説明

受信装置

【課題】少ないフィルタ数で効率的に受信信号内の先行波及び遅延波を除去することができる受信装置を提供することを課題とする。
【解決手段】受信装置は、受信信号内の遅延波をフィルタにより除去する遅延波等化部(701)と、前記受信信号内の先行波をフィルタにより除去する先行波等化部(702)と、前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変える設定部(614)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送の変調方式として、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が用いられている。OFDM方式は、伝送帯域内に多数の直交する副搬送波(サブキャリア)を設け、それぞれのサブキャリアの振幅及び位相にデータを割り当て、PSK(Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)によりデジタル変調する方式である。また、OFDM方式は、ガードインターバルを設けることにより、マルチパス耐性を向上させることができる。
【0003】
また、既知の信号が含まれていない場合においても、OFDM信号の復調に用いられる適応等化フィルタの係数を、時間域のOFDM信号から生成することができる受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−153096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少ないフィルタ数で効率的に受信信号内の先行波及び遅延波を除去することができる受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
受信装置は、受信信号内の遅延波をフィルタにより除去する遅延波等化部と、前記受信信号内の先行波をフィルタにより除去する先行波等化部と、前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変える設定部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
少ないフィルタ数で効率的に受信信号内の先行波及び遅延波を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(A)はマルチパスを説明するための遅延プロファイルを示す図であり、図1(B)はガードインターバルを説明するための図である。
【図2】受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の等化部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3の先行波等化フィルタの構成例を示す図である。
【図5】図3の遅延波等化フィルタの構成例を示す図である。
【図6】第1の実施形態による受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の等化部の構成例を示す図である。
【図8】FIRフィルタの構成例を示す図である。
【図9】タップ係数演算部の構成例を示す図である。
【図10】タップ係数演算方式が第1のタイプの場合の図7の遅延波演算部内のタップ係数演算部の動作を説明するための図である。
【図11】タップ係数演算方式が第1のタイプの場合の図7の先行波演算部内のタップ係数演算部の動作を説明するための図である。
【図12】タップ係数演算方式が第1のタイプの場合の問題点を説明するための図である。
【図13】タップ係数演算方式が第2のタイプの場合の図7の遅延波演算部内のタップ係数演算部の動作を説明するための図である。
【図14】タップ係数演算方式が第2のタイプの場合の図7の先行波演算部内のタップ係数演算部の動作を説明するための図である。
【図15】図6の等化部構成設定部の処理例を示すフローチャートである。
【図16】図6の等化パス選択部の処理例を示すフローチャートである。
【図17】図17(A)及び(B)は遅延プロファイルを示す図である。
【図18】図18(A)及び(B)は遅延プロファイルを示す図である。
【図19】第2の実施形態による等化部の構成例を示す図である。
【図20】第3の実施形態による等化部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(参考技術)
図1(A)は、マルチパスを説明するための遅延プロファイルを示す図であり、横軸がパス遅延量を示し、縦軸が電力を示す。マルチパスでは、送信装置から無線送信された信号が建物等の障害物によって反射・回折し、受信装置が複数の経路(パス)から同じ信号を遅延量が異なる主波A0、先行波A1及び遅延波A2として受信してしまう。主波A0は、マルチパスの中で最も電力が大きいパスの信号波である。先行波A1は、主波A0に対して遅延量τ1進んでいるパスの干渉波である。遅延波A2は、主波A0に対して遅延量τ2遅れているパスの干渉波である。受信装置は、受信信号内の先行波A1及び遅延波A2を除去し、主波A0を基に復調を行う。
【0010】
図1(B)は、ガードインターバルTgを説明するための図である。マルチパスが発生すると、送信装置から受信装置に直接届く電波に比べて、障害物で反射した信号波は遅れて到着するため、受信時は主波A0は先行波A1と遅延波A2を重ね合わせた合成波となる。このとき、主波A0に対し先行波A1と遅延波A2の前後のシンボルの信号が重なってしまうため、その部分がお互いに干渉し合い信号を正しく復調することが困難となる。そこで、ガードインターバルTgを設けることにより、マルチパス耐性を向上させる。ODFM方式では、データを変調した有効シンボルTの信号をそのまま送信するのではなく、有効シンボルTの後部データG2をコピーして、有効シンボルTの前にガードインターバル部G1として追加したOFDMシンボルTsを送信する。ガードインターバル部G1と後部データG2とは、同じデータである。この有効シンボルTにガードインターバルTgを付加することにより、先行波A1と遅延波A2の遅延量がガードインターバルTg以内の場合、同じシンボルの信号が重なることとなるため、干渉は発生せず先行波A1及び遅延波A2を除去することが可能になる。このようにして、先行波A1及び遅延波A2を除去することにより、マルチパスの影響を最小限に抑えることができる。
【0011】
図2は、受信装置の構成例を示すブロック図である。RF部202は、アンテナ201を介して無線受信したOFDM信号を増幅し、高周波数(RF)帯域から中間周波数(IF)帯域へのダウンコンバート処理を行う。アナログデジタル変換部203は、RF部202の出力信号をアナログからデジタルに変換する。直交復調部204は、アナログデジタル変換部203の出力信号に対して搬送波周波数のキャリア信号を用いて直交復調し、中間周波数帯域からベースバンド帯域に変換する。等化部205は、直交復調部204の出力信号X1(t)内の先行波A1及び遅延波A2をフィルタにより除去し、主波A0の信号X3(t)を出力する。ガードインターバル除去部206は、等化部205の出力信号X3(t)内のガードインターバルTgを除去し、有効シンボルTを出力する。高速フーリエ変換(FFT)部207は、ガードインターバル除去部206の出力信号を時間領域から周波数領域へ高速フーリエ変換する。OFDM信号を周波数領域に変換することにより、送信装置のOFDM変調時に各サブキャリアに割り振られたデータを抽出することができる。高速フーリエ変換部207は、そのデータ中に割り当てられたデータの中からパイロット信号やプリアンブル信号といった既知信号を抽出して伝搬路推定部208に出力する。伝搬路推定部208は、既知信号を用いて、全サブキャリアの伝搬路特性を推定し、その推定した伝搬路特性を伝搬路補償部212に出力する。伝搬路補償部212は、推定された伝搬路特性を用いて、高速フーリエ変換部207の出力信号の伝搬路による歪みを補償する。誤り訂正復調部213は、伝搬路補償部212の出力信号に対して、送信装置のOFDM変調時に施された誤り訂正処理の復調処理を行い、データの判定を行う。
【0012】
また、逆高速フーリエ変換(IFFT)部209は、伝搬路推定部208から出力される伝搬路特性を周波数領域から時間領域へ逆高速フーリエ変換する。パスプロファイル推定部210は、逆高速フーリエ変換(IFFT)部209の出力信号を基に、伝搬路のパス遅延量を推定し、図1(A)のような遅延プロファイルh(t)を生成する。等化パス選択部211は、遅延プロファイルh(t)を基に、等化部205で除去を行う先行波A1及び遅延波A2のパスの選択を行い、等化部205で設定されるタップ遅延量τ1及びτ2を出力する。等化部205は、タップ遅延量τ1及びτ2を基に、等化パス選択部211で選択されたパスの先行波A1及び遅延波A2の除去を行う。
【0013】
図3は、図2の等化部205の構成例を示すブロック図である。等化部205は、先行波等化フィルタ301、遅延波等化フィルタ302及び係数演算部303,304を有する。先行波等化フィルタ301は、タップ遅延量τ1及びタップ係数(フィルタ係数)W(t)を基に、受信信号X1(t)内の先行波A1を除去し、主波A0及び遅延波A2を含む信号X2(t)を出力する。係数演算部303は、信号X1(t)及びX2(t)を基にタップ係数W(t)を演算し、タップ係数W(t)を先行波等化フィルタ301に出力する。遅延波等化フィルタ302は、タップ遅延量τ2及びタップ係数W(t)を基に、信号X2(t)内の遅延波A2を除去し、主波A0を含む信号X3(t)を出力する。係数演算部304は、信号X2(t)及びX3(t)を基にタップ係数W(t)を演算し、タップ係数W(t)を遅延波等化フィルタ302に出力する。
【0014】
図4は、図3の先行波等化フィルタ301の構成例を示す図である。先行波等化フィルタ301は、有限インパルス応答(FIR)フィルタで構成される。固定遅延回路421は、信号X1(t)を固定遅延量Dm遅延し、信号X1(t−Dm)を出力する。遅延素子401は、信号X1(t)を1クロック分遅延する。遅延素子402は、遅延素子401の出力信号を1クロック分遅延する。遅延素子403は、遅延素子402の出力信号を1クロック分遅延する。同様に、遅延素子40mは、前段の遅延素子の出力信号を1クロック分遅延する。タップ係数W(t)は、m個のタップ係数W0〜Wmを有する。乗算器410は、信号X1(t)及びタップ係数W0の乗算を行う。乗算器411は、遅延素子401の出力信号及びタップ係数W1の乗算を行う。乗算器412は、遅延素子402の出力信号及びタップ係数W2の乗算を行う。乗算器413は、遅延素子403の出力信号及びタップ係数W3の乗算を行う。同様に、乗算器41mは、遅延素子40mの出力信号及びタップ係数Wmの乗算を行う。加算器422は、m個の乗算器410〜41mの出力信号を加算し、先行波レプリカ信号Y(t−Dm)を出力する。減算器423は、信号X1(t−Dm)から先行波レプリカ信号Y(t−Dm)を減算することにより、先行波A1が除去された信号X2(t)を出力する。
【0015】
m個の遅延素子401〜40m及びm個の乗算器410〜41mは、マルチパスの先行波A1のパス数に対応する数が必要になる。発生するパスの遅延量及びパス数に比例して、遅延素子401〜40m及び乗算器410〜41mの数が増加する。そのため、想定するパス遅延量やパス数が大きいほど、先行波等化フィルタ301の回路規模が大きくなってしまうという問題点がある。
【0016】
図5は、図3の遅延波等化フィルタ302の構成例を示す図である。遅延波等化フィルタ302は、有限インパルス応答(FIR)フィルタを帰還した無限インパルス応答(IIR)フィルタで構成される。減算器521は、信号X2(t)から遅延波レプリカ信号Y(t)を減算することにより、遅延波A2が除去された信号X3(t)を出力する。遅延素子501は、信号X3(t)を1クロック分遅延する。遅延素子502は、遅延素子501の出力信号を1クロック分遅延する。遅延素子503は、遅延素子502の出力信号を1クロック分遅延する。同様に、遅延素子50mは、前段の遅延素子の出力信号を1クロック分遅延する。タップ係数W(t)は、m個のタップ係数W0〜Wmを有する。乗算器510は、信号X3(t)及びタップ係数W0の乗算を行う。乗算器511は、遅延素子501の出力信号及びタップ係数W1の乗算を行う。乗算器512は、遅延素子502の出力信号及びタップ係数W2の乗算を行う。乗算器513は、遅延素子503の出力信号及びタップ係数W3の乗算を行う。同様に、乗算器51mは、遅延素子50mの出力信号及びタップ係数Wmの乗算を行う。加算器522は、m個の乗算器510〜51mの出力信号を加算し、遅延波レプリカ信号Y(t)を出力する。減算器521は、信号X2(t)から遅延波レプリカ信号Y(t)を減算することにより、遅延波A2が除去された信号X3(t)を出力する。
【0017】
m個の遅延素子501〜50m及びm個の乗算器510〜51mは、マルチパスの遅延波A2のパス数に対応する数が必要になる。発生するパスの遅延量及びパス数に比例して、遅延素子501〜50m及び乗算器510〜51mの数が増加する。そのため、想定するパス遅延量やパス数が大きいほど、遅延波等化フィルタ302の回路規模が大きくなってしまうという問題点がある。
【0018】
以下、先行波等化フィルタ301及び遅延波等化フィルタ302の回路規模を小さくすることができる受信装置の実施形態を説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図6は、第1の実施形態による受信装置の構成例を示すブロック図である。図6の受信装置は、図2の受信装置に対して、等化部構成設定部614を追加したものである。また、図6の等化部605及び等化パス選択部611は、図2の等化部205及び等化パス選択部211に対して構成が異なる。受信装置は、例えば地上デジタル通信(DVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial))等の受信装置に用いることができる。
【0020】
RF部202は、アンテナ201を介して無線受信したOFDM信号を増幅し、高周波数(RF)帯域から中間周波数(IF)帯域に変換する。アナログデジタル変換部203は、RF部202の出力信号をアナログからデジタルに変換する。直交復調部204は、アナログデジタル変換部203の出力信号に対して搬送波周波数のキャリア信号を用いて直交復調し、中間周波数帯域からベースバンド帯域に変換する。等化部605は、直交復調部204の出力信号X1(t)内の先行波A1及び遅延波A2をフィルタにより除去し、主波A0の信号X3(t)を出力する。ガードインターバル除去部206は、等化部605の出力信号X3(t)内のガードインターバルTgを除去し、有効シンボルTを出力する。高速フーリエ変換(FFT)部207は、ガードインターバル除去部206の出力信号を時間領域から周波数領域へ高速フーリエ変換する。OFDM信号を周波数領域に変換することにより、送信装置のOFDM変調時に各サブキャリアに割り振られたデータを抽出することができる。高速フーリエ変換部207は、そのデータ中に割り当てられたデータの中からパイロット信号やプリアンブル信号といった既知信号を抽出して伝搬路推定部208に出力する。伝搬路推定部208は、既知信号を用いて、全サブキャリアの伝搬路特性を推定し、その推定した伝搬路特性を伝搬路補償部212に出力する。伝搬路補償部212は、推定された伝搬路特性を用いて、高速フーリエ変換部207の出力信号の伝搬路による歪みを補償する。誤り訂正復調部213は、伝搬路補償部212の出力信号に対して、送信装置のOFDM変調時に施された誤り訂正処理の復調処理を行い、データの判定を行う。
【0021】
また、逆高速フーリエ変換(IFFT)部209は、伝搬路推定部208から出力される伝搬路特性を周波数領域から時間領域へ逆高速フーリエ変換する。パスプロファイル推定部210は、逆高速フーリエ変換(IFFT)部209の出力信号を基に、伝搬路のパス遅延量を推定し、図1(A)のような遅延プロファイルh(t)を生成する。等化部605で使用可能なフィルタ数のリソースは有限個であり、等化部605はフィルタ数に対応するパス数の先行波A1及び遅延波A2を除去することができる。マルチパスでは、複数の先行波A1及び複数の遅延波A2が存在し得る。等化パス選択部611は、遅延プロファイルh(t)を基に、電力が大きい順に、先行波A1及び遅延波A2のパスを選択する。この際、等化パス選択部611は、先行波A1のパス数N及び遅延波A2のパス数Mの合計が、存在するフィルタ数以下になるようにパスの選択を行い、選択したN個の先行波A1のタップ遅延量τ1及び選択したM個の遅延波A2のタップ遅延量τ2を等化部605及び等化部構成設定部614へ出力する。等化部構成設定部614は、先行波A1のパス数N、遅延波A2のパス数M、及びタップ係数演算方式TPを等化部605に出力する。等化部605は、N個のフィルタを用いて先行波A1を除去し、M個のフィルタを用いて遅延波A2を除去する。また、等化部605は、N個のタップ遅延量τ1を用いてN個の先行波A1を除去し、M個のタップ遅延量τ2を用いてM個の遅延波A2を除去する。また、等化部605は、タップ係数演算方式TPに応じてタップ係数を演算し、先行波A1及び遅延波A2を除去する。
【0022】
本実施形態は、存在する有限個のフィルタを用いて電力が大きいパスの先行波A1及び遅延波A2を除去することにより、少ないフィルタで効率的に受信信号内の先行波A1及び遅延波A2を除去することができる。
【0023】
図7は、図6の等化部605の構成例を示す図である。等化パス選択部611は、N個の先行波A1に対応するN個のタップ遅延量τ1及びM個の遅延波A2に対応するM個のタップ遅延量τ2を出力する。等化部構成設定部614は、先行波フィルタ数N、遅延波フィルタ数M、及びタップ係数演算方式TPを出力する。タップ係数演算方式TPは、第1のタイプ又は第2のタイプである。
【0024】
遅延波等化部701は、減算器751及びM個のFIRフィルタ711〜71Mを有し、受信信号X1(t)内のM個の遅延波A2をM個のFIRフィルタ711〜71Mにより除去し、M個の遅延波A2が除去された信号X2(t)を出力する。遅延メモリ部754は、受信信号X1(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、受信信号X1(t)をM個のタップ遅延量τ2遅延させたM個の信号X4(t)を出力する。遅延メモリ部755は、信号X2(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、信号X2(t)をM個のタップ遅延量τ2遅延させたM個の信号X5(t)を出力する。また、遅延メモリ部755は、信号X2(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、信号X2(t)をM個の遅延量(T−τ2)遅延させたM個の信号X6(t)を出力する。ここで、Tは、図1(B)に示す有効シンボル長である。
【0025】
遅延波演算部703は、M個のタップ係数演算部731〜73Mを有し、信号X4(t)及びX6(t)を基に、遅延波等化部701内のM個のFIRフィルタ711〜71MのM個のタップ係数W(t)をM個のタップ係数演算部731〜73Mにより演算する。ここで、タップ係数演算方式TPが第1のタイプのときには、信号X4(t)は信号X1(t)をタップ遅延量τ2遅延させた信号X1(t−τ2)になり、タップ係数演算方式TPが第2のタイプのときには、信号X4(t)は信号X1(t)と同じ信号になる。また、タップ係数演算方式TPが第1のタイプのときには、信号X6(t)は信号X2(t)と同じ信号になり、タップ係数演算方式TPが第2のタイプのときには、信号X6(t)は信号X2(t)を遅延量(T−τ2)遅延させた信号X2(t−(T−τ2))になる。
【0026】
遅延波等化部701内のFIRフィルタ711〜71Mは、M個のタップ係数W(t)を用いて、M個の信号X5(t)をフィルタリングする。M個のFIRフィルタ711〜71Mの出力信号を加算した信号は、M個の遅延波A2のレプリカ信号になる。減算器751は、受信信号X1(t)から、M個のFIRフィルタ711〜71Mの出力信号を加算した信号を減算し、M個の遅延波A2が除去された信号X2(t)を出力する。
【0027】
次に、先行波等化部702について説明する。先行波等化部702は、遅延回路752、減算器753及びN個のFIRフィルタ721〜72Nを有し、信号X2(t)内のN個の先行波A1をN個のFIRフィルタ721〜72Nにより除去し、N個の先行波A1が除去された信号X3(t)を出力する。遅延回路752は、信号X2(t)を遅延量Dm遅延させた信号を出力する。遅延メモリ部755は、信号X2(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、信号X2(t)をN個の遅延量(Dm−τ1)遅延させたN個の信号X7(t)を出力する。N個のFIRフィルタ721〜72Nは、先行波演算部704により演算されたN個のタップ係数W(t)を用いて、N個の信号X7(t)をフィルタリングする。N個のFIRフィルタ721〜72Nの出力信号を加算した信号は、N個の先行波A1のレプリカ信号になる。減算器753は、遅延回路752の出力信号から、N個のFIRフィルタ721〜72Nの出力信号を加算した信号を減算し、N個の先行波A1が除去された信号X3(t)を出力する。
【0028】
次に、先行波演算部704について説明する。先行波演算部704は、N個のタップ係数演算部741〜74Nを有し、信号X7(t)及びX3(t)を基に、先行波等化部702内のN個のFIRフィルタ721〜72NのN個のタップ係数W(t)をN個のタップ係数演算部741〜74Nにより演算し、N個のタップ係数W(t)を先行波等化部702に出力する。
【0029】
図8は、図7のM個のFIRフィルタ711〜71M及びN個のFIRフィルタ721〜72Nの各構成例を示す図である。FIRフィルタ711〜71M及びFIRフィルタ721〜72Nは、すべて同じ構成を有する。FIRフィルタ800は、図7のFIRフィルタ711〜71M及びFIRフィルタ721〜72Nに対応する。FIRフィルタ800は、入力信号IN(t)を入力し、出力信号OUT(t)を出力する。FIRフィルタ800が図7のFIRフィルタ711〜71Mの場合には入力信号IN(t)は図7の信号X5(t)に対応し、FIRフィルタ800が図7のFIRフィルタ721〜72Nの場合には入力信号IN(t)は図7の信号X7(t)に対応する。1個のFIRフィルタ800は、1個の先行波A1又は1個の遅延波A2を除去するためのフィルタである。
【0030】
遅延素子801は、入力信号IN(t)を1クロック分遅延させて出力する。遅延素子802は、遅延素子801の出力信号を1クロック分遅延させて出力する。遅延素子803は、遅延素子802の出力信号を1クロック分遅延させて出力する。遅延素子804は、遅延素子803の出力信号を1クロック分遅延させて出力する。タップ係数W(t)は、5個のタップ係数W(−2),W(−1),W(0),W(1),W(2)を有する。乗算器810は、入力信号IN(t)及びタップ係数W(−2)を乗算して出力する。乗算器811は、遅延素子801の出力信号及びタップ係数W(−1)を乗算して出力する。乗算器812は、遅延素子802の出力信号及びタップ係数W(0)を乗算して出力する。乗算器813は、遅延素子803の出力信号及びタップ係数W(1)を乗算して出力する。乗算器814は、遅延素子804の出力信号及びタップ係数W(2)を乗算して出力する。加算器821は、5個の乗算器810〜814の出力信号を加算して出力信号OUT(t)を出力する。出力信号OUT(t)は、1個の先行波A1又は1個の遅延波A2のレプリカ信号になる。
【0031】
図9は、図7のM個のタップ係数演算部731〜73M及びN個のタップ係数演算部741〜74Nの各構成例を示す図である。タップ係数演算部731〜73M及びタップ係数演算部741〜74Nは、すべて同じ構成を有する。タップ係数演算部900は、図7のタップ係数演算部731〜73M及びタップ係数演算部741〜74Nに対応する。タップ係数演算部731〜73Mの場合、信号X4(t)がスイッチ941に入力され、信号X6(t)がスイッチ942に入力される。これに対し、タップ係数演算部741〜74Mの場合、信号X7(t)がスイッチ941に入力され、信号X3(t)がスイッチ942に入力される。動作信号T(t)が「1」の場合にはスイッチ941及び942がオンになり、動作信号T(t)が「0」の場合にはスイッチ941及び942がオフになる。共役複素数演算部943は、スイッチ942の出力信号の虚部の正負符号を反転することにより、スイッチ942の出力信号の共役複素数を出力する。すなわち、共役複素数演算部943は、a+ibの複素数を入力し、その共役複素数としてa−ibを出力する。
【0032】
遅延素子901は、スイッチ941の出力信号を1クロック分遅延させる。遅延素子902は、遅延素子901の出力信号を1クロック分遅延させる。遅延素子903は、遅延素子902の出力信号を1クロック分遅延させる。遅延素子904は、遅延素子903の出力信号を1クロック分遅延させる。
【0033】
乗算器910は、スイッチ941が出力する複素数信号と共役複素数演算部943が出力する共役複素数信号とを乗算する。乗算器911は、遅延素子901の出力信号と共役複素数演算部943が出力する共役複素数信号とを乗算する。乗算器912は、遅延素子902の出力信号と共役複素数演算部943が出力する共役複素数信号とを乗算する。乗算器913は、遅延素子903の出力信号と共役複素数演算部943が出力する共役複素数信号とを乗算する。乗算器914は、遅延素子904の出力信号と共役複素数演算部943が出力する共役複素数信号とを乗算する。乗算器910〜914は、例えば、複素数信号a+ib及び共役複素数信号a−ibを乗算し、a2+b2を出力する。
【0034】
5個の減衰器920〜924は、それぞれ、5個の乗算器910〜914の出力信号をステップ幅β倍することにより減衰させる。積分回路930は、減衰器920の出力信号を積分することにより平均化し、タップ係数W(−2)を出力する。積分回路931は、減衰器921の出力信号を積分することにより平均化し、タップ係数W(−1)を出力する。積分回路932は、減衰器922の出力信号を積分することにより平均化し、タップ係数W(0)を出力する。積分回路933は、減衰器923の出力信号を積分することにより平均化し、タップ係数W(1)を出力する。積分回路934は、減衰器924の出力信号を積分することにより平均化し、タップ係数W(2)を出力する。タップ係数W(−2),W(−1),W(0),W(1),W(2)は、タップ係数W(t)として出力される。
【0035】
図10は、タップ係数演算方式TPが第1のタイプの場合の図7の遅延波演算部703内のタップ係数演算部731〜73Mの動作を説明するための図である。タップ係数演算部731〜73Mは、図9のタップ係数演算部900と同じ構成を有する。第1のタイプでは、動作信号T(t)は、常に「1」であり、図9のスイッチ941及び942がオンしている。等化前信号X4(t)は、主波成分A0及び遅延波成分A2を有し、図7号X1(t)をタップ遅延量τ2遅延させた信号である。等化後信号X6(t)は、主波成分A0及び遅延波等化部701により減衰した遅延波成分A2を有し、図7の信号X2(t)と同じ信号である。遅延波成分A2は、主波成分A0に対して遅延量τ2遅延している。これに対応し、信号X4(t)は、信号X6(t)に対して遅延量τ2遅延させた信号になっている。これにより、信号X6(t)の遅延波成分A2と信号X4(t)の主波成分A0との信号同期が成立し、図9の乗算器910〜914は、相関演算により誤差量を出力する。これにより、1個の遅延波A2を除去するための5個のタップ係数W(−2)〜W(2)が生成される。
【0036】
上記のように、乗算器910〜914が、等化信号X4(t)と等化後信号(誤差信号)X6(t)との相関を取り、積分回路930〜934が、その積分を行うことにより、タップ係数W(−2)〜W(2)が求まる。遅延量τ2の遅延波A2を除去する場合、遅延量τ2に相当するタップ係数W(t)は、次式で表される。ここで、X4(t)=X1(t−τ2)、X6(t)=X2(t)である。
【0037】
W(t)=W(t−Δt)+β×X4(t)×X6(t)
=W(t−Δt)+β×X1(t―τ2)×X2(t)
【0038】
X1(t)は遅延波等化部701の入力信号であり、X2(t)は遅延波等化部701の出力信号である。Δtは1クロック時間であり、タップ係数W(t−Δt)はタップ係数W(t)の1クロック前のタップ係数である。上式のように、遅延量τ2遅延させた信号X1(t−τ2)を信号X4(t)にすることにより、信号X4(t)の主波成分A0と信号X6(t)の遅延波成分A2との信号同期が成立する。動作信号T(t)を常に「1」にすることにより、受信信号の全区間において、タップ係数W(t)を演算する。上式によりタップ係数W(t)を求めることにより、等化後信号X6(t)の遅延波(干渉波)A2が最小の方向に進むためのタップ係数W(t)を求めることができる。
【0039】
図11は、タップ係数演算方式TPが第1のタイプの場合の図7の先行波演算部704内のタップ係数演算部741〜74Nの動作を説明するための図である。タップ係数演算部741〜74Nは、図9のタップ係数演算部900と同じ構成を有する。第1のタイプでは、動作信号T(t)は、常に「1」であり、図9のスイッチ941及び942がオンしている。等化前信号X7(t)は、主波成分A0及び先行波成分A1を有し、図7の信号X2(t)を遅延量(Dm−τ1)遅延させた信号である。等化後信号X3(t)は、主波成分A0及び先行波等化部702により減衰した先行波成分A1を有する。主波成分A0は、先行波成分A1に対して遅延量τ1遅延している。これに対応し、信号X7(t)は、信号X2(t)に対して遅延量(Dm−τ1)遅延させた信号になっている。また、信号X3(t)は、遅延回路752により信号X2(t)に対して遅延量Dm遅延し、信号X7(t)に対して遅延量τ1遅延している。これにより、信号X7(t)の主波成分A0と信号X3(t)の先行波成分A1との信号同期が成立し、図9の乗算器910〜914は、相関演算により誤差量を出力する。これにより、1個の先行波A1を除去するための5個のタップ係数W(−2)〜W(2)が生成される。
【0040】
図12は、タップ係数演算方式TPが第1のタイプの場合の問題点を説明するための図である。図10の遅延波演算部703の例を説明する。信号X4(t)及びX6(t)において、主波A0に対する先行波A1の遅延量の絶対値はτであり、主波A0に対する遅延波A2の遅延量の絶対値はτであり、両者の遅延量の絶対値がτで同じである場合がある。その場合、先行波A1及び主波A0の相関と、主波A0及び遅延波A2の相関が混合され、タップ係数W(t)に誤差が生じてしまう。そこで、先行波A1の遅延量の絶対値τと遅延波A2の遅延量の絶対値τとが同じ場合には、タップ係数演算方式TPを下記の第2のタイプにして、誤差が低減されたタップ係数W(t)を演算する。
【0041】
図13は、タップ係数演算方式TPが第2のタイプの場合の図7の遅延波演算部703内のタップ係数演算部731〜73Mの動作を説明するための図である。タップ係数演算部731〜73Mは、図9のタップ係数演算部900と同じ構成を有する。等化前信号X4(t)は、主波成分A0及び遅延波成分A2を有し、図7の信号X1(t)と同じ信号である。等化後信号X6(t)は、主波成分A0及び遅延波等化部701により減衰した遅延波成分A2を有し、図7の信号X2(t)を遅延量(T−τ2)遅延させた信号である。ここで、Tは、図1(B)の有効シンボル長である。遅延波成分A2は、主波成分A0に対して遅延量τ2遅延している。これに対応し、等化後信号X6(t)は、信号X2(t)に対して遅延量(T−τ2)遅延させた信号になっている。これにより、等化後信号X6(t)の遅延波成分A2のガードインターバル部G1と等化前信号X4(t)の主波成分A0のガードインターバルコピー元データG2との信号同期が成立する。ガードインターバル部G1とガードインターバルコピー元データG2とは、図1(B)に示したように同じデータである。そこで、動作信号T(t)は、等化後信号X6(t)の遅延波成分A2のガードインターバル部G1が存在するガードインターバル区間Tgのみ「1」になり、その他の区間では「0」になる。これにより、図9の乗算器910〜914は、上記のガードインターバル区間Tgのみ、相関演算により誤差量を出力する。これにより、1個の遅延波A2を除去するための5個のタップ係数W(−2)〜W(2)が生成される。
【0042】
上記のように、乗算器910〜914が、等化信号X4(t)の主波成分A0のガードインターバルコピー元データG2と等化後信号(誤差信号)X6(t)の遅延波成分A2のガードインターバル部G1との相関を取り、積分回路930〜934が、その積分を行うことにより、タップ係数W(−2)〜W(2)が求まる。遅延量τ2の遅延波A2を除去する場合、遅延量τ2に相当するタップ係数W(t)は、次式で表される。ここで、X4(t)=X1(t)、X6(t)=X2(t−(T−τ2))である。
【0043】
W(t)=W(t−Δt)+β×X4(t)×X6(t)
=W(t−Δt)+β×X1(t)×X2(t−(T−τ2))
【0044】
このように、等化後信号X2(t)を遅延量(T−τ2)遅延させた信号X6(t)を用いることにより、等化前信号X4(t)の主波成分A0のガードインターバルコピー元データG2と等化後信号X6(t)の遅延波成分A2のガードインターバル部G1とのタイミングを一致させることができる。その両者が一致するガードインターバル区間Tgのみ動作信号T(t)を「1」にし、タップ係数W(t)の演算を行う。
【0045】
上記の方法では、等化前信号X4(t)と等化後信号X6(t)とのタイムラグが(T−τ2)となるので、図12のように、先行波A1と遅延波A2の遅延量の絶対値τが同じになる場合においても、お互いに影響しないように、高精度のタップ係数W(t)を演算することができる。
【0046】
ただし、第2のタイプは、ガードインターバル区間Tgしかタップ係数W(t)の演算を行わないので、タップ係数W(t)の演算速度が遅く、第1のタイプより等化性能が劣化する傾向にある。特に、先行波A1の等化については遅延波A2の等化と異なり、フィードバック帰還を行わないため、その傾向が大きくなる。したがって、図12の問題が生じない場合には、第1のタイプを選択することが好ましい。
【0047】
図14は、タップ係数演算方式TPが第2のタイプの場合の図7の先行波演算部704内のタップ係数演算部741〜74Nの動作を説明するための図である。タップ係数演算部741〜74Nは、図9のタップ係数演算部900と同じ構成を有する。等化前信号X7(t)は、主波成分A0及び先行波成分A1を有し、図7の信号X2(t)を遅延量(Dm+(T−τ1))遅延させた信号である。ここで、Tは、図1(B)の有効シンボル長である。等化後信号X3(t)は、主波成分A0及び先行波等化部702により減衰した先行波成分A1を有し、図7の信号X2(t)に対して遅延量Dm遅延している。主波成分A0は、先行成分A1に対して遅延量τ1遅延している。これに対応し、等化前信号X7(t)は、等化後信号X3(t)に対して遅延量(T−τ1)遅延している。これにより、等化前信号X7(t)の主波成分A0のガードインターバル部G1と等化後信号X3(t)の先行波成分A1のガードインターバルコピー元データG2との信号同期が成立する。ガードインターバル部G1とガードインターバルコピー元データG2とは、図1(B)に示したように同じデータである。そこで、動作信号T(t)は、等化前信号X7(t)の主波成分A0のガードインターバル部G1が存在するガードインターバル区間Tgのみ「1」になり、その他の区間では「0」になる。これにより、図9の乗算器910〜914は、上記のガードインターバル区間Tgのみ、相関演算により誤差量を出力する。これにより、1個の先行波A1を除去するための5個のタップ係数W(−2)〜W(2)が生成される。
【0048】
なお、図7では、遅延波等化部701が前段に設けられ、先行波等化部702が後段に設けられている。この場合、先行波等化部702は、遅延波等化部701が遅延波A2を除去した信号X2(t)を入力する。先行波等化部702の入力信号X2(t)は、遅延波A2が除去されているので、図12の問題は生じない。したがって、先行波演算部704は、常に、図11の第1のタイプのタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算することが好ましい。
【0049】
図16は図6の等化パス選択部611の処理例を示すフローチャートであり、図17(A),(B)及び図18(A),(B)は遅延プロファイルh(t)を示す図である。図6のパスプロファイル推定部210は、例えば図17(A)に示す遅延プロファイルh(t)を生成する。図17(A)は横軸が遅延量τを示し、縦軸が電力を示す。主波A0の遅延量τは0であり、先行波A1の遅延量τは負値であり、遅延波A2の遅延量τは正値である。
【0050】
ステップS1601では、等化パス選択部611は、パスプロファイル推定部210より図17(A)の遅延プロファイルh(t)を入力する。次に、図17(B)に示すように、等化パス選択部611は、受信信号内の先行波A1及び遅延波A2の電力が閾値Tr以上である先行波A1及び遅延波A2を選択する。次に、等化パス選択部611は、上記の選択した先行波A1の数N(例えばN=3)及び遅延波A2の数M(例えばM=4)を数え、上記の選択したN個の先行波A1のそれぞれの遅延量τ1及びそれぞれの電力Pnを取得し、上記の選択したM個の遅延波A2のそれぞれの遅延量τ2及びそれぞれの電力Pmを取得する。
【0051】
次に、ステップS1602では、等化パス選択部611は、先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mの合計が閾値Kより大きいか否かを判定する。ここで、閾値Kは、存在するFIRフィルタ数(リソース数)と同じ値である。上記の合計が閾値Kより大きければステップS1603に進み、閾値K以下であればステップS1604に進む。
【0052】
ステップS1603では、等化パス選択部611は、閾値Trをより大きな値に変更し、ステップS1601の処理を繰り返す。閾値Trを大きくすると、閾値Tr以上である先行波A1の数N及び/又は遅延波A2の数Mは減る。ステップS1602において、先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mの合計が閾値Tr以下になるまで、上記のループ処理を繰り返す。
【0053】
ステップS1604では、等化パス選択部611は、先行波A1の数Nが0か否かを判定する。先行波A1の数Nが0であればステップS1607へ進み、1以上であればステップS1605へ進む。
【0054】
ステップS1605では、等化パス選択部611は、先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mの合計が閾値Kと同じであるか否かを判定する。上記の合計が閾値Kと同じであるときにはステップS1607へ進み、閾値Kより小さいときにはステップS1606へ進む。
【0055】
ステップS1606では、等化パス選択部611は、図18(A)に示すように、選択した先行波A1の中で最も大きい電力Pnを持つ先行波1801を選択する。次に、等化パス選択部611は、図18(B)に示すように、選択した先行波1801の子成分である先行波1802を遅延プロファイルh(t)に追加し、先行波A1の数Nを1増加させる。例えば、先行波A1の数Nは4になる。この際、等化パス選択部611は、選択した先行波1801の遅延量をτ、電力をPとしたとき、子成分の先行波1802の遅延量を2×τ、電力をP/2(=−3dB)に設定する。子成分の先行波1802は、先行波1801の反射等により生ずる干渉波として推定するものである。図7に示すように、遅延波等化部701は、フィードバック処理により遅延波A2を除去するために遅延波A2の子成分を比較的高精度で除去することができる。それに対し、先行波等化部702は、フィードバック処理ではないため、先行波A1の子成分を除去することが比較的困難である。そこで、ステップS1606では、最も電力が大きい先行波1801の子成分の先行波1802を推定することにより、子成分の先行波1802を高精度で除去することができる。
【0056】
その後、等化パス選択部611は、上記の最も電力が大きい先行波1801を処理対象から除外し、上記のステップS1605の処理を繰り返す。すなわち、その後のステップS1606では、2番目に電力が大きい先行波A1の子成分の先行波を追加する処理を行う。ステップS1605において、先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mの合計が閾値Kと同じになるまで、上記のループ処理を繰り返す。
【0057】
ステップS1607では、等化パス選択部611は、N個の先行波A1のそれぞれの遅延量τ1及びM個の遅延波A2のそれぞれの遅延量τ2を等化部605及び等化部構成設定部614に出力し、先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mを等化部構成設定部614に出力する。
【0058】
図15は、図6の等化部構成設定部614の処理例を示すフローチャートである。ステップS1501では、等化部構成設定部614は、等化パス選択部611からN個の遅延量τ1及びM個の遅延量τ2を入力する。また、等化部構成設定部614は、等化パス選択部611から先行波A1の数N及び遅延波A2の数Mを入力する。
【0059】
次に、ステップS1502では、等化部構成設定部614は、受信信号内のN個の先行波A1の中の1つの先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内のM個の遅延波A2の中の1つの遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とが同じであるときには、図12の条件を満たすので、ステップS1504に進み、受信信号内のN個の先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内のM個の遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とがすべて異なるときには、図12の条件を満たさないので、ステップS1503に進む。
【0060】
ステップS1503では、等化部構成設定部614は、遅延波演算部703のタップ係数演算方式TPとして第1のタイプ(図10)を選択し、ステップS1505に進む。
【0061】
ステップS1504では、等化部構成設定部614は、遅延波演算部703のタップ係数演算方式TPとして第2のタイプ(図13)を選択し、ステップS1505に進む。
【0062】
ステップS1505では、等化部構成設定部614は、上記の選択したタップ係数演算方式TPを等化部605内の遅延波演算部703に出力する。なお、先行波等化部702は遅延波等化部701の後段に設けられるので、先行波演算部704のタップ係数演算方式TPは、上記のように、第1のタイプに固定する。また、等化部構成設定部614は、先行波A1の数Nを先行波フィルタ数として等化部605に出力し、遅延波A2の数Mを遅延波フィルタ数として等化部605に出力する。
【0063】
上記のように、図16のステップS1602の閾値Kは、存在するFIRフィルタ数及びタップ係数演算部の数を示す。FIRフィルタの数KはN+Mであり、タップ係数演算部の数KもN+Mである。等化部構成設定部614は、K個のFIRフィルタのうち、M個のFIRフィルタ711〜71Mを遅延波等化部701に割り当て、N個のFIRフィルタ721〜72Nを遅延波等化部702に割り当てる。それと同様に、等化部構成設定部614は、K個のタップ係数演算部のうち、M個のタップ係数演算部731〜73Mを遅延波演算部703に割り当て、N個のタップ係数演算部741〜74Nを先行波演算部704に割り当てる。
【0064】
遅延波演算部703は、割り当てられたM個のタップ係数演算部731〜73Mを用いて、指定されたタップ係数演算方式TPでM個のタップ係数W(t)を演算し、遅延波等化部701に出力する。遅延波等化部701は、M個のタップ係数W(t)を入力し、割り当てられたM個のFIRフィルタ711〜71Mを用いて、M個の遅延波A2を除去した信号X2(t)を出力する。
【0065】
先行波演算部704は、割り当てられたN個のタップ係数演算部741〜74Nを用いて、第1のタイプ(図11)のタップ係数演算方式TPでN個のタップ係数W(t)を演算し、先行波等化部702に出力する。先行波等化部702は、N個のタップ係数W(t)を入力し、割り当てられたN個のFIRフィルタ721〜72Nを用いて、N個の先行波A1を除去した信号X3(t)を出力する。
【0066】
以上のように、等化部構成設定部614は、受信信号内の遅延波A2の数M及び先行波A1の数Nに応じて、遅延波等化部701に割り当てるFIRフィルタ711〜71Mの数M及び先行波等化部702に割り当てるFIRフィルタ721〜72Nの数Nを変える。それと同様に、等化部構成設定部614は、受信信号内の遅延波A2の数M及び先行波A1の数Nに応じて、遅延波演算部703に割り当てるタップ係数演算部731〜73Mの数M及び先行波演算部704に割り当てるタップ係数演算部741〜74Nの数Nを変える。
【0067】
具体的には、等化パス選択部611は、図17(A)及び(B)に示したように、受信信号内の遅延波A2及び先行波A1の電力が閾値Tr以上である遅延波A2及び先行波A1を選択する。等化部構成設定部614は、等化パス選択部611により選択された遅延波A2の数M及び先行波A1の数Nに対応し、遅延波等化部701に割り当てるFIRフィルタ711〜71Mの数M及び先行波等化部702に割り当てるFIRフィルタ721〜72Nの数Nを設定する。遅延波等化部701は、M個のタップ遅延量τ2を基に、等化パス選択部611により選択されたM個の遅延波A2をFIRフィルタ711〜71Mにより除去する。先行波等化部702は、N個のタップ遅延量τ1を基に、等化パス選択部611により選択されたN個の先行波A1をFIRフィルタ721〜72Nにより除去する。
【0068】
また、等化部構成設定部614は、図16に示すように、遅延波等化部701に割り当てるFIRフィルタ711〜71Mの数M及び先行波等化部702に割り当てるFIRフィルタ721〜72Nの数Nの合計が閾値K以下になるように、遅延波等化部701に割り当てるFIRフィルタ711〜71Mの数M及び先行波等化部702に割り当てるFIRフィルタ721〜72Nの数Nを変える。
【0069】
また、等化部構成設定部614は、図18(A)及び(B)に示すように、遅延波等化部701に割り当てるFIRフィルタ711〜71Mの数M及び先行波等化部702に割り当てるFIRフィルタ721〜72Nの数Nの合計が閾値Kより小さいときには、受信信号内で最も電力の大きい先行波1801の遅延量の2倍の遅延量を持つ先行波1802を除去するためのFIRフィルタを先行波等化部702に割り当てる。
【0070】
遅延波演算部703は、図15に示すように、受信信号内の先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内の遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とがすべて異なるときには、第1のタイプ(図10)のタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算し、受信信号内の先行波A1の中の1つの先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内の遅延波A2の中の1つの遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とが同じであるときには、第2のタイプ(図13)のタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算する。
【0071】
遅延波演算部703は、第1のタイプのタップ係数演算方式TPでは、図10に示すように、遅延波等化部701への入力信号X1(t)(X4(t))内の主波成分A0と遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X6(t))内の遅延波成分A2との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0072】
また、遅延波演算部703は、第2のタイプのタップ係数演算方式TPでは、図13に示すように、遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X6(t))内の遅延波成分A2のガードインターバル部G1の区間と遅延波等化部701への入力信号X1(t)(X4(t))内の主波成分A0のガードインターバルのコピー元G2の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0073】
先行波演算部704は、第1のタイプのタップ係数演算方式TPにより、図11に示すように、先行波等化部702への入力信号X2(t)(X7(t))内の主波成分A0と先行波等化部702からの出力信号X3(t)内の先行波成分A1との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0074】
以上のように、遅延波等化部701及び先行波等化部702で使用するFIRフィルタ800(図8)の構成は同じであるため、FIRフィルタ800の共有化が可能である。それと同様に、遅延波演算部703及び先行波演算部704で使用するタップ係数演算部900(図9)の構成は同じであるため、タップ係数演算部900の共有化が可能である。本実施形態では、遅延波等化部701及び先行波等化部702で使用するFIRフィルタをリソース共有化し、遅延波演算部703及び先行波演算部704で使用するタップ係数演算部をリソース共有化し、受信信号内の先行波A1及び遅延波A2の電力及びリソース数Kに応じて、FIRフィルタ及びタップ係数演算部のリソースの移動を行う。なお、図8のFIRフィルタ800及び図9のタップ係数演算部900は、タップ数を少なめに持つ。上記において、特に先行波等化部702の性能を向上させるため、FIRフィルタのリソースが許す限り、先行波A1の等化誤差が発生する子成分の遅延位置に、FIRフィルタを設ける。遅延波等化部701を前段に設け、その後段に先行波等化部702を設け、第2のタイプのタップ係数演算方式TPは前段の遅延波等化部701に対応する遅延波演算部703にしか用いない。
【0075】
本実施形態によれば、先行波A1及び遅延波A2のパス数及びリソース数Kに応じて、FIRフィルタ及びタップ係数演算部のリソースを移動させることにより、回路資源の有効化を実現し、回路規模を縮小することができる。特に、先行波A1が存在する場合は、リソースが許す限り、先行波A1の子成分を除去するためのFIRフィルタを追加することができるので、性能の向上に繋がる。例えば、4個のFIRフィルタのリソースがあるシステムでは、その半分の2個を先行波A1のFIRフィルタに割り当てるより、4個全てを先行波A1のFIRフィルタに割り当てた方が良くなる場合がある。
【0076】
また、遅延波演算部703は、第1のタイプ又は第2のタイプのタップ係数演算方式TPを選択し、先行波演算部704は、第1のタイプのタップ係数演算方式TPに固定する。これにより、等化部605の性能が向上する。
【0077】
(第2の実施形態)
図19は、第2の実施形態による等化部605(図6)の構成例を示す図である。図19の等化部605は、図7の等化部605に対して、遅延波演算部703が等化前信号X4(t)の代わりに等化後信号X9(t)を入力する点が異なる。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。遅延波演算部703は、図7の等化前信号X4(t)を入力する代わりに、等化後信号X9(t)を入力する。遅延メモリ部755は、等化後信号X2(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、等化後信号X2(t)をM個の遅延量τ2遅延させたM個の信号X9(t)を出力する。
【0078】
第1のタイプ(図10)のタップ係数演算方式TPでは、信号X9(t)は、等化後信号X2(t)を遅延量τ2遅延させた信号X2(t−τ2)であり、信号X6(t)は、等化後信号X2(t)と同じ信号である。
【0079】
第2のタイプ(図13)のタップ係数演算方式TPでは、信号X9(t)は、等化後信号X2(t)と同じ信号であり、信号X6(t)は、等化後信号X2(t)を遅延量(T−τ2)遅延させた信号X2(t−(T−τ2))である。
【0080】
遅延波演算部703は、第1の実施形態と同様に、M個の信号X9(t)及びM個の信号X6(t)を入力し、M個のタップ係数W(t)を演算する。
【0081】
遅延波演算部703は、第1のタイプ(図10)のタップ係数演算方式TPでは、遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X9(t))内の主波成分A0と遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X6(t))内の遅延波成分A2との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0082】
また、遅延波演算部703は、第2のタイプ(図13)のタップ係数演算方式TPでは、遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X6(t))内の遅延波成分A2のガードインターバル部G1の区間と遅延波等化部701からの出力信号X2(t)(X9(t)内の主波成分A0のガードインターバルのコピー元G2の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0083】
本実施形態では、遅延波演算部703は、等化前信号X1(t)を使用しないため、図7の遅延メモリ部754を削除することができる。
【0084】
(第3の実施形態)
図20は、第3の実施形態による等化部605(図6)の構成例を示す図である。図20の等化部605は、図7の等化部605に対して、先行波等化部702を前段に設け、遅延波等化部701を後段に設けた点が異なる。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0085】
先行波等化部702を前段に設けるため、先行波等化部702は、先行波A1及び遅延波A2を含む信号X1(t)を入力する。そのため、等化部構成設定部614は、図12の条件に応じて、第1のタイプ(図11)又は第2のタイプ(図14)のタップ係数演算方式TPを先行波演算部704に指示する。具体的には、先行波演算部704は、図15と同様に、受信信号内の先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内の遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とがすべて異なるときには、第1のタイプ(図11)のタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算し、受信信号内の先行波A1の中の1つの先行波A1の遅延量τ1の絶対値と受信信号内の遅延波A2の中の1つの遅延波A2の遅延量τ2の絶対値とが同じであるときには、第2のタイプ(図14)のタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算する。
【0086】
これに対し、遅延波等化部701を後段に設けるため、遅延波等化部701は、先行波等化部702により先行波A1が除去された信号X10(t)を入力する。そのため、図12の問題は生じず、遅延波演算部703は、常に、第1のタイプ(図10)のタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算する。
【0087】
遅延メモリ部754は、図7の遅延メモリ部755と同様に、信号X1(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、信号X1(t)をN個の遅延量(Dm−τ1)遅延させたN個の信号X11(t)を出力する。先行波等化部702は、図7の信号X7(t)の代わりに信号X11(t)を入力し、N個の先行波A1を除去した信号X10(t)を出力する。
【0088】
また、信号X13(t)は、等化後信号X10(t)と同じ信号である。遅延メモリ部754は、信号X1(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、信号X1(t)を遅延させたN個の信号X12(t)を出力する。先行波演算部704は、図7の等化前信号X7(t)の代わりに等化前信号X12(t)を入力し、図7の等化後信号X3(t)の代わりに等化後信号X13(t)を入力し、第1の実施形態と同様に、タップ係数W(t)を演算する。
【0089】
第1のタイプ(図11)のタップ係数演算方式TPでは、等化前信号X12(t)は、等化前信号X1(t)を遅延量(Dm−τ1)遅延させた信号X1(t−(Dm−τ1))であり、等化後信号X13(t)は、等化後信号X10(t)と同じ信号である。図11と同様に、等化後信号X13(t)は、等化前信号X12(t)より遅延量τ1遅延している。これにより、等化前信号X12(t)の主波成分A0と等化後信号X13(t)の先行波成分A1との信号同期を成立させる。
【0090】
先行波演算部704は、第1のタイプのタップ係数演算方式TPでは、図11と同様に、先行波等化部702への入力信号X1(t)(X12(t))内の主波成分A0と先行波等化部702からの出力信号X10(t)(X13(t))内の先行波成分A1との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0091】
第2のタイプ(図14)のタップ係数演算方式TPでは、等化前信号X12(t)は、等化前信号X1(t)を遅延量(Dm−T+τ1)遅延させた信号X1(t−(Dm−T+τ1))であり、等化後信号X13(t)は、等化後信号X10(t)と同じ信号である。図14と同様に、等化前信号X12(t)は、等化後信号X13(t)より遅延量(T−τ1)遅延している。これにより、等化後信号X13(t)の先行波成分A1のガードインターバルのコピー元G2と等化前信号X12(t)の主波成分A0のガードインタバル部G1との信号同期を成立させる。
【0092】
先行波演算部704は、第2のタイプのタップ係数演算方式TPでは、図14と同様に、先行波等化部702への入力信号X1(t)(X12(t))内の主波成分A0のガードインターバル部G1の区間と先行波等化部702からの出力信号X10(t)(X13(t))内の先行波成分A1のガードインターバルのコピー元G2の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0093】
遅延メモリ部755は、図7の遅延メモリ部755と同様に、等化後信号X3(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、等化後信号X3(t)をN個の遅延量τ2遅延させたN個の信号X14(t)を出力する。遅延波等化部701は、図7の信号X1(t)の代わりに信号X10(t)を入力し、図7の信号X5(t)の代わりに信号X14(t)を入力し、M個の遅延波A2を除去した信号X3(t)を出力する。
【0094】
また、信号X15(t)は、等化後信号X3(t)と同じ信号である。遅延メモリ部755は、等化後信号X3(t)を記憶し、指定されたアドレスからデータを順次読み出すことにより、等化後信号X3(t)をM個の遅延量τ2遅延させたM個の信号X16(t)を出力する。図10と同様に、信号X16(t)は、信号X15(t)に対して遅延量τ2遅延している。遅延波演算部703は、図19の信号X9(t)の代わりに信号X16(t)を入力し、図19の信号X6(t)の代わりに信号X15(t)を入力し、第2の実施形態と同様に、第1のタイプのタップ係数演算方式TPでタップ係数W(t)を演算する。
【0095】
具体的には、遅延波演算部703は、第1のタイプのタップ係数演算方式TPにより、図10と同様に、遅延波等化部701からの出力信号X3(t)(X16(t))内の主波成分A0と遅延波等化部701からの出力信号X3(t)(X15(t))内の遅延波成分A2との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数W(t)を演算する。
【0096】
本実施形態は、先行波等化部702を前段に設け、遅延波等化部701を後段に設ける。遅延波A2の電力が大きく、かつ先行波A1の電力が小さい場合は、本実施形態を適用することができる。また、第1〜第3の実施形態を切り替えて使用するようにしてもよい。
【0097】
第1〜第3の実施形態によれば、FIRフィルタ及びタップ係数演算部を共有することにより、少ないフィルタ数及びタップ係数演算部数で効率的に受信信号内の先行波及び遅延波を除去することができる。
【0098】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0099】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0100】
(付記1)
受信信号内の遅延波をフィルタにより除去する遅延波等化部と、
前記受信信号内の先行波をフィルタにより除去する先行波等化部と、
前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変える設定部と
を有することを特徴とする受信装置。
(付記2)
さらに、前記受信信号内の遅延波及び先行波の電力が閾値以上である遅延波及び先行波を選択する選択部を有し、
前記設定部は、前記選択部により選択された遅延波の数及び先行波の数に対応し、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を設定し、
前記遅延波等化部は、前記選択部により選択された遅延波を前記フィルタにより除去し、
前記先行波等化部は、前記選択部により選択された先行波を前記フィルタにより除去することを特徴とする付記1記載の受信装置。
(付記3)
前記設定部は、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数の合計が閾値以下になるように、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変えることを特徴とする付記1又は2記載の受信装置。
(付記4)
前記設定部は、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数の合計が閾値より小さいときには、前記受信信号内で最も電力の大きい先行波の遅延量の2倍の遅延量を持つ先行波を除去するためのフィルタを前記先行波等化部に割り当てることを特徴とする付記3記載の受信装置。
(付記5)
さらに、前記遅延波等化部内のフィルタのタップ係数をタップ係数演算部により演算する遅延波演算部と、
前記先行波等化部内のフィルタのタップ係数をタップ係数演算部により演算する先行波演算部とを有し、
前記設定部は、前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波演算部に割り当てる前記タップ係数演算部の数及び前記先行波演算部に割り当てる前記タップ係数演算部の数を変えることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の受信装置。
(付記6)
前記遅延波等化部は、前記受信信号内の遅延波をフィルタにより除去し、
前記先行波等化部は、前記遅延波等化部の出力信号内の先行波をフィルタにより除去し、
前記遅延波演算部は、前記受信信号内の先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の遅延量の絶対値とがすべて異なるときには、前記遅延波等化部への入力信号内の主波成分と前記遅延波等化部からの出力信号内の遅延波成分との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数を演算し、前記受信信号内の先行波の中の1つの先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の中の1つの遅延波の遅延量の絶対値とが同じであるときには、前記遅延波等化部からの出力信号内の遅延波成分のガードインターバル区間と前記遅延波等化部への入力信号内の主波成分のガードインターバルのコピー元の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数を演算することを特徴とする付記5記載の受信装置。
(付記7)
前記遅延波等化部は、前記受信信号内の遅延波をフィルタにより除去し、
前記先行波等化部は、前記遅延波等化部の出力信号内の先行波をフィルタにより除去し、
前記遅延波演算部は、前記受信信号内の先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の遅延量の絶対値とがすべて異なるときには、前記遅延波等化部からの出力信号内の主波成分と前記遅延波等化部からの出力信号内の遅延波成分との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数を演算し、前記受信信号内の先行波の中の1つの先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の中の1つの遅延波の遅延量の絶対値とが同じであるときには、前記遅延波等化部からの出力信号内の遅延波成分のガードインターバル区間と前記遅延波等化部からの出力信号内の主波成分のガードインターバルのコピー元の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数を演算することを特徴とする付記5記載の受信装置。
(付記8)
前記先行波演算部は、前記先行波等化部への入力信号内の主波成分と前記先行波等化部からの出力信号内の先行波成分との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数を演算することを特徴とする付記6又は7記載の受信装置。
(付記9)
前記先行波等化部は、前記受信信号内の先行波をフィルタにより除去し、
前記遅延波等化部は、前記先行波等化部の出力信号内の遅延波をフィルタにより除去し、
前記先行波演算部は、前記受信信号内の先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の遅延量の絶対値とがすべて異なるときには、前記先行波等化部への入力信号内の主波成分と前記先行波等化部からの出力信号内の先行波成分との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数を演算し、前記受信信号内の先行波の中の1つの先行波の遅延量の絶対値と前記受信信号内の遅延波の中の1つの遅延波の遅延量の絶対値とが同じであるときには、前記先行波等化部への入力信号内の主波成分のガードインターバル区間と前記先行波等化部からの出力信号内の先行波成分のガードインターバルのコピー元の区間との相関を取ることにより第2のタイプのタップ係数を演算することを特徴とする付記5記載の受信装置。
(付記10)
前記遅延波演算部は、前記遅延波等化部からの出力信号内の主波成分と前記遅延波等化部からの出力信号内の遅延波成分との相関を取ることにより第1のタイプのタップ係数を演算することを特徴とする付記9記載の受信装置。
【符号の説明】
【0101】
201 アンテナ
202 RF部
203 アナログデジタル変換部
204 直交復調部
205,605 等化部
206 ガードインターバル除去部
207 高速フーリエ変換部
208 伝搬路推定部
209 逆高速フーリエ変換部
210 パスプロファイル推定部
211,611 等化パス選択部
212 伝搬路補償部
213 誤り訂正復調部
614 等化部構成設定部
701 遅延波等化部
702 先行波等化部
703 遅延波演算部
704 先行波演算部
711〜71M FIRフィルタ
721〜72N FIRフィルタ
731〜73M タップ係数演算部
741〜74N タップ係数演算部
751,753 減算器
752 遅延回路
754,755 遅延メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号内の遅延波をフィルタにより除去する遅延波等化部と、
前記受信信号内の先行波をフィルタにより除去する先行波等化部と、
前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変える設定部と
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
さらに、前記受信信号内の遅延波及び先行波の電力が閾値以上である遅延波及び先行波を選択する選択部を有し、
前記設定部は、前記選択部により選択された遅延波の数及び先行波の数に対応し、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を設定し、
前記遅延波等化部は、前記選択部により選択された遅延波を前記フィルタにより除去し、
前記先行波等化部は、前記選択部により選択された先行波を前記フィルタにより除去することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数の合計が閾値以下になるように、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数を変えることを特徴とする請求項1又は2記載の受信装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記遅延波等化部に割り当てる前記フィルタの数及び前記先行波等化部に割り当てる前記フィルタの数の合計が閾値より小さいときには、前記受信信号内で最も電力の大きい先行波の遅延量の2倍の遅延量を持つ先行波を除去するためのフィルタを前記先行波等化部に割り当てることを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【請求項5】
さらに、前記遅延波等化部内のフィルタのタップ係数をタップ係数演算部により演算する遅延波演算部と、
前記先行波等化部内のフィルタのタップ係数をタップ係数演算部により演算する先行波演算部とを有し、
前記設定部は、前記受信信号内の遅延波の数及び先行波の数に応じて、前記遅延波演算部に割り当てる前記タップ係数演算部の数及び前記先行波演算部に割り当てる前記タップ係数演算部の数を変えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−249080(P2012−249080A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119209(P2011−119209)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】