPZT層を蒸着させることによって複合誘電体層を完成させた。
これには、この最上部のPZT層の厚さを約1μmに増加させるのに利用したのと同じプロセスを利用した。
これらの繰返し加熱中に、PMN層とPZT層を相互に混合し拡散させた。
完成したディスプレイを顕微鏡下で検査して、クラックが生じていないことを観察した。
【0076】
このディスプレイについて測定された閾値電圧154ボルトよりも60ボルト高い電圧振幅の、極性が交番する30ナノ秒のパルスを使用して、完成した厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを試験した。
輝度は、約2700カンデラ/mであり、均一性の程度は高かった。
【0077】
(実施例2)
ガラス基板上にアルミナバリア層を蒸着させない点を除き、実施例1に類似の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
実施例1で規定した試験手順を用いて、完成したディスプレイを試験した。
輝度は、約2200カンデラ/mであり、これは、実施例1の輝度よりも低い。
輝度がこのように低いのは、ガラス基板から複合厚膜誘電体層に化学種が拡散したために、複合厚膜誘電体層の実効比誘電率が低くなったためであると考えられる。
【0078】
(実施例3)
16.9cm×21.3cmのガラス基板上に製作した点を除き、実施例1に類似の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
フォトリソグラフィ加工を利用して下部電極をパターン化して、45μmのスペースで分離した幅495μm、厚さ0.8μmのアドレス指定ラインストリップにし、上部電極をパターン化して、5mmのスペースで分離した幅5mmのストリップにした。
下部電極ラインストリップを並列に接続し、それを上部電極ストリップの一つに接続し、次いで、実施例1の試験方法を用いることによって、このディスプレイを試験した。
輝度は、約2550カンデラ/mであった。
【0079】
(実施例4)
ガラス基板上にアルミナバリア層を蒸着させない点を除き、実施例3に類似の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
実施例1で規定した試験手順を用いて、完成したディスプレイを試験した。
輝度は、約1850カンデラ/mであった。
(パターン化した下部電極及びアルミナバリア層を備えている)実施例3のディスプレイの輝度に比べて、それに対応する(パターン化した下部電極を備えているが、アルミナバリア層がない)このディスプレイについての輝度の減少は、(パターン化しない下部電極及びアルミナバリア層を備えている)実施例1のディスプレイの輝度に比べて、それに対応する(パターン化しない下部電極を備えているが、アルミナバリア層がない)実施例2のディスプレイについての輝度の減少よりもかなり大きかった。
理論上は、これは、ガラス基板から複合厚膜誘電体層に化学種がより急速に拡散したためと考えられる。
というのは、このガラス基板は、アルミナバリア層が存在しないときには、下部電極間の複合厚膜誘電体層に直接接触しているからである。
これらの下部電極の金は、ガラス基板からの化学種の拡散を減少させるなんらかの作用を及ぼすように見えるが、望まれるレベルには拡散を減少させない。
【0080】
(実施例5)
日本国東京所在の田中貴金属インターナショナル社が供給するTR145C金含有ペーストを基板上にスクリーン印刷し加熱することによって下部電極(金電極)を直接パターン化する点を除き、実施例3及び実施例4に類似の2つの厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
これらのディスプレイでは、金電極の厚さは、アドレス指定ラインストリップの中心で約0.9μmであったが、これらのストリップの縁部に向かって薄くなっていた。
ストリップの縁部で金がより薄くなったことにより、ガラス基板からの化学種の拡散があまり良好に遮断されず、その結果、明るさが不均一になり、ストリップの両端の閾値電圧が不均一になった。
アルミナバリア層がないディスプレイの閾値電圧がこのように不均一になったことにより、このディスプレイについては明るさも低くなった。
この実施例の金電極では、実施例3及び実施例4の金電極に比べて、ガラス基板からの化学種の拡散があまり良好には遮断されず、その結果、(実施例3の2550カンデラ/mと比べた)アルミナバリア層を備えているディスプレイについての1400カンデラ/mの輝度と、(実施例4の1850カンデラ/mと比べた)アルミナ拡散バリア層がないディスプレイについての700カンデラ/mの輝度との間には著しい差異があった。
【0081】
以下の実施例では、異なるプロセス温度におけるガラスと厚い誘電体層との間の異なるバリア層の効果が直接的に示されている。
【0082】
(実施例6)
チタン酸バリウム層、蛍光層、窒化シリコン層、及び上部電極を割愛した点を除き、それぞれ実施例1及び実施例2の場合と同様に、一方はアルミナバリア層を備え、他方はアルミナバリア層がない2つの厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを作製した。
2次イオン質量分光(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)分析法を利用して、これらのディスプレイを元素プロファイリングにかけた。
各ディスプレイについて図3a及び図3bに、複合厚膜誘電体層の上部表面からの距離の関数として、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、及びカリウムの濃度を示す。
複合厚膜誘電体層と基板との間の境界を定義するために、基準としてニオブの濃度も示す。
これらのデータからわかるように、アルミナバリア層を備えたディスプレイでは、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、及びシリコンの濃度は、ガラス基板内では高いが、複合厚膜誘電体層内で急激に低くなることが示されている。
これに対して、アルミナバリア層がないディスプレイでは、これらの元素の濃度は、複合厚膜誘電体層の厚さ全体を通じてかなり高くなっている。
このデータは、ガラスから複合厚膜誘電体層中に化学種が拡散するのを妨げるのにバリア層が有効であることを示している。
更に、アルミナバリア層を備えたディスプレイは、目に見えるクラックや層間剥離がなく、良好な機械的完全性を示した。
【0083】
(実施例7)
アルミナバリア層の代わりに、厚さ2000Åの窒化アルミニウムバリア層を使用した点を除き、実施例6に類似の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
SIMS分析法を利用してこのディスプレイを元素プロファイリングにかけ、複合厚膜誘電体層の上部表面からの距離の関数として、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、及びカリウムの濃度を測定した。
これらのデータを、バリア層がない実施例6のディスプレイについてのデータと比較したものを図4a及び図4bに示す。
これらのデータからわかるように、窒化アルミニウムバリア層は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、及びシリコンが複合厚膜誘電体層中に移動するのを妨げるのに同様に有効であった。
ただし、この窒化アルミニウムバリア層にはいくらかクラックが見られ、このディスプレイ中の様々な層の熱膨張係数が十分に良好には整合していなかったことが示唆された。
窒化アルミニウムは、これらと異なる熱膨張係数を有するガラス及び複合厚膜誘電体層に対してより適切な場合がある。
【0084】
(実施例8)
アルミナバリア層の代わりに、厚さ2000Åのフッ化アルミニウムバリア層を使用した点を除き、実施例6に類似の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製作した。
SIMS分析法を利用してこのディスプレイを元素プロファイリングにかけ、複合厚膜誘電体層の上部表面からの距離の関数として、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、及びカリウムの濃度を測定した。
これらのデータを、バリア層がない実施例6のディスプレイについてのデータと比較したものを図5a及び図5bに示す。
これらのデータからわかるように、フッ化アルミニウムバリア層も、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、及びシリコンが複合厚膜誘電体層中に移動するのを妨げるのに有効であった。
ただし、このフッ化アルミニウム層は、ガラス基板から部分的に剥離しており、フッ化アルミニウムとガラスとの結合が弱かったか、あるいは、フッ化アルミニウムの熱膨張係数が、ガラスの熱膨張係数と良好に整合しなかったことが示唆された。
したがって、フッ化アルミニウムも、これらと異なる熱膨張係数を有するガラス及び複合厚膜誘電体層に対してより適切な場合がある。
応用例の要件に応じて、ガラス及び複合厚膜誘電体層の熱膨張係数を改変し得ることが当業者には理解されよう。
【0085】
(実施例9)
この実施例では、ガラス基板から複合厚膜誘電体層への化学種の拡散が温度に依存する度合いを示す。
複合厚膜誘電体層の第1厚膜誘電体層だけを蒸着させ加熱した点を除き、アルミナバリア層がない実施例6のディスプレイに類似の3つのディスプレイを製作した。
第1のディスプレイは、第1厚膜誘電体層を蒸着させた後で加熱せず、第2のディスプレイは、第1厚膜誘電体層を蒸着させた後に約580℃で加熱し、第3のディスプレイは、第1厚膜誘電体層を蒸着させた後に約700℃で加熱した。
各ディスプレイを、SIMS分析法によるナトリウム、カリウム、アルミニウム、及びシリコンのプロファイリングにかけ、図6a及び図6bでそれぞれを比較した。
これらのデータからわかるように、加熱しなかったディスプレイについては、ガラス基板からの化学種の拡散は認められず、580℃で加熱したディスプレイについてはいくらかの拡散があり、700℃で加熱したディスプレイについてはより多くの拡散があった。
【0086】
本明細書で本発明の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態に変更を加えることができることが当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの断面図であり、バリア層の位置を示す。
【図2】本発明の第2実施形態の厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの断面図であり、バリア層の位置を示す。
【図3a】化学種(Nb、Si、K)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明のアルミナバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図3b】化学種(Nb、Na、Al)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明のアルミナバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図4a】化学種(Nb、Si、K)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明の窒化アルミニウムバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図4b】化学種(Nb、Na、Al)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明の窒化アルミニウムバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図5a】化学種(Nb、Si、K)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明のフッ化アルミニウムバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図5b】化学種(Nb、Na、Al)の濃度と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の複合厚膜誘電体構造の深さとの関係を、本発明のフッ化アルミニウムバリア層がある場合と、ない場合について示すグラフである。
【図6a】化学種(Nb、Si、K)の濃度と、本発明のバリア層を備えず、異なる温度で加熱した厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の第1厚膜誘電体層の深さとの関係を示すグラフである。
【図6b】化学種(Nb、Na、Al)の濃度と、本発明のバリア層を備えず、異なる温度で加熱した厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ用の第1厚膜誘電体層の深さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
10 副構造体
20 厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ
22 基板
24 バリア層
26 下部電極
28 厚膜誘電体層
30 平滑層
32 複合厚膜誘電体層
34 薄膜誘電体層
36 蛍光層
37 上部誘電体層
38 上部電極
40 観察面
42 バリア層
100 副構造体
120 厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体であって、
基板と、
バリア層と、
下部電極と、
厚膜誘電体層とを順に備え、
前記バリア層は、前記基板及び前記下部電極に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制していることを特徴とする副構造体。
【請求項2】
前記バリア層は、前記基板及び前記下部電極層の双方に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項3】
前記バリア層は、前記基板及び前記下部電極層の双方に粘着により結合されていることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項4】
前記バリア層の物理的特性により、前記副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、前記バリア層、ならびに前記副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されていることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項5】
前記バリア層の熱膨張係数は、内部応力を最小限に抑えるために、前記他の層の熱膨張係数に一致していることを特徴とする請求項4に記載の副構造体。
【請求項6】
前記バリア層の熱膨張係数は、約4×10−6/℃〜約10×10−6/℃であることを特徴とする請求項4に記載の副構造体。
【請求項7】
前記バリア層は、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項8】
前記バリア層の厚さは、少なくとも約50nmであることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項9】
前記バリア層の厚さは、少なくとも約100nmであることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項10】
前記厚膜誘電体層の比誘電率は、約50よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項11】
前記厚膜誘電体層の比誘電率は、少なくとも約1000であることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項12】
前記厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層であることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項13】
厚膜誘電体層に隣接する後続の平滑層を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項14】
前記少なくとも一種の化学種は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項15】
前記基板は、IA族(アルカリ金属)、IIA族(アルカリ土類金属)、シリコン、及びアルミニウムからなる群から選択される元素を含んでいるガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項16】
前記基板は、セラミック、金属セラミック複合物、ガラス材料、及びガラスセラミック材料からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項17】
前記基板は、シリカ、アルミナ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の化学種を含んでいるガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項18】
他のバリア層が、前記下部電極と前記厚膜誘電体層との間に介在し、前記他のバリア層は、前記下部電極及び前記厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制していることを特徴とする請求項1に記載の副構造体。
【請求項19】
前記他のバリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の副構造体。
【請求項20】
前記他のバリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含んでいることを特徴とする請求項18に記載の副構造体。
【請求項21】
前記他のバリア層は、最大で約50nmの厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいることを特徴とする請求項18に記載の副構造体。
【請求項22】
前記他のバリア層の厚さは、約20nm〜約50nmであることを特徴とする請求項21に記載の副構造体。
【請求項23】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体であって、
基板と、
下部電極と、
バリア層と、
厚膜誘電体層とを順に備え、
前記バリア層は、前記下部電極及び前記厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制していることを特徴とする副構造体。
【請求項24】
前記バリア層は、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択されることを特徴とする請求項23に記載の副構造体。
【請求項25】
前記バリア層は、結晶質チタン酸バリウムを含んでいることを特徴とする請求項23に記載の副構造体。
【請求項26】
前記バリア層は、最大で約50nmの厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択される材料を含んでいることを特徴とする請求項23に記載の副構造体。
【請求項27】
前記バリア層の厚さは、約20nm〜約50nmであることを特徴とする請求項26に記載の副構造体。
【請求項28】
前記厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層であることを特徴とする請求項23から27のいずれか一項に記載の副構造体。
【請求項29】
請求項1または23に記載の副構造体を備えていることを特徴とする厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項30】
請求項12または28に記載の副構造体を備えていることを特徴とする厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項31】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイで使用する副構造体を作製する方法であって、
i)基板上にバリア層を蒸着させるステップと、
ii)前記バリア層上に下部電極を蒸着させるステップと、
iii)前記下部電極上に厚膜誘電体層を蒸着させるステップとを含み、
前記バリア層が、前記基板及び前記下部電極に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制するステップを備えていることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記バリア層の物理的特性により、前記副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、前記バリア層、ならびに前記副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されるステップを備えていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記厚膜誘電体層を、複合厚膜誘電体層とするステップを備えていることを特徴とする請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイで使用する副構造体を作製する方法であって、
i)基板上に下部電極を蒸着させるステップと、
ii)前記下部電極上にバリア層を蒸着させるステップと、
iii)前記下部電極上に厚膜誘電体層を蒸着させるステップとを含み、
前記バリア層が、前記下部電極及び前記厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制するステップを備えていることを特徴とする方法。
【請求項35】
前記バリア層の物理的特性により、前記副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、前記バリア層、ならびに前記副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されるステップを備えていることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記厚膜誘電体層を、複合厚膜誘電体層とするステップを備えていることを特徴とする請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記バリア層を、比誘電率が約50よりも大きい材料の層、及び比誘電率がより小さく、厚さが最大で約50nmの材料の層からなる群から選択するするステップを備えていることを特徴とする請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記バリア層に、結晶質チタン酸バリウムを含むステップを備えていることを特徴とする請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記バリア層を、最大で約50nmの厚さを有し、アルミナ、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウム、及びチタン酸バリウムからなる群から選択する材料を含むステップを備えていることを特徴とする請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記バリア層の厚さを、約20nm〜約50nmとするステップを備えていることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体であって、基板と厚膜誘電体層との間にバリア層を備え、
前記バリア層は、前記基板及び前記厚膜誘電体層に関して化学的に不活性であり、少なくとも一種の化学種が前記バリア層を通って拡散することを抑制していることを特徴とする副構造体。
【請求項42】
前記バリア層の物理的特性により、前記副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、前記バリア層、ならびに前記副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されていることを特徴とする請求項41に記載の副構造体。
【請求項43】
前記厚膜誘電体層は、複合厚膜誘電体層であることを特徴とする請求項41または42に記載の副構造体。
【請求項44】
厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの副構造体であって、
基板と、
少なくとも一種の化学種の拡散を抑制しているバリア層と、
下部電極と、
複合厚膜誘電体層とを順に備え、
前記バリア層は、前記基板及び前記下部電極に関して化学的に不活性であり、前記バリア層の物理的特性により、前記副構造体の製作中に内部応力が最小限に抑えられ、前記バリア層、ならびに前記副構造体及びディスプレイの他の層に実質的にクラックが生じないまま維持されていることを特徴とする副構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate


【公表番号】特表2006−511045(P2006−511045A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560941(P2004−560941)
【出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001850
【国際公開番号】WO2004/057919
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(505089913)アイファイアー・テクノロジー・コープ (18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】