説明

反応性メソゲンを有する、液晶分子を配向させるための配向層

本発明は、液晶(LC)フィルムへの改善された接着性を有する配向層、このような層の製造のために用いられる前駆体材料、このような層および少なくとも1つのLCポリマーフィルムを含む積層体並びに該配向層および該積層体の、光学的、電気光学的、装飾またはセキュリティー用途およびデバイスへの使用に関し、ここで、該配向層および該前駆体材料は、少なくとも1種の反応性メソゲンを、モノマー、オリゴマーまたはポリマー形態で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、液晶(LC)フィルムへの改善された接着性を有する配向層、このような層を製造するために用いる前駆体材料、このような層および少なくとも1種のLCポリマーフィルムを含む積層体並びに、この配向層および積層体の、光学的、電気光学的、装飾またはセキュリティー使用およびデバイスへの使用に関する。
【0002】
背景および従来技術
重合可能な液晶(LC)材料は、液晶ディスプレイにおける光学的フィルムの製造のために一般的に用いられている。これらの材料は、通常、2つまたは3つ以上の重合可能な基を有し(二官能性(di-functional)または多官能性(multi-functional))、架橋されて硬質フィルムを形成する、ある量の化合物を含む。
【0003】
しかし、重合の間に、ある重合可能な材料、例えばアクリレート類は、ポリマー収縮の欠点を有する[R.A.M. Hikmet, B.H. Zwerver and D.J. Broer Polymer (1992), 33, 89を参照]。この収縮は、重合したフィルム中に多大な変形を生じ、フィルムと基板との間の接着性を低下させる作用を有する。
【0004】
この問題を克服するための、従来技術において報告されている1つの手法は、基板を改変して、重合したフィルムへのこの接着性を改善することに集中している。例えば、基板に、特別の処理、例えばUS 2,795,820もしくはGB 0 788 365に開示されている火炎処理、DE 195 80 301に報告されているコロナ処理またはR.L. Bersin Adhesives Age (1972) 15, 37に報告されているプラズマ処理を施すことができる。
【0005】
あるいはまた、別個の接着またはカップリング層(典型的にはオルガノシラン材料の溶液)を、基板上に塗布して、ポリマーフィルムの基板、例えば商業的に入手できるアディッド(Addid)900(登録商標)(Wacker GmbH, Burghausen, Germanyから)、アミノ官能トリメトキシシランへの接着性を増大させるのを補助することができる。
【0006】
US 5,631,051には、光学的補償シートをトリアセチルセルロース(TAC)の透明な基板上に製造する方法であって、先ずゼラチンの接着層をTACフィルム上に設けることによる方法が開示されている。次に、配向層が、重合可能な基の添加により化学的に修飾された、変性したポリビニルアルコール(PVA)の溶液を、ゼラチン層上に塗布し、溶媒を蒸発させ、重合したPVA層の表面を一定方向にラビングすることにより形成する。最後に、ディスコティックLC材料を含む光学的に異方性の層を、PVA層のラビングした表面上に塗布し、重合させる。
【0007】
US 5,747,121には、光学的補償シートの製造方法であって、重合可能な基の添加により化学的に修飾された、変性したポリビニルアルコール(PVA)の溶液を、透明な基板上に塗布し、溶媒を蒸発させ、PVA層の表面を一定方向にラビングすることによる、前記方法が開示されている。次に、ディスコティックLC材料を含む光学的に異方性の層を、PVA層のラビングした表面上に塗布し、重合させる。その後、フィルムに、熱処理を施し、これにより、PVA層およびディスコティックLC層は、遊離の架橋可能な基を介して、互いに化学的に結合することが報告されている。
【0008】
しかし、上記の方法はすべて、これらが、余分な加工段階を含むという明確な欠点を有する。さらに、ゼラチンまたはPVAのような、アイソトロピックな材料を含む別個の接着または配向層を用いることにより、例えば光学的フィルムとして用いた際に、液晶フィルムの性能に悪影響が生じ得る。
【0009】
この問題を克服するために、接着促進剤を、重合可能なLC材料配合物に直接加えることができる。アディッド900(登録商標)または同様の材料が、典型的な添加剤である。しかし、これらの材料を重合可能なLC混合物に加える際には、光学的フィルムに必要なもののような良好に配向したフィルムを得るのは、しばしば困難である。
【0010】
特に、上に設けられたLC材料の均一な配向を誘発する配向層として一般的に用いられる、ポリイミド(PI)のフィルムまたは被膜は、しばしば、重合したLC材料への低い接着性のみを有する。
【0011】
従って、LCのための配向層として用いられるフィルムまたは被膜の、LCポリマーフィルムへの接着性を改善するための有利な方法に対する必要性がある。この方法は、配向層の光学的および機械的特性、例えばこの透過性並びに温度、機械的応力および溶媒に対するこの安定性に悪影響を生じてはならない。
【0012】
本発明の目的は、このような方法を提供することにあった。本発明の他の目的は、改善された接着性を有し、一方この光学的および機械的特性に影響しない配向層を提供することにあった。他の目的は、以下の記載から、専門家には直ちに明らかである。
【0013】
本発明者らは、従来技術の方法の前述の欠点は、少ない量の重合可能なメソゲン性化合物(反応性メソゲン)を含む前駆体材料から得られる配向層を用いることにより克服することができることを見出した。この化合物は、特に基板またはこの上に設けられたLCポリマーのための配向層として用いる際に、配向層の接着性を改善し、一方この光学的および機械的特性に悪影響を生じない。
【0014】
用語の定義
用語「フィルム」は、いくらか顕著な機械的安定性および可撓性を示す自立性、即ち独立して立つフィルムまたは材料の層、並びに支持基板上または2枚の基板の間の被膜または層を含む。
【0015】
用語「液晶性またはメソゲン性材料」または「液晶性またはメソゲン性化合物」は、1つまたは2つ以上の棒型、板型またはディスク型のメソゲン性基、即ち液晶相挙動を誘発する能力を有する基を含む材料または化合物を含む。棒型または板型基を有する液晶(LC)化合物はまた、当該分野において、「カラミティック」液晶として知られている。ディスク型基を有する液晶化合物はまた、当該分野において、「ディスコティック」液晶として知られている。メソゲン性基を含む化合物または材料は、必ずしもそれら自体液晶相を示す必要はない。また、これらが、他の化合物との混合物においてのみ、あるいはメソゲン性化合物もしくは材料またはこれらの混合物を重合させた際に、液晶相挙動を示すことが可能である。
【0016】
単純のために、用語「液晶(LCと略す)材料」を、液晶材料およびメソゲン性材料の両方について用い、用語「メソゲン」を、材料のメソゲン性基について用いる。
用語「反応性メソゲン」(RM)は、重合可能なメソゲン性化合物を意味する。
用語「非メソゲン性化合物または材料」は、上記で定義したメソゲン性基を含まない化合物または材料を意味する。
【0017】
発明の概要
本発明は、液晶(LC)分子を配向させるのに適し、これが、少なくとも1種の反応性メソゲン(RM)を、モノマー、オリゴマーまたはポリマー形態で含むことを特徴とする、配向層、好ましくは溶媒加工されたフィルムに関する。
本発明は、さらに、少なくとも1種の反応性メソゲン(RM)を含む前駆体材料から得られることを特徴とする、液晶(LC)分子を配向させるのに適する配向層、好ましくは溶媒加工されたフィルムに関する。
【0018】
本発明は、さらに、本明細書中に記載した少なくとも1種のRMを含む前駆体材料に関する。
本発明は、本明細書中に記載した配向層の、液晶(LC)材料の、特に重合可能な、または重合したLC材料の基板および/または配向層としての使用に関する。
本発明は、さらに、本明細書中に記載した配向層を含み、さらに重合したかまたは架橋したLC材料を含むフィルムを含む積層体に関する。
【0019】
本発明は、さらに、本明細書中に記載した積層体の製造方法であって、
−重合可能なLC材料の層を、本明細書中に記載した配向層上に設け、
−随意にLC材料を均一な配向に配向させ、
−LC材料を重合させる
ことによる、前記方法に関する。
本発明は、さらに、本発明の前駆体材料、配向層または積層体の、光学的、電気光学的、情報蓄積、装飾およびセキュリティー用途における使用に関する。
【0020】
本発明は、さらに、本発明の前駆体材料、配向層または積層体を含む、光学的素子またはデバイスに関する。
本発明は、さらに、本発明の前駆体材料、配向層または積層体を含む液晶ディスプレイに関する。
【0021】
本発明は、さらに、本発明の前駆体材料、配向層または積層体を含む、鑑定、証明またはセキュリティーマーキングまたは着色画像に関する。
本発明は、さらに、本明細書中に記載した鑑定、証明またはセキュリティーマーキングまたは画像を含む物品または有価証券に関する。
【0022】
発明の詳説
本発明の配向層について、原則的に、専門家に知られており、配向層として適するすべてのポリマーフィルムまたは基板を、用いることができる。特に好ましいのは、溶媒加工されたフィルム、例えばポリイミドの溶液または例えばジクロロメタンに溶解した有機溶液から流延されたTACのフィルムである。
【0023】
溶媒加工は、典型的には、配向材料として作用するポリマーの溶液、例えば好適な溶媒、例えばジクロロメタンのような有機溶媒に溶解したTACまたはポリイミドを堆積させ、溶媒をゆっくりと蒸発させて除去して、応力が加えられておらず、従って事実上複屈折を有しないポリマーのフィルムを得ることにより、行う。この方法は、専門家に知られており、文献、例えばJP 08-258065 A中に記載されている。
【0024】
本発明の配向層は、限定された量の反応性メソゲン(RM)を含むことを特徴とし、これにより、配向層上に塗布されたその後のLC層の接着性が改善される。しかし、本発明は、本質的にRMまたはLCポリマーからなる配向層または前駆体材料、例えばWO 02/44801またはこの中に引用されている参考文献に開示されているものを含まない。
【0025】
従って、本発明の配向層または前駆体材料中のRMの量は、一般的には、50重量%より小さく、好ましくは20重量%より小さく、極めて好ましくは10重量%より小さく、最も好ましくは5重量%より小さい。本発明の配向層または前駆体材料の複屈折Δnは、好ましくは0.05より小さく、極めて好ましくは0.01より小さく、一層好ましくは0.005より小さく、最も好ましくは0.001より小さい。
【0026】
さらに好ましいのは、反応性メソゲンを加える前に、非メソゲン性または光学的にアイソトロピックもしくはわずかに光学的に異方性であるのみである、配向層または前駆体材料である。「わずかに光学的に異方性である」は、複屈折Δnが<0.01であることを意味する。
配向層は、必ずしもポリマーフィルムである必要はない。例えば、自己組織化単分子層または多分子層を配向層として用いることも、可能である。
【0027】
特に好ましいのは、以下の配向層である:
(1)ポリイミド前駆体の溶液、例えば重合により、例えば加熱により、ポリイミドフィルムを生成し、特に好ましくは、ここで、前駆体溶液が、以下の式
【化1】

【0028】
式中、
、PおよびPは、互いに独立して、重合可能な基であり、
およびZは、互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−OCH−、−CHO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
およびZは、互いに独立して、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−または単結合であり、
およびZは、互いに独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−または単結合であり、
【0029】
およびYは、互いに独立して、極性基であり、
およびRは、互いに独立して、無極性アルキルまたはアルコキシ基であり、
A、B、CおよびDは、互いに独立して、随意にL、L、L、L、L、Lにより単、二もしくは三置換されている1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、
、L、L、L、LおよびLは、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたは1〜7個のC原子を有する随意にハロゲン化されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシ基であり、
【0030】
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、各々独立して、1〜12の整数であり、
zは、1、2または3であり、
、g、gおよびgは、互いに独立して、単結合、−O−、−COO−または−OCO−である、
で表される少なくとも1種のRMを含む、モノマーおよび/またはオリゴマーを含む溶液から得られたポリイミドフィルム。
【0031】
(2)好ましい態様において、上記で定義した1種または2種以上の式I〜VIで表されるRMを含む、一般式A
【化2】

を有する溶媒流延されたポリイミドフィルム。
【0032】
(3)本明細書中に定義した1種または2種以上のRM、特に式I〜VIで表される1種または2種以上のRMで有効に可塑化されたポリマーフィルム。
「可塑化された」は、1種または2種以上のRMが、可塑剤を加えるのと同様にポリマーに加えられて、例えばTgを低下させることによりポリマーの加工性を改善し、剛性を低下させ、加工性を改善することを意味する。
これは、RMを、重合の前にポリマー前駆体に加える上記の好ましい態様(1)のフィルムとは対照的である。
【0033】
(4)好ましくは式I〜VIで表される1種または2種以上のRMを含む、溶媒流延されたセルロースに基づくフィルム、例えば三酢酸セルロース(TAC)または二酢酸セルロース(DAC)フィルム。
【0034】
(5)フォトクロミックまたは異性化可能な化合物、発色団および染料から選択された1種または2種以上の化合物を含み、ここで、これらの化合物の化学構造および/または配向方向の変化により、前記層上に塗布されたLC材料の固有の配向が誘発されるか、または最初の配向が変化する、指令層(command layer)。これらの層は、好ましくは、層中に分散した、式I〜VIで表される1種または2種以上のRMを含む。
【0035】
これらの指令層は、典型的には、ポリマー層ではなく、自己組織化単分子層または多分子層である。従って、指令層によるLC材料の配向の促進は、典型的には、バルク効果ではなく、表面効果であり、ここで、指令層分子は、表面に束縛され、通常単分子層の厚さであるに過ぎない。
【0036】
指令層中の好適であり、好ましいフォトクロミックまたは異性化可能な化合物は、例えば、化学的(例えばシロキサン/ガラス、チオール/金)または物理的(例えば水素結合)結合のいずれかにより基板に結合するように改変され、また偏光したUVと相互作用して、指令層を生成する、重合可能ではないモノマー化合物である。例えば、偏光したUV光を照射した際には、これらの材料で構成されている層は、LC分子の特異的な配向を促進し得る。
【0037】
このような化合物は、当該分野において知られている。好適であり、好ましい化合物の例には、アゾベンゼン、スチルベン類、スピロピラン、スピロオキサジン類、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル類、ケイ皮酸塩、レチニリデン、カルコン、クマリン類、ベンジリデンフタルイミジン類、ベンジリデンアセトフェノン類、ジフェニルアセチレンまたはスチルバゾール類の誘導体が含まれる[例えば、K. Ichimura Chemical Reviews (2000), 100, 1847による概説記事中に記載されているように]。
【0038】
またIchimuraの上記の記事中に記載されている、特に好適であり、好ましいモノマー化合物は、例えば、以下の式
【化3】

式中、Rは、アルキル基であり、Tは、分子を表面に結合させるために用いられる基であり、これは、典型的には、柔軟なスペーサー基、例えば表面への結合のための特定の基、例えばシロキサンまたは−SH基で終了しているアルキル基を含む、
で表されるアゾ化合物である。
【0039】
例えば、式VIIで表される1種または2種以上の化合物を含む指令層は、偏光した光で照射した後に、LC分子の面内配向を促進し、一方式VIIIで表される1種または2種以上の化合物を含む指令層は、偏光した光で照射した後に、ホメオトロピック配向を促進する。
【0040】
本発明の好ましい配向層は、ポリイミド前駆体から得られるポリイミド(PI)フィルムである。これらのフィルムは、以下の利点を有する:(i)RMを前駆体溶液中に導入するのが比較的簡単である、(ii)RMと前駆体との両方を同一の溶液に溶解することにより、イミド化の前の材料を前混合する簡単な方法が得られ、従ってポリイミドとRMとを一緒に混合することにより得られるよりも、ポリイミド中のRMの大きいからみ合いが得られる、(iii)ポリイミド前駆体溶液は、ディスプレイ産業において広範囲に用いられている。
【0041】
本発明の配向層は、好ましくは式I〜VIで表される1種または2種以上のRMが、層の前駆体材料中に、これが加工されるかまたは重合する前に、例えばポリイミドフィルムの場合においては、該化合物を予めイミド化したポリイミド溶液中に加えることにより、導入されることを特徴とする。これには、RMが基板中に良好に分散するように、基板材料と混和性であるRMが必要である。ポリマー層がその後形成する際に、RMを、物理的に捕捉する。特に重合したLC材料が、上記の式I〜VIで表されるものと同様であるRMから得られる場合には、これにより、いくつかの反応性部位を含み、配向層とこの上に塗布された重合したLC材料との間の接着性が改善された配向層が得られる。
【0042】
配向層のための前駆体として、原則として、従来技術において知られているすべての前駆体を用いることができる。これらの材料は、広範囲において商業的に入手でき、例えばポリイミド前駆体は、JSR社(日本国)から入手できる。
【0043】
ポリイミドフィルムに適する前駆体材料は、例えば、典型的な化学構造を以下の式B
【化4】

により表す感光性でない前駆体または典型的な化学構造を以下の式C
【化5】

により表す感光性前駆体である。
【0044】
いくつかの実際的な用途のために、ポリイミド前駆体はまた、種々の側方の置換基を有して、材料の溶解性を改善するかまたは材料の表面エネルギーに影響することができる。例えば、パーフルオロカーボン鎖を含むポリイミド前駆体が、液晶のホメオトロピック配向が促進されるのを補助するために用いられるポリイミドに好ましい。上記の構造は、本発明を説明するのを補助する一般的な例としてのみ示し、本発明を限定することを意味しない。
【0045】
本発明のために特に好ましい前駆体材料は、感光性でないポリイミド前駆体である。
RM、特に式I〜VIで表される化合物の、配向層の前駆体材料中での濃度の好ましい範囲は、0.5〜4重量%、好ましくは1〜2重量%である。
【0046】
1種または2種以上のRMを含む本発明のポリマー配向層の加工を、典型的には、ポリマーおよびRMの溶液を基板上に設け、これを加熱および焼成して、過剰の溶媒を除去し、周囲温度に放冷することにより、行う。次に、ポリマーに、機械的処理、例えばラビングを施して、この上に塗布されたLC材料についての好ましい配向方向を提供することができる。
【0047】
好ましいプロセスは、ポリイミド前駆体および式I〜VIで表される1種または2種以上のRMの溶液を、清浄なガラススライド上にスピンコーティングし、スライドを例えば約100℃で数十秒ないし1または2分間加熱して、過剰の溶媒を除去し、スライドを例えば約180℃で数十分ないし1〜2時間焼成して、イミド化することに関する。次に、スライドを、周囲温度に放冷し、得られたポリイミド層を、例えばベルベット布でラビングする。
【0048】
RMは、ポリマーと混和性でなければならない。さらに、ポリマーフィルムを加工する温度により、RMの重合可能な基が破壊されてはならない。
RMは、最終的な配向層中で、モノマー、オリゴマーまたはポリマー形態で存在し得る。
【0049】
用語「オリゴマー」は、従来技術においては、通常少数のモノマーまたは繰り返し単位を有する化合物を意味し、一方用語「ポリマー」は、通常一層大きい数のモノマーまたは繰り返し単位を有する化合物を意味する。これらの用語の間の境界は、通常固定されていない。本発明の意味において、「オリゴマー」は、少なくとも2個、しかし15〜50個を超えない、好ましくは20〜30個を超えない、極めて好ましくは25個を超えないモノマーまたは繰り返し単位を有する化合物を意味し、用語「ポリマー」は、オリゴマー化合物について定義したよりも大きい数のモノマーまたは繰り返し単位を有する化合物を意味する。これらの繰り返し単位は、同一であるか、または例えば種々のRMの共重合体である場合には、異なっていてもよい。
【0050】
好ましくは、配向層材料の加工を、配向層の製造の後に、RM添加剤中に尚いくつかの未反応の重合可能な基があり、これが次に、配向層上に塗布されたその後のLC層と反応することができるように、行う。
【0051】
例えば配向層の焼成の間にRMが重合した際に、RMのメソゲン性中心部の繰り返し単位に対する、未反応の重合可能な基の数は、RMにより生成したポリマーの分子量が増大するに伴って減少する。他方、配向層のポリマー中のRM添加剤のからみ合いの機会は、増大する。従って、RMのモノマーおよびオリゴマー形態が、特に好ましく、一方ポリマー形態は、可能であるが、比較的好ましくない。
【0052】
好ましくは、RMは、配向層の加工中を通して重合しないままであり、配向層上に塗布されたその後のLC層が重合する際に重合するに過ぎない。このようにして、RM添加剤は、配向層を形成する材料中でからみ合い、次にその後のLC層に重合する(化学的に結合する)ことができる。しかし、RM添加剤が、その後のLC層を加える前に、配向層内である程度まで重合を受けることも、可能である。
【0053】
特に好ましくは、1種または2種以上のRMは、配向層中に、この製造の後に、即ちその後のLC層を配向層上に塗布する前に、モノマーまたはオリゴマー形態で存在する。
重合可能なLC材料を、配向層上に塗布する場合には、未反応のRMを、重合可能なLC材料と、例えばまた以下に重合可能なLC材料自体について記載する、既知の方法により、共重合させることができる。
また、RMは、ポリマーフィルムの配向能力を妨げてはならない。従って、例えば光配向層において、RMのUV吸収は、光配向層のUV吸収に干渉してはならない。
【0054】
特に好ましいのは、随意にスペーサー基により1つまたは2つ以上の重合可能な基に結合したメソゲン性基を含むRMである。特に好ましいのは、2つの同様の、好ましくは2つの同一の末端基を有するRMである。これらは、これらの対称構造により、これらの配向が配向層により影響されることが可能になり、一方非対称なRMが、「界面活性剤状」であり、従って平面状配向にわたりホメオトロピック配向の傾向を有するため、有益である。2つまたは3つ以上の重合可能な基を含む化合物(多反応性または多官能性化合物)、例えばジアクリレートまたはトリアクリレートRMは、これらが、その後の層中への可能な反応のための2つまたは3つの重合可能な基を含み、同様の末端で置換された基を有するように合成され得るため、好ましい。
【0055】
特に好ましいのは、上記の式I〜VIで表されるRMである。
式I〜VI中の用語「極性基」は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、4個までのC原子を有する随意にフッ素化されているカルボニルもしくはカルボキシル基または1〜4個のC原子を有するモノ、オリゴもしくはポリフッ素化されているアルキルもしくはアルコキシ基から選択された基を意味する。
【0056】
式I〜VI中の用語「無極性基」は、1個もしくは2個以上、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキル基または2個もしくは3個以上、好ましくは2〜12個のC原子を有するアルコキシ基を意味する。
式I〜VI中の重合可能な、または反応性の基P、PおよびPは、好ましくは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基から選択されており、特に好ましくはアクリレート基である。
【0057】
1種の化合物中のP、PおよびPは、同一であるかまたは異なっていてもよい。好ましくは、これらは同一である。
式I〜VI中のxおよびyは、同一であるかまたは異なっていてもよい。好ましくは、これらは同一である。本発明の他の好ましい態様は、xおよびyが異なっている化合物に関する。
他の好ましい態様は、各々が同一の基P1〜3、Z1〜6、L1〜6およびrを有するが、xおよびyが異なっている、少なくとも2種の化合物を含む混合物に関する。
【0058】
特に好ましいのは、L1〜6がF、Cl、CN、CH、C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CFおよびOCFから選択されている、式I〜VIで表される化合物である。
さらに好ましいのは、ZおよびZが−COO−、−OCO−、−CHCH−または単結合から選択されている、式I〜VIで表される化合物である。
【0059】
好適であり、好ましいRM材料の例は、以下のものである:
【化6】

式中、P、P、x、y、LおよびLは、上記で定義した通りである。式Iaにおいて、PおよびPは、好ましくはアクリレートであり、LおよびLは、好ましくはH、CHまたはOCHであり、xおよびyは、好ましくは3から6までの整数である。
【0060】
式Vaで表される化合物は、例えば、WO 97/14674に開示されている。式IIIで表される化合物の数種は、例えば、JP 2002-348319に開示されている。
本発明の配向層の厚さは、好ましくは15nm〜50nmである。
【0061】
配向層上に設けられたかまたは配向層上に本発明の積層体の一部として形成したLCフィルムは、好ましくは、重合可能なLC材料から、インサイチュ(in-situ)重合により製造する。好ましい製造方法において、重合可能なLC材料を、基板として作用する配向層上に塗布し、所望の配向に配向させ、その後例えばWO 01/20394、GB 2,315,072またはWO 98/04651に記載されているように、例えば熱または化学線に触れさせることにより、重合させる。
好ましくは、配向層を、LC材料で被覆する前に、一定方向にラビングする。
【0062】
重合可能なLC材料を用いる場合には、これは、好ましくは、1種または2種以上の重合可能なキラルな、またはアキラルなメソゲン性または液晶性化合物を含む。これは、好ましくは、1つの重合可能な基を有する(単反応性)1種または2種以上の重合可能な化合物および2つまたは3つ以上の重合可能な基を有する(二または多反応性)1種または2種以上の重合可能な化合物を含む混合物である。
他の好ましい態様において、重合可能なLC材料は、20%までの1つの重合可能な官能基を有する単反応性の非メソゲン性化合物を含む。典型的な例は、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレート類またはアルキルメタクリレート類である。
【0063】
他の好ましい態様において、低い程度に架橋したフィルムを製造するために用いられる重合可能なLC材料は、2つより多い重合可能な基を有する化合物を含まない。
他の好ましい態様において、低い程度に架橋したフィルムを製造するために用いられる重合可能なLC材料は、アキラルな材料であり、即ちこれは、キラルな化合物を含まない。
【0064】
本明細書中で言及する重合可能な化合物および重合可能なメソゲン性化合物は、好ましくはモノマーである。
重合可能でない化合物は、例えば界面活性剤、触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤(hydrophobing agent)、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、着色剤、染料または他の助剤などの添加剤を含む。
【0065】
高度に架橋したLCフィルムの場合において、2つまたは3つ以上の重合可能な官能基を有する非メソゲン性化合物の20%までを、重合可能なLC材料に、二または多反応性の重合可能なメソゲン性化合物と二者択一的に、またはこれに加えて添加して、架橋の程度を増大させることも、可能である。二反応性非メソゲン性モノマーについての典型的な例は、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルジアクリレート類またはアルキルジメタクリレート類である。多反応性非メソゲン性モノマーについての典型的な例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0066】
本発明のために用いられる重合可能なメソゲン性単反応性、二反応性および多反応性化合物を、自体公知であり、例えば有機化学の標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartに記載されている方法により、製造することができる。
【0067】
重合可能なLC混合物中で本発明の化合物と共にモノマーまたはコモノマーとして用いることができる、好適な重合可能なメソゲン性化合物の例は、例えば、WO 93/22397、EP 0 261 712、DE 195 04 224、WO 95/22586、WO 97/00600およびGB 2 351 734に開示されている。しかし、これらの文献中に開示されている化合物は、単に、本発明の範囲を限定するべきではない例として見なされるべきである。
【0068】
特に有用なキラルな、およびアキラルな重合可能なメソゲン性化合物(反応性メソゲン)の例を、以下のリスト中に示すが、これは、例示的であるとしてのみ解釈するべきであり、いかなる方法によっても限定することを意図せず、代わりに本発明を説明することを意図する:
【化7】

【0069】
【化8】

【0070】
【化9】

【0071】
【化10】

【0072】
前述の式において、Pは、重合可能な基、好ましくはアクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセタンまたはスチリル基であり、xおよびyは、1〜12の同一の、または異なる整数であり、Aは、随意にLにより単置換、二置換もしくは三置換されている1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンであり、uおよびvは、互いに独立して0または1であり、Zは、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、Rは、極性基または無極性基であり、Terは、テルペノイド基、例えばメンチルであり、Cholは、コレステリル基であり、L、LおよびLは、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたは、1〜7個のC原子を有する、随意にハロゲン化されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり、rは、0、1、2、3または4である。前述の式中のフェニル環は、随意に、1個、2個、3個または4個の基Lにより置換されている。
【0073】
そこで、用語「極性基」は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、4個までのC原子を有する、随意にフッ素化されているアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ基または1〜4個のC原子を有するモノ、オリゴもしくはポリフッ素化されているアルキルもしくはアルコキシ基から選択された基を意味する。用語「無極性基」は、前の「極性基」の定義により包含されていない、1個または2個以上、好ましくは1〜12個のC原子を有する、随意にハロゲン化されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ基を意味する。
【0074】
らせんねじれ構造を有するコレステリックLCフィルムの製造のために、重合可能なLC材料は、好ましくは、1種または2種以上のアキラルな重合可能なメソゲン性化合物および少なくとも1種のキラルな化合物を含む。キラルな化合物は、重合可能でないキラルな化合物、例えば慣用のキラルなドーパントまたは重合可能なキラルな化合物から選択することができ、このすべては、メソゲン性または非メソゲン性であってもよい。
【0075】
好適な重合可能なキラルな化合物は、例えば、前述のリスト中に示したものである。他の好適なキラルな重合可能な化合物は、例えば、商業的に入手できるパリオカラー(Paliocolour)(登録商標)材料(BASF AG、ドイツ国から)である。
【0076】
好適なキラルなドーパントは、例えば、商業的に入手できるRもしくはS−811、RもしくはS−1011、RもしくはS−2011、RもしくはS−3011、RもしくはS−4011、RもしくはS−5011またはCB15(Merck KGaA, Darmstadt, ドイツ国から)から選択することができる。極めて好ましいのは、高いらせんねじれ力(HTP)を有するキラルな化合物、特にWO 98/00428に記載されているソルビトール基を含む化合物、GB 2,328,207に記載されているヒドロベンゾイン基を含む化合物、WO 02/94805に記載されているキラルなビナフチル誘導体、WO 02/34739に記載されているキラルなビナフトールアセタール誘導体、WO 02/06265に記載されているキラルなTADDOL誘導体並びにWO 02/06196およびWO 02/06195に記載されている、少なくとも1つのフッ素化結合基および末端または中心のキラルな基を有するキラルな化合物である。
【0077】
重合可能な材料を、好ましくは、溶媒、好ましくは有機溶媒中に溶解するかまたは分散させる。次に、溶液または分散系を、基板上に、例えばスピンコーティングまたは他の既知の手法により塗布し、溶媒を、重合前に蒸発させて除去する。ほとんどの場合において、混合物を加熱して、溶媒の蒸発を容易にするのが好適である。
【0078】
重合可能なLC材料は、さらに、ポリマーバインダーまたは、1種もしくは2種以上の、ポリマーバインダーを形成することができるモノマーおよび/または1種もしくは2種以上の分散助剤を含むことができる。好適なバインダーおよび分散助剤は、例えば、WO 96/02597に開示されている。しかし、特に好ましいのは、バインダーまたは分散助剤を含まないLC材料である。
【0079】
他の好ましい態様において、重合可能なLC材料は、基板上の液晶材料の平面状配向を誘発するかまたは増強する添加剤を含む。好ましくは、該添加剤は、1種または2種以上の界面活性剤を含む。好適な界面活性剤は、例えば、J. Cognard, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 78, 補完1、1-77 (1981)に記載されている。特に好ましいのは、非イオン系界面活性剤、極めて好ましくはフルオロカーボン界面活性剤、例えば商業的に入手できるフルオロカーボン界面活性剤フルオラッド(Fluorad)FC−171(登録商標)(3M社から)またはゾニル(Zonyl)FSN(登録商標)(DuPontから)またはGB 2 383 040に記載されている化合物である。
【0080】
配向層におけるRMの重合および前述の配向層上に塗布されたLC材料の重合を、好ましくは、本明細書中に記載した方法により行う。
【0081】
一般的に、重合は、好ましくは、これを化学線に露光することにより達成される。化学線は、光、例えばUV光、IR光もしくは可視光線での照射、X線もしくはガンマ線での照射または高エネルギー粒子、例えばイオンもしくは電子での照射を意味する。好ましくは、重合を、特にUV光での光照射により行う。化学線の源として、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。高いランプ出力を用いる際には、硬化時間を減少させることができる。光照射についての他の可能な源は、レーザー、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視レーザーである。
【0082】
重合を、化学線の波長において吸収を示す開始剤の存在下で実施する。例えば、UV光により重合する際には、UV照射の下で分解されて、重合反応を開始する遊離基またはイオンを生成する光開始剤を用いることができる。UV光開始剤、特にラジカル性UV光開始剤が、好ましい。ラジカル重合のための標準的な光開始剤として、例えば、商業的に入手できるイルガキュア(Irgacure)(登録商標)またはダロキュア(Darocure)(登録商標)シリーズ(すべてCiba Geigy AGから)を用いることができ、一方陽イオン性光重合の場合には、商業的に入手できるUVI6974(Union Carbide)を用いることができる。
【0083】
重合可能なLC材料は、さらに、1種または2種以上の他の好適な成分、例えば触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、同時反応モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料または顔料を含むことができる。
【0084】
また、1種または2種以上の連鎖移動剤を重合可能な材料に加えて、ポリマーフィルムの物理的特性を修正することが可能である。特に好ましいのは、チオール化合物、例えば単官能性チオール化合物、例えばドデカンチオールまたは多官能性チオール化合物、例えばトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、極めて好ましくは、メソゲン性または液晶性チオール化合物である。連鎖移動剤を加える際には、遊離のポリマー鎖の長さおよび/または本発明のポリマーフィルムにおける2つの架橋間のポリマー鎖の長さを、制御することができる。連鎖移動剤の量を増大させる際には、得られたポリマーフィルムにおけるポリマー鎖の長さは、減少している。
【0085】
本発明の配向層は、特に、LCフィルム、特に重合したLCフィルムの製造のための配向層または基板として有用である。
【0086】
本発明の積層体は、光学素子、例えば液晶ディスプレイまたは投射システムにおける偏光板、補償板、円偏光板またはカラーフィルターとして、装飾絵柄として、液晶または効果顔料の製造のために、および特に空間的に変化する反射色を有する反射性フィルムとして、例えば装飾、情報蓄積またはセキュリティー使用、例えば偽造不能な文書、例えば身分証明書またはクレジットカード、紙幣などのための多色絵柄として有用である。
【0087】
本発明の積層体を、透過型または反射型のディスプレイにおいて用いることができる。これらを、慣用のLCD、特にDAP(配向相の変形)、もしくはVA(垂直配向)モード、例えばECB(電気的に制御された複屈折)、CSH(色超ホメオトロピック)のLCD、VANもしくはVAC(垂直配向ネマティックもしくはコレステリック)ディスプレイ、MVA(マルチドメイン(multi-domain)垂直配向)もしくはPVA(パターン化垂直配向)ディスプレイにおいて、曲がりモードのディスプレイもしくはハイブリッドタイプディスプレイ、例えばOCB(光学的に補償された曲がりセルもしくは光学的に補償された複屈折)、R−OCB(反射性OCB)、HAN(ハイブリッド配向ネマティック)もしくはパイセル(πセル)ディスプレイにおいて、さらに、TN(ねじれネマティック)、HTN(高度にねじれたネマティック)もしくはSTN(超ねじれネマティック)モードのディスプレイにおいて、AMD−TN(アクティブマトリックス駆動TN)ディスプレイにおいて、または、「超TFT」ディスプレイとしても知られているIPS(面内切換)モードのディスプレイにおいて、用いることができる。特に好ましいのは、VA、MVA、PVA、OCBおよびパイセルディスプレイである。
【0088】
以下の例は、本発明を、これを限定せずに例示する作用を有する。前記および以下で、他に述べない限り、すべての温度は、摂氏度で示し、すべての百分率は重量百分率である。
【0089】
例1
反応性メソゲン(1)
【化11】

を、種々の濃度で、予めイミド化した溶液(JSR社のAL1054)に加え、清浄なガラススライド上にスピンコーティングした(3,000RPM;30秒)。スピンコーティングの直後に、フィルムを乾燥し(100℃、60秒)、180℃で90分間焼成することによりイミド化した。得られたポリイミドフィルムを、ベルベット布でラビングして(ラビング長さ22cm)、その後のRM層のための配向層を得た。
【0090】
重合可能なLC混合物M1を、以下のようにして配合した:
M1:
【表1】

【0091】
【化12】

【0092】
イルガキュア651(登録商標)は、光開始剤であり、イルガノックス1076(登録商標)は、安定剤であり、共に商業的に入手できる(Ciba AG, Basel, Switzerland)。FC171(登録商標)は、非イオン性フルオロカーボン界面活性剤である(3M社から)。
重合可能な混合物M1(50%)をキシレンに溶解した溶液を、種々にラビングしたポリイミド層上にスピンコーティングすることにより堆積させ、その後光重合させて(20mWcm−2、60秒、N)、重合したLCフィルムを得た。
【0093】
重合したLCフィルムのポリイミド層への接着性を、スコッチ(Scotch)#610テープ試験を用いて試験した。610テープを、RMフィルム上に貼り付け、敏速に除去した。フィルムが除去されなかった場合に、接着性を、合格であると見なした。各々のフィルムを、5回試験した。結果を、表1に要約する:
【0094】
表1
【表2】

1)ポリイミド上でのM1の配向品質
2)610テープ試験の要約した結果
3)散乱したフィルム
【0095】
結果は、少量の式Iで表される反応性メソゲンをポリイミド前駆体に加えると、重合したLC層とポリイミドフィルムとの間の接着が促進され、一方清浄であり、透明であり、高度に配向したフィルムが得られることを示す。
【0096】
比較例
例1に記載した実験を、化合物(1)の代わりにそれぞれ1%のHDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)およびTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)を用いて繰り返した。得られたポリイミドフィルムは、アクリレート材料の相分離を示し、光学的に散乱性であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶(LC)分子を配向させるのに適する配向層であって、これが、少なくとも1種の反応性メソゲン(RM)を、モノマー、オリゴマーまたはポリマー形態で含むことを特徴とする、前記配向層。
【請求項2】
50重量%より少ないRMを含むことを特徴とする、請求項1に記載の配向層。
【請求項3】
1種または2種以上のRMが、モノマーまたはオリゴマー形態で、配向層中に、この製造の後に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の配向層。
【請求項4】
少なくとも1種の反応性メソゲン(RM)を含む前駆体材料から得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の配向層。
【請求項5】
溶媒加工されたフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の配向層。
【請求項6】
ポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配向層。
【請求項7】
一般式A
【化1】

で表されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項6に記載の配向層。
【請求項8】
溶媒加工されたセルロースに基づくフィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配向層。
【請求項9】
三酢酸セルロース(TAC)または二酢酸セルロース(DAC)フィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配向層。
【請求項10】
フォトクロミック化合物、異性化可能な化合物、発色団および染料から選択された1種または2種以上の化合物を含む指令層であり、ここで、これらの化合物の化学構造および/または配向方向の変化により、前記層上に塗布されたLC材料の固有の配向が誘発されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の配向層。
【請求項11】
前記化合物が、アゾベンゼン、スチルベン類、スピロピラン、スピロオキサジン類、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル類、ケイ皮酸塩、レチニリデン、カルコン、クマリン類、ベンジリデンフタルイミジン類、ベンジリデンアセトフェノン類、ジフェニルアセチレンまたはスチルバゾール類の誘導体から選択されていることを特徴とする、請求項10に記載の配向層。
【請求項12】
RMが、以下の式
【化2】

式中、
、PおよびPは、互いに独立して、重合可能な基であり、
およびZは、互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−OCH−、−CHO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
およびZは、互いに独立して、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−または単結合であり、
およびZは、互いに独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−または単結合であり、
およびYは、互いに独立して、極性基であり、
およびRは、互いに独立して、無極性アルキルまたはアルコキシ基であり、
A、B、CおよびDは、互いに独立して、随意にL、L、L、L、L、Lにより単、二もしくは三置換されている1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、
、L、L、L、LおよびLは、互いに独立して、H、F、Cl、CNまたは1〜7個のC原子を有する随意にハロゲン化されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシ基であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、各々独立して、1〜12の整数であり、
zは、1、2または3であり、
、g、gおよびgは、互いに独立して、単結合、−O−、−COO−または−OCO−である、
から選択されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の配向層。
【請求項13】
RMが、以下の式
【化3】

式中、P、P、x、y、LおよびLは、請求項9において定義した通りである、
から選択されていることを特徴とする、請求項12に記載の配向層。
【請求項14】
前駆体材料が、0.5〜4重量%のRMを含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の配向層。
【請求項15】
請求項4〜14のいずれかにおいて定義された、ポリマー前駆体。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の配向層の、液晶(LC)材料の基板および/または配向層としての使用。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載の配向層および、重合したかまたは架橋したLC材料を含むフィルムを含む、積層体。
【請求項18】
請求項17に記載の積層体の製造方法であって、重合可能なLC材料の層を、請求項1〜14のいずれかに記載の配向層上に設け、随意にLC材料を均一な配向に配向させ、LC材料を重合させることによる、前記方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の前駆体材料、配向層または積層体の、光学的、電気光学的、情報蓄積、装飾およびセキュリティー用途における使用。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの前駆体材料、配向層または積層体を含む、光学的素子またはデバイス。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの配向層もしくは積層体または請求項20に記載の素子を含む、液晶ディスプレイ。

【公表番号】特表2007−501958(P2007−501958A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522930(P2006−522930)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008340
【国際公開番号】WO2005/015298
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(506045624)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ヴイ. (1)
【Fターム(参考)】