反射特性制御層及び表示装置
【課題】オブジェクトの光沢感及び立体感を高めることができる反射特性制御層及び表示装置を提供する。
【解決手段】表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる透明薄板2と、入力画像に応じて透明薄板2の反射特性を切り替える光沢感処理部1とを備え、入力画像の光沢領域を検出し、当該検出結果に応じて所定領域の反射特性を切り替える。
【解決手段】表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる透明薄板2と、入力画像に応じて透明薄板2の反射特性を切り替える光沢感処理部1とを備え、入力画像の光沢領域を検出し、当該検出結果に応じて所定領域の反射特性を切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射特性を切り替え可能な反射特性制御層及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置等で表示画像中の対象物(オブジェクト)の質感を高める目的で、画面表面に均一グレア処理を施すものがある。これは表面がグレアの鏡面反射であるため、アンチグレアの拡散反射に比べて外光により実質的な白レベルが上がると共に黒レベルが下がり、ダイナミックレンジが拡大する効果を利用するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−51226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大型のディスプレイでは、外光が映り込むことで画面の均一性が損なわれ、見る人の疲労感が増すといった理由から、グレア処理が施されることがほとんどなく、表示画像中のオブジェクトの光沢感や立体感が損なわれていた。
【0005】
また、プリンタ装置においては、入力画像から光源又は光源の写り込みの光沢領域を検出し、光沢感(グレア/アンチグレア)を出力印画紙上で表すことが提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、ディスプレイ装置においては、入力画像に応じてグレアとアンチグレアを動的に切り替え可能なものは提案されていない。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、オブジェクトの光沢感及び立体感を高めることができる反射特性制御層及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明に係る反射特性制御層は、表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る反射特性制御層は、表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る表示装置は、表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層と、入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を切り替える制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る表示装置は、表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層と、入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を、上記表示画面の画素を発光させて選択する制御手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力画像の光沢領域に応じて表示画面の前面に配される反射特性制御層の反射特性を変化させることにより、オブジェクトの光沢感及び立体感を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。人はディスプレイに表示されたオブジェクトの光沢感を、正反射光強度(光沢度)と写像性より評価している。光沢度と写像性との重み付けは3:4でやや写像性(鮮鋭度)が優っているものの、正反射光強度(光沢度)も重要な要素である(FUJI FILM RESEARCH & DEVELOPMENT(No.51−2006)『高画質インクジェット超光沢受像紙 画彩「写真仕上げPro」の開発』参照。)。本実施の形態では、ディスプレイにおける外光反射(≒正反射光強度)を制御することで、オブジェクトの光沢感を制御する。
【0013】
[第1の実施の形態]
(全体構成) 図1は、第1の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。この表示装置は、入力画像信号から画像の光沢領域を検出し、検出結果に基づいて透明薄板2に光沢感制御信号を出力すると共に、出力画像信号を表示パネル3に出力する光沢感処理部1と、表示パネル3の前面に設けられ、所定領域毎に反射特性を切り替え可能な透明薄板2と、画像を表示する表示パネル3とを備えている。
【0014】
光沢感処理部1は、入力画像信号からオブジェクト毎に光沢領域か非光沢領域かを判別し、光沢領域を鏡面反射(グレア)させ、非光沢領域を拡散反射(アンチグレア)させる光沢感制御信号を透明薄板2に出力する。また、光沢感処理部1は、光沢領域及び非光沢領域が明瞭となるように入力画像信号の輝度情報等を最適化する。
【0015】
透明薄板2は、表示パネル3の前面に位置する透明な反射特性制御層であり、微細な大きさで区切られ、区切り単位毎に鏡面反射と拡散反射とが切り替え可能となっている。そして、透明薄板2の前面への外光反射を区切り単位毎に制御することで、表示画像のオブジェクト毎に光沢感を制御する。
【0016】
表示パネル3は、画像を表示するディスプレイ装置の液晶パネルやプラズマパネル等に相当するものである。
【0017】
この表示装置は、透明薄板2が微小領域毎に表面反射特性が変わるアクティブなアクチュエータを構成し、光沢感処理部1が透明薄板2に対し光沢感制御信号を供給すると共に表示パネル3に光沢感制御信号に同調した輝度補正した映像信号を供給するため、両者の協調によって光沢感・立体感を向上させることができる。
【0018】
図2は、透明薄板2及び表示パネル3の構成を模式的に示す図である。透明薄板2は、鏡面反射(グレア)と拡散反射(アンチグレア)とを切替える機能(アクティブ・アクチュエータ)を有しており、表示パネル3の前面に配置されている。鏡面反射か拡散反射かの表面状態を切り替えるアクティブ・アクチュエータは、数画素×数画素毎に配置されていることが好ましく、特に、図2の構成例のように画素毎に配置されていることが好ましい。
【0019】
図3は、透明薄板2に入射される入射光と反射光とを模式的に示す図である。図3
(A)に示すように、透明薄板2の表面状態が平坦の場合、入射光を鏡面反射し、画像の光沢感を高めることができる。一方、図3(B)に示すように、透明薄板2の表面状態が凹凸の場合、入所光を乱反射し、外光の映り込みを防ぐことができる。
【0020】
透明薄板2を領域毎に動的にグレア/アンチグレアに変化させる仕組みについては後述するが、例えば、電圧(電界)による物理的な状態変化を利用して制御する方法や、電流による熱的・化学的な状態変化を利用して制御する方法を用いることができる。
【0021】
このように表示画面の前面を領域毎に動的にグレア/アンチグレアと変えることで、外光により画像の実質的なダイナミックレンジを拡大し、画像(オブジェクト)の光沢感と立体感を高めることができる。
【0022】
(光沢感処理部) 次に、入力画像から光沢領域を抽出する光沢感処理部1について説明する。本実施の形態における光沢オブジェクトの抽出は、光沢領域だけを抽出するのではなく、オブジェクトの中で光沢感を醸し出している材質の領域全体を抽出するものである。光沢オブジェクト抽出は、例えば、特開2002−51226号公報に記載された技術を用いることができる。
【0023】
図4は、光沢感処理部1の構成を示す図であり、図5は、光沢感処理部1の処理を説明するための図である。光沢感処理部1は、透明薄板2の表面反射特性を制御する光沢感制御部4と、透明薄板2の表面反射に合わせて輝度値を最適化する輝度値最適化部5とを備えている。
【0024】
また、光沢感制御部4は、入力画像信号の色空間を分離する分離部41と、オブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出部42と、外光反射領域を検出する外光反射領域検出部43と、外光反射領域をエッジまで拡張する拡張処理部44と、拡張された光沢領域の光沢度を判定する光沢度判定部45とを備えている。
【0025】
例えば、図5(A)に示す原画像は、分離部41にて色空間が変換され、所定成分に分離される。エッジ抽出部42は、図5(B)に示すように画像からオブジェクトのエッジを抽出する。外光反射領域検出部43は、所定成分の画像から外光反射領域を検出する(図5(C))。拡張処理部44は、抽出されたエッジと検出された外光反射領域とから、図5(D)に示すように外光反射領域をエッジまで拡張する。このようにして拡張された光沢領域は、光沢度判定部45にて鏡面反射か乱反射かが判別され、光沢感制御信号が透明薄板2に出力されることにより、光沢領域の材質の質感を高めることができる(図5(E))。
【0026】
以下、光沢感処理部1の各構成部について図6〜図13を参照して説明する。
分離部41は、RGB成分などを持つマルチチャンネル画像から特定のチャンネル成分を分離する。具体的には、入力画像信号のRGB色空間をHSV色空間に変換し、各成分の画像に分離する。ここで、RGB空間は、色を赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3軸で表現したものであり、また、HSV空間は、色を色相(Hue)、色彩(Saturation)、明度(Value)の3軸で表現したものである。
【0027】
図6は、エッジ抽出部の構成例を示す図である。エッジ抽出部42は、分離部41で分離されたV画像(Vプレーン)からエッジを検出するエッジ検出部421と、所定の閾値で二値化する二値化部422と、二値化されたオブジェクトの境界画像を記憶する境界画像記憶部423とを備えている。
【0028】
エッジ検出部421は、Vプレーンにソーベルオペレータ(Sobel Operator)によるフィルタリングを行うことで、エッジを検出する。具体的には、入力画像の一次微分に次式に示すSobelフィルタを使用して、エッジの当り付けを行う。
【0029】
【数1】
【0030】
二値化部422は、Vプレーンのエッジ画像を予定の閾値と比較することで二値化し、その結果得られるVプレーンの二値化画像を境界画像記憶部423に供給する。
【0031】
また、明るさに偏ったVプレーンのみではなく、多くのコンポーネントを用いることにより、エッジ抽出性能を高めることができる。図7は、HSVの全てのコンポーネントを用いるエッジ抽出部の構成例を示す図である。このエッジ抽出部42は、HSVの全てについてエッジ検出部421H,421S,421V、二値化部422H,422S,422Vを有している。
【0032】
すなわち、H,S,Vプレーンから得られたエッジ画像は、エッジ検出部421H,421S,421Vから、二値化部422H,422S,422Vにそれぞれ供給される。二値化部422H,422S,422Vは、H,S,Vプレーンのエッジ画像を所定の閾値と比較することで二値化し、その結果得られるH,S,Vプレーンの二値化画像をOR処理部424に供給する。
【0033】
OR処理部424は、H,S,Vプレーンの二値化画像の各画素に対して、論理和をとり、境界画像を生成する。生成された境界画像は境界画像記憶部423に記憶される。
【0034】
また、L*a*b*(Luminescence alpha beta)、RGB、YUV(Yは輝度,U(Cb)は青の差分信号,V(Cr)は赤の差分信号を示す。)等の色空間でエッジ抽出をしてもよい。図8は、他のコンポーネントで処理した境界画像を示す図である。図8(A)はL*a*b*の境界画像であり、図8(B)はRGBの境界画像であり、図8(C)はVプレーンのみの境界画像である。
【0035】
これらの図から多くのコンポーネントを用いることにより、エッジ抽出性能を高めること可能であることが分かる。例えば、図8(C)に示すVプレーンのみの画像では、平担部aのノイズや外光反射部分bにおいてエッジのコントラスト低下が発生しているが、図8(A)に示すL*a*b*の境界画像や図8(B)に示すRGBの境界画像を組み合わせて用いることにより、平担部aや外光反射部分bのコントラストを高めることができる。例えば、図8(C)に示す外光反射部分bでは、エッジを抽出することが困難であるが、図8(A)に示すL*a*b*の境界画像の外光反射部分bによれば、エッジを抽出することができる。
【0036】
図9は、外光反射領域検出部43の構成例を示す図である。外光反射領域検出部43は、Vプレーンの変化部分検出部431と、変化部分の高明度領域検出部432と、高明度領域を切り出す外光反射領域切出部433とを備えている。
【0037】
変化部分検出部431は、Vプレーンから信号の急激な変化部分、すなわち周辺よりも明度が高い部分を検出する。高明度領域検出部432は、外部からの閾値(明度)により高明度領域を検出する。外光反射領域切出部433は、高明度領域を外光反射領域として切り出す。すなわち、外光反射領域検出部43は、図9に示すような構成で、Vプレーンから信号の急激な変化部分を検出し、そこに閾値を外部から与えることで、閾値以上の高明度領域を外光反射領域として切り出し、後段の拡張処理部44へと出力する。
【0038】
図10は、拡張処理部44の構成例を示す図である。拡張処理部44は、HSVの各プレーンについて、外光反射領域の近傍画素を抽出する近傍画素抽出部441H,441S,441Vと、外光反射領域の画素と近傍画素との類似性を判定する類似性判定部442H,442S,442Vとを備えている。また、類似性判定部442H,442S,442Vの判定結果から拡張するか否かを決定するOR処理部443と、OR処理の結果に応じて外光反射領域を拡張し、拡張外光反射領域を決定する領域拡張処理部444とを備えている。
【0039】
拡張処理部44は、外光反射領域検出部43で検出された外光反射領域を芯にして、そこから周辺に向けてエッジまで拡張する処理である。拡張するか否かは、周辺の着目画素が外光反射領域と類似性が有るか無いかで判断する。このように外光反射領域を拡張することにより、オブジェクトの中で光沢感を醸し出している材質の領域全体を抽出することができる。
【0040】
図11は、光沢度判定部45の構成例を示す図である。光沢度判定部45は、Rプレーン及びBプレーンについて、それぞれ拡張外光反射領域を切り出す領域切出部451R,451Bと、拡張外光反射領域の反射状態をクラス分類するクラス分類部452R,452Bと、Rプレーン及びBプレーンのクラス分類結果に応じて拡張外交反射領域の反射状態を決定する光沢度判別部453とを備えている。
【0041】
光沢度判定部45は、ある閾値以上の輝度値を持つ外光反射領域が拡張された拡張外光反射領域である光沢オブジェクト候補が、光沢を持ったオブジェクトなのか、それとも表面が乱反射しているオブジェクトなのか判定する。
【0042】
オブジェクト表面の光の乱反射には波長依存性があり、波長の短い紫外線が最も乱反射しやすく、表面の凹凸を読み取るのも紫外線が最も適している。乱反射の波長依存性は青〜緑〜赤の可視光領域にも及んでおり、RとBのプレーンで平坦部の凹凸の細かさが全く異なる場合、その原因は平坦部の材質が乱反射を起こす物質である可能性が極めて高い。
【0043】
そこで、RとBのプレーンだけで平坦部の凹凸を二次元的な特徴量に落とし込み、クラス分類部452R,452Bにてクラス分類に掛け、RとBの凹凸度合いが大きく異なる場合、すなわちRに対してBの凹凸が明らかに細かい場合は乱反射があるため、光沢度判別部453にて光沢無しと判断し、RとBの凹凸度合いにさほど差が無い場合は、乱反射がなく光沢有りと判断する。このようにして決定された光沢領域は、透明薄板2に光沢感制御信号として出力される。
【0044】
図12(A)は、光沢領域の画素位置(x,y)=(565,430)近傍のR等高線図であり、図12(B)は、光沢領域の画素位置(x,y)=(565,430)近傍のB等高線図である。これらRプレーン及びBプレーンの等高線(2bitADRC)図は、両者とも凹凸の度合いが小さいため光沢領域として決定される。
【0045】
また、図13(A)は、非光沢領域の画素位置(x,y)=(160,440)近傍のR等高線図であり、図13(B)は、非光沢領域の画素位置(x,y)=(160,440)近傍のB等高線図である。これらRプレーン及びBプレーンの等高線(2bitADRC)図は、両者とも凹凸の度合いが大きいため、乱反射が発生する非光沢領域として決定される。
【0046】
このようにRプレーン又はBプレーンの反射強度の凹凸の度合いに応じて分類し、光沢、非光沢を決定することにより、鏡面反射を起こす材質か乱反射を起こす材質かの質感を制御することができる。特に、B(Blue)は、R(Red)及びG(Green)に比べて波長が短く、乱反射を表し易いため、Bプレーンの等高線図の凹凸度合いを検出すれば、鏡面反射か乱反射かを判断することができる。
【0047】
図4に戻って、輝度値最適化部5について説明する。輝度値最適化部5は、原画像のRGB画像を入力し、光沢感制御部4からの光沢感制御信号に基づいて輝度値を補正(最適化)する。具体的には、光沢感制御部4で抽出された光沢領域についてコントラストやガンマを調整し、その結果に基づいて輝度値を補正する。例えば、光沢領域の輝度値を高くして画像信号を出力することにより、光沢感を高めることができる。このように写像性(鮮鋭度)を強調する機能(解像度感のエンハンス)を持たせることで、外光反射制御との相乗効果により、ユーザがオブジェクトに感じる光沢感を向上させることができる。
【0048】
以上のように光沢領域を抽出することにより、材質の質感を表現すのに適切な光沢領域を抽出することができる。また、入力画像のオブジェクト毎に表面反射(グレア/アンチグレア)を制御することができ、外光を利用してオブジェクトの光沢感を大幅に向上させることができる。また、オブジェクトの光沢感を細かく表現することができるため、光沢物の立体感をよりリアルに再現することができる。
【0049】
なお、このような画像処理は、プリンタ装置にも適用可能である。例えば、オブジェクト毎に鏡面反射か拡散反射かを判別し、判別結果に応じて粒度の異なるインクを用いることにより、材質の質感を紙面上で表現することができる。また、これらの画像処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の伝送媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。
【0050】
(透明薄板) 次に、透明薄板2の具体例について説明する。透明薄板2は、ディスプレイ装置の前面に位置し、微細な大きさで2次元アレイ状に区切ることで各々の区切り単位毎に表面が鏡面反射(グレア)か拡散反射(アンチグレア)かを切り替えられる機能を有し、視聴環境上の外光反射を制御することでディスプレイ装置の表示画像の光沢感を制御する。具体的には、透明薄板2の表面粗さを所定領域毎に変化させる。ここで、透明薄板2は、開口率75%以上の透過型であることが好ましい。また、画素(微小領域)毎に鏡面反射と乱反射とをアクティブ制御可能なものが好ましく、8ms以下で高速応答するものが好ましい。
【0051】
また、透明薄板2のアンチグレア表面の凹凸の算術平均粗さRaは、0.05μm〜0.25μm程度であることが好ましい。この範囲内の算術平均粗さRaにより、意図する乱反射を得ることができる。なお、凹凸の算術平均粗さRaは、下記式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を表したものである。
【0052】
【数2】
【0053】
また、透明薄板2のアンチグレア表面の凹凸の平均間隔Smは、30μm〜60μm程度であることが好ましい。この範囲内の平均間隔Smにより、画素と干渉して解像度が低下することや、ざらつきになってしまうことを防ぐことができる。なお、凹凸の平均間隔は、下記式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値をミリメートル(mm)で表したものである。
【0054】
【数3】
【0055】
図14は、透明薄板2の第1の具体例を示す図である。第1の具体例は、透明薄板2をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製したものである。MEMS技術を用いたディスプレイ装置については、論文(泰井、肥後「プラスチックMEMS技術を用いた透過型カラーディスプレイ」(電気学会マイクロマシン・センサシステム研究会平成18年5月、MSS−06−27)等を参照することができる。
【0056】
この透明薄板2は、透明基板211と、下部透明電極212と、透明スペンサ213と、上部透明電極214と、透明フィルム215とがこの順番で積層されている。
【0057】
透明基板211は、ガラス基板等から形成されている。下部透明電極212は、ITO(酸化インジウムスズ)等から成り、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。透明スペンサ213は、シリコン酸化膜等から成り、画素に対応して格子状に形成され、各格子内に空気層を形成する。透明フィルム215は、SiN、SiC、ダイヤモンド、透明な高分子等の柔軟性を有するメンブレンであり、電圧オンの状態と電圧オフの状態により空気層のある状態とない状態とを切り替え、表面粗さを変化せることができる。
【0058】
作製方法は、まず透明基板211上に下部透明電極212となる例えばIn−Zn−O系金属を真空蒸着する。その上に絶縁膜である例えばシリコン酸化膜をスパッタリングにより成膜する。さらにその上に空気層を形成するための透明スペンサ213をスピンコートにより成膜し、画素サイズに合わせてパターニングする。上部電極214は、例えば高分子膜のPEN(polyethylene naphthalate)フィルム上に真空蒸着により成膜され、最後に下部基板と貼り合わされる。
【0059】
図14(A)は電圧オフの透明薄板2の状態を示す断面図であり、図14(B)は電圧オンの透明薄板2の状態を示す断面図である。電圧オフの状態では、透明フィルム215が張っているためグレア(鏡面反射)となる。一方、電圧オンの状態では、静電引力により透明フィルム215がたわんで凸凹となり、拡散反射が起きてアンチグレアになる。
【0060】
このように透明薄板2にMEMS技術を用いることにより、液晶の数千倍の高速応答(1μs)を実現することができ、入力画像のオブジェクト毎に表面反射(グレア/アンチグレア)を制御することができる。
【0061】
図15は、透明薄板2の第2の具体例を示す図である。第2の具体例は、透明薄板2の表面の突起物(起毛)を電界により動作させるものである。電圧(電界)で突起物を動作させる方法として、特表2007−511669号公報を参照することができる。
【0062】
この透明薄板2は、透明導電板221と、起毛222とがこの順番で積層されている。透明導電板221は、ITO等から成り、画素に対応して複数に分割され、それぞれ独立に通電可能となっている。起毛222は、ポリエステル等の透明な高分子から成り、正の電荷又は負の電荷に帯電している。
【0063】
図15(A)は電圧オフの透明薄板2の状態を示す断面図であり、図15(B)は電圧オンの透明薄板2の状態を示す断面図である。電圧オフの状態では、透明薄板2と垂直方向に起毛222が植毛されているため、入射光が起毛222によって拡散反射される。一方、電圧がオンの状態では、電界が生じるため、起毛222が寝てグレア(鏡面反射)となる。
【0064】
このように正又は負に帯電した起毛を電界により動作させることにより、表面反射を制御することができる。なお、電源の極性を反転することにより、起毛を動作させることとしてもよい。
【0065】
図16は、透明薄板2の第3の具体例を示す図である。第3の具体例は、温度により状態変化する物質を透明薄板2に用い、温度により表面反射を制御するものである。この透明薄板2は、透明物質231と、加熱素子232とがこの順番で積層されている。また、透明薄板2と反対側の表示パネル3には、冷却素子233が貼着されている。
【0066】
透明物質231は、温度により液体(又はゲル)と固体(又はゾル)に可逆的に変化する透明な高分子を用いることができる。このような高分子としては、例えば、疎水化ポリエチレングリコールを挙げることができる。加熱素子232は、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。この加熱素子232としては、例えば、ITOの抵抗値を調整したものを用いることができる。冷却素子233は、例えば、ペルチエ素子等から成り、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。なお、冷却素子が微小領域毎に配置することができない場合、画面の全面に配置した上、非表示期間(垂直ブランキング期間)に冷却を行ってもよい。
【0067】
図16(A)は冷却時の透明薄板2の状態を示す断面図であり、図16(B)は加熱時の透明薄板2の状態を示す断面図である。冷却状態では、透明物質231が固体(又はゾル)状態となるため、入射光が透明物質231によって拡散反射される。一方、加熱状態では、透明物質231が液体(又はゲル)状態となるため、入射光が透明物質231によって鏡面反射される。
【0068】
このように温度変換により状態変化が生じる物質を用いることにより、表面反射を制御することができる。このようなデバイスは、応答速度を問題としない大型の電子広告板等に用いることができる。
【0069】
また、上述した第1〜第3の具体例は、透明薄板2の表面状態が物理的に変化するものであるため、図17に示すように透明薄板2上に保護ネット21を設け、指やほこりが透明薄板2の表面に接触することを防止することが望ましい。
【0070】
以上のようにディスプレイ装置の画面上において、透明薄板2が非常に微細な領域まで光沢/非光沢を制御するため、光沢感の有無の表現を従来よりも向上させることができる。また、透明薄板2は、ディスプレイ装置の表面に追加すればよく、また、
後付けも可能であり、表示デバイスの種類を問わず応用製品の範囲が非常に広い。
【0071】
[第2の実施の形態]
図18は、第2の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態のように表面反射特性をアクティブに変える透明薄板2の代わりに、表面反射特性が固定された透明薄板6を用い、反射特性が異なる画素の発光を制御するようにしたものである。例えば、オブジェクトが光沢物である場合、表面粗さが小さい領域に対応する画素を発光させてオブジェクトを表示する。なお、第1の実施の形態に係る表示装置と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
第2の実施の形態に係る表示装置は、入力画像信号から画像の光沢領域を検出し、検出結果に基づいて透明薄板2に光沢感制御信号を出力すると共に、出力画像信号を出力する光沢感処理部1と、表示パネル3の前面に設けられ、所定領域毎に反射特性が固定された透明薄板6と、光沢感制御信号に基づいて反射特性が固定された所定領域を選択する領域選択部7と、選択された反射特性の画素を発光させ、画像を表示する表示パネル3とを備えている。
【0073】
光沢感処理部1は、第1の実施の形態と同様であり、入力画像信号からオブジェクト毎に光沢領域か非光沢領域かを判別し、光沢領域を鏡面反射(グレア)させ、非光沢領域を拡散反射(アンチグレア)させる光沢感制御信号を領域選択部7に出力する。また、光沢感処理部1は、光沢領域及び非光沢領域が明瞭となるように入力画像信号の輝度情報等を最適化する。
【0074】
領域選択部7は、光沢感制御信号に基づいて透明薄板6上のグレア領域、アンチグレア領域の少なくとも一方を発光させるように出力画像信号を表示パネル3に出力する。また、領域選択部7は、透明薄板6の微小な区切り単位のグレア/アンチグレアの位置と、表示パネル3の画素位置(x,y)との対応関係を、ROM等に記憶している。
【0075】
透明薄板6は、図19に示すように、表面が微細な大きさ毎に鏡面反射(グレア)と拡散反射(アンチグレア)の各々の領域に仕切られている。例えば、表示パネル31がグレアの場合、アンチグレアの薄板(シート)61に穴aを開けることで、穴aの開いた領域は、グレアの表面状態(透明薄板6とは逆の反射特性)となり、穴aの開いてない領域と合せて、2つの反射特性を持つことができる。
【0076】
このようにグレア(又はアンチグレア)な薄板に微少な穴開け加工を施すことにより、容易にグレア/アンチグレアの領域を分けることができる。なお、この穴開け方式の場合、穴aの断面が光を屈折する可能性があり、穴aの断面部は遮光することが好ましい。
【0077】
また、透明薄板6のアンチグレア領域の凹凸の算術平均粗さRaは、0.05μm〜0.25μm程度であることが好ましい。この範囲内の算術平均粗さRaにより、意図する乱反射を得ることができる。なお、凹凸の算術平均粗さRaは、上記(1)式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を表したものである。
【0078】
また、透明薄板6のアンチグレア領域の凹凸の平均間隔Smは、30μm〜60μm程度であることが好ましい。この範囲内の平均間隔Smにより、画素と干渉して解像度が低下することや、ざらつきになってしまうことを防ぐことができる。なお、凹凸の平均間隔は、上記(2)式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値を表したものである。
【0079】
また、透明薄板6のグレア/アンチグレアの領域は画面全体に亘って均一に配置されていることが好ましい。例えば、市松模様、水玉模様、格子模様、縞模様等に各領域が配置されていることが好ましい。特に、画素毎に市松模様にグレア/アンチグレアの領域を配置することにより、解像度を高めることができる。
【0080】
このような透明薄板6は、例えば、グレア表面に市松模様にマスキングしてアンチグレア材料を塗布し、マスキングを除去することにより作製することができる。アンチグレア材料としては、例えば、ルシフラール(商標)NAG(日本ペイント社製)等を用いることができる。
【0081】
図20は、透明薄板6の表面反射特性の制御を説明するための図である。この透明薄板6は、画素に対応してマトリクス状にグレア面とアンチグレア面とを配置したものである。具体的には、表示パネル31がグレアの場合、アンチグレアの薄板61に対応するアンチグレア画素31a及び穴aに対応するグレア画素31bの発光を制御することにより、表面反射特性を制御する。
【0082】
例えば、図20(A)に示すようにグレア画素31bを発光させた場合、入射光が鏡面反射されるため、グレア画素31bで表示されたオブジェクトに光沢感を与えることができる。また、図20(B)に示すようにアンチグレア画素31aを発光させた場合、入射光が拡散反射されるため、アンチグレア画素31aで表示されたオブジェクトの光沢を防ぐことができる。また、図20(C)に示すようにアンチグレア画素a及びグレア画素31bを発光させた場合、入射光が鏡面反射と拡散反射の両方になるため、オブジェクトに中間的な光沢感を与えることができる。
【0083】
このように光沢オブジェクトに関してはグレア領域下部の画素のみを選択して発光させ、非光沢オブジェクトに関してはアンチグレア領域下部の画素のみを選択して発光させることにより、画像(オブジェクト)の光沢感と立体感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】透明薄板及び表示パネルの構成を模式的に示す図である。
【図3】透明薄板に入射される入射光と反射光とを模式的に示す図である。
【図4】光沢感処理部の構成を示す図である。
【図5】光沢感処理部の処理を説明するための図である。
【図6】エッジ抽出部の構成例を示す図である。
【図7】エッジ抽出部の他の構成例を示す図である。
【図8】他のコンポーネントで処理した境界画像を示す図である。
【図9】外光反射領域検出部の構成例を示す図である。
【図10】拡張処理部の構成例を示す図である。
【図11】光沢度判定部の構成例を示す図である。
【図12】光沢領域の等高線図である。
【図13】非光沢領域の等高線図である。
【図14】透明薄板の第1の具体例を示す図である。
【図15】透明薄板の第2の具体例を示す図である。
【図16】透明薄板の第3の具体例を示す図である。
【図17】透明薄板上に保護ネットを設ける例を示す図である。
【図18】第2の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。
【図19】透明薄板及び表示パネルの構成を模式的に示す図である。
【図20】透明薄板の表面反射特性の制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1 光沢感処理部、2 透明薄板、3 表示パネル、4 光沢感制御部、5 輝度値最適化部、6 透明薄板、7 領域選択部、21 保護ネット、31 表示パネル、41 分離部、42 エッジ抽出部、43 外光反射領域検出部、44 拡張処理部、45 光沢度判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射特性を切り替え可能な反射特性制御層及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置等で表示画像中の対象物(オブジェクト)の質感を高める目的で、画面表面に均一グレア処理を施すものがある。これは表面がグレアの鏡面反射であるため、アンチグレアの拡散反射に比べて外光により実質的な白レベルが上がると共に黒レベルが下がり、ダイナミックレンジが拡大する効果を利用するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2002−51226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大型のディスプレイでは、外光が映り込むことで画面の均一性が損なわれ、見る人の疲労感が増すといった理由から、グレア処理が施されることがほとんどなく、表示画像中のオブジェクトの光沢感や立体感が損なわれていた。
【0005】
また、プリンタ装置においては、入力画像から光源又は光源の写り込みの光沢領域を検出し、光沢感(グレア/アンチグレア)を出力印画紙上で表すことが提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、ディスプレイ装置においては、入力画像に応じてグレアとアンチグレアを動的に切り替え可能なものは提案されていない。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、オブジェクトの光沢感及び立体感を高めることができる反射特性制御層及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明に係る反射特性制御層は、表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る反射特性制御層は、表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る表示装置は、表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層と、入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を切り替える制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る表示装置は、表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層と、入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を、上記表示画面の画素を発光させて選択する制御手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力画像の光沢領域に応じて表示画面の前面に配される反射特性制御層の反射特性を変化させることにより、オブジェクトの光沢感及び立体感を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。人はディスプレイに表示されたオブジェクトの光沢感を、正反射光強度(光沢度)と写像性より評価している。光沢度と写像性との重み付けは3:4でやや写像性(鮮鋭度)が優っているものの、正反射光強度(光沢度)も重要な要素である(FUJI FILM RESEARCH & DEVELOPMENT(No.51−2006)『高画質インクジェット超光沢受像紙 画彩「写真仕上げPro」の開発』参照。)。本実施の形態では、ディスプレイにおける外光反射(≒正反射光強度)を制御することで、オブジェクトの光沢感を制御する。
【0013】
[第1の実施の形態]
(全体構成) 図1は、第1の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。この表示装置は、入力画像信号から画像の光沢領域を検出し、検出結果に基づいて透明薄板2に光沢感制御信号を出力すると共に、出力画像信号を表示パネル3に出力する光沢感処理部1と、表示パネル3の前面に設けられ、所定領域毎に反射特性を切り替え可能な透明薄板2と、画像を表示する表示パネル3とを備えている。
【0014】
光沢感処理部1は、入力画像信号からオブジェクト毎に光沢領域か非光沢領域かを判別し、光沢領域を鏡面反射(グレア)させ、非光沢領域を拡散反射(アンチグレア)させる光沢感制御信号を透明薄板2に出力する。また、光沢感処理部1は、光沢領域及び非光沢領域が明瞭となるように入力画像信号の輝度情報等を最適化する。
【0015】
透明薄板2は、表示パネル3の前面に位置する透明な反射特性制御層であり、微細な大きさで区切られ、区切り単位毎に鏡面反射と拡散反射とが切り替え可能となっている。そして、透明薄板2の前面への外光反射を区切り単位毎に制御することで、表示画像のオブジェクト毎に光沢感を制御する。
【0016】
表示パネル3は、画像を表示するディスプレイ装置の液晶パネルやプラズマパネル等に相当するものである。
【0017】
この表示装置は、透明薄板2が微小領域毎に表面反射特性が変わるアクティブなアクチュエータを構成し、光沢感処理部1が透明薄板2に対し光沢感制御信号を供給すると共に表示パネル3に光沢感制御信号に同調した輝度補正した映像信号を供給するため、両者の協調によって光沢感・立体感を向上させることができる。
【0018】
図2は、透明薄板2及び表示パネル3の構成を模式的に示す図である。透明薄板2は、鏡面反射(グレア)と拡散反射(アンチグレア)とを切替える機能(アクティブ・アクチュエータ)を有しており、表示パネル3の前面に配置されている。鏡面反射か拡散反射かの表面状態を切り替えるアクティブ・アクチュエータは、数画素×数画素毎に配置されていることが好ましく、特に、図2の構成例のように画素毎に配置されていることが好ましい。
【0019】
図3は、透明薄板2に入射される入射光と反射光とを模式的に示す図である。図3
(A)に示すように、透明薄板2の表面状態が平坦の場合、入射光を鏡面反射し、画像の光沢感を高めることができる。一方、図3(B)に示すように、透明薄板2の表面状態が凹凸の場合、入所光を乱反射し、外光の映り込みを防ぐことができる。
【0020】
透明薄板2を領域毎に動的にグレア/アンチグレアに変化させる仕組みについては後述するが、例えば、電圧(電界)による物理的な状態変化を利用して制御する方法や、電流による熱的・化学的な状態変化を利用して制御する方法を用いることができる。
【0021】
このように表示画面の前面を領域毎に動的にグレア/アンチグレアと変えることで、外光により画像の実質的なダイナミックレンジを拡大し、画像(オブジェクト)の光沢感と立体感を高めることができる。
【0022】
(光沢感処理部) 次に、入力画像から光沢領域を抽出する光沢感処理部1について説明する。本実施の形態における光沢オブジェクトの抽出は、光沢領域だけを抽出するのではなく、オブジェクトの中で光沢感を醸し出している材質の領域全体を抽出するものである。光沢オブジェクト抽出は、例えば、特開2002−51226号公報に記載された技術を用いることができる。
【0023】
図4は、光沢感処理部1の構成を示す図であり、図5は、光沢感処理部1の処理を説明するための図である。光沢感処理部1は、透明薄板2の表面反射特性を制御する光沢感制御部4と、透明薄板2の表面反射に合わせて輝度値を最適化する輝度値最適化部5とを備えている。
【0024】
また、光沢感制御部4は、入力画像信号の色空間を分離する分離部41と、オブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出部42と、外光反射領域を検出する外光反射領域検出部43と、外光反射領域をエッジまで拡張する拡張処理部44と、拡張された光沢領域の光沢度を判定する光沢度判定部45とを備えている。
【0025】
例えば、図5(A)に示す原画像は、分離部41にて色空間が変換され、所定成分に分離される。エッジ抽出部42は、図5(B)に示すように画像からオブジェクトのエッジを抽出する。外光反射領域検出部43は、所定成分の画像から外光反射領域を検出する(図5(C))。拡張処理部44は、抽出されたエッジと検出された外光反射領域とから、図5(D)に示すように外光反射領域をエッジまで拡張する。このようにして拡張された光沢領域は、光沢度判定部45にて鏡面反射か乱反射かが判別され、光沢感制御信号が透明薄板2に出力されることにより、光沢領域の材質の質感を高めることができる(図5(E))。
【0026】
以下、光沢感処理部1の各構成部について図6〜図13を参照して説明する。
分離部41は、RGB成分などを持つマルチチャンネル画像から特定のチャンネル成分を分離する。具体的には、入力画像信号のRGB色空間をHSV色空間に変換し、各成分の画像に分離する。ここで、RGB空間は、色を赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3軸で表現したものであり、また、HSV空間は、色を色相(Hue)、色彩(Saturation)、明度(Value)の3軸で表現したものである。
【0027】
図6は、エッジ抽出部の構成例を示す図である。エッジ抽出部42は、分離部41で分離されたV画像(Vプレーン)からエッジを検出するエッジ検出部421と、所定の閾値で二値化する二値化部422と、二値化されたオブジェクトの境界画像を記憶する境界画像記憶部423とを備えている。
【0028】
エッジ検出部421は、Vプレーンにソーベルオペレータ(Sobel Operator)によるフィルタリングを行うことで、エッジを検出する。具体的には、入力画像の一次微分に次式に示すSobelフィルタを使用して、エッジの当り付けを行う。
【0029】
【数1】
【0030】
二値化部422は、Vプレーンのエッジ画像を予定の閾値と比較することで二値化し、その結果得られるVプレーンの二値化画像を境界画像記憶部423に供給する。
【0031】
また、明るさに偏ったVプレーンのみではなく、多くのコンポーネントを用いることにより、エッジ抽出性能を高めることができる。図7は、HSVの全てのコンポーネントを用いるエッジ抽出部の構成例を示す図である。このエッジ抽出部42は、HSVの全てについてエッジ検出部421H,421S,421V、二値化部422H,422S,422Vを有している。
【0032】
すなわち、H,S,Vプレーンから得られたエッジ画像は、エッジ検出部421H,421S,421Vから、二値化部422H,422S,422Vにそれぞれ供給される。二値化部422H,422S,422Vは、H,S,Vプレーンのエッジ画像を所定の閾値と比較することで二値化し、その結果得られるH,S,Vプレーンの二値化画像をOR処理部424に供給する。
【0033】
OR処理部424は、H,S,Vプレーンの二値化画像の各画素に対して、論理和をとり、境界画像を生成する。生成された境界画像は境界画像記憶部423に記憶される。
【0034】
また、L*a*b*(Luminescence alpha beta)、RGB、YUV(Yは輝度,U(Cb)は青の差分信号,V(Cr)は赤の差分信号を示す。)等の色空間でエッジ抽出をしてもよい。図8は、他のコンポーネントで処理した境界画像を示す図である。図8(A)はL*a*b*の境界画像であり、図8(B)はRGBの境界画像であり、図8(C)はVプレーンのみの境界画像である。
【0035】
これらの図から多くのコンポーネントを用いることにより、エッジ抽出性能を高めること可能であることが分かる。例えば、図8(C)に示すVプレーンのみの画像では、平担部aのノイズや外光反射部分bにおいてエッジのコントラスト低下が発生しているが、図8(A)に示すL*a*b*の境界画像や図8(B)に示すRGBの境界画像を組み合わせて用いることにより、平担部aや外光反射部分bのコントラストを高めることができる。例えば、図8(C)に示す外光反射部分bでは、エッジを抽出することが困難であるが、図8(A)に示すL*a*b*の境界画像の外光反射部分bによれば、エッジを抽出することができる。
【0036】
図9は、外光反射領域検出部43の構成例を示す図である。外光反射領域検出部43は、Vプレーンの変化部分検出部431と、変化部分の高明度領域検出部432と、高明度領域を切り出す外光反射領域切出部433とを備えている。
【0037】
変化部分検出部431は、Vプレーンから信号の急激な変化部分、すなわち周辺よりも明度が高い部分を検出する。高明度領域検出部432は、外部からの閾値(明度)により高明度領域を検出する。外光反射領域切出部433は、高明度領域を外光反射領域として切り出す。すなわち、外光反射領域検出部43は、図9に示すような構成で、Vプレーンから信号の急激な変化部分を検出し、そこに閾値を外部から与えることで、閾値以上の高明度領域を外光反射領域として切り出し、後段の拡張処理部44へと出力する。
【0038】
図10は、拡張処理部44の構成例を示す図である。拡張処理部44は、HSVの各プレーンについて、外光反射領域の近傍画素を抽出する近傍画素抽出部441H,441S,441Vと、外光反射領域の画素と近傍画素との類似性を判定する類似性判定部442H,442S,442Vとを備えている。また、類似性判定部442H,442S,442Vの判定結果から拡張するか否かを決定するOR処理部443と、OR処理の結果に応じて外光反射領域を拡張し、拡張外光反射領域を決定する領域拡張処理部444とを備えている。
【0039】
拡張処理部44は、外光反射領域検出部43で検出された外光反射領域を芯にして、そこから周辺に向けてエッジまで拡張する処理である。拡張するか否かは、周辺の着目画素が外光反射領域と類似性が有るか無いかで判断する。このように外光反射領域を拡張することにより、オブジェクトの中で光沢感を醸し出している材質の領域全体を抽出することができる。
【0040】
図11は、光沢度判定部45の構成例を示す図である。光沢度判定部45は、Rプレーン及びBプレーンについて、それぞれ拡張外光反射領域を切り出す領域切出部451R,451Bと、拡張外光反射領域の反射状態をクラス分類するクラス分類部452R,452Bと、Rプレーン及びBプレーンのクラス分類結果に応じて拡張外交反射領域の反射状態を決定する光沢度判別部453とを備えている。
【0041】
光沢度判定部45は、ある閾値以上の輝度値を持つ外光反射領域が拡張された拡張外光反射領域である光沢オブジェクト候補が、光沢を持ったオブジェクトなのか、それとも表面が乱反射しているオブジェクトなのか判定する。
【0042】
オブジェクト表面の光の乱反射には波長依存性があり、波長の短い紫外線が最も乱反射しやすく、表面の凹凸を読み取るのも紫外線が最も適している。乱反射の波長依存性は青〜緑〜赤の可視光領域にも及んでおり、RとBのプレーンで平坦部の凹凸の細かさが全く異なる場合、その原因は平坦部の材質が乱反射を起こす物質である可能性が極めて高い。
【0043】
そこで、RとBのプレーンだけで平坦部の凹凸を二次元的な特徴量に落とし込み、クラス分類部452R,452Bにてクラス分類に掛け、RとBの凹凸度合いが大きく異なる場合、すなわちRに対してBの凹凸が明らかに細かい場合は乱反射があるため、光沢度判別部453にて光沢無しと判断し、RとBの凹凸度合いにさほど差が無い場合は、乱反射がなく光沢有りと判断する。このようにして決定された光沢領域は、透明薄板2に光沢感制御信号として出力される。
【0044】
図12(A)は、光沢領域の画素位置(x,y)=(565,430)近傍のR等高線図であり、図12(B)は、光沢領域の画素位置(x,y)=(565,430)近傍のB等高線図である。これらRプレーン及びBプレーンの等高線(2bitADRC)図は、両者とも凹凸の度合いが小さいため光沢領域として決定される。
【0045】
また、図13(A)は、非光沢領域の画素位置(x,y)=(160,440)近傍のR等高線図であり、図13(B)は、非光沢領域の画素位置(x,y)=(160,440)近傍のB等高線図である。これらRプレーン及びBプレーンの等高線(2bitADRC)図は、両者とも凹凸の度合いが大きいため、乱反射が発生する非光沢領域として決定される。
【0046】
このようにRプレーン又はBプレーンの反射強度の凹凸の度合いに応じて分類し、光沢、非光沢を決定することにより、鏡面反射を起こす材質か乱反射を起こす材質かの質感を制御することができる。特に、B(Blue)は、R(Red)及びG(Green)に比べて波長が短く、乱反射を表し易いため、Bプレーンの等高線図の凹凸度合いを検出すれば、鏡面反射か乱反射かを判断することができる。
【0047】
図4に戻って、輝度値最適化部5について説明する。輝度値最適化部5は、原画像のRGB画像を入力し、光沢感制御部4からの光沢感制御信号に基づいて輝度値を補正(最適化)する。具体的には、光沢感制御部4で抽出された光沢領域についてコントラストやガンマを調整し、その結果に基づいて輝度値を補正する。例えば、光沢領域の輝度値を高くして画像信号を出力することにより、光沢感を高めることができる。このように写像性(鮮鋭度)を強調する機能(解像度感のエンハンス)を持たせることで、外光反射制御との相乗効果により、ユーザがオブジェクトに感じる光沢感を向上させることができる。
【0048】
以上のように光沢領域を抽出することにより、材質の質感を表現すのに適切な光沢領域を抽出することができる。また、入力画像のオブジェクト毎に表面反射(グレア/アンチグレア)を制御することができ、外光を利用してオブジェクトの光沢感を大幅に向上させることができる。また、オブジェクトの光沢感を細かく表現することができるため、光沢物の立体感をよりリアルに再現することができる。
【0049】
なお、このような画像処理は、プリンタ装置にも適用可能である。例えば、オブジェクト毎に鏡面反射か拡散反射かを判別し、判別結果に応じて粒度の異なるインクを用いることにより、材質の質感を紙面上で表現することができる。また、これらの画像処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の伝送媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。
【0050】
(透明薄板) 次に、透明薄板2の具体例について説明する。透明薄板2は、ディスプレイ装置の前面に位置し、微細な大きさで2次元アレイ状に区切ることで各々の区切り単位毎に表面が鏡面反射(グレア)か拡散反射(アンチグレア)かを切り替えられる機能を有し、視聴環境上の外光反射を制御することでディスプレイ装置の表示画像の光沢感を制御する。具体的には、透明薄板2の表面粗さを所定領域毎に変化させる。ここで、透明薄板2は、開口率75%以上の透過型であることが好ましい。また、画素(微小領域)毎に鏡面反射と乱反射とをアクティブ制御可能なものが好ましく、8ms以下で高速応答するものが好ましい。
【0051】
また、透明薄板2のアンチグレア表面の凹凸の算術平均粗さRaは、0.05μm〜0.25μm程度であることが好ましい。この範囲内の算術平均粗さRaにより、意図する乱反射を得ることができる。なお、凹凸の算術平均粗さRaは、下記式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を表したものである。
【0052】
【数2】
【0053】
また、透明薄板2のアンチグレア表面の凹凸の平均間隔Smは、30μm〜60μm程度であることが好ましい。この範囲内の平均間隔Smにより、画素と干渉して解像度が低下することや、ざらつきになってしまうことを防ぐことができる。なお、凹凸の平均間隔は、下記式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値をミリメートル(mm)で表したものである。
【0054】
【数3】
【0055】
図14は、透明薄板2の第1の具体例を示す図である。第1の具体例は、透明薄板2をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製したものである。MEMS技術を用いたディスプレイ装置については、論文(泰井、肥後「プラスチックMEMS技術を用いた透過型カラーディスプレイ」(電気学会マイクロマシン・センサシステム研究会平成18年5月、MSS−06−27)等を参照することができる。
【0056】
この透明薄板2は、透明基板211と、下部透明電極212と、透明スペンサ213と、上部透明電極214と、透明フィルム215とがこの順番で積層されている。
【0057】
透明基板211は、ガラス基板等から形成されている。下部透明電極212は、ITO(酸化インジウムスズ)等から成り、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。透明スペンサ213は、シリコン酸化膜等から成り、画素に対応して格子状に形成され、各格子内に空気層を形成する。透明フィルム215は、SiN、SiC、ダイヤモンド、透明な高分子等の柔軟性を有するメンブレンであり、電圧オンの状態と電圧オフの状態により空気層のある状態とない状態とを切り替え、表面粗さを変化せることができる。
【0058】
作製方法は、まず透明基板211上に下部透明電極212となる例えばIn−Zn−O系金属を真空蒸着する。その上に絶縁膜である例えばシリコン酸化膜をスパッタリングにより成膜する。さらにその上に空気層を形成するための透明スペンサ213をスピンコートにより成膜し、画素サイズに合わせてパターニングする。上部電極214は、例えば高分子膜のPEN(polyethylene naphthalate)フィルム上に真空蒸着により成膜され、最後に下部基板と貼り合わされる。
【0059】
図14(A)は電圧オフの透明薄板2の状態を示す断面図であり、図14(B)は電圧オンの透明薄板2の状態を示す断面図である。電圧オフの状態では、透明フィルム215が張っているためグレア(鏡面反射)となる。一方、電圧オンの状態では、静電引力により透明フィルム215がたわんで凸凹となり、拡散反射が起きてアンチグレアになる。
【0060】
このように透明薄板2にMEMS技術を用いることにより、液晶の数千倍の高速応答(1μs)を実現することができ、入力画像のオブジェクト毎に表面反射(グレア/アンチグレア)を制御することができる。
【0061】
図15は、透明薄板2の第2の具体例を示す図である。第2の具体例は、透明薄板2の表面の突起物(起毛)を電界により動作させるものである。電圧(電界)で突起物を動作させる方法として、特表2007−511669号公報を参照することができる。
【0062】
この透明薄板2は、透明導電板221と、起毛222とがこの順番で積層されている。透明導電板221は、ITO等から成り、画素に対応して複数に分割され、それぞれ独立に通電可能となっている。起毛222は、ポリエステル等の透明な高分子から成り、正の電荷又は負の電荷に帯電している。
【0063】
図15(A)は電圧オフの透明薄板2の状態を示す断面図であり、図15(B)は電圧オンの透明薄板2の状態を示す断面図である。電圧オフの状態では、透明薄板2と垂直方向に起毛222が植毛されているため、入射光が起毛222によって拡散反射される。一方、電圧がオンの状態では、電界が生じるため、起毛222が寝てグレア(鏡面反射)となる。
【0064】
このように正又は負に帯電した起毛を電界により動作させることにより、表面反射を制御することができる。なお、電源の極性を反転することにより、起毛を動作させることとしてもよい。
【0065】
図16は、透明薄板2の第3の具体例を示す図である。第3の具体例は、温度により状態変化する物質を透明薄板2に用い、温度により表面反射を制御するものである。この透明薄板2は、透明物質231と、加熱素子232とがこの順番で積層されている。また、透明薄板2と反対側の表示パネル3には、冷却素子233が貼着されている。
【0066】
透明物質231は、温度により液体(又はゲル)と固体(又はゾル)に可逆的に変化する透明な高分子を用いることができる。このような高分子としては、例えば、疎水化ポリエチレングリコールを挙げることができる。加熱素子232は、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。この加熱素子232としては、例えば、ITOの抵抗値を調整したものを用いることができる。冷却素子233は、例えば、ペルチエ素子等から成り、画素に対応して複数に分割され、独立に制御可能となっている。なお、冷却素子が微小領域毎に配置することができない場合、画面の全面に配置した上、非表示期間(垂直ブランキング期間)に冷却を行ってもよい。
【0067】
図16(A)は冷却時の透明薄板2の状態を示す断面図であり、図16(B)は加熱時の透明薄板2の状態を示す断面図である。冷却状態では、透明物質231が固体(又はゾル)状態となるため、入射光が透明物質231によって拡散反射される。一方、加熱状態では、透明物質231が液体(又はゲル)状態となるため、入射光が透明物質231によって鏡面反射される。
【0068】
このように温度変換により状態変化が生じる物質を用いることにより、表面反射を制御することができる。このようなデバイスは、応答速度を問題としない大型の電子広告板等に用いることができる。
【0069】
また、上述した第1〜第3の具体例は、透明薄板2の表面状態が物理的に変化するものであるため、図17に示すように透明薄板2上に保護ネット21を設け、指やほこりが透明薄板2の表面に接触することを防止することが望ましい。
【0070】
以上のようにディスプレイ装置の画面上において、透明薄板2が非常に微細な領域まで光沢/非光沢を制御するため、光沢感の有無の表現を従来よりも向上させることができる。また、透明薄板2は、ディスプレイ装置の表面に追加すればよく、また、
後付けも可能であり、表示デバイスの種類を問わず応用製品の範囲が非常に広い。
【0071】
[第2の実施の形態]
図18は、第2の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態のように表面反射特性をアクティブに変える透明薄板2の代わりに、表面反射特性が固定された透明薄板6を用い、反射特性が異なる画素の発光を制御するようにしたものである。例えば、オブジェクトが光沢物である場合、表面粗さが小さい領域に対応する画素を発光させてオブジェクトを表示する。なお、第1の実施の形態に係る表示装置と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
第2の実施の形態に係る表示装置は、入力画像信号から画像の光沢領域を検出し、検出結果に基づいて透明薄板2に光沢感制御信号を出力すると共に、出力画像信号を出力する光沢感処理部1と、表示パネル3の前面に設けられ、所定領域毎に反射特性が固定された透明薄板6と、光沢感制御信号に基づいて反射特性が固定された所定領域を選択する領域選択部7と、選択された反射特性の画素を発光させ、画像を表示する表示パネル3とを備えている。
【0073】
光沢感処理部1は、第1の実施の形態と同様であり、入力画像信号からオブジェクト毎に光沢領域か非光沢領域かを判別し、光沢領域を鏡面反射(グレア)させ、非光沢領域を拡散反射(アンチグレア)させる光沢感制御信号を領域選択部7に出力する。また、光沢感処理部1は、光沢領域及び非光沢領域が明瞭となるように入力画像信号の輝度情報等を最適化する。
【0074】
領域選択部7は、光沢感制御信号に基づいて透明薄板6上のグレア領域、アンチグレア領域の少なくとも一方を発光させるように出力画像信号を表示パネル3に出力する。また、領域選択部7は、透明薄板6の微小な区切り単位のグレア/アンチグレアの位置と、表示パネル3の画素位置(x,y)との対応関係を、ROM等に記憶している。
【0075】
透明薄板6は、図19に示すように、表面が微細な大きさ毎に鏡面反射(グレア)と拡散反射(アンチグレア)の各々の領域に仕切られている。例えば、表示パネル31がグレアの場合、アンチグレアの薄板(シート)61に穴aを開けることで、穴aの開いた領域は、グレアの表面状態(透明薄板6とは逆の反射特性)となり、穴aの開いてない領域と合せて、2つの反射特性を持つことができる。
【0076】
このようにグレア(又はアンチグレア)な薄板に微少な穴開け加工を施すことにより、容易にグレア/アンチグレアの領域を分けることができる。なお、この穴開け方式の場合、穴aの断面が光を屈折する可能性があり、穴aの断面部は遮光することが好ましい。
【0077】
また、透明薄板6のアンチグレア領域の凹凸の算術平均粗さRaは、0.05μm〜0.25μm程度であることが好ましい。この範囲内の算術平均粗さRaにより、意図する乱反射を得ることができる。なお、凹凸の算術平均粗さRaは、上記(1)式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を表したものである。
【0078】
また、透明薄板6のアンチグレア領域の凹凸の平均間隔Smは、30μm〜60μm程度であることが好ましい。この範囲内の平均間隔Smにより、画素と干渉して解像度が低下することや、ざらつきになってしまうことを防ぐことができる。なお、凹凸の平均間隔は、上記(2)式に示すように、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、1つの山及びそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値を表したものである。
【0079】
また、透明薄板6のグレア/アンチグレアの領域は画面全体に亘って均一に配置されていることが好ましい。例えば、市松模様、水玉模様、格子模様、縞模様等に各領域が配置されていることが好ましい。特に、画素毎に市松模様にグレア/アンチグレアの領域を配置することにより、解像度を高めることができる。
【0080】
このような透明薄板6は、例えば、グレア表面に市松模様にマスキングしてアンチグレア材料を塗布し、マスキングを除去することにより作製することができる。アンチグレア材料としては、例えば、ルシフラール(商標)NAG(日本ペイント社製)等を用いることができる。
【0081】
図20は、透明薄板6の表面反射特性の制御を説明するための図である。この透明薄板6は、画素に対応してマトリクス状にグレア面とアンチグレア面とを配置したものである。具体的には、表示パネル31がグレアの場合、アンチグレアの薄板61に対応するアンチグレア画素31a及び穴aに対応するグレア画素31bの発光を制御することにより、表面反射特性を制御する。
【0082】
例えば、図20(A)に示すようにグレア画素31bを発光させた場合、入射光が鏡面反射されるため、グレア画素31bで表示されたオブジェクトに光沢感を与えることができる。また、図20(B)に示すようにアンチグレア画素31aを発光させた場合、入射光が拡散反射されるため、アンチグレア画素31aで表示されたオブジェクトの光沢を防ぐことができる。また、図20(C)に示すようにアンチグレア画素a及びグレア画素31bを発光させた場合、入射光が鏡面反射と拡散反射の両方になるため、オブジェクトに中間的な光沢感を与えることができる。
【0083】
このように光沢オブジェクトに関してはグレア領域下部の画素のみを選択して発光させ、非光沢オブジェクトに関してはアンチグレア領域下部の画素のみを選択して発光させることにより、画像(オブジェクト)の光沢感と立体感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】透明薄板及び表示パネルの構成を模式的に示す図である。
【図3】透明薄板に入射される入射光と反射光とを模式的に示す図である。
【図4】光沢感処理部の構成を示す図である。
【図5】光沢感処理部の処理を説明するための図である。
【図6】エッジ抽出部の構成例を示す図である。
【図7】エッジ抽出部の他の構成例を示す図である。
【図8】他のコンポーネントで処理した境界画像を示す図である。
【図9】外光反射領域検出部の構成例を示す図である。
【図10】拡張処理部の構成例を示す図である。
【図11】光沢度判定部の構成例を示す図である。
【図12】光沢領域の等高線図である。
【図13】非光沢領域の等高線図である。
【図14】透明薄板の第1の具体例を示す図である。
【図15】透明薄板の第2の具体例を示す図である。
【図16】透明薄板の第3の具体例を示す図である。
【図17】透明薄板上に保護ネットを設ける例を示す図である。
【図18】第2の実施の形態に係る表示装置の全体構成を示す図である。
【図19】透明薄板及び表示パネルの構成を模式的に示す図である。
【図20】透明薄板の表面反射特性の制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0085】
1 光沢感処理部、2 透明薄板、3 表示パネル、4 光沢感制御部、5 輝度値最適化部、6 透明薄板、7 領域選択部、21 保護ネット、31 表示パネル、41 分離部、42 エッジ抽出部、43 外光反射領域検出部、44 拡張処理部、45 光沢度判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層。
【請求項2】
所定領域毎に表面粗さが変化することを特徴とする請求項1記載の反射特性制御層。
【請求項3】
下部透明電極と、透明スペンサと、上部透明電極とがこの順番で積層されていることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項4】
透明導電板に負又は正に帯電した起毛が植毛されていることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項5】
加熱素子と、冷却素子と、温度により物質状態が変化する透明物質とを備えることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項6】
表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層。
【請求項7】
各画素に対応して市松模様に光沢領域及び非光沢領域が配置されていることを特徴とする請求項6記載の反射特性制御層。
【請求項8】
表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層と、
入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を切り替える制御手段とを備える表示装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記入力画像の光沢領域を検出し、当該光沢領域に応じて反射特性制御層の表面粗さを小さくすることを特徴とする請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
上記制御手段は、入力画像のオブジェクト毎に光沢領域を検出することを特徴とする請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
上記制御手段は、上記光沢領域の輝度値を調整して画像信号を出力することを特徴とする請求項9記載の表示装置。
【請求項12】
表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層と、
入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を、上記表示画面の画素を発光させて選択する制御手段とを備える表示装置。
【請求項13】
上記制御手段は、上記入力画像の光沢領域を検出し、当該光沢領域に応じて反射特性制御層の表面粗さが小さい領域に対応する画素を発光させることを特徴とする請求項12記載の表示装置。
【請求項14】
上記制御手段は、入力画像のオブジェクト毎に光沢領域を検出することを特徴とする請求項13記載の表示装置。
【請求項15】
上記制御手段は、上記光沢領域の輝度値を調整して画像信号を出力することを特徴とする請求項13記載の表示装置。
【請求項1】
表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層。
【請求項2】
所定領域毎に表面粗さが変化することを特徴とする請求項1記載の反射特性制御層。
【請求項3】
下部透明電極と、透明スペンサと、上部透明電極とがこの順番で積層されていることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項4】
透明導電板に負又は正に帯電した起毛が植毛されていることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項5】
加熱素子と、冷却素子と、温度により物質状態が変化する透明物質とを備えることを特徴とする請求項2記載の反射特性制御層。
【請求項6】
表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層。
【請求項7】
各画素に対応して市松模様に光沢領域及び非光沢領域が配置されていることを特徴とする請求項6記載の反射特性制御層。
【請求項8】
表示画面の前面に配され、所定領域毎に反射特性が切り替わる反射特性制御層と、
入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を切り替える制御手段とを備える表示装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記入力画像の光沢領域を検出し、当該光沢領域に応じて反射特性制御層の表面粗さを小さくすることを特徴とする請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
上記制御手段は、入力画像のオブジェクト毎に光沢領域を検出することを特徴とする請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
上記制御手段は、上記光沢領域の輝度値を調整して画像信号を出力することを特徴とする請求項9記載の表示装置。
【請求項12】
表示画面の前面に配され、画面全体に亘って異なる反射特性が均一に配置されている反射特性制御層と、
入力画像に応じて上記反射特性制御層の反射特性を、上記表示画面の画素を発光させて選択する制御手段とを備える表示装置。
【請求項13】
上記制御手段は、上記入力画像の光沢領域を検出し、当該光沢領域に応じて反射特性制御層の表面粗さが小さい領域に対応する画素を発光させることを特徴とする請求項12記載の表示装置。
【請求項14】
上記制御手段は、入力画像のオブジェクト毎に光沢領域を検出することを特徴とする請求項13記載の表示装置。
【請求項15】
上記制御手段は、上記光沢領域の輝度値を調整して画像信号を出力することを特徴とする請求項13記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−157075(P2009−157075A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334844(P2007−334844)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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