説明

反射防止フィルム

【課題】酸化ケイ素の蒸着フィルムを得る際の蒸着源とおいて、事前に酸化ケイ素(酸化度1)を大気下で焼結しておくことにより、酸素の導入が必要なくなる製造方法について提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、ゾルゲル法により形成される屈折率が屈折率1.52〜1.54の範囲内となるハードコート層と、大気下にて焼結された酸化度が1.3〜1.5からなる酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成される屈折率が1.55〜1.70の範囲内となる高屈折率層と、ゾルゲル法により形成される屈折率が1.30〜1.42の範囲内となる低屈折率層から形成され、且つ、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム及びその製造方法に関し、特に、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムからなるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用される反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に画像表示装置においては、外光が表示画面上に映りこむことによって画像を認識しづらくなるという問題がある。さらに、最近では屋内だけでなく屋外にも持ち出される機会が増加し、表示画面上への外光の映り込みはより重要な問題になっている。
【0003】
表示画面上への映りこみは、反射率を下げる方法によって解決される。その手法として、反射防止フィルムには、屈折率の異なる層を積層する方法が用いられ、層数が増えるほど反射防止性能は向上する。
【0004】
しかし、層数の増加とともにコストも上がるため、コストを抑えつつ単層より良好な反射防止性能を発揮する2層または3層の積層体が使用されることが多い。この中で2層構成の場合、高屈折率材料を第1層として基材側に堆積し、低屈折率材料を第2層である最外層に用いる構成が一般的であり低反射フィルム特性が良好なものが得られる。
【0005】
反射防止フィルムを製造する際には、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング法とウェットコーティング法とが知られている。ドライコーティング法の場合は、ウェットコーティング法では難しい高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−100164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化ケイ素を蒸着したフィルムは、その酸化度と透明性に関係があり、酸化度が大きいほど透明性に優れている。しかし、二酸化ケイ素を蒸着する場合はより高温が必要であるため基材への熱負荷が大きく、酸化ケイ素の蒸着フィルムを得るには蒸着の際に酸素を導入することが必要である。この際、酸素の分圧コントロールが問題となる。
【0008】
本発明では、酸化ケイ素の蒸着フィルムを得る際の蒸着源とおいて、事前に酸化ケイ素(酸化度1)を大気下で焼結しておくことにより、酸素の導入が必要なくなる製造方法について提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、ハードコート層形成用塗液がゾルゲル法により形成され屈折率が1.52〜1.54の範囲内となるハードコート層と、大気下にて焼結された酸化度が1.3〜1.5の範囲内からなる酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成され屈折率が1.55〜1.70の範囲内となる高屈折率層と、低屈折率層形成用塗液がゾルゲル法により形成され屈折率が1.30〜1.42の範囲内となる低屈折率層と、から形成され、且つ、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、観察者側から順に、請求項2に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価に精密な膜厚制御された反射防止フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムの断面模式図である。
【図2】本発明に用いる酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板の形成方法の概略図である。
【図3】本発明の一実施例の反射防止フィルムを用いた反射防止性偏光板の断面模式図である。
【図4】本発明の一実施例の反射防止フィルムを備える透過型液晶ディスプレイを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の反射防止フィルム(10)について説明する。
【0015】
図1に本発明の反射防止フィルムの断面模式図を示した。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムは、第1の透明基材(11)上に順次ハードコート層(111)、高屈折率層(222)、低屈折率層(333)を備えている。反射防止フィルムの最表面は低屈折率層である。
【0017】
また、第1の透明基材(11)上にハードコート層(111)を設けることにより、反射防止フィルムの表面に高い表面硬度を付与することができ、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムとすることができる。
【0018】
なお、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムは、図1に示す反射防止フィルムの構成に限定されるものではなく、例えばハードコート層に導電性材料を添加することにより帯電防止性を付与してもよい。
【0019】
まず、透明基材(11)について説明する。
【0020】
本発明の透明基材としては、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂フィルム、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル化合物、ポリアクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール等を用いることができるがこれらに限定されるものではなく、機械的強度や寸法安定性に優れるものであれば良い。また、密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。
【0021】
上述した透明基材の中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムはトリアセチルセルロースフィルムと比較して安価であり、破れにくいことからハンドリング性に優れているなどの理由から本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。
【0022】
また、透明基材の厚みは特に制限を受けるものではないが、反射防止フィルムとしての適性や複数の層を積層させることを考えると、透明基材の厚みとしては、6μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
次に、ハードコート層(111)について説明する。
【0024】
第1の透明基材表面にハードコート層を形成するが、ハードコート層は、第1の透明基材の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができ、第1の透明基材の屈曲により高屈折率層、低屈折率層にクラックが入るのを抑制することができ、反射防止フィルムの機械的強度を改善することができる。
【0025】
ハードコート層は、屈折率1.52のハードコート層をゾルゲル法にて形成する。
【0026】
ゾルゲル法による形成としては、金属アルコキシド加水分解物、酸、水の混合物から形成される。
【0027】
金属アルコキシドとしては、一般式 R(M−OR) (ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)により構成され、本発明における前記金属原子Mとしては、Siを用いる。具体的な材料の一例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどを用いることができる。
【0028】
なお、本発明の反射防止フィルムにおいて、形成されるハードコート層の膜厚は2μm以上8μm以下であることが好ましく、鉛筆硬度は、物理的な耐擦傷性を備えるために、H以上であることが好ましい。
【0029】
ハードコート層はロール・ツー・ロール方式により形成される。
ハードコート層の形成用塗液の塗布方法としては、ハードコート層の形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0030】
次に、高屈折率層(222)について説明する。
【0031】
第1の透明基材表面に形成されたハードコート層表面上に高屈折率層を形成する。
【0032】
図2に本発明に用いる酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板の形成方法を示す。
【0033】
高屈折率層を形成させるために用いる酸化ケイ素の形成方法としては、粉末のケイ素(A)を、円柱又は板状の金型(B)に投入し、金型上部よりプレス板(C)に100kN〜200kNの範囲内とする圧力(J)を掛けることにより、ケイ素柱(D)又はケイ素板(E)を形成する。その際のケイ素柱又はケイ素板の空孔密度が54%〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
前記ケイ素柱(D)又はケイ素板(E)の形成後、加熱炉(F)に、前記ケイ素柱又は前記ケイ素板を重なり合わないように配列させた後に、加熱炉を密閉し、加熱炉内に常時酸素が存在するように常時酸素(G)注入し、800℃の温度にて30分〜60分焼成することにより、固化された酸化ケイ素柱(H)又は板状の酸化ケイ素板(I)を形成させる。
【0035】
800℃で焼結した酸化ケイ素柱又は板状の酸化ケイ素板の酸化度が1.3〜1.5の範囲内となるように焼結することが好ましい。なお、本発明における酸化度とは、酸素/ケイ素の比のことである。
【0036】
前記酸化度の酸素/ケイ素の比について詳細に説明すると、酸化度は、焼結形成した酸化ケイ素柱又は酸化ケイ素板を元素分析(EDS)により、O原子、Si原子のatm%を測定し、O/Siの値を算出して導き出す。
なお、本発明における元素分析の測定に際しては、エネルギー分散形X線分析装置JED−2300(EDS、日本電子データム社製)を用いて測定をおこなった。
【0037】
元素分析とは、一般的に化学物質を構成する元素の種類と構成比率を決定する手法のことをいう。化学物質はすべて元素からできているので、構成する元素の種類と量を決定することはきわめて重要である。元素分析には様々な方法が存在するが、有機合成の分野では燃焼法を指すのが一般的である。また、無機化合物には、主にICP、ESCA、SIMS、EPMAなどの手法が用いられる。本発明においては、EPMAの手法の中のEDSを用いた。
【0038】
EDS(又はEDX)とは、エネルギー分散X線分光法(EDS、EDX:energy dispersive X−ray spectrometry)のことであり、エネルギー分散形X線分光器を使ったX線分光法である。分析元素範囲はB〜Uである。全元素範囲の同時分析ができる、分析時のプローブ電流が小さくて済むなどの特長もあるが、エネルギー分解能、検出限界などではWDSの方が有利である。SEMでの元素分析は、ほとんどがこの方法による。
【0039】
本発明におけるエネルギー分散形X線分析装置とは、エネルギー分散形X線分光器(EDS、EDX:energy dispersive X−ray spectrometer)とも言われている。方法は、X線をエネルギーで弁別し、スペクトルを得る分光器。一般には、半導体を使ったEDS検出器が用いられており、分析元素範囲はB〜Uである。EDS検出器、多重波高分析器、パーソナルコンピュータなどでシステムが構成されているが、WDSに比べて、検出器の取り付けに幾何学的な制限が少ないので多くのSEMに取り付けられている。全元素範囲の同時分析ができる、分析時のプローブ電流が小さくて済むなどの特長もあるが、エネルギー分解能、検出限界などではWDSの方が有利である。
【0040】
なお、前記酸化度が1.3未満だと蒸着により形成した高屈折率層が着色してしまい透過率が悪くなってしまう。また、酸化度が1.6以上だと蒸着により形成した高屈折率層由来の歪み及びカールがひどくなってしまい、ハンドリング性が悪くなってしまう。
【0041】
また、酸化ケイ素の酸化度と屈折率の関係は、酸化度が小さい場合屈折率が高く、酸化度が高い場合屈折率が低くなる。酸化度1.3〜1.5の場合において、屈折率1.55〜1.70の範囲を得る。
【0042】
なお、前記酸化ケイ素に用いる材料としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウム(ITO)などを用いることができる。
【0043】
次に、低屈折率層(333)について説明する。
【0044】
第1の透明基材表面に形成されたハードコート層表面上に高屈折率層を形成された後に、高屈折率層表面上に低屈折率層を形成する。
【0045】
低屈折率層には、屈折率1.3〜1.4の低屈折率層をゾルゲル法にて形成する。
【0046】
ゾルゲル法による形成としては、金属アルコキシド加水分解物、酸、水の混合物から形成される。
【0047】
金属アルコキシドとしては、一般式 R(M−OR) (ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)により構成され、前記金属原子Mとしては、Si、Ti、Al、Zrなどを用いることができる。
【0048】
Siの場合の材料の一例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどを用いることができる。
【0049】
Tiの場合の材料の一例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどを用いることができる。
【0050】
Alの場合の材料の一例としては、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウムなどを用いることができる。
【0051】
Zrの場合の材料の一例としては、テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシアルミニウムなどを用いることができる。
【0052】
なお、金属アルコキシドは1種類のみを用いても、2種以上混合して用いることも可能である。
【0053】
低屈折率層はロール・ツー・ロール方式により形成される。低屈折率層の形成用塗液の塗布方法としては、低屈折率層の形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0054】
次に、本発明の反射防止フィルム(10)を用いた第1の偏光板(20)について説明する。
【0055】
図3に本発明の反射防止フィルム(10)を用いた反射防止性偏光板(210)について説明する。
【0056】
図3の反射防止性偏光板(210)は、第1の透明基材(11)の一方の面にハードコート層(111)と、高屈折率層(222)と、低屈折率層(333)が順に備えている反射防止フィルム(10)であり、低屈折率層非形成面側に、第1の偏光層(23)と、第2の透明基材(22)を順に備えた反射防止性偏光板(210)となる。
【0057】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、ディスプレイ部材、画像装置の一部として用いることができる。
【0058】
本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイの構成について説明する。
【0059】
図4に本発明の反射防止フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイを示した。図4(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、本発明の反射防止フィルム(10)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(20)を低屈折率層非形成面に備えた反射防止性偏光板(200)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0060】
図4(a)にあっては、反射防止フィルム(10)の透明基材(11)と第1の偏光板(20)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0061】
バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(30)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0062】
また、図4(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に高屈折率層(222)と、低屈折率層(333)を備えた反射防止フィルム(10)と、当該反射防止フィルムの低屈折率層非形成面に、偏光層(23)、透明基材(22)を順に備えて、反射防止性偏光板(210)を形成し、反射防止性偏光板(210)、液晶セル(30)、第2の偏光板(40)、バックライトユニット(50)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)の低屈折率層(333)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0063】
図4(b)にあっては、反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(23)と透明基材(22)を、この順に備えた反射防止性偏光板(210)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0064】
図4(b)においても、図4(a)と同様に、バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0065】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【0066】
以上により、本発明の反射防止フィルムを用いた、透過型液晶ディスプレイが製造される。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
(ハードコート層形成用塗液の合成)
・テトラエトキシシラン(TEOS) 10重量部
・ポリビニルアルコール(PVA) 61重量部
・水 15重量部
・塩酸 14重量部
を用い、これらを混合し、ハードコート層の形成用塗液を調液した。
【0069】
(ハードコート層の形成)
前記ハードコート層形成用塗液を、透明基材上にワイヤーバーコーターを用いて膜厚が5μmとなるように塗布し、硬化及び120℃にて乾燥を施してハードコート層を形成させる。
【0070】
(高屈折率層の形成)
以下の(実施例1)〜(実施例5)により、高屈折率層を形成させる。
【0071】
(実施例1)
透明基材上に前述のハードコート層を形成したのち、大気下で焼結した酸化度1.3の酸化ケイ素を用いて、真空蒸着機の中に、酸素を導入しない条件で真空蒸着をおこない、高屈折率層を形成する。
【0072】
(実施例2)
(実施例1)と同様にして、大気下で焼結した酸化度1.5の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0073】
(実施例3)
(実施例1)と同様にして、大気下で焼結した酸化度1.2の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0074】
(実施例4)
(実施例1)と同様にして、大気下で焼結した酸化度1.6の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0075】
(実施例5)
(実施例1)と同様にして、窒素雰囲気化で焼結した酸化度1.4の酸化ケイ素を用いて、(実施例1)と同様に高屈折率層を形成した。
【0076】
(低屈折率層形成用塗液の合成)
・テトラエトキシシラン(TEOS) 26重量部
・ポリビニルアルコール(PVA) 36重量部
・水 9重量部
・塩酸 14重量部
・多孔質シリカ微粒子の分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 15重量部
を用い、これらを混合し、低屈折率層形成用塗液を調整した。
【0077】
(低屈折率層の形成)
前記低屈折率層形成用塗液を、前記(実施例1)〜(実施例5)のそれぞれの高屈折率層上にワイヤーバーコーターを用いて膜厚が1μm以下となるように塗布し、硬化及び120℃にて乾燥を施して低屈折率層を形成させる。
【0078】
(実施例1)〜(実施例5)で得られた反射防止フィルムを以下の方法で評価した。評価結果は、(表1)に示す。
【0079】
(全光線透過率)
全光線透過率測定に際しては、日本電色社製 ヘイズメーターNDH2000にて測定をおこなった。
【0080】
(ハンドリング性)
カールの強弱を目視にて、3段階のレベル分けをおこなった。
○印:カールがほぼないレベル
△印:カールはあるが、問題とならないレベル
×印:カールが強く、後行程で問題となるレベル
【0081】
【表1】

【0082】
(表1)から、(実施例3)及び(実施例5)はハンドリング性は良好であるものの全光線透過率が低く、反射防止フィルムとしては成り立たない。また、(実施例4)は全光線透過率は良好であるが、カールがひどく後の製造工程、加工工程に進めることができない。
一方、(実施例1)及び(実施例2)は全光線透過率が90%以上と良好であり、ハンドリング性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の反射防止フィルムは、画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムから
なるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用される。
【符号の説明】
【0084】
10 反射防止フィルム
11 第1の透明基材
111 ハードコート層
222 高屈折率層
333 低屈折率層
20 第1の偏光板
22 第2の透明基材
23 第1の偏光層
200 反射防止性偏光板
210 反射防止性偏光板
30 液晶セル
40 第2の偏光板
41 第3の透明基材
42 第4の透明基材
43 第2の偏光層
50 バックライトユニット
A 粉末ケイ素
B 金型
C プレス板
D ケイ素柱
E ケイ素板
F 加熱炉
G 酸素(又は大気エアー)
H 酸化ケイ素柱
I 酸化ケイ素板
J 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、高屈折率層と、低屈折率層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、
ハードコート層形成用塗液がゾルゲル法により形成され屈折率が1.52〜1.54の範囲内となるハードコート層と、
大気下にて焼結された酸化度が1.3〜1.5の範囲内からなる酸化ケイ素を用いて真空蒸着により形成され屈折率が1.55〜1.70の範囲内となる高屈折率層と、
低屈折率層形成用塗液がゾルゲル法により形成され屈折率が1.30〜1.42の範囲内となる低屈折率層と、から形成され、
且つ、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムのハードコート層、高屈折率層、低屈折率層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項3】
観察者側から順に、請求項2に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−164181(P2011−164181A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23977(P2010−23977)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】