説明

可変ノズル機構および可変容量型ターボチャージャ

【課題】駆動リングの回転駆動を高精度化できる可変ノズル機構および可変容量型ターボチャージャを提供する。
【解決手段】所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、ノズルベーンの角度を同期して可変させる駆動リングを有する同期機構であって、駆動リングの上記軸方向の一方側をガイドする略リング状の底面部61及び該底面部61の外縁に沿って立設されて駆動リングの外径側をガイドする外壁部62を備える略皿形状の第1ガイド部60と、底面部61の内縁に沿って複数立設されて駆動リングの内径側をガイドする中腹部71及び該中腹部71から底面部61と対向するように屈曲して駆動リングの上記軸方向の他方側をガイドする先端部72を備える略舌片形状の第2ガイド部70と、を有し、上記第1ガイド部60及び上記第2ガイド部70が一体で成形されているサポートリング35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ノズル機構および可変容量型ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができるターボチャージャとして、例えば、特許文献1に記載の可変容量型ターボチャージャが知られている。
このターボチャージャには、タービンスクロール流路に導入される排気ガスをタービンインペラに導くと共に、その流量を調整する可変ノズル機構を備える排気ノズルが設けられている。可変ノズル機構は、所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、環状に複数配設された可変ノズルベーンの角度を同期して可変させる駆動リングを有し、排気ガスの流路面積を調整することでその流量を可変させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、駆動リングは、通常、上記軸周りの回転をガイドするサポートリングに支持されている。このサポートリングは、特許文献1の図1に示されているように、駆動リングの軸方向の一方側及び駆動リングの外径側をガイドする第1のガイド部材と、駆動リングの軸方向の他方側及び駆動リングの内径側をガイドする第2のガイド部材とを組み合わせて構成されている。
【0005】
しかしながら、この2つの部材を組み合わせて成るサポートリングは、ガイド特性に係る寸法精度の高精度化を図ることが難しいという問題がある。例えば、第1のガイド部材と第2のガイド部材とを固定具を用いて組み合わせる際に生じるズレや、それぞれ別の工程を経て製造された第1のガイド部材と第2のガイド部材との間に生じる寸法精度のズレ等が、サポートリング全体の寸法精度の高精度化を阻害する原因となっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、駆動リングの回転駆動を高精度化できる可変ノズル機構および可変容量型ターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、環状に複数配設された可変ノズルベーンの角度を同期して可変させる駆動リングを有する可変ノズル機構であって、上記駆動リングの上記軸方向の一方側をガイドする略リング状の底面部及び該底面部の外縁に沿って立設されて上記駆動リングの外径側をガイドする外壁部を備える略皿形状の第1ガイド部と、上記底面部の内縁に沿って複数立設されて上記駆動リングの内径側をガイドする中腹部及び該中腹部から上記底面部と対向するように屈曲して上記駆動リングの上記軸方向の他方側をガイドする先端部を備える略舌片形状の第2ガイド部と、を有し、上記第1ガイド部及び上記第2ガイド部が一体で成形されているサポートリングを備えるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、略皿形状の第1ガイド部と略舌片形状の第2ガイド部とが協働して駆動リングの軸方向両側及び径方向両側をガイドし、そして、これら第1ガイド部及び第2ガイド部を一体化することで、寸法精度の高精度化が可能となる。また、部品点数が減少することで低コスト化に寄与することができる。
【0008】
また、本発明においては、上記底面部及び上記先端部の少なくともいずれか一方に、上記駆動リングの上記軸方向におけるガイド幅を調節する凸部が形成されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、屈曲して形成した先端部と底面部との間のガイド幅の微調整ができ、寸法精度の高精度化を図ることが可能となる。
【0009】
また、本発明においては、上記駆動リングは、上記可変ノズルベーンのそれぞれに連結されるリンク部材の一端部が係合する溝部を内径側に所定間隔で複数有し、上記先端部は、上記軸方向において上記溝部に対応する間隔で設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、リンク部材の一端部が係合する溝部を利用し、軸方向において該溝部と先端部とを重ね合わせることで、駆動リングのサポートリングへの組み付けが可能となる。
【0010】
また、本発明においては、タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、上記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、上記スクロール流路内から上記タービンインペラ側に供給される上記排気ガスの流量を調整する可変ノズル機構を備える排気ノズルと、を備えた可変容量型ターボチャージャであって、上記可変ノズル機構として、先に記載の可変ノズル機構を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、環状に複数配設された可変ノズルベーンの角度を同期して可変させる駆動リングを有する可変ノズル機構であって、上記駆動リングの上記軸方向の一方側をガイドする略リング状の底面部及び該底面部の外縁に沿って立設されて上記駆動リングの外径側をガイドする外壁部を備える略皿形状の第1ガイド部と、上記底面部の内縁に沿って複数立設されて上記駆動リングの内径側をガイドする中腹部及び該中腹部から上記底面部と対向するように屈曲して上記駆動リングの上記軸方向の他方側をガイドする先端部を備える略舌片形状の第2ガイド部と、を有し、上記第1ガイド部及び上記第2ガイド部が一体で成形されているサポートリングを備えるという構成を採用することによって、略皿形状の第1ガイド部と略舌片形状の第2ガイド部とが協働して駆動リングの軸方向両側及び径方向両側をガイドし、これら第1ガイド部及び第2ガイド部を一体化することで、寸法精度の高精度化が可能となる。また、部品点数が減少することで低コスト化に寄与することができる。
したがって、本発明では、駆動リングの回転駆動を高精度化できる可変ノズル機構および可変容量型ターボチャージャが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるターボチャージャを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における可変ノズルユニットの構成を示す要部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態における同期機構の構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるサポートリングの構成を示す正面図である。
【図5】図4における線視X−X断面図である。
【図6】図4における矢視A図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る可変ノズル機構を備える可変容量型ターボチャージャの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるターボチャージャ1を示す概略構成図である。図2は、本発明の実施形態における可変ノズルユニット27の構成を示す図1の要部拡大図である。図3は、本発明の実施形態における同期機構43の構成を示す正面図である。なお、以下の説明で、図面中の矢印Fを前方向と、矢印Fの逆方向を後方向と称して説明することがある。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るターボチャージャ1は、不図示のエンジンから導かれる排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する可変容量型ターボチャージャである。
ターボチャージャ1は、軸受けハウジング3と、軸受けハウジング3の前側周縁部に締結ボルト3aにより接続されるタービンハウジング5と、軸受けハウジング3の後側周縁部に締結ボルト3bにより接続されるコンプレッサハウジング7とを備えている。
【0015】
軸受けハウジング3内には、前後方向に延びるタービン軸11が複数のベアリングを介して該軸周りに回転自在に支持されている。タービン軸11の前端部にはタービンインペラ13が一体的に連結され、後端部にはコンプレッサインペラ15が一体的に連結されている。なお、タービンインペラ13はタービンハウジング5内に設置され、コンプレッサインペラ15はコンプレッサハウジング7内に設置されている。
【0016】
コンプレッサハウジング7には、後側に開口し不図示のエアクリーナに接続される吸気口21が形成されている。また、軸受けハウジング3とコンプレッサハウジング7との間には、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路23がコンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されている。また、ディフューザ流路23は、コンプレッサインペラ15の設置箇所を介して吸気口21と連通している。
さらに、コンプレッサハウジング7は、コンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されるコンプレッサスクロール流路25を有しており、コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23と連通している。なお、コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と連通している。
【0017】
タービンハウジング5は、タービンインペラ13の径方向外側に設けられるタービンスクロール流路17と、排気ガスの排気口であるタービンハウジング出口19とを有している。また、タービンハウジング5内のタービンインペラ13の径方向外側には、略環状を呈する可変ノズルユニット(排気ノズル)27が設置されている。なお、タービンハウジング5との可変ノズルユニット27との間には隙間Sが形成される。
【0018】
タービンスクロール流路17は、タービンインペラ13を囲んで略環状に形成され、排気ガスを導入するための不図示のガス流入口と連通している。また、タービンスクロール流路17は、可変ノズルユニット27内のノズル流路27Aと連通している。なお、上記ガス流入口は不図示のエンジンにおける排気口に接続されている。
タービンハウジング出口19は、タービンハウジング5の前側に開口しており、タービンインペラ13の設置箇所を介してノズル流路27Aと連通している。また、タービンハウジング出口19は、不図示の排気ガス浄化装置に接続されている。
【0019】
次に、可変ノズルユニット27の構成について説明する。
図2に示すように、可変ノズルユニット27は、タービンハウジング5側に設置されるシュラウドリング31と、シュラウドリング31に対向して軸受けハウジング3側に設置されるノズルリング29と、シュラウドリング31とノズルリング29との間に保持される複数のノズルベーン(可変ノズルベーン)37と、各ノズルベーン37を同期して回転させる同期機構(可変ノズル機構)43とを有している。なお、上述したノズル流路27Aは、シュラウドリング31とノズルリング29との間に形成される。
【0020】
シュラウドリング31は、略リング状に形成された板形状の内周縁部に、タービンハウジング出口19側に延出する略円筒形状を呈する。また、シュラウドリング31には、上記板状部に軸方向で貫通する複数の第1孔部31aが形成されている。
ノズルリング29は、略リング状に形成された板状部材であり、軸方向で貫通する複数の第2孔部29aが形成されている。
【0021】
図1に示すように、シュラウドリング31及びノズルリング29は、複数の連結ピン33を介して所定の間隔を形成するように連結されている。なお、連結ピン33は、シュラウドリング31に貫入し、ノズルリング29を貫通して後側に突出している。
ノズルリング29の後側には、突出した連結ピン33をかしめることでサポートリング(後述)35が一体的に設けられており、サポートリング35のフランジ部62a(外周縁部)は、タービンハウジング5と軸受けハウジング3とにより挟持されて支持されている。すなわち、ノズルリング29は、サポートリング35を介して軸受けハウジング3及びタービンハウジング5に支持されている。
【0022】
ノズルベーン37は、図3に示すように、ノズルリング29とシュラウドリング31の間に周方向で等間隔に複数設けられており、タービンインペラ13の回転軸と平行な軸周りに各々回転自在である。また、各ノズルベーン37は、所定の一辺からその対辺に向かうに従って漸次厚みが減少するように形成されているノズルベーン本体38と、ノズルベーン本体38の上記一辺に直交する一側面から前側に突出する第1ベーン軸41と、上記一側面に対向する側面から後側に突出する第2ベーン軸39とを有している。
図2に示すように、第1ベーン軸41は、シュラウドリング31の第1孔部31aに回転自在に貫入しており、第2ベーン軸39は、ノズルリング29の第2孔部29aに回転自在に貫通しノズルリング29の後側に突出している。
【0023】
ノズルベーン本体38と第1ベーン軸41との接続部には、ノズルリング29に対向する面を有する第1鍔部41aが設けられ、ノズルベーン本体38と第2ベーン軸39との接続部には、シュラウドリング31に対向する面を有する第2鍔部39aが設けられている。なお、第1鍔部41aの外形は第2鍔部39aの外形よりも大きく形成されることが好ましく、第1鍔部41a及び第2鍔部39aは夫々第1孔部31a及び第2孔部29aを覆うように形成されることが好ましい。
【0024】
次に、本実施形態における各ノズルベーン37を同期して回転させる同期機構43の構成について説明する。
図1に示すように、ノズルリング29の後側には、各ノズルベーン37を同期して回転させるための同期機構43が設けられている。
【0025】
同期機構43は、略リング状を呈しノズルリング29の後側に複数の連結ピン33を介して固定されるサポートリング35と、サポートリング35により軸周りに回転自在に支持される駆動リング47と、駆動リング47の回転により各ノズルベーン37の角度を調整する複数の同期用伝達リンク(リンク部材)51と、駆動リング47を回転させる駆動用伝達リンク59と、軸受けハウジング3の前側下部でタービン軸11に平行な軸周りに回転自在に支持される駆動軸55とを備えている。
【0026】
図3に示すように、駆動リング47は、ノズルベーン37のそれぞれに連結される同期用伝達リンク51の一端部が係合する同期用係合凹部(溝部)49を内径側に所定間隔で複数有している。同期用伝達リンク51の一端部は、同期用係合凹部49に係合し、他端部は各ノズルベーン37の第2ベーン軸39に一体的に連結されている。
また、駆動リング47の内径側には、同期用係合凹部49と同一形状の駆動用係合凹部53が形成されている。駆動用伝達リンク59の一端部は駆動用係合凹部53に係合し、他端部は駆動軸55に一体的に連結している。
なお、図1に示すように、駆動軸55の駆動用伝達リンク59の逆側端部には駆動レバー57が一体的に連結され、駆動レバー57には不図示のシリンダ等のアクチュエータが連結されている。
【0027】
続いて、本実施形態におけるサポートリング35の構成について図4〜図7を参照して説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるサポートリング35の構成を示す正面図である。図5は、図4における線視X−X断面図である。図6は、図4における矢視A図である。
図4に示すように、サポートリング35は、底面部61の中央部が開口した略皿形状の第1ガイド部60と、開口縁に沿って複数設けられた略舌片形状の第2ガイド部70と、が一体で成形されたものである。
【0028】
図5に示すように、第1ガイド部60は、駆動リング47の軸方向の一方側(前側)をガイドする略リング状の底面部61と、底面部61の外縁に沿って立設されて駆動リング47の外径側をガイドする外壁部62とを有する。
一方の第2ガイド部70は、底面部61の内縁に沿って立設されて駆動リング47の内径側をガイドする中腹部71と、中腹部71から底面部61と対向するように屈曲して駆動リング47の軸方向の他方側(後側)をガイドする先端部72とを有する。
すなわち、本実施形態のサポートリング35は、互いに対向する底面部61及び先端部72により駆動リング47の軸方向両側をガイドし、さらに、互いに対向する外壁部62及び中腹部71により駆動リング47の径方向両側をガイドする構成となっている。
【0029】
図4に戻り、底面部61には、連結ピン33が挿通する挿通孔61aが3つ、内径側に略等間隔で設けられる。また、底面部61の第2ガイド部70が設けられる位置の両側には、切り起こし用の凹部61bがそれぞれ設けられている。この凹部61bは、所定の曲率を有し、応力集中を緩和する機能を有する。
外壁部62の外周縁部には、タービンハウジング5と軸受けハウジング3との間に挟持されるフランジ部62aが設けられる。また、外壁部62には、水抜き用の孔62bが軸を挟んで対称となる位置に、径方向に貫通して設けられている。
【0030】
中腹部71は、底面部61に対し略直角に切り起こされて外壁部62と対向する構成となっている。また、先端部72は、中腹部71から略直角に外径側に屈曲して底面部61と対向する構成となっている。
この先端部72は、軸方向において、駆動リング47の同期用係合凹部49と略同一の形状を呈する(図3参照)。また、この先端部72を有する第2ガイド部70は、駆動リング47の同期用係合凹部49と同位相、すなわち、軸方向において同期用係合凹部49に対応する間隔で設けられている。本実施形態の駆動リング47は、同期用伝達リンク51の一端部が係合する同期用係合凹部49を利用し、軸方向において同期用係合凹部49と先端部72とを重ね合わせるようにして、サポートリング35へ組み付けられる。
【0031】
また、底面部61及び先端部72のそれぞれには、対向方向に互いに突出する凸部(61c、72c)が形成されている(例えば図6参照)。この凸部61c及び凸部72cは、軸方向におけるガイド幅を調節すべく所定距離で突出し、一体成形により屈曲して形成した先端部72と底面部61との間のガイド幅の微調整することで、軸方向の寸法精度の高精度化を図る構成となっている。
【0032】
続いて、本実施形態におけるターボチャージャ1の動作を説明する。
エンジンの排気口から排出された排気ガスは、タービンハウジング5のガス流入口を通ってタービンスクロール流路17へ導入される。そして、排気ガスは、タービンスクロール流路17からノズル流路27Aに導入される。
ターボチャージャ1は、エンジンの回転数、すなわち、ノズル流路27Aに導入される排気ガスの流量に応じて不図示のアクチュエータを作動させる。アクチュエータは、駆動レバー57を介して駆動軸55を軸周りに回転させ、駆動軸55の端部に設けられた駆動用伝達リンク59を介して駆動リング47を軸周りに回転駆動させる。
【0033】
駆動リング47は、サポートリング35により軸方向両側及び径方向両側をガイドされて周方向に回転駆動する。駆動リング47が回転駆動することにより、各同期用伝達リンク51を介して各ノズルベーン37の角度を同期して可変させ、ノズル流路27Aの開口面積を変化させる。そして、この開口面積の変化により、ノズル流路27Aを通る排気ガスの流量が調節される。
【0034】
本実施形態のサポートリング35は、第1ガイド部60及び第2ガイド部70が一体となって成形されたものであるため、従来のように2つの部材を組み合わせる必要がなく組み合わせの際のズレを解消できる。さらに、両者を別の製造工程で製造する必要がなく製造工程の違いで生じる両者間の寸法精度のズレも解消できる。したがって、サポートリング35の全体の寸法精度が高精度化され、駆動リング47の高精度な回転駆動が可能となる。このため、各ノズルベーンの角度調整を精密に行え、結果として低回転域から高回転域までの広い範囲に亘り過給性能の向上を図ることができる。
【0035】
なお、ノズル流路27Aを通った排気ガスは、タービンインペラ13の設置箇所に導入され、タービンインペラ13を回転させる。その後、排気ガスは、タービンハウジング出口19より排出される。そして、タービンインペラ13が回転すると、タービン軸11を介して連結されたコンプレッサインペラ15が回転し、吸気口21から導入された空気がディフューザ流路23に供給されると共に昇圧される。昇圧された空気は、コンプレッサスクロール流路25を通ってエンジンの吸気口に供給されて、エンジンに過給され、エンジンの出力を向上させる。
【0036】
従って、上述の本実施形態によれば、所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、環状に複数配設されたノズルベーン37の角度を同期して可変させる駆動リング47を有する同期機構43であって、駆動リング47の上記軸方向の一方側をガイドする略リング状の底面部61及び該底面部61の外縁に沿って立設されて駆動リング47の外径側をガイドする外壁部62を備える略皿形状の第1ガイド部60と、底面部61の内縁に沿って複数立設されて駆動リング47の内径側をガイドする中腹部71及び該中腹部71から底面部61と対向するように屈曲して駆動リング47の上記軸方向の他方側をガイドする先端部72を備える略舌片形状の第2ガイド部70と、を有し、上記第1ガイド部60及び上記第2ガイド部70が一体で成形されているサポートリング35を備えるという構成を採用することによって、略皿形状の第1ガイド部60と略舌片形状の第2ガイド部70とが協働して駆動リング47の軸方向両側及び径方向両側をガイドし、これら第1ガイド部60及び第2ガイド部70を一体化することで、寸法精度の高精度化が可能となる。また、部品点数が減少することで低コスト化に寄与することができる。
したがって、本発明では、駆動リング47の回転駆動を高精度化できる同期機構43およびターボチャージャ1が得られる。
【0037】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ターボチャージャ、3…軸受けハウジング、5…タービンハウジング、13…タービンインペラ、17…タービンスクロール流路、27…可変ノズルユニット(排気ノズル)、35…サポートリング、37…ノズルベーン(可変ノズルベーン)、43…同期機構(可変ノズル機構)、49…同期用係合凹部(溝部)、51…同期用伝達リンク(リンク部材)、60…第1ガイド部、61…底面部、61c…凸部、62…外壁部、70…第2ガイド部、71…中腹部、72…先端部、72c…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる軸周りの回転駆動により、環状に複数配設された可変ノズルベーンの角度を同期して可変させる駆動リングを有する可変ノズル機構であって、
前記駆動リングの前記軸方向の一方側をガイドする略リング状の底面部及び該底面部の外縁に沿って立設されて前記駆動リングの外径側をガイドする外壁部を備える略皿形状の第1ガイド部と、
前記底面部の内縁に沿って複数立設されて前記駆動リングの内径側をガイドする中腹部及び該中腹部から前記底面部と対向するように屈曲して前記駆動リングの前記軸方向の他方側をガイドする先端部を備える略舌片形状の第2ガイド部と、を有し、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部が一体で成形されているサポートリングを備えることを特徴とする可変ノズル機構。
【請求項2】
前記底面部及び前記先端部の少なくともいずれか一方に、前記駆動リングの前記軸方向におけるガイド幅を調節する凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル機構。
【請求項3】
前記駆動リングは、前記可変ノズルベーンのそれぞれに連結されるリンク部材の一端部が係合する溝部を内径側に所定間隔で複数有し、
前記先端部は、前記軸方向において前記溝部に対応する間隔で設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変ノズル機構。
【請求項4】
タービンインペラを回転可能に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記スクロール流路内から前記タービンインペラ側に供給される前記排気ガスの流量を調整する可変ノズル機構を備える排気ノズルと、を備えた可変容量型ターボチャージャであって、
前記可変ノズル機構として、請求項1〜3のいずれか一項に記載の可変ノズル機構を備えることを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−229908(P2010−229908A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79039(P2009−79039)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】