説明

受光素子

【課題】設計自由度を低下させることなく、感度の向上を図ることができる受光素子を提供する。
【解決手段】受光素子1は、入射光を表面プラズモンに変換する周期構造領域1aと、周期構造領域1aの外縁に沿うように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域1bと、周期構造領域1aの内側に位置するように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域1cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
受光素子として、入射光を表面プラズモンに変換する周期構造領域と、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域と、を備えた受光素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された受光素子では、周期構造領域が、平面視で円形を呈すると共に、同心円状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、光電変換領域は、周期構造領域の中心部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2008/075542号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周期構造領域に発生する表面プラズモンは、周期構造領域の内側に向けてだけでなく、周期構造領域の外側にも向けて伝播する。周期構造領域の外側にも向けて伝播する表面プラズモンは、受光素子の感度には寄与しない。そこで、特許文献1に記載された受光素子では、周期構造領域の外側に、周期構造領域の外側に向けて伝播する表面プラズモンを反射させる領域が配置されている。この領域により、周期構造領域の外側に向けて伝播する表面プラズモンが反射し、周期構造領域の内側に向けて伝播することとなる。
【0005】
反射された表面プラズモンは、その伝播距離が長くなる。一般に、表面プラズモンは、散逸性が高く、最長伝播距離が短い。このため、反射された表面プラズモンは、伝播の途中で減衰してしまい、光電変換領域に到達することなく、電荷に変換されない懼れがある。また、反射された表面プラズモンは、光電変換領域に到達したとしても、減衰していることから、十分に電荷に変換されない懼れもある。周期構造領域の外側に向けて伝播する表面プラズモンを反射させる構成は、必ずしも、受光素子の感度向上に寄与するとは限らない。
【0006】
反射された表面プラズモンを受光素子の感度向上に寄与させるためには、その伝播距離が短くなるように周期構造領域のサイズを設定する必要がある。たとえば、特許文献1に記載された受光素子では、周期構造領域の直径を、表面プラズモンの最長伝播距離程度に設定する必要がある。すなわち、反射された表面プラズモンの伝播距離を考慮して周期構造領域のサイズを設定する必要があり、感度向上が受光素子の設計自由度を低下させる要因の一つとなっている。
【0007】
本発明は、設計自由度を低下させることなく、感度の向上を図ることができる受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る受光素子は、入射光を表面プラズモンに変換する周期構造領域と、周期構造領域の外縁に沿うように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する第一光電変換領域と、周期構造領域の内側に位置するように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する第二光電変換領域と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る受光素子では、周期構造領域の外側に向けて伝播する表面プラズモンは、途中で反射することなく第一光電変換領域に到達し、電荷に変換される。周期構造領域の内側に向けて伝播する表面プラズモンは、途中で反射することなく第二光電変換領域に到達し、電荷に変換される。光電変換領域に向かう途中で反射するのに比べ、表面プラズモンの伝播距離が短いため、表面プラズモンを十分に電荷に変換し、感度の向上を図ることができる。反射された表面プラズモンの伝播距離を考慮せずに周期構造領域のサイズを設定できるため、感度向上が設計自由度を低下させる要因とはならない。従って、設計自由度を低下させることなく、感度の向上を図ることができる。
【0010】
周期構造領域は、平面視で円形を呈すると共に、同心円状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、第一光電変換領域は、周期構造領域の外周に沿うように配置され、第二光電変換領域は、周期構造領域の中心部に位置するように配置されていることが好ましい。この場合、凹凸パターンが同心円状に形成され、いずれの偏光方向の入射光も等しく表面プラズモンに変換されるため、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。
【0011】
第二光電変換領域は、周期構造領域の同心円に沿うように更に配置されていることが好ましい。この場合、周期構造領域の同心円に沿うように配置されている第二光電変換領域においても表面プラズモンが電荷に変換されるため、表面プラズモンの伝播距離を更に短くし、感度の向上を更に図ることができる。
【0012】
周期構造領域の同心円に沿うように配置されている第二光電変換領域は、該同心円に沿って連続していることが好ましい。この場合、表面プラズモンの伝播距離を更に短くし、感度の向上を更に図ることができる。
【0013】
周期構造領域の同心円に沿うように配置されている第二光電変換領域は、該同心円に沿って複数点在していることが好ましい。この場合、第二光電変換領域が同心円に沿って連続しているのに比べ、第二光電変換領域の面積を小さくし、応答速度の向上を図ることができる。
【0014】
周期構造領域は、平面視で矩形を呈すると共に、矩形の一辺に平行なライン状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、第一光電変換領域は、周期構造領域の互いに対向する一対の辺に沿うように複数配置され、第二光電変換領域は、周期構造領域の一対の辺の対向方向での中心部に位置し且つ一対の辺の平行な方向に沿うように配置されていることが好ましい。この場合、ライン状に形成された凹凸パターンに電界ベクトルが直交する入射光のみが強い表面プラズモンに変換されるため、一つの偏光方向の光のみに対して高感度な光検出が可能となる。
【0015】
周期構造領域は、平面視で矩形を呈すると共に、相似な矩形状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、第一光電変換領域は、周期構造領域の四辺に沿うように配置され、第二光電変換領域は、周期構造領域の中心部に位置するように配置されていることが好ましい。この場合、矩形状に形成された凹凸パターンの各辺に電界ベクトルが直交する入射光のみが強い表面プラズモンに変換されるため、二つの偏光方向の光のみに対して高感度な光検出が可能となる。
【0016】
第一光電変換領域は、周期構造領域の外縁に沿って断続的に配置されていることが好ましい。この場合、第一光電変換領域が連続的に配置されているのに比べ、第一光電変換領域の面積を小さくし、応答速度の向上を図ることができる。
【0017】
周期構造領域を有する金属層と、第一光電変換領域と第二光電変換領域とを有する半導体層と、を有し、金属層と半導体層とは、第一光電変換領域と第二光電変換領域とに対応する位置においてショットキー接合されていることが好ましい。この場合、金属層とのショットキー接合を利用して、半導体層に第一光電変換領域と第二光電変換領域とを構成することができ、受光素子の構造を単純化することができる。
【0018】
金属層は、周期構造領域を有する第一金属層と、第一金属層と接触すると共に第一金属層と半導体層との間に位置する第二金属層と、を含み、第二金属層と半導体層とは、第一光電変換領域と第二光電変換領域とに対応する位置においてショットキー接合されていることが好ましい。この場合、たとえば、第一金属層には表面プラズモンの発生に適した金属材料を選択し、第二金属層にはショットキー接合に適した金属材料を選択し、感度等の特性の向上を図ることができる。
【0019】
周期構造領域を有する金属層と、pn接合される第一導電型の半導体領域と第二導電型の半導体領域とを含む半導体層と、を有し、第一光電変換領域と第二光電変換領域とが、第一導電型の半導体領域と第二導電型の半導体領域とのpn接合により構成されていることが好ましい。この場合、第一光電変換領域と第二光電変換領域とが金属層と半導体層とのショットキー接合により構成されるのに比べ、第一光電変換領域及び第二光電変換領域の耐熱性を高めることができる。
【0020】
金属層の表面を被覆する誘電体層を更に有することが好ましい。この場合、周期構造領域を環境から保護することができる。誘電体層の誘電率を調整することで、表面プラズモンに変換される入射光の波長を調整することができる。誘電体層の厚さを調整することで、入射光の反射を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る受光素子によれば、設計自由度を低下させることなく、感度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る受光素子を示す平面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本実施形態に係る受光素子の第一変形例を示す平面図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】本実施形態に係る受光素子の第二変形例を示す平面図である。
【図6】図5中のV−V線に沿う断面図である。
【図7】本実施形態に係る受光素子の第三変形例を示す平面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】本実施形態に係る受光素子の第四変形例を示す平面図である。
【図10】図9中のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本実施形態に係る受光素子の第四変形例を示す平面図である。
【図12】図11中のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】本実施形態に係る受光素子の第六変形例を示す平面図である。
【図14】図13中のXIV−XIV線に沿う断面図である。
【図15】本実施形態に係る受光素子の第七変形例を示す平面図である。
【図16】図15中のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】本実施形態に係る受光素子の第八変形例を示す平面図である。
【図18】図17中のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る受光素子を示す平面図であり、図2は、図1中のII−II線に沿う断面図である。図1及び図2に示されるように、受光素子1は、半導体層2と、半導体層3と、絶縁体層4と、金属層5と、電極層6と、を有している。
【0025】
半導体層2は、リン化インジウム(InP)からなり、n型で高キャリア濃度の半導体層である。また、半導体層3は、リン化インジウムと格子整合するインジウムガリウム砒素(InGaAs)からなり、n型で低キャリア濃度の半導体層である。半導体層3は、半導体層2の一方面2a上に積層されている。半導体層3の厚さは、たとえば100nm〜1μmである。キャリア濃度とは、室温における不純物濃度を意味する。高キャリア濃度とは1×1018cm−3以上のキャリア濃度を意味し、低キャリア濃度とは1×1016cm−3未満のキャリア濃度を意味する。
【0026】
絶縁体層4は、二酸化ケイ素(SiO)等からなる。絶縁体層4は、半導体層3の一方面3a上に積層されている。絶縁体層4の厚さは、たとえば略100nmである。
【0027】
金属層5は、金、銀、又はアルミニウム等からなる。金属層5は、絶縁体層4の一方面4a上に積層されている。金属層5の厚さは、たとえば50nm〜500nmである。
【0028】
金属層5には、一方面5aの略中央に位置する複数の同心円に沿って、一方面5aから突出し、上記同心円の径方向に沿って等間隔に並ぶ複数の凸部5bが形成されている。各凸部5bは、上記同心円の円周に直交する平面において矩形の断面形状を呈している。凸部5b同士の間は、一方面5aを底面とする凹部5eとなっている。上記同心円の径方向に沿って、凸部5bと凹部5eとが交互に並ぶことで、同心円状の周期的な凹凸パターンP1が構成されている。
【0029】
凹凸パターンP1のピッチは、検出対象とする光の波長に合わせて設定される。ピッチは、波長の0.5倍〜1倍程度の値であることが好適である。たとえば、波長が1.26μm〜1.625μmである光通信用の光を検出対象とする場合には、ピッチを0.6μm〜1.6μmの範囲で最適な値とするのが好適である。好適なピッチは、金属層5の材料や厚さ等によって異なる。後述のように、金属層5の一方面5a上に誘電体層を積層する場合には、好適なピッチは誘電体層の材料や厚さ等によっても異なる。ピッチとは、たとえば平面視における凸部5bの中心線同士の間隔又は凹部5eの中心線同士の間隔を意味する。凸部5bと凹部5eとの幅の比率や、凸部5bの突出量は、計算式や予備実験等に基づいて好適な値に設定される。
【0030】
凹凸パターンP1に光が入射すると、表面プラズモンが発生する。凹凸パターンP1により、平面視で円形を呈する周期構造領域1aが構成されている。すなわち、金属層5は、入射光を表面プラズモンに変換する周期構造領域1aを有し、周期構造領域1aは凹凸パターンP1を有している。周期構造領域1aのサイズは、入射光のスポットサイズと同等以上とされている。これにより、入射光の全体を表面プラズモンに変換することが可能となっている。
【0031】
金属層5には、凹凸パターンP1の中心部で一方面5aから窪んだ凹部5cが形成され、凹凸パターンP1の外周で一方面5aから窪んだ凹部5dが形成されている。凹部5dは、凹凸パターンP1の外周に沿って連続し、平面視で円形を呈している。凹部5c,5dが形成されている部分での金属層5の厚さは、たとえば10nm〜100nmである。
【0032】
凹部5c,5dに対応する部分では絶縁体層4が除去され、金属層5と半導体層3とがショットキー接合されている。半導体層3のうちショットキー接合面の近傍の部分には、金属層5とのショットキー接合に伴って空乏層が構成されている。凹部5cに対応して周期構造領域1aの中心部に位置する空乏層は、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域1cを構成している。凹部5dに対応して周期構造領域1aの外周に沿う空乏層は、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域1bを構成している。すなわち、半導体層3は、光電変換領域1b,1c を有している。
【0033】
金属層5とのショットキー接合を利用して、半導体層3に光電変換領域1b,1cを構成することで、受光素子1の構造が単純化されている。凹部5c,5dを形成することで、光電変換領域1b,1cにおける金属層5の厚さが最適化され、光電変換効率が高められている。
【0034】
一方面5aのうち、凹部5dよりも外側の部分は、ボンディングワイヤー等を接続する電極7として用いられる。周期構造領域1aを有する金属層5を利用して電極7を構成することで、受光素子1の構造が更に単純化されている。
【0035】
電極層6は、金・ゲルマニウム合金(AuGe)/金(Au)からなる。電極層6は、半導体層2の他方面2b上に積層され、半導体層2に対してオーミック接合されている。電極層6の厚さは、たとえば100nm〜1μmである。
【0036】
このようにして、周期構造領域1aと光電変換領域1b,1cとを備える受光素子1が構成されている。
【0037】
続いて、受光素子1の製造方法を説明する。まず、リン化インジウム(InP)からなりn型で高キャリア濃度の半導体基板を準備し、半導体層2とする。次に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等により、半導体層2の一方面2a上に、インジウムガリウム砒素(InGaAs)からなるn型で低キャリア濃度の半導体層3を形成する。
【0038】
次に、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)等により、半導体層3の一方面3a上に二酸化ケイ素(SiO)からなる絶縁体層4を形成する。絶縁体層4のうち、光電変換領域1b,1cに対応する部分を、フォトリソグラフィ等により除去する。
【0039】
次に、真空蒸着等により、絶縁体層4の一方面4a上に金、銀、又はアルミニウム等からなる金属層5を形成する。このとき、絶縁体層4が除去された部分において、金属層5と半導体層3とをショットキー接合する。
【0040】
次に、電子ビーム露光法、ナノインプリントによるリソグラフィと反応性イオンエッチングもしくはリフトオフとを組み合わせた方法、又は集束イオンビームを用いた直接加工法等によって、金属層5の一方面5aに凹凸パターンP1及び凹部5c,5dを形成する。
【0041】
次に、真空蒸着等により、半導体層2の他方面2b上に、金・ゲルマニウム合金(AuGe)/金(Au)からなる電極層6を形成し、半導体層2と電極層6とをオーミック接合する。電極層6を形成するのは、半導体層3を形成する前、絶縁体層4を形成する前、金属層5を形成する前、又は凹凸パターンP1及び凹部5c,5dを形成する前であってもよい。
【0042】
続いて、受光素子1の動作を説明する。受光素子1は、金属層5側の電位が電極層6側の電位よりも低くなるようにバイアス電圧を印加して用いられる。検出対象の光は周期構造領域1aに入射し、電界ベクトルが凹凸パターンP1と交差する入射光は表面プラズモンに変換される。凹凸パターンP1は同心円状であることから、入射光の電界ベクトルは、凹凸パターンP1のいずれかの部分と必ず交差することになる。これにより、いずれの偏光方向の入射光も等しく表面プラズモンに変換されるため、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。
【0043】
表面プラズモンは、入射光の電界ベクトルの方向に沿い、周期構造領域1aの内側及び外側に向けて伝播する。周期構造領域1aの外側に向けて伝播する表面プラズモンは、途中で反射することなく光電変換領域1bに到達し、電荷に変換される。周期構造領域1aの内側に向けて伝播する表面プラズモンは、途中で反射することなく光電変換領域1cに到達し、電荷に変換される。光電変換領域1b,1cに向かう途中で反射するのに比べ、表面プラズモンの伝播距離が短いため、表面プラズモンを十分に電荷に変換し、感度の向上を図ることができる。反射された表面プラズモンの伝播距離を考慮せずに周期構造領域1aのサイズを設定できるため、感度向上が設計自由度を低下させる要因とはならない。従って、設計自由度を低下させることなく、感度の向上を図ることができる。
【0044】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。図3は、受光素子1の第一変形例を示す平面図であり、図4は、図3中のIV−IV線に沿う断面図である。図3及び図4に示されるように、第一変形例は、周期構造領域1aの内側に、周期構造領域1aの同心円に沿って連続するように配置された光電変換領域20cを更に構成したものである。
【0045】
金属層5には、凹凸パターンP1の内側で、一方面5aから窪んだ凹部30cが形成されている。凹部30cは、凹凸パターンP1の同心円に沿って連続し、平面視で円形を呈している。凹部30cの深さは、凹部5c,5dの深さと同等となっている。凹部30cに対応する部分では絶縁体層4が除去され、金属層5と半導体層3とがショットキー接合されている。これにより、周期構造領域1aの同心円に沿って連続するように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域20cが構成されている。
【0046】
光電変換領域20cにおいても、表面プラズモンが電荷に変換されるため、表面プラズモンの伝播距離を更に短くし、感度の向上を更に図ることができる。また、光電変換領域20cは、周期構造領域1aの同心円に沿って連続しているため、表面プラズモンの伝播距離を更に短くし、感度の向上を更に図ることができる。
【0047】
図5は、本実施形態に係る受光素子の第二変形例を示す平面図であり、図6は、図5中のV−V線に沿う断面図である。図5及び図6に示されるように、第二変形例は、第一変形例の光電変換領域20cを、周期構造領域1aの同心円に沿って複数点在するように配置された光電変換領域21cに替えたものである。
【0048】
金属層5には、凹凸パターンP1の内側で、一方面5aから窪んだ凹部31cが形成されている。凹部31cは、凹凸パターンP1の同心円に沿って複数点在している。凹部31cの深さは、凹部5c,5dの深さと同等となっている。凹部31cに対応する部分では絶縁体層4が除去され、金属層5と半導体層3とがショットキー接合されている。これにより、周期構造領域1aの同心円に沿って複数点在するように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する光電変換領域21cが構成されている。
【0049】
同心円に沿って連続した光電変換領域20cを採用するのに比べ、光電変換領域21cの面積を小さくし、応答速度の向上を図ることができる。
【0050】
図7は、本実施形態に係る受光素子の第三変形例を示す平面図であり、図8は、図7中のVIII−VIII線に沿う断面図である。図7及び図8に示されるように、第三変形例は、平面視における周期構造領域1a及び凹凸パターンP1の形状を変更し、それぞれ周期構造領域22a及び凹凸パターンP2としたものである。これに伴って、光電変換領域1b,1c及び凹部5c,5dが、それぞれ光電変換領域22b,22c及び凹部32c,32dに替わっている。
【0051】
金属層5には、互いに平行な複数のラインに沿って、一方面5aから突出し、上記ラインと直交する方向に沿って等間隔に並ぶ複数の凸部32bが形成されている。各凸部32bは、上記ラインに直交する平面において矩形の断面形状を呈している。凸部32b同士の間は、一方面5aを底面とする凹部32eとなっている。上記ラインと直交する方向に沿って、凸部32bと凹部32eとが交互に並ぶことで、平行なライン状の周期的な凹凸パターンP2が構成されている。凹凸パターンP2により、平面視で矩形を呈する周期構造領域22aが構成されている。周期構造領域22aは、一方面5aの略中央に位置している。
【0052】
光電変換領域22b及び凹部32dは、周期構造領域1aの四辺のうち、凹凸パターンP2に平行な一対の辺に沿うように複数配置されている。光電変換領域22c及び凹部32dは、上記一対の辺の対向方向での中心部に位置し且つ上記一対の辺の平行な方向に沿うように配置されている。
【0053】
周期構造領域22aでは、凹凸パターンP2に電界ベクトルが直交する入射光のみが強い表面プラズモンに変換される。このため、一つの偏光方向の光のみに対して高感度な光検出が可能となる。また、凹凸パターンP2に電界ベクトルが直交する入射光は、凹凸パターンP2全体で表面プラズモンに変換される。このため、直線偏光状態の光を検出対象とする場合には、同心円状に形成された凹凸パターンP1を採用するよりも高感度化を図ることができる。
【0054】
凹凸パターンP2に電界ベクトルが直交する入射光は、凹凸パターンP2に直交する方向に伝播する。このため、光電変換領域22b,22cと凹凸パターンP2とを平行にすることで、発生した表面プラズモンの多くを光電変換領域22b,22cに伝播させ、電荷に変換することができる。
【0055】
図9は、本実施形態に係る受光素子の第四変形例を示す平面図であり、図10は、図9中のX−X線に沿う断面図である。図9及び図10に示されるように、第四変形例は、平面視における周期構造領域1a及び凹凸パターンP1の形状を変更し、それぞれ周期構造領域23a及び凹凸パターンP3としたものである。これに伴って、光電変換領域1b,1c及び凹部5c,5dが、それぞれ光電変換領域23b,23c及び凹部33c,33dに替わっている。
【0056】
金属層5には、一方面5aの略中央に位置し且つ互いに相似な複数の矩形に沿って、一方面5aから突出し、上記矩形の各辺と直交する方向に沿って等間隔に並ぶ複数の凸部33bが形成されている。各凸部33bは、上記矩形の各辺に直交する平面において矩形の断面形状を呈している。凸部33b同士の間は、一方面5aを底面とする凹部33eとなっている。上記矩形の各辺と直交する方向に沿って、凸部33bと凹部33eとが交互に並ぶことで、相似な矩形状の周期的な凹凸パターンP3が構成されている。凹凸パターンP3により、平面視で矩形を呈する周期構造領域23aが構成されている。
【0057】
光電変換領域23b及び凹部33dは、周期構造領域23aの四辺に沿うように配置されている。光電変換領域23c及び凹部33cは、周期構造領域23aの中心部に位置するように配置されている。
【0058】
周期構造領域23aでは、凹凸パターンP3の各辺に電界ベクトルが直交する入射光のみが強い表面プラズモンに変換される。このため、二つの偏光方向の光のみに対して高感度な光検出が可能となる。また、直線偏光状態の光を検出対象とする場合には、凹凸パターンP3のいずれかの辺を入射光の電界ベクトルに直交させればよい。このため、平行なライン状に形成された凹凸パターンP2を採用するのに比べ、入射光に対する受光素子1の配置の自由度が高くなる。
【0059】
図11は、本実施形態に係る受光素子の第四変形例を示す平面図であり、図12は、図11中のXII−XII線に沿う断面図である。図11及び図12に示されるように、第五変形例は、光電変換領域1b及び凹部5dを、周期構造領域1aの外縁に沿って断続的に配置された光電変換領域24b及び凹部34dに替えたものである。この場合、連続的に配置された光電変換領域1bを採用するのに比べ、光電変換領域24bの面積を小さくし、応答速度の向上を図ることができる。
【0060】
図13は、本実施形態に係る受光素子の第六変形例を示す平面図であり、図14は、図13中のXIV−XIV線に沿う断面図である。図13及び図14に示されるように、第六変形例は、金属層5を二層構造としたものである。金属層5は、凹凸パターンP1を有する金属層8と、金属層8と接触すると共に金属層8と半導体層3との間に位置する金属層9と、を含んでいる。光電変換領域1b,1cに対応する位置では、金属層9と半導体層3とがショットキー接合されている。
【0061】
この場合、たとえば、金属層8には表面プラズモンの発生に適した金属材料を選択し、金属層9にはショットキー接合に適した金属材料を選択し、感度等の特性の向上を図ることができる。表面プラズモンの発生に適した金属材料は、たとえば金、銀、又はアルミニウム等であり、ショットキー接合に適した金属材料は、たとえばチタンやクロム等である。金属層9の厚さは、たとえば100nmとすることが好適である。
【0062】
図15は、本実施形態に係る受光素子の第七変形例を示す平面図であり、図16は、図15中のXVI−XVI線に沿う断面図である。図15及び図16に示されるように、第七変形例は、光電変換領域1b,1cを、p型半導体とn型半導体のpn接合により構成したものである。半導体層3は、絶縁体層4と半導体層2との間に位置する半導体領域10と、絶縁体層4が除去された部分において半導体領域10と金属層5との間に位置する半導体領域11と、を含んでいる。
【0063】
半導体領域10は、たとえばインジウムガリウム砒素からなる低キャリア濃度のn型半導体領域である。半導体領域10の厚さは、たとえば100nm〜1μmである。半導体領域11は、リン化インジウムからなる高キャリア濃度のp型半導体領域である。半導体領域11の厚さは、絶縁体層4の厚さと略同等とされ、金属層5が形成される面が平滑化されている。光電変換領域1b,1cは、半導体領域10と半導体領域11とのpn接合により構成されている。
【0064】
金属層5は、凹凸パターンP1を有する金属層12と、金属層12と接触すると共に金属層12と半導体層3との間に位置する電極層13と、を含んでいる。光電変換領域1b,1cに対応する位置では、電極層13と半導体領域11とがオーミック接合されている。金属層12は、金、銀、又はアルミニウム等からなる。電極層13は、クロム(Cr)/金(Au)又は金・亜鉛合金(AuZn)/金(Au)等からなる。電極層13の厚さは、たとえば100nmである。
【0065】
第七変形例の半導体層3、絶縁体層4、及び金属層5を形成する手順を説明する。まず、MOCVD等により、半導体層2の一方面2a上に、インジウムガリウム砒素(InGaAs)からなるn型で低キャリア濃度の半導体領域10を形成する。
【0066】
次に、PECVD等により、半導体領域10の一方面10a上に二酸化ケイ素(SiO)からなる絶縁体層4を形成する。絶縁体層4のうち、光電変換領域1b,1cに対応する部分を、フォトリソグラフィ等により除去する。
【0067】
次に、MOCVD等により、半導体領域10の一方面10a上にリン化インジウムからなるp型で高キャリア濃度の半導体領域11を形成する。半導体領域11は、一方面10aのうち、絶縁体層4が除去されて露出した部分のみに形成される。これにより、絶縁体層4が除去された部分が半導体領域11によって埋められる。
【0068】
次に、真空蒸着等により、絶縁体層4の一方面4a上に、クロム(Cr)/金(Au)又は金・亜鉛合金(AuZn)/金(Au)等からなる電極層13を形成し、電極層13と半導体領域11とをオーミック接合する。真空蒸着により、電極層13の一方面13a上に金、銀、又はアルミニウム等からなる金属層12を形成する。
【0069】
光電変換領域1b,1cをpn接合により構成すると、光電変換領域1b,1cをショットキー接合により構成するのに比べ、光電変換領域1b,1cの耐熱性を高めることができる。このため、たとえば、光電変換領域1b,1cを構成した後に高温の熱処理が行われる場合に適している。
【0070】
図17は、本実施形態に係る受光素子の第八変形例を示す平面図であり、図18は、図17中のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。図17及び図18に示されるように、第八変形例は、金属層5の一方面5a上に、透明な誘電体層14を積層したものである。誘電体層14は、一方面5aの全域を被覆し、一方面5aの範囲内に位置する凹凸パターンP1及び凹部5c,5dも被覆している。すなわち、誘電体層14は、周期構造領域1a及び光電変換領域1b,1cに対応する位置において、金属層5の表面を被覆している。誘電体層14は、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、又はこれらの中間体である酸化窒化ケイ素(SiO)等からなる。誘電体層14の厚さは、たとえば100nm〜200nmである。
【0071】
誘電体層14により、周期構造領域1a及び光電変換領域1b,1cを環境から保護することができる。誘電体層14の誘電率を調整することで、表面プラズモンに変換される入射光の波長を調整することができる。たとえば、酸化窒化ケイ素(SiO)のx−y比を調整することで、誘電体層14の誘電率を調整することができる。誘電体層14の厚さを調整することで、入射光の反射を抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、半導体層2,3の材料は、上述した材料に限られず、ガリウム砒素(GaAs)等であってもよい。ガリウム砒素の方がインジウムガリウム砒素に比べてバンドギャップが大きく、ショットキー接合部のショットキー障壁を高くすることができる。これにより、暗電流を小さくできるため、たとえば可視光を受光するのに適している。
【0073】
凸部5b,32b,33bを形成する代わりに、一方面5aから窪んだ凹部を形成することで凹凸パターンP1,P2,P3を構成してもよい。また、凸部5b,32b,33b同士の間に、一方面5aから窪んだ凹部を更に形成してもよい。
【0074】
受光素子1は、光電変換領域1b,22b,23b,24bの外側に、周期構造領域1a,22a,23aとは別の周期構造領域を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…受光素子、1a,22a,23a…周期構造領域、1b,22b,23b,24b…光電変換領域、1c,20c,21c,22c,23c…光電変換領域、3…半導体層、5…金属層、P1,P2,P3…凹凸パターン、8…金属層、9…金属層、10…半導体領域、11…半導体領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を表面プラズモンに変換する周期構造領域と、
前記周期構造領域の外縁に沿うように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する第一光電変換領域と、
前記周期構造領域の内側に位置するように配置され、表面プラズモンに応じて電荷を発生する第二光電変換領域と、を備えることを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記周期構造領域は、平面視で円形を呈すると共に、同心円状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、
前記第一光電変換領域は、前記周期構造領域の外周に沿うように配置され、
前記第二光電変換領域は、前記周期構造領域の中心部に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記第二光電変換領域は、前記周期構造領域の同心円に沿うように更に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記周期構造領域の同心円に沿うように配置されている前記第二光電変換領域は、該同心円に沿って連続していることを特徴とする請求項3に記載の受光素子。
【請求項5】
前記周期構造領域の同心円に沿うように配置されている前記第二光電変換領域は、該同心円に沿って複数点在していることを特徴とする請求項3に記載の受光素子。
【請求項6】
前記周期構造領域は、平面視で矩形を呈すると共に、前記矩形の一辺に平行なライン状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、
前記第一光電変換領域は、前記周期構造領域の互いに対向する一対の辺に沿うように複数配置され、
前記第二光電変換領域は、前記周期構造領域の前記一対の辺の対向方向での中心部に位置し且つ前記一対の辺の平行な方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項7】
前記周期構造領域は、平面視で矩形を呈すると共に、相似な矩形状に形成された周期的な凹凸パターンを有しており、
前記第一光電変換領域は、前記周期構造領域の四辺に沿うように配置され、
前記第二光電変換領域は、前記周期構造領域の中心部に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項8】
前記第一光電変換領域は、前記周期構造領域の前記外縁に沿って断続的に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の受光素子。
【請求項9】
前記周期構造領域を有する金属層と、
前記第一光電変換領域と前記第二光電変換領域とを有する半導体層と、を有し、
前記金属層と前記半導体層とは、前記第一光電変換領域と前記第二光電変換領域とに対応する位置においてショットキー接合されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の受光素子。
【請求項10】
前記金属層は、前記周期構造領域を有する第一金属層と、前記第一金属層と接触すると共に前記第一金属層と前記半導体層との間に位置する第二金属層と、を含み、
前記第二金属層と前記半導体層とは、前記第一光電変換領域と前記第二光電変換領域とに対応する位置においてショットキー接合されていることを特徴とする請求項9に記載の受光素子。
【請求項11】
前記周期構造領域を有する金属層と、
pn接合される第一導電型の半導体領域と第二導電型の半導体領域とを含む半導体層と、を有し、
前記第一光電変換領域と前記第二光電変換領域とが、前記第一導電型の半導体領域と前記第二導電型の半導体領域とのpn接合により構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の受光素子。
【請求項12】
前記金属層の表面を被覆する誘電体層を更に有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の受光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−69892(P2013−69892A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207713(P2011−207713)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】