説明

口内薬物送達のためのシステムおよび方法

【課題】薬物の口内間送達のためのシステムおよび方法の提供。
【解決手段】システムは薬物または治療用薬剤が口を介して送達されることを可能にする。システムは歯周病学、歯の表面、歯内治療学に関連する特定の病気、および癌および病状に関連する病気のための理想的な薬物の送達を提供する。歯の病気のために、治療用薬剤の放出が病気の作用のすぐ周辺において生じるように、システムが設置される。分配の量は歯肉ポケットまたは歯肉の間隙の量に限定されるので、比較的に濃度の高い治療用薬剤が、治療用薬剤のリザーバ用量が少ないデバイスによって送達され得る。これらの状況の下で要求される少ない量の治療用薬剤は一般的には数ミリグラムであり、体内の遠位部分における治療用薬剤の効果が非常に低減し、全身への副作用の可能性を非常に減少させる。その結果として、比較的少ない量の薬物を使用して、高い効果が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口内薬物送達のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内容が本明細書において援用される共通所有権の「Methods and systems for concurrent tooth repositioning and substance delivery」と題される特許文献1に示されるように、歯のリポジショニングが本発明の譲受人であるAlign Technology,Inc.から入手可能なInvisalign(登録商標)システムのような一連の除去可能な弾力性ポジショニング器具の使用により達成され得る。そのような器具は、一般的には患者の歯に適合するが最初あるいは直前の歯の構成とわずかに配列がずれる薄いシェルの弾力性の材料を有する。歯の全体にわたる弾力性ポジショナーの配置は、歯を新たな構成に徐々に移動させるために特定の位置に制御された力を適用する。新たな構成を備える一連の器具を使用するこの過程のくり返しは、最終的に歯を一連の中間構成または配列パターンを介して最終的な所望の構成に移動させる。例示的な弾力性ポリマーのポジショニング器具の詳細な記述は、あらゆる目的で参照として内容が援用される特許文献2に記載され、特許文献3に公開される。
【0003】
器具が患者の歯の全体にわたって配置されるときに、器具は歯をリポジショニングするのに有効である。任意の理由における器具の除去は治療計画を中断し、治療の全期間を長くする。その結果として、器具の除去は効果的で適時の治療のために最低限にされなければならない。しかしながら、患者によって所望または要求され得る多くの歯科治療および歯周病治療は、器具が装着されていても効果的に使用され得ない場合もある。そのような治療は口内衛生を改善するために開業医によって処方され得、それらの治療は美容目的で患者によって要求され得る。
【0004】
特許文献1は、弾力性リポジショニング器具を使用し、同時に歯科治療および歯周病治療を提供する歯列矯正治療のためのデバイス、システム、および方法を開示する。そのような治療は元来、リポジショニング器具が患者の口から除去されるときに、適用される様々な付属品およびデバイスの使用により提供される。特許文献1のシステムは、これらの治療をリポジショニング器具に組み込むことによって、そのような除去および追加のデバイスの必要性を排除する。
【0005】
内容が本明細書で援用される特許文献4は、力を適用して歯をリポジショニングすることと、および組織のリモデリング物質および/または血管形成物質を、歯を取り囲む歯周組織に移動させられるために投与することとを含む歯列矯正治療を開示する。物質は歯が移動される前、歯が移動される間、または歯が移動される後に送達され得、物質は任意の特定のときに、移動している歯に対してのみ選択的に適用され得る。物質は歯をリポジショニング器具から適用さえ得、別個か局所的かのいずれかで注入によって適用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,607,382号明細書
【特許文献2】米国特許第5,975,893号明細書
【特許文献3】国際公開第98/58596号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第20040115587号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
薬物の口内送達のためのシステムおよび方法が開示される。
【0008】
システムの利点は以下の1つ以上のものを含む。システムは薬物または治療用薬剤が口を介して送達されることを可能にする。システムは歯周病、歯の表面、歯内治療に関連する特定の病気、および癌および病状に関連する病気のための理想的な薬物の送達を提供する。
【0009】
歯の病気のために、治療用薬剤の放出が病気の作用のすぐ周辺において生じるように、システムが設置される。分配の量は歯肉ポケットまたは歯肉の間隙(crevice)の量に限定されるので、比較的に濃度の高い治療用薬剤が治療用薬剤のリザーバ用量が少ないデバイスによって送達され得る。これらの状況下で要求される少ない量の治療用薬剤は一般的には数ミリグラムであり、体内の遠位部分における治療用薬剤の効果が非常に低減し、全身への副作用の可能性を非常に減少させる。その結果として、比較的少ない量の薬物を使用して、高い効果が達成される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
1つ以上の物質を口内構造に取り付けることと、
該口内構造から該1つ以上の物質を体内に、あらかじめ選択された用量だけ流れるように提供することと
を包含する、1つ以上の物質を送達する方法。
(項目2)
前記物質のうちの1つ以上は治療有効量の薬物または生物活性の薬剤である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記物質のうちの1つ以上は歯の移動を加速または減速する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記物質のうちの1つ以上は前記口内構造の刺激を誘発する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記物質のうちの1つ以上は骨構造または周辺の組織の炎症を誘発する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記物質のうちの1つ以上は歯肉を介して送達される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記物質のうちの1つ以上はブラケット、歯科装着具、ブラケット補助具、結紮紐、ピン、ブラケットスロットキャップ、ワイヤー、ねじ、マイクロステープル、義歯、部分義歯、歯科インプラント、歯肉消息子、歯肉チップ、フィルム、または歯間に置かれる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記物質のうちの1つ以上は除去可能な器具に置かれる、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記物質のうちの1つ以上は、該物質が前記口内組織内の特定の位置に送達されるように、前記除去可能な器具に置かれ、異なる物質は、該異なる物質が該口内組織内の異なる位置に送達され得るように、該器具に置かれる、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記物質のうちの1つ以上を格納するために前記除去可能な器具に置かれる1つ以上のモジュールを備える、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記物質は治療のためのエネルギーを提供する、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記エネルギーは電気エネルギー、光エネルギー、熱エネルギー、音エネルギー、磁気エネルギー、または電磁エネルギーを包含する、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記口内構造に追加の物質を再補給することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目14)
患者の歯生状態をスキャンすることと、
該スキャンされた歯生状態に基づいて前記物質を前記口内構造に取り付けるために、1つ以上の器具を設計することと
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記器具のうちの少なくとも1つが前記あらかじめ選択された用量を分配するように設計される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記器具は前記物質を所定の順序で分配する、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記器具のうちの少なくとも2つが、2つ以上の異なる期間での送達のために2つ以上の異なる用量で前記物質を分配する、項目14に記載の方法。
(項目18)
口内の物質をサンプルすることと、
該口内の物質に基づいて体の状態を検出することと
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記体の状態は病気を包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記サンプルされた口内の物質に基づいて、物質の閉ループ送達を行なうことを包含する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記検出された体の状態をリモートコンピュータへ診断のために転送することを包含する、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記物質のうちの1つ以上が口内組織においてコラーゲンおよび/またはエラスチンを分解することによって歯の移動を加速する、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記物質のうちの1つ以上が以下の有効成分:トリプシン、エラスターゼ、パパイン、アミノ安息香酸、カリウム、カテプシン、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素、セルロース分解酵素、またはリパーゼのうちの少なくとも1つを含有する、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記物質のうちの1つ以上がコラーゲンおよび/またはエラスチンを分解する内因性酵素の発現または活性を増加されることによって歯の移動を加速する、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記物質のうちの1つ以上が以下の有効成分:プロスタグラジンE2、プロスタグラジンF2α、へパリン、リラキシン、コンカナバリンA、および/またはニコチンのうちの少なくとも1つを含有する、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記物質のうちの1つ以上がグリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンの分解を引き起こすことによって歯の移動を加速する、項目1に記載の方法。
(項目27)
前記物質のうちの1つ以上が以下の有効成分:ヒアルロニダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、カタボリン、またはエストラジオールのうちの少なくとも1つを含有する、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記物質のうちの1つ以上がインターロイキン−1、インターロイキン−6、腫瘍壊死因子−αまたは形質転換成長因子βの局所的濃度を増加させることによって炎症を誘発する、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記物質のうちの1つ以上が口内環境において、組織マトリクスタンパク質間の架橋の数の増加を引き起こすことによって歯の再発を防止する、項目1に記載の方法。
(項目30)
前記物質のうちの1つ以上が以下の有効成分:ゲニピン、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、1,6−ジアミノヘキサン、バイオフラボノイド、またはグルコース、リボースまたはそれらの誘導体のような還元糖のうちの少なくとも1つを含有する、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記物質のうちの1つ以上が骨吸収を刺激または低減することによって歯の移動を変更する、項目1に記載の方法。
(項目32)
前記物質のうちの1つ以上がリゼドロネイトまたはAHBuBPのようなビスフォスフォレイトを含有する、項目1に記載の方法。
(項目33)
第1のリザーバに第1の物質を格納することと、第2のリザーバに第2の物質を格納することとを包含する、項目1に記載の方法。
(項目34)
前記第1の物質は前記第2の物質と異なる、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記第1の物質は前記第2の物質と同じである、項目33に記載の方法。
(項目36)
第3のリザーバが第3の物質を格納することを包含し、前記第1の物質および該第3の物質は前記第2の物質と異なる、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記物質は鎮痛剤を包含する、項目1に記載の方法。
(項目38)
前記物質は歯の移動に関連する口内の痛みを軽減する、項目1に記載の方法。
(項目39)
前記物質は歯槽堤増大および正顎治療から痛みを軽減する、項目1に記載の方法。
(項目40)
前記物質はさわやかな吐息を提供する、項目1に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、物質の個人への口内間送達のための例示的な方法を示す。
【図2A】図2Aは、あごの上の歯の全体にわたってフィットするように適合される例示的な除去可能な器具である。
【図2B】図2Bは、あごの上の歯の全体にわたってフィットするように適合される例示的な除去可能な器具である。
【図2C】図2Cは、例示的な歯における図2Bの器具の断面図を示す。
【図2D】図2Dは、歯および歯茎の線を除いた図2Cの断面図を示す。
【図2E】図2Eは、薬物または薬剤の送達のための器具の追加の実施形態を示す。
【図2F】図2Fは、薬物または薬剤の送達のための器具の追加の実施形態を示す。
【図3】図3は、別の薬物送達システムを示す。
【図4A】図4A〜図4Eは、リザーバのあるブラケットの様々な図を示す。
【図4B】図4A〜図4Eは、リザーバのあるブラケットの様々な図を示す。
【図4C】図4A〜図4Eは、リザーバのあるブラケットの様々な図を示す。
【図4D】図4A〜図4Eは、リザーバのあるブラケットの様々な図を示す。
【図4E】図4A〜図4Eは、リザーバのあるブラケットの様々な図を示す。
【図5A】図5A〜図5Eは、薬物送達システムの様々な実施形態を示す。
【図5B】図5A〜図5Eは、薬物送達システムの様々な実施形態を示す。
【図5C】図5A〜図5Eは、薬物送達システムの様々な実施形態を示す。
【図5D】図5A〜図5Eは、薬物送達システムの様々な実施形態を示す。
【図5E】図5A〜図5Eは、薬物送達システムの様々な実施形態を示す。
【図6A】図6Aは、エネルギーが歯の移動または薬物送達を達成するために器具に適用される実施形態を示す。
【図6B】図6Bは、エネルギーが歯の移動または薬物送達を達成するためにワイヤーに適用される実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(薬物送達のための器具)
図1は、例えば患者のような個人へ物質を口内送達するための例示的な方法を示す。物質は特に、薬物または生物活性の薬剤であり得る。図1の過程は物質を口内構造に付着させること(10)、および物質が口内で個人の体と反応することを可能にすること(12)を含む。一実施形態において、物質は口内構造から体内へ所定のレートで流れるように提供される。物質は最終的に所望の方法で個人の生理機能に作用または変化を及ぼす(14)。用語「口内構造」は、歯、歯肉、頬、歯茎、唇、舌、胸郭、のどの裏、および舌の下側を含む口の中のあらゆるエリアをいう。
【0012】
図1の方法は、適切な歯科デバイスを使用して物質が口内構造に付着し、物質を口内構造から体内へ所定の用量だけ流れるように提供する。物質は歯の移動を加速または減速し得る。
【0013】
物質は口内構造の刺激(irritation)を誘発し得るか、または骨構造の炎症を誘発し得る。刺激または炎症のパターンあるいは刺激または炎症の進行は異なり得る。例えば、圧力、タイミング、位置、刺激または炎症の程度、および刺激または炎症の深度は異なり得る。
【0014】
物質はブラケット、歯科装着具、ブラケット補助具、結紮紐、ピン、ブラケットスロットキャップ、ワイヤー、ねじ、マイクロステープル、義歯、部分義歯、歯科インプラント、歯肉消息子、歯肉チップ、フィルム、または歯間に置かれ得る。物質はまた、除去可能な器具に置かれ得、1つ以上のモジュールが物質を格納するために除去可能な器具に置かれ得る。物質は例えば電気エネルギー、光エネルギー、熱エネルギー、音エネルギー、磁気エネルギー、または電磁エネルギーのようなエネルギーを治療のために提供し得る。口内構造は追加の同じ物質または異なる物質で再補給され得る。
【0015】
一実施形態において、物質の物理的な量または形状は、物質の正確な送達をサポートするようにコンピュータ設計される。コンピュータシステムは患者の歯生状態をスキャンし得、スキャンされた歯生状態に基づいて物質を口内構造に付着させる1つ以上の器具を設計し得る。器具のうちの少なくとも1つが所定の量を分配するように設計される。さらに、器具は所定の手順で物質を分配し得る。例えば、器具のうちの少なくとも2つが2つの異なる期間での送達のために2つの異なる用量で物質を分配し得る。その結果として、受胎調節薬に関しては、例えば多くの量が15日目に送達され得、少ない量が30日目に送達され得る。
【0016】
システムは診断も同様に行ない得る。診断を行なうために、システムは口内間の物質をサンプルし、口内間の物質に基づいて(病気のような)体の状況を検出する。プロセッサはサンプリングの結果を受信し得、以下でさらに詳細に述べられるようにサンプルされた口内間の物質に基づいて物質の閉ループ送達を実行する。システムはまた検出された体の状況をリモートコンピュータへ診断のために転送し得る。
【0017】
物質は化学物質として公知である任意の物質であり得る。好ましくは、物質は医療レベルの薬物、化学薬剤、または生物活性の薬剤である。薬物または薬剤の例としては、特に抗菌物質、抗生物質、抗炎症薬剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、象牙質減感剤、消臭剤、免疫試薬、麻酔剤、栄養剤、酸化防止剤、リポ多糖類複合剤、および過酸化物を含み得る。
【0018】
物質の口内構造への付着は除去可能な器具、特にブラケット、歯科装着具、ワイヤー、ねじ、栓、マイクロステープル、歯科インプラント、歯肉消息子、歯肉チップ、フィルム、または複合材料のような固定の器具、または歯間を介して行なわれ得る。
【0019】
歯はしっかりと適切にセメント、歯根膜、歯槽骨、および歯肉で保持される。これらの接続組織構造は支持基質に架橋されるコラーゲン繊維およびエラスチン繊維を含む。この基質の追加の構成要素は、組織内で圧縮力に抵抗する役割をするグリコサミノグリカン(GAG)およびプロテオグリカンを含む。この基質の構成は時と共に、基質の分解、基質の再合成、および組織の再構築を刺激する持続的な圧力に応答して変化し得る。歯の移動を加速するために、薬剤は力が歯に加えられる間に基質の分解の比率を増加させる。
【0020】
図2Aは顎16の歯の全体にわたってフィットするように適用される例示的な除去可能な器具15を示す。器具は薬物、化学薬剤、または生物活性の薬剤でコーティングされ得る。一実施形態において、薬物は水または唾液と接触するまでは不活性である。代わりに、薬剤の放出は水または唾液によって刺激され得る。このように、ある場合では、装着時において、唾液が薬物/薬剤を活性化し、薬物/薬剤が染み出ることを可能にし、患者の口腔を介して患者を治療する。物質はまた、患者の歯肉を介して送達され得る。
【0021】
器具が歯の全体にわたって配置されるときには、器具は薬剤を口内環境に放出し得る。そのような手段は薬剤を含む層を備え得る。層はリポジショニング器具の表面の少なくとも一部分にわたって形成され得る。これらの表面は、配置されたときには歯と接触する空洞内の表面である空洞の表面と、配置されたときには頬および唇と接触する器具の表面である外面との両方を含む。層は様々な材料で構成され得、様々な形状をとり得る。例えば層は基本的には薬剤を含み得る。言い換えると、薬剤は弾力性リポジショニング器具のポリマーシェルの表面に直接的に付着され得る。このことは、吹きつけ、塗布、および/または浸漬のような多くの方法を利用して薬剤(オプションとして不活性のキャリアまたは希薄剤を使用して)を表面へ適用することによって達成され得る。リポジショニング器具が患者の歯の全体にわたって配置されるときには、薬剤は口内環境に放出され得る。
【0022】
代わりとして、器具への粘着または付着を促進し、および/または薬剤が拡散または分解によって放出され得る基質を形成するキャリアまたはバインダ内または上に存在する薬剤を層は含み得る。一実施形態において、薬剤はキャリアまたはバインダに溶解される。この場合には、薬剤は粉末または同様の形状で提供され得、液体の溶液に溶解され得る。結果はコーティングまたはフィルムを形成するために、一般的に吹きつけ、塗布、および/または浸漬によってシェルの表面に適用され得る溶液となり得る。リポジショニング器具が患者の歯にわたって配置されるときには、薬剤はコーティングから口内環境へ放出され得る。放出は唾液の中の酵素またはタンパク質などによるキャリアの活性化または不活性化または任意の他の放出メカニズムの結果であり得る。または、放出は例えば唾液との接触によるキャリアの分解の結果であり得る。一部の場合において、バインダまたはキャリアは層を表面へ適用するときに薬剤を残して蒸発し得る。これらの場合において、薬剤は、上記のように薬剤が表面へ直接的に付着されるときと同様な方法で放出され得る。任意の薬剤、特にフッ化材料、抗生物質、漂白材料、および呼気清浄剤がこの方法で口内環境へ送達され得ることが理解され得る。
【0023】
別の実施形態において、薬剤が層において閉じ込められるか、または懸濁される。薬剤の懸濁のための一般的な材料は、ゲル状、ゼリー状、またはパテ状のような半固体の材料である。そのような材料はコーティングまたはフィルムを形成するために、吹きつけ、塗布、および/または浸漬によってシェルの表面に適用され得る。本明細書では、すべての場合において、懸濁は科学的な定義に限定されず、キャリアが薬剤を保持、含有、支持、他の態様で含む任意の状況といい得る。代わりにまたはさらに、半固体の材料は歯を受容するように形成されるポリマーシェルの空洞に置かれ得る。空洞は任意の所望の程度に満たされ得る。リポジショニング器具が歯の全体にわたって置かれるときには、歯は空洞内の半固体の材料に直接的に接触し得、歯が空洞に挿入されるので任意の余分な材料は取り除かれる。その結果として、器具から材料の過度の流出を避け得る程度に空洞を満たすことが所望される。半固体の懸濁材料の使用による薬剤の送達は、例えば漂白治療およびフッ化治療において一般的である。しかしながら、そのような治療は、リポジショニングする力を歯に適用しないトレイまたは一般的な器具の使用で材料を適用する。上記のようにリポジショニング器具を修正することによって、歯列矯正治療はそのような薬剤の送達の初めから最後まで継続し得る。任意の薬剤、特にフッ化材料、抗生物質、漂白材料、および呼気清浄剤がこの方法で口内環境へ送達され得ることが理解され得る。
【0024】
薬剤の閉じ込めまたは懸濁のための別の一般的な材料は制御放出材料である。層は比率制御材料を備え得、比率制御材料は薬剤が層から放出される比率を制御する。制御放出材料または比率制御材料は一定の量の薬剤を一定の比率で送達する。しばしばそのような送達は、長い間、所望の治療の範囲内の環境において比較的安定した濃度の薬剤を維持する。その結果として、分配された用量が送達され得る。さらに、送達を維持する能力が、口内環境への分配された送達のために薬剤を繰り返し適用する必要性を排除する。
【0025】
そのような制御放出材料は、上記のようにゲル状、ゼリー状、またはパテ状のような半固体の材料として提供され得るが、これらの材料はまた、リポジショニング器具のポリマーシェルに付着される固体の材料として提供され得る。制御放出材料の1つのタイプは適切に分散された薬剤の分子が懸濁されるポリマー基質膜を備える。薬剤は濃度の変化に従って基質膜を介して拡散し得る。代わりとしてまたはさらに、薬剤はポリマー基質膜の材料の分解によって放出され得る。いずれの場合であっても、制御放出材料はシェルの表面に積層され得るシートとして提供され得る。制御放出シートは、リポジショニング器具を形成するために、エラストマーポリマーおよびモールドの全体にわたって形成される真空を使用して層にされ得る。制御放出材料は、材料および所望の適用に依存して、器具の内面または外面に存在するように配置され得る。または制御放出シートは、所望のエリアに薬剤の送達を供給するために、形成後に、ポリマーシェルの表面に積層され得るか、または接着され得る。代わりとして、制御放出材料はリポジショニング器具のポリマーシェルに挿入され得るタブレットまたは同様の塊として提供され得る。薬剤はタブレットから口内環境へ時と共に溶出し得る。
【0026】
別の実施形態において、薬剤は材料の空孔内に維持され得、空孔から制御比率で溶出し得る。溶液自体が材料の空孔の中へ吸収され得るか、または薬剤は材料の空孔に吸収されたキャリアに懸濁され得る。後者の場合には、薬剤はキャリア材料の溶解および/またはキャリア材料の制御分解によってキャリアから放出され得る。このことは空孔からの薬剤の制御放出に加えて比率制御メカニズムを組み込み得る。上記のように一部の場合において、患者の唾液の中の酵素が放出を活性化し得るか、または薬剤を放出するためにキャリア材料を分解し得る。薬剤は放出方法の任意の組み合わせによって放出され得ることが理解され得る。
【0027】
さらなる実施形態において、リポジショニング器具のポリマーシェルはそれ自体、薬剤を含む制御放出材料を備える。この場合には、ポリマーシェルの少なくとも一部分が制御放出材料から形成され、比率制御材料は薬剤がシェルから放出される比率を制御する。先に述べたように、制御放出材料はシートの形状で提供され得る。その結果として、制御放出材料のシートはリポジショニング器具自体を形成するために患者の歯のモールドの全体にわたって形成される真空となり得る。この方法で、器具を形成するために、追加の弾力性の材料は必要とされ得なくあり得る。制御放出材料はポリマー基質膜、有孔材料、または任意の適切な材料であり得る。制御放出は薬剤の溶出の比率が歯のリポジショニング比率に対応するように設計され得る。薬剤は再配置過程の初めから終わりまで溶出し得、歯が器具によって分配された所望の配置に到達することになる。
【0028】
別の実施形態において、器具が口内の歯の保定具として使用されるときには、器具は、低減された応力緩和およびクリープを示すポリマー材料から形成される。歯の保定具はポリマー材料から形成される。いったん形成されると、歯の保定具はポリマー材料の薄い層でコーティングされる。このコーティングは歯の保定具を唾液の構成要素、水および温度の潜在的に危険な環境から保護するのに役立つ。ポリマーコーティングの物理的な特性(例えばデュロメーター、潤滑性能、弾力性など)はポリマーの化学的性質を修正することによって調整され得る。さらに、多様な物質が患者に利益を付随的に提供するためにポリマーコーティング溶液と混合され得る。例えば、フッ化物がポリマーコーティングと混合され得、時と共に口内の悪臭を抑制することを促進するために放出され得る。歯肉炎を抑制または歯周病を治療するための薬物がまたポリマーコーティングと混合され得る。最後に、ポリマー基質に含まれる生体親和性の色素または冷却剤が唾液流体にさらされるときに放出され得る。冷却材の逐次の消失は歯の保定具が患者によって摩損されているかどうかを示し得る。歯科器具に適用されるポリマーコーティングは唾液の構成要素、温度、および水の有害な影響に対する防御壁として役立ち、フッ化物、色素、界面活性分子、抗菌性の薬剤および抗菌性の薬物を含み得る。
【0029】
なおさらなる実施形態において、リポジショニング器具の少なくとも一部に結合される放出手段は歯を受容する空洞に加えて、器具のシェルの中に形成されるリザーバを備える。一般的に比率制御膜はリザーバの全体にわたって置かれ、比率制御膜は物質がリザーバから放出される比率を制御する。リザーバは送達のための薬剤または物質で前もって充填または前もって装填され得る。この場合において、器具は、任意の包装からの除去の後に器具に送達のための薬剤を装填する必要なしで、挿入または使用の準備ができてい得る。放出手段が単一の送達期間のために設計される場合には、器具は所定の再配置の期間を通して摩損され得、処分され得る。放出手段が複数の送達期間のために設計される場合には、リザーバは所定の再配置の期間を通して任意の回数放出されるように薬剤を補充され得る。任意の薬剤、特にフッ化材料、抗生物質、漂白材料および呼気清浄剤が口内環境にこの方法で送達され得ることが理解され得る。
【0030】
一部の例において、口内器具のポリマーシェルの視覚的特性を変化させることが所望され得る。そのような器具は歯の全体にわたって除去可能に配置可能であるように形成される空洞を有するポリマーシェル、およびシェルの視覚的特性を変化させるシェルの上またはシェルの中の材料を備える。そのような変化は一般的に環境の変化に応答する。一部の場合において、視覚的特性は緑、赤または青のような色である。その結果として、器具は口内環境においてまたは除去されたときのいずれかのような特定の環境状況の下で、着色または特定の色を表し得る。述べられた材料は温度の変化に応答して色を変化させる色素であり得る。例えば、色素は器具が口から除去され、温度を体温(37℃)から室温(25℃)に変化させたときには、色を変化させ得る。同様に、色素は器具が冷水ですすがれたときには色を変化させ得る。
【0031】
器具は口内間薬物送達システムを提供するために使用され得る。上記の薬物に加えて、他の化合物も同様に使用され得る。例えば薬物にコートティングされた器具は減感作用薬を過敏な歯に送達するために使用され得る。薬物物質は単に、減感作用歯磨きまたはSensodyne(登録商標)のようなゲルの中のわずかな量の活性成分であり得る。減感作用薬剤は器具の表面じゅうに分散され、実質的に一定の比率で患者の過敏な歯に、比較的長期間にわたって送達される。
【0032】
器具は薬剤を前もって装填され得、任意の包装からの除去の後に使用の準備ができてい得るが、前もって充填されないまたは前もって装填されない器具は、歯の全体にわたって器具を配置するのに先立ち、または歯の全体にわたって器具を配置する直前に装填されることが要求され得る。装填は歯を受容する空洞に薬剤を配置することを含み得る。先に述べられたように、空洞は任意の所望の程度に充填され得る。器具が歯の全体にわたって置かれるときには、歯は、歯が空洞に挿入されたときには、空洞内で薬剤と直接的に接触し得る。代わりとして、装填は器具を歯の全体にわたって配置する直前に、器具の中の薬剤放出リザーバに薬剤を配置することを含み得る。薬剤は、器具が歯の全体にわたって配置されるときには、リザーバから口内環境に溶出し得る。溶出の比率はリザーバを周辺環境から分離する制御放出膜によって制御され得る。装填はまた、歯の全体にわたって器具を配置するのに先立ち、薬剤を含む比率制御材料を器具の表面に接着することを含み得る。そのような材料は、薬剤の送達のために所望のエリアにおいて器具のポリマーシェルに除去可能または恒久的に接着され得るポリマー基質膜を含み得る。最後に、装填は、歯の全体にわたって器具を配置する直前に、薬剤を器具の上または中の有孔材料に吸収することを含み得る。
【0033】
位置調整器具を使用する歯の再配置は歯の全体にわたって器具を配置することを含む。しかしながら、器具は、歯が所望の歯の配置の少なくとも近くに移動されるまで、再配置手順を介して日常的な歯の衛生の実施および他のイベントのために定期的に除去される。器具が歯から除去される間には、器具は送達のための薬剤または物質を補給され得る。補給は、器具が歯の全体にわたって取り替えられるたびにその直前に行われ得るか、または補給が所定の手順に従って行なわれ得る。
【0034】
別の局面において、薬剤の送達を所定の歯の再配置治療計画に導入するための方法が提供される。治療計画が歯列矯正医または開業医によって歯列矯正治療の最初に決定される。計画は歯の配置器具のシステムを使用して、一連の中間構成または配置を介して最終的な所望の配置へ歯を移動させることを含む。各器具は、歯の全体にわたって除去可能に配置可能な空洞を有するポリマーシェルを含み、連続するシェルの空洞は治療計画に従って歯を一配置から連続する配置へリポジショニングするように形成される。一連の器具の全てまたは器具の一部が治療の最初に提供され得る。いずれの場合においても、薬剤を口内環境へ送達する必要性または所望が治療の中の任意の時点で生じ得る。そのような場合において、薬剤および/または薬剤を口内の環境に放出するための手段は治療中の任意の時に器具と結合され得る。
【0035】
薬剤を放出するための手段は、先に述べられたような任意の手段を含む多数の実施形態を含み得る。一般的には薬剤を放出するための手段は先に述べられたように薬剤を含む層を含み、結合は層を器具の表面の少なくとも一部分に接着することを含む。層が本質的に薬剤を含む場合には、接着は薬剤を器具の表面にコーティング、吹きつけ、浸漬、または塗布することを含み得る。あらかじめ成形された器具は、患者の口に挿入される前に薬剤で単にコーティングされ得る。層がキャリアまたはバインダ内または上に存在する薬剤を含むときには、接着はキャリアまたはバインダを器具の表面に付着させることを含み得る。同様に、薬剤が層に閉じ込められるときには、層は器具の表面に付着され得る。層は比率制御材料のシートを含み得、比率制御材料は薬剤が層から放出される比率を制御する。この場合には、シートは接着剤で器具の表面へ接着され得る。代わりとして、シートは圧入によって表面へ付着され得る。シートおよび表面はそれぞれ、互いに圧迫することによってスナップするようにまたはフィットするように形成され得る。例えば、シートは形成された突起を有し得、表面は成形されたインセットを有し得、突起が、インセットに対して押されたときにはインセットにフィットし、シートを適切に保持する。多くの例において、器具は、有孔性であり得るか、または、所望の薬剤を治療の専門家および/また患者が適切だと決定した任意の時に、装填され得るリザーバを有し得る。例えば、器具は薬剤の溶液に浸漬され得、器具が薬剤を特定の期間吸収または吸着することを可能にする。
【0036】
さらに、シートは器具の表面あるいは歯または歯肉の表面に対してフィットするように適合される形状にあらかじめ成形され得る。例えば、シートは1つ以上の歯の表面の形状または歯肉、特に歯肉の縁の間の形状を反映してあらかじめ成形され得る。あらかじめ成形されたシートは、シートが器具に結合され、器具が歯の全体にわたって配置されるときに、表面に対して保持され得る。結合はシートを器具に付着させる任意の手段を含み得る。特に、あらかじめ成形されるシートはさらに、シートの器具の表面への接着を提供し得る接着層を備え得る。
【0037】
図2Aの器具を形成する材料は、電気伝導フィルタ、磁気フィルタ、照明フィルタ、圧電フィルタ、および/または感光フィルタのような追加的なフィルタで補充され得る。これらの追加のフィルタを有して、または有さずに形成される器具の材料特性(係数、電気抵抗、材料透過性、および複屈折(材料または圧力の向きの程度)、照明パターンまたは特定の光源の下でパターンなど)は、これらの特性が構造、組織、および/またはフィルタ間の空間的な間隔の変化の結果により変わるので、器具が時と共に摩損した後で変化し得る。例えば、充填された合成物の電気伝導性は透過理論に従って充填物の量の濃度に対応するということが明確に確立されている。その結果として、非伝導性のポリマーの基質のメカニカルな変形または熱膨張は増加した平均内部充填物空間または減少した充填物の量の濃度を導き得、結果として減少した電気伝導性を導き得る。電気伝導性の充填物の例は金属、グラファイト、電気伝導性のポリマー、半導体および超伝導体を含む。特性のこれらの変化はコンプライアンスのインジケータとして使用され得、器具の使用によって診断され得る。同様に、伝導性の充填物の分離はまた、熱伝導性を低減し得、そのことはまた、器具の使用によって計測され得る。充填物が、反磁性体(Cu、Au、Agなど)および常磁性体(例えばAl、Cr、Na、Ti、Zrなど)のような外部刺激の存在において磁気行動を有するか、または強磁性体(Fe、Co、Niなど)、反強磁性体(例えばMnO)および強磁性体(MFe)のような固有の磁気特性を示す場合には、ポリマー基質のメカニカルな変形の結果による充填物の空間的な分離はまた、キュリー温度より上での磁気特性における減少を導き得る。ルミネッセンス、蛍光、またはリン光を示す充填物のような照明充填物を有する合成物のメカニカルな変形は減少された照明強度となる。圧電性の繊維の屈曲変形または置き換えは他の電気起動されるインジケータ(例えば低電力LED光)を作動させるために計測され得るか、または使用され得るかのどちらかである電気ポテンシャルとなり得る。外部の電界に依存する光学的性質を有する充填物、例えばUV、IRまたは可視スペクトルにおける吸収係数を変化させる充填物はまた、基質の変形のインジケータとして役立ち得る。
【0038】
図2Bは図2Aの第2の実施形態を示す。この実施形態において、器具17は、歯肉の側面または歯周ポケットの中で患者の歯肉組織と接触するように、器具17から突出する複数の送達ノズル18A〜18Cを有する。ノズル18A〜18Cは顎16歯の正面側、舌側または両側のいずれかに存在し得る。オプションとして、1つ以上のリザーバ19A〜19Cが余分な薬物/薬剤をノズル18A〜18Cを介して送達するために格納し得る。一実施形態において、リザーバ19A、19B、および19Cは同じ薬物または物質を含み得る。別に実施形態において、リザーバ19A、19B、および19Cのそれぞれは異なる薬物/物質を含み得る。さらに別の実施形態において、リザーバ19Aおよび19Cは同じ薬物を含み得、19Bは異なる薬物/物質を含み得る。上記のような薬物の格納の組み合わせは説明の目的のみであり、複数のリザーバ19A〜19Cに複数の薬物または物質を格納するための任意の適切な組み合わせが使用され得る。
【0039】
図2Cは例示的な歯における図2Bの器具の断面図を示す。図に見られるように、ノズル18Aは薬物または薬剤を格納するか、リザーバ19Aから薬物/薬剤を受容するかのいずれかである。さらに、ノズル18Aは薬物/薬剤を患者へ送達するために患者の歯肉へ挿入されるように適合される。図2Dは図2Cの歯および歯肉の線のない断面図である。
【0040】
図2Eを参照すると、薬物/薬剤送達デバイスの別の実施形態が示される。この実施形態において、複数の薬物/薬剤の容器またはモジュール23が除去可能な歯科器具21の内側の面に置かれる。器具21は歯25の全体にわたってフィットされる。噛むことまたは他の口内の活動の間に、モジュール23を有する器具21は歯25に向けて圧迫される。所定の圧力または力において、モジュール23のうちの1つ以上が破裂し、薬物または薬剤を口腔に放出する。器具21の内側の面に置かれることに加えて、モジュール23はまた器具21の外側の面にも同様に置かれ得る。
【0041】
続けて図2Fを考えると、薬物または薬剤送達デバイスのさらに別の実施形態が示される。この実施形態において、付着物27が歯25に取り付けられる。付着物は第2の材料の存在がなければ不活性である第1の材料を含む。第2の材料は器具29の上にコーティングされ、第1の材料がない場合にはまた不活性となる。器具29が歯25および付着物27の全体にわたって装着される時には、第1の材料および第2の材料は口内間送達に適切な薬物または薬剤を形成するように反応する。
【0042】
図3を参照すると、別の薬物送達システムが示される。このシステムにおいて、ブラケットおよびワイヤーが、薬物の送達だけでなく歯のポジショニングを達成するために使用される。歯の正面において、ベース20および複数のブラケット24が歯に置かれる。さらに、ワイヤー28がブラケット24のスロットに置かれる。ベース20およびブラケット24は患者を治療するための薬物/薬剤を含む。
【0043】
代わりの実施形態において、固定された器具が歯の舌側にも同様に設置され得る。例えばベース30および複数のブラケット34が歯の裏側または舌側に配置され、ワイヤー38は歯列矯正治療および薬物送達のためにベースおよびブラケットとリンクされる。
【0044】
さらに別の代わりの実施形態において、薬物/薬剤は、図3に示されるように歯の両側でベースおよびブラケットおよびワイヤーを使用して送達され得る。
【0045】
リザーバは治療薬物または治療薬剤を提供するためにベースおよびブラケットに置かれ得る。図4Aは断面図であり、図4Bはリザーバを有するブラケットの透視図である。図4A〜図4Bに示されるように、ブラケットの胴体42はベース領域46およびワイヤー(示されていない)を受容するためにスロット47を有す。胴体42の上に、患者に送達するための薬物または薬剤を含むリザーバ44がある。ブラケットの胴体42およびリザーバ44は任意の適切な金属であり得るか、あるいは半透明のプラスチック材料または透明のプラスチック材料、または任意の生体適合金属であり得る。これらの一般的なタイプの材料が歯列矯正ケアの実施において一般的に使用される。ブラケットの胴体42およびリザーバ44のサイズおよび形状は重要ではなく、例示的なブラケットは記述の目的で示されることが理解されるべきである。
【0046】
図4Cは、スロット47によって受容されるキャップ48に物質が格納され得る別の実施形態を示す。キャップ48は図4Aのブラケットだけでなく、リザーバ44のない従来のブラケットと共に使用され得る。図4Aのブラケットと共に使用されるときには、キャップの中の物質はリザーバ44の中の物質と同じであり得るか、またはリザーバ44に格納される物質と異なり得る。
【0047】
図4Dは、スロット47を取り囲むバンド52に物質が格納され得るさらに別の実施形態を示す。バンド52は図4Aのブラケットだけでなく、リザーバ44のない従来のブラケットと共に使用され得る。図4Aのブラケットと共に使用されるときには、バンド52の中の物質はリザーバ44の中の物質と同じであり得るか、またはリザーバ44に格納される物質と異なり得る。オプションとして、バンド52はバンドリザーバ54から物質を受容し得る。
【0048】
図4Eは、ブラケット56の一面からブラケット56の他面に伸びる開口部57を有するブラケット56を使用するさらに別の実施形態を示す。物質が、特にボール状または箱状であり得るハウジング58に提供される。ワイヤー59がハウジング58に付着され、ワイヤー59は開口部57を介して差し込まれ得る。ブラケット56の他面に到達した後で、ワイヤーは、曲げられたワイヤー59Aで示されるように、ブラケット56へと捻られ得るか、または曲げられ得るか、または他の態様で固定され得る。曲げられたワイヤーは、患者への物質の送達のためにハウジング58をブラケット56に固定する。
【0049】
図5Aは、第2のリザーバが図4Aのブラケットが取り付けられる側とは反対の歯の第2の側に取り付けられる別の実施形態を示す。この実施形態において、第2のリザーバ50は追加の薬物または薬剤を含む。第2のリザーバ50は薬物または薬剤を必要に応じて再補給するために、パイプ52を介してリザーバ44に結合されている。
【0050】
別の実施形態において、リザーバ44またはリザーバ50は追加の薬物/薬剤をリザーバに注入するために針を使用して再補給され得る。代わりとして、リザーバ44またはリザーバ50は薬物/薬剤を再補給するために取替え可能であり得る。
【0051】
図5Bは、ブラケット64が歯60の薬物/薬剤のハウジング66のためのマウントまたはサポートとして使用される別の実施形態を示す。この実施形態において、ハウジング66は患者の体への薬物/薬剤の送達を促進するために歯肉または口腔の表面に接する。
【0052】
図5Cは、ブラケット64が歯60の薬物/薬剤のハウジング68のためのマウントまたはサポートとして使用される別の実施形態を示す。この実施形態において、ハウジング68は患者の体へと薬物/薬剤を送達するために歯肉または口腔の表面から離れている。
【0053】
図5Dは薬物または治療用薬剤の送達のためのさらに別の実施形態を示す。透過性のインプラント70が患者の歯茎71に設置される。ねじ端またはねじ込み端72を有するポストまたはアバットメント73がインプラント70に取り付けられる。歯冠形のハウジング74は、患者の体に送達されるようにアバットメント73およびインプランと70を介して染み出すかまたは透過する薬物または薬剤を含む。
【0054】
図5Eは、薬物または薬剤がヘッド76およびねじ込み部分75を有するねじに埋め込まれるねじの実施形態を示す。ねじは、ねじが薬物または薬剤を患者の体に送達する患者の歯茎に取り付けられる。ねじに加えて、マイクロステープルが薬物を体に送達するために使用され得る。さらに、義歯および部分義歯には、薬物を患者の口腔または体に送達するために薬物または薬剤が埋め込められ得る。さらに、薬物または薬剤は歯間に埋め込められ得る。
【0055】
図6Aは、エネルギーが歯の移動または薬物の送達に作用するように器具78に適用される別の実施形態を示す。この実施形態において、電気がバッテリーのようなエネルギー源83に格納される。スイッチ81がエネルギーを口腔に送達するために使用される。スイッチ81はマイクロコントローラのような電子機器79によって制御される。電子機器79は所定の量のエネルギーを、患者を治療するためにまたは薬物を送達するために送達する。
【0056】
図6Bは、エネルギーが歯の移動または薬物の送達を達成するためにワイヤー80およびワイヤー82に適用される別の実施形態を示す。この実施形態において、電気がバッテリーのようなエネルギー源88に格納される。スイッチ84はエネルギーを口腔にワイヤー80およびワイヤー82を介して送達するために使用される。スイッチ84はマイクロコントローラのような電子機器86によって制御される。電子機器86は所定の量のエネルギーを患者を治療するために送達する。エネルギーの一例は骨レベルで治療を促進するための低レベルの電流であり得る。エネルギー源88がスイッチ84を介してニクロムのような材料に結合される別の例において、エネルギーは低レベルの熱であり得る。エネルギー源88がスイッチ84を介して発光ダイオード(LED)に接続する別の例において、エネルギーは光であり得、LEDがレージングモードであるときには、エネルギーはレーザービームであり得る。エネルギーは、エネルギー源88がスイッチ84を介して誘導子に接続される別の実施形態において磁場であり得る。
【0057】
超音波は、エネルギー源88がスイッチ84を介して超音波振動源またはトランスデューサに接続される場合にも同様に使用され得る。トランスデューサは、骨の治療を促進するために振動し、超音波パルスを発するように電気的に作動され得る。骨を治療することに加えて、パルスの一部は歯を通過し、センサーのアレイ上の他のトランスデューサに返送される。これらのエコーまたは反射されたパルス信号は、アレイ上のトランスデューサによって検出された後で、診察された歯または歯の構造の再生を生成するために、制御され得、分析され得、比較され得る。反射される信号または散乱した信号をできるだけ多くの角度から収集することによって、電子機器は、歯の量をかたどるか、または位置づけるために、X線断層写真計算を行なうための充分な飛行時間型の測定を有し得る。
【0058】
振動が、歯の移動をさらに促進するために、骨構造を炎症させるかまたは刺激するように使用され得る。一実施形態において、器具は、電気刺激を受け取ると膨張および収縮し得る材料でコーティングされる。電歪ポリマー基質によって分散される超高誘電性定数を処理する有機充填物から製造される電気活性ポリマー合成物が、歯科アクチュエータとして使用され得る。合成物は、電歪ポリ(ビニリデンフッ化−トリフルオロエチレン)と、電気活性共重合体と、有機半導体、フタロシアニン銅のような充填物とから形成される基質を有し得る。合成物は人工筋肉として機能する。作動時において、人工筋肉は、歯の移動を促進するために、歯において振動を形成するために繰り返し収縮および伸張し得る。
【0059】
代わりとして、ニチノールのような形状記憶材料が使用され得、収縮/伸張が制御され得る。熱エネルギー、電気エネルギー、または電磁波エネルギーが、状態を変化させること、および歯の移動を誘発するために歯/歯茎構造を炎症または圧迫させることを誘発するように他の材料において使用され得る。
【0060】
別の実施形態において、ワイヤーが、除去可能な器具を使用して、歯に直接的に付着され得るか、または歯に間接的に付着され得、ワイヤーは、マイクロモーターを使用して、くり返し巻きつけられ得、くり返しほどかれ得る。そのようなくり返しの動作は、歯の移動を促進するために、歯茎または骨構造を炎症または刺激する圧力を加える。
【0061】
上記のように、図6A〜図6Bは、物質(この場合にはバッテリー83またはバッテリー88)がエネルギーを口腔に提供することを示す。エネルギーは物理エネルギー、電気エネルギー、光エネルギー、熱エネルギー、音エネルギー、磁気エネルギー、または電磁エネルギーであり得る。
【0062】
エネルギーの注入に加えて、図6A〜図6Bのデバイスは、口内構造を刺激または炎症させるために使用され得る。例えば、デバイスは、歯の再配置を促進するために、歯肉または歯の骨構造を炎症させるために使用され得る。
【0063】
別の実施形態において、器具は、薬物の移動を誘発するために電流を使用して、薬物送達を促進するために使用され得る。例えば、薬物の分子が1つの電極と別の電極との間で転送され得る。別の実装が、薬物を歯茎または歯の組織を介して押し出すために、器具の一方に正の電流を、器具の他方に負の電流を提供する。
【0064】
別の実施形態において、器具は歯の極性の変化を誘発する。歯は通常では負に帯電され、器具の中の薬剤は正に帯電させられる。反対の帯電が互いに引きつけられかつ接着し、薬物または薬剤が「イオン結合」によって歯の表面に付着され得る。
【0065】
さらに別の実施形態において、薬物を含む器具は、正に帯電するイオンが歯に転送されるように構成され得る。歯の極性は負から正へと変化する。正に帯電する歯のイオンが他の物質からの正に帯電するイオンに反発する。例えば、歯垢のイオンは、歯垢が口腔から除去され得るように歯のイオンから反発される。
【0066】
さらに別の実施形態において、器具は、歯の移動を加速するために粘膜組織イオン導入を適用する。イオン導入は歯周圧迫側の破骨細胞または牽引側の骨芽細胞を刺激する。
【0067】
(移動を加速または減速するための薬剤)
一実施形態において、物質は基質を分解することによって歯の移動を加速する。基質の分解は直接的または間接的のいずれかで刺激され得る。化学薬剤は基質の中の構造タンパク質を直接的に分解するように酵素として機能し得る。特に、プロテアーゼはタンパク質を分解し、エラスターゼはエラスチンを分解し、コラーゲナーゼはコラーゲンを分解する。他の薬物、またはリラキシン、エストロゲンまたはニコチンのようなホルモンは基質内の細胞で機能し得、それらの細胞に内生基質分解酵素を分泌させ得る。これら自然発生酵素の多くが基質メタロプロテアーゼ(MMP)として公知であり、歯周空間において、これらの酵素はMMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−8、およびMMP−9を含む。これらの酵素の発現および機能は通常、一部分では基質メタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP)として公知の分子の集団の付随的な発現によって、厳重な制御の下にある。
【0068】
多数の薬物が基質の分解を防止するために開発されている。これらの薬物は一般的に、抗炎症剤または抗がん治療として役立つ。これらの候補の一部が歯周炎を防止または治療するために使用される。ほんのわずかの薬物だけが基質の分解を刺激するために利用可能であり、それらは一般的には、創傷デブリードマン、血栓の分解、または胃腸内消化を刺激するような効能のために使用される。歯列矯正リモデリングの場面においての有効性は適切な臨床前のモデルでテストされることが必要であり得る。
【0069】
一例示的な薬物は、有効成分がトリプシンであるGranulexまたはXenaderm(登録商標)であり得る。この薬物は創傷デブリードマン、創傷治療、または静脈瘤治療に必要とされる。この成分は多くの異なるタイプのタンパク質を分解する。代わりとして、ヒアルロニダーゼのような他の有効成分が組織の中で圧縮力に抵抗する役割を有すると考えられているヒアルロン酸を分解するために使用され得る。またエラスターゼがエラスチンを好ましく分解するために使用され得、リモデリングを加速することおよび再生を防止することの両方を促進し得る。
【0070】
別の例示的な薬物は、有効成分が組織プラスミノゲンアクチベータであるAlteplaseまたはActivase(登録商標)であり得る。これらの薬物は血液溶解治療に役立つ。血栓の存在において、Activase(登録商標)はフィブリンをに結合し、フィブリン溶解を刺激するためにプラスミノゲンをプラスミン変換する。これらの薬物は血栓との関連においてのみ作用し得る。
【0071】
他の例示的な薬物の例は、活性が酵素:デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素、セルロース分解酵素(celluloytic)およびリパーゼの組み合わせに依存するArco−Lase(登録商標)、Creon(登録商標)、Kutrase(登録商標)、Ku−zyme(登録商標)、Ultrase(登録商標)、およびViocase(登録商標)である。これらの薬物は消化不良の結果による胃腸疾患の治療に役立つ。薬物Arco−Lase(登録商標)は柔らかいミント味のタブレットで提供される。これら全ての薬物は口内粘膜を刺激し得、それが食物のタンパク質を分解するだけでなく、歯茎組織を軟化させるように機能し得る効能であり得ることを通知する。
【0072】
他の例示的な薬物の例は、有効成分がパパインであるAccuzyme(登録商標)、Gladase(登録商標)、およびPanafil(登録商標)である。この薬物は創傷デブリードマンの治療に役立つ。尿素と結合されたパパインは生存不能なタンパク質を分解するが、推定では生存可能な組織をそのまま残す。
【0073】
別の例示的な薬物は、有効成分がアミノ安息香酸カリウムであるPotaba(登録商標)であり得る。この薬物は強皮症、ペイロニー病、皮膚筋炎、およびモルフェアのための抗繊維症治療に役立つ。この成分はビタミンB複合体の一部分であり、長期間にわたる使用により組織を軟化させると報告されている。
【0074】
別の例示的な薬物は、有効成分がα−L−イズロニダーゼであるAldurazyme(登録商標)、またはLaronidaseであり得る。この薬物はムコ多糖症の治療に役立つ。この成分はグリコサミノグリカン:ダーマチンア硝酸塩、ヘパラン(heparan)亜硝酸塩を分解するリソソーム加水分解酵素である。
【0075】
歯の移動を加速する目的のために歯茎組織を緩めることを促進し得る別の部類の酵素は、エラスチンを分解するエラスチナーゼ族の酵素である。これらの酵素の追加または内生エラスターゼ活性の誘導はまた、成功した歯列矯正による歯の移動に続く歯の逆戻りを防止するために役立ち得る。エラスターゼ酵素は、例えば好中球エラスターゼ、白血球エラスターゼ、顆粒球エラスターゼ、または(MMP−12とも呼ばれる)マクロファージエラスターゼのような多数の炎症細胞によって生成される。以下に示されるように、炎症を刺激する薬剤または活性はこれらの炎症細胞の局所的な濃度の増加をもたらし、その結果として、エラスターゼ酵素の局所的な濃度の増加をもたらす。
【0076】
組織の分解をまた増大させ得る追加の酵素はヒアルロニダーゼおよびカテプシンを含む。ヒアルロニダーゼは、圧縮力に抵抗するために重要なグリコサミノグリカン基質分子の一部分であるヒアルロン酸を特に分解する粘膜に見つけられる酵素である。カテプシン族のリソソーム酵素は、組織崩壊を含む多くの病気作用において重要なシステインプロテアーゼの大きな多様な族である。例えば、カテプシンBは脱髄、気腫、リウマチ関節炎、および腫瘍性の浸潤において役割を果たすことで公知である。カテプシンBはまた、歯列矯正による歯の移動の間に、歯肉の間隙の流体において上昇されることで公知であり、メカニカルな圧力に応答して細胞外の基質の分解に関わると考えられる。別のカテプシンであるカテプシンKは歯の移動の間に、破歯細胞および破骨細胞においてアップレギュレートされ、この過程の間に、歯根吸収の役割を果たし得る。
【0077】
概して、歯肉の細胞外の基質の構成要素を分解することが可能である任意の酵素の追加は歯の移動を加速することが可能である。組織の基質を崩壊させるための代わりの手段は、基質構成の異なる構成要素間で通常の相互作用を妨害し得る合成物の追加による。例えば、インテグリンとして公知のタンパク質族は細胞を細胞外の基質に結合するのに役立つ。ジスインテグリンとして公知の薬剤の部類の追加はこの相互作用を防止し得、基質の接続構造を軟化させ得る。ジスインテグリンはヘビの毒の中で見つけられ、毒の組織への浸透を促進する効能のために、この種族にとって有益である。多くのヘビ類に見つけられるジスインテグリンは、アルボラブリン(albolabrin)、アパラギン(appalagin)、バトロクソスタチン(batroxostatin)、ビチスタチン(bitistatin)、エキスタチン、エレガンチン(elegantin)、フラボリジン(flavoridin)、ハリシン(halysin)、キストリン(kistrin)、トリフラビン(triflavin)、およびトリグラミン(trigramin)と様々に呼ばれる。
【0078】
細胞外の基質の主要な構成物質はコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、インテグリン、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカンである。追加の構成物質は、フィブリリン、バーシカン(versican)、リンクタンパク質、エンタクチン(entactin)、テネイシン、ビトロネクチン、デコリン(decorin)、カドヘリン(cadherin)、およびその他多くのものである。これらの構成要素の多くは、剛性および構造上の統合を組織基質構成に加えるために、互いに結合される。しばしばこれらの相互作用は、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸塩)ペプチド配列を含む特定の結合部位を介する。これらの結合部位を標的にする抗体または他の結合剤は基質統合を分解することおよび組織を緩ませることが可能である。タンパク質間相互作用において重要なエピトープを標的にする酵素の一部は組織基質の分解をもたらし得るが、特定の抗体はこれらの基質タンパク質の全てに対して開発されている。抗体または他の結合剤は、天然のタンパク質の結合部位よりも大きい結合部位という類似点を有する場合には、効果的であり得る。例えばRGD部位において結合することが可能である薬剤を大量に生成する一方法は、Odermattなどで示されるような相表示ペプチドライブラリーを使用してスクリーニングすることによる。
【0079】
組織の細胞外の基質の分解は、酵素および上記のような結合剤の直接的な適用によって、または内生酵素の過剰発現を刺激する薬剤の追加による間接的な手段を介してもたらされ得る。このタイプの薬剤の例は、基質メタロプロテアーゼ(MMP)の発現または活性を変化させる薬物を含む。MMPは、構造配置のためにカルシウムイオンを要求し、機能のために活性部分において亜鉛イオンを要求する構造的に関連するタンパク質分解酵素の族である。MMP酵素は組織の分解に直接的に影響を与えるために単独または組み合わせのいずれかで投与され得る。先に述べたように、MMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−8、およびMMP−9は歯周空間で活性することで公知の基質分解酵素である。基質メタロプロテアーゼはまた、基質メタロプロテアーゼ、コラーゲナーゼ、ゼラチナーゼ、またはCLGとして公知である。例えば、使用される学名によって、MMP−2はまた、コラーゲナーゼタイプ4(A)、ゼラチナーゼA、またはCLG4(A)と呼ばれる。一部のMMPは、それらの発見が族の特性に関する知識に先立つという事実の結果のために、追加の名前で公知である。例えば、MMP−3はまたストロメライシン−1またはトランシンとして公知である。上記のMMP酵素は精製され、かつ市販されている。
【0080】
まとめると、酵素のMMP族は細胞外の基質のほとんど全ての構成要素を消化することが可能である。これらの酵素はしばしば共同で最善に作用し、選択的なコラーゲナーゼ活性を有するMMP同位体がタイプ1のコラーゲン3重らせん体を切断し得、さらにタンパク質を分解する追加のMMP酵素の利用を可能にする。MMP−1およびMMP−2とは対称的に、MMP−3はタイプIのコラーゲンを分解しないが、細胞外の基質の他の重要な構成物質であるプロテオグリカンおよびフィブロネクチンを分解し得る。これらの酵素は歯周組織において自然に発生するので、MMP活性は基質メタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP)として公知の内生酵素インヒビターの存在によって詳細にバランスがとられている。外因性MMPを組織に追加することは、歯の動作を補助し得る比較的多くの基質の分解および組織崩壊をもたらすために、活性のバランスを変更させ得る。
【0081】
内生MMP活性の刺激によって歯の移動を加速させるために作用し得る例示的な薬物は、有効成分がプロスタグラジンE2であるPrepidil(登録商標)(ジノプロストン)である。この薬物は分娩誘発治療に役立つ。プロスタグラジンE2は人間の歯肉組織において、MMP−1(コラーゲナーゼ)の発現および時にはMMP−3(ストロメライシン)発現を高めるということが示されてきた。同じ有効成分を含む別の例示的な薬物は、妊娠中絶に役立つProstinE2(登録商標)である。
【0082】
別の例示的な薬物はFluprostenolであり得る。この薬物はプロスタグラジンF2−αの活性を有する強力なルテオリティック薬剤である。研究では、この薬物が人間の歯肉においてMMP−1の生成を増加させ得、接続組織を分解させ得ることを示している。
【0083】
別の例示的な薬物は、有効成分がニコチンであるNicoderm(登録商標)、Commit(登録商標)、およびNicorette(登録商標)であり得る。この薬物は禁煙治療に役立つ。この成分は血管拡張のような多くの効能を有するが、研究ではこの薬物が人間の歯肉組織においてコラーゲナーゼ活性および基質ターンオーバーを増加させ得ることを示す。
【0084】
内生酵素の過剰発現を刺激する薬剤の別の例は、ストラチフィンとしてまた公知のケラチノサイト由来コラーゲナーゼ刺激要素である。この薬剤の送達は歯肉組織に存在する線維芽細胞におけるコラーゲナーゼ酵素のアップレギュレーションをもたらし得る。基質分解酵素の過剰発現を刺激するさらにより直接的な方法は、これらの酵素をエンコードする構成を有する局所的な細胞をトランスフェクトするために遺伝子治療技術を使用すること、またはそれらの特定の酵素の内生遺伝子転写を刺激することが可能であるエンハンサ要素またはプロモータ要素を使用して遺伝子治療技術を使用することのいずれかである。例えば、超酸化マンガンジスムターゼの過剰発現はMMP−2の活性化をもたらすことで公知である。環状アデノシン一リン酸(cAMP)の細胞内濃度を高める薬剤はまた、MMP−2の過剰発現を促進すること、この酵素の活性を増加させること、および組織内のコラーゲン含有量を減少させることが可能である。この能力を有する薬剤の例はイソプロテネノール、プロスタグラジンE2、およびフォルスコリンである。リラキシンはMMP−2生成を高めることが可能である別の薬剤である。
【0085】
概して、炎症反応を誘発する任意の薬剤はMMPの過剰発現の刺激および基質分解を引き起こし得る。これに関する関心の分子の別の大きな族はサイトカイン族の分子である。サイトカインは通常、別の細胞において反応を引き起こすために、細胞によって分泌される薬剤である。そのため、サイトカインは細胞間伝達において重要である。多数の一般的な炎症性サイトカインが解明され、さらに多くが将来、発見および特徴づけられ得る。炎症性サイトカインは怪我の後で放出され、追加の炎症性細胞を組織損傷エリアに補給することを促進する。歯列矯正による歯の移動は通常、軽い炎症反応を含む。悪化した場合には、炎症反応は追加の組織分解を適切に促進し得、歯の移動の過程を加速させ得る。最も一般的に公知の炎症性サイトカインはインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、および形質転換成長因子−β(TGF−β)である。
【0086】
炎症性サイトカインの直接的追加のほかに炎症反応を刺激するために多くの方法がある。炎症は局所的な組織損傷を引き起こす事実上任意の手段によって引き起こされ得る。組織を押すこと、組織を引くこと、または組織を伸ばすことのようなメカニカルな力が局所的な炎症促進サイトカインの放出を誘発する。軟組織または骨のいずれかの引き裂きまたは剥離は同様に炎症反応を誘発し得る。粉末、ポリマーまたは任意のタイプの異物のような刺激物の追加が炎症を引き起こし得る。局所的なpHの通常の生理学的なpHを超えた酸性または塩基性のいずれかへの変化は炎症を引き起こし得る。上昇された温度は超音波エネルギーまたは電気エネルギーのような他のエネルギー源の追加と同様な効果を有し得る。
【0087】
どの手段が局所的な組織分解酵素の活性化を刺激するために使用されるかに関わらず、深刻で回復不可能な組織損傷を引き起こさないために、この活性化を限定する必要性がある。求められることは歯列矯正による歯の移動と通常関連する炎症反応の軽い高まりである。これらの限定が確立され得る効能およびメカニズムは炎症を高めるために使用される刺激に依存し得る。薬剤または酵素が直接的に投与される場合には、薬剤または酵素の活性は用量反応相関をモニターすること、および最も適切な濃度を選択することによって制御され得る。内生酵素の間接的な刺激が使用される場合には、組織自体が一部の制御フィードバック(例えば、TIMPのアップレギュレーション)を全ての反応を調整および限定するために提供され得る。この場合における最終的な目的は、適切な組織崩壊をもたらすように適切なバランスをとることである。
【0088】
一実施形態において、薬物または生物活性薬剤は「保持」相を補助し、それがなければ、歯が最初の位置に戻る(逆戻りする)傾向にある。この逆戻りの根本原因は、骨およびPDLとは異なり、歯列矯正治療の間に吸収されず、圧縮され、結果として収縮する歯肉組織にあるようである。歯肉の圧縮面において、弾力性繊維の数およびサイズの増加およびコラーゲンの増加がある。圧縮された歯肉に格納される弾力は歯に圧力を与え得、保持の解放の後で逆戻りをもたらし得る。歯肉周辺のファイバーオトミーのような手順は圧縮された歯肉を歯から切断するために導入され、歯の逆戻りの防止において、ある程度の成功を証明した。
【0089】
生物活性薬剤は歯の移動を加速し得る。上記の生物活性薬剤は主に、コラーゲンまたはエラスチンの分解を促進することによって作用する。適切な局所の組織ベッドに送達される場合には、これらの薬剤は歯肉の圧迫側においてコラーゲンおよびエラスチンの集積を限定する必要があり、逆戻りの傾向を低減する。しかしながら、歯の逆戻りを防止する他のメカニズムがある。歯列矯正による移動が完了した後で、歯の位置を化学的に安置させる一方法は、特に歯の緊張面に関して、コラーゲン繊維間の化学的な架橋の数を増加させることを含む。増加される架橋は歯肉組織において新たな繊維方向に対するさらなる構造安定性を提供する。ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドはコラーゲンを架橋することか可能である薬剤として最も周知であり、これらの薬剤は一般的に、医療インプラントとしての生物義装具組織の使用に先立ち、生物義装具組織を処理するために使用される。標準構成のホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドは、インサイチュで使用するにはあまりにも毒性がありすぎ得るが、組織の毒性を低減するために修正され得る。
【0090】
科学的に架橋する薬剤は細胞外の基質の構成要素を多くの異なる効能のために架橋するために使用され得る。例えば、ゲニピンは比較的に毒性のなく使用され得る自然発生の架橋薬剤である。少なくとも1つの研究ではゲニピン(Genipin)はカルボジイミドと比較して、分子間のコラーゲン架橋をより刺激することが可能であるということが示されていたが、カルボジイミドはいくぶん毒性の少ない架橋薬剤であると考えられている。らせん間架橋よりも分子間架橋が所望の組織安定をより引き起こし得る。1,6−ジアミノヘキサン(DAH)はまた、特に(歯肉組織において自然発生する)グリサコミノグリカンの存在する場合には、カルボジイミドよりも示す毒性わずかに少ない有効コラーゲン架橋薬剤である。ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオニミデイト(dithiobispropionimidate)はグルタルアルデヒドのような標準的な薬剤よりもさらに生体親和性であると報告される架橋薬剤のさらに別の例である。
【0091】
有益であり得る別のクラスの化合物はグルコース、リボース、およびこれらの糖の誘導体を含む還元糖である。還元糖と生物学的アミンとの間の遅い架橋反応は糖化最終産物(AGE)の発生となる。AGEは人間の寿命の間に集積し、血管の増大および心筋梗塞、血管外傷反応異常、およびアテローム斑形成を含む多数の有害な状況がこの集積が原因となっている。しかしながら、歯列矯正アプリケーションのセッティングにおいて、限定された期間の増加した架橋は利益を提供し得、これらの薬剤はどの追加の毒性と関連しない比較的単純な糖である。AGE関連の架橋を加速することは、還元糖の濃度を増加させることおよびUV照射のような外部エネルギーの適用によって引き起こされ得る。
【0092】
バイオフラボノイドは、本試みにおいて非常に有益であると証明され得る別の広いクラスの化合物である。バイオフラボノイドはリボフラビン、カテキン、およびルートサイドのような分子によって例示される。これらの化合物の多くが、赤ワインおよび緑茶のような食品に自然に発見される。それらは非常に生体親和性があるが、単独で、または、UV−AまたはローズBengal/白色光の照射のような補助エネルギーと組み合わせでコラーゲンの架橋を促進することで公知である。リボフラビン−UVAの場合には、この治療は進行性の近視の治療のために強膜の生物化学的強度を増加させるために、強膜のコラーゲン架橋を促進するために臨床的に使用されている。
【0093】
歯肉組織における細胞外の基質タンパク質の集積は歯の逆戻りに重要な役割を有するように見えるが、骨のリモデリングが役割を果たしている証拠もある。School of
Dentistry in Tohoku University、Japanからの実験データが、歯の逆戻りを防止する二リン酸エステル(リゼドロネイト)の効能を示した。リゼドロネイトは骨吸収の強力なブロッカーである。歯列矯正による歯の移動の相の間に局所的に適用されるときには、リゼドロネイトは歯の移動を低減させる。保持の相の間に適用されるときには、リゼドロネイトは逆戻りを防止することが可能である。
【0094】
別の実施形態において、物質は、器具を介して局所的に放出される特にベンゾカイン、リドカイン、およびプリロカインのような麻酔剤および鎮痛薬であり得る。これらの物質は器具の使用/装着に関する、また口内炎、がんの痛み、および外傷、病気または外科手術と関連する他の傷害の結果による口内の不快感を一時的に和らげることに関する患者の承諾を促進し得る。
【0095】
さらに別の実施形態において、薬剤は患者の不快感を和らげるためまたは別の病気を治療するためのニコチンであり得る。内容が参照として援用される米国特許第4,215,706号において述べられたように、タバコ(ドナータバコ)が、強酸または強酸のアンモニウム塩を使用して処理される器具において受容基質と接触させられる。ドナータバコの中のニコチンの部分はドナータバコから受容基質に移動させられる。その後、ドナータバコおよび基質は分離され得る。ドナータバコは痛みの緩和または医学的治療のために還元ニコチン含有物を有する。
【0096】
さらに別の実施形態において、器具は、治療を容易にするために患者の承諾を促進し得る特にメントール、ペパーミント、スペアミント、ウインターグリーン、グルコン酸亜鉛、シトラス、クローブ、およびチモールのような呼気清浄剤の局所的な放出を提供するために使用され得る。さらに多くの呼気清浄剤の情報は、内容が参照として援用される米国特許公開第20040115137号に示される。
【0097】
さらに、物質はフッ化治療を介して虫歯を防止し得る。治療薬は歯磨き粉、ゲル、リンス、およびワニスを含む。歯肉炎または歯周病のような歯肉疾患は歯垢および歯石の堆積と関連するバクテリアの成長によってもたらされる。そのようなバクテリアの成長を防止するための最も一般的な推薦される方法は、歯垢を歯の表面からメカニカルに除去することである。しかしながら、慢性的な歯肉疾患および虫歯は、実際に正しい口内衛生方法および歯垢の除去に従う多くの個人を苦しめている。このことは遺伝子的疾病素質、病気、口呼吸、および医学的治療計画を含む様々な要素の結果であり得る。そのような場合において、バクテリアの制御は抗菌薬物の使用によって達成され得る。多くの一般的な系統の口腔菌叢の活性を低減することに有効であると示される一般的な抗菌薬剤はクロルヘキシジンである。クロルヘキシジンは多くの形態のバクテリアおよび菌に対して広い範囲の活性を有する陽イオン性のビグアナイド殺菌剤である。その結果として、クロルヘキシジンは歯肉転換に関する多くの研究において一般的な薬剤である。クロルヘキシジンは元来、Peridex(登録商標)(Proctor and Gamble)のようなリンスの使用を介して口内環境に送達されている。歯肉への持続的な送達はまた、クロルヘキシジンを浸透させられたデンタルフロス、およびトレイまたはマウスガードのような歯科器具の使用によって試みられている。別の頻繁に処方される抗菌薬剤はテトラサイクリンである。テトラサイクリンは事実上全ての一般的なグループのグラム陽性およびグラム陰性の両方の病原性バクテリアに対して有効である広い範囲の抗菌物質である。テトラサイクリンは菌類に対して活性を提供するようにアンフォテリシンのような抗真菌薬と化合され得る。局所的な送達がテトラサイクリンで満たされた空洞の繊維デバイスの歯周ポケットへの挿入およびトレイ、マウスガードのようなテトラサイクリン積載歯科器具の使用を用いて試みられてきたが、テトラサイクリンは元来、全身投与を介して口内環境に送達されている。これらのものは、いくつか例をあげると様々なスプレー、リンス、ガム、またはキャンディを含む。
【0098】
美容治療薬はしばしば歯の漂白製品、または歯のホワイトニング製品、および呼気清浄製品を含む。エナメル質および象牙質の変色は、加齢、着色物質(コーヒー、お茶、コーラ、タバコ)の消費、外傷、全身テトラサイクリン(抗生)治療、過剰なフッ化物、神経退化、および過去の歯の治療の結果による汚れの結果により生じ得る。漂白はこれらの着色をより白くまたはより明るくする。一般的には、漂白ゲルは歯の全体にわたってフィットする薄いカスタムフィットのトレイに配置される。トレイは夜に通常10日間〜14日間にわたり装着され、6ヶ月ごとに約1晩または2晩の定期的な再漂白治療を必要とし得る。呼気清浄製品はしばしば口臭を治療するためにまたは味を楽しむために患者によって使用される。これらは、少し例を挙げると様々なスプレー、リンス、ミント、ガム、またはキャンディを含む。
【0099】
さらに、物質は歯肉または骨を刺激する化学物質を含み得る。代わりとして、物質は骨を炎症させ得る。
【0100】
多くの場合、薬物または生物活性の薬剤の組み合わせによる使用は、任意の単一な薬剤の使用よりも利益を与え得る。治療用薬剤または美容薬剤を口内組織に送達するために使用される器具は、1つよりも多い薬剤を送達するように容易に適合され得、特定の薬剤を口内組織内の選ばれた位置に送達するように適合され得る。例えば、コラーゲンおよび/またはエラスチンの分解を加速する薬物は、一般的に歯の移動に抵抗するコラーゲン繊維またはエラスチン繊維の数およびサイズの増加のある歯肉の圧迫面に送達され得る。同時に、器具は器具を使用して達成される歯の移動を安定させることを促進するために、歯肉の緊張面にコラーゲンの架橋を促進する薬剤を送達し得る。一実施形態において、リザーバ19A、リザーバ19Bおよびリザーバ19C(図2B)は同じ薬物または同じ物質を含み得る。別の実施形態において、リザーバ19A、リザーバ19Bおよびリザーバ19Cはそれぞれ、異なる薬物/物質を含み得る。さらに別の実施形態において、リザーバ19Aおよびリザーバ19Cは同じ薬物を含み得、リザーバ19Bは異なる薬物を含み得る。一例において、漂白剤は1つのリザーバに格納され得、歯自体に送達され得、第2のリザーバは歯の移動を加速することが可能な薬剤を歯を囲む歯肉に格納し得、送達し得る。
【0101】
異なる薬剤が口内組織内の同一の位置に送達される必要がないのと同様に、異なる薬剤が同時に送達される必要はない。1つの薬剤を歯列矯正治療の開始時に送達し、異なる薬剤を治療の間の別の時点に送達することは有益であり得る。この治療法の例は、歯列矯正治療の第1週の間に歯の移動を加速させるための薬剤の送達、および歯の移動期間に続く歯の逆戻りを防止するための薬剤の送達であり得る。
【0102】
一部の場合において、別の薬剤の活性を変更するために1つの薬剤を追加することが必要である。例えば、緩衝剤は治療用薬剤の腐食性を低減するために薬物のpHを変化させることが必要であるとされ得る。別の場合において、いったん薬剤が器具から放出されると、治療用薬剤を安定または活性させるために薬剤を追加することが必要になり得る。代わりの例示的な場合では、例えば歯の移動を加速し得る2つの薬剤と同じ全身に及ぶ効果を有する1つより多い薬剤の使用であり得る。2つ以上の薬剤が効果を引き起こすために異なるモードの作用を使用することによって相乗的に作用し得るか、2つ以上の薬剤が、薬剤が共同で作用する効果のために、それぞれに分配される用量を減らすが有益な治療効果を維持することによって低減され得る異なる所望されない副作用を有するかのいずれかのために、2つ以上の薬剤が1つの薬剤よりも使用され得る。
【0103】
上記の詳細説明において使用されてきた用語および表現は、本明細書において記述のための用語としてであって限定するための用語としてではなく使用され、そのような用語および表現の使用において、図示および記述された特性の均等物または均等物の一部分を除外する意図はなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義かつ限定されることが理解される。例えば、フィルムまたは器具が薬物または物質の送達のためのメカニズムとして開示されてきたが、液滴が同様に物質を患者に送達するために使用され得る。一般的に、液滴は約1ミクロン〜200ミクロンの範囲内にサイズされ得、液体、固体、霧状で分配されるガス状の懸濁物の粒子として参照されるエアロゾル系を含むガス状の懸濁物で粘膜に提供され得る。薬物または物質を送達するための他の実施形態が同様に使用され得る。本発明の特定の実施形態が説明の目的で本明細書に記述されているが、詳細に関する様々な変更が、特許請求の範囲において定義される本発明を逸脱することなく行われ得ることが当業者には明らかであり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−86076(P2012−86076A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−23628(P2012−23628)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2007−543616(P2007−543616)の分割
【原出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(501214845)アライン テクノロジー, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】