説明

原子力発電プラントおよびその運転制御方法

【課題】圧力損失が少ない蒸気加減弁を活用し、エネルギ損失を少なくして、原子炉圧力容器からの蒸気の圧力が定格圧力より高低変動しても、容易に調整でき、原子炉出力一定維持を満たす原子力発電プラントおよび運転制御方法を提供する。
【解決手段】原子炉圧力容器20と蒸気タービンを接続する主蒸気管25に、圧力ヘッダ27、主蒸気止め弁29および蒸気加減弁30を介装させ、原子炉圧力容器からの蒸気の流量を蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器24で凝縮させて原子炉圧力容器に戻し、原子炉圧力容器からの蒸気を復水器に逃がすタービンバイパス管32で圧力ヘッダと復水器とを接続する構成の原子力発電プラントにおいて、圧力ヘッダの下流側と蒸気加減弁の上流側の間の主蒸気管に入力側が接続され、原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を調整する蒸気圧力調整装置34を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器から蒸気タービンに供給される蒸気の圧力を一定に調整し、原子炉出力を一定に維持させるに好適な原子炉発電プラントおよびその運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力発電プラントでは、原子炉圧力容器の炉心内圧力が低下すると、炉水中ボイドの割合が増加して中性子を吸収するため、核分裂が抑制される。これに伴う原子炉出力の低下がないように調整するため、原子炉圧力容器からの蒸気を蒸気タービンに供給する際、蒸気圧力調整が行われており、その構成として図9に示すものがある。
【0003】
原子力発電プラントは、原子炉圧力容器1、高圧タービン2、組み合せ中間弁3、低圧タービン4、復水器5を備え、原子炉圧力容器1から発生した蒸気を高圧タービン2で膨張仕事して動力を発生させ、膨張仕事を終えた高圧タービン排気を組み合せ中間弁3を介して低圧タービン4に供給し、ここでも膨張仕事をして動力を発生させ、低圧タービン4で膨張仕事を終えた低圧タービン排気を復水器5で凝縮させ、復水・給水として原子炉圧力容器1に再び戻している。
【0004】
また、原子力発電プラントは、原子炉圧力容器1と高圧タービン2とを、例えば、4本の主蒸気管6および主蒸気リード管7で接続させている。
【0005】
主蒸気管6および主蒸気リード管7には、管本数共用の圧力ヘッダ8のほかに、管本数に対応させて圧力計9、主蒸気止め弁10、蒸気加減弁11を備え、原子炉圧力容器1から供給された蒸気を一旦圧力ヘッダ8に集めた後、蒸気加減弁11で流量調整し、高圧タービン2に供給している。
【0006】
また、圧力ヘッダ8は、途中にタービンバイパス弁12を介装させて復水器5に接続するタービンバイパス管14を備え、負荷遮断等緊急事象が発生したとき、主蒸気止め弁10または蒸気加減弁11を閉弁させ、原子炉圧力容器1から発生した蒸気を、直接、復水器13に流し、事故復帰までの間、原子炉圧力容器1を停止させずに待機運転を行わせている。
【0007】
このような構成を備える原子力発電プラントにおいて、原子炉圧力容器1から発生した蒸気を高圧タービン2に供給する際の蒸気圧力一定制御は、蒸気加減弁11が行っていた。
【0008】
すなわち、蒸気加減弁11には、圧力計9から検出した実蒸気圧力信号のほかに、設定蒸気圧力信号、タービン速度信号、タービン負荷信号等を演算する演算回路(図示せず)が設けられており、これら各信号を演算回路で演算させて弁開閉信号を作り出し、作り出された演算信号に基づいて弁体を開閉させ、蒸気圧力一定に調整し、調整した蒸気圧力一定に基づいて原子炉出力を一定に維持させていた。
【0009】
なお、蒸気圧力一定に調整する発明には、例えば、特開平5−312995号公報(特許文献1)や特開昭61−218996号公報(特許文献2)等数多くの発明が開示されている。
【特許文献1】特開平5−312995号公報
【特許文献2】特開昭61−218996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述特許文献1や特許文献2は、検出した蒸気圧力信号等を基にして演算し、弁開閉信号を作り出し、作り出した弁開閉信号を蒸気加減弁11に与え、原子炉圧力容器1からの蒸気圧力を一定に調整し、調整した蒸気圧力一定の基に原子炉一定出力を維持させているが、演算回路が比較的簡素であり、操作も容易であることから今日でもより多く使用されている。
【0011】
しかし、それでも幾つかの問題も抱えており、その一つに弁開閉の際に発生する圧力損失がある。
【0012】
従来、蒸気加減弁11は、運転中、系統周波数が変動し、これに伴って蒸気圧力が変動した場合、直ぐさま弁体、例えば4個の弁体を開閉させている。その際、4弁体を同時に開閉させる絞り運転(フル・アーク・アドミッション)を行う関係上、発生する圧力損失が大きくなっている。
【0013】
圧力損失が大きくなると、電気出力(発電端出力)を発生させるに必要なエネルギ消費も大きくなり、例えば、100万kWクラスの発電所で蒸気加減弁の損失を1kg/cm低下させるだけで、年間数千万円の電気料金に見合うだけの余分のエネルギが消費される。
【0014】
このため、タービン産業分野では、競争力強化の下、タービン性能向上の一環として、例えば、特開2002−97903号公報に見られるように、蒸気通路を簡素化させる構造上の改良が行われ、圧力損失をより一層少なくさせ、電気出力をより一層増加させる技術が提案され、最近の蒸気加減弁の圧力損失は少なくなっている。
【0015】
しかし、その反面、蒸気加減弁11は、圧力損失を少なくするあまり、制御特性上、大きな圧力変動があってもそれを調整できるだけの余裕がない設計になっている。このため、蒸気加減弁11の入口側で設計上許される範囲を超えて大きな蒸気圧力変動があった場合、蒸気圧力を一定に調整することができず、蒸気圧力一定の下、原子炉出力を一定に維持させる設計思想に大きなダメージを与える一抹の不安が残されていた。
【0016】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、圧力損失を少なくさせた蒸気加減弁を有効に活用し、エネルギ損失を少なくさせて電気出力を増加させる一方、原子炉圧力容器からの蒸気の圧力が予め定められた圧力(定格圧力)よりも高低変動していても予め定められた圧力(定格圧力)に容易に調整でき、原子炉出力一定維持を充分に満たす原子力発電プラントおよびその運転制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、圧力ヘッダ、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻し、前記原子炉圧力容器からの蒸気を復水器に逃がすタービンバイパス管で前記圧力ヘッダと前記復水器とを接続する構成の原子力発電プラントにおいて、前記圧力ヘッダの下流側と前記蒸気加減弁の上流側の間の前記主蒸気管に入力側が接続され、前記原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を調整する蒸気圧力調整装置を備えたものである。
【0018】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、前記蒸気圧力調整装置の出力側を蒸気タービンの低圧タービンの入口側に接続させる構成にしたものである。
【0019】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、前記蒸気圧力調整装置は、リリーフ弁と蒸気リリーフ管とで構成したものである。
【0020】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、前記蒸気リリーフ管は、減圧装置を備えたものである。
【0021】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻す構成の原子力発電プラントにおいて、前記蒸気加減弁の上流側の間の前記主蒸気管と復水器との間に前記原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を調整する蒸気圧力調整装置を備え、前記蒸気圧力調整装置には減圧装置を備えたものである。
【0022】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、前記蒸気圧力調整装置は、リリーフ弁と蒸気リリーフ管とで構成したものである。
【0023】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、前記蒸気圧力調整装置は、主蒸気管の管本数分設けたものである。
【0024】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、圧力ヘッダ、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻し、前記原子炉圧力容器からの蒸気を復水器に逃がすタービンバイパス管で前記圧力ヘッダと前記復水器とを接続する構成の原子力発電プラントにおいて、前記主蒸気管の管本数分主蒸気止め弁を備えるとともに、前記主蒸気管の管本数より少ない蒸気加減弁を備えたものである。
【0025】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁に弁絞り開度を与えるとともに、前記蒸気タービンのうち、高圧タービンと低圧タービンとの中間に設けた組み合せ中間弁に弁絞り開度を与え、前記蒸気の圧力を調整するものである。
【0026】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁の上流側の前記主蒸気管に設けた蒸気圧力調整装置のリリーフ弁に開弁指令を与えるものである。
【0027】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管の管本数に対応させて主蒸気止め弁を備えるとともに、前記管本数のうち、少なくとも1本以上に蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、前記主蒸気止め弁のうち、第1の主蒸気止め弁を開弁させた後、前記蒸気加減弁を開弁させ、さらに第2の主蒸気止め弁を開弁させた後、前記蒸気加減弁を閉弁させ、さらに残りの主蒸気止め弁を開弁させる間に前記蒸気加減弁の開弁、閉弁を繰り返し、最後に前記蒸気加減弁を開弁させるものである。
【0028】
また、本発明に係る原子力発電プラントは、上述の目的を達成するために、原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管の管本数に対応させて主蒸気止め弁を備えるとともに、前記管本数より少ない蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁に弁絞り開度を与えるか、あるいは下流側に前記蒸気加減弁をもつ主蒸気止め弁の一つを開弁させたまま、前記蒸気加減弁を閉弁させるとともに、前記主蒸気止め弁の残りを順次閉弁させるかを選択するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る原子力発電プラントおよびその運転制御方法は、原子炉圧力容器から主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介して蒸気タービンに蒸気を供給する際、変動した蒸気圧力を制御するので、予め定められた蒸気圧力(定格圧力)に容易に制御でき、原子炉出力を一定に維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る原子力発電プラントおよびその運転制御方法の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る原子力発電プラントの第1実施形態を示す概略系統図である。
【0032】
本実施形態に係る原子力発電プラントは、主要構成要素として原子炉圧力容器20、高圧タービン21、組み合せ中間弁22、低圧タービン23、復水器24を備え、原子炉圧力容器20からの蒸気を高圧タービン21で膨張仕事をして動力を発生させ、膨張後の高圧タービン排気を組み合せ中間弁22を介して低圧タービン23に供給し、ここでも膨張仕事をして動力を発生させ、膨張後の低圧タービン排気を復水器24で凝縮させ、復水、給水として復水給水管33を介して原子炉圧力容器20に再び戻す閉サイクルになっている。
【0033】
また、本実施形態に係る原子力発電プラントは、原子炉圧力容器20と高圧タービン21とを、例えば、4本の主蒸気管25および主蒸気リード管26で接続させている。
【0034】
主蒸気管25および主蒸気リード管26には、原子炉圧力容器20側から、管本数共用の圧力ヘッダ27、管本数に対応させて圧力計28、主蒸気止め弁29、蒸気加減弁30を備え、原子炉圧力容器20から供給された蒸気を一旦圧力ヘッダ27に集めた後、蒸気加減弁30で流量調整し、高圧タービン21に供給している。
【0035】
また、圧力ヘッダ27は、途中にタービンバイパス弁31を介装させて復水器24に接続するタービンバイパス管32を備え、負荷遮断等緊急事象が発生したとき、主蒸気止め弁29を閉弁させ、原子炉圧力容器20から発生した蒸気をタービンバイパス管32を介して復水器24に逃している。
【0036】
また、圧力ヘッダ27の出口側と復水器24の間に、原子炉圧力容器20から発生した蒸気の圧力調整を行う蒸気圧力調整装置34を設けている。
【0037】
この蒸気圧力調整装置34は、原子炉圧力容器20から発生した蒸気の圧力が予め定められた圧力(定格圧力)よりも高低変動しているとき、予め定められた圧力に調整するので、途中にリリーフ弁35およびオリフィス36を介装させて復水器24に接続する蒸気リリーフ管37で構成される。
【0038】
なお、蒸気リリーフ管37がオリフィス36を備えたのは、オリフィス36で高い蒸気圧を減圧させ、復水器24に供給するときの衝撃力を緩和させるためである。
【0039】
原子炉圧力容器20から発生した蒸気の圧力が予め定められた圧力よりも高低変動しているとき、蒸気の圧力調整は、蒸気加減弁30および蒸気圧力調整装置34によって行われる。
【0040】
まず、蒸気加減弁30の入口側で、原子炉圧力容器20から発生した蒸気の圧力が予め定められた圧力よりも低くなっていることを圧力計28が検出したとき、蒸気加減弁30は、例えば、4個の弁体を同時に弁絞り開度にし、原子炉圧力容器20からの蒸気の圧力を増加させる。
【0041】
一方、例えば、送電線系統に事故が発生し、負荷遮断が発生した場合、高,低圧タービン21,23および発電機(図示せず)は定格回転数を超えてオーバスピードになる。この場合、蒸気加減弁30は、オーバスピードを抑制するために弁体の開度を絞って蒸気量を減少させる方向に制御させる。このとき、原子炉圧力容器20からの蒸気の圧力が上昇しようとするが、蒸気圧力調整装置34は、リリーフ弁35を開弁させ、リリーフ弁35から流れる蒸気をオリフィス36および蒸気リリーフ管37を経て復水器24に供給し、高,低圧タービン21,23に供給する蒸気量を減少させ、高,低圧タービン21,23および発電機の回転数を定格回転数に整定させる。
【0042】
このように、本実施形態は、原子炉圧力容器20と高圧タービン21とを接続させる主蒸気管25における圧力ヘッダ27の出口側に蒸気圧力調整装置34を設け、原子炉圧力容器20からの蒸気の圧力が予め定められた圧力(定格圧力)よりも低いとき、蒸気加減弁30の弁体に弁絞り開度を与えて蒸気の圧力を増加させ、予め定められた圧力(定格圧力)に制御する一方、系統等の事故が発生し、蒸気加減弁30の弁体開度を絞る間に原子炉圧力容器20からの蒸気が予め定められた圧力(定格圧力)を超えたとき、蒸気圧力調整装置34で原子炉圧力容器20からの蒸気を復水器24に供給する構成にしたので、高,低圧タービン21,23等の回転数を定格回転数に容易に整定させることができる。
【0043】
図2および図3は、第1の実施形態の原子力発電プラント運転制御方法を説明する際の線図である。
【0044】
図2は、原子炉圧力容器20から発生した蒸気を、圧力ヘッダ27、主蒸気止め弁29、蒸気加減弁30、高圧タービン21、組み合せ中間弁22、低圧タービン23、復水器24の順に流して運転している間に、例えば系統事故による負荷変動があると、過渡時、軸結合させていた高圧タービン21、低圧タービン23および発電機(図示せず)が定格回転数を超えてオーバスピードになることを抑制したもので、蒸気加減弁30の弁体に弁絞り開度を与え、一点鎖線BPで示すように、蒸気を圧力降下させるとともに、組み合せ中間弁22の弁体にも弁絞り開度を与え、一点鎖線BPで示すように、蒸気を圧力降下させたものである。
【0045】
このように、高,低圧タービン21,23等のオーバスピードを蒸気加減弁30の弁体へ弁絞り開度を与えるのみならず、組み合せ中間弁22の弁体にも弁絞り開度を与え、蒸気加減弁30の蒸気の圧力降下BPに、組み合せ中間弁22の蒸気の圧力降下BPを加えて蒸気供給系統のシステムロスを増加させたので、蒸気加減弁30の圧力降下BPと組み合せ中間弁22の圧力降下BPとのそれぞれ少ない分担率でも高,低圧タービン21,23等のオーバスピードを容易に定格回転数に整定させることができる。
【0046】
図3は、図1で示した蒸気圧力調整装置34のリリーフ弁35を開弁させるときの頻度の数を多くし、繰返して行い、原子炉圧力容器20からの蒸気を復水器24に流出させたものである。
【0047】
従来、高,低圧タービン21,23等に系統事故による負荷変動があると、蒸気加減弁30は、図5の実線で示すように、全開に対し、大きな弁絞り開度を弁体に与えて原子炉圧力容器20からの蒸気の圧力を予め定められた圧力(定格圧力)に戻していた。
【0048】
しかし、図3では、蒸気圧力調整装置のリリーフ弁を、原子炉圧力が定格圧力を超えた時に開弁し、定格圧力以下になった時に閉弁させ、繰り返し、数多く開閉させているので、蒸気加減弁の弁体に与えられる弁絞り開度も全開に対して僅かで済む。
【0049】
このように、リリーフ弁を開弁および閉弁させる回数をより多くし、繰り返して行うようにするので、蒸気加減弁の弁体の弁絞り開度を小さくさせて圧力損失を少なくさせることができ、少ない圧力損失の下、原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を、予め定められた圧力(定格圧力)に容易に整定させることができる。
【0050】
そして、本実施形態は、蒸気圧力調整装置34を流れる蒸気をオリフィスを介して復水器に供給するので、タービンバイパス管の役割を果す。
【0051】
なお、本実施形態は、例えば、4本の主蒸気管25のうち、1本の主蒸気管25に蒸気圧力調整装置34を設けたが、この例に限らず、例えば、図4に示すように、主蒸気管25の管本数に対応させて蒸気圧力調整装置34a,34b,…を設けてもよい(第2実施形態)。
【0052】
また、例えば、図5に示すように、蒸気圧力調整装置34の蒸気リリーフ管37を組み合せ中間弁22の入口側に接続させてもよい(第3実施形態)。蒸気リリーフ管37を組み合せ中間弁22の入口側に設けた場合、回収した蒸気を低圧タービン23で膨張仕事をさせ、回収エネルギを再活用させる点で有効である。
【0053】
図6は、本発明に係る原子力発電プラントの第4実施形態を示す概略系統図である。
【0054】
本実施形態は、原子炉圧力容器20に高圧タービン21を接続させる複数本、例えば、4本の主蒸気管25および主蒸気リード管26のうち、少なくとも1つ以上の管に蒸気加減弁30を設けたものである。なお、圧力ヘッダ27、圧力計28、主蒸気止め弁29は、第1実施形態と同じ実施形態を採っている。
【0055】
このように、本実施形態は、原子炉圧力容器20に高圧タービン21を接続させる複数本、例えば4本の主蒸気管25および主蒸気リード管26のうち、少なくとも1つ以上に蒸気加減弁30を設け、主蒸気管25および主蒸気リード管26を流れる原子炉圧力容器20からの蒸気の圧力損失を少なくさせたので、高圧タービン21および低圧タービン23での膨張仕事を高くして電気出力を増加させることができる。
【0056】
図7は、第4実施形態の原子力発電プラント運転制御方法を説明する際の線図である。
【0057】
図6で示した複数管本数、例えば、4本の主蒸気管25および主蒸気リード管26に、管本数に対応させて主蒸気止め弁29を設けるとともに、管本数の少なくとも1本以上に蒸気加減弁30を設けたことに伴って負荷上昇時、主蒸気止め弁29と蒸気加減弁30との開閉挙動モードに改良を加えたものである。
【0058】
すなわち、従来の原子力発電プラントは、図9に示すように、複数の管本数、例えば、4本の主蒸気管6および主蒸気リード管7の管本数に対応させて主蒸気止め弁10、蒸気加減弁11を設けていた。
【0059】
また、主蒸気管6および主蒸気リード管7の管本数に対応させて設けた主蒸気止め弁10、蒸気加減弁11の弁開度関係は、図10に示すように、4個の主蒸気止め弁10の全弁を全開させた後、4個の蒸気加減弁11の全弁を同時に開弁させ、その開度を徐々に増加させ、タービン負荷100%に至るまで弁開度増加を繰り返していた。
【0060】
しかし、本実施形態は、例えば、4本の主蒸気管25および主蒸気リード管26に対し、管本数に対応させて主蒸気止め弁29を設けるとともに、複数の管本数のうち、少なくとも1つ以上の管本数に蒸気加減弁30を設けたため、タービン負荷上昇中、主蒸気止め弁29と蒸気加減弁30との弁開度関係を、図7に示すように、改良を加えたものである。
【0061】
図7は、主蒸気止め弁29と蒸気加減弁30との弁開度関係を示す線図で、起動当初、主蒸気止め弁29の全弁を全閉にし、蒸気加減弁30の、例えば1弁を全閉の状態から第1主蒸気止め弁を全開させる。
【0062】
第1主蒸気止め弁が全開すると、蒸気加減弁を開弁させる。蒸気加減弁の全開後、第2主蒸気止め弁の開弁に合わせて蒸気加減弁を閉弁させ、第2主蒸気止め弁が全開すると同時に、蒸気加減弁は閉弁する。再び、蒸気加減弁を開弁させ、蒸気加減弁が全開後、第3主蒸気止め弁の開弁に合わせて蒸気加減弁を閉弁させ、第3主蒸気止め弁が全開すると同時に、蒸気加減弁を閉弁させる。
【0063】
このような弁開度挙動を、順次繰り返し、第4主蒸気止め弁を全開させた後、蒸気加減弁を全開させ、定格負荷に至らしめる。
【0064】
ところで、上述の主蒸気止め弁と蒸気加減弁との弁開度関係の下、負荷上昇運転中、または定格負荷運転中、原子炉圧力容器から供給された蒸気の圧力変動が比較的小さい場合、図8のA部で示すように、蒸気加減弁のみで対応させ、弁体に弁絞り開度を与えて蒸気圧力を上昇させる。
【0065】
また、運転中、系統に事故が発生し、高低圧タービン等に比較的程度の低い負荷変動が生じ、主蒸気圧力にA部より大きな変動があった場合、本実施形態は、図8のB部で示すように、第1主蒸気止め弁を開弁させたまま、蒸気加減弁および第2主蒸気止め弁を閉弁させ、蒸気圧力を予め定められた圧力(定格圧力)に回復させる。
【0066】
さらにまた、大きな主蒸気圧力の変動(低下)があった場合、図8のC部で示すように、第1主蒸気止め弁を開弁させたまま、蒸気加減弁および第2主蒸気止め弁を閉弁させるほかに、残りの主蒸気止め弁の全弁を閉弁させ、蒸気圧を予め定められた圧力(定格圧力)に回復させる。
【0067】
このように、原子炉圧力容器と高圧タービンとを接続させる主蒸気管および主蒸気リード管が複数管本数のうち、例えば、4本の主蒸気管に対応させて主蒸気止め弁を4個備え、4本の主蒸気管のうち、少なくとも1本以上の管に対応させて蒸気加減弁を備えたことを条件とし、原子炉圧力容器から高圧タービンに供給される蒸気の圧力変動が大小の程度に応じて蒸気加減弁のみに弁絞り開度を与えるか、あるいは調整可能な蒸気加減弁のほかに第2〜第4種蒸気止め弁を閉弁させるので、原子炉圧力容器から供給される蒸気の圧力変動の大小に拘らず、容易に予め定められた圧力(定格圧力)に調整することができ、原子炉出力を一定に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る原子力発電プラントの第1実施形態を示す概略系統図。
【図2】第1実施形態の原子力発電プラント運転制御方法における蒸気の圧力降下を示す図。
【図3】第1実施形態の原子力発電プラント運転制御方法における蒸気圧力変動時のリリーフ弁の開閉を示す図。
【図4】本発明に係る原子力発電プラントの第2実施形態を示す概略系統図。
【図5】本発明に係る原子力発電プラントの第3実施形態を示す概略系統図。
【図6】本発明に係る原子力発電プラントの第4実施形態を示す概略系統図。
【図7】第4実施形態の原子力発電プラント運転制御方法を説明するための図。
【図8】図7の蒸気加減弁と主蒸気止め弁との弁開度挙動を説明するための図。
【図9】従来の原子力発電プラントを示す概略系統図。
【図10】従来の主蒸気止め弁および蒸気加減弁の弁開度状況を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1 原子炉圧力容器
2 高圧タービン
3 組み合せ中間弁
4 低圧タービン
5 復水器
6 主蒸気管
7 主蒸気リード管
8 圧力ヘッダ
9 圧力計
10 主蒸気止め弁
11 蒸気加減弁
12 タービンバイパス弁
14 タービンバイパス管
20 原子炉圧力容器
21 高圧タービン
22 組み合せ中間弁
23 低圧タービン
24 復水器
25 主蒸気管
26 主蒸気リード管
27 圧力ヘッダ
28 圧力計
29 主蒸気止め弁
30 蒸気加減弁
31 タービンバイパス弁
32 タービンバイパス管
33 復水・給水管
34,34a,34b 蒸気圧力調整装置
35,35a,35b リリーフ弁
36,36a,36b オリフィス
37,37a,37b 蒸気リリーフ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、圧力ヘッダ、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻し、前記原子炉圧力容器からの蒸気を復水器に逃がすタービンバイパス管で前記圧力ヘッダと前記復水器とを接続する構成の原子力発電プラントにおいて、
前記圧力ヘッダの下流側と前記蒸気加減弁の上流側の間の前記主蒸気管に入力側が接続され、前記原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を調整する蒸気圧力調整装置を備えたことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項2】
前記蒸気圧力調整装置の出力側を蒸気タービンの低圧タービンの入口側に接続させる構成にしたことを特徴とする請求項1記載の原子力発電プラント。
【請求項3】
前記蒸気圧力調整装置は、リリーフ弁と蒸気リリーフ管とで構成したことを特徴とする請求項1または2記載の原子力発電プラント。
【請求項4】
前記蒸気リリーフ管は、減圧装置を備えたことを特徴とする請求項3記載の原子力発電プラント。
【請求項5】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻す構成の原子力発電プラントにおいて、
前記蒸気加減弁の上流側の間の前記主蒸気管と復水器との間に前記原子炉圧力容器からの蒸気の圧力を調整する蒸気圧力調整装置を備え、前記蒸気圧力調整装置には減圧装置を備えたことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項6】
前記蒸気圧力調整装置は、リリーフ弁と蒸気リリーフ管とで構成したことを特徴とする請求項5記載の原子力発電プラント。
【請求項7】
前記蒸気圧力調整装置を主蒸気管は、管本数分設けたことを特徴とする請求項1または5記載の原子力発電プラント。
【請求項8】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、圧力ヘッダ、主蒸気止め弁および蒸気加減弁を介装させ、前記原子炉圧力容器からの蒸気の流量を前記蒸気加減弁で制御して蒸気タービンに供給し、前記蒸気タービンで動力を発生させ、タービン排気を復水器で凝縮させて前記原子炉圧力容器に戻し、前記原子炉圧力容器からの蒸気を復水器に逃がすタービンバイパス管で前記圧力ヘッダと前記復水器とを接続する構成の原子力発電プラントにおいて、
前記主蒸気管の管本数分主蒸気止め弁を備えるとともに、前記主蒸気管の管本数より少ない蒸気加減弁を備えたことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項9】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁に弁絞り開度を与えるとともに、前記蒸気タービンのうち、高圧タービンと低圧タービンとの中間に設けた組み合せ中間弁に弁絞り開度を与え、前記蒸気の圧力を調整することを特徴とする原子力発電プラント運転制御方法。
【請求項10】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管に、蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁の上流側の前記主蒸気管に設けた蒸気圧力調整装置のリリーフ弁に開弁指令を与えることを特徴とする原子力発電プラント運転制御方法。
【請求項11】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管の管本数に対応させて主蒸気止め弁を備えるとともに、前記管本数のうち、少なくとも1本以上に蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、前記主蒸気止め弁のうち、第1の主蒸気止め弁を開弁させた後、前記蒸気加減弁を開弁させ、さらに第2の主蒸気止め弁を開弁させた後、前記蒸気加減弁を閉弁させ、さらに残りの主蒸気止め弁を開弁させる間に前記蒸気加減弁の開弁、閉弁を繰り返し、最後に前記蒸気加減弁を開弁させることを特徴とする原子力発電プラント運転制御方法。
【請求項12】
原子炉圧力容器と蒸気タービンを接続する主蒸気管の管本数に対応させて主蒸気止め弁を備えるとともに、前記管本数より少ない蒸気加減弁を備え、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに蒸気を供給する際、予め定められた圧力に対し、前記原子炉圧力容器から前記蒸気タービンに供給する蒸気の圧力が変動しているとき、前記蒸気加減弁に弁絞り開度を与えるか、あるいは下流側に前記蒸気加減弁をもつ主蒸気止め弁の一つを開弁させたまま、前記蒸気加減弁を閉弁させるとともに、前記主蒸気止め弁の残りを順次閉弁させるかを選択することを特徴とする原子力発電プラント運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112402(P2006−112402A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303356(P2004−303356)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】