説明

反応性ポリウレタンベースのポリマー

複数の反応性基を有するポリウレタンポリマーは、容易に入手可能な前駆体から、容易に調製される。ポリマーの反応性基は、分析物、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析のためのエネルギー吸収分子、蛍光部分等のために、結合性官能基で誘導体化される。反応性基は、選択される反応パートナーに対して所望の結合活性もしくは特異性を有する異なる反応性基に変換されうる。ポリマーは、分析物の分析、捕捉、分離、または精製に使用されるデバイスに組み込まれる。例示的な一実施形態において、本発明は、本発明のポリマーでコーティングされた基材を提供し、基材は、質量分析計用のプローブとしての使用に適合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は、2003年10月20日に出願された米国仮特許出願第60/513,000号および2004年10月14日に出願された米国特許出願(代理人整理番号061825−5004US)に基づく優先権を主張するものであり、それらの内容は、この引用により本明細書に記載されたものとする。
【背景技術】
【0002】
バイオアッセイは、生物学的試料中における標的物質の存在および/または量について探索するために使用される。表面に基づくアッセイにおいて、分析対象種は、捕捉されて、固体支持体上で検出される。表面ベースのアッセイの一例は、DNAマイクロアレイである。DNAマイクロアレイの使用は、多数の遺伝子を同時にモニターするその能力に起因して、遺伝子発現および遺伝子型同定の研究において広範に採択されるようになった(Schenaら、サイエンス(Science)270:467−470(1995年);Pollackら、Nat.Genet.23:41−46(1999年))。アレイは、さらに、他の結合部分(例、抗体、タンパク質、ハプテンまたはアプタマー等)を使用して製造され、アレイ形式での広範な種々のバイオアッセイを促進しうる。
【0003】
レーザー脱離質量分析法は、タンパク質を検出するのに特に有用なツールである。SELDIは、質量分析プローブの表面が、表面上の選択性吸着による分析物の捕捉(「アフィニティー質量分析法」)を介するか、またはエネルギー吸収分子のプローブ表面への結合による脱離およびイオン化への支援(「表面増強ニート脱離(Surface−enhanced neat desorption)」すなわち「SEND」)を介して、分析プロセスにおいて活性部を務めるレーザー脱離質量分析の方法である。上記の方法は、当技術分野に、記載されている。例えば、米国特許第5,719,060号明細書および同第6,225,047号明細書(両文献ともHutchensおよびYip)を参照のこと。
【0004】
SELDIのための機能性表面を有するプローブは、当技術分野では公知である。国際特許国際公開第00/66265号パンフレット(Richら、「気相イオン分析法のプローブ(Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer)」、2000年11月9日))は、分析物の吸着のために官能的に結合したヒドロゲルを伴う表面を有するプローブを記載する。米国特許出願第US2003 0032043 A1号明細書(PohlおよびPapanu、「ラテックスベースの吸着性チップ(Latex Based Adsorbent Chip)」、2002年7月16日)は、その表面が機能性ラテックス粒子を含むプローブを記載する。米国特許第5,877,297号明細書、同第5,594,151号明細書、同第4,979,959号明細書、同第5,002,582号明細書、同第5,258,041号明細書、同第5,512,329号明細書、同第5,741,551号明細書および同第4,839,278号明細書を参照のこと。
【0005】
バイオアッセイ適用のために有効な機能性材料は、検出(例えば、質量分光分析)に供される場合に適切なシグナルを提供するように、関連の試料から十分な量の分析物を固定化する十分な能力を有する必要がある。適切な機能性材料は、さらに、特に、試料およびコントロールが、別々の吸着剤表面(例えば、隣接チップ表面)において分析されなければならないアッセイ形式において、プロファイリング実験に有益なように適用されるために、高度に再現可能な表面を提供しなければならない。高度に再現可能な表面化学に基づかないチップは、アッセイ(例えば、プロファイリング比較)を行った場合に、有意誤差を生じる結果となる。
【0006】
新規の機能性材料、該材料に組み込まれるデバイスおよびこのような材料を形成する方法に対する当技術分野における必要性は、ヒドロゲル部分を含有するデバイスの参考文献により、例証されている。一般的に、ヒドロゲルを含有するデバイスは、ヒドロゲルのin situ重合により、基材(例えば、ビーズ、粒子、プレート等)上に形成される。ヒドロゲルを含有するデバイスの選択性および再現性は、多くの実験変数(モノマー濃度、モノマー比、開始剤の濃度、溶媒の蒸発速度、周囲湿度(溶媒が水である場合)、架橋剤濃度、実験温度、ピペッティング時間、散布条件、反応温度(熱重合の場合)、反応湿度、紫外線放射の均一性(UV光重合の場合)および周囲酸素条件を含む)に高度に依存することが多い。上記のパラメータの多くは、製造環境において制御されうるが、再現性に影響を与えるこれらのパラメータの全てを制御するのが不可能でないとしても困難である。結果として、インサイチュ重合は、スポット対スポット、チップ対チップ、およびロット対ロットからの全パラメータの比較的不十分な再現性に終わる。
【0007】
従って、機能性材料と、アッセイごとに再現性のある結果を提供し、使用が容易であり、そして複数の分析物系において定量的なデータを提供するこれらの材料を含むデバイスとに対して、大きな必要性が存在する。さらに、広範に認容されるためには、上記の材料は、安価でかつ作製するのに容易であり、低い非特異的結合が認められ、多様の機能性デバイス形式に形成されることが可能であるのが望ましい。上記特徴を有する材料を組み込んでいるデバイスの利用可能性は、研究、医療環境の個々の時点(診察室、緊急処置室、野外等)、およびハイスループット試験適用で、有意に影響を与える。本発明は、これらおよび他の望ましい特徴を有する機能性材料を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な要約
本発明は、ヒドロゲル中に有効に重合したポリウレタンを提供する。本発明のポリウレタンは、ウレタンを形成するように組み合わされた反応性官能基を含む少なくとも2つの種のコポリマーである。本発明のポリマーには、場合により、結合性分析物結合性官能基、エネルギー吸収マトリックス分子(EAM)またはそれらの組み合わせがさらに含まれる。
【0009】
例示的な一態様において、本発明は、(i)少なくとも3種の反応性部分(例えば、ヒドロキシル部分、チオール部分またはそれらの組み合わせ)を含む架橋基、(ii)2種以上の反応性部分(例えば、ヒドロキシル部分、チオール部分またはそれらの組み合わせ)を含む第一モノマー、(iii)イソシアネート部分、イソチオシアネート部分またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2種の反応性部分を含む第二モノマーで形成されるコポリマーであるポリウレタンを提供する。特定の実施形態において、上記ポリウレタンは、さらに、重合性エネルギー吸収マトリックス分子(EAM)から誘導された部分、分析物結合性官能基またはそれらの組み合わせを組み込んでいる。
【0010】
別の一態様において、本発明は、ポリウレタンベースのヒドロゲルを提供する。該ヒドロゲルには、分析物結合性官能基、エネルギー吸収部分またはそれらの組み合わせ、および架橋したポリウレタン部分が含まれる。ポリウレタン部分は、ポリウレタン単位の反応生成物であり、各単位は、複数のイソシアネートもしくはイソチオシアネート部分と複数の内在するウレタン結合を含む。単位間の結合は、イソシアネートもしくはイソチオシアネート部分と内在するウレタン結合の反応から形成される。一実施形態において、ポリウレタン単位は、上記のこれらの単位である。
【0011】
本発明は、さらに、本発明のポリウレタンヒドロゲルを組み込むデバイスを提供する。例示的なデバイスとして、表面を有する固体支持体が挙げられる。上記ポリウレタンヒドロゲルは、表面上に固定化される。
【0012】
本発明の例示的なデバイスには、本発明のポリウレタンから形成される基材および機能性フィルムが含まれ、該ポリウレタンは、基材に共有結合する。基材の性質は、機能性材料の用途によって決まる。好適な一実施形態において、基材は、プレートもしくはチップの形態であることが可能である。例示的な一実施形態において、デバイスは、質量分析法と併せて使用するチップであり、例えば、基材が、係合するように構成されている。チップが、線形飛行時間型質量分析に使用されるならば、該基材は、導体(例、金属等)を含むのが好ましい。バイオチップが、垂直抽出に関連する質量分析に使用されるならば、該基材は、非導体を含むのが好ましい。バイオチップが、別の検出方法(例、バイオチップ表面での蛍光検出等)に使用されるならば、適切な材料(例、プラスチックもしくはガラス等)が使用されることが可能である。
【0013】
別の方法として、上記材料は、クロマトグラフィーによる分離(例、アフィニティークロマトグラフィー等)のために、利用され、該基材は、適切に構成される適切なクロマトグラフィー用材料から形成されうる。従って、該基材は、場合により、ビーズもしくは粒子の形態である。
【0014】
上記基材は、通常、ヒドロゲルが官能基を介して固定化された官能基を有する。例えば、アルミニウムチップは、表面Al−OH基を含有する。さらに、該アルミニウムチップは、二酸化ケイ素でコーティングされうる。他の金属(例、アルマイト)は、官能基を備える表面を有する。別の方法として、基材は、プラスチックから構成されてもよく、この場合は、官能基は、一体的な表面部分として既に存在してもよく、または該表面は、当業者に周知の方法を使用して、誘導体化されてもよい。本発明のデバイスは、さらに、基材と機能性材料の間に、基材に機能性材料を定着させるリンカーアームを含んでもよい。
【0015】
本発明のヒドロゲルは、非常に多くの用途があり、多種多様な結合性官能基を組み込むことが可能である。特定の実施形態において、官能基は、正に帯電した(アニオン交換)因子、負に帯電した(カチオン交換)因子、キレート剤(例えば、キレート剤は、金属イオンもしくは生体特異性化合物(例えば、抗体もしくは細胞性受容体)と配位共有結合に関与しうる)であり得る。誘導体化に好適な化合物としては、N,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム塩(例えば、塩化物)N,N−ジメチルエタノールアミン(強アニオン交換、すなわち、「SAX」)、N,N−ジメチルオクチルアミン(SAX)、N−メチルグルカミン(弱アニオン交換、すなわち「WAX」)、3−メルカプトプロパンスルホネート(強カチオン交換、すなわち「SCX」)、3−メルカプトプロピオネート、ジメチル酢酸、ジヒドロキシ安息香酸、(弱カチオン交換、すなわち「WCX」)またはN,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リジンもしくはN−ヒドロキシエチルエチレンジアミノ−三酢酸(NTA)(固定化金属キレート剤もしくは「IMAC」)が挙げられる。
【0016】
別の一態様において、本発明は、試料中の分析物を検出する方法を提供する。該方法は、分析物を本発明の吸着ポリウレタンと接触させて、分析物の捕捉を可能にする工程、および該機能性材料によって分析物の捕捉を検出する工程を包含する。特定の実施形態において、分析物は、生体分子(例、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、またはそれらのハイブリッド)である。他の実施形態において、分析物は、有機分子(例、薬物、薬物候補、補因子または代謝産物等)である。別の実施形態において、分析物は、無機分子(例、金属錯体もしくは補因子等)でありうる。
【0017】
分析物の検出は、任意の当技術分野で認容されている方法もしくはデバイスにより、達成されうる。特定の実施形態において、分析物は、質量分析(特に、レーザー脱離/イオン化質量分析)によって検出される。上記の方法において、分析物が生体分子である場合、該方法は、検出の前に、捕捉された分析物にマトリックスを適用する工程を包含するのが好ましい。別の方法として、エネルギー吸収マトリックス部分は、機能性材料の構造体中に共重合される。他の実施形態において、分析物は、標識され(例えば、蛍光的に)、該標識の検出器(例えば、CCDアレイのような蛍光検出器)により、デバイス上で検出される。特定の実施形態において、上記方法は、デバイスの1つもしくは複数のアドレス可能位置に試料を適用することと、1つもしくは複数のアドレス可能位置に捕捉された分析物を検出することによって、試料中において特定のクラスの分析物(例えば、生体分子)をプロファイリングすることを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
I.略語
NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド);PDS(ピリジニルジスルフィド);PNP(パラ−ニトロフェニルカーボネート);NHM(N−ヒドロキシマレイミド);PFP(パラフルオロフェノール);EAM(エネルギー吸収部分);PVA(ポリビニルアルコール)NTA、(N−ヒドロキシエチルエチレンジアミノ三酢酸)、SPA(シナピン酸)、CHCA(アルファ−シアノ−4−ヒドロキシ−コハク酸)、TMP(トリメチロールプロパン)、PNP(p−ニトロフェノール)。
【0019】
II.定義
特に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学用語は、一般的に、本発明が属する技術分野の技術者が一般的に理解するのと同一の意味を有する。一般的に、本明細書中で使用される命名法、および以下に記載の細胞培養、分子遺伝学、有機化学、核酸化学およびハイブリッド形成における実験手順は、当技術分野において周知でありかつ通例使用されるものである。標準的技法が、核酸とペプチドの合成のために、使用される。技法および手順は、一般的に当技術分野において従来の方法および様々な一般的な参考文献に従って、実施され、それらは、本明細書の全体にわたって提供されている。本明細書中で使用される命名法および以下に記載される分析化学、および有機合成における実験手順は、当技術分野において周知でありかつ通例使用されるものである。標準的技法、またはそれらの改変が、化学合成および化学分析のために使用される。
【0020】
用語「ホスト」および「分子ホスト」は、取り囲みもしくは部分的に取り囲み、かつ分子「ゲスト」と吸引的に相互作用する分子をほぼ交換可能に意味する。「ホスト」および「ゲスト」が、相互作用する場合、結果としての種は、本明細書において「錯体」と称する。
【0021】
置換基が、左側から右側に記載されるそれらの従来型の化学式により特定される場合、それらは、右側から左側へと構造を記載する結果として生じる化学的に同一の置換基も同じように含む。例えば、−CHO−は、−OCH−を表すことも意図し、−NHS(O)−は、−S(O)HN−を表すことも意図する。
【0022】
用語「アルキル」は、それ自体でもしくは別の置換体の一部として、特に明記しない限り、直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、或いはそれらの組み合わせを意味し、前記炭化水素ラジカルは、完全に飽和されても、一価不飽和もしくは多価不飽和でもよく、明示される炭素原子の数(つまり、C−C10は、1〜10個の炭素を意味する)を有する二価ラジカルおよび多価ラジカルを含有することが可能である。飽和炭化水素ラジカルの例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルのような基、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1個または複数個の二重結合もしくは三重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例として、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、3−ブチニル、およびそれよりも高級の同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルキル」は、特に明記しない限り、「ヘテロアルキル」等の以下にさらに詳細に定義されるこれらのアルキル誘導体を含めることを意味する。アルキル基は、炭化水素基に限定されるが、「ホモアルキル」と称される。
【0023】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体もしくは別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、安定した直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、規定された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、窒素および硫黄原子は、場合により酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、場合により四級化されてもよい。ヘテロ原子(O、N、およびSi)は、ヘテロアルキル基の任意の内部位置かまたはアルキル基が該分子の残部に結合する位置に配置されうる。例として、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが挙げられるが、これらに限定されない。最大2種までのヘテロ原子が、例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHのように連続してもよい。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体もしくは別の置換体の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価のラジカルを意味し、例として、以下に限定されないが、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−が挙げられる。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子は、該鎖の末端のいずれかまたは両方を占有することが可能である(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。なおさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基に関して、該連結基の方向は、連結基の式が記載される方向によって、意図されない。例えば、式−C(O)R’−は、−C(0)R’−と−R’C(O)−の両方を示す。
【0024】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカルに関する置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称されることが多いこれらの基を含む)は、これらに限定されないが、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CNおよび−NOから選択される種々の基の1種もしくはそれ以上(0から(2m’+1)の範囲の数で(式中、m’は、上記ラジカル中の炭素原子の総数である))であることが可能である。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、各々好ましくは独立して、水素、置換もしくは未置換のヘテロアルキル、置換もしくは未置換のアリール(例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換もしくは未置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が2個以上のR基を含有する場合、例えば、R基の各々が、これらの基のうち2個以上が存在する場合に各R’、R’’、R’’’およびR’’’’基であるように独立して、選択される。R’とR’’が、同一の窒素原子に結合する場合、それらは窒素原子と一緒に、5−、6−、または7−員環を形成することが可能である。例えば、−NR’R’’は、これらに限定されないで、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基に関する上記の考察から、当業者は、用語「アルキル」が、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCH等)のような水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含有することを意味することを理解するだろう。
【0025】
上記の用語の各々は、指示されるラジカルの置換と未置換の両方の形態を含むことを意味する。
【0026】
本明細書中で使用される、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0027】
本明細書中で使用される「結合性官能基」、または「分析物結合性官能基」は、「アッセイされる物質」のようなある種の物質に対して親和力を有する部分、つまり、特異的物質と相互作用して本発明の吸着性材料に特異的物質を固定化することができる部分を意味する。結合性官能基は、クロマトグラフィー用もしくは生体特異性でありうる。クロマトグラフィー用の結合性官能基は、電荷−電荷、親水性−親水性、疎水性−疎水性、ファンデルワールス相互作用およびそれらの組み合わせを介して物質を結合する。生体特異性の結合性官能基は、一般的に、1つもしくはそれ以上の上記の相互作用を含む、相補的な3次元構造に関与する。生体特異的相互作用の組み合わせの例として、抗原と対応する抗体分子、核酸配列とその相補的配列、エフェクター分子と受容体分子、酵素と阻害物質、糖鎖含有化合物とレクチン、抗体分子と前記抗体に対して特異的な別の抗体分子、受容体分子と対応する抗体分子などの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の特異的な結合物質の例として、化学的にビオチン修飾された抗体分子またはポリヌクレオチドとアビジン、アビジン結合された抗体分子とビオチン、およびそのような組み合わせが挙げられる。
【0028】
「分子の結合パートナー」および「特異的結合パートナー」は、分子対、通常、特異的な結合を示す生体分子の対を指す。分子結合パートナーとして、制限することなく、受容体と配位子、抗体と抗原、ビオチンとアビジン、およびビオチンとストレプトアビジンが挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用される「吸着フィルム」は、アッセイされる物質が固定化され、特異的な結合反応が起こる領域を意味する。前記反応は、場合により、試験試料の流れ方向に沿った分布を有する。
【0030】
本明細書中で使用される用語「ポリマー」は、「コポリマー」を含み、用語「オリゴマー」と交換可能に使用される。
【0031】
本明細書中で使用される「結合される」は、化学吸着と物理吸着を含む相互作用(例えば、共有結合、イオン結合、およびそれらの組み合わせ)を包含する。
【0032】
「独立して選択される」は、記載される基が、同一または異なることが可能であることを示唆するように、本明細書中で使用される。
【0033】
「分析物」は、検出されるのが望ましい試料の任意の成分を指す。該用語は、試料中の単一成分もしくは複数成分を指しうる。分析物には、例えば、生体分子が含まれる。生体分子は、任意の生物材料から提供されうる。
【0034】
「生体分子」もしくは「生物有機分子」は、通常、生存生物によって作られる有機分子を指す。上記の例として、例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、ステロイド、核酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメント、炭水化物、脂質、およびこれらの組み合わせ(例えば、糖タンパク質、リボ核タンパク質、リポタンパク質等)を含む分子が挙げられる。
【0035】
「生物材料」は、生体、器官、組織、細胞もしくはウィルスから誘導された全ての材料を指す。上記には、生物流体(例、唾液、血液、尿、リンパ液、前立腺液、精液、乳等)、さらに上記の任意の抽出物、例えば、細胞抽出物もしくは溶解産物(例えば、一次組織もしくは細胞、培養組織もしくは細胞、正常組織もしくは細胞、病的組織もしくは細胞、良性組織もしくは細胞、癌組織もしくは細胞、唾液腺組織もしくは細胞、腸組織もしくは細胞、神経組織もしくは細胞、腎臓組織もしくは細胞、リンパ組織もしくは細胞、膀胱組織もしくは細胞、前立腺組織もしくは細胞、尿生殖器組織もしくは細胞、腫瘍組織もしくは細胞、腫瘍新生血管組織もしくは細胞等から)、細胞培養媒体、分画された試料(例えば、血清もしくは血漿)等が含まれる。例えば、細胞溶解物試料が、場合により抽出される。
【0036】
「気相イオン分析計」は、気相イオンを検出する装置を指す。気相イオン分析計は、気相イオンを供給するイオン供給源を含む。気相イオン分析計には、例えば、質量分析計、イオン移動度スペクトル検出器、および全イオン流測定装置が含まれる。「気相イオン分析法」は、気相イオンを検出するための気相イオン分析計の使用を指す。
【0037】
「質量分析計」は、気相イオンの質量電荷比に変換できるパラメータを測定する気相イオン分析計を指す。質量分析計は、一般的に、イオン供給源と質量分析計を含む。質量分析計の例は、飛行時間型、磁場型、四重極型フィルター、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴、静電場分析計およびこれらの混成である。「質量分析法」は、気相イオンを検出するための質量分析計の使用を指す。
【0038】
「レーザー脱離質量分析計」は、分析物を脱離させ、揮発させ、イオン化する手段として、レーザーエネルギーを使用する質量分析計を指す。
【0039】
「質量分析計」は、気相イオンの質量電荷比に変換することが可能なパラメータを測定するための手段を備える質量分析計のサブアッセンブリーを指す。飛行時間型質量分析計において、質量分析計は、イオン光学器(ion optic assembly)、飛行領域およびイオン検出器を備える。
【0040】
「イオン供給源」は、気相イオンを提供する気相イオン分析計のサブアッセンブリーを指す。一実施形態において、イオン供給源は、脱離/イオン化プロセスを介してイオンを提供する。上記の実施形態は、一般的に、イオン化エネルギーの供給源(例えば、レーザー脱離/イオン化供給源)に対して尋問可能な関係に、そして気相イオン分析計の検出器を用いる大気圧もしくは大気圧以下で同時に連絡して、プローブを位置的に係合するプローブ界面を含む。
【0041】
分析物を固体相から脱離する/イオン化するためのイオン化エネルギーの形態には、例えば、(1)レーザーエネルギー;(2)高速原子(高速原子衝撃において使用);(3)放射性核種のベータ崩壊を介して発生する高エネルギー粒子(プラズマ脱離において使用);(4)2次イオンを発生させる1次イオン(2次イオン質量分析法において使用)が含まれる。固体相分析物のためエネルギーをイオン化する好適な形態は、レーザー(レーザー脱離/イオン化において使用)、特に、窒素レーザー、Nd−Yagレーザーおよび他のパルス化レーザー供給源である。「フルエンス」は、応答画像の単位面積当りの放出するエネルギーを示す。レーザーのような高フルエンス供給源は、約1mJ/mm〜約50mJ/mmを放出すると考えられる。通常、試料は、プローブの表面上に配置され、プローブは、プローブ界面に係合され、プローブ表面は、イオン化エネルギーに曝露される。上記エネルギーは、表面から気相に分析物分子を脱離し、それらをイオン化する。
【0042】
分析物のイオン化エネルギーの他の形態には、例えば、(1)気相の中性粒子をイオン化する電子;(2)気相、固体相、または液相の中性粒子からイオン化を誘導する強電場;および(3)イオン化粒子もしくは電場と、固体相、気相、および液相の中性粒子の化学イオン化を誘導する中性の化学物質との組み合わせを利用する供給源が含まれる。
【0043】
「表面増強レーザー脱離/イオン化」すなわち「SELDI」は、気相イオン分析計のプローブ界面を係合するSELDIプローブの表面に分析物が捕捉された、脱離/イオン化気相イオン分析法(例えば、質量分析)を指す。「SELDI MS」において、気相イオン分析計は、質量分析計である。SELDI技術は、例えば、米国特許第5,719,060号明細書(HutchensとYip)および米国特許第6,225,047号明細書(HutchensとYip)に記載されている。
【0044】
「表面増強アフィニティー捕捉」(「SEAC」)もしくは「アフィニティー気相イオン分析法」(例えば、「アフィニティー質量分析」)は、吸収剤表面(「SEACプローブ」)を含むプローブを使用するSELDIの方法の1つのバージョンである。「吸着剤表面」は、吸着剤(「捕捉試薬」もしくは「アフィニティー試薬」とも呼ばれる)が結合されるプローブの表面を表す試料を示す。吸着剤は、分析物(例えば、標的ポリペプチドもしくは核酸)を結合できる任意の材料である。「クロマトグラフィー用吸着剤」は、通常クロマトグラフィーにおいて使用される材料を示す。生体特異的吸着剤は、生体分子、例えば、核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖、脂質、ステロイドまたはこれらの共役型(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質共役型)を含む吸着剤を指す。SELDIに使用される吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号明細書(HutchensとYip)「差の分布を生み出す保持クロマトグラフィーの使用(Use of retentate chromatography to generate difference maps)」2001年5月1日」に見出すことができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、SEACプローブは、選択した吸着剤を提供するように改変できる予め活性化された表面として提供される。例えば、特定のプローブは、共有結合を介して生体分子を結合できる反応性部分を備える。エポキシドおよびカルボジイミダゾールは、生体特異的吸着剤(例、抗体もしくは細胞受容体等)を共有結合する有用な反応性部分である。
【0046】
好適な一実施形態において、アフィニティー質量分析は、分析物を含む液体試料をSELDIプローブの吸着剤表面に適用することを含む。吸着剤に対して親和力を有する分析物(例、ポリペプチド等)は、プローブ表面に結合する。通常、次に該表面を洗浄して、未結合の分子を除去し、残留分子をそのままにする。分析物保持の程度は、使用された洗浄液の厳密さの機能である。次に、エネルギー吸収材料(例えば、マトリックス)を吸着剤表面に適用した後、レーザー脱離/イオン化質量分析により、残留分子を検出する。
【0047】
SELDIは、タンパク質プロファイリングに有用であり、試料中のタンパク質が、1もしくはいくつかの異なるSELDI表面を用いて、検出される。同様に、タンパク質プロファイリングは、発現解析に有用であり、各種の試料タンパク質プロファイルを比較して、試料間のタンパク質発現の差異を検出する。
【0048】
「表面増強ニート脱離」すなわち「SEND」は、プローブ表面に結合するエネルギー吸収分子の層を含むプローブ(「SENDプローブ」)の使用を含むSELDIの1つのバージョンである。例えば、共有結合もしくは非共有結合により、結合されることが可能である。従来型のMALDIと異なり、SENDの分析物は、脱離/イオン化のためにエネルギー吸収分子の結晶マトリックス内への捕捉を必要としない。
【0049】
SEAC/SENDは、捕捉試薬とエネルギー吸収分子の両方が、試料が存在する表面に結合するSELDIのバージョンである。SEAC/SENDプローブは、従って、外部マトリックスを利用する必要がなく、アフィニティー捕捉および脱離を介して、分析物を捕捉することができる。C18SENDチップは、捕捉試薬として機能するC18部分と、エネルギー吸収部分として機能するCHCA部分を含むSEAC/SENDの1つのバージョンである。
【0050】
「表面増強した光感受性結合および放出」すなわち「SEPAR」は、分析物を共有結合できる表面に結合して、次に光(例えば、レーザー光)に曝露した後、その部分の光感受性結合の破壊を介して分析物を放出する部分を有するプローブの使用を含むSELDIの1つのバージョンである。SEPARは、米国特許第5,719,060号明細書にさらに記載されている。
【0051】
「溶離剤」もしくは「洗浄液」は、吸着剤表面への分析物の吸着に作用するもしくは改変するために使用されるおよび/または未結合材料を表面から除去するために使用される薬剤(典型的には、溶液)を指す。溶離剤の溶離特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの濃度、洗浄剤濃度および温度により変わりうる。
【0052】
「モニタリング」は、継続的に変化するパラメータにおける変化の記録を指す。
【0053】
質量分析におけるデータ生成は、イオン検出器によるイオンの検出で始まる。通常のレーザー脱離質量分析計は、337.1nmで窒素レーザーを採用することが可能である。有用なパルス幅は、約4ナノ秒である。一般的に、約1〜25μJの電源出力を使用する。検出器に衝突するイオンは、デジタル方式でアナログシグナルを捕捉する高速度時−アレイ(high speed time−array)記録装置により、デジタル化される電位を発生させる。サイファージェンズ・プロテインチップ(Ciphergen’s ProteinChip)(登録商標)システムは、これを達成するためにアナログ−デジタルコンバータ(ADC)を採用する。ADCは、一定間隔を置いた時間間隔での検出器の出力を時間依存性の2進数(time−dependent bins)に積算する。時間間隔は、通常1〜4ナノ秒の長さである。さらに、最終的に解析される飛行時間型スペクトルは、通常、試料のイオン化エネルギーのシングルパルスからのシグナルを表さず、むしろ多数のパルスからのシグナルの総計を表す。これは、ノイズを減少させ、ダイナミックレンジを増加させる。上記の飛行時間データは、データ処理される。サイファージェンズ・プロテインチップ(Ciphergen’s ProteinChip)(登録商標)ソフトウェアにおいて、データ処理は、通常、TOFからM/Zへの変換、ベースラインの差し引き、高頻度ノイズフィルタリングを含む。
【0054】
TOFからM/Zへの変換は、飛行時間を質量電荷比(M/Z)に変換するアルゴリズムの適用を含む。上記工程で、シグナルは、時間ドメインから質量ドメインに変換される。つまり、各飛行時間が、質量電荷比、またはM/Zに変換される。キャリブレーションは、内部または外部で実施されうる。内部でのキャリブレーションにおいて、分析される試料は、公知のM/Zの1種もしくはそれ以上の分析物を含む。上記の一団となった分析物を表す飛行時間でのシグナルピークを公知のM/Zに割り当てる。上記の割り当てられたM/Z比を基準として、飛行時間をM/Zに変換する数学関数にパラメータを算定する。外部でのキャリブレーションにおいて、飛行時間をM/Zに変換する数学関数(例、事前の内部でのキャリブレーションにより生じる関数)は、内部でのキャリブレーションを使用しないで、飛行時間スペクトルに適用される。
【0055】
ベースラインの差し引きは、スペクトルを摂動する、人工の再現性のある機器のオフセットを除くことにより、データの量子化を改善する。それは、ピーク幅等のパラメータを組み入れるアルゴリズムを用いるスペクトルベースラインを算出した後、質量スペクトルからベースラインを差し引くことを含む。
【0056】
高頻度のノイズシグナルは、平滑関数を適用することにより、排除される。典型的な平滑関数は、移動平均関数を各時間依存2進数に適用する。改良されたバージョンにおいて、移動平均フィルターは、フィルターの帯域幅が、例えばピーク帯域幅の関数として変化し、一般的に増加する飛行時間と共に広くなる可変幅デジタルフィルターである。例えば、国際公開第00/70648号パンフレット(2000年11月23日)(ギャビン(Gavin)らの「飛行時間型質量分析のための可変幅のデジタルフィルター(Variable Width Digital Filter for Time−of−flight Mass Spectrometry)」)を参照のこと。
【0057】
コンピュータは、ディスプレイのため、結果のスペクトルを様々な形式に変換する。「スペクトルビューもしくは保持マップ」と称される、1つの形式において、標準スペクトルビューが、ディスプレイされることが可能であり、該ビューは、各特定の分子量で検出器に到達する分析物の量を描写する。「ピークマップ」と称される、別の形式において、ピーク高と質量情報だけが、スペクトルビューから保持され、より明瞭な画像を生じ、ほぼ同じ分子量を有する分析物が、さらに容易に見られるようになる。「ゲルビュー」と称される、さらに別の形式において、ピークビューからの各質量が、各ピークの高さを基準として、グレースケール画像に変換されることが可能であり、その結果として、電気泳動ゲル上の帯域と同様な出現となる。「3−Dオーバーレイ」と称されるさらに別の形式において、数種のスペクトルをオーバーレイして、相対ピーク高における微細な変化を調べることができる。「差の分布図(difference map view)」と称される、さらに別の形式において、2つ以上のスペクトルは、好都合なことに独特な分析物と試料間で上もしくは下に調節された分析物とを強調表示して、比較することができる。
【0058】
解析は、一般的に、分析物からのシグナルを表すスペクトルにおけるピークの同定を含む。ピークの選択は、もちろん、目視でされる。しかしながら、ソフトウェアが、ピークの検出を自動化することができるサイファージェンズ・プロテインチップ(Ciphergen’s ProteinChip)(登録商標)ソフトウェアの一部として利用できる。一般的に、このソフトウェアは、選択される閾値を越えるシグナル/ノイズ比を有するシグナルを同定し、ピークシグナルの図心でのピーク質量を標識することにより、機能する。有用な1つのアプリケーションにおいて、質量スペクトルのいくつかの選択した百分率で、多くのスペクトルを比較して存在する同一ピークを同定する。このソフトウェアの1つのバージョンは、確定した質量範囲内の様々なスペクトルにおいて出現する全ピークを群構成し、質量(M/Z)を、質量(M/Z)クラスタのほぼ中間点である全ピークに割り当てる。
【0059】
III.実施形態
導入
先行技術の機能性材料の欠点に対する解決策が、機能性材料をデバイスに組み込む(例えば、チップ基材に結合する)プロセスとは別のプロセスで、機能性フィルムを合成することにあることが、現在判明されている。フィルムを組み込むデバイスの製造から、機能性材料の結合を分離することにより、個々のプロセスは、さらに容易に制御される。さらに、十分な機能性材料が適切な化学安定性の材料を用いて合成されるならば、本発明の所定のデバイスの製品寿命全体にわたって単一ロットの定常相を使用することを可能にするために十分な材料が、容易に合成されうる。本明細書に記載される方法の一実施形態において、およそ100万個の本発明のチップが、1リットル未満の機能性材料から調製されうることはかなり驚くべきことである。従って、本発明の方法を用いて、製品寿命全体にわたって選択性において最小限の変動を有するチップが製造されることが可能である。
【0060】
本発明は、その表面に結合するポリウレタンベースのヒドロゲルを含むバイオチップを提供する。上記ヒドロゲルは、生体分子、具体的にはタンパク質の捕捉もしくは検出に有用である1個もしくはそれ以上の基で、さらに官能化されるのが好ましい。
【0061】
一実施形態において、上記ヒドロゲルは、「Tゲル」の生成、Tゲルの官能化、およびTゲルの硬化を含む3工程のプロセスの結果として生成される。
【0062】
本発明のTゲルは、3種のモノマー:(1)トリオール、テトラオールまたは他のポリオール(例えば、トリメチロールプロパン(CH(CHOH));(2)ジ−イソシアネート(例えば、トルエンジ−イソシアネート;および(3)長鎖ジオール(例、ポリエチレングリコールジオール(H(−O−CH−CH−OH)を重合することにより生成されるポリウレタンである。反応条件を制御することにより、上記の成分は、図1に示すTゲルポリマーを形成することが可能である。イソシアネート部分は、ヒドロキシル部分と反応して、ウレタン結合(R−NH−CO−O−R’)を形成する。図2を参照のこと。ポリウレタンは、本発明の機能性材料において望ましい多くの特性を有する。例えば、ポリウレタンは、低い非特異的結合を示す。
【0063】
Tゲルは、選択した基(例えば、結合性官能基もしくはEAM)とイソシアネートと反応する基(例、ヒドロキシルもしくはアミン)とを含むモノマーとの反応により、官能化される。例示的な一実施形態において、上記反応は、官能性Tゲル上に1個もしくはそれ以上の遊離のイソシアネート基を残すように制御される。一実施形態において、Tゲル上の官能性部分は、結合性官能基として働く。例えば、該官能性部分は、反応性部分(例、エポキシド、イミダゾール、N−ヒドロキシ−スクシンイミド等)でありうる。Tゲル上のこれらの基は、タンパク質(例、抗体もしくは受容体)と共有結合するように反応し、それらを順に用いて、それらが結合する試料中の分析物を捕捉する。さらに、上記官能性部分は、同様の特性(例、疎水性もしくは親水性基、またはイオン交換基もしくは金属キレート基)を有する分子クラスを捕捉するためにクロマトグラフィーに通常使用される官能性部分であるうる。さらに、上記官能性部分は、例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析において、エネルギー供給源からのエネルギーによって対応される(addressed)ゲルとの接触の際に分析物の脱離およびイオン化を促進するエネルギー吸収部分でありうる。
【0064】
Tゲルを硬化して、ヒドロゲルとして機能する架橋したポリウレタンベースのポリマーを形成しうる。具体的には、1つのTゲルの遊離イソシアネート部分は、別のTゲルのウレタン結合と反応して尿素結合を形成しうる。
【化1】


その所望の適用に応じて、硬化の前にTゲルを官能化することが可能であり、或いは硬化の際にもしくは後に、機能性モノマーを溶液に加えることも可能である。
【0065】
例示的な一実施形態において、Tゲルは、チップの表面上で硬化されて、バイオチップを形成することが可能である。固体支持体の表面に結合する本発明のヒドロゲルを含むバイオチップは、生体分子の捕捉および/または検出に有用な1個もしくはそれ以上の官能基を含有するのが好ましいと考える。一実施形態において、表面は、Tゲル上の遊離のイソシアネート部分と反応可能である遊離のヒドロキシル基(例えば、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウムまたはいずれかの金属酸化物)またはアミン(例えば、アミノシラン)を含む。この方法において、ヒドロゲルは、チップ表面に共有結合されうる。別の方法として、Tゲルは、不活性表面上で硬化される。上記の場合、ヒドロゲルは、表面に物理吸着されるようになる。
【0066】
ポリウレタンポリマー
本発明の例示的なポリウレタンポリマーは、少なくとも第一モノマー、第二モノマー、架橋モノマーおよび場合により官能性成分モノマー(例、結合官能性モノマーもしくはEAMモノマー等)から形成されるコポリマーである。ポリウレタンは、アルコールもしくはチオールとイソシアネートもしくはイソチオシアネートとの反応を基準として、スキーム1に示されるウレタン結合を形成する。
【化2】

【0067】
ジオールとジイソシアネートとの反応は、スキーム2に記載されるように、鎖式ポリウレタンを形成する。
【化3】

【0068】
本発明の例示的なTゲルは、スキーム3に示すように、トリオール(例えば、TMP)、ジオール(例えば、PEG)およびジイソシアネート(例えば、TDI)を反応させることにより、調製される。
【化4】


スキーム3に記載される反応経路は、イソシアネート末端ポリウレタンを提供する。種々の反応性官能基を末端とするポリウレタンは、反応成分および/または反応の化学量論を変えることにより、容易に調製される。例えば、反応化学量論を調節することにより、ヒドロキシ末端ポリウレタンが、容易に調製される。
【0069】
架橋モノマー
架橋モノマーは、イソシアネートもしくはイソチオシアネートと反応して、ウレタン結合を形成する少なくとも3つの部分、例えば、アルコール、チオールまたはこれらの組み合わせを含む。架橋モノマーの働きは、ポリウレタンにおいて形成されうる分岐構造の核を提供することである。好適な架橋モノマーは、第一もしくは第二ポリオール、ポリチオールまたはそれらの組み合わせである。上記モノマーは、ヒドロキシルおよびチオールから選択される3個もしくは4個の基を有するのが好ましい。例示的なモノマーは、4〜16個の炭素のアルキル主鎖を有するか、或いは、アリール核、一般的に20以下の炭素を有する。例示的な架橋モノマーとして、プロパントリオール、ブタントリオール、ペンタントリオールおよびヘキシルトリオールが挙げられる。具体的な例として、トリメチロールプロパンが挙げられる。さらに堅いゲルには、テトラオールを使用することができる。
【0070】
第一モノマー
第一モノマーは、ヒドロキシル部分、チオール部分またはそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの反応性部分を含む。第一モノマーは、ポリウレタンポリマーに「アーム」を提供する。第一モノマーは、ポリウレタンポリマーを互いに架橋する際にヒドロゲルの形成に適合した親水性基を含むのが好ましい。
【0071】
例示的な一実施形態において、第一モノマーは、式:
【化5】


式中、記号XおよびXは、独立して、OHもしくはSHを表す。記号YおよびYは、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは未置換アルキル、置換もしくは未置換ヘテロアルキル、置換もしくは未置換アリール、置換もしくは未置換ヘテロアリール、置換もしくは未置換ヘテロアリールアルキル、正に帯電した部分、負に帯電した部分、金属錯化部分、金属錯体、親水性部分、疎水性部分、反応性有機官能基およびそれらの組み合わせから選択される部分を表す。Wは、Hもしくはハロゲン(例えばF)である。Rは、O、Sおよび置換もしくは未置換アルキルから選択されるメンバーであり、記号nは、1〜1000の整数を表す。
【0072】
第一モノマーは、ジオール(例えば、アルキレングリコール、ポリ(アルキレングリコール))、またはアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクロアルキルジオールでありうる。
【0073】
例示的な一実施形態において、第一モノマーは、結果として生成するポリマーが、親水性ポリマーであるように選択される。本実施形態に基づいた例示的な第一モノマーは、非タンパク質性オリゴマーもしくはポリマーである。適切な親水性ポリマーとして、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドポリマー(ホモポリマーおよびコポリマーを含む)から形成されるポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)、およびカルボキシル化したポリ(エチレン)(例えば、カルボポール(CARBOPOL)TM)が挙げられる。他の例示的な第一モノマーとして、ポリ(ホスファゼン)種、およびポリサッカリド、ポリ(アミノ酸)、および親水性ポリマーのブレンドが、挙げられる。
【0074】
好適な一実施形態において、第一モノマーは、約200〜約20,000、好ましくは約200〜約4000の分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)(例、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール等)である。
【0075】
第二モノマー
第二モノマーは、イソシアネート部分、イソチオシアネート部分またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む。第二モノマーは、ウレタン結合を介して、第一モノマーを架橋モノマーに結合させ、硬化プロセス中に他のポリウレタン単位との架橋反応に係合することができるポリウレタン分岐鎖の末端に、ヒドロゲルを生成するように、反応性イソシアネート基を提供する。
【0076】
例示的な第二モノマーは、以下の式を有する:

【化6】

式中、記号Rは、置換もしくは未置換アルキル、置換もしくは未置換ヘテロアルキル、置換もしくは未置換アリール、置換もしくは未置換ヘテロアリール、および置換もしくは未置換ヘテロシクロアルキル基から選択される基を表す。ZおよびZは、独立して、OおよびSから選択される。上式において、Rが、アルキルもしくはアリールである場合、Rは、置換もしくは未置換C−C22アルキル(例えば、ホスファチジルグリセロール)および置換もしくは未置換C−C12アリールから選択されるのが好ましい。Rは、置換もしくは未置換フェニル、置換もしくは未置換シクロヘキシル、および置換もしくは未置換アルキルから選択されるメンバーであるのがさらに好ましい。
【0077】
適切な第一モノマーの例として、トルエンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ブチルジイソシアネートおよびヘキシルジイソシアネートが挙げられる。
【0078】
官能性モノマー
本発明の例示的なヒドロゲルは、好都合なことに、結合性官能基またはEAMもしくはSEND官能基と称される1個もしくはそれ以上の基で官能化される。一般的に、上記の官能基は、所望の官能基とイソシアネート基と反応して共有結合を形成する部分とを含む官能性モノマー(例えば、第一もしくは第二アルコール、チオールもしくはアミン)を介してTゲルに組み込まれる。一般的に、官能性モノマーは、Tゲルもしくはヒドロゲルの形成を干渉しないほど十分に小さい。例えば、官能性モノマーは、約50ダルトン〜2000ダルトンの分子量を有する。特定の例において、高分子の部分(例、ヘパリン等)を使用することが可能である。
【0079】
結合性官能基
結合性官能基は、標的と共有結合を形成する反応性官能基と、標的と非共有結合を形成する吸着性官能基との2種類に分類される。
【0080】
反応性官能基
反応性官能基は他の分子をヒドロゲルに結合させるのに有用である。例えば、生体分子(例、ポリペプチド、核酸、炭水化物または脂質等)をヒドロゲルに結合させることが望まれる場合もある。例示的な反応性官能基として、以下が挙げられる。
(a)カルボキシル誘導体(例、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキルエステル、アルケニルエステル、アルキニルエステルおよび芳香族エステル等)
(b)ハロアルキル基(ハロゲン化物が、後に、求核性基(例えば、ブロモアセチル基)と置換されうる)
(c)カルボニル誘導体(例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシム)の形成を介して、或いはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のような機序を介して、続いての誘導体化が可能であるようなアルデヒドもしくはケトン基
(d)例えばスルホンアミドを形成するアミンとの続いての反応のためのハロゲン化スルホニル基
(e)反応性チオール基(2−メルカプトピリジンおよびオルトピジニルジスルフィドを含むタンパク質上のジスルフィドと反応可能である)
(f)スルフヒドリル基(例えば、アシル化もしくはアルキル化可能である)
(g)アルケン(例えば、マイケル付加反応等(例えば、マレイミド)を実施可能)
(h)エポキシド(求核性試薬、例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応可能である)
(i)ヒドラジン基(糖および糖タンパク質と反応する)
(j)ビニルスルホン
(k)活性化されたカルボニル基など
【0081】
反応性官能基は、それらが関与することを目的としない反応に関与しないように、または反応に干渉しないように、選択されうる。別の方法として、反応性官能基は、保護基の存在により、反応への関与から保護されることができる。当業者は、選択された一連の反応条件への干渉から特定の官能基をいかに保護するかを理解しているだろう。例えば、有用な保護基の例は、グリーン(Greene)らの、「有機合成における保護基(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons、ニューヨーク(New York)1991年)を参照のこと。
【0082】
当業者は、本明細書中で考察される反応性官能基が、本発明のチップの構築において有用である官能基のサブセットのみを表すことを理解する。さらに、当業者は、上記反応性官能基が、機能性フィルムとリンカーアームの成分としても有用であることを理解する。
【0083】
表1に示す通り、本発明のイソシアネートポリマーは、結合性官能基、EAM、リンカーアーム、結合性官能基−リンカーアームカセットもしくはEAM−リンカーアームカセットおよび分析物の固定化ための反応性官能基の配列を有するポリマーへの接近を認める。
【0084】
【表1】

【0085】
例示的な反応官能性モノマーは、イミダゾール、フェニルカルボキシエタノール、N−ヒドロキシ−スクシンイミド、N−ヒドロキシマレイミド、シスタミン/DTT、グリシドール、p−ニトロフェニルメチロールカーボネート、ベンゾトリアゾイルメチロールカーボネート、MeSCHCHOH、エルマンズ試薬(4−ニトロ−3−カルボン酸)ジスルフィドおよびO−ピリジニル−ジスルフィドである。
【0086】
反応性基を有する本発明の活性化されたポリウレタンを官能化するのに利用できる選択された経路を図3に示す。
【0087】
吸着性官能基
結合性官能基(反応性官能基を介して結合可能である)は、さらなる分析のために、試料から分析物を捕捉するのに有用である。結合性官能基は、生体特異的結合基とクロマトグラフィー用結合基の2つの類に分類されてもよい。
【0088】
結合性官能基は、クロマトグラフィー用もしくは生体特異的でありうる。クロマトグラフィー用結合性官能基は、電荷−電荷、親水性−親水性、疎水性−疎水性、ファンデルワールス相互作用およびそれらの組み合わせを介して、物質を結合する。
【0089】
生体特異的結合性官能基は、一般的に、上記の相互作用のうちの1つもしくはそれ以上を含む、相補的な3次元構造に関連する。生体特異的相互作用の組み合わせの例として、抗原と対応する抗体分子、核酸配列とその相補配列、エフェクター分子と受容体分子、酵素と阻害物質、糖鎖含有化合物とレクチン、抗体と前記抗体に対して特異的な別の抗体分子、受容体分子と対応する抗体分子等の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の特異的な結合物質の例として、化学的にビオチン改変された抗体分子またはポリヌクレオチドとアビジン、アビジン結合された抗体分子とビオチン等のような組み合わせが挙げられる。生体特異的官能基は、一般的に、上記の通り、反応性部分を介して生体特異的部分を結合することにより、生成される。
【0090】
例示的な一実施形態において、結合官能性モノマーは、正に帯電した部分、負に帯電した部分、アニオン交換部分、カチオン交換部分、金属イオン錯化部分、金属錯体、極性部分、疎水性部分からなる群から選択される結合性官能基を含む。さらに例示的な結合性官能基として、アミノ酸、染料、炭水化物、核酸、ポリペプチド、脂質(例えば、ホスホチジルコリン)、および糖が挙げられる。
【0091】
本発明のポリマーの結合性官能基として使用するイオン交換部分は、例えば、ジエチルアミノエチル、トリエチルアミン、スルホネート、テトラアルキルアンモニウム塩およびカルボキシレートである。
【0092】
例示的な一実施形態において、結合性官能基は、ポリアミノカルボキシレートキレート剤(例、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等)であり、それは、市販の二無水物(ウイスコンシン州ミルウォーキーのアドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI))を利用して、基材上のアミン、またはスペーサーアームに結合される。金属イオンと錯体を形成する場合、金属キレートは、標識種(例、ポリヒスチジル標識したタンパク質)に結合し、これは、標的種を認識し、結合するために使用されうる。或いは、金属イオン自体、または金属イオンを錯化する種が、標的でありうる。
【0093】
金属イオン錯化部分として、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミノ−三酢酸(NTA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン、イミノ二酢酸、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシ−キノリン、トリスN,N,N’−(カルボキシトリメチル)エタノールアミン、およびEDTA、DTPAおよびN−(2−ピリジルメチル)アミノアセタートが挙げられるが、これらに限定されない。金属イオン錯化剤は、すべての有用な金属イオン、例えば、銅、鉄、ニッケル、コバルト、ガリウムおよび亜鉛を錯化することが可能である。
【0094】
有機官能基は、分析物分子を特異的に認識する能力を有する有機低分子の成分でありうる。例示的な有機低分子として、アミノ酸、ヘパリン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン炭水化物、グルタチオン、ヌクレオチドおよび核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
別の例示的な実施形態において、結合性官能基は、生体分子(例えば、天然もしくは合成のペプチド、抗体、核酸、サッカリド、レクチン、受容体/配位子の結合対のメンバー、抗原、細胞またはそれらの組み合わせ)である。従って、例示的な一実施形態において、結合性官能基は、標的に対して、または標的に構造上類似する種に対して産生される抗体である。別の例示的な実施形態において、結合性官能基は、アビジン、またはそれらの誘導体であり、それは、標的のビオチン化した類似体に結合する。さらに別の例示的な実施形態において、結合性官能基は、核酸であり、それは、結合性官能基の配列に相補的な配列を有する一本鎖もしくは二本鎖の核酸標的に結合する。
【0096】
別の例示的な実施形態において、本発明のチップは、アレイ内の各アドレス可能位置における結合性官能基が特定のヌクレオチド配列を有する核酸を含むオリゴヌクレオチドアレイである。特に、上記アレイは、オリゴヌクレオチドを含むことが可能である。例えば、上記オリゴヌクレオチドは、対象の特定遺伝子配列を網羅するように、選択されうる。別の方法として、アレイは、発現プロファイリングに有用なcDNAもしくはEST配列を含むことが可能である。
【0097】
さらに好適な一実施形態において、結合性官能基は、特定の標的を認識する核酸種(例、アプタマーおよびアプタザイム等)から選択される。
【0098】
別の例示的な実施形態において、結合性官能基は、薬物部分もしくは薬物部分から誘導されたファーマコフォアである。薬物部分は、既に臨床用に許容された薬剤でありうる。或いは、薬物部分は、その使用が実験用であるか、或いはその活性もしくは作用の機序が研究中である薬剤でありうる。薬物部分は、既定の疾患状態において証明された作用を有すことが可能であり、或いは、既定の疾患状態において望ましい作用を示すと示すことが仮説として取り上げられただけでありうる。好適な一実施形態において、薬物部分は、選択された標的とのそれらの相互作用する能力に関してスクリーニングされている化合物である。従って、薬物部分は、本発明の実施において有用であるが、多様の薬理学的な活性を有する広範囲の薬物のクラスから薬物を含む。
【0099】
例示的な疎水性の吸着官能性モノマーとして、CH(CH17OH、1−オクタデカノール、1−ドコサノール、パーフルオロ化ポリエチレングリコール(ソバイ(Sovay)、米国(USA))が挙げられる。
【0100】
例示的な親水性の吸着官能性モノマーとして、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0101】
例示的なアニオン交換の吸着官能性モノマーとして、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよび2−ヒドロエチル−N−メチルピリジニウムクロリドが挙げられる。
【0102】
例示的なカチオン交換の吸着官能性モノマーとして、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸、3,5−ジメチル−o−ベンゼンスルホン酸、ジヒドロキシ安息香酸およびジメチロール酢酸が挙げられる。
【0103】
例示的な金属キレートの吸着官能性モノマーとして、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミノ三酢酸(NTA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシ−キノリン、N,N,N’−トリス(カルボキシトリメチル)エタノールアミン、およびN−(2−ピリジルメチル)アミノアセタートが挙げられる。金属イオン(例、銅、ニッケル、亜鉛、鉄およびガリウム等)の溶液の添加は、ゲルを官能化する。
【0104】
吸着性官能基を有するポリウレタンを調製する例示的な反応経路は、図4および図5に記載される。
【0105】
EAM官能基
EAM(エネルギー吸収分子)官能基は、レーザー脱離/イオン化プロセス中に、気相中の分析物の脱離およびイオン化を推進するのに有用である。EAMモノマーは、官能基として光反応性部分を含む。光反応性部分は、レーザー供給源から光放射を特異的に吸収する核もしくは補欠分子族を含むのが好ましい。光反応性部分は、高フルエンス供給源からエネルギーを吸収して熱エネルギーを発生し、熱エネルギーを伝達して、ポリウレタンとの有効な接触状態にある分析物の脱離およびイオン化を推進する。UVレーザー脱離の場合において、EAMモノマーは、UV光照射を電子的に吸収するアリール核を含むのが好ましい。IRレーザー脱離の場合において、EAMモノマーは、直接の振動共鳴を介してかまたは軽微な非共鳴において、好ましくはIR放射を吸収するアリール核もしくは基を含むのが好ましい。UV光−反応性部分は、安息香酸(例えば、2,5ジ−ヒドロキシ安息香酸)、ケイ皮酸(例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)、アセトフェノン、キノン、バニリン酸、カフェー酸、ニコチン酸、シナピン酸ピリジン、フェルル酸(Ferrulic acid)、3−アミノ−キノリンおよびそれらの誘導体から選択されうる。IR光−反応性部分は、安息香酸(例えば、2,5ジ−ヒドロキシ安息香酸)、ケイ皮酸(例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)、アセトフェノン(例えば、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンおよび2,6−ジヒドロキシアセトフェノン)カフェー酸、フェルル酸、シナピン酸3−アミノ−キノリンおよびそれらの誘導体から選択されうる。
【0106】
図7および図8は、EAMと結合性官能基を有するポリウレタンを生成する例示的な反応経路を記載する。
【0107】
ポリウレタンポリマーの調製
上記のモノマーは、本発明のポリウレタンポリマー中に構築される。上記モノマーは、選択される比率で化合され、生成されるポリマーの大部分が各反応性基(例えば、アルコールもしくはチオール)に結合する「アーム」を有する1種の架橋モノマーを含むような重合反応条件を必要とする。例示的な構造は、架橋モノマーがトリオールである場合、FnM−SM−FM−SM−CRM−(SM−FM−SM−NCO)であり、式中、CRMは、架橋モノマーであり、SMは、第二モノマーであり、FMは、第一モノマーであり、およびFnMは、官能性モノマーである。従って、架橋モノマー、第二モノマーおよび第一モノマーは、ウレタン結合を介して互いに結合する。さらに、条件は、ポリウレタンポリマーが、ヒドロゲルを生成するために、硬化の際に重合反応に係合しうるアーム末端に少なくとも2個のイソシアネート基(NCO)を含むように、最適に設定される。さらに、架橋部分がトリオールである場合、ポリウレタンポリマーは、「Tゲル」であり、架橋部分が、テトラ−オールであるならば、ポリウレタンポリマーは、「+−ゲル」である。トリオール:ジ−イソシアネート:ジオール(つまり、CRM:SM:FM)の例示的な比として、約1:5〜20:5〜50から約1:7:3が挙げられる。官能性モノマーに対するトリオールの比は、1:0.1〜3であるのが好ましい。
【0108】
官能性モノマーは、その生成の任意の段階におけるヒドロゲル中に組み込まれうる。例えば、第一モノマー、第二モノマー、架橋モノマーおよび官能性モノマーを一緒に重合して、機能性ゲルを1工程において生成することができる。しかしながら、官能性モノマーと既に形成したゲルを反応させて、機能性ゲルを生成することは、さらに好都合でありうる。この方法において、単一バッチのポリウレタンゲルを利用して、多種の機能性ゲルを生成することができる。この方法は、チップ表面組成物の改良された稠性の利点を有する。
【0109】
別の実施形態において、硬化プロセスの前、該プロセス中、または該プロセス後に、官能性モノマーを加えることにより、ゲルを官能化することができる。その選択は、ヒドロゲルと官能性モノマーの性質に応じて、変わりうる。該官能性が、重合反応後も残存するならば、官能性モノマーは、Tゲル形成中にTゲルに組み込まれるのが好ましい。ヒドラジンのような高反応性基は、Tゲルの架橋を生じさせる傾向がある。従って、硬化の際に、上記の基を有する官能性モノマーをTゲル混合物に加えることは、好適である。未反応のイソシアネート官能基の量を、硬化時間により、制御することができる。次に、未反応のイソシアネートと反応させて、ヒドラジンをゲルに組み込むことができる。
【0110】
別の例示的な実施形態において、反応性ポリウレタンポリマーは、Tゲルの末端イソシアネートを、タンパク質を捕捉する官能基およびアルコール、チオール、またはアミン基を有する分子と反応させて、調製される。反応性基が、アミンもしくはアルコールである場合、それは、大部分(例えば、約50%)の末端イソシアネート基と反応して、それぞれ、尿素とウレタン結合を形成する。残存するイソシアネート基(約50%)は、ポリマーが層状になる基材の表面上の基で、架橋を形成するように利用できる。例えば、イソシアネート基は、ガラス表面上のシラノール部分と容易に反応して、ポリマーをそれらの上で固定化させる。別の例示的な実施形態において、イソシアネートは、有機ポリマーの主鎖上のNH基と反応して、それにより、ポリウレタンをアミン含有の有機ポリマーに結合させる。
【0111】
デバイス
本発明のデバイスは、表面と表面に結合するポリウレタンベースのヒドロゲルを有する固体支持体を含む。本発明のデバイスを作製する好適な方法は、固体支持体の表面上の硬化を介して、上記のポリウレタンポリマー単位を重合することを含む。さらに具体的には、硬化は、ポリウレタンポリマー単位のアーム末端の遊離のイソシアネート間で反応を起こし、ポリウレタンポリマー単位のアームにおけるウレタン結合と反応する。上記反応の結果として、一方のポリウレタンポリマー単位と他方のポリウレタンポリマー単位を結合する尿素の共有結合を形成する。ポリウレタンポリマー単位は、複数の遊離イソシアネート部分を所有するように、組み立てられているので、カップリング反応により、架橋したヒドロゲルを生じる結果となる。上記に考察した通り、ヒドロゲルは、既に官能化されてもよいし、或いは、残存する遊離のイソシアネートを介して架橋後に、官能化されてもよい。さらに、ヒドロゲルの固体支持体への結合は、遊離のイソシアネート基と共有結合を形成しうる反応性基(例、ヒドロキシル、チオールまたはアミン等)を表面上に提供することにより、共有結合性でありうる。
【0112】
本発明のデバイスは、固体基材の性質および用途に応じて、チップ、クロマトグラフィー用材料またはメンブレンの形態であってよい。以下の部分(section)は、本発明の各デバイスに概して適切である。選択される本発明のデバイス(例えば、チップ、クロマトグラフィー用支持体、メンブレン)において、機能性フィルムは、直接か、または基材と機能性フィルムの間に介在するリンカーアームを介してのいずれかで、基材上に固定化される。デバイスの性質および用途は、基材の構成に影響を与える。例えば、本発明のチップは、典型的に、平面の基材形態に基づいている。対照的に、本発明のクロマトグラフィー用支持体は、一般的に球状またはほぼ球状の基材を使用するが、一方、本発明のメンブレンは、多孔性基材を用いて、形成される。
【0113】
一般的に、ヒドロゲルは、Tゲルもしくは機能性Tゲルを表面に接触させ、材料を加熱して重合を引き起こすことによって、調製される。上記の方法は、「硬化」と呼ばれる。「硬化」は、約20℃〜約200℃(好ましくは不活性ガス環境下において約50℃〜約100℃)の温度で、約30分〜約5時間、材料を加熱することにより、達成されうる。本発明の好適な一実施形態において、硬化に先立って、官能性モノマーを用いて、ゲルを誘導体化する。
【0114】
固体支持体がチップである場合、Tゲルは、有用な方法(例えば、スポッティング(位置を分離するため)、スピンコーティング(全表面をコーティングするため)または浸漬)により、表面に適用されうる。ゲルの厚さは、ゲルの用途に応じて、決まる。表面走査技法(例、表面プラズモン共鳴法もしくは光学導波管バイオセンサーを連結した回折格子法)に関して、ゲルは、約50nm〜約200nmであるのが好ましい。SELDI質量分析法のような方法に関して、厚さは、約50nm〜約10ミクロンであるのが好ましい。
【0115】
固体支持体材料
例示的な基材材料として、無機結晶、無機ガラス、無機酸化物、金属、有機ポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記基材に有用な無機ガラスおよび結晶として、LiF、NaF、NaCl、KBr、KI、CaF、MgF、HgF、BN、AsS、ZnS、Si、AlN等が挙げられるが、これらに限定されない。上記結晶およびガラスは、当技術分野の標準技法により調製されることができる。例えば、グッドマン(Goodman)の「結晶成長の理論および技法(CRYSTAL GROWTH THEORY AND TECHNIQUES)」、(ニューヨークのプレナムプレス社(Plenum Press,New York)1974年)を参照のこと。別の方法として、上記結晶は、市販品を利用することが可能である(例えば、フィッシャー・サイエンティフィック(Fischer Scientific)。本発明における有用な無機酸化物として、CsO、Mg(OH)、TiO、ZrO、CeO、Y、Cr、Fe、NiO、ZnO、Ta、Al、SiO(ガラス)、石英、In、SnO、PbO等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の基材に有用な金属として、金、銀、プラチナ、パラジウム、ニッケル、銅およびこれらの金属の合金および複合材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
有用な基材を形成する有機ポリマーとして、例えば、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン)、ポリアクリル(例えば、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシアノアクリレート)、ポリビニル(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリヘテロ環、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、ポリシラン、フッ素化ポリマー、エポキシ、ポリエーテルおよびフェノール樹脂が挙げられる。
【0117】
好適な一実施形態において、基材材料は、標的と実質的に非反応性であるので、基材と標的もしくはアッセイ混合物中の他の成分との間の非特異的結合を阻止する。非特異的結合を阻止する材料により基材をコーティングする方法は、一般的に、当技術分野で周知である。例示的なコーティング剤として、セルロース、ウシ血清アルブミン、およびポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の適用に適切なコーティング剤は、当業者には明らかであろう。
【0118】
リンカーアーム
本発明のヒドロゲルは、種々の手段により、固体支持体の表面に結合される。上記ヒドロゲルと上記表面間の相互作用は、ポリマーを表面に定着させるが、共有結合性、静電性、イオン性、水素結合性、疎水性−疎水性、または親水性−親水性相互作用でありうる。相互作用が、非共有結合性である場合、本明細書において、「物理的付着性」と呼ぶ。
【0119】
以下の部分は、一般的に、本発明の各デバイスに適切である。特定の実施形態において、上記デバイスは、基材とポリウレタンの間にリンカーアームを組み入れる。リンカーアームの層は、機能性フィルムを固定化するのに有用な任意の組成物および配列である。リンカーアームは、基材上に結合され、固定化される。リンカーアームは、さらに、機能性フィルムと相互作用する1個もしくはそれ以上の基を有する。
【0120】
ポリウレタンフィルムは、当業者に周知の多くの相互作用のうちの1つによって、リンカーアーム層に結合される。代表的な形式として、共有結合、ポリマーの絡み合いによる結合および静電結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
好適な一実施形態において、ヒドロゲルは、ヒドロゲルの反応性基(例えば、遊離のイソシアネート、アルコール、チオールまたはアミン)と化学的に結合する表面部分を有するチップを提供することにより、チップに共有結合することができる。従って、例えば、基材は、イソシアネートとの反応のためのヒドロキシル基を提供するガラス(二酸化ケイ素)コーティングを有することが可能である。別の方法として、上記表面は、アミン基を提供するアミノアルキルシラン基を有することが可能である。
【0122】
別の実施形態において、ヒドロゲルは、リンカーアームを介して表面に結合し、前記リンカーアームは、表面とヒドロゲルの両方に結合する。リンカーアームは、合成および生物ポリマー、さらに、低分子のリンカー(例えば、アルキル、ヘテロアルキル等)から選択されうる。完全に構築されたリンカーは、基材に結合されうる。別の方法として、リンカーアームは官能基を用いて、リンカーアーム合成の起点として、基材上にリンカーアーム成分と一緒に結合することにより、基材上に構築されうる。基材かポリウレタンのどちらかへの結合点は、リンカーアームの末端であるのが好ましいが、内在部位も可能である。リンカーアームは、鎖式分子部であることが可能であり、或いは、分岐されている場合も可能である。基材上のリンカーアームは、独立していてもよく、或いは、互いに架橋されていてもよい。一実施形態において、リンカーアームのコレクションは、「ブラシ状ポリマー」つまり、各々独立して、基材に結合する分子鎖のコレクションを形成する。
【0123】
本発明のチップに有用な例示的な合成リンカー種は、有機ポリマーと無機ポリマーの両方を含み、機能性フィルムの固定化を支持する任意の化合物から形成されてもよい。例えば、合成ポリマーのイオン交換樹脂(例、ポリ(フェノール−ホルムアルデヒド)、ポリアクリル酸、またはポリメタクリル酸またはニトリル等)、アミン−エピクロロヒドリンコポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレン上のスチレンのグラフトポリマー、ポリ(2−クロロメチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(芳香族ビニル)樹脂(例、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンまたはビニルピリジンから誘導された樹脂等)、メタクリル酸の対応するエステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、および同様の不飽和モノマー、モノビニリデン環含有の窒素複素環式化合物を含むモノビニリデンモノマーおよび上記モノマーのコポリマーが、適切である。
【0124】
別の実施形態において、リンカーは、親油性ポリマーである。例示的な親油性ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(δ−バレロラクトン)、およびこれらの列挙したポリエステル中に見出される2つ以上の別個の繰り返し単位を含有するコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ブチロラクトン)、およびポリ(ウレタン)である。
【0125】
チップ
本発明は、基材の表面が、本発明の低分子量錯体もしくは高分子錯体でコーティングされているデバイスを企図する。上記錯体は、共有結合もしくは非共有化学結合、または錯体をそれが貼着する基材表面に適用することによる単に物理的結合を含む任意の手段により、表面に結合されうる。基材の性質に応じて、本発明のデバイスは、チップ、樹脂(例えば、ビーズ)、マイクロタイタープレートまたはメンブレンの形態で提供されうる。
【0126】
a.基材
本発明の選択されるデバイス(例えば、チップ、クロマトグラフィー用支持体、マイクロタイタープレート、メンブレン)において、錯体は、直接かまたは基材と吸着フィルムとの間に介在するリンカーアームを介してかのいずれかで、基材上に固定化される。デバイスの性質および用途は、基材の構成に影響を与える。例えば、本発明のチップは、典型的に、平らな基材形態に基づいている。対照的に、本発明のクロマトグラフィー用支持体は、一般的に球状またはほぼ球状の基材を使用するが、一方、本発明のメンブレンは、多孔性基材を用いて、形成される。マイクロタイタープレートは、一般的に、反応が実施できるウェルを備えるプラスチック製品である。
【0127】
b.チップ
例示的な本発明のチップは、平らな基材を用いて、形成される。錯体は、直接的に基材に適用されるか、或いは、基材表面にまたは基材表面上の特徴(例、隆起している(例えば、島)かもしくは陥没した(例えばウェル、トラフ)領域等)に結合される定着基に結合される。
【0128】
本発明のゲルは、一般的に、チップ基材に結合する。ポリマーと基材との間の相互作用は、共有結合性、静電性、イオン性、水素結合性、疎水性−疎水性、親水性−親水性相互作用、または物理吸着もしくは物理的付着でありうる。
【0129】
本発明を実施する際に有用である基材は、任意の安定材料、または材料の組み合わせから作製されうる。さらに、有用な基材は、任意の好都合な幾何学的または構造上の特徴の組み合わせを有するように、構成されうる。上記基材は、剛性か可撓性のいずれかで可能であり、光透過性もしくは光不透過性のいずれかでありうる。上記基材は、さらに、電気的絶縁体、導体または半導体でありうる。チップに適用される試料が、水性である場合、基材は、好ましくは水不溶性である。
【0130】
好適な一実施形態において、基材材料は、分析物と実質的に非反応性であり、従って、基材と分析物またはアッセイ混合物の他の成分との間の非特異的結合を阻止する。非特異的結合を阻止するための物質によって基材をコーティングする方法は、当技術分野で周知である。例示的なコーティング剤としては、セルロース、ウシ血清アルブミン、およびポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の用途のために適切なコーティング剤は、当業者に明らかであろう。
【0131】
例示的な一実施形態において、基材は、二酸化ケイ素の層でコーティングされたアルミニウム支持体を含む。さらに好適な一実施形態において、二酸化ケイ素層は、約1000〜3000Åの厚さである。他の実施形態において、基材は、高分子材料(例、セルロースもしくはプラスチック等)を含む。
【0132】
好適な実施形態において、チップは、質量分析計ためのプローブとして働く。
【0133】
好適な一実施形態において、本発明のチップの機能性フィルムは、固定化分析物の検出が、溶離、回復、増幅、または標的分析物の標識を行う必要がないように、構成されている。別の実施形態において、1つもしくはそれ以上の分子認識現象の検出は、アドレス可能な機能性フィルム内の1つもしくはそれ以上の位置で、全吸着性分析物錯体のかなりの留分を除去もしくは消費する必要はない。従って、さらなる構築もしくは解体、改変、または増幅(直接的もしくは間接的)を含む、構造および機能を解明する目的のため、インサイチュ(つまり、アドレス可能位置の境界内)で直接に実施される一度もしくはそれ以上の「二回目の処理」現象後に、未使用部分をさらに調べることが可能である。
【0134】
本発明を実施するのに使用される基材の表面は、滑らかであり得、粗くあり得、および/またはパターン化されうる。上記表面は、機械的および/または化学的技法を用いて、工作されうる。例えば、上記表面は、研磨、エッチング、溝彫り、引伸し、および金属フィルムの斜め蒸着によって、粗くされるかまたはパターン化されうる。上記基材は、フォトリソグラフィー(クラインフィールド(Kleinfield)ら、J.Neurosci.8:4098−120(1998年))、光エッチング、化学エッチングおよびマイクロコンタクトプリンティング(クマール(Kumar)ら、Langmuir 10:1498−511(1994年))のような技法を用いて、パターン化されうる。基材上にパターンを形成する他の技法は、当業者に容易に明らかであろう。
【0135】
基材上のパターンのサイズおよび複雑性は、利用する技法の分解能およびパターンが意図する目的により、制御される。例えば、マイクロコンタクト印刷を用いると、200nmほどの小さい特徴の層が、基材上に形成される。シア(Xia,Y.);ホワイトサイズ(Whitesides,G.)の米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)117:3274−75頁(1995年)を参照のこと。同様に、写真平板を用いると、1μmほどの小さい特徴を有するパターンが、形成される。ヒックマン(Hickman)らのJ.Vac.Sci.Technol.12:607−16(1994年)を参照のこと。本発明において有用であるパターンには、ウェル、エンクロージャー、パーティション、リセス、インレット、アウトレット、チャネル、トラフ、回折格子などのような特徴を含むパターンが含まれる。
【0136】
例示的な一実施形態において、パターン形成は、複数の隣接するアドレス可能な特徴を有する基材を作製するために使用される。該各特徴は、検出手段により、別々に同定することが可能である。別の例示的な一実施形態において、アドレス可能な特徴は、他の隣接する特徴と流体連絡しない。従って、特定の特徴で配置された分析物または他の物質は、本質的に、その特徴に実質的に限定されたままである。別の好適な一実施形態において、パターン形成は、デバイスを介してチャネルを作製することができ、それによって液体が、デバイスに進入および/または排出されうる。
【0137】
承認された技法を用いて、異なる化学的特性の領域を有するパターンを伴う基材を製造することができる。従って、例えば、パターン構成物の疎水性/親水性、電荷または他の化学的特性を変えることにより、隣接する隔離された特徴のアレイは、作製される。例えば、親水性化合物は、疎水性材料を用いて、隣接する特徴間に「壁」をパターン形成することにより、個々の親水性特徴に限定されることが可能である。同様に、正もしくは負に帯電した化合物は、限定された化合物の電荷と同じ電荷を有する化合物から作製される「壁」を有する特徴に限定されうる。同様の基材構成も、基材上に直接的に所望の特性を有する層をマイクロ印刷することにより、達成されうる。Mrkish,M.;ホワイトサイズ(Whitesides,G.M.)、Ann.Rev.Biophys,Biofnol.Struct.25:55−78(1996年)を参照のこと。
【0138】
本発明のチップの特異性および多重化能力は、空間コード(例えば、スポットしたマイクロアレイ)をチップ基材内に組み込むことにより、改良される。空間コードは、本発明の各チップ中に導入されうる。例示的な一実施形態において、異種の分析物に関する結合性官能基は、チップ表面を隔てて配置されて、特定のデータコード(例えば、標的−結合性官能基特異性)を各位置において再利用させることを可能にする。上記の場合、アレイ位置は、追加のコードパラメータであり、実質的に限りない数の異なる分析物の検出を可能にする。
【0139】
空間コードを利用する本発明の実施形態において、それらは、基材のm個の領域にわたって分布するm個の結合性官能基を含む空間的にコードされたアレイを利用するのが好ましい。m個の結合性官能基の各々は、異種の官能基もしくは同種の官能基でもよく、或いは、異種の官能基が、表面上のパターンに配置されることが可能である。例えば、アドレス可能位置のマトリックスアレイの場合において、単一の行または列における全ての位置は、同種の結合性官能基を有することができる。m個の結合性官能基は、確認されるm個の位置の各々の同定を可能にする方法で、基材上にパターン形成されるのが好ましい。別の実施形態において、m個の結合性官能基は、p×qのマトリクス(p×q)の不連続位置に並べられ、該(p×q)の各々の位置は、m個の結合性官能基のうちの少なくとも1つに結合する。マイクロアレイは、本質的に任意の型の結合性官能基からパターン形成されうる。
【0140】
質量分析プローブ
好適な実施形態において、本発明のチップは、気相イオン分析計のためのプローブ(例質量分析プローブ等)の形態で、設計されている。質量分析計の試料チャンバ内にチップが位置するのを促進するために、チップの基材は、一般的に、界面内に相補的構造を固定する手段を含むように、構成されている。用語「位置される」は、一般的に、チップが試料チャンバ内の位置に移ることができることを意味すると理解されている。試料チャンバで、チップは、特定の脱離/イオン化サイクルの継続時間ための、エネルギー供給源を有する適切なアライメントを備えている。多くの市販のレーザー脱離/イオン化質量分析計が存在する。製造業者として、サイファージェン・バイオシステムズ社(Ciphergen Biosystems,Inc.)、ウォーターズ(Waters)、マイクロマス(Micromass)、MDS、島津(Shimadzu)、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)およびブルカー・バイオサイエンス(Bruker Biosciences)が挙げられる。
【0141】
本説明に基づく例示的な構造は、サイファージェン(Ciphergen)プローブ(図10)において使用されるような、溝をスライド可能に界面に取り付ける手段を含むチップである。この図において、試料チャンバのプローブを位置する手段は、基材101に不可欠であり、前記基材は、プローブに相補的な受け取り構造を取り付けるリップ102を含む。
【0142】
別の一例において、プローブは、円形であり、通例、磁気カプラーを用いて、ホルダー/アクチュエータに取り付けられている。標的をリペラ内に押しつけて密接に接触させて、位置的および電気確実性を保証する。
【0143】
他のプローブは、長方形であり、それらは、磁気結合を用いて担体に直接に密接に結びつけられるか、或いは、ピンもしくはラッチを用いて、二番目の担体に、物理的に取り付けられる。次に、二番目の担体を試料アクチュエータに磁気的に結合する。一般的に、オートローダー可能出力を有するシステムにより、この接近を使用する。アクチュエータは、一般的に、古典的なx、y2−d段階である。
【0144】
さらに別の例示的な一実施形態において、プローブは、バレルである。バレルを用いて、支持体ゲル断片もしくはブロットを支える。垂直面での回転と移動により、2−d段階が作り出される。
【0145】
なおさらに例示的な一実施形態で、プローブは、ディスクである。垂直もしくは水平位置のいずれかで、ディスクを回転および移動させて、r−シータ段階をつくる。上記のディスクは、通常、磁気もしくは圧縮カプラーかのいずれかを用いて、取り付けられる。
【0146】
クロマトグラフィー用支持体
例示的な一実施形態において、本発明のポリウレタンを用いて、クロマトグラフィー用支持体を形成する。ポリウレタンの層を用いて、粒状の基材をコーティングする。本発明の実施において有用である粒状の基材は、実質的に任意の物理化学的に安定した材料から作製される。有用な粒状の基材は、サイズもサイズ範囲も限定されていない。付与の適用に対する適切な粒径の選択は、当業者には明らかであろう。特定の好適な実施形態において、基材は、約1マイクロメータ〜約1000マイクロメータの直径を有する。他の好適な実施形態において、基材は、約50マイクロメータ〜約500マイクロメータの直径を有する。多くの市販のポリマーおよび樹脂も、本発明の実施において使用されることが可能である。
【0147】
例示的な一実施形態において、クロマトグラフィー用支持体は、分析物の「捕捉」を伴う方法のために、設計される。本明細書中で使用される用語「捕捉」は、本発明の材料上の基と分析物上の相補的な基との間の相互作用を指す。相互作用は、可逆的かまたは不可逆かのいずれかでありうる。分子は、純粋の液体、溶液、気体、蒸気等を含む多様の媒質から捕捉されうる。本発明の本実施形態は、例えば、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティー、気体、イオン交換、逆相、順相)、アッセイ、プロトンスポンジ、触媒、調査材料の濃度等を含む広範囲の適用のために使用されうる。さらに、上記の捕捉は、それ自体が目的(例えば、混合物から不純物の除去)であることが可能であり、或いは、多工程のプロセスにおける一工程(例えば、混合物から分析物を回収)でありうる。捕捉を用いる方法の例は、アフィニティークロマトグラフィーである。
【0148】
本発明の粒子は、多様の合成のための固体支持体として、使用されることが可能である。上記粒子は、有機低分子、ポリマー、核酸、ペプチド等の合成に有用な支持体である。例えば、カルドア(Kaldor)らの「固体支持体における合成有機化学(Synthetic Organic Chemistry on Solid Support)」、創薬における組み合わせ化学および分子多様性(COMBINATORIAL CHEMISTRY AND MOLECULAR DIVERSITY IN DRUG DISCOVERY)、ゴードン(Gordon)ら、ニューヨークのワイリー・リス社(Wiley−Liss,New York)編、1998年)を参照のこと。
【0149】
メンブレン
例示的な一実施形態において、本発明のポリウレタンは、メンブレンを形成するのに使用される。上記ポリウレタンの層を用いて、多孔性基材をコーティングする。本発明は、広範囲の結合性官能基(イオン性基、金属、錯化剤、生体分子等)、気孔寸法、表面電荷および表面の親水性/疎水性を付与することが可能である、容易に調製されて特性が決定されたメンブレンを提供する。上記多孔性材料は、平面であろうと曲面であろうとも、実質的に所望の任意の形状に賦形、屈曲または成形されることが可能であるので、上記メンブレンは、広範囲の形態において、調製されることが可能である。適切な形状およびサイズの選択は、本発明の材料の特定の用途に応じて決まり、十分に当業者の技量の範囲内である。
【0150】
サイズおよび形状に加えて、メンブレンの気孔寸法および気孔密度も、多数の組み合わせから選択される。例えば、本発明のポリウレタンの層を多孔性基材に堆積させることによって形成されるメンブレンは、適切な気孔寸法および気孔を有する市販のメンブレンを利用することが可能である。所望の気孔寸法および/または気孔密度を有する多孔性基材が、市販されていないならば、必要な基材を調製することは、十分に当業者の技量の範囲内である。
【0151】
本発明のメンブレンは、当技術分野で公知の方法により、形成される。例えば、ミズタニ(Mizutani,Y.)らの「応用高分子科学誌(J.Appl.Polym.Sci.)」1990年、39、1087−1100頁、ブライトバッハ(Breitbach,L.)らの「Angew.Makronaol.Chem.」1991年、184、183−196頁およびBryjak,M.らの「Angew.Makronzol Chem.」1992年、200巻、93−108頁を参照のこと。上記メンブレンは、純粋なポリウレタンコポリマーから、または前記コポリマーと別のポリマーの配合物から、調製される。本発明のポリウレタン膜は、基材(例えば、多孔性の基材)上に被膜されることができ、或いは、上記ポリウレタン膜は、基材なしでも、調製されることが可能である。
【0152】
本発明の例示的なメンブレンは、イオン交換膜である。カチオン交換膜において最もよく認められる官能基は、スルホン酸(SOH)とカルボン酸(−COOH)である。ナフィオン(Nafion)ブランドのパーフルオロスルホン化ポリマー膜の群は、第一型の例である。例えば、ミアーズ(Meares,P.)の「イオン交換の質量移動および運動(Mass Transfer and Kinetics of Ion Exchange)」;リベルティ(Liberti,L.);Helffefich,F.G.編、;NATO ASI Series E:応用科学(Applied Science)71号;マーティヌス・ニジョフ出版(Martinus Nijhoff Publishers)、The Hague、オランダ(The Netherlands)(1983年);329−366頁;イエーガー(Yeager,H.L.)ら、「パーフルオロ化イオノマー膜(Perfluorinated Ionomer Membranes)」;イエーガー(Yeager,H.L.);アイゼンベルグ(Eisenberg)編;ACS Symposium Series180;米国化学会(American Chemical Society):ワシントンDC(Washington,DC,)(1982年);1−6頁を参照のこと。
【0153】
アニオン交換膜の官能基は、通常、第4級アンモニウム[−N(CH]と、より少ない程度に第4級ホスホニウム[−P(CH]と、第3級スルホニウム[−S(CH]とである。塩基性基は、本質的に酸性基よりも安定していないので、アニオン交換膜は、カチオン交換膜よりも安定していないことが多い(シュトラットマン(Strathmann,H.)の合成膜:サイエンス、エンジニアリングアンドアプリケーション(Synthetic Membranes:Science Engineering and Applications);バンゲイ(Bungay,P.M.);ロンズデール(Lonsdale,H.K.);デ・ピーニョ(de Pinho,M.N.)編;NATO ASI Series C:数学および物理科学(Mathematical and Physical Sciences)181巻;オランダ、ドルドレヒトのリーデル社(D.Reidel Publishing Company:Dordrecht,Holland)(1986年)1−37頁)参照のこと。
【0154】
本発明により提供されるポリウレタンの多用途の化学に基づいた他のメンブレンは、当業者には、明らかであろう。例えば、本発明のポリウレタンは、アフィニティー精製膜に組み込まれることも可能である。アフィニティー精製膜において、メンブレン結合型の結合性官能基を有する分析物に対する親和性を利用して、その分析物を精製する。本発明の材料は、範囲のアフィニティー精製プロトコルにおいて使用するこが可能であるが、2つの方法論が、現在のところ好適である。第一において、分析物を含有する流体で、多孔性材料をインキュベートする。インキュベート後、流体からメンブレンを除去し、メンブレンから分析物を取り除く。第二実施形態において、メンブレンは、分析物に対するその親和力のために、メンブレンを隔てた分析物の輸送を促進する、結合性官能基を含む。
【0155】
メンブレンを超えての促進輸送の概念は、当技術分野で承認されている。例えば、ラクシュミ(Lakshmi)らのネイチャー(Nature)388(21)、758−760(1997年);ノーブル(Noble),Chem.Eng.Progr.85:58−70(1989年);ノーブル(Noble)ら、J.Membr.Sci.75:121−129(1992年)を参照のこと。簡潔には、促進輸送の概念は、分析物に選択した種のメンブレンへの結合を含む。メンブレンに結合した種は、分析物を認識して、分析物に結合するか、さもなければ、分析物と錯体を形成する。従って、本発明は、促進輸送の機序を介して、種のアフィニティー精製を実現するための材料および方法を提供する。
【0156】
デバイスを用いる方法
本発明のデバイスは、分析物の単離および検出に有用である。具体的には、本発明のチップは、実質的に任意の形式のアッセイを実施するのに有用であり、アッセイの例として、クロマトグラフィー捕捉、免疫学的アッセイ、競合アッセイ、DNAもしくはRNA結合アッセイ、蛍光インサイツハイブリッド形成法(FISH)、タンパク質および核酸プロファイリングアッセイ、サンドイッチアッセイ等が挙げられるが、これらに限定されない。以下の考察は、例示的なアッセイを実施するためのチップの使用を焦点に議論する。上記焦点は、例証のみを明確にするためであり、本発明の範囲を限定または制限するものではない。当業者は、本発明の方法が、分析物の存在および/または量を検出するための任意のアッセイ技法に、広範に適用可能であることを正しく評価するだろう。
【0157】
エネルギー吸収部分を有する機能性ヒドロゲルを有するチップは、チップにマトリックスをさらに加えないで、分析物の脱離およびイオン化を助成するレーザー脱離質量分析法に有用である。
【0158】
本発明のクロマトグラフィー用樹脂は、結合部が官能化された場合、混合物からの分子の捕捉および精製に有用である。
【0159】
本発明のメンブレンは、メンブレン表面上の分析物の単離、続いてのそれらの検出に有用である。
【0160】
検出
本発明のチップは、分析物分子の検出に有用である。ヒドロゲルが、結合基で官能化された場合、チップは、特定の基に結合する表面分析物に捕捉する。未結合の材料を洗い落として、例えば、気相イオン分析法、光学的方法、電気化学的方法、原子間力顕微鏡法および高周波法を含む多くの方法で、分析物を検出することが可能である。気相イオン分析法を本明細書に記載する。質量分析、具体的にはSELDIの使用に特に関心がある。光学的方法として、例えば、蛍光、ルミネセンス、化学発光、吸光度、反射率、透過率、複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、水晶発振子微量天秤、共鳴鏡法(resonant mirror method)、格子カプラー導波管法(grating coupler waveguide method)(例えば、波長を調べる光学センサー(「WIOS」)もしくは干渉法)が挙げられる。光学的方法には、顕微鏡検査法(共焦点法と非共焦点法の両方)、画像法および非画像法が含まれる。様々な形式における免疫学的アッセイ(例えば、ELISA)は、固体相に捕捉した分析物の検出用の普及している方法である。電気化学的方法として、ボルタメトリーおよびアンペロメトリー法が挙げられる。高周波法として、多極性共鳴分析法(multipolar resonance spectroscopy)または干渉法が挙げられる。光学的方法には、顕微鏡検査法(共焦点法と非共焦点法の両方)、画像法および非画像法が含まれる。様々な形式における免疫学的アッセイ(例えば、ELISA)は、固体相に捕捉した分析物の検出用の普及している方法である。電気化学的方法として、ボルタメトリーおよびアンペロメトリー法が挙げられる。高周波法として、多極性共鳴分析法が挙げられる。
【0161】
質量分析法/SEND
脱離検出器は、吸着剤から分析物を脱離させる手段と、該脱離した分析物を直接検出するための手段を含む。つまり、脱離検出器は、別の固体相の分析物を捕捉し、該分析物に続いての分析を施す中間工程なしに、脱離した分析物を検出する。分析物の検出は、通例、シグナル強度の検出を包含する。次いで、これは、吸着剤に吸着された分析物の量を反映する。
【0162】
脱離検出器は、さらに、他の要素(例えば、脱離した分析物を検出器の方へ加速する手段、および該検出器によって、脱離から検出までの分析物の飛行時間を測定する手段)を備えうる。
【0163】
好適な脱離検出器は、レーザー脱離/イオン化質量分析計であり、当技術分野では周知である。上記質量分析計は、吸着した分析物を送達する基材(例えば、プローブ)が挿入されるポートを備える。該分析物とエネルギー(例、レーザーエネルギー等)との衝突により、分析物が脱離される。該分析物とレーザーとの衝突により、飛行管内へのインタクトな分析物の脱離およびそのイオン化が生じる。上記飛行管は、一般に、真空空間を規定する。真空管の一部の帯電プレートは、イオン化された分析物を検出器の方へ加速させる電気ポテンシャルを生み出す。時計は、飛行時間を測定し、システムエレクトロニクスにより、分析物の速度が測定され、この速度が質量に変換される。当業者の誰もが理解する通り、これらの要素のいずれもが、脱離、加速、検出、時間測定などの種々の手段を用いる脱離検出器の構築において、本明細書中に記載される他の要素と組み合わされうる。例示的な検出器は、さらに、アレイ上の任意のスポットが、レーザビームと整列されるように、表面を移動させるための手段を備える。
【0164】
検出方法が、レーザー脱離/イオン化プロセスを包含する場合、EAMで官能化され、場合により結合性官能基でさらに官能化された本発明のヒドロゲルは、特に有用である。該分析物は、ヒドロゲル上に堆積された後、従来型のMALDIと異なりマトリックスを利用せずに、レーザー脱離プロセスにより、分析される。
【0165】
蛍光および発光
診断の分野において低濃度の分析物を検出するために、化学発光および電気化学発光の方法は、幅広い容認を得ている。化学発光および電気化学発光のこれらの方法は、発光分子または光子発生事象の数を数倍に増幅させることによって、低濃度の分析物を検出するための手段を提供する。その結果得られる「シグナル増幅」は、低濃度の分析物の検出を可能にする。
【0166】
別の実施形態において、蛍光標識を使用して、1種もしくはそれ以上のアッセイ構成要素もしくはチップ領域を標識する。蛍光標識は、操作中の注意がほとんど必要でなく、かつ高スループットの可視化技法(コンピューターを含む一体型の系において、分析物用の画像のデジタル化を含む光学分析)に従うという利点を有する。好適な標識は、典型的には、以下のうちの1つもしくはそれ以上により特徴付けられる:高感受性、高安定性、低いバックグラウンド、低い環境感受性および標識する際の高い特異性。多くの蛍光標識は、ミズーリ州セントルイスのSIGMAケミカルカンパニー(SIGMA chemical company(Saint Louis,MO))、オレゴン州ユージーンのモレキュラー・プローブス(Molecular Probes(Eugene,OR))、ミネソタ州ミネアポリスのR&Dシステムズ(R&D systems(Minneapolis,MN))、ニュージャージー州ピスカタウエイのファルマシアLKBバイオテクノロジー(Pharmacia LKB Biotechnology(Piscataway,NJ))、カリフォルニア州パロアルトのクロンテクニーク・ラボラトリーズ社(CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto,CA))、ケムジーン社(Chem Genes Corp.)、ウイスコンシン州ミルウォーキーのアドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))、グレンリサーチ社(Glen Research,Inc.)、メリーランド州ゲーサーズバーグのGIBCO BRLライフテクノロジー社(GIBCO BRL Life Technologies,Inc.(Gaithersburg,MD))、スイス、ブクスのフルカケミカ・バイオケミカアナリチカ(Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG,Buchs,Switzerland)、およびカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・ビオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA))、さらに当業者に公知の多くの他の商業的供給源から市販されている。さらに、当業者は、特定の用途のために適切な発蛍光団の選択方法を認識しており、それが容易に商業的に利用可能であるならば、新規な必要な発蛍光団を合成しうるか、または市販の蛍光化合物を合成によって改変して所望の蛍光標識に達することができる。
【0167】
低分子の発蛍光団に加えて、天然物由来の蛍光タンパク質および上記のタンパク質の改変類似体が、本発明において有用である。上記のタンパク質としては、例えば、刺胞動物の緑色蛍光タンパク質(ウォード(Ward)ら、フォトケム・フォトビオール(Photochem.Photobiol.)35:803−808(1982年);レバイン(Levine)ら、Comp.Biochem.Physiol.,72B:77−85(1982年))、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)株由来の黄色蛍光タンパク質(ボールドウィン(Baldwin)ら、バイオケミストリー(Biochemistry)29:5509−15(1990年))、渦鞭毛藻類Symbiodinium属由来のペリジニン(Peridinin)−クロロフィル(モーリス(Morris)ら、植物分子生物学(Plant Molecular Biology)24:673:77(1994年))、海洋藍細菌門(例、シネココッカス(Synechococcus))由来のフィコビリタンパク質(例、フィコエリトリンおよびフィコシアニン)(ウィルバンクス(Wilbanks)ら、J.Biol.Chem.268:1226−35(1993年))等が挙げられる。
【0168】
顕微鏡技法
本発明を実施する際に使用する顕微鏡技法として、単光顕微鏡検査法、共焦点顕微鏡検査法、偏光顕微鏡検査法、原子間力顕微鏡法(ヒュー(Hu)ら、ラングミュア(Langmuir)13:5114−5119(1997年))、走査トンネル顕微鏡(エヴォイ(Evoy)ら、J.Vac.Sci.Technol A 15:1438−1441、第2部(1997年))等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
分光学的方法
本発明を実施する際に使用する分光学技法として、例えば、赤外分析法(チャオ(Zhao)ら、Langmuir13:2359−2362(1997年))、ラマン分析法(ジュー(Zhu)ら、Chem.Phys.Lett.265:334−340(1997年))、X光線電子分析法(Jiangら、Bioelectroch.Bioener.42:15−23(1997年))等が挙げられる。可視分析法および紫外分析法もまた、本発明において使用される。
【0170】
アッセイ
本発明のチップは、保持(retentate)クロマトグラフィーを実施するために有用である。保持クロマトグラフィーは、生物学および医学において多くの用途を有する。これらの用途として、分析物のコンビナトリアル生化学的な分離および精製、生物学的標本のタンパク質プロファイリング、異種タンパク質発現および分子認識事象の研究、診断、ならびに薬物送達が、挙げられる。
【0171】
分析用ツールとしての保持クロマトグラフィーの1つの基本的な使用は、試料を、異なる吸着剤/溶出剤の組み合わせのコンビナトリアル分類に曝す工程、および異なる条件下で分析物の挙動を検出する工程を包含する。この両方の工程が、分析物を精製し、試料中の該分析物を検出するのに有用な条件を同定する。この方法において同定された吸着剤を有する基材は、分析物の特定の検出器として使用されうる。進行性抽出方法において、試料は、第一の吸着剤/溶出剤の組み合わせおよび洗浄液に曝され、この第一の吸着剤によって吸着された分析物が除去され、第二の吸着剤に曝されて、他の分析物が除去される。分析物を保持するために同定された選択的条件もまた、分取精製手順において使用されることが可能であり、該手順において、分析物を含有する不純な試料は、続いて、分析物を保持する吸着剤に曝され、不純物が除去され、残留分析物は、続いての回に、吸着剤から回収される。例えば、米国特許第6,225,047号明細書を参照のこと。
【0172】
他の適用において、特定の結合反応に基づくチップベースのアッセイは、多種多様な標的(例、薬物、ホルモン、酵素、タンパク質、抗体、および種々の生物流体および組織試料中の感染因子)を検出するのに有用である。一般に、該アッセイは、標的、該標的のための結合性官能基、およびこの結合性官能基によって固定化された後にこの標的を検出する手段(例えば、検出可能な標識)からなる。免疫学的アッセイは、種々の化合物および材料(抗原)の特定の抗原性決定因子と結合することができる、免疫グロブリン(抗体)間の反応を包含する。他の型の反応は、アビジンとビオチン間、プロテインAと免疫グロブリン間、レクチンと糖部分との間等の結合を包含する。例えば、米国特許第4,313,734号明細書(Leuveringに対して発行された);米国特許第4,435,504号明細書(ズーク(Zuk)に対して発行された);米国特許第4,452,901号明細書および同第4,960,691号明細書(ゴードン(Gordon)に対して発行された);および米国特許第3,893,808号明細書(ケァンベル(Campbell)に対して発行された)を参照のこと。
【0173】
本発明は、試料中の標的の存在または非存在を確認するため、および試料中の標的を定量するために有用なアッセイを実施するのに有用なチップを提供する。本発明が共に使用されうる例示的なアッセイ形式は、免疫学的アッセイ(例えば、競合アッセイ)、およびサンドイッチアッセイである。当業者は、本明細書中に記載される本発明が多数の他のアッセイ形式と関連して実施されうることを正しく評価するだろう。
【0174】
本発明のチップおよび方法は、さらに、コンビナトリアルライブラリーのような、化合物のスクリーニングライブラリーにおいて使用される。新規の生物活性を有する化合物および材料科学特性を同定するための、化学ライブラリーの合成およびスクリーニングが、現在一般的に実施されている。合成されているライブラリーとして、例えば、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、および低分子量および高分子量の有機分子もしくは無機分子が挙げられる。例えば、モラン(Moran)ら、PCT公開国際公開第97/35198号パンフレット(1997年9月25日公開);Baindurら、PCT公開国際公開第96/40732号パンフレット(1996年12月19日公開);ギャロップ(Gallop)ら、J.Med.Chem.37:1233−51(1994年)を参照のこと。
【0175】
事実上、任意の型の化合物ライブラリー(ペプチド、核酸、サッカリド、低分子量および高分子量の有機化合物および無機化合物を含む)は、本発明の方法を用いて、プローブされうる。本発明の好適な実施形態において、合成されたライブラリーは、10種を超える特有の化合物、好ましくは、100種を超える特有の化合物、さらに好ましくは、1000種を超える特有の化合物を含む。
【0176】
例示的な一実施形態において、受容体の結合ドメインは、例えば、創薬試験(drug discovery assay)のための焦点として役割を果たし、そこで、例えば、受容体は固定化され、それらの結合ドメインと相互作用することが知られている因子(つまり、配位子)と、試験下での特定の薬物もしくは阻害剤の量との両方と共にインキュベートされる。薬物が受容体と結合し、それによって受容体−配位子錯体の形成を阻害する程度が、測定されうる。創薬試験に関する上記の可能性は、本明細書において企図されており、本発明の範囲内であると考えられる。他の焦点および適切なアッセイ形式は、当業者には明らかであろう。
【0177】
分析物
本発明の方法は、検出可能な様式において結合性官能基と相互作用する、任意の標的、またはクラスの標的を検出するために使用されうる。標的と結合性官能基と間の相互作用は、任意の物理化学的相互作用(共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、電子誘因性相互作用(attractive electronic interaction)および疎水性/親水性相互作用を含む)でありうる。
【0178】
好適な一実施形態において、標的分子は、ポリペプチド(例えば、ペプチドもしくはタンパク質)、ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドもしくは核酸)、炭水化物(例えば、単純なもしくは複雑な炭水化物)または脂質(例えば、脂肪酸もしくはポリグリセリド、リン脂質等)のような生体分子である。タンパク質の場合において、標的の性質は、結合性官能基の性質に応じて決まりうる。例えば、結合性官能基としての配位子に対する受容体を用いて配位子を補足しうる;抗原に対する抗体を用いて抗原を補足しうる;または、基材上に作用する酵素を用いて基材を捕捉しうる。
【0179】
標的は、任意の種類の生物供給源(血液、血清、唾液、尿、精液、精漿、リンパ等の体液を含む)由来でありうる。標的は、さらに、生物標本(例、細胞溶解物、細胞培養培地等)からの抽出物を含む。例えば、細胞溶解物の試料は、場合により、例えば、一次組織もしくは細胞、培養組織もしくは細胞、正常組織もしくは細胞、病的組織もしくは細胞、良性組織もしくは細胞、癌組織もしくは細胞、唾液腺組織もしくは細胞、腸組織もしくは細胞、神経組織もしくは細胞、腎臓組織もしくは細胞、リンパ組織もしくは細胞、膀胱組織もしくは細胞、前立腺組織もしくは細胞、尿生殖器組織もしくは細胞、腫瘍組織もしくは細胞、腫瘍新生血管の組織もしくは細胞等由来である。
【0180】
標的は、検出可能な基が結合する2番目の種と直接的か間接的のいずれかで相互作用することにより、蛍光体または他の検出可能な基で標識されうる。2番目の標識された種が間接的な標識剤として使用される場合、標的種と相互作用することが公知の任意の種から選択される。好適な2番目の標識された種として、抗体、アプタザイム、アプタマー、ストレプトアビジン、およびビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
標的は、結合性官能基と相互作用する前もしくは後のいずれかに、標識されうる。標的分子は、1個の検出可能な基もしくは2個以上の検出可能な基で標識されうる。標的種が2個以上の検出可能な基で多重標識される場合、該基は、互いに識別可能であるのが好ましい。それに基づいて個々の量子ドットを識別できる特質として、蛍光波長、吸収波長、蛍光発光、蛍光吸収、紫外線吸光度、可視光線吸光度、蛍光量子収率、蛍光寿命、光散乱およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
作製方法
別の例示的な一実施形態において、本発明は、本発明のデバイスを作製する方法を提供する。該方法は、基材を本明細書に記載されるポリウレタンと、ポリウレタンが基材上に固定化されるように、接触させることを含む。
【0183】
別の実施形態において、本発明は、複数の吸着性デバイスを作製する方法を提供する。複数のデバイスの各メンバーは、(a)表面を有する固体支持体;および(b)表面上に可逆的にもしくは不可逆的に固定化される吸着性ポリウレタンフィルムを含む。好適な一方法において、各固体支持体は、単一バッチのポリウレタンからのポリウレタン試料の部分標本と接触する。固体支持体ポリウレタン構成体は、場合により、固体支持体の表面にポリウレタンを固定化するために、過熱される。
【0184】
例示的な一実施形態において、ポリウレタンは、複数のアドレス可能位置で、基材に固定化される。
【0185】
単一バッチのポリウレタンの使用は、チップ対チップおよびロット対ロットの変化を最小限に抑える。ポリウレタンの単一バッチに好適なサイズは、約0.5リットル〜5リットルである。上記単一バッチは、少なくとも約500,000mm、好ましくは約500,000mm〜約50,000,000mmのアドレス可能位置の総面積を調達するのに十分な容量であるのが好ましく、約100,000〜約5,000,000個のアドレス可能位置であるのがさらに好ましい。
【0186】
合成後、機能性フィルム構成要素は、当業者に周知の種々の化学反応により、さらに加工されうる。例えば、アニオン交換ポリウレタンを生成するために、反応性ポリウレタンは、適切なアミン(例、ジメチルエタノールアミンもしくはトリメチルアミン)と混合され、反応して4級イオン交換部位を生成することができる。カチオン交換部位を含む類似のポリウレタンの生成は、多数の周知の合成スキームにより達成されうる。特に汎用性の方法は、硫酸ジメチル置換反応使用に依存しており、該反応において、反応性ポリウレタンが、最初に、硫化ジメチル溶液と反応する。その結果得られる反応生成物は、スルホニウムベースのアニオン交換ポリウレタンである。次に、第二カチオン交換部位生成試薬を反応混合液に加え、反応を完了させるために混合液を加熱する。この目的のための例示的な試薬は、メルカプトプロピオン酸である。この酸の溶液を、最初に、pH約11に調整した後、スルホニウムベースのアニオン交換ポリウレタンの上記懸濁液と混合する。上記懸濁液を約70℃で所定の期間加熱した後、置換反応を完了させる。その結果得られる機能性フィルム構成要素は、弱酸性カチオン交換粒子である。
【0187】
他の結合性官能基を有するポリウレタンを調製するために、類似の反応経路を利用することが可能である。適切な反応経路を決定して、選択された結合性官能基を、本発明のチップに使用する機能性フィルム構成要素に結合させることは、当業者の能力の範囲内である(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、バイオコンジュゲートテクニックス(BIOCONJUGATE TECHNIQUES)、サンディエゴのアカデミックプレス(Academic Press,San Diego)、1996年;およびダン(Dunn)ら編、高分子薬剤および薬物送達システム(POLYMERIC DRUGS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS)、ACSシンポジウムシリーズ(ACS Symposium Series)469巻、ワシントンD.C.のアメリカンケミカルソサイアティ(American Chemical Society,Washington,D.C.)1991年を参照のこと)。
【0188】
上記の合成工程および官能化工程の後、機能性フィルム構成要素は、ポリウレタンと相互作用するリンカーアームを場合により含む、固体支持体上にコーティングされる。従って、例示的な一実施形態において、ポリウレタンのスラリーが、以前にグラフト化されたリンカーアームの位置で、固体支持体表面上にアリコートされる。粒子のスラリーにより、選択した時間での反応が可能になり、次いで、残留する未結合ポリウレタンは、容易にリンスされて取り除かれる。
【0189】
以下の実施例は、本発明の選択される実施形態を例証するために提供され、その範囲を限定されるものではない。
【実施例】
【0190】
実施例1 非機能性Tゲル
1.1 非官能性ポリウレタンポリマー単位−Tゲルの調製方法
1.1a PEG400からのPU−400イソシアネート−末端ポリウレタン
トルエンジ−イソシアネート(「TDI」)(1.15g)を、無水ジメチルホルムアミド(13g)にポリ(エチレングリコール)(「PEG」)400(1.2g)とトリメチロールプロパン(「TMP」)(0.134g)を溶かした混合物液に、一度に加えた。混合液を1時間攪拌して、Tゲルポリウレタンポリマーを形成した。
【0191】
1.1b PEG200からのPU−200イソシアネート−末端ポリウレタン(Tゲル)
PEG400の代わりに、PEG200(0.55g)を使用したことを除いて、手順は、上記と同一であった。
【0192】
1.1c PEG600からのPU−600イソシアネート−末端ポリウレタン(Tゲル)
PEG600(1.8g)を使用したことを除いて、手順は、上記の1.1aと同一であった。
【0193】
1.1d PEG1000からのPU−1000イソシアネート−末端ポリウレタン
PEG1000(2.96g)を使用したことを除いて、手順は、上記の1.1aと同一であった。
【0194】
1.1e DHBAからのPU−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)イソシアネート−末端ポリウレタン
TDI(10.9g)を、ジメチルホルムアミド(236g)中にDHBA(4.71g)とTMP(1.34g)を溶かした混合液に、一度に加えた。混合液を1時間攪拌して、Tゲルポリウレタンポリマーを形成した。
【0195】
実施例2 カチオン性交換官能基を有するTゲル
2.1 ポリウレタンTゲル弱カチオン交換ポリマーの調製
2.1a 1,4−ブタンジオール−3−カルボン酸−ベースのPUポリマー
PEG400の代わりに、1,4−ブタンジオール−3−カルボン酸(0.41g)を加えたことを除いて、手順は、実施例1.1aと同一であった。上記溶液を用いて、WCXチップを調製した。別の方法として、1,4−ブタンジオール−3カルボン酸の一部をPEG200、400、または1000と部分的に取り替えた。
【0196】
2.1b Tゲルからのグリコール酸ベースのPUポリマー
グリコール酸(4.4mg)を、実施例1.1bから既に調製した5%Tゲル(1g)に加えた。上記溶液を用いて、WCXチップを調製した。別の方法として、実施例1.1a〜1.1dのいずれかからのTゲルを使用することが可能である。
【0197】
2.2 ポリウレタン強カチオン交換ポリマーTゲルの調製
PEG400の代わりに1,4−ブタンジオール−3−スルホン酸(0.56g)を加えたことを除いて、手順は、実施例2.1aと同一であった。上記溶液を用いて、SCXチップを調製した。別の方法として、1,4−ブタンジオール−3−スルホン酸の一部をPEG200、400、または1000と部分的に取り替えた。
【0198】
実施例3 アニオン交換官能基を有するTゲル
3.1 ポリウレタン強アニオン交換ポリマーの調製
3.1a 1,4−ブタンジオール−3−トリメチルアンモニウムクロリドベースのPUポリマー
強アニオン交換ポリマーを調製するのに使用する手順は、1,4−ブタンジオール−3−カルボン酸の代わりに、1,4−ブタンジオール−3−トリメチルアンモニウムクロリド(0.55g)を加えたことを除いて、実施例2.1aと同一であった。別の方法として、1,4−ブタンジオール−3−トリメチルアンモニウムクロリドの一部をPEG200、400、または1000と部分的に取り替えた。
【0199】
3.1b 塩化コリンベースのPUポリマーTゲル
コリン強アニオン交換ポリマーの調製法は、グリコール酸の代わりに、塩化コリン(8mg)をTゲルに加えたことを除いて、実施例2.1bと同一であった。上記溶液を用いて、SAXチップを調製した。別の方法として、塩化コリンを実施例1.1a〜1.1dのいずれかからのTゲルに加えることが可能である。
【0200】
実施例4 SENDヒドロゲル
4.1 SEND EAM−ポリウレタンポリマーの調製
4.1a α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸ベースのPUポリマー
実施例1.1b(イソシアネート−末端PU200)からのTゲルの2.5%溶液とα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)(11mg)を混合して、SENDポリウレタンポリマーを形成した。別の方法として、PU−400、PU600およびPU1000Tゲルを使用すること可能である。上記溶液を用いて、CHCA SENDチップを調製する。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。SENDチップにより、図9に示すように、EAMを全く添加せずに、SELDI MSに、7種のペプチド混合物の出現が示される。
【0201】
4.1b Tゲルからのシナピン酸ベースのPUポリマー
CHCAの代わりに、シナピン酸(13mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、SPA SENDチップを調製した。
【0202】
実施例5 反応性および吸着性官能基を有するヒドロゲル
5.1 Tゲルからのイミダゾール官能性PUポリマーの調製
CHCAの代わりに、イミダゾール(3.9mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、イミダゾール官能性チップを調製した。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0203】
5.2 エポキシ官能性PUポリマーの調製
CHCAの代わりに、グリシドール(4.3mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、エポキシ官能性チップを調製した。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0204】
5.3 エポキシ−官能性PU−SENDポリマーの調製
CHCAと一緒にグリシドール(4.3mg)も使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、PU−EPOXY−SENDチップを調製した。1マイクロリットルのこの希釈溶液(2.5%)を、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0205】
5.3 N−ヒドロキシ−スクシンイミド官能性PUポリマーの調製
CHCAの代わりに、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(6.6mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、N−ヒドロキシ−スクシンイミドチップを調製した。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0206】
5.4 C16官能性の疎水性PUポリマーの調整
CHCAの代わりに、1−ドデシルアルコール(14mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、疎水性チップを調製した。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0207】
5.5 金属キレート剤ベースのIMAC PUポリマーの調製
CHCAの代わりに、N−ヒドロキシル−エチルエチレンジアミン三酢酸(16mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、IMACチップを調製した。別の方法として、PU−400およびPU1000からのTゲルを使用することが可能である。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。
【0208】
5.6 ヘパリンベースのPUポリマーの調製
CHCAの代わりに、ヘパリンのナトリウム塩(14mg)を使用したことを除いて、手順は、4.1aと同一だった。上記溶液を用いて、チップを調製した。この溶液1マイクロリットルを、二酸化ケイ素でコーティングしたアルミニウム基材に塗布し、80℃で2時間焼成した。別の方法として、PU−400およびPU1000を使用することも可能である。
【0209】
5.7 ヒドラジンPUポリマーの調製
1.1a〜1.1dからのTゲルから調製したチップを、80℃で30分間部分的に硬化した。これらのチップを1%のヒドラジン中に15分間浸漬した。洗浄して乾燥させた後、上記ヒドラジンを用いて、イミンの形成、続いての還元により、糖タンパク質を捕捉した。別の方法として、PU−400およびPU−1000Tゲルを使用することも可能である。
【0210】
実施例6 チップの調製
6.1 PUポリマーを含有するチップの調製
実施例1〜5の各々からの1マイクロリットルの溶液を、二酸化ケイ素でコーティングした1つもしくはそれ以上のアルミニウム基材の異なる位置にスポットした。別の方法として、溶液をガラスチップ上にスピンコーティングした。基材−ポリマー構成体を、80℃で2時間、硬化した。
【0211】
本出願中において引用された全ての公報および特許文献は、個々の公報もしくは特許文献の各々が個別に掲載される場合と同程度に、あらゆる目的のためにそれらの全体が参考として組み込まれている。それらの、本文書中での種々の参照を引用することよって、本出願人は、いずれの特定の参考文献も本発明に対する「先行技術」であることを認めない。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】本発明のポリウレタンポリマー単位(Tゲル)(成分モノマー単位:架橋モノマー、第一モノマー、第二モノマーおよび官能基モノマーを含む)の例示を示す。
【図2】ヒドロゲルの形成をもたらす2つのTゲル単位を関連させる重合反応を示す。1つのTゲル単位からのイソシアネート部分は、もう1つのTゲル単位のウレタン結合と結合する。上記反応は、反応性基がイソチオシアネートと硫黄含有のウレタン結合とを含むならば、類似している。
【図3】反応性官能基を有する本発明の活性化されたポリウレタン(Tゲル)を官能化するために、利用可能な例示的な反応経路を示す。
【図4】本発明のポリウレタン(T−ゲル)をベースとする生体特異的結合性官能基を有するポリマーを調製するために利用可能な例示的な反応経路を示す。これらのバイオチップは、図3に示すように、生体特異的部分を反応性ヒドロゲルにカップリングさせることにより、作製される。
【図5】本発明のポリウレタンをベースとするクロマトグラフィー用ポリマーを調製するために利用可能な例示的な反応経路を示す。
【図6】エネルギー吸収部分を有する本発明のSEND(ニート脱離のための表面増強)チップを調製するために利用可能な例示的な反応経路を示す。
【図7】エネルギー吸収部分を有し、かつ本発明のポリウレタンをベースとする本発明のクロマトグラフィー用ポリマーSEND(ニート脱離のための表面増強)チップを調製するために利用可能な例示的な反応経路を示す。
【図8】EAM(SEND)と活性化された結合性官能基との両方を含むヒドロゲルを調製するために利用可能な例示的な反応経路を示す。
【図9】実施例4.1aからのCHCA−PU200SENDチップに適用された7種のペプチド混合物のレーザー脱離/イオン化質量スペクトルを示す。7種のペプチド混合物は、Arg−バゾプレッシン(MW1084.2)、ソマトスタチン(MW1637.9)、ダイノルフィン(MW2147.5)、ACTH(ヒト)(MW2833.5)、ウシインスリンB−鎖(MW3495.9)、ヒトインスリン(MW5807.7)およびヒルジンBHVK(MW7033.6)を含む。上記ペプチドは、50uLの緩衝液(10mMの酢酸アンモニウム、25%のアセトニトリル、1.25%のトリフルオロ酢酸)中に懸濁される。1uLの溶液を、PU SENDチップ上にスポットし、それを乾燥させた。上記ペプチドをサイファージェン(Ciphergen)PBSII質量分析計で検出して、該スペクトルを得た。
【図10】質量分析計のプローブを係合することができる例示的な固体支持体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面を有する固体支持体と、
(b)物理吸着および化学吸着から選択される相互作用によって、前記表面に結合されるポリウレタンヒドロゲルと、を含むデバイスであって、
前記ヒドロゲルは、複数個のウレタン結合と、結合性官能基、エネルギー吸収部分、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーと、を含むデバイス。
【請求項2】
前記ウレタン結合のうち少なくとも2個が、少なくとも2個のイソシアネート基を含む部分との架橋により、尿素結合に変換されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、少なくとも
(i)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの反応性部分を含む架橋モノマーと、
(ii)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの反応性部分を含む第一モノマーと、
(iii)イソシアネート部分、イソチオシアネート部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む第二モノマーと、
(iv)結合官能性モノマー、エネルギー吸収モノマー、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーと、のコポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記架橋モノマーが、6個以下の炭素原子を含むアルキルポリオールである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一モノマーが、式
【化1】


(式中、
は、OHおよびSHから選択されるメンバーであり、
およびYは、それぞれ独立して、H、置換または未置換アルキル、置換または未置換ヘテロアルキル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロアリール、置換または未置換ヘテロアリールアルキル、正に帯電した部分、負に帯電した部分、金属錯化部分、金属錯体、親水性部分、疎水性部分、反応性有機官能基、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーであり、
Wは、Hまたはハロゲンであり、
Rは、O、S、NHおよびO、S、NHから選択されるメンバーで置換されたアルキルであり、且つ
nは、1〜1000の整数である)
で表される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第二モノマーが、式
【化2】


(式中、
は、置換または未置換アルキル、置換または未置換ヘテロアルキル、置換または未置換アリール、置換または未置換ヘテロアリール、および置換または未置換ヘテロシクロアルキル部分から選択されるメンバーであり、
およびZは、それぞれ独立して、OおよびSから選択される)
で表される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第一モノマーが、ポリ(アルキレンオキシド)である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
が、置換または未置換C−C22アルキルおよび置換または未置換C−C12アリールから選択されるメンバーである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
(i)前記架橋部分が、トリメチロールプロパンおよびブタントリオールから選択されるメンバーであり、
(ii)前記第一モノマーが、ポリ(エチレングリコール)であり、および
(ii)前記第二モノマーが、トルエンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ブチルジイソシアネート、およびヘキシルジイソシアネートから選択されるメンバーである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項10】
前記結合官能性モノマーが、生体特異的部分、正に帯電した部分、負に帯電した部分、アニオン交換部分、カチオン交換部分、金属イオン錯化部分、金属錯体、極性部分、疎水性部分、および反応性有機官能基からなる群から選択される結合性官能基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記結合官能性モノマーが、アミノ酸、染料、炭水化物、核酸、ポリペプチド、脂質、および糖からなる群から選択される結合性官能基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記結合官能性モノマーが、抗体、抗原、受容体に対するリガンド、受容体、ヘパリン、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジンから選択される結合性官能基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記結合官能性モノマーが、N,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン、イミノ二酢酸、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシ−キノリン、N,N,N’−トリス(カルボキシトリメチル)エタノールアミン、N−(2−ピリジルメチル)アミノアセテートから選択される金属イオン錯化部分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記結合官能性モノマーが、ジエチルアミン、トリエチルアミン、スルホネート、およびカルボキシレートから選択される結合性官能基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記結合官能性モノマーが、エポキシ、イミダゾール、N−ヒドロキシ−スクシンイミド、ヨードアセチル、チオール、およびアルデヒドから選択される結合性官能基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記結合性官能基が、銅、鉄、ニッケル、コバルト、ガリウム、および亜鉛から選択される錯化された金属イオンを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記EAMモノマーが、供給源からの光照射を吸収し、熱エネルギーを発生させ、前記熱エネルギーを移送して、前記ヒドロゲルとの有効な接触状態にある分析物の脱離およびイオン化を促進するアリール核を含む光反応性部分を備えるエネルギー吸収部分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記EAMモノマーが、安息香酸、ケイ皮酸、コハク酸、シナピン酸、ニコチン酸およびそれらの誘導体から選択されるエネルギー吸収部分を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記固体支持体が、チップ、クロマトグラフィー用樹脂、およびメンブレンからなる群から選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記固体支持体が、二酸化ケイ素でコーティングされ、かつ前記ポリウレタンが、前記表面上に共有結合的に固定化されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記固体支持体が、そこに前記ポリウレタンを結合させる少なくとも1つのアドレス可能な特徴を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記結合性官能基と相互作用する分析物をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記相互作用が、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、電子反発性相互作用(repulsive electronic interactions)、電子誘因性相互作用(attractive electronic interaction)、疎水性相互作用、親水性相互作用からなる群から選択されるメンバーである、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記分析物が、ポリペプチド、核酸、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーを含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項25】
分析物を検出する方法であって、
(a)前記分析物を含む試料を請求項1に記載のデバイスと接触させ、それによって、前記デバイス上に前記分析物を吸着させる工程、および
(b)吸着された分析物を検出する工程、を含む方法。
【請求項26】
前記吸着された分析物が、デバイス上で直接検出されるか、または、前記分析物が、前記デバイスから脱離された後に検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分析物が、質量分析、または、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、複屈折、屈折率を検出する方法により検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
(c)エネルギー吸収マトリックスデバイスを前記結合された分析物に適用する工程、および
(d)レーザー脱離/イオン化質量分析により、前記分析物を検出する工程、をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記試料が、さらに不純物を含んでおり、前記方法が、前記検出工程に先立って、
(e)前記デバイスから前記不純物を洗浄する工程、をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
複数の吸着性デバイスを製造する方法であって、
前記複数の各メンバーは、
(a)表面を有する固体支持体と
(b)前記表面上に固定化させた吸着性ポリウレタンフィルムであって、前記ポリウレタンが、少なくとも
(i)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの反応性部分を含む架橋モノマーと、
(ii)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む第一モノマーと、
(iii)イソシアネート部分、イソチオシアネート部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む第二モノマーと、
(iv)結合官能性モノマー、エネルギー吸収モノマー、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバーと、のコポリマーである吸着性ポリウレタンフィルムと、を含み
前記方法は、
(1)前記固体支持体のそれぞれを前記ポリウレタンの一定分量(アリコート)と接触させる工程であって、各アリコートを前記ポリウレタンの単一バッチから標本抽出することによって、複数のポリウレタン−コーティングがされた固体支持体を形成する工程、および
(2)各ポリウレタン−コーティングされた固体支持体を硬化させることによって、前記ポリウレタンを前記表面上に固定化させて、前記複数の吸着性デバイスを形成する工程、を含む方法。
【請求項31】
ポリウレタンが、各基材表面において、該表面上の複数のアドレス可能位置に固定化されている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記単一バッチが、0.5リットル〜5リットルの容量を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記単一バッチから作製されるアドレス可能位置の総面積が、少なくとも500,000mmである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記単一バッチから作製されるアドレス可能位置の総面積が、500,000mm〜約50,000,000mmである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記複数のアドレス可能位置が、100,000〜5,000,000個のアドレス可能位置を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
(a)表面を有する固体支持体;
(b)ポリウレタン機能性フィルム前駆体を含む容器であって、前記ポリウレタンは、少なくとも
(i)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの反応性部分を含む架橋モノマー;
(ii)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの反応性部分を含む第一モノマー;
(iii)イソシアネート部分、イソチオシアネート部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む第二モノマー;および
(iv)結合官能性モノマー、エネルギー吸収モノマー、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバー、とのコポリマーである容器;ならびに
(c)前記表面に前記機能性フィルム前駆体を固定化するための説明、を含むキット。
【請求項37】
前記結合部分が、イソシアネートである、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
(d)前記イソシアネートを別の結合性官能基に化学的に変換する使用法をさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
ポリウレタンヒドロゲルであって:
(i)結合性官能基、エネルギー吸収部分、およびそれらの組み合わせから選択されるメンバー、ならびに
(ii)架橋したポリウレタン部分であって、前記ポリウレタン部分が、ポリウレタン単位の反応生成物であり、各単位は、複数のイソシアネートもしくはイソチオシアネート部分と、複数個の内在するウレタン結合を含み、単位間の連結が、イソシアネートまたはイソチオシアネート部分と前記複数個の内在するウレタン結合のうち少なくとも1個との反応により、形成されるポリウレタン部分、を含むポリウレタンヒドロゲル。
【請求項40】
少なくとも
(i)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの反応性部分を含む架橋モノマー;
(ii)ヒドロキシル部分、チオール部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される2つの反応性部分を含む第一モノマー;
(iii)イソシアネート部分、イソチオシアネート部分、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの反応性部分を含む第二モノマー;および
(iv)結合官能性モノマー、エネルギー吸収モノマーおよびそれらの組み合わせから選択されるメンバー、のコポリマーである、ポリウレタンヒドロゲル単位。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−510141(P2007−510141A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535465(P2006−535465)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/035134
【国際公開番号】WO2005/039724
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501497253)サイファージェン バイオシステムズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】