説明

可変ノズルターボ過給機及びその製造方法

フェイルセーフ式可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機であり、ドライブリング支持部の磨耗が進んでもドライブリングが第2の支持部で支えられる。第2の支持部により、ドライブリングは常にノズルマウントに正常に支持され、ドライブリング支持部の過大な磨耗によりドライブリングが偏芯回転したり脱落することが防止される。さらに、従来発生していたような可変ノズル機構の作動不良によるエンジン性能の低下や可変ノズル機構の破損が防止される。他の実施例では、可変ノズル機構組立てはターボ過給機への取付け、取外しが容易なカートリッジとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用排気ターボ過給機に適用され、アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構及び該可変ノズル機構によりタービンの容量を可変とした可変ノズル機構付き排気ターボ過給機過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機付き内燃機関においては、機関からの排ガス流量と過給機の最適作動条件となるガス流量とのマッチングをなすために、渦巻状のスクロール通路からタービンに送られる排ガス流量を機関の運転状態に応じて可変とする可変容量型過給機が、近年多く用いられている。
【0003】
かかる可変容量型過給機においては、空気圧式、電動モータ式等のアクチュエータからの駆動力をリンク部を介してノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を設けている。
【0004】
前記可変ノズル機構にあっては、例えば特許文献1あるいは特許文献2に示されるように、高温の排気ガスが流過するタービンケーシング内のスクロール通路の出口部に設置された前記ノズルベーンを駆動するドライブリング、リンクプレート等の駆動部材が高温のタービンケーシング内あるいは該タービンケーシングに隣接して無潤滑の状態で摺動あるいは転動状態にてタービンケーシングに支持され、作動せしめられる構造となっている。
【0005】
前記のように、特許文献1あるいは特許文献2に示されるような可変容量型過給機の可変ノズル機構にあっては、ノズルベーンを駆動するドライブリング、リンクプレート等の駆動部材が、高温のタービンケーシング内あるいは該タービンケーシングに隣接して無潤滑の状態で、摺動あるいは転動状態にてノズルマウントに支持され、作動せしめられる構造となっている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−223129号公報
【特許文献2】特開平6−137109号公報
【特許文献3】特開昭62−139931号公報
【特許文献4】特開2000−8870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従ってかかる可変容量型過給機の可変ノズル機構においては、ドライブリングあるいはリンクプレートをタービンケーシングに往復摺動可能に支持する摺動部や転動可能に支持するローラの外周が過大摩耗を発生し易い状態にあるため、かかる過大摩耗による回転偏心や脱落の発生、及びこれらに伴う可変ノズル機構のアクチュエータ出力とノズルベーン開度との間の誤差発生等の、可変ノズル機構の作動不良によるエンジン性能の低下や可変ノズル機構の破損を生起し易い。
等の問題点を有している。
【0008】
また、前記可変ノズル機構として、特許文献3、特許文献4等が提供されている。
特許文献3においては、可変ノズル機構のノズルベーンをノズルマウントに翼角を変化せしめるためノズルピンを介して回動可能に支持するとともに該ノズルピンの前記ノズルベーンとは軸方向反対側にアクチュエータに連結されるドライブリングとノズルベーンとを連結するレバープレートを取り付け、該ノズルマウントを前記ノズルベーンが設置されるガス通路に挿入されたスペーサ内を貫通したボルトによりタービンケーシングに固定している。
【0009】
また、前記ノズルマウントの前記ノズルベーンとは軸方向反対側に前記ドライブリング及びレバープレートを配置するとともに、軸方向において該ノズルマウントとレバープレートとの間に前記ドライブリングを配置している。
【0010】
そして、前記ノズルマウントと軸受ハウジングのフランジとの間にドエルピンを周方向複数箇所配置し、該ドエルピンに回転自在に支持されたローラによって前記ドライブリングの内周を回転可能に支持している。
【0011】
しかしながら、特許文献3にあっては、ノズルピンを介してノズルベーン及びレバープレートを支持するノズルマウントを、ガス通路に挿入されたスペーサを介してボルトによりタービンケーシングに固定しているため、可変ノズル機構を排気ターボ過給機に取付けあるいは取り外すには、ボルトをスペーサを介して締付けあるいは弛めることによりノズルマウントをタービンケーシングに着脱するとともに、前記ドエルピンを軸受ハウジングのフランジに着脱してドライブリングを取付けあるいは取り外すことを要することとなり、可変ノズル機構の排気ターボ過給機への取付け、取り外しに多大な作業工数を要する。
【0012】
また、可変ノズル機構の取外し時に、スペーサあるいはドエルピンが脱落する虞があり、安全性に課題がある。
【0013】
また特許文献3にあっては、可変ノズル機構のうち、ノズルピンを介してノズルベーン及びレバープレートを支持するノズルマウントをタービンケーシングにボルトにより着脱する一方、ドライブリングをドエルピンによりローラを介して軸受ハウジングのフランジに着脱するように構成されているため、可変ノズル機構がタービンケーシング側と軸受ハウジング側とに分離された構造となって一体化されておらず、可変ノズル機構の組立体としての供給、交換は不可能であり、排気ターボ過給機における構成部品の交換性、整備性の悪化を来たす。
【0014】
次に特許文献4においては、ノズルマウントのガス入口通路側にノズルベーンを回動可能に支持するとともにノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着する一方、該ノズルマウントの前記ガス入口通路側とは軸方向反対側のタービンケーシング外側に、前記ノズルベーンと一体のノズルピンを延長し該ノズルピンの端部にレバープレートを取付けて、該レバープレートにアクチュエータの駆動力が伝達されるドライブリングを連結ピンを介し連結してドライブリング連結部を構成して、一体型の可変ノズル機構としている。
【0015】
そして、前記一体型の可変ノズル機構のうち、タービンケーシング外側に配設された前記ドライブリング連結部を前記タービンケーシングとは別体のガス出口ケーシングで覆い、該ガス出口ケーシングをタービンケーシングにボルトにて締着している。
【0016】
さらにかかる特許文献4においては、前記可変ノズル機構におけるノズルマウントの外周側をタービンケーシングにインロー嵌合するとともに該インロー部の側面にてノズルマウントの前記ガス入口通路側へのスラスト受け部を構成するとともに、前記ノズルマウントの内周側をガス出口通路側に延長して、その内周側後端面を、前記ガス出口ケーシングの内周側前端面に当接せしめ、該当接面をガス出口通路側のスラスト受け部としている。
【0017】
しかしながら、特許文献4にあっては、前記タービンケーシングとは別体のガス出口ケーシングにより前記可変ノズル機構のドライブリング連結部を覆うとともに、該ガス出口ケーシングの内周側前端面を前記ノズルマウントの内周側後端面と当接せしめてガス出口通路側のスラスト受け部としているため、前記ガス出口ケーシングを前記タービンケーシングとは別体に設けることを要して、部品点数が多くなるとともに前記ガス出口ケーシングを組み込むことにより組立工数も増大する。
【0018】
また特許文献4にあっては、前記のように、ガス出口ケーシングにより前記可変ノズル機構のドライブリング連結部を覆うとともに、前記ノズルマウントの内周側をガス出口通路側に延長して、これの内周側後端面をガス出口ケーシングの内周側前端面に当接せしめ、該当接面をガス出口通路側のスラスト受け部としているため、ノズルマウントの全長を含むガス出口側の長さが長くなって、排気ターボ過給機の全長が増大する。
【0019】
さらに特許文献4にあっては、ノズルマウントの外周側とタービンケーシングとのインロー嵌合部の側面を前記ガス入口通路側へのスラスト受け部とし、ノズルマウントの内周側をガス出口通路側に延長して、内周側後端面とガス出口ケーシングの内周側前端面との当接面をガス出口通路側のスラスト受け部としているため、スラスト間隔がタービンケーシング、ガス出口ケーシング及びノズルマウントの軸方向の寸法によって一義的に決まってしまい、スラスト受け部の間隙調整に手間が掛かる。
等の解決すべき問題点を有している。
【0020】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、ドライブリングあるいはリンクプレートをノズルマウントに支持する支持部の摩耗が過大になった際において、該支持部の過大摩耗による前記ドライブリングあるいはリンクプレートの回転偏心や脱落の発生、及びこれらに伴う可変ノズル機構の作動不良によるエンジン性能の低下や該可変ノズル機構の破損の発生を未然に防止し得る排気ターボ過給機を提供することを第1の目的とする。
【0021】
また本発明の第2の目的は、可変ノズル機構の排気ターボ過給機への取付け、取り外しを容易化して作業工数を低減しかつ部品の脱落等を回避して安全性を向上するとともに、可変ノズル機構の組立体としての供給、交換を自在とすることにより排気ターボ過給機における構成部品の交換性、整備性を向上し得る可変容量型排気ターボ過給機を提供することにある。
【0022】
また本発明の第3の目的は、タービンケーシングを単一化しかつ単一のタービンケーシング組み込み形態で以って、ガス入口通路側及びガス出口通路側の2つのスラスト受け部の間隙調整を容易化することにより、部品点数及び組立工数が低減され全長が短縮された排気ターボ過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そして、本発明はかかる目的を達成するもので、その第1発明は、アクチュエータの駆動力をドライブリング、リンクプレート、レバープレート等により構成されるリング組立品を介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構によりタービンの容量を可変とした排気ターボ過給機において、前記ドライブリングを前記ノズルマウントに回動可能に支持する支持部に、該支持部が一定量摩耗したとき前記ドライブリングを前記ノズルマウントに支持する第2の支持部を追設してなることを特徴とする。
【0024】
かかる第1の手段によれば、無潤滑、高温下で作動する可変ノズル機構の構成部材のうち、ノズルマウントに回動可能に支持されて、該可変ノズル機構のアクチュエータにより往復回動せしめられるドライブリングの支持部の構成部材は摩耗を生じ易い状態にあるが、該支持部の構成部材の摩耗が一定量に達する、つまり許容摩耗量に達すると、前記支持部と同一の機能を有する第2の支持部の構成部材が前記ドライブリングあるいは該ドライブリングの装着部材に当接して、これらの部材を前記ノズルマウントに支持するフェ―ルセーフ機能を果たす。
【0025】
これにより、ドライブリングを常時正常な状態でノズルマウントに支持することが可能となり、前記特許文献1あるいは特許文献2に示される従来技術のような、前記ドライブリング支持部の摩耗による回転偏心や脱落の発生、及びこれらに伴う可変ノズル機構のアクチュエータ出力とノズルベーン開度との間の誤差発生等の可変ノズル機構の作動不良によるエンジン性能の低下や可変ノズル機構の破損の発生を未然に防止することができる。
【0026】
また第2の手段は、アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる排気ターボ過給機の可変ノズル機構において、前記可変ノズル機構は、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着するとともに、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてなり、前記排気ターボ過給機に着脱自在に構成されたカートリッジ状の可変ノズル組立体を備えてなることを特徴とする。
【0027】
また第3の手段は、前記のような可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機であり、アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構は、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着するとともに、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてなるカートリッジ状の可変ノズル組立体を備え、前記可変ノズル組立体は、前記ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めがなされるとともに、前記軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制して前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付けられてなることを特徴とする。
【0028】
前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記ドライブリングは前記ノズルマウントの前記ノズルベーンとは軸方向反対側にこれの内周を該ノズルマウントに摺接させて配設されるとともに、前記スラスト受け部材は前記ノズルマウントの側面の周方向複数箇所に固着されてなり、さらに前記スラスト受け部材の内側端面と前記ノズルマウントの一面とで前記ドライブリングの軸方向位置を規制するとともに、該スラスト受け部材の外側端面を軸受ハウジングとの間のスラスト受け面に構成する。
【0029】
かかる第2、第3の手段によれば、ノズルベーンの翼角を変化せしめる排気ターボ過給機の可変ノズル機構を、周方向においてノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートをノズルマウントに固着し、該ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には該ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制しドライブリングを取り付けることによりカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成したので、排気ターボ過給機側の既設部材を一切取り外しあるいは組み替えあるいは調整することなく、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された前記可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、排気ターボ過給機に取付け、取り外すことができる。
【0030】
これにより、可変ノズル機構の排気ターボ過給機への取付け、取り外しの作業工数を特許文献3のような従来技術に比べて大幅に低減できるとともに、該可変ノズル機構の着脱時における部品の脱落が皆無となり安全性が向上する。
【0031】
また、前記のように、可変ノズル機構をカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成したので、排気ターボ過給機の使用時に可変ノズル機構の交換を要する場合等においても、該可変ノズル機構一体組立体として自在に供給し、交換することが可能となり、排気ターボ過給機における構成部品の交換性、整備性が向上する。
【0032】
また、かかる第2、第3の手段によれば、前記のようにカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成した可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、排気ターボ過給機に装着するように構成されているので、特許文献4のように、可変ノズル機構のドライブリング連結部を覆うとともに、ノズルマウントの内周側後端面と当接可能としてスラスト受け部を構成するため、ガス出口ケーシングをタービンケーシングとは別体に設ける必要がなく単一のタービンケーシングとすることができ、前記特許文献3、4に比べて部品点数が低減できるとともに、組立工数も低減できる。
【0033】
また、かかる第2、第3の手段によれば、前記のようにカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、排気ターボ過給機の軸受ハウジングとタービンケーシングとの間に装着しているので、特許文献4のようにガス出口ケーシングにより可変ノズル機構のドライブリング連結部を覆うとともに、ノズルマウントの内周側をガス出口通路側に延長して、これの内周側後端面をガス出口ケーシングの内周側前端面に当接せしめてガス出口通路側のスラスト受け部とした構造の排気ターボ過給機に比べて、ノズルマウントの全長を含むガス出口側の長さを短縮することが可能となり、排気ターボ過給機の全長を短縮できて排気ターボ過給機の小型化を実現できる。
【0034】
さらにかかる第2、第3の手段によれば、前記のようにカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジングとノズルマウント前部との間に第1のスラスト受け部を形成しノズルマウント後部とタービンケーシングの側部との間に第2のスラスト受け部を形成して排気ターボ過給機に装着しているので、前記カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構とタービンケーシング及び軸受ハウジングとの間隙を、該タービンケーシング及び軸受ハウジングの仕上がり形状寸法に従い単独で自在に調節することができて、特許文献2のように、ガス入口通路側及びガス出口通路側の2つのスラスト受け部がタービンケーシング、ガス出口ケーシング及びノズルマウントの軸方向寸法によって一義的に決まってしまいスラスト受け部の間隙調整に手間が掛かるのが回避され、スラスト受け部の間隙調整を簡単かつ高精度で行うことができる。
【0035】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記スラスト受け部材を、前記ノズルマウントの周方向複数箇所に回転自在に片持ち支持されたローラ部材で構成し、該ローラ部材により前記ドライブリングの内周を回転可能に支持するとともに、前記ドライブリングの軸方向位置を規制するように構成する。
【0036】
このように構成すれば、ノズルマウントの周方向複数箇所に回転自在に片持ち支持されたローラ部材によってドライブリング内周の複数箇所を回転可能に支持するので、ドライブリングの回転抵抗が小さくなって、可変ノズル機構の駆動力を低減でき、可変ノズル機構駆動用アクチュエータを小型化できる。
【0037】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ノズルマウントの貫通孔に固定する。
このように構成すれば、ノズルマウントに穿孔されるローラピン孔が貫通孔であるため、該ノズルマウント加工時におけるローラピン孔の深さの管理が不要となり、またローラピンの圧入時にノズルベーン側に治具等を用いることで圧入深さの管理が容易となる。さらにローラピンの圧入深さを増加可能となるため、ローラピンの倒れにタイする剛性が大きくなる。
【0038】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記ローラ部材に対向するノズルマウントの側面にワッシャーを設け、前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ワッシャー内を挿通する。
このように構成すれば、ローラとノズルマウントとの間に組み込んだワッシャーの厚さにより、ローラとの間の摺動隙間の調整が可能となるので、該ローラ等の軸方向制度に対する要求は緩くなり加工コストを低減できるとともに、ローラ側面との摺動面に磨耗が生じた際には、ワッシャーのみ交換すればよいので、メインテナンスコストを低減できる。
【0039】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ワッシャー付き一体型ピンに構成する。
このように構成すれば、ローラピンをワッシャー付きローラピンに構成したので、ローラピンの剛性が大きく高強度となり、ローラピンの倒れが回避されてローラの円滑な作動を実現できる。
【0040】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記スラスト受け部材を、前記ノズルマウント内に圧入された固定部と内側端面が前記ドライブリングの側面に対向し外側端面が軸受ハウジングとの間のスラスト受け面に形成された頭部とよりなるネールピンで構成する。
【0041】
このように構成すれば、ドライブリングの内周面をノズルマウントの外周面に摺接させて支持するドライブリングの支持構造であっても、ドライブリングの側面に当接してスラスト受け面となるネールピンの摺接面積が最小限となりドライブリングの摺動抵抗を小さく保持してドライブリングを作動せしめることができる。
【0042】
また、ネールピンのノズルマウント内への圧入長さを変えることにより、スラスト受け面の間隙を容易にでき、またノズルマウントの仕上がり寸法精度に左右されることなく、スラスト受け面の間隙を精度良く調整することができる。
【0043】
逆にネールピンのピン側スラスト面をノズルマウントの端面に突き当たるまで圧入することで一義的にスラスト受け面の間隔を精度良く調整することも可能である。いずれにせよ先行技術はネールピンの圧入深さとノズルマウントの仕上がり寸法精度を両立せざるを得ないのに対して 本構造はどちらか一方を調整することでスラスト受け面の間隔の精度を確保可能となる。
【0044】
また、前記第2、第3の手段において、好ましくは、前記可変ノズル組立体の軸方向位置を、該可変ノズル組立体の側面を前記軸受ハウジングに形成されたボス部に当接可能に構成して規制するとともに、該可変ノズル組立体のノズルプレートを前記タービンケーシング内に形成された嵌合凹部に嵌合、支持する。
【0045】
このように構成すれば、前記ボス部の軸受ハウジングからの突出量を変化することにより、可変ノズル組立体からなる可変ノズル機構の軸方向位置を規制するスラスト受け部の間隙調整を精度よくかつ容易に行うことができる。
【0046】
また第4の手段は、前記第2、第3の手段に係る可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の製造方法であり、アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の製造方法において、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着し、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてカートリッジ状の可変ノズル組立体を製作し、前記可変ノズル組立体を、前記ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めを行って、前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付けることを特徴とする。
【0047】
前記第4の手段において、好ましくは、前記可変ノズル組立体を、軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制して前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付ける。
かかる第4の手段によれば、可変ノズル機構をカートリッジ状の可変ノズル組立体に製作して排気ターボ過給機に装着するので、該可変ノズル機構の取付け、取り外しが簡単にできる。
【0048】
また、排気ターボ過給機側の既設部材を一切取り外しあるいは組み替えあるいは調整することなく、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、容易に排気ターボ過給機に取付け、取り外すことができる。
【0049】
以上により、可変ノズル機構の排気ターボ過給機への取付け、取り外しの作業工数を低減できる。
また、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構と、タービンケーシング及び軸受ハウジングとの間の2つのスラスト受け部の間隙を、該タービンケーシング及び軸受ハウジングの仕上がり寸法に応じてスラスト受け部の間隙調整を容易かつ高精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、無潤滑、高温下で往復回動せしめられるドライブリング支持部の摩耗が許容摩耗量に達すると、前記支持部と同一の機能を有する第2の支持部によりドライブリングをノズルマウントに支持するので、前記支持部の摩耗が増大しても第2の支持部によってドライブリングをノズルマウントに支持することにより、該第2の支持部が前記支持部と同一の機能、つまりフェ―ルセーフ機能を果たすこととなる。
【0051】
これにより、ドライブリングを常時正常な状態でノズルマウントに支持することが可能となり、従来技術のような、前記ドライブリング支持部の摩耗による回転偏心や脱落の発生、及びこれらに伴う可変ノズル機構のアクチュエータ出力とノズルベーン開度との間の誤差発生等の可変ノズル機構の作動不良によるエンジン性能の低下や可変ノズル機構の破損の発生を未然に防止することができる。
【0052】
また、本発明によれば、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された前記可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、排気ターボ過給機側の既設部材を一切取り外しあるいは組み替えあるいは調整することなく、排気ターボ過給機に取付け、取り外すことができる。
【0053】
これにより、可変ノズル機構の排気ターボ過給機への取付け、取り外しの作業工数を特許文献1のような従来技術に比べて大幅に低減できるとともに、該可変ノズル機構の着脱時における部品の脱落が皆無となり安全性が向上する。
【0054】
また、可変ノズル機構をカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成したので、排気ターボ過給機の使用時に可変ノズル機構の交換を要する場合等においても、該可変ノズル機構一体組立体として自在に供給し、交換することが可能となり、排気ターボ過給機における構成部品の交換性、整備性が向上する。
【0055】
また、本発明によれば、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成した可変ノズル機構を、ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに該軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制することにより、排気ターボ過給機に装着するように構成されているので、可変ノズル機構のドライブリング連結部を覆うとともにノズルマウントの内周側後端面と当接可能としてスラスト受け部を構成するためガス出口ケーシングをタービンケーシングとは別体に設ける必要がなく、単一のタービンケーシングとすることができ、部品点数が低減できるとともに、組立工数も低減できる。
【0056】
さらに、ノズルマウントの全長を含むガス出口側の長さを短縮することが可能となり、排気ターボ過給機の全長を短縮できて排気ターボ過給機の小型化を実現できる。
さらに本発明によれば、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構とタービンケーシング及び軸受ハウジングとの間隙を、該タービンケーシング及び軸受ハウジングの仕上がり形状寸法に従い単独で自在に調節することができて、スラスト受け部の間隙調整を簡単かつ高精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明にすぎない。
【0058】
本発明が適用される可変型排気ターボ過給機の構造を示す図9〜図10において、1はタービンケーシング、38は該タービンケーシング1内の外周部に渦巻状に形成されたスクロール通路、8はタービンホイール4で膨張仕事をした排ガスを機外に送出するための排気ガス出口である。2はコンプレッサハウジング、3は該コンプレッサハウジング2と前記タービンケーシング1とを連結する軸受ハウジングである。
【0059】
5はコンプレッサホイール、6は該タービンホイール4とコンプレッサホイール5とを連結するタービンシャフト、7は前記軸受ハウジング3に取り付けられて前記タービンシャフト6を支持する軸受である。01は該タービンシャフト6の回転軸心である。
【0060】
100は可変ノズル機構、40は該可変ノズル機構100のノズルベーンで、前記スクロール通路38の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数個配置されるとともに、これに一体形成されたノズルピン42が前記タービンケーシング1に固着されたノズルマウント41に回動可能に支持され、該ノズルピン42の回転により翼角が変化せしめられるようになっている。47は前記ノズルマウント41に円周方向に沿って複数個固定されたノズルサポート49を介して該ノズルマウント41に連結されるノズルプレートで、前記タービンケーシング1に形成された嵌合溝48内に摺動可能に嵌合されている。
【0061】
43は環状に形成され前記ノズルマウント41の外周に回動可能に支持されたドライブリング、44は該ドライブリング43と複数個の前記ノズルベーン40とを連結するレバープレートである。
【0062】
以上に示す可変ノズル機構100の詳細については後述する。
【0063】
45はクランクコントロール、46は駆動レバー組立品で、アクチュエータ(図示省略)の駆動力が該駆動レバー組立品46及びクランクコントロール45を介してドライブリング43に伝達されて、該ドライブリング43を回動させることにより前記ノズルベーン40を回動させ、その翼角を変化させるようになっている。
【0064】
本発明に係る可変ノズル機構100の第1実施例を示す図1において、41はノズルマウント、43はドライブリング、44は該ドライブリング43と前記各ノズルベーン40とを連結するレバープレート、44aは該ドライブリング43と各レバープレート44とを連結するピンである。
【0065】
51は前記ノズルマウントに円周方向に沿って複数個固定されたローラピン、50は前記ローラピン51の夫々に回転自在に嵌挿されたローラであり、前記ドライブリング43は該複数個のローラ50を介して前記ノズルマウント41の 外周に回動可能に支持されている。
【0066】
かかる可変ノズル機構100の第1実施例においては、前記ドライブリング43の内周面43aに転接されるローラ50を備えた支持部に加えて、前記ノズルマウント41の前記ローラ50が設けられていない部分の外周面に、前記ドライブリング43の内周面43aに嵌合されるとともに前記ローラ50の前記ドライブリング内周面43aへの外接円径D1よりも外径D2が小径のインロー部52(D1>D2)を備えた第2の支持部を設けている。
【0067】
そして、かかる実施例においては、無潤滑、高温下で作動する可変ノズル機構の構成部材であるドライブリング43のノズルマウント41への支持部を構成するローラ50の外周面あるいは内周面が過大摩耗して、前記外接円径D1が前記インロー部52の外径D2よりも小さくなると、前記第2の支持部を構成する前記インロー部52が該ドライブリング43の内周面43aに当接して、これを前記ノズルマウント41に支持する。
【0068】
従ってかかる実施例によれば、ドライブリング43はある範囲だけ回転されローラ50との接触部はかぎられているので前記ドライブリング43の支持部を構成するローラ50の摩耗が増大しても第2の支持部を構成するインロー部52aによってドライブリング43をノズルマウント41に支持することにより、該第2の支持部を構成するインロー部52aが前記支持部と同一の機能を果たすこととなる。
【0069】
これにより、前記ドライブリング43を常時正常な状態でノズルマウント41に支持することが可能となり、前記ドライブリング支持部の摩耗による回転偏心や脱落の発生等の、不具合の発生を回避することができる。
【0070】
また、ノズルマウント41に前記インロー部52を追加加工するという、きわめて簡単な方法かつ格別な部品を追設することのない低コストの手段で、前記支持部と同一の機能を果たし得る第2の支持部としての前記インロー部52を形成できる。
【0071】
次に、本発明に係る可変ノズル機構100の第2実施例を示す図2において、41は環状に形成されたノズルマウント、40はタービンの円周方向等間隔に複数個配置された公知のノズルベーンで、前記ノズルマウント41内に回動可能に嵌合されたノズルピン42に固定されて翼角を変化可能に構成されている。47は環状に形成されたノズルプレートで、前記ノズルマウント41の後部側(ガス出口側)に円周方向に沿って複数個固定されたノズルサポート49を介して該ノズルマウント41に連結されている。
【0072】
43は環状に形成され前記ノズルマウント41の外周側に回動可能に支持されたドライブリングである。51はローラピンで、前記ノズルマウント41の前部側(軸受ハウジング側)に円周方向に沿って複数個穿孔されたピン孔41c内に圧入、固定されている。50はローラで、ローラピン51に回転自在に片持ち支持されている。該ローラ50は、前記ドライブリング43の内周の複数箇所を回転可能に支持するとともに、図2及び図3(B)に示すように、該ローラ50の両端外周に形成されたつば部50aの間に前記ドライブリング43の両側面を嵌合させることにより、軸方向位置を規制するようになっている。
【0073】
このように、前記ノズルマウント41の円周方向複数箇所に回転自在に片持ち支持されたローラ50によって前記ドライブリング43内周の複数箇所を回転可能に支持するので、該ドライブリング43の回転抵抗が小さくなって、可変ノズル機構100の駆動力を低減でき、該可変ノズル機構100駆動用のアクチュエータ(図示省略)を小型化できる。
【0074】
44は前記ドライブリング43と複数個の前記ノズルベーン40とを連結するレバープレートで、該ドライブリング43の前部側(軸受ハウジング3側)に配置されている。該レバープレート44は、図1、図2に示すように、内周側を該ノズルベーン40が固定されているノズルピン42の軸端に固着されるとともに、外周側の溝に前記ドライブリング43に固定された連結ピン44aが嵌合されている。従って、前記ドライブリング43の回転により、該レバープレート44が揺動し前記ノズルピン42を介してノズルベーン40が回動し、該ノズルベーン40の翼角が変化せしめられることとなる。
【0075】
前記可変ノズル機構100は、図2のように、カートリッジ状に一体化された可変ノズル組立体に構成したので、排気ターボ過給機の使用時に該可変ノズル機構の交換を要する場合等においても、該可変ノズル機構100の一体組立体として自在に供給し、交換することが可能となる。
【0076】
次に図3は、図2に示される第1実施例の可変ノズル機構100を備えた排気ターボ過給機の第1実施例を示しており、図において、前記ノズルベーン40は、タービンケーシング1のスクロール通路38の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数個配置されるとともに、これに一体形成されたノズルピン42が前記ノズルマウント41に回動可能に支持され、該ノズルピン42の回転により翼角が変化せしめられるようになっている。
【0077】
前記ノズルマウント41は、外周を前記タービンケーシング1の嵌合孔にインロー嵌合24をするとともに、内周を前記軸受ハウジング3の嵌合用外周面にインロー嵌合22をして半径方向の位置決めをなしている。また、前記ノズルマウント41の外周後端面は前記タービンケーシング1のスラスト面23に当接されて、前記可変ノズル機構100のガス出口側への移動を規制するスラスト受け部を構成している。
【0078】
また、前記ノズルマウント41に円周方向に沿って複数個固定されたノズルサポート49を介して該ノズルマウント41に連結されている前記ノズルプレート47は、前記タービンケーシング1に形成された嵌合溝48内に摺動可能に嵌合されている。
【0079】
20は前記軸受ハウジング3に固定されたボス部で、前記ローラ50に対向して該ローラ50と同数設けられている。図3(B)に示されるように、該ボス部20の端面は前記ローラピン51の端面に当接して前記可変ノズル機構100の軸受ハウジング3側への移動を規制するスラスト受け部を構成するとともに、前記ローラ50の側面と僅かの隙間を形成して該ローラ50の抜け止めの機能をなしている。
【0080】
9は前記軸受ハウジング3とノズルマウント41との間に挟持されたオイルデフレクター、4はタービンホイール、6はタービンシャフト、7は軸受、01は該タービンシャフト6の回転軸心である。
【0081】
かかる実施例によれば、前記可変ノズル機構100を、ノズルマウント41の後側(ガス出口側)に、タービンの円周方向においてノズルベーン40の間に複数配設されたノズルサポート49を介して環状のノズルプレート47を固着し、該ノズルマウント41のノズルベーン40と軸方向反対側(軸受ハウジング側)には該ノズルマウント41に取り付けられスラスト受け部材の機能を有するローラ50を介して軸方向位置を規制してドライブリング43を取り付けることによりカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成したので、ノズルマウント41の外周とタービンケーシング1の嵌合孔との間のインロー嵌合24及びノズルマウント41の内周と軸受ハウジング3の嵌合用外周面との間のインロー嵌合22の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めをなすとともに、前記ノズルマウント41の外周後端面をタービンケーシング1のスラスト面に当接させて可変ノズル機構100のガス出口側への移動を規制するスラスト受け部23を構成し、前記ローラピン51の端面を前記ボス部20の端面に当接して可変ノズル機構100の軸受ハウジング3側への移動を規制するスラスト受け部21を構成することにより、排気ターボ過給機の既設部材を一切取り外しあるいは組み替えあるいは調整することなく、カートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された前記可変ノズル機構100を排気ターボ過給機に取付け、取り外すことが可能となる。
【0082】
また、前記ボス部20の軸受ハウジング3からの突出量を変化することにより、可変ノズル組立体からなる可変ノズル機構100の軸方向位置を規制するスラスト受け部の間隙調整を精度よくかつ容易に行うことが可能となる。
【0083】
さらに、前記のようにカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構100を、ノズルマウント41の外周及び内周とタービンケーシング1及び軸受ハウジング3との間の2箇所でのインロー嵌合24、22にて半径方向の位置決めをなすとともに、該軸受ハウジング3とノズルマウント41前部との間に第1のスラスト受け部21を形成しノズルマウント41後部とタービンケーシング1の側部との間に第2のスラスト受け部23を形成して排気ターボ過給機に装着しているので、前記のようにカートリッジ状の可変ノズル組立体に構成された可変ノズル機構100とタービンケーシング1及び軸受ハウジング3との間隙を、該タービンケーシング1及び軸受ハウジング3の仕上がり寸法に従い容易に調節することができて、前記スラスト受け部の間隙調整を簡単かつ高精度で行うことができる。
【0084】
図4に示される可変ノズル機構100を備えた排気ターボ過給機の第2実施例においては、前記可変ノズル機構100におけるノズルマウント41の前部側(軸受ハウジング側)に円周方向に沿って複数個穿孔されるピン孔41cを該ノズルマウント41の軸方向に貫通した貫通孔に形成し、該貫通孔に前記ローラピン51を圧入している。
【0085】
かかる実施例においては、ノズルマウント41に穿孔されるピン孔41cが貫通孔であるため、ノズルマウント41加工時におけるピン孔41cの深さの管理が不要となり、また前記ピン孔41cへのローラピン51の圧入時にノズルベーン40側に治具等を用いることで圧入深さの管理が容易となる。
【0086】
また、図3の実施例よりもローラピン51の圧入深さが増加するため、ローラピン51の圧入精度の確保が容易となり、高品質化が可能となる。さらに、ローラピン51の倒れに対する強度が大きくなる。
【0087】
その他の構成は図3の実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0088】
図5(A)、(B)に示される可変ノズル機構100を備えた排気ターボ過給機の第3実施例においては、前記可変ノズル機構100におけるローラピン51挿入部のノズルマウント41に平滑な座面41aを形成し、該座面41aにワッシャー52を前記ローラ50の側面に対向して設け、該ワッシャー52の内周にローラピン51を挿入し、該ローラピン51前記ノズルマウント41のピン孔41c内に圧入、固定している。
【0089】
かかる実施例においては、ローラ50とノズルマウント41との間に組み込んだワッシャー52の厚さの精度のみを確保すればローラ50との間の円滑な摺動が可能となり、該ローラ50部近傍の製品及び加工コストが低減される。
【0090】
また、ローラ50側面との摺動面に磨耗が生じた際には、ワッシャー52のみ交換すればよいので、メインテナンスコストが低減できる。
【0091】
その他の構成は図3の実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0092】
図6(A)、(B)に示される可変ノズル機構100を備えた排気ターボ過給機の第4実施例においては、前記可変ノズル機構100におけるローラピン51挿入部のノズルマウント41に平滑な座面41aを形成するとともに、該ローラピン51をピン部bの外周にワッシャー51aが固着された座付きローラピンに構成している。
【0093】
かかる実施例においては、ローラピン51をピン部51bの外周にワッシャー51aが固着された座付きローラピンに構成したので、ローラピン51の剛性が大きく高強度となるとともに、ワッシャー51aとピン部51bとの直角度を保持すれば、ローラピン51の倒れが回避されてローラ50の円滑な作動を実現できる。
【0094】
その他の構成は図3の実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0095】
本発明に係る可変ノズル機構の第3実施例を示す図7及び図8において、前記ドライブリング43は図2ないし図6に示されるように、ローラピン51に支持されたローラ50を設けることなく、該ドライブリング43の内周面43aを前記ノズルマウント41の外周面41dに摺接せしめている。
【0096】
60は円周方向に沿って複数設けられたネールピンで、前記ノズルマウント41内に圧入される固定部と、内側端面60cが前記ドライブリング43の側面に対向し外側端面60bが前記レバープレート44との間のスラスト受け面に形成された円盤状の頭部60aとにより形成される。
【0097】
かかるネールピン60を設けたことにより、前記ドライブリング43は該ネールピン60の内側端面60cと前記ノズルマウント41の前側面41eとの間に、軸方向位置を規制され、かつ円周方向には摺動可能に挿入されることとなる。
【0098】
かかる実施例によれば、ドライブリング43の内周面43aをノズルマウント41の外周面外周面41dに摺接させて支持するドライブリング43の支持構造であっても、該ドライブリング43の側面に当接してスラスト受け面となるネールピン60の内側端面60cの摺接面積が最小限となり、該ドライブリング43の摺動抵抗を小さく保持して該ドライブリング43を作動せしめることができる。
【0099】
また、前記ネールピン60のノズルマウント41内への圧入長さを変えることにより、スラスト受け面の間隙つまり前記ドライブリング43の側面とネールピン60の内側端面60cとの間隙を容易に調整できるとともに、ノズルマウント41の仕上がり寸法精度に左右されることなく、前記スラスト受け面の間隙を精度良く調整することが可能となる。
【0100】
一方、ネールピン60のピン側端面をノズルマウント41への当たり面とすることで 逆にネールピンの圧入長さを調整することなくノズルマウントの精度のみで、前記スラスト受け面の間隙を一義的に精度良く調整することが可能となる。先行技術ではピン圧入長さとノズルマウントの精度の両者を確保せざるを得ないのに対して この実施例では、どちらか一方の精度のみで同様の機能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】(A),(B),(C)は、本発明に係る可変ノズル機構の第1実施例を示す要部縦断面図である。
【図2】本発明に係る可変ノズル機構の第2実施例を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の第1実施例を示し、(A)は要部縦断面図,(B)は(A)におけるZ部拡大断面図である。
【図4】前記排気ターボ過給機の第2実施例を示す要部縦断面図である。
【図5】前記排気ターボ過給機の第3実施例を示し、(A)は要部縦断面図,(B)は(A)におけるY部拡大断面図である。
【図6】前記排気ターボ過給機の第4実施例を示し、(A)は要部縦断面図,(B)は(A)におけるX部拡大断面図である。
【図7】本発明に係る可変ノズル機構の第3実施例を示す縦断面図(図8におけるB―B線断面図)である。
【図8】図7におけるA矢視図である。
【図9】本発明が適用される可変容量型排気ターボ過給機の縦断面図である。
【図10】前記可変容量型排気ターボ過給機の一部断面を示す正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの駆動力をドライブリング、レバープレート等により構成されるリング組立品を介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構によりタービンの容量を可変とした排気ターボ過給機において、前記ドライブリングを前記ノズルマウントに回動可能に支持する支持部に、該支持部が一定量摩耗したとき前記ドライブリングを前記ノズルマウントに支持する第2の支持部を追設してなることを特徴とする排気ターボ過給機。
【請求項2】
アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる排気ターボ過給機の可変ノズル機構において、前記可変ノズル機構は、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着するとともに、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてなり、前記排気ターボ過給機に着脱自在に構成されたカートリッジ状の可変ノズル組立体を備えてなることを特徴とする排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項3】
前記スラスト受け部材を、前記ノズルマウントの周方向複数箇所に回転自在に片持ち支持されたローラ部材で構成し、該ローラ部材により前記ドライブリングの内周を回転可能に支持するとともに、前記ドライブリングの軸方向位置を規制するように構成されたことを特徴とする請求項2記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項4】
前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ノズルマウントの貫通孔に固定したことを特徴とする請求項3記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項5】
前記ローラ部材に対向するノズルマウントの側面にワッシャーを設け、前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ワッシャー内を挿通したことを特徴とする請求項3記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項6】
前記ローラ部材を前記ノズルマウントに支持するローラピンを該ワッシャー付き一体型ピンに構成したことを特徴とする請求項3記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項7】
前記ドライブリングは前記ノズルマウントの前記ノズルベーンとは軸方向反対側にこれの内周を該ノズルマウントに摺接させて配設されるとともに、前記スラスト受け部材は前記ノズルマウントの側面の周方向複数箇所に固着されてなり、さらに前記スラスト受け部材の内側端面と前記ノズルマウントの一面とで前記ドライブリングの軸方向位置を規制するとともに、該スラスト受け部材の外側端面を軸受ハウジングとの間のスラスト受け面に構成したことを特徴とする請求項2記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項8】
前記スラスト受け部材を、前記ノズルマウント内に圧入された固定部と内側端面が前記ドライブリングの側面に対向し外側端面が軸受ハウジングとの間のスラスト受け面に形成された円盤状の頭部とよりなるネールピンで構成したことを特徴とする請求項2記載の排気ターボ過給機の可変ノズル機構。
【請求項9】
アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構は、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着するとともに、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてなるカートリッジ状の可変ノズル組立体を備え、前記可変ノズル組立体は、前記ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めがなされるとともに、前記軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制して前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付けられてなることを特徴とする可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機。
【請求項10】
前記可変ノズル組立体の軸方向位置を、該可変ノズル組立体の側面を前記軸受ハウジングに形成されたボス部に当接可能に構成して規制するとともに、該可変ノズル組立体のノズルプレートを前記タービンケーシング内に形成された嵌合凹部に嵌合、支持したことを特徴とする請求項9記載の可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機。
【請求項11】
アクチュエータの駆動力をドライブリングを介してノズルマウントに回動可能に支持されたノズルベーンに伝達し、該ノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の製造方法において、前記ノズルマウントに、周方向において前記ノズルベーンの間に複数配設されたノズルサポートを介して環状のノズルプレートを固着し、前記ノズルマウントのノズルベーンと軸方向反対側には、前記ドライブリングを、前記ノズルマウントに取り付けられたスラスト受け部材を介して軸方向位置を規制して取り付けてカートリッジ状の可変ノズル組立体を製作し、前記可変ノズル組立体を、前記ノズルマウントの内、外周と軸受ハウジング及びタービンケーシングとの間の2箇所でのインロー嵌合にて半径方向の位置決めを行って、前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付けることを特徴とする可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の製造方法。
【請求項12】
前記可変ノズル組立体を、軸受ハウジング及びタービンケーシングの側部にて軸方向位置を規制して前記排気ターボ過給機に着脱自在に取り付けることを特徴とする請求項11記載の可変ノズル機構を備えた排気ターボ過給機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−514191(P2006−514191A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544987(P2004−544987)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013332
【国際公開番号】WO2004/035991
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】