説明

反射膜およびその製造方法

【課題】光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることが可能な反射膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1は、絶縁層20および反射膜3を備える。反射膜3は、導体層30、バリア層40および銀薄膜50をこの順に含む。導体層30の表面は、0.35μm以下に平坦化処理されている。また、バリア層40の表面粗度Raは0.2μm以下である。絶縁層20上に導体層30が形成される。銀薄膜50は、バリア層40を介して導体層30上に形成される。導体層30上の銀薄膜50の表面粗度Raは0.2μm以下となり、光沢度は0.8以上となり、波長460nmの光に対する反射率は90%以上となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射膜は、光に対して高い反射率を有するため、発光ダイオード(LED)等の光源用の反射部材として用いられている。近年では、短波長の光を放出する光源が開発されるに伴い、短波長の光に対して高い反射率を有する銀薄膜が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1には、素地面の全面に光沢ニッケルめっき層を介して光沢銀めっき層が形成された発光素子用ステムが記載されている。この発光素子用ステムでは、波長400nm近傍の紫外線に対する光沢銀めっき層の反射率は80%以上である。
【0004】
また、特許文献2には、銀めっき層の最表面の結晶粒径が0.5μm以上30μm以下に設定された銀膜が記載されている。可視光領域に対する銀膜の反射率は90〜99%程度とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−347375号公報
【特許文献2】特開2008−16674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の光沢銀めっき層または特許文献2記載の銀膜を用いた反射部材をLEDに設けることにより、LEDから後方に放出された光を高効率で前方に反射することができる。これにより、LEDから放出される光の取り出し効率を改善することができる。
【0007】
しかしながら、銀薄膜の反射率を向上させるだけでは、LEDからの光の取り出し効率を十分に改善するためには限界がある。反射膜による反射光には、正反射光および拡散反射光が含まれる。反射膜上に設けられた光源の光の取り出し効率を向上させるためには、反射膜の反射率が高いことが必要であるとともに、反射光に含まれる正反射光の割合が大きいことが必要である。
【0008】
また、可視光領域のうち長波長領域の反射率を高くすることは比較的容易であるが、短波長領域での反射率を高くすることは容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることが可能な反射膜およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の発明に係る反射膜は、表面粗度が0.2μm以下であり、光沢度が0.8以上であり、かつ波長460nmの光に対する反射率が90%以上である銀薄膜を備えたものである。
【0011】
この反射膜は、表面粗度が0.2μm以下の銀薄膜を備える。これにより、高い反射率が得られる。また、波長460nmの光に対して90%以上の反射率を有することにより、短波長領域で高い反射率が得られる。さらに、0.8以上の光沢度を有することにより、反射光に含まれる正反射光の割合が大きくなる。その結果、反射膜上に設けられた光源を設ける場合、光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることができる。
【0012】
(2)銀薄膜の表面の平均の結晶粒子径が0.5μm以下であってもよい。この場合、銀薄膜の表面の凹凸を小さくすることができる。これにより、銀薄膜の反射率および光沢度を向上させることができる。
【0013】
(3)反射膜は、表面粗度が0.2μm以下である第1の下地層をさらに備え、銀薄膜は、第1の下地層上に形成されてもよい。この場合、銀薄膜の表面粗度を容易に0.2μm以下にすることができる。これにより、銀薄膜の反射率を容易に向上させることができる。
【0014】
(4)第1の下地層は銅を含んでもよい。この場合、第1の下地層の表面粗度を容易に0.2μm以下に調整することができる。
【0015】
(5)反射膜は、第1の下地層と銀薄膜との間に形成される第2の下地層をさらに備えてもよい。これにより、第1の下地層の表面粗度が0.2μmよりも大きい場合でも、第2の下地層の厚みを調整することにより銀薄膜の表面粗度を0.2μm以下にすることができる。
【0016】
(6)第2の下地層はニッケルを含んでもよい。この場合、第1の下地層上に第2の下地層を容易に形成することができる。
【0017】
(7)銀薄膜は、電解めっきにより形成されてもよい。この場合、銀薄膜を容易に形成することができる。
【0018】
(8)銀薄膜は光沢剤を含んでもよい。この場合、銀薄膜の光沢度を容易に0.8以上にすることができる。
【0019】
(9)第2の発明に係る反射膜の製造方法は、第1の下地層を準備する工程と、第1の下地層上に、表面粗度が0.2μm以下であり、光沢度が0.8以上であり、かつ波長460nmの光に対する反射率が90%以上である銀薄膜を形成する工程とを備えるものである。
【0020】
この反射膜の製造方法においては、第1の下地層上に、表面粗度が0.2μm以下の銀薄膜が形成される。これにより、高い反射率が得られる。また、波長460nmの光に対して90%以上の反射率を有することにより、短波長領域で高い反射率が得られる。さらに、0.8以上の光沢度を有することにより、反射光に含まれる正反射光の割合が大きくなる。その結果、反射膜上に設けられた光源を設ける場合、光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることができる。
【0021】
(10)第1の下地層を準備する工程は、表面粗度が0.2μm以下である第1の下地層を準備する工程を含んでもよい。
【0022】
この場合、銀薄膜の表面粗度を容易に0.2μm以下にすることができる。これにより、銀薄膜の反射率を容易に向上させることができる。
【0023】
(11)銀薄膜を形成する工程は、第1の下地層上に光沢剤が添加された銀めっき液を用いて電解めっきにより銀薄膜を形成する工程を含んでもよい。この場合、光沢度が0.8以上の銀薄膜を容易に形成することができる。
【0024】
(12)第1の下地層上に、表面粗度が0.2μm以下である第2の下地層を形成する工程をさらに備え、銀薄膜を形成する工程は、第2の下地層を介して第1の下地層上に銀薄膜を形成する工程を含んでもよい。
【0025】
これにより、第1の下地層の表面粗度が0.2μmよりも大きい場合でも、第2の下地層の厚みを調整することにより銀薄膜の表面粗度を0.2μm以下にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射膜を備える基板の断面図である。
【図2】反射膜の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図3】取得された銀薄膜の最表面の画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態に係る反射膜について説明する。なお、本実施の形態では、発光ダイオード(LED)等の光源が実装される基板上に形成される反射膜について説明する。
【0029】
(1)基板の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る反射膜を備える基板の断面図である。図1に示すように、基板1は、例えばポリイミドからなる絶縁層20および反射膜3を備える。反射膜3は、例えば銅からなる導体層30、例えばニッケルからなるバリア層40および銀薄膜50をこの順に含む。絶縁層20上に導体層30が形成される。銀薄膜50は、バリア層40を介して導体層30上に形成される。
【0030】
銀薄膜50の表面の平均粒子径は0.5μm以下である。また、後述するように、銀薄膜50の表面粗度Raは0.2μm以下に設定される。
【0031】
銀薄膜50上には、LED10が実装される。LED10は、中心波長が460nmの光を全方向に放出する。ここで、LED10から直接放出された光に加え、LED10の下面で銀薄膜50により反射された光がLED10の外部に放出されることにより、LED10からの光の取り出し効率が向上する。
【0032】
(2)基板上の反射膜の製造方法
次に、図1に示した基板1上の反射膜3の製造方法を説明する。図2は、反射膜3の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0033】
まず、図2(a)に示すように、絶縁層20を用意する。絶縁層20は、例えばポリイミドからなる。次に、図2(b)に示すように、絶縁層20上に導体層30を形成する。導体層30は、例えば銅からなる。続いて、導体層30の表面を平坦化処理する。導体層30の表面の表面粗度Raは例えば0.35μm以下であり、好ましくは0.2μm以下である。硫酸−過酸化水素系のエッチング液を用いたエッチングにより導体層30の表面を平坦化処理してもよいし、研磨等の表面粗度Raを制御可能な他の方法により導体層30の表面を平坦化処理してもよい。導体層30の表面粗度Raを0.2μm以下に調整することにより、後述するように、銀薄膜50の表面粗度Raを容易に0.2μm以下に設定することができる。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、平坦化処理された導体層30の表面にバリア層40を形成する。バリア層40は、例えば、電解光沢ニッケルめっきを行うことにより形成される。この場合、バリア層40の表面の表面粗度Raは0.2μm以下であることが好ましい。続いて、図2(d)に示すように、バリア層40上に下地めっき層50aを形成する。下地めっき層50aは、例えば、電解銀ストライクめっきを行うことにより形成される。
【0035】
その後、図2(e)に示すように、下地めっき層50a上に銀薄膜50を形成する。銀薄膜50は、例えば、光沢剤を添加した銀の高シアン化浴を用いた電解めっきを行うことにより形成される。ここで、下地めっき層50aは銀薄膜50と一体化される。銀薄膜50の平均粒子径は0.5μm以下であることが好ましい。この場合、銀薄膜の表面の凹凸を小さくすることができる。これにより、銀薄膜50の反射率および光沢度を向上させることができる。
【0036】
このように形成された導体層30上の銀薄膜50の表面粗度Raは0.2μm以下となり、光沢度は0.8以上となり、波長460nmの光に対する反射率は90%以上となる。
【0037】
(3)実施の形態の効果
本実施の形態に係る反射膜3の銀薄膜50は、0.2μm以下の表面粗度Raを有し、0.8以上の光沢度を有し、かつ波長460nmの光に対して90%以上の反射率を有する。
【0038】
0.2μm以下の表面粗度Raを有することにより、高い反射率が得られる。また、波長460nmの光に対して90%以上の反射率を有することにより、短波長領域で高い反射率が得られる。さらに、0.8以上の光沢度を有することにより、反射光に含まれる正反射光の割合が大きくなる。その結果、反射膜3上に設けられた光源からの光の取り出し効率を十分に向上させることができる。
【0039】
(4)他の実施の形態
(4−1)上記実施の形態において、導体層30と銀薄膜50との間にバリア層40が設けられるが、これに限定されない。導体層30の表面粗度Raが0.2μm以下である場合には、導体層30と銀薄膜50との間にバリア層40が設けられなくてもよい。
【0040】
(4−2)上記実施の形態において、導体層30の材料として銅が用いられるが、これに限定されない。例えば、導体層30の材料として、銅合金が用いられてもよく、銀、金、チタンもしくは白金またはこれら合金が用いられてもよい。
【0041】
(4−3)上記実施の形態において、バリア層40の材料としてニッケルが用いられるが、これに限定されない。例えば、バリア層40の材料として、ニッケル合金が用いられてもよく、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、窒化タンタル(TaN)または窒化チタン(TiN)が用いられてもよい。
【0042】
(4−4)上記実施の形態において、銀薄膜50は、めっきにより形成されるが、これに限定されない。例えば、銀薄膜50は、スパッタリングまたは蒸着等の他の方法により形成されてもよい。
【0043】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0044】
上記実施の形態においては、銀薄膜50が銀薄膜の例であり、反射膜3が反射膜の例であり、導体層30が第1の下地層の例であり、バリア層40が第2の下地層の例である。
【0045】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0046】
(6)実施例
(6−1)実施例および比較例
実施例1〜8および比較例1〜5では、上記実施の形態に基づいて以下の基板1を作製した。
【0047】
実施例1においては、図2(b)に示す工程で、バフ研磨により銅からなる導体層30の表面の表面粗度Raを0.06μmに調整した。次に、図2(c)に示す工程で、温度50℃および電流密度5A/dmの条件で、5分間電解光沢ニッケルめっきを行うことにより、平坦化処理された導体層30の表面に厚みが5μmで、表面粗度Raが0.051μmのバリア層40を形成した。続いて、図2(d)に示す工程で、温度25℃および電流密度2A/dmの条件で、15秒間電解銀ストライクめっきを行うことにより、バリア層40上に下地めっき層50aを形成した。
【0048】
その後、図2(e)に示す工程で、温度25℃および電流密度2A/dmの条件で、2.5分間光沢剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、シルバーグロー3K)を添加した銀の高シアン化浴を用いた電解めっきを行うことにより、厚みが3μmの銀薄膜50を形成した。高シアン化浴への光沢剤の添加量は100ml/Lである。
【0049】
実施例2においては、図2(c)に示す工程で、温度50℃および電流密度5A/dmの条件で、3分間電解光沢ニッケルめっきを行った。また、図2(e)に示す工程で、温度25℃および電流密度2A/dmの条件で、1.5分間光沢剤を添加した銀の高シアン化浴を用いた電解めっきを行った。これらの点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。バリア層40の厚みは3μmであり、表面粗度Raは0.053μmである。また、銀薄膜50の厚みは1.5μmである。
【0050】
実施例3においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.33μmに調整した。また、図2(c)に示す工程で、温度50℃および電流密度5A/dmの条件で、15分間電解光沢ニッケルめっきを行った。これらの点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。バリア層40の厚みは15μmであり、表面粗度Raは0.192μmである。また、銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0051】
実施例4においては、図2(c)に示す工程で、電解光沢ニッケルめっきに代えて電解無光沢ニッケルめっきを行った点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。バリア層40の厚みは3μmであり、表面粗度Raは0.152μmである。また、銀薄膜50の厚みは1.5μmである。
【0052】
実施例5においては、図2(d)に示す工程で、温度25℃および電流密度4A/dmの条件で、10秒間電解銀ストライクめっきを行った点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0053】
実施例6においては、図2(d)に示す工程で、温度25℃および電流密度2A/dmの条件で、15秒間電解銀ストライクめっきを行った点を除いて、実施例5と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは1μmである。
【0054】
実施例7においては、図2(e)に示す工程で、光沢剤の高シアン化浴への添加量を30ml/Lにした点を除いて、実施例5と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0055】
実施例8においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.179μmに調整した点を除いて、実施例5と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0056】
比較例1においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.33μmに調整した点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。バリア層40の厚みは5μmであり、表面粗度Raは0.284μmである。また、銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0057】
比較例2においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.33μmに調整した。また、図2(e)に示す工程で、光沢剤を添加した銀の高シアン化浴を用いた電解めっきに代えて光沢剤を添加しない銀の高シアン化浴を用いた電解めっきを行った。これらの点を除いて、実施例1と同様の方法で銀薄膜50を形成した。バリア層40の厚みは5μmであり、表面粗度Raは0.284μmである。また、銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0058】
比較例3においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.33μmに調整した点を除いて、実施例5と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0059】
比較例4においては、図2(b)に示す工程で、導体層30の表面の表面粗度Raを0.283μmに調整した点を除いて、実施例5の銀薄膜50と同様の銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0060】
比較例5においては、図2(d)に示す工程で、温度25℃および電流密度2A/dmの条件で、15秒間電解銀ストライクめっきを行った。また、図2(e)に示す工程で、光沢剤を添加した銀の高シアン化浴を用いた電解めっきに代えて光沢剤を添加しない銀の高シアン化浴を用いた電解めっきを行った。これらの点を除いて、実施例5と同様の方法で銀薄膜50を形成した。銀薄膜50の厚みは3μmである。
【0061】
(6−2)銀薄膜の特性
実施例1〜8および比較例1〜5の銀薄膜50について、表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度を測定した。表面粗度Raについては、非接触式光干渉表面粗さ計(日本ビーコ株式会社製Wyko NT3300 50×0.5倍)を用いて測定した。
【0062】
平均粒子径の測定として、集束イオンビーム加工観察装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SMI−9200)を用いて銀薄膜50の最表面の27000倍の画像を取得した。図3は、取得された銀薄膜50の最表面の画像の例である。なお、図3(a)は実施例5の銀薄膜50の最表面の図であり、図3(b)は比較例1の銀薄膜50の最表面の図である。図3の画像において、画像処理ソフトウェアImageJを用いて銀薄膜50の粒子間の境界を特定した。ここで、粒子の長手方向の寸法を粒子径として扱い、画像内の粒子の粒子径の平均値を平均粒子径として算出した。なお、実施例1、実施例8および比較例3の平均粒子径は推定値である。
【0063】
反射率については、分光測色計(コニカミノルタホールディングス株式会社製CM−700d、視野10°、照明・受光光学系d/8、測定直径3mm)を用いて測定した。光沢度については、デンシトメータ(日本電色工業株式会社製ND−11、測定直径3mm)を用いて測定した。
【0064】
実施例1〜8および比較例1〜5の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度の評価結果を表1に示す。
【0065】
反射率が90%以上でありかつ光沢度が0.8以上である場合の判定結果を“○”で示し、反射率が90%未満である場合または光沢度が0.8未満である場合の判定結果を“×”で示した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、実施例1の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.078μm、0.23μm(推定値)、93.4%および1.2であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0068】
実施例2の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.082μm、92.8%および1.2であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0069】
実施例3の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.185μm、90.5%および1.0であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0070】
実施例4の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.155μm、91.7%および1.0であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0071】
実施例5の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.082μm、0.22μm、93.6%および1.2であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0072】
実施例6の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.051μm、93.4%および1.2であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0073】
実施例7の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.078μm、91.7%および0.8であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0074】
実施例8の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.181μm、0.46μm(推定値)、90.8%および1.0であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になり、光沢度は0.8以上になった。
【0075】
比較例1の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.264μm、0.82μm、88.5%および0.9であった。このように、光沢度は0.8以上になったが、波長460nmの光に対する反射率は90%以上にならなかった。
【0076】
比較例2の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.298μm、93.1%および0.2であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になったが、光沢度は0.8以上にならなかった。
【0077】
比較例3の銀薄膜50についての表面粗度Ra、平均粒子径、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.292μm、0.65μm(推定値)、86.8%および0.9であった。このように、光沢度は0.8以上になったが、波長460nmの光に対する反射率は90%以上にならなかった。
【0078】
比較例4の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.202μm、89.2%および1.0であった。このように、光沢度は0.8以上になったが、波長460nmの光に対する反射率は90%以上にならなかった。
【0079】
比較例5の銀薄膜50についての表面粗度Ra、波長460nmの光に対する反射率および光沢度は、それぞれ0.075μm、90.5%および0.3であった。このように、波長460nmの光に対する反射率は90%以上になったが、光沢度は0.8以上にならなかった。
【0080】
実施例1〜4と実施例5〜8との比較結果から、導体層30の表面粗度Raが0.2μm以下であれば、導体層30上にバリア層40が形成されない場合でも、波長460nmの光に対する反射率が90%以上でかつ光沢度が0.8以上の銀薄膜50を形成できることが確認された。
【0081】
実施例1〜3と実施例4との比較結果から、バリア層40が電解無光沢ニッケルめっきにより形成された場合でも、波長460nmの光に対する反射率が90%以上でかつ光沢度が0.8以上の銀薄膜50を形成できることが確認された。
【0082】
実施例5〜8と比較例3,4との比較結果から、導体層30の表面粗度Raが0.2μm以下であれば、導体層30上にバリア層40が形成されない場合でも、表面粗度Raが0.2μm以下の銀薄膜50を形成できることが確認された。一方、実施例3と比較例1との比較結果から、導体層30の表面粗度Raが0.2μmを超えても、導体層30上に厚みの大きいバリア層40を形成することにより、表面粗度Raが0.2μm以下の銀薄膜50を形成できることが確認された。この場合、バリア層40の表面粗度Raが0.2μm以下であることにより、銀薄膜50の表面粗度Raが0.2μm以下になることがわかる。
【0083】
実施例1〜4と比較例2との比較結果および実施例5〜8と比較例5との比較結果から、バリア層40の有無にかかわらず、銀に光沢剤を添加することにより光沢度0.8以上の銀薄膜50を形成できることが確認された。
【0084】
実施例5と比較例1との比較結果から、銀薄膜50の平均粒子径が0.5μm以下である場合に、表面粗度Raが0.2μm以下の銀薄膜50を形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、種々の反射膜に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 基板
3 反射膜
10 LED
20 絶縁層
30 導体層
40 バリア層
50 銀薄膜
50a 下地めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗度が0.2μm以下であり、光沢度が0.8以上であり、かつ波長460nmの光に対する反射率が90%以上である銀薄膜を備えたことを特徴とする反射膜。
【請求項2】
前記銀薄膜の表面の平均の結晶粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の反射膜。
【請求項3】
表面粗度が0.2μm以下である第1の下地層をさらに備え、
前記銀薄膜は、前記第1の下地層上に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の反射膜。
【請求項4】
前記第1の下地層は銅を含むことを特徴とする請求項3記載の反射膜。
【請求項5】
前記第1の下地層と前記銀薄膜との間に形成される第2の下地層をさらに備えることを特徴とする請求項3または4記載の反射膜。
【請求項6】
前記第2の下地層はニッケルを含むことを特徴とする請求項5記載の反射膜。
【請求項7】
前記銀薄膜は、電解めっきにより形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射膜。
【請求項8】
前記銀薄膜は光沢剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射膜。
【請求項9】
第1の下地層を準備する工程と、
前記第1の下地層上に、表面粗度が0.2μm以下であり、光沢度が0.8以上であり、かつ波長460nmの光に対する反射率が90%以上である銀薄膜を形成する工程とを備えることを特徴とする反射膜の製造方法。
【請求項10】
第1の下地層を準備する工程は、表面粗度が0.2μm以下である第1の下地層を準備する工程を含むことを特徴とする請求項9記載の反射膜の製造方法。
【請求項11】
前記銀薄膜を形成する工程は、前記第1の下地層上に光沢剤が添加された銀めっき液を用いて電解めっきにより前記銀薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項9または10記載の反射膜の製造方法。
【請求項12】
前記第1の下地層上に、表面粗度が0.2μm以下である
第2の下地層を形成する工程をさらに備え、
前記銀薄膜を形成する工程は、前記第2の下地層を介して前記第1の下地層上に前記銀薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の反射膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−124310(P2012−124310A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273537(P2010−273537)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】