説明

反応性トリフェンジオキサジン染料、その調製及びその使用

本発明は、一般式I
【化1】


[式中、
及びA、B、R及びMはそれぞれ特許請求の範囲において定義されたものであり、
は、一般式II又はIII
【化2】


[式中、X〜X並びにR及びRもそれぞれ特許請求の範囲において定義されたものである]の基である]のトリフェンジオキサジン染料、それらの調製のための方法、及びヒドロキシル−及び/又はカルボキサミド−含有材料を染色及び捺染するためのそれらの使用、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維反応性染料の分野に関し、トリフェンジオキサジン構造を含む染料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反応性のフック(reactive hook)を含むトリフェンジオキサジン染料がすでに開示されている。しかしそれらは、織物材料の染色に用いる際には、多くの技術的欠点を有している。
【0003】
【特許文献1】国際公開第99/51681号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良された性質を有する染料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって本発明は、一般式I
【化1】

[式中、
及びAは独立して、水素、フェニル、(C〜C)−アルキル又は置換(C〜C)−アルキルであり、
Bは、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン又は置換ナフチレンであり、
は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
は、一般式II又はIIIの基であり、
【化2】

[式中、
〜Xは独立して、水素、シアノ又はハロゲンであるが、ただし、X及びXの内の少なくとも1個はハロゲンであり、
は、塩素又はフッ素であり、そして
及びRは独立して、水素;(C〜C)−アルキル;(C〜C)−シクロアルキル;ヒドロキシル、−SOM、−SOZ、−OSOM、−COOM、シアノ、(C〜C)−アルコキシ、ZSO−(C〜C)−アルコキシ又はフェニル置換された(C〜C)−アルキル;フェニル;(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、(C〜C)−アルコキシ−(C〜C)−アルコキシ、ヒドロキシ−(C〜C)−アルコキシ、ハロゲン、−SOM、−CHSOM、−SOZ、−SONR、−CON(R)−(CH2〜3−SOZ及び−NHCOXから選択される1個、2個又は3個の置換基により置換されたフェニルであるか、又は
とRが、相互に隣接した窒素原子と結合して、1個又は2個の基−O−又は−NR−(ここで、Rは水素又は(C〜C)−アルキルである)を含む、5員又は6員の飽和環を形成し、
[式中、Mは、水素、アンモニウム、アルカリ金属又は等価のアルカリ土類金属であり、
及びRは独立して、水素、(C〜C)−アルキル又はヒドロキシ−(C〜C)−アルキルであり、
は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
Zは、−CH=CH又は−CHCH(ここでYは、アルカリ除去可能な基である)であり、そして、
は、−CH(Hal)−CH−Hal又は−CH(Hal)=CH(ここでHalは、塩素又は臭素である)]]]のトリフェンジオキサジン染料を提供する。
【0006】
(C〜C)−アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、sec−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシルであってよい。同様のことは(C〜C)−アルコキシ基にもあてはまり、したがって、たとえばメトキシ又はエトキシとすることができる。
【0007】
(C〜C)−シクロアルキルは、シクロペンチル又はシクロヘキシルであるのが好ましいが、シクロブチル又はシクロヘプチルであってもよい。
【0008】
ハロゲンは、たとえばフッ素、塩素又は臭素とすることができる。
【0009】
Mのアルカリ金属は、特にはリチウム、ナトリウム又はカリウムであるが、その等価物がMと置き換えることが可能なアルカリ土類金属としては、特にカルシウムが挙げられる。Mは、特には水素、リチウム、ナトリウム又はカリウムであるが、それらの内でも水素又はナトリウムが特に好ましい。
【0010】
のアルカリ除去可能な基は、たとえば塩素、−OSOM、−SM、−OPO、又は(C〜C)−アルカノイルオキシたとえばアセチルオキシ、若しくはスルホベンゾイルオキシである。Yを意味するものとしては、スルファトが好ましい。したがってZは、−CHCHOSOM、又さらには−CH=CHであるのが好ましい。
【0011】
アルキルのA又はAは、たとえばヒドロキシル、アミノ又はスルファトで置換されているアルキルであり、ヒドロキシエチル、スルファトエチル又はアミノエチルであるのが好ましい。
【0012】
とAは同一のものを意味しているのが好ましく、両方ともが水素であればより好ましい。
【0013】
Bのフェニレン及びナフチレン基の置換基は、たとえば(C〜C)−アルキル(特に、メチル、エチル、プロピル又はブチル)、又はハロゲン(特に、塩素)である。
【0014】
Bが1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、2,6−ナフチレン又は2,7−ナフチレンであるのが好ましい。
【0015】
は、水素、メチル、エチル又はフェニルであるのが好ましいが、その中でも水素又はメチルが特に好ましい。
【0016】
特に好適な一般式Iのトリフェンジオキサジン染料においては、
及びAが、それぞれ水素であり;
Bが、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、2,6−ナフチレン又は2,7−ナフチレンであり;
が、水素、メチル、エチル又はフェニルである。
【0017】
それぞれにおいてYが一般式IIの基である、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、具体的には一般式IIの反応性基においてのみ異なっている別々な染料が互いに混合した形で存在していてもよい。このタイプの好適な混合物には、たとえば、Yが式IIaの基である反応性染料と、
【化3】

が式IIbである反応性染料とを含む。
【化4】

【0018】
〜Xはそれぞれ、シアノ、フッ素又は塩素であるのが好ましい。式IIとして特に好ましい基は、IIc〜IIfの構造を有する。
【化5】

【0019】
それぞれにおいてYが一般式IIIの基である、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料においては、その−NR構造が以下のHNRアミンから誘導されるのが好ましい:
アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、スルファトエチルアミン、アミノ酢酸、N−メチルアミノ酢酸、タウリン、N−メチルタウリン、メチルアミノメタンスルホン酸、ピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、β−フェニルエチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、アニリン、1−アミノ−2−、−3−若しくは−4−メチルベンゼン、1−アミノ−3,4−若しくは3,5−ジメチルベンゼン、1−アミノ−3−、−3−若しくは−4−エチルベンゼン、1−アミノ−2−、−3−若しくは−4−メトキシベンゼン、1−アミノ−4−エトキシベンゼン、1−アミノ−2−、−3−若しくは−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1−アミノ−2−、−3−若しくは−4−(2−メトキシエトキシ)ベンゼン、1−アミノ−2−、−3−若しくは−4−クロロベンゼン、2−、3−若しくは4−アミノフェニルメタンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、5−アミノベンゼン−1,3−若しくは−1,4−ジスルホン酸、4−アミノベンゼン−1,2−若しくは−1,3−ジスルホン酸、2−、3−若しくは4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−メチル−2−、−3−若しくは−4−アミノベンゼンスルホンアミド、N−ジメチル−2−、−3−若しくは−4−アミノベンゼンスルホンアミド、及びN−(2−ヒドロキシエチル)−2−、−3−若しくは−4−アミノベンゼンスルホンアミド。
【0020】
又はRが−SOZ基を含んでいるのが特に好ましく、下記の−NR構造IVa〜IVdが特に好ましい:
【化6】

【0021】
構造IVa〜IVdにおいては、
は、水素、(C〜C)−アルキル特にメチル、又はフェニルであり;
、R10及びR13はそれぞれ、水素;(C〜C)−アルキル、特にメチル又はエチル;又はヒドロキシル、−SOM、−OSOM、−COOM若しくはシアノ置換された(C〜C)−アルキル、特にヒドロキシエチル、スルホエチル又はスルファトエチル;であり、R11及びR12は独立して、水素;(C〜C)−アルキル、特にメチル;(C〜C)−アルコキシ特にメトキシ;ハロゲン、特に塩素;又は−SOM;であり、
14は、水素又は−SOMであり
15は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
Zは、−CHCHOSOM又は−CH=CHであり、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムである。
【0022】
−NRの構造としてさらに特に好ましいのは、式IVeの構造である:
【化7】

[式中、
16は、水素;(C〜C)−アルキル;又はヒドロキシル、−SOM、−OSOM、−COOM若しくはシアノ置換された(C〜C)−アルキル;であり、
17は、水素又は−SOMであり、
は、先に定義されたものであり、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムである]。
【0023】
一般式IIIの特に好適な基は、IIIa〜IIIcの構造を有する。
【化8】

ここでMは先に定義されたものである。
【0024】
それぞれが−SOZラジカルを含む、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、繊維反応性基−SOZに関して異なっていることを除けば、同一の構造を有することができる。特に、その他においては同一の構造である場合に、−SOZがその一方では−SOCH=CHであり、他方では−SOCHCHZ、より好ましくはβ−スルファトエチルスルホニルである。ビニルスルホニルの形における染料の割合は、特定の染料発色団を基準にして、約95モル%までとすることができる。ビニルスルホニル染料のβ−エチル−置換染料に対する割合は、モル比で5:95から95:5までの間とするのが好ましい。
【0025】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は一般に、固形の形態、溶解された形態、又は微細に分散された形態の染料調製物として存在する。固形の形態においては、それらには一般に、水溶性そして特に繊維反応性の染料としては通常の電解質塩、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム又は硫酸ナトリウムが含まれ、市販されている染料においては通常の助剤がさらに含まれていてもよく、そのようなものとしてはたとえば、水溶液においてpHを3〜7の間に設定することを可能とする緩衝剤物質(たとえば酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、三クエン酸ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム)、少量の乾燥剤、あるいは、それらが液状の水溶液(捺染糊に通常使用されるタイプの増粘剤成分を含む)として存在している場合には、それらには、調製物の寿命を延ばすための物質(たとえば防黴剤)も含まれる。
【0026】
たとえば、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、染料粉体又は顆粒を基準にして、10%〜80重量%の電解質塩(標準化剤(standardizing agent)と呼ばれることもある)を含む、染料粉体として又は染料顆粒として存在させる。顆粒は特に、50〜500mの粒径を有する。これらの固形調製物にはさらに、上述の緩衝剤物質を、調製物を基準にして全量で10重量%までの量で含んでいてもよい。本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料を水溶液中に存在させる場合には、水溶液を基準にして、水溶液中の全染料含量は約50重量%まで、たとえば5%〜50重量%であり、水溶液中の電解質塩含量は10重量%未満とするのが好ましい。水溶液(液状調製物)には、上述の緩衝剤物質を、一般的には10重量%まで、たとえば0.1%〜10重量%の範囲で含んでいてもよい。2重量%まで、たとえば0.1%〜2重量%の範囲とするのが好ましい。
【0027】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料の好適な調製物は、一般式Iのトリフェンジオキサジン染料を、たとえば適切なミルの中で水の存在下で摩砕することにより製造することが可能であり、粉体化調製物が製造できたら、液体を除去する。
【0028】
好適なミルは、ボールミル、スイングミル、ビードミル又はサンドミルである。ミルの中で、好ましくは水性の染料プレスケーキの形態のトリフェンジオキサジン染料を、当業者には公知の適切な助剤の存在下に摩砕して、0.5〜5μmの範囲の粒径とする。粒子の50%〜90%が1μm未満の粒径となるような、粒径分布にするのが好ましい。
【0029】
トリフェンジオキサジン染料、(単一又は複数の)助剤、及び水を、撹拌タンク又はビータートラフ(beater trough)中で予備混合しておくか、あるいはコロイドミルの中で予備粉砕しておくのが、おそらく有利であろう。
【0030】
摩砕操作は、ミルバッテリーの中で連続で実施してよいし、あるいは別な方法として、単一の摩砕装置の中でバッチ方式により実施してもよい。摩砕操作は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜40℃で実施する。
【0031】
粉体化した調製物を得るためには、このようにして得た液状調製物から、液体を除去しなければならない。それは、真空乾燥、凍結乾燥、ドラム乾燥機上での乾燥などにより実施することができるが、噴霧乾燥によるのが好ましい。噴霧乾燥をするための好適な装置は、真空パドル乾燥機か、好ましくは霧化乾燥機(atomization dryer)である。ミルベースは、2本の材料ノズル、加圧ノズル又はディスクを用いて霧化させることができる。
【0032】
ノニオン性分散剤をさらに加えて、分散体の安定性、特に貯蔵安定性、及び液状又は粉体化調製物の再分散性を改良するのが、おそらくは有利であろう。
【0033】
ノニオン性分散剤又は乳化剤の例は、たとえばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドと、たとえば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、アリールアルキルアリールフェノール又はカルボキサミドなどのアルキル化可能な化合物との反応生成物、たとえばC〜C10−アルキルフェノールに5〜10個のエチレンオキシド単位を付加させた生成物である。それらの分散剤の割合は、調製物中の一般式Iのトリフェンジオキサジン染料の割合を基準にして、好ましくは2%〜35重量%の範囲、より好ましくは5%〜30重量%の範囲である。
【0034】
一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、好ましくはたとえば、一般式V
【化9】

[式中、A、A、B、R及びMはそれぞれ先に定義されたものである]の化合物を、一般式VIの化合物と反応させることにより調製することができる:
D−Het (VI)
[式中、
Dは、フッ素又は塩素であり、
Hetは、式II又はIIIの基である]。
【0035】
一般式Vの化合物は公知であり、それらのいくつかは、たとえば国際公開第99/51681号パンフレットに記載されている。それらはたとえば、一般式VII
【化10】

[式中、A、A及びMはそれぞれ先に定義されたものである]の化合物を、酸化剤の存在下に、一般式VIIIのスルフィン酸と反応させることにより調製することができる。
【化11】

[式中、R及びBはそれぞれ先に定義されたもの、又はそれらの塩である](ベリヒテ(Berichte)28(1895)、1315〜1318を参照されたい)。
【0036】
有用な酸化剤としては、たとえば、鉄(III)塩、ペルオキシ二硫酸塩(過硫酸塩)、過マンガン酸塩、二酸化マンガン、クロム酸、過酸化物、過酸、重クロム酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、酸化銀、酸化鉛及び四酢酸鉛などが挙げられる。ペルオキシ二硫酸塩又は鉄(III)塩が好ましい。
【0037】
一般式VI、VII及びVIIIの化合物は公知であるか、及び/又は当業者公知の方法により調製することができる。
【0038】
それぞれにおいてYが一般式IIIの基である、一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、別な方法として、トリフルオロトリアジン又はトリクロロトリアジンを一般式Vの化合物と反応させて、一般式IX
【化12】

[式中、A、A、B、R及びMはそれぞれ先に定義されたものであり、F/Clはフッ素又は塩素である]の化合物を形成させることによるか、さらには、一般式Iのトリフェンジオキサジン染料をアミンHNR[式中、R及びRはそれぞれ先に定義されたもの]と反応させることにより、調製することも可能である。
【0039】
上述の縮合反応は当業者には自体公知であって、関連の文献に広く記述されている一般的な慣用の方法によって実施することができる。
【0040】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、上述の調製方法の過程において、溶液又は懸濁液として得られ、塩析により単離することができる。それらはまた噴霧乾燥することが可能であり、同様にして溶液又は懸濁液を蒸発させることもできる。
【0041】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、有用な染め付け特性(application properties)を有している。それらは、ヒドロキシル−及び/又はカルボキサミド−含有材料、たとえばシート状の構造(たとえば紙又は皮革)、又は、たとえばポリアミドのフィルムの形、又はたとえばポリアミド及びポリウレタンなどの塊状物の形、特に上記の材料の繊維の形のものを染色及び捺染するために使用される。それらは、各種のセルロース系繊維材料を染色及び捺染するために使用するのが好ましい。それらは、たとえばポリエステル繊維又はポリアミド繊維と綿とのブレンド物などのブレンドした布の中に存在するヒドロキシル−含有繊維を染色又は捺染するためにも有用である。インクジェット法によって織物又は紙に印刷することにも、それらを使用することもできる。
【0042】
したがって、本発明は、上記の材料を染色又は捺染するための本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料の使用、あるいは、より正確には、着色剤として1種又は複数の本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料を使用して、従来の方法でそのような材料を染色又は捺染するための方法をさらに提供するものである。
【0043】
上記の材料は、好ましいことには、繊維材料の形態、特に「かせ」又はパッケージの形での織布又は糸などの織物繊維の形態における用途を見出した。
【0044】
ヒドロキシル−含有材料は、天然又は合成によるもので、その例は、セルロース繊維材料又はそれらの再生製品やポリビニルアルコールなどである。セルロース繊維材料として好ましいのは綿であるが、他の植物繊維、たとえばリネン、大麻、ジュート及びラミー繊維なども挙げられる。再生セルロース繊維の例は、ステープルビスコース及びフィラメントビスコースである。
【0045】
カルボキサミド含有材料としては、たとえば、合成及び天然のポリアミド及びポリウレタン、特に、繊維の形状のものであり、その例としては、羊毛その他の動物の毛、絹、皮革、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−11及びナイロン−4などが挙げられる。
【0046】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、公知の技術を用いて、上述の基材、特に上述の繊維材料に染め付けたり、固着させたりすることができる。
【0047】
たとえば、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムなどの中性塩の存在下又は非存在下で、広く各種の酸結合剤を使用して、長浴(long liquor)からセルロース繊維への吸尽染色法によって染め付けすると、それらは、非常に良好なカラーイールドを有する染色を与える。吸尽染色のpHは、好ましくは3〜7の範囲、特に好ましくは4〜6の範囲である。液比は広い範囲の中で選択することが可能であり、たとえば(3:1)から(50:1)の間、好ましくは(5:1)から(30:1)の間である。染色は、温度40〜105℃の間、場合によっては加圧下で130℃までの温度で、そして通常使用される染色助剤の存在下又は不在下に、水性浴で実施するのが好ましい。染色された材料の湿潤堅牢性を向上させるために、後処理において未固着染料を除去することも可能である。この後処理は、具体的には、8〜9のpHと、75〜80℃の温度で実施する。
【0048】
ここでの一つの可能な方法としては、材料を温浴に浸漬し、浴を徐々に加熱して所望の温度にまで上げ、その温度で染色操作を完了させる方法がある。染料の吸尽を加速する中性塩を、浴の温度が実際の染色温度に達した後に添加してもよい。
【0049】
セルロース繊維への染料の固着に影響を与える酸結合剤としては、たとえば無機又は有機酸のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水溶性塩基性塩、又は加熱によってアルカリを放出する化合物などが上げられる。特に好適なものとしては、アルカリ金属水酸化物又は弱から中程度の無機若しくは有機酸のアルカリ金属塩が挙げられるが、アルカリ金属化合物として好ましいのは、ナトリウム又はカリウム化合物である。そのような酸結合剤の例を挙げれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ギ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム又はリン酸三ナトリウムなどがある。
【0050】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、高い反応性、良好な固着性、非常に良好なビルドアップ性、さらには高い光堅牢性及び発汗−光堅牢性の面で注目に値する。したがってそれらは、低い染色温度での吸尽染色法で使用可能であり、パッドスチーム法ではほんの短い蒸熱処理時間しか必要としない。固着の程度は高くしかも未固着部分は容易に洗い出すことが可能で、吸尽染色の程度と固着の程度の間の差は、極めて小さく、すなわち加水分解によるロスが非常に小さい。
【0051】
その上、非フェルト仕上げ又は低フェルト仕上げをした羊毛は非常に良好な堅牢性に染色することができる(そのような仕上げについては、たとえば、H.Rath、Lehrbuch der Textilchemie(Springer−Verlag)第3版(1972)、第295〜299頁、特にヘルコセット(Hercosett)法による仕上げ(第298頁);J.Soc.Dyers and Colorists、1972年第93〜99頁及び1975年第33〜44頁を参照されたい)。ここでは、羊毛に対する染色法は、常法に従って、酸性媒体中で実施する。たとえば染浴に、酢酸及び/又は酢酸アンモニウム、又は酢酸及び硫酸アンモニウム又は酢酸ナトリウムを添加して、所望のpHとすることができる。受容可能な均染性を有する染色をするためには、通常使用される均染剤を添加することが推奨されるが、そのようなものとしてはたとえば、シアヌル酸塩化物と3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸及び/又はアミノナフタレンスルホン酸との反応生成物をベースにした均染剤、又はたとえばステアリルアミンとエチレンオキシドの反応生成物をベースにした均染剤などが挙げられる。たとえば、本発明の染料は、吸尽法で使用するのが好ましく、その場合まずpHが約3.5〜5.5となるようにpH調節した酸性の染浴から、染色時間の最後までに、pHを中性から場合によってはpH8.5までの弱アルカリ性の範囲にまで変化させて、特に非常に濃い色の染色をする場合には、本発明の染料と繊維との間に完全な反応による結合を作らせる。それと共に、反応による結合に与らなかった染料の部分は除去する。
【0052】
本明細書に記載した方法は、他の天然ポリアミド又は合成ポリアミド及びポリウレタンからなる繊維材料を染色させる場合にも適用される。それらの材料は、文献記載で当業者公知の、慣用される染色及び捺染法を用いて染色することができる(たとえば、H.−K.Rouette『Handbuch der Textilveredlung』(Deutscher Fachverlag GmbH、Frankfurt am Main)参照)。
【0053】
溶解されるか又は微細に分散された染料を含む染色液及び捺染糊には、一般式Iのトリフェンジオキサジン染料及び水のみならず、さらなる添加物が含まれていてもよい。添加物の例を挙げれば、湿潤剤、消泡剤、均染剤、並びに織物材料の性質に影響する添加剤、たとえば柔軟化剤、難燃剤、防汚、防水、防油剤、又は水軟化剤などがある。捺染糊では特に、天然又は合成の増粘剤、たとえばアルギネートやセルロースエーテルを含んでいてもよい。染浴及び捺染糊の中における染料の量は、所望の色濃度に応じて、各種広い範囲で変化させることができる。一般式Iのトリフェンジオキサジン染料の量は一般に、それぞれ、染料される材料及び捺染糊を基準にして、0.01%〜15重量%、特には0.1%〜10重量%の範囲である。
【0054】
本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料は、染色操作の後で、繊維材料の上の未固着染料の部分を容易に洗い出すことができ、洗浄操作の際に分離した染料によって近傍の白地が汚されることがない、という事実についても注目に値する。このことは洗浄回数においても、染色操作に有利であり、したがってコストを削減できる。
【0055】
特にセルロース繊維材料に対して、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料を用いて行った染色及び捺染は、酸性領域だけではなくアルカリ性の領域においても高い色強度(color strength)と高い繊維−染料結合安定性を有しているだけでなく、さらには良好な耐光堅牢性、及び非常に良好な湿潤堅牢性たとえば洗濯、真水、海水、クロス染色及び発汗堅牢性、及び乾熱固定、プリーツ加工及びクロッキングに対する良好な堅牢性を有している。
【0056】
本発明はさらに、デジタル織物捺染のための捺染インキへの本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料使用、及び前記捺染インキそのものも提供する。本発明の文脈においては、デジタル織物捺染とは、特にインクジェット法を指すこととする。
【0057】
本発明の捺染インキは好ましくは、水性であって、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料の1種又は複数を、インキの全重量を基準にして、たとえば0.1重量%〜50重量%の量、好ましくは1重量%〜30重量%の量、より好ましくは1重量%〜15重量%の量で含む。それらには、本発明による一般式Iのトリフェンジオキサジン染料と、織物の捺染に使用されるその他の反応性染料とを組み合わせて含んでいてもよい。連続流動法で使用するインキでは、電解質を添加することにより、0.5〜25mS/mの導電率になるようにすることも可能である。
【0058】
有用な電解質としてはたとえば、硝酸リチウム及び硝酸カリウムなどが挙げられる。
【0059】
本発明の捺染インキでは、全量で1〜50%、好ましくは5〜30重量%の有機溶媒を含むことができる。
【0060】
好適な有機溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:
アルコール類たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、ペンチルアルコール、
多価アルコール類たとえば、1,2−エタンジオール、1,2,3−プロパントリオール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2,3−プロパンジオール、ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、D,L−1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−オクタンジオール、
ポリアルキレングリコール類たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、
2〜8個のアルキレン基を有するアルキレングリコール類たとえば、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、チオグリコール、チオジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、
多価アルコールの低級アルキルエーテル類たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、
ポリアルキレングリコールエーテル類たとえば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセロルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、
アミン類たとえば、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−アセチルエタノールアミン、N−ホルミルエタノールアミン、エチレンジアミン、
尿素誘導体類たとえば、尿素、チオ尿素、N−メチル尿素、N,N’−イプシロン−ジメチル尿素、エチレン尿素、1,1,3,3−テトラメチル尿素、
アミド類たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアミド、
ケトン類又はケトアルコール類たとえば、アセトン、ジアセトンアルコール、
環状エーテル類たとえば、テトラヒドロフラン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−ブトキシエタノール、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、ガンマ−ブチロラクトン、イプシロン−カプロラクタム、
さらには、スルホラン、ジメチルスルホラン、メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ジメチルスルホン、ブタジエンスルホン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、N−シクロヘキシルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、1,3−ビスメトキシメチルイミダゾリジン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−プロポキシエトキシ)エタノール、ピリジン、ピペリジン、ブチロラクトン、トリメチルプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレンジアミンテトラアセテート、エチルペンチルエーテル、1,2−ジメトキシプロパン、及びトリメチルプロパン。
【0061】
本発明の捺染インキには常用される添加剤をさらに含んでいてもよく、たとえば粘度調整剤を用いて、温度範囲20〜50℃における粘度を1.5〜40.0mPasの範囲とする。好適なインキでの粘度は1.5〜20mPas、特に好適なインキでの粘度は1.5〜15mPasである。
【0062】
有用な粘度調整剤にはレオロジー添加剤を挙げることができるが、たとえば:
ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー、ポリエーテルポリオール、複合増粘剤、ポリ尿素、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、変性ガラクトマンナン、ポリエーテル尿素、ポリウレタン、ノニオン性セルロースエーテルなどがある。
【0063】
その他の添加剤として、本発明の捺染インキに界面活性剤を加えて界面張力を20〜65mN/mに調整することもできるが、これは使用する方法(サーマル又はピエゾ技術)に応じて必要な場合に採用する。
【0064】
有用な界面活性剤としてはたとえば、各種界面活性剤、特にノニオン性界面活性剤、ブチルジグリコール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0065】
このインキにはさらに、通常使用される添加物たとえば真菌や細菌の成長を抑制するための物質を、インキの全重量を基準にして0.01〜1重量%の量で加えることができる。
【0066】
このインキは、常法に従って、成分を水に混合させることによって調製することができる。
【0067】
本発明の捺染インキは、幅広く各種の予備処理をした材料、たとえば絹、皮革、羊毛、ポリアミド繊維及びポリウレタン、特に各種のセルロース系繊維材料を捺染するための、インクジェット捺染法において有用である。そのような繊維材料としてはたとえば天然セルロース繊維、たとえば綿、リネン及び大麻、それにパルプ及び再生セルロースなどがある。本発明の捺染インキはまた、混紡布地、たとえば綿、絹、羊毛とポリエステル繊維又はポリアミド繊維との混紡の中に存在する予備処理したヒドロキシル−又はアミノ−含有繊維を捺染するのにも有用である。
【0068】
捺染インキに反応性染料のためのすべての固着薬剤及び増粘剤がすでに含まれている、通常の織物の捺染の場合とは対照的に、インクジェットプリントの場合には、別の前処理工程において助剤を織物基材に塗布しておかねばならない。
【0069】
たとえばセルロース及び再生セルロース繊維、さらには絹及び羊毛などの織物基材の前処理は、捺染に先立って水性アルカリ液で行う。反応性染料を固着させるためには、アルカリたとえば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アルカリ供与体たとえばクロロ酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ヒドロトロープ物質(hydrotropic substance)たとえば尿素、還元抑制剤たとえばニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び染色インクを塗布したときの意匠(motives)の流れを防ぐ目的の増粘剤たとえばアルギン酸ナトリウム、変性ポリアクリレート又は高度にエーテル化されたガラクトマンナンなどが必要である。
【0070】
これらの前処理用反応剤は、好適なアプリケータを使用して所定の量を均一に織物基材に塗布するが、そのためにはたとえば、2本又は3本ロールパッド、無接触スプレー技術を用いたり、発泡塗布の手段によったり、あるいは程よく適合させたインクジェット技術を用い、その後に乾燥させる。
【0071】
捺染後に、その織物繊維材料を120〜150℃で乾燥させてから固着させる。
【0072】
反応性染料を用いて調製したインクジェットプリントの固着は、室温で、又は飽和スチーム、過熱スチーム、加熱空気、高周波、赤外線照射、レーザー又は電子ビーム、あるいはその他の適切なエネルギー転換技術を用いて実施することができる。
【0073】
1相及び2相固着法の間では違いがある:
【0074】
1相固着においては、必要な固着用の薬剤はすでに織物基材の上に存在する。
【0075】
2相固着においては、この前処理は不要である。固着で必要なのはアルカリだけで、これはインクジェットプリントに引き続いて、途中で乾燥させることなく、固着工程の前に塗布する。たとえば尿素又は増粘剤などの添加物をさらに加える必要はない。
【0076】
固着の後には捺染後処理を行うが、これは、良好な堅牢性、高い艶及び申し分のない白地を得るための必要条件である。
【0077】
特にセルロース繊維材料に対して、本発明の捺染インキを用いて行った捺染は、酸性領域のみならずアルカリ性の領域においても、高い色強度と高い繊維−染料結合安定性を有しているだけでなく、さらには良好な耐光堅牢性、非常に良好な湿潤堅牢性(たとえば洗濯、真水、海水、クロス染色)及び発汗堅牢性を有しており、さらに又乾熱固定、プリーツ加工及びクロッキングに対する良好な堅牢性を有している。
【0078】
以下の実施例を、本発明を説明するために使用する。部及びパーセントは、特に記さない限り、重量によるものである。重量部と容積部の関係は、キログラムとリットルの関係に等しい。
【0079】
実施例において化学式の形で記述する化合物は、遊離の酸の形で示している。しかし一般的には、それらは、たとえばリチウム、ナトリウム又はカリウム塩などのそれらのアルカリ金属塩の形で調製、単離され、染色においてもそれらの塩の形で使用される。同様に、以下の実施例、特に表の中において遊離の酸の形で示す出発化合物や成分もまた、合成したまま、あるいはそれらの塩、特にアルカリ金属塩の形で使用することができる。
【0080】
本発明による染料について報告している可視域における吸収極大(λmax)は、それらのアルカリ金属塩の水溶液中で求めたものである。
【実施例】
【0081】
実施例1
a)74.2部の次式の化合物
【化13】

を1000部の15%塩酸の中で加熱して90℃とする。アセチル基の加水分解が終了したら、その反応混合物を冷却し、得られた残分を濾過して、式Vaの化合物を得る。
【化14】

【0082】
b)14.1部の4−(β−スルファトエチルスルホニル)アニリンと100部の水との溶液(pH:4〜4.5)を、50部の水及び100部の氷と9.4部のシアヌル酸塩化物との懸濁液に30分かけて添加する。アシル化反応をpH2で実施して、式VIaの化合物を得る。
【化15】

【0083】
c)32部の式Vaの化合物を500部の水中に懸濁させ、70℃でpH4〜4.5の溶液とする。45〜50℃に急冷してから、式VIaの化合物を20分かけて添加する。飽和NaHCO溶液を用いて、そのpHを4〜4.5に維持する。それに続けて、45〜50℃で撹拌する。
【0084】
反応が終了してから、その反応混合物を冷却して15〜20℃とし、2N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11〜11.5に調節し、そのpHを維持し、続けて撹拌する。
【0085】
ビニル化反応が終了してから、そのpHを6.5〜7に調節し、懸濁している染料を濾過し、乾燥させる。得られた10gの染料を、25℃、70mLの水の存在下で、6時間ビードミル(100gのガラスビーズ;直径0.3〜0.4mm)にかける。式Iaの微細に分散された染料
【化16】

は、ナイロン及び羊毛を、鮮明な、赤みがかったブルーの色調に染色する。
【0086】
実施例2
14.0部の式Vbの化合物
【化17】

を200部の水に懸濁させ、70℃でpH5.0〜5.5の溶液とする。50℃に急冷してから、4.0部の2,4,6−トリフルオロピリミジンを、30分かけて滴下する。20%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、pHを5.0〜5.5に維持する。続けて、その混合物を50〜55℃で2時間撹拌する。
【0087】
反応が終了してから、塩化ナトリウムを加えることにより染料を沈殿させ、吸引濾過をし、乾燥させる。得られた染料は次式Ibを有し、
【化18】

綿を、鮮明なブルーの色調に染色する。
【0088】
実施例3〜13
実施例1及び2に記述した方法を繰り返して、以下に示す実施例3〜13の染料を得る。
【化19】

【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
染色例1
8部の実施例1の染料を2000部の水及び5部の硫酸ナトリウムの中に溶解させ、1部の均染助剤(高級脂肪族アミンとエチレンオキシドの縮合反応生成物をベースとしたもの)及びさらに5部の酢酸ナトリウムを添加する。
【0092】
次いで、酢酸(80%)を用いてそのpHを4.5に調節する。その染浴を10分間で50℃に加熱し、その時点で100部の羊毛織布を加える。浴を加熱して、50分で温度100℃とし、100℃で60分かけてその羊毛を染色する。次いで浴を冷却して90℃とし、その時点で染色された羊毛布を取り出し、温水及び冷水を用いて洗浄し、次いで遠心脱水し、乾燥させる。得られたブルーの染色は、良好な光及び湿潤堅牢性を有していて、繊維中で均質である。
【0093】
染色例2
8部の実施例1に従って分散された染料を、2000部の水及び1部の均染助剤(高級脂肪族アミンとエチレンオキシドの縮合反応生成物をベースとしたもの)の中に懸濁させ、さらに5部の酢酸ナトリウムを添加する。次いで、酢酸(80%)を用いてそのpHを5に調節する。その染浴を10分間で50℃に加熱し、その時点で100部のナイロン織布を加える。浴を加熱して、50分で温度110℃とし、110℃で60分かけてそのナイロンを染色する。次いで浴を冷却して60℃とし、その時点で染色されたナイロン布を取り出し、温水及び冷水を用いて洗浄し、石けん洗いをし、次いで遠心脱水し、乾燥させる。
【0094】
得られたブルーの染色は、良好な光及び湿潤堅牢性を有していて、繊維中で均質である。
【0095】
染色例3
2部の実施例3に従って得られた染料と50部の塩化ナトリウムとを、999部の水に溶解させてから、5部の炭酸ナトリウム、0.7部の水酸化ナトリウム(32.5%水溶液の形態)及び、必要であれば、1部の湿潤剤を添加する。この染浴に100gの綿織布を加える。染浴の温度は最初の10分間は25℃に維持し、次いで、30分かけて最終温度(40〜80℃)まで上げ、その温度でさらに60〜90分間維持する。その後、その染色した布を最初に水道水を用いて2分間水洗してから、脱イオン水を用いて5分間水洗する。その染色した布を、50%酢酸を1部含む水溶液1000部中に40℃で10分間入れて中和する。次いでその布を、脱イオン水を用いて70℃で水洗いしてから、沸騰温度で15分間洗濯石けんを用いて洗い、もう一度水洗いをして、乾燥させる。得られたブルーの染色は色彩が強く、極めて良好な堅牢性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
及びAは独立して、水素、フェニル、(C〜C)−アルキル又は置換(C〜C)−アルキルであり、
Bは、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン又は置換ナフチレンであり、
は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
は、一般式II又はIIIの基であり、
【化2】

[式中、
〜Xは独立して、水素、シアノ又はハロゲンであるが、ただし、X及びXの内の少なくとも1個はハロゲンであり、
は、塩素又はフッ素であり、そして
及びRは独立して、水素;(C〜C)−アルキル;(C〜C)−シクロアルキル;ヒドロキシル、−SOM、−SOZ、−OSOM、−COOM、シアノ、(C〜C)−アルコキシ、ZSO−(C〜C)−アルコキシ又はフェニル置換された(C〜C)−アルキル;フェニル;(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、(C〜C)−アルコキシ−(C〜C)−アルコキシ、ヒドロキシ−(C〜C)−アルコキシ、ハロゲン、−SOM、−CHSOM、−SOZ、−SONR、−CON(R)−(CH2〜3−SOZ及び−NHCOXから選択される1個、2個又は3個の置換基により置換されたフェニルであるか、又は
とRが、相互に隣接した窒素原子と結合して、1個又は2個の基−O−又は−NR−(ここで、Rは水素又は(C〜C)−アルキルである)を含む、5員又は6員の飽和環を形成し、
[式中、
Mは、水素、アンモニウム、アルカリ金属又は等価のアルカリ土類金属であり、
及びRは独立して、水素、(C〜C)−アルキル又はヒドロキシ−(C〜C)−アルキルであり、
は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
Zは、−CH=CH又は−CHCH(ここでYは、アルカリ除去可能な基である)であり、そして、
は、−CH(Hal)−CH−Hal又は−CH(Hal)=CH(ここでHalは、塩素又は臭素である)]]]
のトリフェンジオキサジン染料。
【請求項2】
及びAが、それぞれ水素であり、
Bが、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、2,6−ナフチレン又は2,7−ナフチレンであり、
が、水素、メチル、エチル又はフェニルである、
請求項1に記載のトリフェンジオキサジン染料。
【請求項3】
が、式IIc、IId、IIe又はIIf
【化3】

の基である、請求項1又は2に記載のトリフェンジオキサジン染料。
【請求項4】
が、一般式IIIの基であって、
ここで−NRが、式IVa、IVb、IVc又はIVd
【化4】

[式中、
は、水素;(C〜C)−アルキル、特にメチル;又はフェニル;であり、
、R10及びR13はそれぞれ、水素;(C〜C)−アルキル、特にメチル又はエチル;又はヒドロキシル、−SOM、−OSOM、−COOM若しくはシアノ置換された(C〜C)−アルキル、特にヒドロキシエチル、スルホエチル又はスルファトエチル;であり、R11及びR12は独立して、水素;(C〜C)−アルキル、特にメチル;(C〜C)−アルコキシ、特にメトキシ;ハロゲン、特に塩素;又は−SOMであり、
14は、水素又は−SOMであり、
15は、水素、(C〜C)−アルキル又はフェニルであり、
Zは、−CHCHOSOM又は−CH=CHであり、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムである]の基であるか、
又は−NRが式IVe
【化5】

[式中、
16は、水素;(C〜C)−アルキル;又はヒドロキシル、−SOM、−OSOM、−COOM若しくはシアノ置換された(C〜C)−アルキル;であり、
17は、水素又は−SOMであり、
は、請求項1において定義されたものであり、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムである]
の基である、請求項1又は2に記載のトリフェンジオキサジン染料。
【請求項5】
が、一般式IIIa〜IIIc
【化6】

[式中、Mは請求項1で定義されたものである]
の基である、請求項1又は2に記載のトリフェンジオキサジン染料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリフェンジオキサジン染料を調製するための方法であって、一般式V
【化7】

[式中、A、A、B、R及びMはそれぞれ請求項1において定義されたものである]の化合物を、一般式VI
D−Het (VI)
[式中、
Dは、フッ素又は塩素であり、
Hetは、式II又はIIIの基である]
の化合物と反応させることを含む、方法。
【請求項7】
が一般式IIIの基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリフェンジオキサジン染料を調製するための方法であって、
トリフルオロトリアジン又はトリクロロトリアジンを一般式Vの化合物と反応させて、一般式IX
【化8】

[式中、A、A、B、R及びMはそれぞれ請求項1において定義されたものであり、F/Clはフッ素又は塩素である]の化合物を形成させ、
さらに、一般式IXの化合物をアミンのHNR[式中、R及びRはそれぞれ請求項1において定義されたものである]と反応させることを含む、方法。
【請求項8】
ヒドロキシル−及びカルボキサミド−含有材料を染色及び捺染するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリフェンジオキサジン染料の使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリフェンジオキサジン染料を、固形の形態、溶解された形態、又は微細に分散された形態で含む、染料調製物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリフェンジオキサジン染料を含む、デジタル織物捺染のための捺染インキ。

【公表番号】特表2008−527062(P2008−527062A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548806(P2007−548806)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056969
【国際公開番号】WO2006/072548
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】