説明

反応性酸素種およびフリーラジカルの効力を中和するための組成物および方法

【課題】スーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼのような抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートして、反応性酸素種やその他のフリーラジカルの有害な酸化作用を中和するためのペプチド化合物ならびに方法を提供する。
【解決手段】抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態を治療または予防する方法であって、該疾患または状態を患う個体に、上記ペプチド化合物を投与することを含んでなる、方法。抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする内在性ペプチド化合物を含む、生物由来の天然源からの精製組成物を含有する食物補助剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、抗酸化化合物の分野に関し、特に、反応性酸素種およびフリーラジカルの望ましくないレベルを特徴とする、疾病および状態の治療および予防処置に用いられる医薬品および機能性食品の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生物は、脳、心臓、肺および筋肉組織などの組織の正常な代謝活動の過程で、有害な反応性酸素種(ROS)や様々なフリーラジカルを発生している(Halliwell, B.およびGutteridge, J.M.C.編、Free Radicals in Biology and Medicine, (Oxford: Clarendon Press, 1989))。最も反応性が高い、従って、有毒のROSおよびフリーラジカルとして、スーパーオキシドアニオン(O2-)、一重項酸素、過酸化水素(H2O2)、過酸化脂質、ペルオキシニトライト、およびヒドロキシルラジカルが挙げられる。細胞中のROSまたはフリーラジカルレベルがわずかに上がるだけでも損傷を与える恐れがある。同様に、細胞外の体液中へのROSまたはフリーラジカルの放出もしくは増加は、周囲の組織を危険にさらし、組織破壊や壊死を引き起こす恐れがある。実際に、スーパーオキシドアニオンよりいくらか反応性が低い過酸化水素は、よく知られた広範なスペクトルの防腐剤化合物である。真核生物において、スーパーオキシドアニオンの主な供給源は、ミトコンドリアに存在する呼吸中の電子伝達系である。スーパーオキシドアニオンの大部分は、還元当量の2つの主な蓄積部位、すなわち、電子伝達機構におけるユビキノンが媒介する段階とNADH脱水素酵素が媒介する段階で発生する。過酸化水素は、小胞体では代謝により、ペルオキシソームでは金属触媒による酸化で、ミトコンドリアでは酸化的リン酸化で、また、キサンチンの細胞質ゾル酸化で、発生する(例えば、Somaniら、「物理・化学的ストレスに対する抗酸化剤系の応答 (Response of Antioxidant System to Physical and Chemical Stress)」, Oxidants, Antioxidants, and Free Radicals, 第6章、pp. 125-141, Baskin, S.I.およびH. Salem編(TaylorおよびFrancis、ワシントンD.C.、1997)を参照)。
【0003】
正常かつ健康な個体では、複数の天然の抗酸化防御系が、様々なROSまたはフリーラジカルを解毒し、これによって、正常な細胞および組織の統合性および機能を保存する。これらの解毒系は、特定の抗酸化酵素の協奏的活性により、ROSまたはフリーラジカルを、毒性が低い化学種へと段階的に変換する。これらの抗酸化酵素は、ROSまたはフリーラジカルを除去および解毒する能力を有する「酸素ラジカルスカベンジャー」もしくは「ラザロイド」として知られる大きいクラスの分子のメンバーである。ビタミンA、C、E、ならびに、βカロチンやレチノイドのような関連する抗酸化化合物もこの大きいクラスのメンバーである。健康な個体では、十分なレベルの抗酸化酵素およびその他のラザロイドが、細胞内および細胞外の両方に存在し、これによって、細胞および組織に対する酸化による深刻な損傷を防ぐのに十分な量のROSおよびフリーラジカルが効率的に除去される。
【0004】
抗酸化酵素の中でも、最も重要で、研究されているものとして、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)が挙げられる。これらの酵素は、協奏的にROSおよびフリーラジカルを解毒する機能を有する。SODは、実質的にあらゆる酸素呼吸生物に存在し、そこでのその主な機能は、スーパーオキシドアニオンを過酸化水素へと不均化(分解)することである。過酸化水素それ自体も、高度に反応性かつ酸化性の分子であり、これをさらに還元することにより、細胞および組織に対する損傷を防がなければならない。好適な電子受容体(水素供与体)の存在下で、CATは、過酸化水素の水へのさらなる還元を触媒する。還元型グルタチオン(GSH)の存在下で、GSH-Pxも、別の経路により、過酸化水素の水への還元を媒介する。
【0005】
上記抗酸化酵素の各々は、各種クラスへとさらに細分することができる。金属イオン含有量に基づき、SODの3つの異なるクラス:銅−亜鉛(Cu-Zn)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)が存在する。哺乳動物では、Cu-ZnおよびMn SODクラスだけが存在する。哺乳動物の組織は、細胞質ゾルのCu-Zn SOD、ミトコンドリアのMn SOD、およびES-SODと呼ばれるCu-Zn SODを含み、これは、細胞外体液に分泌される。SODは、自然の速度より1000万倍速い速度で、毒性が極めて高いスーパーオキシドアニオンの不均化を触媒することができる(Somaniら、p.126を参照)。ほぼすべての哺乳動物細胞に存在するが、最高レベルのSOD活性は、高代謝活性を有する数種の主要臓器、すなわち、肝臓、腎臓、心臓および肺に存在する。SODをコードする遺伝子の発現は組織の酸素化と相関し、酸素テンションが高いと、ラットにおけるSOD生合成が高まる(Toyokuni, S., Pathol. Int., 49:91-102(1999))。
【0006】
CATは、ほぼすべての哺乳動物細胞に存在する可溶性酵素であるが、CATレベルは、組織および細胞内位置に応じて広範に変動し得る。CATは、主として、肝臓および腎臓細胞中のペルオキシソーム(ミクロボディー)、また、その他の組織のミクロペルオキシソームにも存在する。
【0007】
GSH-Pxには2つの異なるクラス、すなわち、セレン依存性クラスおよびセレン非依存性クラスがある。さらに、GSH-Px種は、膜結合タンパク質および循環血漿タンパク質として、細胞質ゾルに見出すことができる。
【0008】
様々な重要な疾病および薬物副作用におけるROSおよびフリーラジカルの役割の認識は、近年になってかなり高まっている。多くの研究から、多数の疾状態態や、治療薬の有害な副作用は、個体の抗酸化防御系が、ROSおよび各種フリーラジカルの発生速度に追いつけないことに関連することが明らかにされている(例えば、Chanら、Adv. Neurol., 71:271-279(1996);DiGuiseppi, J.およびFridovich, I. Crit, Rev, Toxicol., 12:315-342(1984)を参照)。例えば、発作中に虚血により誘発される無酸素状態、または心筋梗塞中に心筋に発生した無酸素状態においては、異常に高いROSレベルが認められている(例えば、Walton, M.ら、Brain Res. Rev., 29:137-168(1999);Pulsinelli, W.A.ら、Ann. Neurol., 11:499-502(1982);Lucchesi, B.R., Am. J. Cardiol., 65:141-231(1990)を参照)。さらに、ROSおよびフリーラジカルの上昇も、腎移植後の再灌流損傷と関連していた。従って、ROSおよびフリーラジカルの上昇は、下記を含む様々な疾病、薬物療法、外傷、および変性状態の進行およびその際に現れる合併症と関連している:加齢に伴なう酸化ストレス誘発性損傷、遅発性ジスキネジー、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、変性眼疾患、敗血症性ショック、頭部および脊髄損傷、アルツハイマー病、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびその他の癌、ならびに、糖尿病(例えば、Ratanis, Pharmaceutical Executive, pp. 74-80(1991、4月)を参照)。
【0009】
有害なROSおよびフリーラジカルの上昇したレベルを下げる一手法は、抗酸化酵素およびその他のラザロイドを治療薬として投与することにより、これら薬剤のレベルを高めようとするものであった。その結果、抗酸化酵素およびその他のラザロイドの市場は、世界規模で10億ドルを超えると見積もられる。当然、治療薬としての各種ラザロイドの研究および開発は極めて競争の激しい分野となった。また、治療薬としてSODを開発することへの関心も非常に高まってきた。これは、部分的には、承認された抗炎症薬としてのSODのステータスと、SODが非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)市場に浸透する手段を提供し得るという考えによるものである(同上、p. 74)。
【0010】
多年にわたる集中的な研究努力にもかかわらず、SODおよびその他のラザロイドの使用は、ROSおよびフリーラジカルの発生により起こる、もしくはこれを特徴とする疾病、障害およびその他の状態に対処する有効な予防または治療手段を提供していない。明らかに、上昇したレベルのROSおよびフリーラジカルの破壊作用を特徴とする疾病および状態を治療する新たな治療薬および方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
ここに記載の本発明は、ROSおよびフリーラジカルの上昇したレベルの破壊的酸化作用を如何にして無効にするかという問題を、例えばスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および/またはカタラーゼ(CAT)などの抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現を刺激する(アップレギュレートする)ペプチド化合物を提供して、細胞および組織におけるROSとフリーラジカルのレベルの望ましくない上昇を抑制、排除または防止し、かつ構成的な抗酸化酵素の加齢に伴う減少を回復させることにより解決するものである。さらに、本発明のペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現を刺激するそれらの能力とは無関係に、抗酸化活性を有するものである。本明細書に記載するペプチド化合物の式においては、当技術分野で公知の標準的な三文字表記を採用する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明は、次式:

[式中、R1は存在しないか、該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;Xaa1およびXaa2は独立してアスパラギン酸またはアスパラギンであり;Xaa3は存在しないか、Glyであり;Xaa4は存在しないか、AspまたはPheであり;Xaa5は存在しないか、AlaまたはPheであり;Xaa6は存在しないか、Alaであり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。上記の式に従う好適なペプチド化合物は抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明はまた、次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明は、次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、次式:

[式中、Xaa1は存在しないか、Serであり;Xaa2は存在しないか、Lysであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。上記の式に従う好適なペプチド化合物は抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明はさらに、次式:

[式中、Xaa1はAsp、Asn、Glu、Gln、Thr、またはTyrであり;Xaa2は存在しないか、任意のアミノ酸(すなわち、可変的)であり;Xaa3はAsp、Asn、Glu、Thr、Ser、Gly、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。好ましくは、本発明のペプチド化合物は、上記式において、Xaa2がVal、Gly、GluおよびGlnからなる群より選択されるものである。より好ましくは、ペプチド化合物は、Thr Val Ser; Asp Gly Asp; Asn Gly Asn; Asp Gly; Asn Gly; Glu Gly; および Gln Glyからなる群より選択される。
【0019】
さらに別の実施形態において、本発明は、次式:

[式中、Xaa1は任意のアミノ酸であり;Xaa2はGln、またはTyrであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0020】
本発明はまた、次式:

[式中、Xaa1はAsn、Asp、Glu、Thr、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である] を有し、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物を提供する。
【0021】
好ましい実施形態では、上記式のいずれかのペプチド化合物は、R1アミノ末端キャッピング基をもつ。より好ましくは、R1アミノ末端キャッピング基は、リポ酸部分(Lip、還元型または酸化型);グルコース-3-O-グリコール酸部分(Gga);1〜6個のリシン残基;1〜6個のアルギニン残基;式 R3-CO- のアシル基(ここで、COはカルボニル基であり、R3は炭素原子数1〜25、好ましくは1〜22の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は飽和であっても不飽和であってもよく、分枝鎖であっても非分枝鎖であってもよい)、およびこれらの組合せからなる群より選択される。より好ましくは、アミノ末端キャッピング基がアシル基であるとき、それはアセチルまたは脂肪酸である。より一層好ましくは、アミノ末端キャッピング基はアセチル、パルミチン酸(Palm)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択されるアシル基である。別の実施形態において、アミノ末端キャッピング基はアルギニンとリシンの任意の組合せからなるペプチドであり、該ペプチドの長さは2アミノ酸より少なくなく、6アミノ酸より多くない。
【0022】
抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、かつ本発明の組成物および方法において有用である好適なペプチド化合物としては、限定するものではないが、次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド化合物が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物および方法において有用であるさらに好適なペプチド化合物は、Asp Gly Asp、Asp Gly、Thr Val Ser、およびGlu Alaからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
より好ましい実施形態では、本発明は、先に挙げた好適なペプチド化合物がさらにアミノ末端キャッピング基および/またはカルボキシ末端キャッピング基をもつものを提供する。より一層好ましいアミノ末端キャッピング基は、還元または酸化されたリポ酸部分(Lip);グルコース-3-O-グリコール酸部分(Gga):1〜6個のリシン残基;1〜6個のアルギニン残基;式 R3-CO- のアシル基(ここで、COはカルボニル基であり、R3は炭素原子数1〜25の飽和または不飽和(モノまたはポリ不飽和)炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択される。さらにより好ましくは、アミノ末端キャッピング基は、R3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素原子数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である。さらにより好ましくは、アミノ末端キャッピング基は、アセチル基(Ac)、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である。別の好ましい実施形態では、先に挙げた好適なペプチド化合物は、第一級または第二級アミンからなる群より選択されるカルボキシ末端キャッピング基をもつ。
【0025】
本発明の組成物および/または方法に有用なペプチド化合物は、個々の組成物または方法の必要性に応じて、1種以上の種々の塩形態(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩など)として調製し、使用することもできる。
【0026】
さらに本発明は、細胞または組織に本発明のペプチド化合物を接触させることを含む細胞および組織におけるROSとフリーラジカルの効力を中和する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態において、本発明のペプチド化合物はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)および/またはカタラーゼ(CAT)酵素をコードする遺伝子の発現を刺激する(アップレギュレートする)もので、かかる酵素はヒトや他の哺乳動物を含めた動物の細胞および組織においてROSとフリーラジカルを解毒することができる。好ましくは、細胞または組織に本発明のペプチド化合物を接触させることによって、SODとCATの両タンパク質の遺伝子発現がアップレギュレートされる。ここに記載のペプチド化合物で細胞や組織を処理すると、SODおよび/またはCATをコードする遺伝子の発現が、未処理の細胞または組織と比較して、ROSとフリーラジカルを顕著に解毒するのに十分な高レベルにまで上昇する。
【0027】
いろいろな疾病や症状をかかえた患者は、望ましくないROSおよび/またはフリーラジカルレベルを呈することが分かっている。本発明の好ましい実施形態では、ここに記載のペプチド化合物を含む組成物を治療的に用いて体内に含まれるROSとフリーラジカルの効力を無効にしたり、また、かかる組成物を予防的に用いて特定の疾病、症状、薬物療法または障害と関連したROSとフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を抑制または防止したりすることができる。詳しくは、本発明は、ここに記載のペプチド化合物を含む組成物を個体に投与して、ROSまたはフリーラジカルの毒性レベルを特徴とする疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、かかる疾患または状態には、限定するものではないが、加齢による組織変性および/または認知退行(老化)、老衰、遅発性ジスキネジー、大脳虚血(脳卒中)、心筋梗塞(心臓発作)、頭部外傷、脳および/または脊髄外傷、再灌流損傷、未熟児の酸素中毒、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、糖尿病、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびROSまたはフリーラジカルの上昇を特徴とする他の癌、加齢に関係したROSまたはフリーラジカル上昇、ダウン症、黄斑変性、白内障、精神分裂病、てんかん、敗血症性ショック、多外傷性ショック、熱傷、放射線により誘発されるROSおよびフリーラジカル上昇(UVにより誘発される皮膚損傷を含む)が含まれる。
【0028】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ここに記載のペプチド化合物を含む組成物を個体に投与して、ROSとフリーラジカルを発生する薬物療法により引き起こされる副作用を軽減または排除する方法を提供する。多数の薬物が有害な副作用として望ましくないROSやフリーラジカルを上昇させることは知られている。そのような薬物として、ドキソルビシン、ダウノルビシン、BCNU(カルムスチン)および関連化合物(メチル-BCNUおよびCCNUなど)、神経弛緩薬(クロザピンなど)が挙げられる。そのような治療の補助剤として本発明のペプチド化合物を用いて、こうした有害な副作用を排除したり、その程度を軽減させたりすることができる。したがって、本発明のペプチドは、例えば遅発性ジスキネジーにおけるような神経弛緩薬による治療中に起こる、薬物により誘発されるROSまたはフリーラジカルの上昇を治療または予防するために投与しうる。
【0029】
さらに別の実施形態では、ここに記載のペプチド化合物を非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の代替品または補助剤として使用し、損傷からの痛み、関節炎、およびROSとフリーラジカルがある役割を担っている他の炎症状態を治療することができる。
【0030】
本発明はまた、ROSまたは他のフリーラジカルの異常に高いレベルが認められる哺乳動物において、卒中以外の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、該哺乳動物の細胞に、式:

(式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である)を有するペプチド化合物を接触させることを含んでなる。好ましくは、この方法は、アミノ末端キャッピング基R1が、リポ酸部分(還元型または酸化型);グルコース-3-O-グリコール酸基;アシル基、すなわちR3-CO-(ここで、COはカルボニル基であり、R3は炭素原子数1〜25(より好ましくは1〜22)の飽和または不飽和(モノまたはポリ不飽和)炭化水素鎖である);1〜6個のリシン残基;1〜6個のアルギニン残基;およびこれらの組合せからなる群より選択されるペプチド化合物を用いる。より好ましくは、上記方法は、アミノ末端キャッピング基R1がアセチル基、グルコース-3-O-グリコール酸基、または脂肪酸であるペプチド化合物を使用する。さらに一層好ましくは、R1はアセチル(Ac)、パルミチン酸(Palm)、リポ酸(Lip)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である。別の好適な実施形態では、上記方法は、カルボキシ末端キャッピング基R2をもつペプチド化合物を使用し、より好ましくは、R2が第一級または第二級アミンであるものを使用する。
【0031】
本発明はさらに、細胞または組織におけるROSまたはフリーラジカルの毒性レベルの発生を排除し、抑制し、または防止するために個体に投与するための、本発明のペプチド化合物を製薬上許容されるバッファー中に含む治療用組成物を提供する。
【0032】
本発明の別の態様は、細胞または組織におけるSODおよび/またはCATなどの抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、ここに記載の内在性ペプチド化合物を含むか該ペプチド化合物を富化してある、生物(動物、植物または微生物)由来の天然源からの精製組成物を含有する食物補助剤組成物(「機能性食品」ともいう)を提供する。好ましくは、本発明の食物補助剤組成物はここに記載の外部から供給されるペプチド化合物をさらに含む。より好ましい実施形態では、本発明の食物補助剤組成物に用いられる生物由来の精製組成物の天然源は、反芻動物、例えばシカやヘラジカからのグリーン角袋の枝角 (green velvet antler)または各種植物材料(根、幹、葉、花、薬草混合物、チャ植物など)である。
【0033】
本発明のいくつかのペプチド化合物はまた、転写因子であるアクチベータータンパク質1(AP-1)をコードする遺伝子の発現を刺激またはアップレギュレートする。AP-1は各種のAP-1依存性遺伝子の転写を活性化するように働く。したがって、本発明は、次式:

[式中、R1は存在しないか、ここに記載のいずれかのアミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である] を有するペプチド化合物以外の、ここに記載のペプチド化合物を用いて、転写因子AP-1および細胞核へのその移動を活性化する方法、および/またはAP-1転写因子をコードする遺伝子の発現を刺激またはアップレギュレートする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1Aおよび1Bは、RT-PCR法(本文参照)により測定したときの、ペプチド化合物CMX-9236(100ng/ml)と共に様々な時間にわたり(0〜48時間)インキュベートしたラット一次皮質細胞培養物におけるスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD-1)遺伝子のSOD-1 mRNA転写物のアップレギュレーションを示す。図1Aは、インキュベーション時間(時間)の関数としてのRT-PCR産物(転写物)のゲル電気泳動を示す。各レーンに、それぞれの時点についてRT-PCR法により生成された各cDNAを同量ずつロードした。これを証明するのに、ハウスキーピング内部標準遺伝子の転写物であるグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子転写物(GAPDH、451塩基対)を使用した。「Pos」と表示した右手のレーンは、皮質細胞培養物を10μg/mlのペプチド化合物で3時間刺激した結果、最高レベルのSOD-1転写物 (208bp)を示すアップレギュレーションの陽性対照である。「M」と表示したレーンは、分子サイズの二本鎖DNAラダーマーカーを示す。図1Bは、SOD mRNAのアップレギュレーションの上記データの定量分析を示す棒グラフである。斜線の棒はSOD-1のデータを示し、白抜きの棒はGAPDH内部標準のデータを示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、ペプチド化合物CMX-9236がラット一次筋細胞培養物においてSOD-1遺伝子の発現をアップレギュレートしたことを示す。図2Aは、0、1、10または100ng/mlのペプチド化合物と共に3時間インキュベーションした後の一次筋細胞培養物におけるmRNA合成のパターンに及ぼすCMX-9236の効果についての用量応答データを示す。この分析には、図1Aおよび1Bと同様にRT-PCR法を用いた。208塩基対(bp)に対応するゲル領域にあるバンドは、SOD-1がアップレギュレートされたことを示す。図2Bは、上記データの定量分析を示す棒グラフであり、これは、10ng/mlと100ng/mlの用量がSOD-1 mRNA転写物に関して約6倍のアップレギュレーションをもたらしたことを示している。GAPDHは内部ハウスキーピング標準転写物である(図1Aおよび1Bと同様)。斜線の棒はSOD-1のデータを示し、白抜きの棒はGAPDH内部標準のデータを示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、ペプチド化合物CMX-9967が0、10または100ng/mlの該ペプチド化合物と共に5時間インキュベートしたラット脳一次皮質培養物においてSOD-1タンパク質の合成をアップレギュレートしたことを示す。図3Aは、34kDa(SOD-1の分子量)に移動する1本のバンドと、抗SOD-1抗体により認識される比較的小さい成分に対応する2本の低分子量バンドを含むウェスタンブロットを示す。図3Bは、CMX-9967ペプチドの用量の関数としてのSOD-1タンパク質の増加倍率を示す棒グラフである。
【図4】図4Aおよび4Bは、RT-PCR法により測定して、ペプチド化合物CMX-9236が該ペプチド化合物(100ng/ml)と共に様々な時間にわたり(0〜48時間)インキュベートしたラット一次皮質細胞培養物においてカタラーゼ遺伝子のカタラーゼmRNA転写物をアップレギュレートしたことを示す。図4Aは、図1に記載したようなRT-PCR法およびカタラーゼ転写物に対する特異的プローブを用いたときの結果を示す。GAPDHは内部ハウスキーピング標準(451bp)である。図4Bは、細胞をCMX-9236で処理した時間の関数としてのカタラーゼおよびGAPDH(内部標準)転写物(RT-PCR産物)の増加倍率を示す棒グラフである。斜線の棒はカタラーゼのデータを示し、白抜きの棒はGAPDH内部標準のデータを示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、CMX-9963およびCMX-9967が、SODとカタラーゼの両遺伝子のmRNA転写物をアップレギュレートしたことを示す。図5Aは、0、1、10または100ng/mlのCMX-9963またはCMX-9967と共に3時間インキュベートしたラット一次皮質細胞培養物においてSOD-1およびカタラーゼmRNA転写物を検出するためのRT-PCR法の結果を示す。SOD-1およびカタラーゼマーカーの正確な長さに対応するそれぞれ208bpおよび95bpのゲル領域の位置に強い染色が観察された。図5Bは、CMX-9963およびCMX-9967の用量の関数としての増加倍率を示す上記データの定量分析を示す棒グラフである。水平線の棒はSOD-1のデータを示し、斜線の棒はカタラーゼのデータを示し、白抜きの棒はGAPDH内部標準のデータを示す。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、各種濃度(0、1、10または100ng/ml)のペプチド化合物CMX-9236で3時間刺激したラット一次皮質培養物において、CMX-9236が転写因子AP-1を活性化したことを示す。図6Aは、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)法(本文参照)を用いてAP-1活性化の用量応答結果を示す。c-Jun/c-Fos AP-1ヘテロダイマーおよびc-Jun/c-Jun AP-1ホモダイマーに対応する移動位置を示してある。図6Bは、CMX-9236ペプチドの用量の関数としての増加倍率としてプロットしたデータの定量分析を示す。図6Cは、プローブ競合実験(放射性標識されていない未標識AP-1プローブと未標識変異型AP-1プローブを、P32プローブの添加前および電気泳動の前に核抽出物に添加する)においてAP-1に対するプローブの相互作用の特異性を示したEMSAの結果を示す。未標識プローブは、放射性標識プローブの0.5pmolに対して0X、5X、25X、50Xモル過剰で用いた。c-Jun/c-Fos AP-1ヘテロダイマーおよびc-Jun/c-Jun AP-1ホモダイマーに対応する移動位置を示してある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本発明は、反応性酸素種(ROS)およびフリーラジカルを解毒する細胞および組織における抗酸化防御機構の主成分である、酵素、すなわち、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)およびカタラーゼ(CAT)の相補的対をコードする一方または両方の遺伝子の発現を増強するペプチド化合物の発見に基づくものである。ROSおよびフリーラジカルは、電子伝達および正常な呼吸中、ならびに、各種薬物の代謝のようなその他の代謝過程中に発生し、速やかに解毒することにより、細胞および組織に対する永続的かつ連続的損傷を防止しなければならない。さらに、加齢の過程(老化)を含む、多くの疾病または状態もまた、ROSおよび/またはフリーラジカルが、実際に、細胞および組織を損なう毒性レベルへの増加を特徴としていた。従って、本発明に記載したペプチド化合物は、個体における有害レベルのROSおよびフリーラジカルの発生を阻止する有用な治療および予防用化合物である。
【0036】
本発明をさらによく理解できるように、下記のように用語を定義する。
略語:本明細書に記載するアミノ酸残基は、当業者には公知の一般的な三文字または一文字表記によって略書きする(例えば、Lehninger, A.L., Biochemistry, 第2版(Worth Publishers, Inc., ニューヨーク、1975)、p.72を参照)。本明細書で用いられるその他の略語として下記のものが挙げられる:ドコサヘキサエン酸部分を意味する「DHA」;リポ酸部分を意味する「Lip」;パルミチン酸部分(すなわち、パルミトリル基)を意味する「Palm」;アセチル部分を意味する「Ac」;グルコース-3-O-グリコール酸部分を意味する「Gga」;スーパーオキシドジスムターゼを意味する「SOD」;カタラーゼを意味する「CAT」;グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼを意味する「GAPDH」;および反応性酸素種を意味する「ROS」。これ以外にも、本文中必要に応じて他の略語を示す場合がある。
【0037】
「炭化水素」とは、分枝鎖もしくは非分枝鎖で、飽和または不飽和の炭化水素のいずれかを意味する。本明細書に記載するペプチド化合物のいくつかに存在する好ましい炭化水素鎖は、1〜25個の炭素原子を含む。さらに好ましい炭化水素鎖は、1〜22個の炭素原子を含む。
【0038】
本明細書で理解され、用いられる「反応性酸素種」、すなわち「ROS」は、呼吸中の正常な電子伝達系の過程で発生する、あるいは、疾病において、または特定の障害に対する所定治療薬による治療中に発生する、高度に反応性かつ毒性の酸素化合物である。ROSとしては、限定するものではないが、スーパーオキシドアニオン(O2-)、過酸化水素(H2O2)、一重項酸素、過酸化脂質、およびペルオキシニトライトが挙げられる。
【0039】
本明細書で理解され、用いられる「フリーラジカル」は、奇数の(対になっていない)電子を有するあらゆる原子または分子または化合物を意味する。この定義によると、スーパーオキシドアニオンもまた、負に荷電したフリーラジカルと考えられる。本発明で特に関心のあるフリーラジカルは、高反応性で高酸化性の分子であり、このような分子は、正常な代謝中に、疾病状態で、もしくは化学治療薬による治療中に形成または発生する。このようなフリーラジカルは、高度に反応性で、分子、細胞および組織に酸化的損傷を起こすことができる。スーパーオキシドアニオン以外に、最も一般的で、破壊能力のあるタイプのフリーラジカルは、ヒドロキシルラジカルである。典型的には、スーパーオキシドアニオンまたは一重項酸素などのROSの発生により、1以上の他の有害なフリーラジカルも生じる。従って、本明細書で理解され、用いられる「ROSおよびフリーラジカル」または「ROSおよびその他のフリーラジカル」のような用語は、特に細胞および組織の代謝状態で発生する可能性がある、高反応性で酸化性の分子種もしくは化合物の全集団のいずれかまたは全部を包含するものとする(例えば、Somaniら、「物理・化学的ストレスに対する抗酸化剤系の応答 (Response of Antioxidant System To Physical and Chemical Stress)」 Oxidants, Antioxidants, and Free Radicals, 第6章:125-141(TaylorおよびFrancis, ワシントンD.C.、1997)を参照)。
【0040】
「酸素ラジカルスカベンジャー」または「ラザロイド(lazaroid)」は、ROSおよびフリーラジカルを除去および解毒する能力を有するクラスの化合物である。ビタミンA、C、E、およびβカロテンやレチノイドのような関連する抗酸化化合物は、SODおよびCATなどの抗酸化酵素のように、この大きなクラスの化合物のメンバーである。健康な個体では、十分なレベルの抗酸化酵素および他のラザロイドが細胞内および細胞外の両方に存在するため、十分な量のROSおよびフリーラジカルを効率的に除去し、細胞および組織に対する深刻な酸化的損傷を防ぐことができる。
【0041】
本明細書で理解され、用いられる「ペプチド化合物」は、少なくとも1つのペプチド結合を含むあらゆる化合物を意味する。「ペプチド化合物」は、典型的には、約20個より少ないアミノ酸を含む非修飾または非誘導体化ペプチド、ならびに、ペプチドの誘導体を意味する。誘導体または誘導体化ペプチドは、アミノ酸以外の化学的成分を1以上含有するが、該成分は、アミノ末端アミノ酸残基、カルボキシ末端アミノ酸残基、もしくは内部アミノ酸残基に共有結合で結合される。
【0042】
本明細書で理解され、用いられる「天然源から精製された」とは、in vitro組換え核酸技術により遺伝子的に改変されていない自然または培養状態で存在する生物もしくは生物の集合体から精製または抽出された物質からなる組成物を意味する。なお、このような生物としては、限定するものではないが、飲料および食品に用いられるあらゆる作物の種、自然界で生育している非栽培植物の種、植物育種から開発された植物の種、in vitro組換え技術により遺伝子的に改変されていない微生物が挙げられる。本発明の天然源からの精製粗製物を調製するのに特に好ましい供給源は、シカやウシのような反芻動物のグリーン角袋の枝角、薬草および茶として用いられる植物からの根、茎、葉および花などの植物組織である。
【0043】
本発明に記載するペプチド化合物の「アミノ末端キャッピング基」は、ペプチド化合物のアミノ末端アミノ酸残基に共有結合で結合したあらゆる化学的化合物または化学的部分である。このようなアミノ末端キャッピング基の主な目的は、分子内環化または分子間重合を阻害または防止すること、血液−脳関門を介したペプチド化合物の輸送を促進すること、あるいは、これら特性の組合せを提供することである。アミノ末端キャッピング基を有する本発明のペプチド化合物は、非キャップ付加ペプチドと比較して、有利な活性、例えば、増強された効力や、低減された副作用などを有する。例えば、本明細書に記載するペプチド化合物に用いられるアミノ末端キャッピング基のいくつかは、その遊離状態(例えば、リポ酸)でも抗酸化活性を有するため、非キャップ付加形態でのペプチドの抗酸化活性を改善または増強することができる。本発明に従うペプチド化合物および組成物を調製する上で有用なアミノ末端キャッピング基の例として、限定するものではないが、1〜6個のリシン残基、1〜6個のアルギニン残基、2〜6個のアルギニンおよびリシン残基の混合物、ウレタン、尿素化合物、リポ酸(Lip)またはパルミチン酸部分(すなわち、パルミトイル基「Palm」)、グルコース-3-O-グリコール酸部分(Gga)、もしくはペプチドのアミノ末端アミノ酸残基に共有結合されるアシル基が挙げられる。本発明の組成物に有用なこのようなアシル基は、カルボニル基と、炭素数1(例えば、アセチル基のように)から炭素数25まで(炭素数22の炭化水素鎖をもつドコサヘキサエン酸「DHA」など)の炭化水素鎖を含んでいてもよい。さらに、上記アシル基の炭素鎖は、パルミチン酸のように飽和していてもよいし、不飽和でもよい。酸(DHA、PalmまたはLipなど)がアミノ末端アミノ酸残基として存在する場合には、得られるペプチド化合物は非キャップ付加ペプチドと酸との縮合生成物である。
【0044】
本発明に記載するペプチド化合物の「カルボキシ末端キャッピング基」は、ペプチド化合物のカルボキシ末端アミノ酸残基に共有結合で結合したあらゆる化学的化合物または化学的部分である。カルボキシ末端キャッピング基の主な目的は、分子内環化または分子間重合を阻害または防止すること、血液−脳関門を介したペプチド化合物の輸送を促進すること、あるいは、これら特性の組合せを提供することである。カルボキシ末端キャッピング基を有する本発明のペプチド化合物は、例えば、カルボキシ末端キャッピング基が、1個以上のスルフヒドリル基のような還元力源を有する場合には、非キャップ付加ペプチドと比較して、有利な活性、例えば、増強された効力や、低減された副作用、増強された親水性、増強された疎水性、または増強された抗酸化活性などを有する。本明細書に記載するペプチド化合物において特に有用なカルボキシ末端キャッピング基としては、アミド結合により、ペプチド化合物のカルボキシ末端アミノ酸のαカルボキシル基と結合した第一級または第二級アミンが挙げられる。本発明で有用な他のカルボキシ末端キャッピング基として、C1〜C26炭素原子を含むフラボノイドのような脂肪族第一級または第二級アルコール、ならびに、芳香族フェノール誘導体が挙げられ、これらは、本明細書に記載するペプチド化合物のカルボキシ末端アミノ酸残基のカルボン酸基と結合してエステルを形成する。
【0045】
また、本発明のペプチド化合物には、ペプチド鎖内に1個以上のアミノ酸残基の側鎖の修飾を含むあらゆるペプチドも含まれる。このような修飾として、限定するものではないが、保存的アミノ酸置換、反応性部分への保護またはキャッピング基の付加、ならびに、ペプチドの活性(すなわち、抗酸化活性および/または、SODおよび/またはCATをコードする遺伝子の発現を刺激する能力)を破壊しないその他の改変が挙げられる。
【0046】
本明細書で理解され、用いられる「放射線」とは、あらゆるタイプの伝播または放出エネルギー波、もしくはエネルギーを加えた粒子を意味し、電磁放射線、紫外線(UV)、ならびに、直射日光誘導放射線および放射能性放射線が含まれる。このような放射線の作用は、皮膚の表面または下層に影響を及ぼすか、身体の遠位部位に全身的損傷を生じる恐れがある。
【0047】
本明細書で理解され、用いられる「アップレギュレート」および「アップレギュレーション」とは、細胞または組織における遺伝子産物の発現レベルの増加を意味する。本明細書に記載するペプチド化合物は、該ペプチド化合物で処理して(接触させて)いない細胞および組織に通常存在するレベルに対し、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、および/またはAP-1転写因子(AP-1)をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートすることができる。従って、SOD、CATまたはAP-1 mRNA転写物のレベル;SOD、CATまたはAP-1遺伝子産物(タンパク質)合成;SODまたはCAT酵素活性のレベル、あるいは、AP-1因子依存性転写活性のレベルの増加は、遺伝子発現のアップレギュレーションを示す。SOD、CATまたはAP-1遺伝子の発現は様々な方法により検出することができ、例えば、酵素をコードするmRNAの検出にはノーザンブロッティング、遺伝子産物の検出にはウエスタンイムノブロッティング、SODおよびCATの場合には、SODまたはCAT酵素活性の標準的アッセイを用いて、あるいは、AP-1因子の場合には、AP-1因子依存性転写発現アッセイを用いて、それぞれ検出する。
【0048】
本明細書で理解され、用いられる「機能性食品(nutraceutical)」および「食物補助剤(dietary supplement)」は、類義語であり、栄養素および/またはその他の化合物の、調節されていない、経口投与される供給源として調製され市販される化合物を意味する。その意図は、個体の健康に便益をもたらす特性または活性を含めることである。食物補助剤中に確認される望ましい成分化合物は、「機能性化学物質(nutrichemical)」と呼ばれる。機能性化学物質は微量しか存在しないが、依然として食物補助剤の望ましくかつ市場性の高い成分である。一般に知られている機能性化学物質には、微量金属、個体の健康に有益と考えられる活性を有する酵素、ならびに、このような酵素をアップレギュレートする化合物などがある。このような酵素として、反応性酸素種(ROS)およびその他のフリーラジカルの有害な酸化作用を阻止するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)およびカタラーゼ(CAT)などの抗酸化酵素が挙げられる。従って、内在的に存在する、および/または食物補助剤としての販売のために製造された組成物に外部から添加される、1種以上のペプチド化合物は食物補助剤の機能性化学物質である。
その他および用語は、以下の説明で用いるうちに、明らかになるであろう。
【0049】
ペプチド化合物および組成物
本発明は、当技術分野において以前に開示されたことがなく、SODおよび/またはCAT酵素をコードする少なくとも1の機能的遺伝子を含む真核細胞において、SODおよび/またはCATをアップレギュレートすることができる組成物および/または方法で使用するための本明細書に記載のペプチド化合物を提供する。細胞または組織中のSODおよび/またはCATのレベルをアップレギュレートすると、解毒系が増強され、これによって、ROSおよびフリーラジカルの有害な酸化活性が防止、低減、または排除される。本発明の好ましいペプチドおよびペプチド化合物は、SODおよびCATの両方をアップレギュレートする。本明細書に記載されたペプチド化合物はAP-1転写因子もアップレギュレートし、これは、中でも、抗酸化遺伝子産物および/または増殖因子の発現を増強することができる。
【0050】
本発明により提供されるペプチド化合物は、長さが、好ましくは、約20以下の、さらに好ましくは、約18、15、13、9、5、4および3以下のアミノ酸であり、細胞および組織中のSODおよび/またはCAT遺伝子の発現をアップレギュレートすることができる。このような活性は、in vitroで、例えば、組織培養において試験することができる。本発明のペプチド化合物は、低濃度で、すなわち1ミリリットル(ml)当たりナノグラム範囲のペプチドで、アップレギュレーション活性を示す。このような高い能力は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)またはヒト成長ホルモンなどの各種ホルモンにより示されるものと類似している。従って、本明細書に記載するペプチド化合物は、公知の治療ホルモンペプチドの調製、保存および投与にすでに適用されている利用可能な技法の多くを用いて、調製、保存および使用することができる。
【0051】
本明細書に記載するペプチド化合物は、該ペプチドの所望の活性を破壊しないような追加の修飾、例えば、アミノ末端またはおよび/またはカルボキシ末端アミノ酸残基での化学的成分の付加、保存的アミノ酸置換、あるいは、ペプチドの内部アミノ酸残基の側鎖の修飾などを実施したペプチドを含んでいてもよい。本明細書に記載するペプチド化合物の分子内環化および分子間重合は、ペプチド化合物の活性を不活性化もしくは低下させる傾向があり、その結果、ペプチド化合物がSOD、CAT、またはAP-1を効果的にアップレギュレートすることができなくなることが認められている。従って、最も有用なペプチド化合物は、他のペプチド化合物分子との環化反応および重合またはコンジュゲート形成を最も起こしにくいものである。これらのペプチドがSOD、CAT、および/またはAP-1をアップレギュレートする能力を維持もしくは増強する以外にも、このような修飾によってさらに便益がもたらされる。例えば、アミノ末端キャッピング基は血液−脳関門を介したペプチドの輸送を促進すると考えられる(例えば、PCT国際公開WO99/26620を参照)。この特性は、ペプチド化合物を用いて脳組織および中枢神経系部分におけるSODおよびCATをアップレギュレートする際、特に重要である。血液−脳関門を介した輸送を促進するアミノ末端キャッピング基はまた、それらが結合するペプチド化合物の環化を防止したり、あるいは、他のペプチド化合物との重合を防止したりすることができる。
【0052】
好ましいアミノ末端キャッピング基として、リポ酸部分があり、これは、アミド結合により、ペプチドのアミノ末端アミノ酸のαアミノ基と結合させることができる。遊離形態のリポ酸(Lip)は独立した抗酸化活性を有し、アミノ末端キャッピング基として用いられると、本発明のペプチドの抗酸化活性を増強することができる。アミノ末端に結合したリポ酸部分は、2個のスルフヒドリル基を含む還元形態か、あるいは、スルフヒドリル基が酸化されて分子内ジスルフィド結合、従って、複素環構造を形成する酸化形態をしていると考えられる。上記以外に、本発明のペプチド化合物を調製するのに有用なアミノ末端キャッピング基は、グルコース-3-O-グリコール酸部分(Gga)であり、これは、アミド結合で、ペプチド化合物のアミノ末端アミノ酸のαアミノ基と結合させることができる。また、グルコース部分は、グルコース部分の1個以上のヒドロキシル基を置換するアルコキシ基のような修飾をさらに含んでもよい。
【0053】
本明細書に記載するペプチド化合物に有用なアミノ末端キャッピング基の別の例は、アシル基であり、これは、アミド結合で、ペプチド化合物のアミノ末端アミノ酸残基のαアミノ基と結合させることができる。アシル基は、長さが1〜25炭素原子で、飽和または不飽和(モノ−またはポリ不飽和)の、分枝または非分枝炭化水素鎖、さらに好ましくは、アシル基の炭化水素鎖は、DHAと同様に、長さが1〜22炭素原子である。アシル基は、アセチルまたは脂肪酸であるのが好ましい。アシルアミノ末端キャッピング基として用いられる脂肪酸は、飽和または不飽和で、分枝または非分枝いずれかの炭化水素鎖を含んでいてよい。好ましくは、炭化水素鎖は、長さが1〜25炭素原子であり、さらに好ましくは、炭化水素鎖の長さは1〜22炭素原子である。例えば、本発明のペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基として有用な脂肪酸には、限定するものではないが、下記のものがある:カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(Palm)(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1)、C16:2、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、バクセン酸(C18:1-7)、リノール酸(C18:2-6)、α-リノレン酸(C18:3-3)、エレオステアリン酸(C18:3-5)、β-リノレン酸(C18:3-6)、C18:4-3、ゴンドイン酸(gondoic acid)(C20:1)、C20:2-6、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3-6)、C20:4-3、アラキドン酸(C20:4-6)、エイコサペンタエン酸(C20:5-3)、ドコサン酸(C22:1)、ドコサテトラエン酸(C22:4-6)、ドコサペンタエン酸(C22:5-6)、ドコサペンタエン酸(C22:5-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)(C22:6-3)、ならびに、ネルボン酸(C24:1-9)。本明細書に記載するペプチド化合物のアシルアミノ末端キャッピング基として用いられる特に好ましい脂肪酸は、パルミチン酸(Palm)とドコサヘキサエン酸(DHA)である。DHAおよびその他の各種脂肪酸部分は、それらが血液−脳関門を介してそれらの連結分子の輸送を促進することがわかっている(例えば、PCT国際公開WO99/40112およびPCT国際公開WO99/26620を参照)。従って、本明細書に記載するペプチド化合物を投与することにより、脳組織および/または中枢神経系のその他の部分におけるROSおよびフリーラジカルの酸化作用を阻止する場合には、このような脂肪族アシル部分が特に好ましい。
【0054】
さらに、場合によっては、アミノ末端キャッピング基はリシン残基またはポリリシンペプチドでもよく、その際、該ペプチド化合物の環化、架橋、もしくは重合を防止することができるポリリシンペプチドは、2、3、4、5または6個のリシン残基からなるのが好ましい。また、これより長いポリリシンペプチドを用いてもよい。本明細書に記載するペプチド化合物に用いることができる別のアミノ末端キャッピング基は、アルギニン残基またはポリアルギニンペプチドであり、その際、該ポリアルギニンペプチドは、2、3、4、5または6個のアルギニン残基からなるのが好ましいが、これより長いポリアルギニンペプチドを用いることもできる。また、本明細書に記載するペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基は、リシンおよびアルギニンの両方を含むペプチドでもよく、その際、該リシンおよびアルギニン含有ペプチドは、両アミノ酸の2、3、4、5または6残基の組合せ(どんな順序でもよい)からなるのが好ましいが、これより長いリシンおよびアルギニン含有ペプチドを用いることもできる。本明細書に記載するペプチド化合物においてアミノ末端キャッピング基として用いられるリシンおよびアルギニン含有ペプチドは、ペプチド化合物の合成に用いられるあらゆる工程に好都合に組み込むことができ、これによって、アミノ末端キャッピング基を含む誘導体化ペプチド化合物が得られる。
【0055】
本発明の組成物および方法に有用なペプチド化合物は、カルボキシ末端キャッピング基を含むことができる。この基の主な目的は、分子内環化の防止、あるいは、分子間架橋または重合の不活性化である。しかし、前記のように、カルボキシ末端キャッピング基は、これに加えて、効力の増強、副作用の低減、抗酸化活性の増強、および/または望ましい生化学的特性などの便益をペプチド化合物にさらに賦与することができる。このような有用なカルボキシ末端キャッピング基の例として、カルボキシ末端アミノ酸残基とのアミド結合による第一級または第二級アミンがある。標準的なアミド化反応化学を用いて、このようなアミンをペプチドのカルボキシ末端アミノ酸のαカルボキシル基に付加することもできる。
【0056】
本発明の組成物および方法で用いるペプチド化合物は、荷電した側鎖をもつアミノ酸、すなわち、酸性および塩基性アミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、ペプチドが荷電アミノ酸を含む場合には、荷電アミノ酸は、すべてが酸性アミノ酸、すなわち負の電荷を持つか、すべてが塩基性アミノ酸、すなわち正の電荷を持つかのいずれかである。このように荷電アミノ酸が均一であれば、ペプチド化合物の安定性に寄与し、保存またはin vivo使用中、ペプチド化合物の環化、架橋または重合が防止される。本明細書に記載するペプチド化合物の環化、架橋または重合は、ペプチド化合物の活性を全部破壊するか、本発明の治療または予防用組成物および方法で使用できなくなる程度にまで破壊する恐れがある。さらに、ある種の環状ペプチド化合物は毒性である可能性がある。従って、ペプチド化合物が塩基性(負に荷電した)アミノ酸残基を含む場合には、カルボキシ末端カルボン酸基をアミドに変換する(すなわち、カルボキシ末端キャッピング基を用いて)ことにより、カルボン酸基が、同じペプチド化合物内の遊離アミノ基と反応して環状化合物を形成するのを防止したり、異なるペプチド化合物内の遊離アミノ基と反応して重合または架橋ペプチド化合物を形成するのを防止したりすることが得策である。
【0057】
さらに、本発明に記載するペプチド化合物は、1個以上のL-アミノ酸残基の代わりに、1個以上のD-アミノ酸残基を含んでもよい。ただし、その際、1個以上のD-アミノ酸残基の組込みが、ペプチド化合物の活性を全部もしくは、本発明の治療または予防用組成物および方法で使用できなくなる程度にまで破壊しないことを条件とする。L-アミノ酸の代わりにD-アミノ酸を組み込むと、特にin vivoで、ペプチド化合物にさらに安定性を賦与することができ、有利である。
【0058】
ペプチド化合物は、標準的方法を用いて調製することもできるし、市販のものから入手することもできる。本発明のペプチド化合物のペプチドの直接合成は、固相ペプチド合成、液相合成などの通常の技法を用いて達成することができる。ペプチドはまた、各種組換え核酸技術を用いて合成してもよいが、ペプチドの比較的小さいサイズと直接ペプチド合成技術の現状を考慮すると、直接合成が好ましく、固相ペプチド合成が最も好ましい。固相合成では、例えば、適切に保護されたアミノ酸残基を、そのカルボキシル基を介して、誘導体化された不溶性ポリマー支持体(架橋ポリスチレンまたはポリアミド樹脂など)に結合させる。「適切に保護された」とは、アミノ酸のαアミノ基と側鎖官能基の両方に保護基が存在することを意味する。側鎖保護基は、全合成工程を通じて用いられる溶剤、試薬、および反応条件に対して一般に安定であり、最終ペプチド生成物に影響を与えない条件下で除去できるものである。ポリペプチドの段階的合成は、初期(すなわち、カルボキシ末端)アミノ酸からN保護基を除去し、そこに、ポリペプチドの配列における次のアミノ酸のカルボキシル基を結合することにより実施される。このアミノ酸も適切に保護する。反応性の基、例えば、カルボジイミド、対称酸無水物を形成させるか、あるいは、ヒドロキシベンゾトリアゾールやペンタフルオロフェニルエステルのような「活性エステル」基を形成させることにより、導入するアミノ酸のカルボキシル基を活性化し、結合したアミノ酸のN末端と反応させることができる。好ましい固相ペプチド合成法として、BOC法(αアミノ保護基としてtert-ブチルオキシカルボニルを用いる)と、FMOC(9-フルオレニルメトキシカルボニルを用いて、アミノ酸残基のαアミノを保護する)とが挙げられ、両方法とも、当業者にはよく知られている(Stewartら、Solid-Phase Peptide Synthesis(W.H. Freeman Co.、サンフランシスコ、1989);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154(1963);BodanszkyおよびBodanszky, The Practice of Peptide Synthesis(Springer-Verlag、ニューヨーク、1984);いずれも、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0059】
本発明に従うペプチド化合物は、ペプチド合成を提供する会社(例えば、BACHEM Bioscience, Inc.、ペンシルバニア州キングオブプルシア;AnaSpec, Inc.、カリフォルニア州サンホセ)によって商業的に製造されてもよい。また、Perkin-Elmer Applied Biosystemsが製造しているような、自動ペプチド合成機も利用可能である。
【0060】
本発明の組成物および方法に有用なペプチド化合物は、塩形態で調製して使用することも可能である。典型的には、ペプチド化合物の塩形態は、特定のpHでペプチド化合物の実効イオン電荷に対する対イオンとして働く1個以上のイオンの存在下で、酸または塩基によりペプチド化合物を含む組成物のpHを調節することによって存在するだろう。本明細書に記載するペプチド化合物の様々な塩形態は、当業者には公知の各種方法、例えば、各種イオン交換クロマトグラフィー方法を用いて、形成または相互交換することができる。本明細書に記載する組成物に用いることができるカチオン性対イオンとして、限定するものではないが、アンモニウムイオンのようなアミン;金属イオン、特にアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム)、遷移金属(例えば、鉄、マンガン、亜鉛、カドミウム、モリブデン)、その他の金属(例えば、アルミニウム)の1価、2価、または3価イオン;ならびに、これらの組合せが挙げられる。本明細書に記載する組成物に用いることができるアニオン性対イオンとしては、限定するものではないが、塩素イオン、フッ素イオン、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、硫酸、炭酸、クエン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、グルタル酸、ケトグルタル酸の各イオン、ならびに、これらの組合せが挙げられる。本明細書に記載するペプチド化合物のトリフルオロ酢酸塩は、典型的には、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてトリフルオロ酢酸バッファーで精製する際に形成される。一般にin vivo用途には適していないが、本明細書に記載するペプチド化合物のトリフルオロ酢酸塩形態は、目的とするペプチド化合物の活性または効力を試験するのに実施される各種in vitro細胞培養実験またはアッセイにおいて好適に用いることができる。次に、ペプチド化合物を、トリフルオロ酢酸塩から医薬品または食物補助剤(機能性食品)組成物に許容できる塩形態に変換する(例えば、イオン交換法により)か、あるいは、そのような塩形態として合成することができる。
【0061】
本発明の方法に有用なペプチド化合物は、ひとたび化学的または組換え技術のいずれかにより単離もしくは合成したら、精製するのが好ましい。精製のためには、多数の標準的方法を用いることができ、例えば、C4-、C8-またはC18-シリカのようなアルキル化シリカカラムを用いた、逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などがある。一般的には、有機含量が次第に増加する勾配移動相を用いて精製を行なうが、例えば、通常は少量のトリフルオロ酢酸を含む、水性バッファー中のアセトニトリルを用いる。また、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、電荷に基づきペプチド化合物を分離することもできる。ペプチド化合物の純度は、各種方法、例えば、HPLC上の主要ピークの確認などにより、決定することができる。HPLCカラム上で投入材料の95%以上に当たる単一ピークをもたらすペプチド化合物が好ましい。さらには、HPLCカラム上で投入材料の97%以上、98%以上、99%以上、あるいは、99.5%である単一ピークをもたらすペプチド化合物がより好ましい。
【0062】
前記技法のいずれかを用いて、得られるペプチド化合物が、本発明の組成物および方法で用いる所望のペプチド化合物であることを確実にするために、当業者には公知の各種分析方法のいずれかを用いて、ペプチド化合物の組成の分析を実施する。このような組成分析は、高分解質量分析法を用いて実施することにより、ペプチドの分子量を決定することができる。あるいは、水性酸中のペプチドを加水分解した後、HPLCまたはアミノ酸分析装置を用いて、混合物の成分を分離、同定および定量化することにより、ペプチドのアミノ酸含有量を確認することも可能である。また、ペプチドを連続的に分解し、アミノ酸を順に同定するタンパク質シークエネーターを用いて、ペプチドの配列を決定してもよい。一部のペプチド化合物はアミノおよび/またはカルボキシ末端キャッピング基を含むことから、配列分析の前にキャッピング基またはキャップ付加アミノ酸残基を除去しなければならない場合もある。また、薄層クロマトグラフィー法を用いて、所望のペプチド化合物の1個以上の構成成分基または残基の真正を証明してもよい。
【0063】
本明細書に記載した様々なペプチド化合物は、本発明の組成物および方法において、SODおよび/またはCATをコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、これにより、抗酸化活性を発生させて、例えば、加齢の過程(老化)、疾病および各種薬物治療で生じるようなROSおよびフリーラジカルの望ましくない破壊的酸化活性を阻止するのに有用である。アミノおよび/またはカルボキシ末端キャッピング基を除外した好ましいペプチド化合物(すなわち、「コア配列」)は、長さが20アミノ酸より小さい。特に、このような好ましいペプチド化合物は、アミノおよびカルボキシ末端キャッピング基の不在下で、長さが18、15、13、9、5、4、さらには3アミノ酸より小さい。本発明の組成物および方法に有用なペプチドは、Asp Glyからなるアミノ酸配列を有する好ましいジペプチドのように、長さが3または2アミノ酸(コア配列)であってもよい。本明細書に記載されるアミノ末端および/またはカルボキシ末端キャッピング基は、このような好ましいペプチド化合物に付加することができるが、その際、キャッピング基が該ペプチド中の他の基と反応して有意または有毒な量の望ましくない環化または重合を起こさないことを条件とする。
【0064】
本発明は、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。
【0066】
さらに別の実施形態では、本発明は、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、Xaa1およびXaa2は、独立に、アスパラギン酸またはアスパラギンであり;R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;Xaa3は、不在またはGlyであり;Xaa4は、不在、Asp、またはPheであり;Xaa5は、不在、Ala、またはPheであり;Xaa6は、不在またはAlaであり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。上記式に従う好ましいペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、下記のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:

【0067】
本発明はさらに、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。
【0069】
本発明はまた、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、Xaa1は、不在またはSerであり;Xaa2は、不在またはLysであり;R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。上記式に従う好ましいペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、下記のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:

【0070】
本発明の別の態様は、下記式を有するペプチド化合物である:

(式中、Xaa1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr、またはTyrであり;Xaa2は、不在またはいずれかのアミノ酸であり;Xaa3は、Asp、Asn、Glu、Thr、Ser、GlyまたはLeuであり;R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。好ましくは、上記式のペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、上記式からなる(式中、Xaa2は、Val、Gly、GluおよびGlnからなる群より選択される)。さらに好ましくは、上記式のペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、下記のものからなる群より選択される:

【0071】
さらに別の実施形態では、本発明は、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、Xaa1は、いずれかのアミノ酸であり;Xaa2は、Gln、GlyまたはTryであり;R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。
【0072】
本発明はさらに、下記式を有するペプチド化合物を提供する:

(式中、Xaa1は、Asn、Asp、Glu、ThrまたはLeuであり;R1は、不在または該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり; R2は、不在または該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり;ここで、該ペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする)。好ましくは、上記式のペプチド化合物は、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、下記のものからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:Met Thr Leu;Met Thr Asp;Met Thr Asn;Met Thr Thr;Met Thr Glu;およびMet Thr Gln。
【0073】
好ましい実施形態では、本明細書に記載した式のいずれかに従うペプチド化合物は、R1アミノ末端キャッピング基を有する。さらに好ましくは、R1アミノ末端キャッピング基は、下記のものからなる群より選択される:リポ酸部分(還元または酸化形態のLip);グルコース-3-O-グリコール酸部分(Gga);1〜6個のリシン残基;1〜6個のアルギニン残基;式R3-CO-のアシル基(式中、COはカルボニル基であり、R3は1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜22個の炭素原子を有する炭化水素鎖であり、ここで、炭化水素鎖は、飽和または不飽和、および分枝または非分枝のいずれでもよい);ならびに、これらの組合せ。さらに好ましくは、アミノ末端キャッピング基がアシル基の場合、それはアセチルまたは脂肪酸である。さらに好ましくは、アミノ末端キャッピング基は、アセチル(Ac)、パルミチン酸(すなわち、パルミトイル基、Palm)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択されるアシル基である。別の実施形態では、アミノ末端キャッピング基は、アルギニンとリシンのあらゆる組合せからなるペプチドであり、その際、該ペプチドは、長さが2アミノ酸より小さくなく、6アミノ酸より大きくない。
【0074】
抗酸化酵素をコードする遺伝子をアップレギュレートし、かつ、本発明の組成物および方法に有用である、特に好ましいペプチド化合物としては、限定するものではないが、下記のものを含む群から選択されたアミノ酸配列を含むペプチド化合物が挙げられる:


【0075】
抗酸化酵素をコードする遺伝子をアップレギュレートし、かつ、本発明の組成物および方法に有用である、特に好ましいペプチド化合物は、Asp Gly Asp、Thr Val Ser、Asp Gly、およびGlu Alaからなる群より選択されたアミノ酸配列を含む。
【0076】
また、上に挙げた好ましいペプチド化合物は、本明細書に記載するアミノ末端キャッピング基および/またはカルボキシ末端キャッピング基のような、1個以上の末端キャッピング基を含んでいてもよい。抗酸化酵素をアップレギュレートし、かつ、本発明の組成物および方法に有用である、1個以上の末端キャッピング基を含む好ましいペプチド化合物としては、限定するものではないが、下記の式を有するペプチド化合物が挙げられる:


(式中、Palmは、パルミチン酸(パルミトイル)基であり、Lipは、酸化または還元形態いずれかのリポ酸基であり;Acはアセチル基であり;DHAはドコサヘキサエン酸基であり;Ggaは、グルコース-3-O-グリコール酸基であり、(Lys)nのnは1〜6である)。これらの好ましいペプチド化合物は、カルボキシ末端アミノ酸とのアミド結合による第一級アミノ基のようなカルボキシ末端キャッピング基を含んでいてもよい。
【0077】
本発明の一態様では、本発明のペプチド化合物の代謝により変換可能な形態が考えられ、その際、ペプチド化合物のアミノ酸配列中のアスパラギンおよびグルタミン残基は、細胞内で、その対応する酸形態、あるいは、生理的条件下でその塩、すなわち、アスパラギン酸(またはアスパラギン酸塩)およびグルタミン酸(またはグルタミン酸塩)に変換される。例えば、アミノ酸配列Asn GlyおよびGln Glyからなるペプチドは、投与および細胞による取り込み後に、それぞれ、Asp GlyおよびGlu Glyからなる対応ペプチドに代謝的に変換されると考えられる。従って、1個以上のアスパラギンおよび/またはグルタミン残基を含むアミノ酸配列を含む本発明の組成物または方法に有用なペプチド化合物は、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸が、それぞれアスパラギンおよび/またはグルタミン残基に置換された(またはその逆)対応するペプチド化合物の開示を提供する。
【0078】
生物学的および生化学的活性
本発明の組成物および方法で有用なペプチド化合物は、細胞および組織、特に哺乳動物細胞において、SODおよび/またはCATをアップレギュレートすると共に、AP-1を活性化およびアップレギュレートする能力を有するが、その際、上記細胞は、SODまたはCATタンパク質をコードする少なくとも1つの機能的遺伝子を含むものとする。機能的遺伝子は、特定の酵素をコードするだけでなく、コード配列内外の必要な遺伝情報を提供し、これにより、遺伝子の転写が起こり、mRNA転写物が機能性遺伝子産物に翻訳される。
【0079】
本明細書に記載した特定の好ましいペプチド化合物は、SODおよびCATの両酵素の機能的遺伝子が目的とする細胞内に存在すると想定して、両酵素をアップレギュレートすることができる。SODおよびCAT両方のアップレギュレーションにより、望ましくないROSおよびフリーラジカルを解毒する効力を増強することができる。特定の理論に拘束されるわけではないが、SODアップレギュレーションの結果、SODタンパク質のレベルが増加すると、CATレベルにも増加があれば、優れた抗酸化効力が達成されると考えられる。CAT遺伝子のアップレギュレーションにより、増強したSOD活性により発生し得る更なる過酸化水素およびその他のROSまたはフリーラジカルを中和および解毒する能力が高くなる。SODおよびCAT両方のアップレギュレーション活性を有する本明細書に記載されたペプチド化合物は、細胞および組織に、ROSおよびフリーラジカルを解毒する増強された抗酸化酵素活性の完全な相補体を提供する。例えば、組織培養中の哺乳動物細胞に、SODおよびCAT両方のアップレギュレーション活性を有する本明細書に記載されたペプチド化合物を接触させると、典型的には、イムノブロッティングにより検出し、未処理細胞と比較して、SODおよびCAT mRNA転写物のレベルが少なくとも約2倍(さらに増加するほど好ましく、少なくとも約3倍、4倍、および6〜8倍)増加するとともに、SODおよびCATタンパク質のレベルが約2倍(さらに増加するほど好ましく、少なくとも約3倍、4倍、6倍、8倍、10倍、および12〜14倍)増加する。このようなSODおよびCAT遺伝子発現の増加により、有害な副作用を伴なうことなく、ROSおよびフリーラジカルの解毒能力が有意に増強された細胞が提供される。
【0080】
SOD、CATおよびAP-1をコードする遺伝子の発現は、様々な方法により測定することができる。標準的酵素アッセイを用いて、細胞および組織抽出物または生物体液中のSODおよびCATのレベルを検出することができる(Fridovich, Adv. Enzymol., 41:35-97(1974);BeyerおよびFridovich, Anal. Biochem., 161:559-566(1987))。さらに、SOD、CATおよびAP-1に対する抗体は入手可能であり、容易に作製することもできる。各タンパク質に特異的なこのような抗体を用いて、標準的イムノブロット(例えば、ウェスタンブロット)およびその他の免疫学的技法により、様々な混合物、細胞抽出物、もしくはその他の生物材料のサンプル中のSODおよびCATのレベルを測定することができる。また、目的とする細胞の翻訳機構に欠陥の証拠がなければ、SOD、CATおよびAP-1をコードする遺伝子の発現レベルは、特定のmRNA種を測定するための標準的ノーザンブロットまたは標準的ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、RT-PDR)を用いて、mRNA転写物のレベルを検出することにより、測定することも可能である。さらに、AP-1の活性およびその核への移動は、標準的な電気泳動移動度シフトアッセイ(ENSA)を用いて、決定することができ、このアッセイでは、細胞核に存在するAP-1タンパク質の量を、該タンパク質が真核生物遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域(AP-1によって結合されることが知られている)に特異的なDNA配列を含むDNAプローブ分子と複合体を形成する能力により、検出する。典型的には、AP-1タンパク質DNA複合体は、非結合DNAより低い移動度で移動する。AP-1転写因子複合体は、c-Junおよびc-Fosのような他の因子と、AP-1認識配列または部位を含むDNA分子との会合により形成される。次に、このようなタンパク質−DNA分子複合体の形成により、混合物またはサンプル中のAP-1の存在を検出する。このような複合体の形成の結果、ゲル中の非複合体化DNAの位置からの電気泳動移動度に観測可能なシフトが起こる。
【0081】
本発明の組成物および方法で有用な他の好ましいペプチド化合物はまた、AP-1転写因子のレベルをアップレギュレートすることが可能である。例えば、本明細書に記載するペプチド化合物を組織培養中の哺乳動物細胞に接触させると、EMSAにより決定されるAP-1タンパク質レベルに、少なくとも約2倍、また、さらに増加するほど好ましく、少なくとも約6倍、8倍、10倍、12倍、14倍、16倍、18倍、および20〜60倍の増加が起こる。このようなAP-1遺伝子発現のアップレギュレーションによって、AP-1依存性遺伝子発現を増強させることができる。
【0082】
治療および予防用途
本発明のペプチド化合物は、ヒトおよびその他の動物などの動物の細胞および組織中のSODおよび/またはCATをアップレギュレートする。好ましくは、本発明のペプチドは、SODおよびCATの両方をアップレギュレートする。前述したように、SODおよびCATは、ROSおよびフリーラジカルを反応性および有害性が低い化合物に還元することにより、これら分子を解毒することができる身体の主要な酵素抗酸化活性の成分である。様々な疾病状態の進行および薬物の副作用に対するROSおよびその他のフリーラジカルの寄与は現在よく知られるところである。
【0083】
例えば、ROSおよびフリーラジカルのレベル増加が、虚血後の再灌流中に細胞および組織に生じることがわかっている。このようにしてROSおよびフリーラジカルのレベルが増加すると、すでにストレスを受けているか衰弱した臓器または組織に相当の損傷を与える恐れがある。SODおよび/またはCATをアップレギュレートする本発明のペプチド化合物を用いることにより、卒中、心臓発作、または腎疾患および腎移植などの疾病や状態に起こる再灌流損傷を治療することができる。卒中や心臓発作のように、虚血がすでに起こっている場合には、本明細書に記載するペプチド化合物を個体に投与することにより、血液や、影響を受けた組織または臓器にすでに存在する増加したROSおよびフリーラジカルを解毒する。あるいは、臓器移植のように、虚血が予想される場合には、手術または虚血事象の前に、予防処置として本明細書に記載するペプチド化合物を投与することができる。
【0084】
主な用途は、虚血−再灌流損傷の治療であるが、本明細書に記載するペプチド化合物を用いて、望ましくないレベルのROSおよびフリーラジカルに関連するあらゆる疾病または状態を治療したり、あるいは、望ましくないレベルのROSおよびフリーラジカルによって起こるあらゆる疾病、障害または状態を予防することもできる。さらに、本発明によれば、本明細書に記載するペプチド化合物を投与し、上記以外の様々な疾病および状態に関連する増加したROSおよびフリーラジカルの治療または予防処置を提供することができる。このような疾病および状態として、限定するものではないが、下記のものが挙げられる:早産児における酸素毒、組織および臓器の熱傷および物理的外傷、敗血症性ショック、多外傷性ショック、頭部外傷、脳外傷、脊椎損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、加齢に関連するROSおよびフリーラジカルの増加、老化、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびその他の癌、ダウン症、関節炎、黄斑変性、精神分裂病、てんかん、放射線損傷(紫外線誘発性皮膚損傷など)、ならびに、ROSおよびフリーラジカルの薬物誘発性増加。
【0085】
ROSおよびフリーラジカルの形成による酸化ストレスは、加齢とともに漸進的に増加する(例えば、Mecocci, P.ら、Free Radic. Biol. Med., 28:1243-1248(2000)を参照)。これは、ラット組織(Erdincler, D.S.ら、Clin. Chim. Acta, 265:77-84(1997))、および高齢のヒト患者の血液細胞(Congi, F.ら、Presse. Med., 24:1115-1118(1995))における過酸化脂質形成の増加を調べることにより、検出されている。近年の研究(Niki, E., Intern, Med., 39:324-326(2000))では、ROSおよびフリーラジカルによる組織の損傷の増加は、加齢の過程で起こる抗酸化酵素SODおよびCATのレベルの減少に起因する可能性があることが報告されている。例えば、マウスのゲノムに余剰SOD遺伝子を挿入することにより作製したトランスジェニック動物は、ROSおよびフリーラジカルによる損傷のレベルが低下していることが認められた。このような動物は、寿命も延びている。さらに近年、SOD活性を模擬する少量のマンガンポルフィリン化合物を投与することにより、線虫Caenorhabditis elegansの寿命が44%延びたことが証明されている(S. Melowら、Science, 289;1567-1569(2000))。従って、SODおよび/またはCAT遺伝子の発現をアップレギュレートして、抗酸化酵素のレベルを増加させることができる本明細書に記載するペプチド化合物は、加齢に伴なって起こるROSおよびフリーラジカルのレベル上昇による組織損傷の増加および寿命の短縮を予防および/または阻止する方法にも十分に適している。
【0086】
現在の治療用途に用いられる多様な薬物は、組織特異的な有毒副作用を発生するが、これは、ROSおよびその他のフリーラジカルのレベル上昇と相関している。このような薬物として、神経弛緩薬、抗生物質、鎮痛薬、およびその他のクラスの薬物が挙げられる。このような薬物に誘発された毒性の影響を受ける組織には、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓および血液など、1以上の主要臓器および組織が含まれる可能性がある。
【0087】
薬物の最も危険な副作用の1つが、神経弛緩薬であるクロザピンについて報告されているが、これは、抗精神分裂病治療活性として大きな効能を有する最初の薬物であった(Somaniら、In Oxidants, Antioxidants And Free Radicals(S.I. BaskinおよびH. Salem編)(TaylorおよびFrancis、ワシントンD.C.、1997)、pp.125-136を参照)。クロザピンで治療した患者の約1〜2%が、ROSの生成と相関する無顆粒球症を発現した(Fischerら、Molecular Pharm., 40:846-853, 1991)。本発明によれば、本明細書に記載したペプチド化合物を、クロザピン治療患者に投与することにより、SODおよび/またはCATをアップレギュレートして、ROSおよびその他のフリーラジカルの望ましくない有害な増加を阻止し、これによって、無顆粒球症の発現の危険性を低減することができる。
【0088】
これ以外に、神経弛緩薬を受ける精神分裂病患者の副作用として、遅発性ジスキネジーがあり、これは、様々な制御不能な口、顔、および/または躯幹運動によって現われる衰弱性疾患である。多くの患者、特に、長期入院患者は、この不運な薬物誘発性疾患により、永続的な障害に苦しむ。遅発性ジスキネジーに関する以前の研究では、ドーパミン作動性ニューロンの欠損に関心が集まった(例えば、MorgansternおよびGlazer, Arch. Gen. Psychiatr., 50: 723-733(1993)を参照)。しかし、さらに近年の研究では、このような患者の脳における主な欠陥は、線状体のドーパミン作動性ニューロンへのシナプス前入力での刺激毒性(excitotoxic)アミノ酸グルタミン酸の過剰生成であることがわかった。注目すべきことに、このグルタミン酸の過剰生成は、ROSおよびフリーラジカルの高増加を引き起こすことにより、ドーパミン細胞に対し刺激毒性作用を発生する(Tsaiら、Am. J. Psychiatr., 155: 1207-1253(1998)を参照)。従って、本発明のペプチド化合物を、神経弛緩薬を受ける患者に投与することにより、SODおよび/またはCATをアップレギュレートして、抗酸化活性を増強し、これによって、増加したレベルのROSおよびその他のフリーラジカルによる酸化作用を阻止することができる。
【0089】
本発明の方法によれば、ROSおよびその他のフリーラジカルのレベル増加の望ましくない副作用に相関する治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に、本明細書に記載したペプチド化合物を個体に投与することができる。このような薬物には、限定するものではないが、表1に記載するもの(Somaniら、1971を参照)が挙げられ、同表には、発現される既知の毒性および副作用も併せて載せる。
【0090】
【表1】

【0091】
医薬への適用
本発明の医薬組成物は、薬学上許容される任意の成分、賦形剤、担体、アジュバントもしくはビヒクルとともに、本発明のペプチド化合物のいずれかおよび薬学上許容されるその塩を含む。
【0092】
本発明の医薬組成物を、その他の治療用、予防用もしくは診断用薬、特に治療用ホルモンペプチドと同様の手法で、ヒトを含む哺乳動物に投与することができる。投与すべき用量、および投与様式は、年齢、体重、性別、患者の症状および遺伝的因子を含む、各種の要因に応じて異なり、最終的には主治医もしくは獣医によって決定されることとなる。一般的には、診断の感度もしくは治療効能のために必要とされる用量は約0.001〜25.0μg/kg (体重)の範囲となる。
【0093】
本発明のペプチド化合物の薬学上許容される塩として、例えば薬学上許容される無機および有機の酸ならびに塩基から誘導されるものが含まれる。好適な酸の例として以下の酸が含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、パモ酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびベンゼンスルホン酸。シュウ酸などの、それ自体は薬学上許容されないその他の酸でも、本発明の化合物および薬学上許容されるその酸付加塩を取得する際の、中間体として有用な塩の調製において利用することができる。適切な塩基から誘導される塩として、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウムおよびN-(C1-4アルキル)4+塩が含まれる。
【0094】
本発明はまた、本明細書に開示したペプチド化合物の任意の塩基性窒素含有基の「第四級」化をも想定している、ただし、この第四級化が、SODおよびCAT、さらには必要ならばAP-1をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、そのペプチド化合物の能力を破壊しない場合に限る。こうした第四級化は、最終目的が陽性荷電残基のみを含有するペプチド化合物の使用の場合に、特に望ましい。前記のように、荷電アミノ酸残基が本明細書に記載するペプチド化合物中に存在する場合の、最も好ましい本発明の実施形態において、それらはすべて塩基性(正荷電)であるかまたはすべて酸性(負荷電)であって、保存もしくは使用中の環状ペプチドの形成を防止している。典型的には、環状形態のペプチド化合物は不活性で、潜在的に毒性である。したがって、第四級化ペプチド化合物が、塩基性アミノ酸を含有するペプチド化合物の好ましい1形態である。さらにより好ましいのは、カルボキシ末端のカルボキシル基がアミドに転換されて、このカルボキシル基が任意の遊離アミノ基と反応して環状化合物を形成するのを防止している、第四級化ペプチド化合物である。当業者に知られた任意の薬剤によって、いかなる塩基性窒素でも第四級化することができる。これらとして例えば、以下のものが含まれる:塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどの低級ハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルを含む硫酸ジアルキル;塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物;ならびに臭化ベンジルおよびフェネチルを含むハロゲン化アラルキル。こうした第四級化、または酢酸および塩酸などの酸によって、水もしくは油に可溶性もしくは分散性の生成物を取得することができる。
【0095】
選択的生物学的性質、特にSODおよび/またはCATおよび/またはAP-1をアップレギュレートする能力を強化するために、適切な機能付加によって、本発明のペプチド化合物を改変してもよいものと理解すべきである。こうした改変は当技術分野で知られており、これらとして以下のものが含まれる:ペプチド化合物の所定の生物学的系(例えば脳、中枢神経系、血液、リンパ系)内への貫通もしくは被輸送能力の増大、経口利用性の増大、注射による投与を可能にするための溶解性の増大、ペプチド化合物の代謝の変更、ならびにペプチド化合物の排出率の変更。その外に、ペプチド化合物をプロドラッグ形態に改造して、そのプロドラッグに関する代謝もしくはその他の生化学的経路の作用の結果として、患者の体内で所望のペプチド化合物が創製されるようにしてもよい。こうしたプロドラッグ形態は典型的にはin vitroアッセイでは活性をほとんどまたは全く表示しない。プロドラッグ形態の例のいくつかとして、ケトンもしくはアルデヒト基を含有する化合物のケタール、アセタール、オキシム、およびヒドラゾン形態が含まれる。プロドラッグ形態のその他の例として、ヘミケタール、ヘミアセタール、アシルオキシケタール、アシルオキシアセタール、ケタールおよびアセタール形態が含まれる。
【0096】
本発明の医薬組成物に使用することができる、薬学上許容される担体、アジュバントおよびビヒクルとして、限定するわけではないが以下のものが含まれる:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などのバッファー物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、3ケイ酸マグネシウムなどの塩または電解質、ポリビニルピロリドン、セルロースを基礎とする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよびラノリンなど。
【0097】
本発明の医薬組成物を各種の経路もしくは様式によって投与することができる。これらとして、限定するわけではないが、非経口、経口、気管内、舌下、経肺、局所、経直腸、経鼻、バッカル、舌下、経腟、またはインプラントレザバー経由が含まれる。インプラントレザバーは機械的、浸透圧またはその他の手段によって機能させることができる。本明細書で解釈され、かつ使用される用語「非経口」には、静脈内、頭蓋内、腹腔内、脊椎傍、関節周囲、骨膜内、皮下、皮内、動脈内、筋内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄膜内および病変部内注射または注入技法が含まれる。こうした組成物を好ましくは非経口投与用に、最も好ましくは静脈内、頭蓋内もしくは動脈内投与用に製剤化する。一般的に、また特に投与が静脈内もしくは動脈内の場合は、医薬組成物をボーラスとして、時間間隔をとった2回以上の投与として、または一定もしくは非線形流速注入として投与する。
【0098】
医薬組成物は、例えば注射用の無菌水性もしくは油脂性懸濁液として、無菌の注射用調製品の形態とすることができる。この懸濁液は好適な分散剤もしくは湿潤剤(例えばTween80など)および懸濁剤を使用して、当技術分野で知られた技法にしたがって製剤化することができる。無菌注射用調製品は、非経口的に許容される非毒性の希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射液もしくは懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としてもよい。使用が可能な許容されるビヒクルおよび溶媒として、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。その外に、溶媒もしくは懸濁用媒質として、無菌の不揮発性油が通常使用される。この目的のためには、合成モノもしくはジグリセリドを含む、いかなるブランドの不揮発性油でも使用することができる。注射剤の調製において、オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体が有用であり、またオリーブ油もしくはひまし油などの天然の薬学上許容される油、特にそのポリオキシエチル化物も有用である。これらの油溶液もしくは懸濁液に、Pharmacoplia Halselicaに記載されたものなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤を含ませてもよい。
【0099】
本発明の医薬組成物を経口用に許容されるあらゆる投与剤型として経口投与することができる。これらとして限定するわけではないが、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、丸剤、水性もしくは油脂性懸濁液剤および溶液剤、シロップ剤またはエリキシル剤が含まれる。経口用途の錠剤の場合、普通に使用される担体としてラクトースおよびコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与用には、有用な希釈剤としてラクトースおよび乾燥コーンスターチがある。カプセル剤、錠剤、丸剤およびカプレット剤を遅延もしくは持続放出用に製剤してもよい。
【0100】
水性懸濁液を経口投与する場合、ペプチド化合物を乳化剤および/または懸濁剤と配合するのが有利である。所望ならば、ある種の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を添加してもよい。経口投与用製剤は活性成分を10%〜95%、好ましくは25%〜70%含む。好ましくは、経口投与用の医薬組成物は、消化器系によるペプチド化合物の加水分解は防止または抑制されるが、血流中への吸収は可能になる混合物中の、本発明のペプチド化合物を供給する。
【0101】
本発明の医薬組成物を膣もしくは直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、室温では固体であるが、体温では液体であることによって、活性成分の放出に関わる身体部域では融解する好適な非刺激性賦形剤と、本発明の化合物とを混合することによって、調製することができる。こうした物質として、限定するわけではないが、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。坐薬による投与のための製剤は活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%含む。
【0102】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の処置が、創傷または手術中などの局所適用によって接近し得る部位もしくは器官に関わる場合に有用である。局所適用のためには、担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含有する好適な軟膏として、医薬組成物を製剤化することができる。本発明のペプチド化合物の局所投与用の担体として、限定するわけではないが、鉱物油、液状石油(liquid petroleum)、白色石油(white petroleum)、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれる。あるいは、薬学上好適な担体中に懸濁または溶解させたペプチド化合物を含有する、好適なローションまたはクリームとして、医薬組成物を製剤化することができる。好適な担体として、限定するわけではないが、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。適切な場合、医薬組成物をゼリー剤、ゲル剤もしくは軟化剤として、局所またはその他の適用のために製剤化することができる。本発明の医薬組成物を直腸坐剤によるかまたは好適な浣腸剤中で、下部腸管に局所適用することもできる。局所投与は経皮パッチによって達成することもできる。これは健康な皮膚組織を維持し、また酸化による皮膚の損傷(例えばUVもしくは放射線に誘発された皮膚損傷)を回復させるために有用である。
【0103】
本発明の医薬組成物を経鼻投与することができる。この場合、鼻の粘膜を経由するか、または肺中への吸入によって、吸収が生じる。こうした投与様式には典型的に、組成物を粉末、溶液もしくは液状懸濁物として準備し、次にこれを気体(例えば空気、酸素、窒素その他、またはそれらの組合せ)と混合して、液滴もしくは粒子のエアロゾルもしくは懸濁物を生成させることが必要となる。こうした組成物は医薬製剤の分野で周知の技法にしたがって調製されるが、ベンジルアルコールもしくはその他の好適な保存剤、生物学的利用能を強化するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野で既知のその他の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0104】
本発明の医薬組成物を、その投与剤型および投与様式に適切な各種の方法でパッケージすることができる。これらとして、限定するわけではないが、バイアル、ビン、カン、パケット(packet)、アンプル、カートン、柔軟性容器、吸入器、およびネブライザーが含まれる。これらの組成物を同一の容器から単回または多数回投与するようにパッケージすることができる。投与の直前に混合するようにした、乾燥粉末状または凍結乾燥形態の組成物と適切な希釈剤の両方を含む、1回以上の投与のためのキットを提供することが可能である。医薬組成物を、単回用の充填済み注射器、またはオートインジェクターおよび無針ジェットインジェクター用のカートリッジ中にパッケージすることもできる。
【0105】
多数回使用用パッケージ製造には、細菌、真菌などの増殖を防止するが、患者に投与したとき毒性ではない濃度での、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムなどの抗微生物剤の添加を必要とする。
【0106】
製薬業界において現在使用され、また当業者に公知である、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)に一致することであるが、医薬品と接触するかこれを含むすべての成分を殺菌しなければならず、また業界基準にしたがって定期的に無菌性について試験しなければならない。殺菌の方法として、限外濾過、オートクレーブ、乾式もしくは湿式加熱、エチレンオキサイドなどの気体への曝露、次亜塩素酸ナトリウム(ブリーチ)を含む酸化剤などの液体への曝露、紫外線光、X線もしくはガンマ線などの高エネルギー電磁放射線への曝露および電離性放射線への曝露が含まれる。所望の生物学的機能、すなわち問題の医薬物質であるSOD、CATもしくはAP-1をアップレギュレートする能力を有意に変更することなく、最も有効な殺菌効果をもたらす、殺菌方法の選択は、当業者がなし得るところである。水溶液もしくは懸濁液である医薬組成物のためには限外濾過が好ましい殺菌方法である。
【0107】
投与量、投与剤型、投与様式、組成物などの詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版., Alfonso R.Gennaro, 編. (Mack Publishing Co., Easton, PA 1990)などの標準的薬学指導書中で考察されており、これを参照として本明細書に組み入れる。
【0108】
当技術分野で周知のように、ペプチドの構造および生物学的機能は、温度、pH、酸化および還元剤、凍結、振盪ならびに剪断応力などの化学的および物理的環境条件に対して感受性がある。分解に対するこの固有の感受性のため、薬剤が製造され、パッケージされ、流通され、保存され、調剤されて適格な医師によって投与されるまでの時間、医薬として使用するペプチド化合物の生物学的活性が保持されることを確実にする必要がある。医薬タンパク質を安定化して、その生物学的能力および有効性を保持するために、多くの技術的手法が開発されてきたので、こうした安定化技術を本発明の組成物および方法のペプチド化合物に応用することができる。これらとして、以下のものが含まれる:
a) 凍結乾燥および真空凍結乾燥(本明細書に参照として引用する、Carpenterら、Pharm.Res., 14(8):969(1997)を参照されたい);
b) ペプチドもしくはタンパク質の水溶液もしくは懸濁液への「安定化剤」の添加。例えば、米国特許第5,096,885号には、ヒト成長ホルモンに、濾過、バイアルへの充填、および冷蔵もしくは真空凍結乾燥の工程中にこのタンパク質を安定化するための手段として、グリシン、マンニトール、pHバッファーおよび非イオン界面活性剤、ポリソルベート80の添加が開示され、米国特許第4,297,344号には、選択されたアミノ酸および炭水化物の添加による、凝固因子IIおよびVIII、抗トロンビンIIIならびにプラスミノーゲンの熱に対する安定化が開示され、米国特許第4,783,441号には、特定のpH範囲内での、界面活性物質の添加による、水溶液中のインスリンなどのタンパク質の界面での変性の防止方法が開示され、そして米国特許第4,812,557号には、ヒト血清アルブミンを使用するインターロイキン-2の安定化方法が開示されている;
c) ペプチド化合物を凍結保護物質と混合して非常に低い温度(例えば-70℃)で凍結保存する、凍結/融解法;
d) 場合によってグリセロールなどの凍結保護性添加剤を含ませた、非凍結冷蔵(例えば4℃未満);
e) 例えば米国特許第5,098,893号に記載されたような、ガラス化した非晶質状態での保存;
f) 結晶状態での保存;ならびに
g) リポソームまたはその他のミセル中への組み込み。
【0109】
天然源からの精製組成物および食物補助剤
本発明は、生物(すなわち動物、植物もしくは微生物)から取得した、天然源からの精製組成物を含む、(「機能性食品」とも称される)食物補助剤としての使用のための組成物、およびその組成物の製造方法をも提供する。この精製組成物は、細胞もしくは組織内でSODおよび/またはCATなどの抗酸化酵素をコードする1種以上の遺伝子の発現をアップレギュレートする、本明細書に記載した内在性ペプチド化合物を含有する。本発明のペプチド化合物はある種の天然源から高度に精製された形態で取得することができるが、天然物材料中のこうしたペプチド化合物のレベルはかなり低いか、またはさらにはこうした天然源から精製した組成物中においてすら、ごく微量の検出量しか存在しないこともある。したがって、有用な量の精製ペプチド化合物を取得するためには、通常はin vitro自動ペプチド合成法を使用して、本明細書に記載のペプチド化合物を合成する方がより経済的である。しかし、(SODおよび/またはCATなどの)抗酸化酵素をアップレギュレートする能力がある化合物を微量でも含有する天然源からの精製調製品は、経口機能性食品市場で販売するための製品を生産する際に有用である。したがって、本発明の食物補助剤組成物に、SODおよび/またはCATなどの抗酸化酵素をコードする1種以上の遺伝子の発現をアップレギュレートする、外部から供給された本明細書に記載したペプチド化合物を含ませることができる。本発明の食物補助剤を製造するのに使用される精製組成物の好ましい天然源として、シカもしくはヘラジカなどの反芻動物の未熟な角袋、ならびに根、茎、葉、花、薬草混合物および茶などの各種の植物組織が含まれる。本発明の食物補助剤を調製する際に有用な、好ましい天然植物起源はwuzi yanzong薬草混合物である。wuzi yanzong薬草混合物は、個体に多くの有益な効果を与えることが報告されている。これらとして、SODおよび血液グルタチオンペルオキシダーゼなどのある種の抗酸化酵素のレベルの上昇が含まれるので、市場性がある本発明の食物補助剤を製造する際に使用するための望ましい天然源となる(例えば、Huangら、Chung Kuo Chung Yao Tsa Chih, 16:414-416, 447(1991);Wangら、Chung Kuo Chung Hsi I Chieh Ho Tsa Chih, 12:23-25, 5(1992);Wangら、Chung Kuo Chung Hsi I Chieh Ho Tsa Chih, 13:349-351, 325-326(1993);Liら、Chung Kuo Chung Yao Tsa Chih, 19:300-302(1994)を参照されたい)。
【0110】
本発明の食物補助剤として、本明細書に記載する内在性ペプチドを含む天然源の精製組成物を含むものがある。本発明の別の食物補助剤は、1種以上の外部から供給された本明細書に記載するペプチド化合物と配合した、内在性ペプチド化合物を含有する天然源の精製組成物を含む組成物である。この後者のタイプの製剤の利点は、天然源の精製組成物に十分な量の外部から供給された本明細書に記載するペプチド化合物を配合して、その食物補助剤を摂取するかまたは投与される個体中で所望のレベルもしくはレベル範囲のアップレギュレートされた抗酸化酵素をもたらす、食物補助剤を製造することができる点である。したがって、本発明の食物補助剤組成物には、天然源の精製組成物からの内在性ペプチド化合物とともに、製剤法によっては、本明細書に記載する外部から供給されるペプチド化合物からなる、本明細書に記載する1またはそれ以上の別種のペプチド化合物を含ませることができる。本発明によれば、食物補助剤に、内在性ペプチドおよび外部から供給されたペプチド化合物であって、同一または別種のペプチド化合物を含ませることができる。
【0111】
本発明の好ましい食物補助剤は以下の式を含むペプチド化合物を含む。

[式中、Xaa1およびXaa2はそれぞれ独立してアスパラギン酸またはアスパラギ ン;R1は存在しないか、ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基;Xaa3は存在しないか、Gly;Xaa4は存在しないか、AspまたはPhe;Xaa5は存在しないか、AlaまたはPhe;Xaa6は存在しないか、Ala;R2は存在しないか、ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基であり、またここでペプチド化合物は抗酸化酵素の1つをコードする1遺伝子の発現をアップレギュレートする]、ならびに、

[式中、Xaa1はAsp、Asn、Glu、Gln、ThrもしくはTyr;Xaa2は存在しないか、 任意のアミノ酸;Xaa3はAsp、Asn、Glu、Thr、Ser、GlyもしくはLeu;R1は存在 しないか、アミノ末端キャッピング基;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基であり、またここでペプチド化合物は抗酸化酵素の1つをコードする1遺伝子の発現をアップレギュレートする]。
【0112】
本発明の好ましい食物補助剤組成物は、以下の群から選択される抗酸化酵素の1つをコードする少なくとも1つの遺伝子の発現をアップレギュレートする1種以上のペプチド化合物を含む。


本発明の食物補助剤の製造に有用な特に好ましいペプチド化合物はアミノ酸配列Asp Glyを含む。
【0113】
本発明の食物補助剤組成物として、アミノ末端キャッピング基および/またはカルボキシ末端キャッピング基を有する、本明細書に記載の1種以上のペプチド化合物を含むものがある。好ましくはアミノ末端キャッピング基は、還元または酸化されたリポ酸部分(Lip)、グルコース-3-O-グリコール酸(Gga)部分、1〜6個のリシン残基、1〜6個のアルギニン残基、式R3-CO-で示されるアシル基(式中、COはカルボニル基を表し、R3は1〜25炭素を持つ飽和または不飽和(モノもしくはポリ不飽和)炭化水素鎖である)およびそれらの組合せからなる群より選択される。さらにより好ましくは、アミノ末端キャッピング基はアシル基であって、アセチル基、パルミトイル基、またはドコサヘキサエン酸基(DHA)である。別の好ましい実施形態において、本発明の食物補助剤中に存在するペプチド化合物は第一級もしくは第二級アミンからなる群より選択されるカルボキシ末端キャッピング基を含む。
【0114】
本明細書に記載の内在性ペプチド化合物を1種以上含有する組成物は、当技術分野で利用し得る各種の方法およびプロトコルを使用して天然源から精製することができる。これらとしては、遠心分離による分画、濃縮、ゲル濾過クロマトグラフィー、有機溶媒抽出等がある。粉末として市販されている鹿の未熟な袋角、または乾燥もしくは液状薬草混合物として市販されているwuzi yanzong薬草混合物などの、元々の天然源から精製した組成物を取得するために、当業者はこうした方法を使用している。望ましい精製組成物は典型的には本明細書に記載の内在性ペプチド化合物について富化(さらに濃縮)される。こうした精製組成物を経口食物補助剤として市場に出すことができる。あるいは、天然源の精製組成物を外部から供給した本明細書に記載の合成ペプチド化合物と配合して、食物補助剤を製造することもできる。本発明の食物補助剤組成物にさらに、摂取する個体の健康によい効果があると目論まれるラザロイド(lazaroid)、ビタミン、酵素およびペプチドなどの、その他の市場性がある目的の成分を含有させてもよい。その上、本発明の食物補助剤組成物に、食物補助剤もしくは製薬業において普通に使用される結合剤、充填剤、粉末、シリカもしくはその他の不活性成分を1種以上含ませて、丸剤、カプセル剤、舌下錠、液剤およびシロップ剤など(上記の医薬組成物の節を参照されたい)の、市販用形態の栄養補助組成物を製造することができる。しかし、医薬品とは異なって、食物補助剤組成物を製造するために使用するペプチド化合物およびその他の成分は典型的には連邦規制当局によって管理あるいはその他の規制をされない。
【0115】
本明細書に記載された各種の方法またはそれらの等価方法のいずれによっても、天然源の精製組成物を、1種以上のペプチド化合物の存在についてアッセイし、またSODおよび/またはCATをコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする活性について、in vitroもしくはin vivo哺乳動物細胞中でアッセイすることができる。こうした分析から、栄養補助剤を摂取した個体にロット間で同一または実質的に同一の抗酸化活性を提供するための、適切な量のペプチド化合物を含有する、経口食物補助剤製品の規格化されたロットの終始一貫した生産を可能にする、情報が提供される。規格化された量の目的の成分を含む同一の経口食物補助剤製品のロットを終始一貫して生産および供給できるということは、食物補助剤市場においてきわめて望ましい。なぜならば、製品の一貫性は特定の製品に対する消費者の信頼および顧客を確立する上で重要な役割を果たすからである。
【0116】
本発明のその他の態様は、以下の実施例において、さらに理解され、また例示されるであろう。以下の実施例に含まれる特定のパラメーターは本発明およびその各種の様相の実施を例示することを意図するものであって、本発明の範囲を何らかの意味で限定するために提供するものではない。
【実施例】
【0117】
実施例
実施例1:代表的なペプチド化合物の合成
固相Merrifield合成(Merrifield, J.Am.Chem.Soc., 85:2149-2154(1963))によって、以下の代表的なペプチド化合物を合成した。


【0118】
アミノ末端キャッピング基は角括弧つきの基「[DHA]-」、「[Lip]-」、および「[Ac]-」によって表示され、これらは表示したペプチド化合物のアミノ末端アミノ酸残基のαアミノ基にアシル化によって結合している、それぞれ全シス-ドコサヘキサエン酸部分、リポ酸部分、およびアセチル部分を表す(Shashoua and Hesse, Life Sci.58:1347-1357(1996))。
【0119】
これらのペプチドは標準的手法を使用して合成した。簡単に述べると、固相Merrifield工程(Merrifield,R.B., J.Am.Chem.Soc., 85:2149-2154(1963))を使用して、ペプチド化合物を合成した。この方法で、ポリマー樹脂に結合した特定のアミノ酸配列のペプチドを合成することができる。次に、トリフルオロ酢酸(TFA)での処理によって、新しく合成された各ペプチドを樹脂から遊離させた。生成したトリフルオロ酢酸ペプチド塩を標準的手法にしたがってエーテル沈殿により精製した(E.Groos and Meienhofer,"The peptides, analysis, synthesis, biology, vol.2, (Academic Press, New York 1983)参照)。
【0120】
N-末端置換ペプチド(すなわち、アシルアミノ末端キャッピング基を含有するペプチド)については、固相Merrified合成(上記参照)を使用して、ブロックされた側鎖を有するように、各ペプチドを合成した。次に結合したペプチドをアルゴン雰囲気下、4-ジメチルアミノピリジンの存在する中で、当モル量の以下の酸:酢酸、DHAもしくはリポ酸、の1つの無水物で処理した。反応を約3時間実施して、N-末端カップリングを形成させた。ペプチドの単離の前に、完全なN-末端カップリングの確証を得た。これは、標準的手法(E.Kaiserら、Anal.Biochem., 34:595-598(1970))を使用して、樹脂に結合したペプチドのニンヒドリン染色特性をモニターすることによって、確定した。次にTFAでの処理によって樹脂からN-末端カップリングした(キャップ)ペプチド分子を遊離させ、冷エーテルでの沈殿後、溶離液としてメタノール性HCl(50:50)を使用するHPLCによって、精製した。最終ペプチド製品は凍結乾燥後、白色固体だった。アミノ酸分析、HPLC上での単一ピークとしての泳動、およびマススペクトロメトリーによる分子量の決定、によって、構造を確認した。大部分の用途のために、ペプチド化合物からTFAを完全に除去することを必須の要件とした。これは、ペプチドを氷酢酸に反復溶解した後、ロータリーエバポレーターによる真空濃縮によって、達成された。TFAの完全な不在は、マススペクトロメトリーによって確定した。
【0121】
実施例2:ペプチド化合物 CMX-9236、CMX-9963およびCMX-9967による哺乳動物細胞中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)およびカタラーゼ(CAT)のアップレギュレーション
SODのアップレギュレーション
酵素、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をコードする特定のmRNAのアップレギュレーションを調べるため、RT-PCR法(例えば、Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, (Academic Press, San Diego, 1990)参照) を使用した。
【0122】
25μg/mlのゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補充したDalbecco改変Eagle培地で新生ラット脳皮質細胞を増殖させることによって、皮質一次培養物を取得した。Cornell-Bellら、Science, 247:470-473(1990)およびCell Calcium, 12:185-204(1991)に記載されているように、ラット脳のE21皮質から細胞を単離し、1x105/mlの密度でプレーティングし、そして37℃、空気および5% CO2を含 有する雰囲気中で、4〜5日以内に密集化するように増殖させた。培養物を20 mlフラスコ中で単層となるように培養し、その後、SODおよびCATに関する遺伝子のアップレギュレーション、ならびに転写因子AP-1の細胞核への移動に対するペプチドの影響を研究するために、各種濃度のペプチドに曝露した。
【0123】
ラット脳皮質細胞の一次培養物を100 ng/mlのペプチド化合物 CMX-9236とともに、0〜48時間インキュベートした。標準的方法(Angelら、Cell 49:729-739, 1987)にしたがって、溶解細胞の細胞質画分からmRNAを単離した。RT-PCRプロトコルにしたがって、20ヌクレオチド長のヌクレオチド鎖の、一方はセンス鎖、もう一方はアンチセンス鎖の2本の鎖とともに、このRNAをインキュベートした。この配列は、スーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD-1)に独特で、1イントロンセグメントの範囲の配列を選択したものである。これらはBLASTプログラムシステム(Nucl.Acids Res.25:3389-3402, 1997)によって、独特であることが証明された。SODに関するオリゴdTセグメントの2つのプローブセグメントは以下の通りである:アンチセンス鎖、ATCCCAATCACTCCACAGGCCAAGC(SEQ ID NO:29)、およびセンス鎖、GAGACCTGGGCAATGTGACTGCTGG(SEQ ID NO:30)。これらは一次SOD配列上の208塩基対(bp)の配列範囲となっている。次に、標準的PCR法にしたがって、この混合物を逆転写酵素で処理して、cDNAを取得した。次に、非変性性5%ポリアクリルアミゲル上での電気泳動によって、cDNAを分析し、配列の長さによって分離した。電気泳動で分離した分子を臭化エチジウムで処理して、二本鎖DNA断片を染色した。これらを紫外線照射によって可視化し、写真撮影した。次に、ゲルをレーザースキャン蛍光検出器によって分析し、SODメッセージのアップレギュレーションの程度としてのメッセンジャーRNAの量、およびCMX-9236による刺激の関数としてのその合成の時間経過を定量した。
【0124】
図1Aは電気泳動の結果を示す。各レーンに同一の量のRT-PCR cDNA産物が実際に負荷されたことを確認するために、ハウスキーパーマーカーである、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼのための内部マーカー(GAPDH、451 bp)を各レーンに含ませた。結果は、100 ng/mlのCMX-9236とのインキュベートの3時間後、9倍アップレギュレートされたSOD-1 mRNA転写物が存在することを示す。ゲルには、SOD刺激の最大の進行を示す、皮質細胞培養物を10μg/mlのペプチド化合物で3時間刺激した、陽性対照(Pos)をも含ませた。
【0125】
図1BはSOD mRNAのアップレギュレーション定量分析データを図示した棒グラフを示す。100 ng/mlのペプチドCMX-9236によって、3時間以内にmRNAのアップレギュレーションが9倍増加していることに注目されたい。この刺激は24時間以内に対照レベルまで戻っている。この結果は、CMX-9236がスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD-1)をコードするmRNAをアップレギュレートすることができることを証明している。黒塗り棒はSOD-1のレベルを示し、白抜き棒はGAPDHのレベルを示す。
【0126】
同様のRT-PCR実験で、1〜100 ng/mlのCMX-9236でラット筋細胞の一次培養物を刺激した結果、SOD-1をコードするmRNAの産生の増大となることが示された。SODのアップレギュレーションの量は 1 ng/mlに対しては3倍であり、10〜100 ng/mlでは6倍まで上昇した(図2Aおよび2B)。図2Aは3時間のインキュベート後の筋細胞一次培養物中のmRNA合成に対するCMX-9236の効果に関する用量-応答データを示す。208塩基対に相当するゲルの領域におけるバンドの存在が、SODがアップレギュレートされたことを意味する。図2Bは、10 ng/mlおよび100 ng/mlの用量のCMX-9236がSOD-1転写物のレベルを約6倍アップレギュレートしたことを意味する、定量分析データを図示した棒グラフを示す。黒塗り棒はSOD-1転写物のレベルの倍数増加を示し、白抜き棒はGAPDH転写物のレベルの倍数増加を示す。
【0127】
図1A、1B、2Aおよび2Bに示す結果は、少なくとも2種の組織、すなわち脳および筋肉内で、このペプチド化合物がSOD-1 mRNAをアップレギュレートすることができることを証明した。
【0128】
SOD mRNAのSOD-1タンパク質への翻訳
タンパク質合成のパターンに及ぼす代表的なペプチド化合物の影響の研究によって、刺激された細胞内でのSOD合成の増加に関するさらに別の証拠が得られた。ラット脳皮質細胞培養物における時間経過および用量応答研究から、細胞質内で合成された免疫反応性(すなわち、抗SOD抗体反応性)タンパク質のレベルがペプチド化合物 CMX-9967での処理の関数として増加することが示された。ウェスタンブロットアッセイにおいて、ウサギポリクローナル抗体(Rockland,Inc., Gilbertville, PA)はポリアクリルアミドゲル上で、電気泳動によって分離した細胞質SODタンパク質への用量依存性抗体結合を示した(図3A)。具体的には、図3Aは、10および100 ng/mlのCMX-9967ペプチドの存在下で5時間インキュベートした培養物からの細胞において、抗SOD-1抗体によって認識される、34 kDa(SOD-1の分子量)の位置に泳動したバンド、ならびにより小さい成分に相当する2つのさらに低分子量のバンドを含む、ウェスタンブロットを示している。
【0129】
図3Bは、CMX-9967ペプチドの用量の関数としてSOD-1タンパク質の倍数増加をプロットした、データの定量分析の棒グラフを示す。10および100 ng/mlのCMX-9967で5時間処理した細胞中で、細胞質SOD-1(分子量 34,000ダルトン)およびその低分子量類似体の位置で、抗体結合の強度が少なくとも20倍増加した。これは、多くても50%のSODの増加が検出されたに過ぎない、過剰のSOD遺伝子インサートを含むトランスジェニックマウスについての公表されたデータ(Murakamiら、Stroke, 28:1797-1804(1997);Ceballos-Picot, CR Seances Soc.Biol.Fil., 187:308-323(1993))と比較して、大きな増加を表している。こうしたマウスのDNA配列は第2のSOD遺伝子インサートを含有する。このように、これらのデータは、本発明のペプチド化合物がSOD-1に関するmRNAをアップレギュレートし、これがSODと同一の免疫反応特性を有するタンパク質に翻訳されることを意味している。
【0130】
カタラーゼ(CAT)に関するmRNAのアップレギュレーション
本発明のペプチド化合物はカタラーゼ(CAT)に対するmRNAもアップレギュレートすることができる。各種の代表的なペプチド化合物、すなわちCMX-9236、CMX-9963、およびCMX-9967で処理したラット皮質脳一次培養物において、CAT mRNAのアップレギュレーションを検出するためのRT-PCR法を使用して、実験を実施した。カタラーゼプローブ二本鎖は、CAT DNAの95 bp領域に隣接した、配列 GCCCGAGTCCAGGCTCTTCTGGACC(SEQ ID NO:31)を持つセンスプライマーおよび配列 TTGGCAGCTATGTGAGAGCCGGCCT(SEQ ID NO:32)を持つアンチセンスプライマーで構成した。
【0131】
ラット脳皮質細胞一次培養物を 100 ng/mlのペプチド化合物 CMX-9236とともに 0、0.5、1、2、3、6、12、24および48時間インキュベートした。RT-PCR法の結果を図4Aおよび4Bに示す。図4AはRT-PCR産物のゲルを示す。CAT mRNAのアップレギュレーションはペプチド化合物の添加の3時間後に最大となり、48時間目に対照レベルまで低下した。これらの実験でGAPDHを内部標準とした。図4Bは処理時間の関数として倍数増加をプロットしたデータの定量分析の棒グラフを示す。ラット脳皮質細胞一次培養物を 100 ng/mlのCMX-9236とともに3時間インキュベートしたとき、(対照に対して)発生したCAT mRNAの13倍のCAT mRNAレベルの増加が観察された。
【0132】
図5Aおよび5Bは、ラット皮質一次培養物において、その他のペプチド化合物(すなわち、CMX-9963およびCMX-9967)もCATおよびSODの両方をアップレギュレートすることができることを証明する結果を示している。図5Aは、0、1、10および100 ng/mlのCMX-9963もしくはCMX-9967とともに3時間インキュベートした培養物についてのRT-PCR産物のゲルを示す。図5Bは、各ペプチドの用量の関数として倍数増加をプロットしたデータの定量分析の棒グラフを示す。図5Bの棒グラフは、10 ng/mlのCMX-9963とともにインキュベートしたラット一次脳皮質細胞がそれぞれSOD-1(黒塗り棒)およびCAT mRNA(白抜き棒)について約10倍および7倍の最大増加を示したが、一方CMX-9967とともにインキュベートした細胞は10 ng/mlの濃度で、SODおよびCATの両方について6倍の最大増加を示した。GAPDHを内部標準とした。これらの知見は、ROSおよびフリーラジカルの強力な影響から細胞を守ることができる2つの主要な内在性抗酸化酵素の合成をCMXペプチド化合物が促進することを証明する。
【0133】
ペプチド化合物 CMX-9963およびCMX-9967によるラット繊維芽細胞におけるSODのアップレギュレーション
ラット胚(E-21)の肺からラット繊維芽細胞を単離し、上記のラット脳皮質細胞の培養と同様にして、培養によって増殖させた。培養の5日目、繊維芽細胞の密集単層を取得し、0、1、5、10および100 ng/mlのビヒクルバッファー(5%キシリトールを含有するHanks平衡塩類溶液("HBSS", Life Technologies, Baltimore, MD))中でのCMX-9963もしくはCMX-9967による用量-応答研究において使用した。ペプチド化合物存在下で6時間インキュベートした後、各培養物から細胞質画分を単離した。
【0134】
公表された方法(Adamsら、J.Leukoc.Biol., 62:865-873(1997))にしたがって、細胞質タンパク質を単離した。20 mM EDTAを含有するリン酸バッファー塩(PBS)溶液で細胞培養物を1回洗浄し、次に用時調製した溶解用バッファー(20 mM Hepes, pH7.9、10 mM KCl、300 mM NaCl、1 mM MgCl2、0.1% Triton X-100非イオン界面活性剤、20%グリセロール、0.5 mM ジチオトレイトール(DTT)、Adamsら 、J.Biol.Chem., 77:221-233(2000)に記載されたようなインヒビターを用時補充)250μlに懸濁させた。次に、懸濁液を氷上で少なくとも10分間インキュベートして、細胞を溶解させ、その後遠心分離(14,000xg、4℃で5分間)して、細胞破砕物をペレット化した。上清の細胞質画分を取り出し、分析のために-80℃でアリコートに分けて保存した。細胞質画分のタンパク質濃度は2〜6μg/μlの範囲で変化した。
【0135】
ゲル上で5μg/レーンを使用するSDS-PAGEによって、細胞質タンパク質を分離した。基本的にAdamsら(General Cellular Biochemistry, 77:221-233(2000))による記載にしたがって、ゲルをウェスタンイムノブロットのために処理して、SODのアップレギュレーションを測定した。SODタンパク質のアップレギュレーションを定量するために、さらに、このウェスタンブロットをレーザーデンシトメトリーによっても分析した。この実験の対照は、ビヒクル(ペプチド化合物を含まないバッファー)で処理した同一の培養フラスコとした。
【0136】
ウェスタンブロットは、CMX-9963およびCMX-9967の両方がラット繊維芽細胞中のSOD遺伝子発現をアップレギュレートすることを示した。特に、10 ng/mlのCMX-9963またはCMX-9967のいずれかとのインキュベートは、未処理の細胞に比較して、ラット繊維芽細胞中のSOD遺伝子発現(のアップレギュレーション)を少なくとも20倍増加させる結果となった。
【0137】
実施例3:哺乳動物細胞におけるペプチド化合物によるAP-1転写因子のアップレギュレーション
使用する直前に、ペプチド化合物のアリコート(1.0mg)をHBSS中の5%キシリトール(1.0ml)(Hanksの平衡塩類溶液, HanksおよびWallace, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 71:196(1949))中に溶解し、0.1N NaOHでpHを中和し、溶液を濾過滅菌した。各ペプチド化合物をHPLCカラム(C-18)上で単一ピークとして泳動させた。各ペプチド化合物の構造をアミノ酸分析により確認し、その分子量を質量分析装置により確かめた。
【0138】
サンプル1つにつき1.0〜2.0×107細胞を用いて、電気泳動移動度シフトアッセイ(Electrophoretic mobility shift assays, EMSA)用の核抽出物を、過去に記載されているように調製した(Adamsら, J. Leukocyte Biol., 62:865-873(1997))。全ての緩衝液に、ジチオトレイトール(DTT, 0.5mM)、プロテアーゼ阻害剤(PMSF(0.5mM)、キモスタチン、ペプトスタチン-A(peptstatin-A)、アプロチニン、アンチパイン、ロイペプチン(各1μg/ml))、およびホスファターゼ阻害剤(NaF(10mM)、ZnCl2(1mM)、オルトバナジン酸ナトリウム(sodium orthovanadate)(1mM)およびピロリン酸ナトリウム(5mM))を新しく添加した。最終透析物(final dialyzate)のアリコートを-80℃にて保存し、使用後に捨てた。
【0139】
NB2a細胞(サンプル1つあたり1.0〜2.0×107個)を1×PBS、20mM EDTAで洗浄した後、上記のように、DTTおよび阻害剤を新しく添加した細胞溶解バッファー(20mM HEPES、pH7.9、10mM KCl、300mM NaCl、1mM MgCl2、0.1% Triton X-100、20%グリセロール)(250μl)に再懸濁した。懸濁液を氷上で少なくとも10分間インキュベートして細胞を溶解した後、遠心分離して(14,000×g、5分間、4℃)、細胞屑をペレット化した。上清アリコートを-80℃にて保存し、1回使用した後に捨てた。
【0140】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
Adamsらにより記載されたように(J. Leukoc. Biol., 62:865-873(1997))電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を用いてAP-1転写因子活性化について分析した。一次ラットニューロン(Cornell-Bellら, Cell Calcium, 12:185-204(1991))の培養物を様々な濃度(0、1、10、100ng/ml)のペプチドCMX-9236で3時間刺激した。上記のように調製した核抽出物を、未変性ゲル上でゲル電気泳動法により分離し、EMSA手法にかけた。このEMSAは、ポリヌクレオチドキナーゼおよび(γ-P32)-ATPを用いてP32で末端を標識した、配列5'-CGCTTGATGACTCAGCCGGAA(SEQ ID NO: 33)を有するAP-1合成二本鎖プローブ(Angel, P., 1987, Cell 49:729-739)およびそのアンチセンスコピー(相補鎖)を用いた。EMSA反応のために、標識したプローブ(0.5pmol)を、10mM Tris-HCl、pH7.5、50mM NaCl、1mM EDTA、1mMジチオトレイトール、5%グリセロール、0.02%β-メルカプトエタノールおよびポリdI/dC(Pharmacia)(1μg)を含む溶液中で核抽出タンパク質(3μg)と混合した。反応混合物を25℃にて20分間インキュベートし、該二本鎖によりその適当なAP-1タンパク質と完全に複合体形成させた。次にこの混合物を、0.5×TBE緩衝液(45mM Trismaベース、45mMホウ酸、1mM EDTA)中4%ポリアクリルアミドゲルで未変性条件下にて電気泳動させた。ゲルを3mm紙上で乾燥させた。増感紙1枚を用いて-80℃でオートラジオグラフィーを行ってバンドを可視化し、レーザーデンシメトリー(laser densitometry)により定量した。AP-1のアップレギュレーションならびにAP-1の活性化およびアップレギュレーション過程を対照培養物と比較した。
【0141】
図6Aは、一次ラットニューロンについて行ったEMSA手法のゲルのオートラジオグラムを示す。このような培養物を100ng/mlのペプチド化合物CMX-9236と共にインキュベートしたときに最大のアップレギュレーションが得られた。図6Bは、CMX-9236の投与量に対する倍数増加としてプロットしたデータの定量分析の棒グラフを表す。データは、DNAプローブおよびc-Jun/c-Fosヘテロダイマーと共に形成された複合体ならびにAP-1のc-Jun/c-Junホモダイマー形態のゲル中における電気泳動で移動した位置においてDNA二本鎖プローブの結合が60倍増加したことを示し、これは、AP-1のアップレギュレーションを示す(図6Aおよび6Bを参照されたい)。
【0142】
プローブ競合EMSA
上記EMSAのようにプローブ競合EMSAを行った。ただし、ヌクレオチド配列CGCTTGATGACTTGGCCGGAA(下線は突然変異塩基:SEQ ID NO:34)を含む放射能標識していない(「低温(cold)」)二本鎖A-1オリゴマー(上記参照)または「低温」突然変異AP-1二本鎖オリゴマーならびにその相補鎖をEMSA反応物に添加し、32P-標識プローブを加える前に25℃にて20分間インキュベートした。放射能標識したプローブを加えた後、電気泳動を行う前に25℃にてさらに20分間インキュベートを続けた。0.5pmolの放射能標識プローブに対してモル過剰(0×、5×、25×、50×)の低温プローブは、各電気泳動レーンに加えた標識二本鎖の結合を排除した。2箇所の下線位置(TG)に突然変異を有する低温突然変異プローブは、結合を排除することができなかった。これは、該プローブが正しい配列を持っており且つAP-1に対する特異性が高かったことを意味する(図6Cを参照されたい)。
【0143】
ここで、改良されたEMSAを、基本的には上記に記載した通りに行ってもよい。ただし、ヌクレオチド配列CGCTTGATGA GTCAGCCGGA A(SEQ ID NO:35)を含むAP-1合成二本鎖プローブおよびそのアンチセンスコピー(相補鎖)を標準アッセイで使用し、ならびにヌクレオチド配列CGCTTGATGA GTTGGCCGGAAを含む突然変異AP-1二本鎖オリゴマー(下線は突然変異塩基:SEQ ID NO:36)およびその相補鎖をプローブ競合アッセイで用いる。
【0144】
幾つかの調査は、本明細書中に記載されるペプチド化合物よりも分子量が大きいタンパク質である神経成長因子(NGF)(Hsuら, Stroke, 24(Suppl. I):I-78-I-79(1993))および脳由来神経栄養因子(BDNF)(Schabitzら, J. Cereb. Blood Flow Metabol., 17:500-506(1997))はどちらも、転写因子AP-1をコードする遺伝子の活性化(該遺伝子の発現のアップレギュレーション)を含むメカニズムにより神経の成長を刺激することができる、ということを示している。これらのデータは、本明細書中に記載されたペプチド化合物もまた、AP-1をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートすることを示す(図6A、6Bおよび6Cを参照されたい)。
【0145】
一次皮質細胞培養物をコンフルエントな状態にまで増殖させ、in vitro培養で使用してAP-1のアップレギュレーションに及ぼす様々な代表的ペプチド化合物の影響を決定した。AP-1因子の刺激は、容量依存的に増加し、濃度1、10または100ng/mlの該ペプチドと共に35.5℃にて3時間インキュベートした後は約15倍から最大60倍まで増加することがわかった(図6A)。一次培養物のホモジェネートから単離した核から抽出物を調製し、精製し、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)法を用いて特定の転写因子の存在について分析した。アクチベータータンパク質-1(AP-1)または核因子κB(NF-κB)に特異的な32P-標識二本鎖DNAプローブの結合をオートラジオグラフィーにより分析および定量した。1ng/mlのペプチドCMX-9236と共に培養物を3時間インキュベートしたところ、刺激していない対照培養物に比べてAP-1は15倍増加した。100ng/mlの該ペプチドと共にインキュベートすると、典型的にAP-1レベルは60倍増加した。これは、本明細書中に記載されるペプチド化合物が、AP-1のリン酸化、その細胞核へのトランスロケーションによるc-Fosの増加、およびAP-1依存型遺伝子発現のアップレギュレーションを引き起こす生化学的現象のカスケードに影響を及ぼすことができることを示唆している。したがって、20アミノ酸長未満の小さなペプチド化合物は、それぞれ13,259および13,500の分子量を有するタンパク質鎖の二量体として存在するNGFやBDNF等の大きな成長因子の特性を刺激することができる。このデータは、本明細書中に記載されるペプチド化合物が、脳細胞の成長に関与し得る遺伝子を活性化することができることを示唆している。このようなメカニズムは、アポトーシスを阻止して、線虫(Horvitzら, Cold Spring Harbor Symposium Quant. Biol., 111:377(1994))および哺乳動物の神経系(Yuanら, Cell 75:641(1993))においてプログラム細胞死を逆転させることが既に証明されている。
【0146】
対照実験(陰性対照)において、アミノ末端キャッピング基および血液脳関門通過促進因子DHAは、単独では、AP-1を活性化しなかった。しかし、このDHAアミノ末端キャッピング基を持たないペプチド化合物は、DHA-結合ペプチド化合物と同じモル濃度においてAP-1を活性化することができた。このことは、本明細書中に記載されるペプチド化合物によるAP-1活性の刺激がそのペプチド配列に依存することを示している。
【0147】
該DNAプローブとAP-1との相互作用の特異性は、更に2つのタイプの対照実験において示された。5倍モル過剰の非放射能AP-1プローブは、AP-1-32P-DNA複合体の形成を完全に阻止することが分かったが(図6Cを参照されたい)、その配列に2つのエラーを有するAP-1は放射能標識プローブに比べて50倍モル過剰で使用した場合でもその複合体形成能を完全に失った(図6Cを参照されたい)。これらの結果は、AP-1プローブの相互作用の高い特異性を示し、EMSAアッセイの妥当性を証明した。
【0148】
該データは、該ペプチド化合物が神経細胞内におけるAP-1遺伝子発現を活性化することができることを示す。これらは、小さなペプチド化合物が、AP-1の活性化によりニューロンの成長を刺激するBDNFやNGFなどの大きな神経栄養タンパク質因子の特性に似た特性を有し得ることを示す。このような概念を支持する更なる証拠は、AP-1の活性化の阻害が、ニューロンの細胞死につながる現象と相関関係を有するという知見である(Tabuchiら, J. Biol. Chem., 271:31061-31067(1996))。AP-1のアップレギュレーションが細胞成長のプロセスと相関し、そのダウンレギュレーションは細胞死のプロセスに相関すると思われる。1つの他の対照実験において、ペプチド化合物は転写因子NF-κBのアップレギュレーションを促進しなかった。これは、免疫応答に関与する(すなわちニューロンの成長には関係のない)転写因子である(Adamsら, J. Leukoc. Biol., 62:865-873(1997))。このような結果は、NGF(PC12細胞中においてAP-1を活性化するが、NF-κBを活性化しないことが分かっている)についての文献の中にも報告されている(TongおよびPerez-Polo, J. Neurosci. Res., 45:1-12(1996))。
【0149】
実施例4:ペプチド化合物CMX-9236、CMX-9236D、CMX-9967およびCMX-9902のin vivo薬理学的活性
中大脳動脈(MCA)閉塞法(Zea Longaら, Stroke, 20:84(1989))の管内縫合法を用いてSprague-Dawleyラットの一時的閉塞発作モデルおよび永続的閉塞発作モデルの両方において、CMX-9236のin vivo神経保護作用について調査した。要約すると、右総頸動脈を介して4-0シリコーン被覆縫合糸を挿入してMCAオリフィスを遮断した。一時的モデルでは、2時間の閉塞の開始後30分経ったところで、大腿静脈を介してCMX-9236(6.2mg/kg/hr)またはビヒクルを投与して4時間の連続的還流を行い、その後MCA閉塞の90分後に縫合糸を抜いてラットを再潅流した。全ての実験を盲目的かつ無作為的に行い、直腸の温度を37℃に維持した。動物を屠殺し、これらの動物の脳を取出して、6つの厚さ2mmの冠状薄片に切り、塩化-2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム溶液で染色し(Bedersonら, Stroke, 17:1304(1986))、脳の損傷の程度を可視化して、修正された半球梗塞体積(corrected hemispheric infarct volume)を計算した(NagasawaおよびKogure、Stroke, 20:1037(1989); Liら, J. Cereb. Blood Flow Metab., 17:1132(1997))。CMX-9236で処理したラット(n=10)において、修正された梗塞体積の平均値+S.E.は117.3+17mm3であったのに対し、ビヒクルで処理した対照(n=10)では178.8+11mm3であることが分かった。これは、一時的閉塞モデルにおけるCMX-9236処理グループの梗塞サイズの有意な減少(35+5%、p=0.01、studentのt検定)を表す。また、24時間経過後、神経学的スコアリング(neurological scoring)において、ペプチド処理グループでは対照に対して58+11%の改善が見られた(Minematsuら, Neurology, 42:235(1992))。
【0150】
永続的閉塞発作モデルにおいて、MCA領域への血流は、合計で24時間遮断された。CMX-9236ペプチド(2.04mg/kg/hr)またはビヒクルの連続的静脈内還流(0.5ml/hr)を6時間の閉塞後30分経過した時点で開始し、閉塞後12時間経過時にCMX-9236(0.5ml中4.0mg/kgを10分間かけて送達)またはビヒクルのボーラス静脈内還流を行った。修正された梗塞体積は、薬物処理動物および対照それぞれでは127.5+18mm3および216+18mm3であった。これは、永続的モデルにおいてビヒクルで処理した対照グループと比較して薬物処理グループ(各グループにつきn=10)の梗塞サイズが有意に減少(41+5%, p=0.003、studentのt検定)したことを表し、脳組織の実質的な救済(rescue)を示す。これらの知見は、CMX-9236がin vivoにおいて外傷後の神経保護的特性を有し、脳虚血により生じる脳の損傷を低減することを示す。表2は、MCA永続的閉塞テストを用いた異なるCMXペプチドについての結果を示す。
【0151】
【表2】

【0152】
実施例5:他の代表的ペプチド化合物の活性
一連の実施例に記載したアッセイのうち1以上を用いて他の代表的ペプチド化合物についてのある種の活性が示された。CMX-9901およびCMX-8933ペプチド化合物はAP-1をアップレギュレートし、in vivo永続的MCAアッセイにおいて積極的な神経保護効果を提供した。CMX-9902は、SODタンパク質をアップレギュレートし、in vitro試験において培養物中のAP-1の核への移動を促進した。
【0153】
実施例6:関連ジペプチド化合物CMX-1152(Asp Gly)およびCMX-99672(Asp GlyのTFA塩)のin vivoおよびin vitro薬理学的活性
Sprague-Dawleyラット(300〜325g)においてCMX-1152またはCMX-99672の溶液を用いてin vivo実験を行った。動物の尾静脈に、ペプチド化合物を静脈注射した。各動物に1時間おきに3回注射を行った(すなわち、通常食塩水中10μg/mlの濃度のペプチド化合物を0.3ml。総投与量は体重1kgあたり9mgのペプチド化合物に相当する)。注射後6、12、24、48および72時間で断頭により動物を屠殺し、解剖して脳、肝臓、心臓、腎臓、肺器官を単離し、これらを-70℃で冷凍して後に分析した。さらに、各動物から全血のサンプル(2ml)を採血した。各サンプルの半分(1ml)を遠心分離して核および細胞膜を取り除き、血漿を得た。残りの半分は全血として-70℃で冷凍保存した。
【0154】
ヒトSODおよびCAT酵素に対する抗血清を用いたウェスタンイムノブロット
各組織を解凍し、10倍量の均質化緩衝液を用いてDown'sホモジェナイザーでホモジェナイズし(Adamsら, General Cellular Biochemistry, 77:221-233(2000)を参照されたい;緩衝液はAdamsら, J. Leukoc. Biol., 62:865-875(1967))に記載されたもの)、粗細胞質画分を得た。Adamsら(J. Cell. Biochem., 77:221-233(2000))に記載されたように、組織ホモジェネートを遠心分離し(14,000×gで4℃にて5分間)、上清精製細胞質タンパク質画分を得た。次に、10μgの各タンパク質画分のサンプル(10μg)をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、ウェスタンブロットアッセイによりSODおよびCAT含有量について分析した。
【0155】
2つのビヒクルのみ(すなわちペプチド化合物なし)を注射し注射後24時間および72時間経って屠殺したラットから、SODおよびCATの非刺激レベルを測定するための対照を得た。いずれもほぼ同じ非刺激レベルのSODおよびCATを有していた。標準的量(10μg)の各細胞質画分をゲルのレーンに載せて電気泳動分離およびウェスタンイムノブロット分析にかけた(Adamsら, J. Cell. Biochem., 77:221-233(2000))。染色したゲルの写真を撮り、レーザーデンシメトリーにより走査して、対照ビヒクル処理ラットの酵素レベルと比べた強度を定量した。
【0156】
表3は、ペプチド化合物無しのビヒクルのみを注射した対照動物と比較した様々なラット器官におけるSODのアップレギュレーションデータを示す。データは、ペプチド化合物CMX-1152の投与により、脳、心臓、肺および血液においてSOD産生が対照に比べておよそ4〜5倍アップレギュレートされ、肝臓および腎臓においてはSOD産生が約2倍アップレギュレートされたことを表す。これらの結果は、ペプチド化合物CMX-1152がin vivoにおいて活性であること、および該化合物が全ての主な組織および器官において活性であるを示す。このように、ペプチド化合物CMX-1152は、動物全身においてSODをアップレギュレートすることができる。CATについても同様の結果が得られた(データは示さず)。これらの知見は、ROSおよびフリーラジカルに対する生物の全身防御を促進する治療として使用するためのCMX-1152の可能性を示す。従って、ペプチド化合物CMX-1152により生成された全身にわたる実質的な抗酸化活性は、このペプチド化合物を、「健康生活期待」薬(”healthy life expectancy” drug)として使用するために開発され得るのに特に適した老化防止候補化合物としている。
【0157】
【表3】

【0158】
さらに、ペプチド化合物CMX-1152の投与によるSODおよびCATのin vivoアップレギュレーションを経時的に調査したところ、CMX-1152に曝露しなかった組織中に比べて実質的に長い時間組織中で持続した。表3に記載したin vivoデータは、CMX-1151処理動物とビヒクル(食塩水)処理対照のSODレベルを比較する。各組織毎の対照値は、時間軸に対して一定のまであった。
【0159】
CMX-1152およびCMX-99672の更なる調査
CMX-99672およびCMX-1152ペプチド化合物は、同じAsp-Glyジペプチドを含む。CMX-99672は、トリフルオロ酢酸塩の形態であり、CMX-1152はジペプチドの酢酸塩の形態である。この調査において、CMX-99672は、上記in vitro組織培養実験においてのみ使用したが、CMX-1152(トリフルオロ酢酸を含まない精製酢酸塩の形態)は、全てのin vivo実験において使用した。
【0160】
実施例2に上記に記載したように、ラット脳皮質細胞の一次培養物を用いて組織培養実験を行った。E21(21日胚)で単離した胎児ラット脳から得た一次培養物を様々な用量(1、10、100ng/ml)のCMX-99672で5時間インキュベートした。細胞質タンパク質を単離し、上記のようにウェスタンイムノブロットによってSODおよびCATのアップレギュレーションについて分析した。ウェスタンブロットは、CMX-99672によるSODおよびSOD-関連タンパク質のアップレギュレーションを示した。ウェスタンブロットを走査して、CMX-99672ペプチド化合物で処理した細胞培養物中のSOD産生における倍数増加を定量した。CMX-99672への曝露により、SODは約30倍増加し、SOD-関連タンパク質は20倍増加した。CATについても同様のデータを得た。
【0161】
これらのデータは、ジペプチドAsp-Glyが、哺乳動物の細胞および組織内(特に中枢神経系の細胞および組織内)の抗酸化活性を実質的に増加させるのに非常に有効であることを示す。この場合も、このようなデータは、この単純なAsp-Glyジペプチド化合物が、老化過程、疾患または薬物治療によって生成されたROSおよび他のフリーラジカルの影響を打ち消すための組成物および方法で使用するための候補化合物である、ということを示している。
【0162】
実施例7:ペプチド化合物CMX-99658およびCMX-8933のin vitro調査
2つの他のペプチド化合物CMX-99658([Ac]-Gln Thr Leu Gln Phe Arg)(SEQ ID NO:2)およびCMX-8933(Lys Lys Glu Thr Leu Gln Phe Arg)(SEQ ID NO:24)(米国特許第5,545,719号に記載)。これら2つの化合物の大きな違いは、特定の保護アミノ末端キャッピング基(すなわちアセチルまたはLys Lys)の存在ではなく、該コアペプチド配列の中の第1アミノ末端グルタミンまたはグルタミン酸の存在である。該2つのペプチド化合物が、ラット一次皮質細胞の中でSODおよびCATをアップレギュレートする能力についてテストした。上記実施例4に記載したように、ラット一次皮質細胞をE-21ラット胚から単離した。ただし、細胞は、0.7、7および70ng/mlのCMX-99658またはCMX-8933とともにインキュベートした。ペプチドとともに、またはペプチドを含まない対照培地によって、6時間かけて細胞をインキュベートした。SODおよびCATを検出するための市販の抗体(Rockland, Inc., Gilbertsville, PA)を用いたウェスタンイムノブロットにより、SODおよびCATレベルを分析した。
【0163】
データは、CMX-8933およびGlu Thr Leu Gln Phe Arg(SEQ ID NO:13)アミノ酸配列を含むペプチド化合物が、SODおよび/またはCATの遺伝子発現のアップレギュレーションに依存して、(例えば老化、薬物治療および疾患による)ROSおよび他のフリーラジカルの発生を打ち消す抗酸化酵素活性のレベルを提供する本発明の様々な方法において好ましい、ということを示した。
【0164】
実施例8:他の代表的なペプチド化合物によるラット一次皮質培養物におけるSODおよびCATのアップレギュレーション
代表的ペプチド化合物を様々な用量でテストし、基本的には上記に記載したように、ラット一次皮質培養物中のSODおよび/またはCATの遺伝子の発現をアップレギュレートする能力を比較した。37℃にて5時間、培養物をペプチド化合物と共にインキュベートした。上記のように、細胞質タンパク質画分を調製した。細胞質タンパク質をゲル電気泳動法により分離し、それぞれSODおよびCATに対する抗血清(Rockland, Inc., Gilbertsville, PA)を用いたウェスタンイムノブロットにより分析した。結果を以下の表4に表す。
【0165】
【表4】

【0166】
上記データは、これらのペプチドが、抗酸化酸素すなわちSODおよび/またはCATをアップレギュレートすることができることを示す。アミノ酸配列Asp Gly Asp Gly Phe Ala(SEQ ID NO:5)を含むペプチド化合物は、ほぼ同じレベルまでSODおよびCATをアップレギュレートすることができた。SODおよびCATの両方をアップレギュレートするこのような等しい活性は、このペプチドが、SODおよびCATの補足的な抗酸化酵素活性の適度な相対レベルを提供して、様々な原因および条件から発生される酸化的ストレスを打ち消し、およびスーパーオキシドアニオンに対してSOD活性により生成される過酸化水素を効率的に無毒化するのに特に適していることを示す。
【0167】
実施例9:グリーン角袋の枝角(green velvet antler, GVA)からの活性画分の調製および動物起源からの機能性食品組成物(nutraceutical composition)の製剤化
天然原料の精製、分析および機能性食品組成物の形成
Qeva, Inc. (Calgary, Ontario, Canada)から入手した生のGVA乾燥粉(5g)を100mlの水で室温にて30分間抽出した。次に、5,000×gにて30分間遠心分離を行うことにより、水溶性成分(「GVAW」)を不溶性残渣から分離した。残渣を50mlの水に再懸濁してさらに30分間攪拌することにより、さらに抽出した。次にこの混合物を再び遠心分離(5,000×gで30分間)し、2つの抽出物から得た上清を合わせて黄色い粗抽出物を得た。これを室温にて10,000×gで30分間遠心分離した。上清画分を、Milliporeフィルタ(0.2μm孔径)で濾過して除去および滅菌し、透明な黄色い溶液を得た。次にこの透明な黄色い溶液を回転蒸発装置で30℃にてゆるい真空下にて10〜20mlまで濃縮し、凍結乾燥して、茶色の毛羽立った粉末(収率15〜20%)としてGVAW画分を得た。この画分は、上記のように一次ラット脳皮質培養物においてSODをアップレギュレートすることができる活性ペプチドを含む(表5を参照されたい)。
【0168】
Bio-Rad Laboratories(Hercules, CA 94547)より得たBiogel(PD-10)を用いてカラムクロマトグラフィーにより、GVAW画分を更に精製した。これにより、分子量(MW)が6,000ダルトンを超えるペプチドを、MWが6,000未満のペプチドから分離して、2つの画分(それぞれGVA+6およびGVA-6)を得た。凍結乾燥した産物の(原料ベースの)収率はそれぞれ8〜10%および3〜6%であった。
【0169】
GVA-6は、活性GVAペプチドの濃縮物を含んでいた。エタノール/水酸化アンモニウム(70/30)を溶離剤として用いたシリカゲルの可撓性シート(J.T. Baker Inc., Phillipsturg, N.J.)上での薄層クロマトグラフィーにより分析したところ、CMX-1152(Asp Gly)と同じ泳動特性を有するものを含む多くのペプチド成分が存在することが分かった。それぞれAsp Glyの二ナトリウム塩および遊離酸形態に相当するMWが236および190である2つの成分の存在を示す質量分析法により、さらに確認された。GVA-6画分のアミノ酸分析は、該混合物中における等モル量のアミノ酸AspおよびGlyの存在を示した。またGVA-6は、ラット脳一次皮質培養物においてSODをアップレギュレートする特性も有していた。これは、GVA+6画分に比べて活性が少なくとも3,000倍高かった(以下の表5を参照されたい)。
【0170】
【表5】

【0171】
GVAWおよびGVA-6画分の両方は、純粋な合成Asp Glyペプチドと共に増加し、ラット脳一次培養物を用いた標準的アッセイにおいて治療的レベルのSODアップレギュレーション特性を得た。典型的な製剤は、血漿および血液サンプルにおける約1.3〜10.0倍のSODのアップレギュレーションを得るために必要な量のCMX-1152を有する。
【0172】
GVA-6画分を調製するための他の方法
上記方法におけるカラムクロマトグラフィーステップを、100%メタノールを用いたGVAW画分の直接抽出に置き換えた。ここで高分子量成分は沈殿物を形成し、この沈殿物を分離して透明なろ液を得た。このろ液を活性炭で処理すると、無色の溶液ができた。この無色の溶液は、凍結乾燥の後に白い固体となった。これは、上記GVA-6の組成に似た組成を有していた。
【0173】
実施例10:植物材料からの活性画分の調製および機能性食品組成物の製剤化
実施例9に記載された方法と同様の方法を用いて、Wu, Zi, Yan, Zong, Wan薬草混合物から活性画分を得(例えばWangら, Chung Kuo Chung His I Chieh Ho Tsa Chih 12:23-25(1992), study of Wuzi yanzong liquid;Huangら, Chung Kuo Chung Yao Tsa Chih 16:414-416,447(1997)、study of fufang wuzi yanzong pillsを参照されたい)、標準レベルのSODアップレギュレーション特性を有する製剤を得た。機能性食品組成物の典型的な処方を、純粋な合成CMX-1152を加えることにより標準的な効能レベルに変換し、血漿および血液サンプル中におけるSODのアップレギュレーションの約1.3〜10倍のSODのアップレギュレーションを得た。
【0174】
本明細書中で記載される様々なアミノ酸およびヌクレオチド配列ならびにこれらに対応する配列識別番号(SEQ ID NO:)を以下の表6に挙げる。幾つかのこれらの配列の中に存在する可変アミノ酸(Xaa)は上記により詳細に記載されている。
【0175】
【表6】


【0176】
本発明の範囲または特許請求の範囲の精神から逸脱することなく、当業者には、本明細書中に記載された本発明の他のバリエーションおよび実施形態が自明であろう。
【0177】
上記に引用した全ての特許、特許出願および刊行物は本明細書中に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項2】
次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項3】
次式:

[式中、R1は存在しないか、ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;Xaa1およびXaa2は独立してアスパラギン酸またはアスパラギンであり;Xaa3は存在しないか、Glyであり;Xaa4は存在しないか、AspまたはPheであり;Xaa5は存在しないか、AlaまたはPheであり;Xaa6は存在しないか、Alaであり;R2は存在しないか、ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項4】
次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートする、請求項3に記載のペプチド化合物。
【請求項5】
次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項6】
次式:

[式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項7】
次式:

[式中、Xaa1は存在しないか、Serであり;Xaa2は存在しないか、Lysであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項8】
次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のペプチド化合物。
【請求項9】
次式:

[式中、Xaa1はAsp、Asn、Glu、Gln、Thr、またはTyrであり;Xaa2は存在しないか、任意のアミノ酸であり;Xaa3はAsp、Asn、Glu、Thr、Ser、Gly、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項10】
Xaa2がVal、Gly、およびGluからなる群より選択される、請求項9に記載のペプチド化合物。
【請求項11】
Thr Val Ser; Asp Gly Asp; Asn Gly Asn; Asp Gly; Asn Gly; Glu Gly; および Gln Glyからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載のペプチド化合物。
【請求項12】
次式:

[式中、Xaa1は任意のアミノ酸であり;Xaa2はGln、Gly、またはTyrであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項13】
次式:

[式中、Xaa1はAsn、Asp、Gln、Glu、Thr、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
からなり、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項14】
Met Thr Leu; Met Thr Asp; Met Thr Asn; Met Thr Thr; Met Thr Glu; および Met Thr Glnからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のペプチド化合物。
【請求項15】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のペプチド化合物。
【請求項16】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項15に記載のペプチド化合物。
【請求項17】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項15に記載のペプチド化合物。
【請求項18】
R2が、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群より選択されるカルボキシ末端キャッピング基である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のペプチド化合物。
【請求項19】
次のアミノ酸配列:

からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物。
【請求項20】
アミノ末端キャッピング基またはカルボキシ末端キャッピング基をさらに含む、請求項19に記載のペプチド化合物。
【請求項21】
アミノ末端キャッピング基が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項20に記載のペプチド化合物。
【請求項22】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項21に記載のペプチド化合物。
【請求項23】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミトイル(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項20に記載のペプチド化合物。
【請求項24】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンおよび第二級アミンからなる群より選択されるである、請求項20に記載のペプチド化合物。
【請求項25】
細胞または組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、カタラーゼ遺伝子、またはその両方の発現レベルをアップレギュレートする方法であって、細胞または組織に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のペプチド化合物、次式:

を含むペプチド化合物、または次式:

を含むペプチド化合物(各式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、第一級または第二級アミンである)を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項26】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項25に記載の細胞または組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、カタラーゼ遺伝子、またはその両方の発現レベルをアップレギュレートする方法。
【請求項27】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項26に記載の細胞または組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、カタラーゼ遺伝子、またはその両方の発現レベルをアップレギュレートする方法。
【請求項28】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項25に記載の細胞または組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子、カタラーゼ遺伝子、またはその両方の発現レベルをアップレギュレートする方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法であって、該細胞または組織に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のペプチド化合物、次式:

を含むペプチド化合物、または次式:

を含むペプチド化合物(各式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項30】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項29に記載の哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法。
【請求項31】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項30に記載の哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法。
【請求項32】
R3-CO-アシル基が脂肪酸である、請求項30に記載の哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法。
【請求項33】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項29に記載の哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法。
【請求項34】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項29に記載の哺乳動物細胞または組織における反応性酸素種およびフリーラジカルの酸化作用を中和する方法。
【請求項35】
細胞または組織における反応性酸素種および他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を低下または防止する方法であって、該細胞または組織に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のペプチド化合物、次式:

を含むペプチド化合物、または次式:

を含むペプチド化合物(各式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項36】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項35に記載の細胞または組織における反応性酸素種および他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を低下または防止する方法。
【請求項37】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項36に記載の細胞または組織における反応性酸素種および他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を低下または防止する方法。
【請求項38】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項35に記載の細胞または組織における反応性酸素種および他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を低下または防止する方法。
【請求項39】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項35に記載の細胞または組織における反応性酸素種および他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を低下または防止する方法。
【請求項40】
反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態を治療または予防する方法であって、該疾患または状態を患う個体に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のペプチド化合物を投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項41】
反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態が、大脳虚血(脳卒中)、心筋梗塞(心臓発作)、腎再灌流損傷、アテローム硬化症、頭部外傷、脳外傷、脊髄外傷、未熟児の酸素中毒、若年性老化、神経変性疾患、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、関節炎および他の炎症性の疾患または状態、糖尿病、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびROSまたはフリーラジカルの上昇を特徴とする他の癌、加齢に関係したROSまたはフリーラジカル上昇、老化、ダウン症、黄斑変性、白内障、精神分裂病、てんかん、敗血症性ショック、多外傷性ショック、熱傷、放射線により誘発されるROSおよびフリーラジカル上昇、ならびに薬物により誘発される反応性酸素種または他のフリーラジカル上昇からなる群より選択される、請求項40に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態を治療または予防する方法。
【請求項42】
前記疾患または状態が薬物により誘発される反応性酸素種または他のフリーラジカルの上昇であり、該薬物が神経弛緩薬または表1に示した薬物である、請求項40に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態を治療する方法。
【請求項43】
前記疾患または状態が遅発性ジスキネジーである、請求項42に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇を呈する疾患または状態を治療する方法。
【請求項44】
反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において、卒中以外の疾患または状態を治療する方法であって、該哺乳動物の細胞に、式:

(式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を含むペプチド化合物を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項45】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項44に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項46】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項45に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項47】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項44に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項48】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項44に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項49】
前記疾患または状態が、心筋梗塞(心臓発作)、腎再灌流損傷、アテローム硬化症、頭部外傷、脳外傷、脊髄外傷、未熟児の酸素中毒、若年性老化、神経変性疾患、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、関節炎および他の炎症性の疾患または状態、糖尿病、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびROSまたはフリーラジカルの上昇を特徴とする他の癌、加齢に関係したROSまたはフリーラジカルの上昇、老化、ダウン症、黄斑変性、白内障、精神分裂病、てんかん、敗血症性ショック、多外傷性ショック、熱傷、放射線により誘発されるROSおよびフリーラジカルの上昇、ならびに薬物により誘発される反応性酸素種または他のフリーラジカルの上昇からなる群より選択される、請求項44〜48のいずれか1項に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項50】
前記疾患または状態が薬物により誘発される反応性酸素種または他のフリーラジカルの上昇であり、該薬物が神経弛緩薬または表1に示した薬物である、請求項44に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項51】
前記疾患または状態が遅発性ジスキネジーである、請求項50に記載の反応性酸素種または他のフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中以外の疾患または状態を治療する方法。
【請求項52】
個体における疼痛の治療方法であって、個体に、請求項1〜24のいずれか1項に記載のペプチド化合物、次式:

を含むペプチド化合物、または次式:

を含むペプチド化合物(各式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項53】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項52に記載の個体における疼痛の治療方法。
【請求項54】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項53に記載の個体における疼痛の治療方法。
【請求項55】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項52に記載の個体における疼痛の治療方法。
【請求項56】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項52に記載の個体における疼痛の治療方法。
【請求項57】
哺乳動物細胞におけるAP-1転写因子遺伝子の発現レベルを刺激またはアップレギュレートする方法であって、哺乳動物細胞に、請求項1〜23のいずれか1項に記載のペプチド化合物、または次式:

(式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を含むペプチド化合物を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項58】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項57に記載の哺乳動物細胞におけるAP-1転写因子遺伝子の発現レベルを刺激またはアップレギュレートする方法。
【請求項59】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項58に記載の哺乳動物細胞におけるAP-1転写因子遺伝子の発現レベルを刺激またはアップレギュレートする方法。
【請求項60】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項57に記載の哺乳動物細胞におけるAP-1転写因子遺伝子の発現レベルを刺激またはアップレギュレートする方法。
【請求項61】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項57に記載の哺乳動物細胞におけるAP-1転写因子遺伝子の発現レベルを刺激またはアップレギュレートする方法。
【請求項62】
反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において、卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法であって、該哺乳動物の細胞に、式:

(式中、R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である)を含むペプチド化合物を接触させることを含んでなる、上記方法。
【請求項63】
R1が、還元または酸化されたリポ酸部分; グルコース-3-O-グリコール酸部分; 1〜6個のリシン残基; 1〜6個のアルギニン残基; アシル基 R3-CO-(ここで、COはカルボニル基を表し、R3は炭素数1〜25の飽和または不飽和炭化水素鎖である)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ末端キャッピング基である、請求項62に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項64】
アミノ末端キャッピング基がR3-CO-アシル基(ここで、R3は炭素数1〜22の飽和または不飽和炭化水素鎖である)である、請求項63に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項65】
アミノ末端キャッピング基がアセチル、パルミチン酸(Palm)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項62に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項66】
カルボキシ末端キャッピング基が第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項62に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項67】
前記疾患または状態が、心筋梗塞(心臓発作)、腎再灌流損傷、頭部外傷、脳外傷、脊髄外傷、未熟児の酸素中毒、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病、潰瘍性大腸炎、ヒト白血病およびROSまたはフリーラジカルの上昇を特徴とする他の癌、加齢に関係したROSまたはフリーラジカルの上昇、老化、黄斑変性、白内障、精神分裂病、てんかん、敗血症性ショック、多外傷性ショック、熱傷、放射線により誘発されるROSおよびフリーラジカルの上昇、ならびに薬物により誘発されるROSまたは他のフリーラジカルの上昇からなる群より選択される、請求項62〜66のいずれか1項に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項68】
前記疾患または状態が薬物により誘発される反応性酸素種または他のフリーラジカルの上昇であり、該薬物が神経弛緩薬または表1中の薬物である、請求項62に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項69】
前記疾患または状態が遅発性ジスキネジーである、請求項68に記載の反応性酸素種またはフリーラジカルの望ましくないレベル上昇が見られる哺乳動物において卒中、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびアルツハイマー病を除いた疾患または状態を治療する方法。
【請求項70】
抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする内在性ペプチド化合物を含む、生物由来の天然源からの精製組成物を含有する食物補助剤組成物。
【請求項71】
抗酸化酵素をコードする遺伝子が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子、カタラーゼをコードする遺伝子、およびスーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子とカタラーゼをコードする遺伝子の組合せからなる群より選択される、請求項70に記載の食物補助剤組成物。
【請求項72】
内在性ペプチド化合物が次のアミノ酸配列:


からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項70に記載の食物補助剤組成物。
【請求項73】
抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする、外部から供給されるペプチド化合物をさらに含む、請求項70に記載の食物補助剤組成物。
【請求項74】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする同一のまたは異なるペプチド化合物である、請求項73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項75】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子、カタラーゼをコードする遺伝子、およびスーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子とカタラーゼをコードする遺伝子の組合せからなる群より選択される抗酸化酵素をコードする同一のまたは異なる遺伝子をアップレギュレートする、請求項73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項76】
前記天然源がグリーン角袋の枝角であり、前記生物が反芻動物である、請求項70または73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項77】
前記反芻動物がシカまたはヘラジカである、請求項76に記載の食物補助剤組成物。
【請求項78】
前記生物が植物または微生物である、請求項70または73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項79】
前記植物がチャまたは薬草である、請求項78に記載の食物補助剤組成物。
【請求項80】
前記天然源精製組成物がwuzi yanzong薬草混合物である、請求項78に記載の食物補助剤組成物。
【請求項81】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:

[式中、R1は存在しないか、ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;Xaa1およびXaa2は独立してアスパラギン酸またはアスパラギンであり;Xaa3は存在しないか、Glyであり;Xaa4は存在しないか、AspまたはPheであり;Xaa5は存在しないか、AlaまたはPheであり;Xaa6は存在しないか、Alaであり;R2は存在しないか、ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である]
を含み、かつ抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物からなる、請求項73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項82】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:

[式中、Xaa1はAsp、Asn、Glu、Gln、Thr、またはTyrであり;Xaa2は存在しないか、任意のアミノ酸であり;Xaa3はAsp、Asn、Glu、Thr、Ser、Gly、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
を含み、かつ抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物からなる、請求項73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項83】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:


からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項73に記載の食物補助剤組成物。
【請求項84】
外部から供給されるペプチド化合物が、アミノ末端キャッピング基および/またはカルボキシ末端キャッピング基を含む、請求項73〜83のいずれか1項に記載の食物補助剤組成物。
【請求項85】
アミノ末端キャッピング基が、1〜6個のリシン残基、1〜6個のアルギニン残基、グルコース-3-O-グリコール酸基、炭素原子数1〜25の炭化水素鎖を含むアシル基、アセチル基、パルミトイル基、リポ酸基、ドコサヘキサエン酸基、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項84に記載の食物補助剤組成物。
【請求項86】
カルボキシ末端キャッピング基が、アミド結合でカルボキシ末端カルボニルに連結されるアミノ基である、請求項84に記載の食物補助剤組成物。
【請求項87】
前記アミノ基が第一級または第二級アミンである、請求項86に記載の食物補助剤組成物。
【請求項88】
抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする内在性ペプチド化合物を含む組成物を生物由来の天然源から精製することを含んでなる、食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項89】
内在性ペプチド化合物が、次式:


からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項88に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項90】
前記天然源からの精製組成物を、抗酸化酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子をアップレギュレートする外部から供給されるペプチド化合物と組み合わせて食物補助剤組成物を調製するステップをさらに含む、請求項88に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項91】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、同一のまたは異なるペプチド化合物である、請求項90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項92】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:

[式中、R1は存在しないか、該ペプチド化合物のアミノ末端キャッピング基であり;Xaa1およびXaa2は独立してアスパラギン酸またはアスパラギンであり;Xaa3は存在しないか、Glyであり;Xaa4は存在しないか、AspまたはPheであり;Xaa5は存在しないか、AlaまたはPheであり;Xaa6は存在しないか、Alaであり;R2は存在しないか、該ペプチド化合物のカルボキシ末端キャッピング基である]
を含み、かつ抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物からなる、請求項90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項93】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:

[式中、Xaa1はAsp、Asn、Glu、Gln、Thr、またはTyrであり;Xaa2は存在しないか、任意のアミノ酸であり;Xaa3はAsp、Asn、Glu、Thr、Ser、Gly、またはLeuであり;R1は存在しないか、アミノ末端キャッピング基であり;R2は存在しないか、カルボキシ末端キャッピング基である]
を含み、かつ抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートするペプチド化合物からなる、請求項90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項94】
内在性ペプチド化合物および外部から供給されるペプチド化合物が、独立して、次式:


からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項95】
外部から供給されるペプチド化合物が、アミノ末端キャッピング基および/またはカルボキシ末端キャッピング基を含む、請求項90〜94のいずれか1項に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項96】
アミノ末端キャッピング基が、1〜6個のリシン残基、1〜6個のアルギニン残基、グルコース-3-O-グリコール酸基、炭素原子数1〜25の炭化水素鎖を含むアシル基、アセチル基、パルミトイル基、リポ酸基、ドコサヘキサエン酸基、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項95に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項97】
カルボキシ末端キャッピング基が、アミド結合でカルボキシ末端カルボニルに連結されるアミノ基である、請求項95に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項98】
前記アミノ基が第一級または第二級アミンである、請求項97に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項99】
抗酸化酵素をコードする遺伝子が、スーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子、カタラーゼをコードする遺伝子、およびスーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子とカタラーゼをコードする遺伝子の組合せからなる群より選択される、請求項88または90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項100】
前記天然源がグリーン角袋の枝角であり、前記生物が反芻動物である、請求項88または90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項101】
反芻動物がシカまたはヘラジカである、請求項100に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項102】
前記生物が植物および微生物からなる群より選択される、請求項88または90に記載の食物補助剤組成物の調製方法。
【請求項103】
前記天然源がwuzi yanzong薬草混合物である、請求項102に記載の食物補助剤組成物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236828(P2012−236828A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129724(P2012−129724)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2001−538943(P2001−538943)の分割
【原出願日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【出願人】(502180222)イスケミックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】