説明

双方向DC/ACインバータ

【課題】バッテリへの入力電圧を可変させてバッテリを充電する場合のDC/AC電力変換効率の低下回避を能力の高いスイッチング素子を使用することなく行うことが可能な双方向DC/ACインバータを提供することを目的とする。
【解決手段】バッテリ52の充電時、ブリッジ回路39を構成するスイッチング素子35〜38のうち下側のスイッチング素子37、38、フィルタ34を構成するコイル31、32、及びコンデンサ40をアクティブフィルタとして動作させることによりブリッジ回路45への入力電圧Vcを可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向DC/ACインバータに関し、特に、バッテリ充電時の双方向DC/ACインバータの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、既存の双方向DC/ACインバータを示す図である。
図3に示す双方向DC/ACインバータ30は、コイル31、32とコンデンサ33とからなるフィルタ34と、4つのスイッチング素子35〜38により構成されフィルタ34に接続されるブリッジ回路39と、4つのスイッチング素子41〜44により構成されブリッジ回路39にコンデンサ40を介して接続されるブリッジ回路45と、4つのスイッチング素子47〜50により構成されブリッジ回路45にトランス46を介して接続されるブリッジ回路51と、ブリッジ回路51とバッテリ52との間に設けられるコンデンサ53及びコイル54とを備えて構成されている。なお、スイッチング素子35〜38、スイッチング素子41〜44、及びスイッチング素子47〜50は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、各スイッチング素子にはダイオードが並列接続される。
【0003】
上記双方向DC/ACインバータ30は、バッテリ52を充電する場合、ブリッジ回路45のスイッチング素子41、44とスイッチング素子42、43とを交互にオン、オフさせる。すなわち、バッテリ52が充電される場合、外部からフィルタ34を介してブリッジ回路39に入力される交流電力は、ブリッジ回路39のスイッチング素子35〜38に並列接続されるダイオードにより整流されると共にコンデンサ40により平滑され直流電力に変換される。次に、その直流電力は、ブリッジ回路45により交流電力に変換されトランス46を介してブリッジ回路51に出力される。次に、その交流電力は、ブリッジ回路51のスイッチング素子47〜50に並列接続されるダイオードにより整流されると共にコンデンサ53により平滑され直流電力に変換される。そして、その直流電力は、コイル54を介してバッテリ52に供給される。
【0004】
また、上記双方向DC/ACインバータ30は、外部に交流電力を出力する場合、ブリッジ回路51のスイッチング素子47、50とスイッチング素子48、49とを交互にオン、オフさせると共に、ブリッジ回路39のスイッチング素子35、38とスイッチング素子36、37とを交互にオン、オフさせる。すなわち、双方向DC/ACインバータ30から交流電力が出力される場合、バッテリ52から得られる直流電力は、ブリッジ回路51により交流電力に変換されトランス46を介してブリッジ回路45に出力される。次に、その交流電力は、ブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44に並列接続されるダイオードにより整流されると共にコンデンサ40により平滑され直流電力に変換される。そして、その直流電力は、ブリッジ回路39により交流電力に変換されフィルタ34を介して外部に出力される。
【0005】
このように、上記双方向DC/ACインバータ30は、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路45のみを駆動し、交流電力出力時、ブリッジ回路39及びブリッジ回路51のみを駆動する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、バッテリ52の充電方法として、例えば、ブリッジ回路45への入力電圧をほぼ一定に保ちながら、そのブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44の各dutyを可変させてブリッジ回路45から出力される電流を制御することにより充電電圧を調整しながらバッテリ52を充電する方法がある。この方法は、例えば、バッテリ52を定電流で充電する場合に、バッテリ52への入力電圧をバッテリ52の端子電圧よりも常に少し高い電圧に保たせるために適用される。上昇するバッテリ52の端子電圧に合わせてバッテリ52への入力電圧も上昇させる場合は、そのバッテリ52の端子電圧の上昇に伴ってスイッチング素子41〜44の各dutyが大きくなっていく。
【特許文献1】特開2001−37226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、バッテリ52への入力電圧を可変させてバッテリ52を充電する方法では、バッテリ52の端子電圧が低くスイッチング素子41〜44の各dutyが小さいとき、ブリッジ回路45から出力される電流が小さくなりブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率が低下する。そのため、上述の方法を適用してブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率を上げるためには、小さいdutyのときでもより多くの電流を流すことが可能な能力の高いスイッチング素子を使用してブリッジ回路45を構成する必要がありコストが増大するなどの問題がある。
【0008】
そこで、本発明では、バッテリへの入力電圧を可変させてバッテリを充電する場合のDC/AC電力変換効率の低下回避を能力の高いスイッチング素子を使用することなく行うことが可能な双方向DC/ACインバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明では、以下のような構成を採用した。
すなわち、本発明の双方向DC/ACインバータは、バッテリの充電時、外部から入力される交流電力を直流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される直流電力を交流電力に変換し外部に出力する第1の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第1の電力変換手段から出力される直流電力を交流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される交流電力を直流電力に変換し前記第1の電力変換手段に供給する第2の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第2の電力変換手段からトランスを介して出力される交流電力を直流電力に変換し前記バッテリに供給すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記バッテリから得られる直流電力を交流電力に変換し前記トランスを介して前記第2の電力変換手段に供給する第3の電力変換手段と、前記第1〜第3の電力変換手段のそれぞれの動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1の電力変換手段を構成するスイッチング素子とコンデンサ、及び前記第1の電力変換手段に接続されるフィルタを構成するコイルをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2の電力変換手段への入力電圧を可変させることを特徴とする。
【0010】
このように、バッテリの充電時、第1の電力変換手段を構成するスイッチング素子、フィルタを構成するコイル、及び第1の電力変換手段と第2の電力変換手段との間のコンデンサをアクティブフィルタとして動作させることにより第2の電力変換手段への入力電圧を可変させているので、第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを可変することなく第3の電力変換手段への入力電圧を可変することができる。これにより、第2の電力変換手段のスイッチング素子のdutyを固定しつつバッテリへの入力電圧を可変しバッテリを充電することができるので、バッテリへの入力電圧を可変させてバッテリを充電する場合の第2の電力変換手段のDC/AC電力変換効率の低下回避を第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子の能力を上げることなく行うことができる。
【0011】
また、上記制御手段は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧以上である期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを固定するように構成してもよい。
【0012】
また、上記制御手段は、前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧になるまでの期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変させるように構成してもよい。
【0013】
また、上記所定電圧は、前記アクティブフィルタにより昇圧される前記第2の電力変換手段への入力電圧が最も低くなるときに前記バッテリを定電流又は定電力で充電可能な前記バッテリの端子電圧としてもよい。
【0014】
また、本発明の双方向DC/ACインバータは、コイルを含むフィルタと、ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記フィルタに接続される第1のブリッジ回路と、ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記第1のブリッジ回路に接続される第2のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路と前記第2のブリッジ回路との間に設けられるコンデンサと、ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記第2のブリッジ回路にトランスを介して接続される第3のブリッジ回路と、バッテリの充電時、前記第2のブリッジ回路を直流電力を交流電力に変換するように機能させると共に、前記第1ブリッジ回路及び前記第3のブリッジ回路をそれぞれ交流電力を直流電力に変換するように機能させ、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記第1のブリッジ回路及び前記第3のブリッジ回路をそれぞれ直流電力を交流電力に変換するように機能させると共に、前記第2のブリッジ回路を交流電力を直流電力に変換するように機能させる制御回路とを備え、前記制御回路は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1のブリッジ回路を構成する各スイッチング素子のうち所定のスイッチング素子、前記コイル、及び前記コンデンサをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2のブリッジ回路への入力電圧を可変させることを特徴とする。
【0015】
また、上記制御回路は、前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定の電圧になるまでの期間、前記第2のブリッジ回路を構成する各スイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変させるように構成してもよい。
【0016】
また、本発明の双方向DC/ACインバータの駆動制御方法は、バッテリの充電時、外部から入力される交流電力を直流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される直流電力を交流電力に変換し外部に出力する第1の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第1の電力変換手段から出力される直流電力を交流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される交流電力を直流電力に変換し前記第1の電力変換手段に供給する第2の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第2の電力変換手段からトランスを介して出力される交流電力を直流電力に変換し前記バッテリに供給すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記バッテリから得られる直流電力を交流電力に変換しトランスを介して前記第2の電力変換手段に供給する第3の電力変換手段と、前記第1〜第3の電力変換手段のそれぞれの動作を制御する制御手段とを備える双方向DC/ACインバータの駆動制御方法であって、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1の電力変換手段を構成するスイッチング素子とコンデンサ、及び前記第1の電力変換手段に接続されるフィルタを構成するコイルをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2の電力変換手段への入力電圧を可変することを特徴とする。
【0017】
また、上記双方向DC/ACインバータの駆動制御方法は、前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧になるまでの期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、双方向DC/ACインバータを構成するスイッチング素子の能力を上げることなく、バッテリへの入力電圧を可変させてバッテリを充電する場合のDC/AC電力変換効率の低下を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態の双方向DC/ACインバータを示す図である。なお、図3に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0020】
図1に示す双方向DC/ACインバータ1は、フィルタ34と、ブリッジ回路39(第1のブリッジ回路)と、コンデンサ40と、ブリッジ回路45(第2のブリッジ回路)と、トランス46と、ブリッジ回路51(第3のブリッジ回路)と、コンデンサ53と、コイル54と、バッテリ52の充電時にスイッチング素子41〜44及びスイッチング素子37、38を駆動し、双方向DC/ACインバータ1の交流電力出力時にスイッチング素子35〜38及びスイッチング素子47〜50を駆動する制御回路2(制御手段)と、外部からフィルタ34に入力される交流電圧Vinを検出する電圧検出回路3と、ブリッジ回路45への入力電圧Vcを検出する電圧検出回路4と、バッテリ52の端子電圧Vbを検出する電圧検出回路5と、外部からフィルタ34に入力される交流電流Iinを検出する電流検出回路6と、バッテリ52に流れる電流Ibを検出する電流検出回路7とを備えて構成されている。
【0021】
なお、特許請求の範囲に記載される第1の電力変換手段は、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路39及びコンデンサ40により構成され、双方向DC/ACインバータ1の交流電力出力時、ブリッジ回路39により構成される。また、特許請求の範囲に記載される第2の電力変換手段は、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路45により構成され、双方向DC/ACインバータ1の交流電力出力時、ブリッジ回路45及びコンデンサ40により構成される。また、特許請求の範囲に記載される第3の電力変換手段は、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路51及びコンデンサ53により構成され、双方向DC/ACインバータ1の交流電力出力時、ブリッジ回路51により構成される。また、スイッチング素子35〜38、スイッチング素子41〜44、及びスイッチング素子47〜50は、ボディダイオードを有するMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されてもよい。また、ブリッジ回路39、ブリッジ回路45、またはブリッジ回路51は、2つのスイッチング素子を備えるハーフブリッジ型のブリッジ回路により構成されてもよい。
【0022】
上記双方向DC/ACインバータ1の特徴とする点は、制御回路2が、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路39を構成するスイッチング素子35〜38のうち下側のスイッチング素子37、38、フィルタ34を構成するコイル31、32、及びコンデンサ40をアクティブフィルタとして動作させることによりブリッジ回路45への入力電圧Vcを可変する点である。
【0023】
図2(a)は、図1に示すブリッジ回路45への入力電圧Vcとバッテリ52の端子電圧Vbとの関係を示す図である。なお、図2(a)に示すグラフの縦軸は電圧Vを示し、横軸は時間tを示している。また、図2(a)に示す実線はバッテリ52の端子電圧Vbを示し、破線はブリッジ回路45への入力電圧Vcを示している。また、充電開始時のバッテリ52の端子電圧Vbは十分低くなっているものとする。また、スイッチング素子37、38、コイル31、32、及びコンデンサ40からなるアクティブフィルタにより昇圧されるブリッジ回路45への入力電圧Vcが最も低くなるとき(アクティブフィルタによる昇圧がされないとき)に入力電圧Vcが端子電圧Vbより所定値dだけ高い状態のバッテリ52の端子電圧Vbを所定電圧Vpとする。なお、図1に示すトランス46の1次側コイルと2次側コイルの巻き線比を1:1とする。
【0024】
図2(a)に示すように、バッテリ52の端子電圧Vbは、充電を開始してからすぐに所定電圧Vpまで急峻に上昇し、その後徐々に上昇していき、ある時点で再び急峻に上昇して上限の電圧Vmに達している。
【0025】
例えば、制御回路2は、図2(a)に示すように、バッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになってから上限の電圧Vmになるまでの期間、ブリッジ回路45への入力電圧Vcがバッテリ52の端子電圧Vbよりも常に所定値dだけ高い電圧となるように、スイッチング素子37、38の各dutyを可変する。
【0026】
例えば、図1に示す双方向DC/ACインバータ1において、フィルタ34に入力される交流電力が正のとき、スイッチング素子37がオンしスイッチング素子38がオフすると、コイル31にエネルギーが蓄積し、次に、スイッチング素子37がオフしスイッチング素子38がオンすると、コイル31に蓄積されていたエネルギーがスイッチング素子35に並列接続されたダイオードを介してコンデンサ40に蓄積される。また、フィルタ34に入力される交流電力が負のとき、スイッチング素子37がオフしスイッチング素子38がオンすると、コイル32にエネルギーが蓄積し、次に、スイッチング素子37がオンしスイッチング素子38がオフすると、コイル32に蓄積されていたエネルギーがスイッチング素子36に並列接続されたダイオードを介してコンデンサ40に蓄積される。従って、スイッチング素子37、38の各dutyを大きくすると、ブリッジ回路45への入力電圧Vcが高くなり、スイッチング素子37、38の各dutyを小さくすると、ブリッジ回路45への入力電圧Vcが低くなる。
【0027】
これにより、ブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44の各dutyを可変させることなくバッテリ52の端子電圧Vbの変化に応じてブリッジ回路45への入力電圧Vcを可変させることができるので、バッテリ52の充電を開始してからバッテリ52の端子電圧Vbが上限の電圧Vmになるまでの期間、スイッチング素子41〜44の各dutyをブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率が最大となる値(例えば、50%付近)に固定することができる。
【0028】
なお、バッテリ52の充電時のスイッチング素子37、38の各dutyは、バッテリ52の端子電圧Vb及び所定値dに基づいて求めてもよいし、バッテリ52に流れる電流Ibに基づいて求めてもよい。
【0029】
また、バッテリ52の充電時、スイッチング素子37、38を同時にオン、オフさせてもよいし、スイッチング素子35、38とスイッチング素子36、37とを交互にオン、オフさせてもよい。
【0030】
また、バッテリ52の充電時、バッテリ52の充電を開始してからバッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになるまでの期間、スイッチング素子37、38を停止させてもよい。
【0031】
また、バッテリ52の充電時、フィルタ34に入力される交流電圧Vin及び交流電流Iinに基づいて、ブリッジ回路45への入力電圧波形の位相とブリッジ回路45への入力電流波形の位相とが一致するようにスイッチング素子37、38を駆動させてもよい。これにより、スイッチング素子37、38、コイル31、32、及びコンデンサ40により構成するアクティブフィルタの力率を1にすることができそのアクティブフィルタの効率を向上させることができる。
【0032】
このように、上記双方向DC/ACインバータ1は、バッテリ52の充電時、スイッチング素子37、38、コイル31、32、及びコンデンサ40をアクティブフィルタとして動作させることによりブリッジ回路45への入力電圧Vcを可変させているので、ブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44の各dutyを可変することなくトランス46への入力電圧を可変することができる。これにより、スイッチング素子41〜44の各dutyをブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率が最大となる値に固定しつつバッテリ52への入力電圧を可変しバッテリ52を充電することができるので、バッテリ52への入力電圧を可変させてバッテリ52を充電する場合のブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率の低下回避をスイッチング素子41〜44の能力を上げることなく行うことができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、バッテリ52の充電時、ブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44の各dutyを常に固定する構成であるが、バッテリ52の充電が開始されてからバッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになるまでの期間、スイッチング素子41〜44の各dutyを可変させてもよい。
【0034】
図2(b)は、バッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになるまでの期間、スイッチング素子41〜44の各dutyを可変させる場合のブリッジ回路45への入力電圧Vcとバッテリ52の端子電圧Vbとの関係を示す図である。なお、図2(b)に示すグラフの縦軸は電圧Vを示し、横軸は時間tを示している。また、図2(b)に示す実線はバッテリ52の端子電圧Vbを示し、破線はブリッジ回路45への入力電圧Vcを示している。また、充電開始時のバッテリ52の端子電圧Vbは十分低くなっているものとする。また、スイッチング素子37、38、コイル31、32、及びコンデンサ40からなるアクティブフィルタにより昇圧されるブリッジ回路45への入力電圧Vcが最も低くなるとき(アクティブフィルタによる昇圧がされないとき)に入力電圧Vcが端子電圧Vbより所定値dだけ高い状態のバッテリ52の端子電圧Vbを所定電圧Vpとする。なお、図1に示すトランス46の1次側コイルと2次側コイルの巻き線比を1:1とする。
【0035】
図2(b)に示すバッテリ52の端子電圧Vbは、図2(a)に示すバッテリ52の端子電圧Vbと同様に、充電を開始してからすぐに所定電圧Vpまで急峻に上昇していき、その後徐々に上昇してある時点で再び急峻に上昇し上限の電圧Vmに達している。
【0036】
例えば、制御回路2は、バッテリ52の充電を開始してからバッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになるまでの期間、バッテリ52への入力電圧(図2(b)に示す一点鎖線)がバッテリ52の端子電圧Vbよりも常に所定値dだけ高い電圧となるようにブリッジ回路45のスイッチング素子41〜44の各dutyを可変すると共に、バッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになってから上限の電圧Vmになるまでの期間、スイッチング素子41〜44の各dutyをブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率が最大となる値(例えば、50%付近)に固定する。
【0037】
なお、バッテリ52の充電時のスイッチング素子37、38の駆動制御は、図2(a)で説明した駆動制御と同様である。
これにより、スイッチング素子37、38、コイル31、32、及びコンデンサ40からなるアクティブフィルタによりブリッジ回路45への入力電圧Vcを可変することができない期間(例えば、バッテリ52の充電が開始されてからバッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになるまでの期間)もバッテリ52への入力電圧を可変することができるようになるので、容量の小さい低電流出力のバッテリ52も充電することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、バッテリ52への入力電流が一定になるようにバッテリ52を充電する構成であるが、バッテリ52への入力電力が一定になるようにバッテリ52を充電するように構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、トランス46の1次側コイルと2次側コイルの巻き線比を1:1としたが、この構成に限定されない。また、バッテリ52の端子電圧Vbが所定電圧Vpになってから上限の電圧Vmになるまでの期間、スイッチング素子41〜44の各dutyをブリッジ回路45のDC/AC電力変換効率が最大となる値に固定したが、最大となる値に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態の双方向DC/ACインバータを示す図である。
【図2】ブリッジ回路への入力電圧Vcとバッテリの端子電圧Vbとの関係を示す図である。
【図3】既存の双方向DC/ACインバータを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 双方向DC/ACインバータ
2 制御回路
3〜5 電圧検出回路
6、7 電流検出回路
30 双方向DC/ACインバータ
31、32 コイル
33 コンデンサ
34 フィルタ
35〜38 スイッチング素子
39 ブリッジ回路
40 コンデンサ
41〜44 スイッチング素子
45 ブリッジ回路
46 トランス
47〜50 スイッチング素子
51 ブリッジ回路
52 バッテリ
53 コンデンサ
54 コイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充電時、外部から入力される交流電力を直流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される直流電力を交流電力に変換し外部に出力する第1の電力変換手段と、
前記バッテリの充電時、前記第1の電力変換手段から出力される直流電力を交流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される交流電力を直流電力に変換し前記第1の電力変換手段に供給する第2の電力変換手段と、
前記バッテリの充電時、前記第2の電力変換手段からトランスを介して出力される交流電力を直流電力に変換し前記バッテリに供給すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記バッテリから得られる直流電力を交流電力に変換し前記トランスを介して前記第2の電力変換手段に供給する第3の電力変換手段と、
前記第1〜第3の電力変換手段のそれぞれの動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1の電力変換手段を構成するスイッチング素子とコンデンサ、及び前記第1の電力変換手段に接続されるフィルタを構成するコイルをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2の電力変換手段への入力電圧を可変させる、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向DC/ACインバータであって、
前記制御手段は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧以上である期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを固定する、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の双方向DC/ACインバータであって、
前記制御手段は、前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧になるまでの期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変させる、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項4】
請求項3に記載の双方向DC/ACインバータであって、
前記所定電圧は、前記アクティブフィルタにより昇圧される前記第2の電力変換手段への入力電圧が最も低くなるときに前記バッテリを定電流又は定電力で充電可能な前記バッテリの端子電圧である、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項5】
コイルを含むフィルタと、
ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記フィルタに接続される第1のブリッジ回路と、
ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記第1のブリッジ回路に接続される第2のブリッジ回路と、
前記第1のブリッジ回路と前記第2のブリッジ回路との間に設けられるコンデンサと、
ダイオードと並列接続される複数のスイッチング素子により構成され、前記第2のブリッジ回路にトランスを介して接続される第3のブリッジ回路と、
バッテリの充電時、前記第2のブリッジ回路を直流電力を交流電力に変換するように機能させると共に、前記第1ブリッジ回路及び前記第3のブリッジ回路をそれぞれ交流電力を直流電力に変換するように機能させ、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記第1のブリッジ回路及び前記第3のブリッジ回路をそれぞれ直流電力を交流電力に変換するように機能させると共に、前記第2のブリッジ回路を交流電力を直流電力に変換するように機能させる制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1のブリッジ回路を構成する各スイッチング素子のうち所定のスイッチング素子、前記コイル、及び前記コンデンサをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2のブリッジ回路への入力電圧を可変させる、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項6】
請求項5に記載の双方向DC/ACインバータであって、
前記制御回路は、前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定の電圧になるまでの期間、前記第2のブリッジ回路を構成する各スイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変させる、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータ。
【請求項7】
バッテリの充電時、外部から入力される交流電力を直流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される直流電力を交流電力に変換し外部に出力する第1の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第1の電力変換手段から出力される直流電力を交流電力に変換すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、入力される交流電力を直流電力に変換し前記第1の電力変換手段に供給する第2の電力変換手段と、前記バッテリの充電時、前記第2の電力変換手段からトランスを介して出力される交流電力を直流電力に変換し前記バッテリに供給すると共に、当該双方向DC/ACインバータの交流電力出力時、前記バッテリから得られる直流電力を交流電力に変換しトランスを介して前記第2の電力変換手段に供給する第3の電力変換手段と、前記第1〜第3の電力変換手段のそれぞれの動作を制御する制御手段とを備える双方向DC/ACインバータの駆動制御方法であって、
前記バッテリの充電時、少なくとも前記バッテリの端子電圧が所定電圧以上である期間、前記第1の電力変換手段を構成するスイッチング素子とコンデンサ、及び前記第1の電力変換手段に接続されるフィルタを構成するコイルをアクティブフィルタとして動作させることにより前記第2の電力変換手段への入力電圧を可変する、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータの駆動制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の双方向DC/ACインバータの駆動制御方法であって、
前記バッテリの充電時、前記バッテリの端子電圧が前記所定電圧になるまでの期間、前記第2の電力変換手段を構成するスイッチング素子のdutyを可変することにより前記バッテリへの入力電圧を可変する、
ことを特徴とする双方向DC/ACインバータの駆動制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−110856(P2007−110856A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301399(P2005−301399)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】