説明

可変吸音装置

【課題】アクティブ吸音が可能な吸音装置を提供する。
【解決手段】弾性体と、前記弾性体の少なくとも一部に設置されている弾性率可変材料と、前記弾性率可変材料の弾性率を変化させる刺激付与手段と、を含むことを特徴とする可変吸音装置およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変吸音装置に関し、さらに詳細には、アクティブ吸音が可能である可変吸音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両で発生する騒音を吸音し、車室内の静寂性を高める方法については、今日まで多くの研究・開発が行われてきている。
【0003】
特許文献1では、合成樹脂発泡体からなる吸音材に対して、アクリル系粘着剤を塗布するか、または粘着テープを貼付することにより、建設機械のエンジン、油圧機器等の騒音がマシンキャブからオペレータキャブに伝播することを抑えると共に、車外への騒音を低周波から高周波にわたって抑える吸音材および吸音方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−16666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の材料の、吸音できる音の周波数領域や吸音率のピーク周波数はほとんど固定的であるため、車両で発生する騒音の周波数変化に対応できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、アクティブ吸音が可能な吸音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、弾性体と外部刺激により弾性率が変化する材料とを組み合わせた構造体を含む吸音装置が、アクティブ吸音が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、弾性体と、前記弾性体の少なくとも一部に設置されている弾性率可変材料と、前記弾性率可変材料の弾性率を変化させる刺激付与手段と、を含むことを特徴とする可変吸音装置である。
【0008】
また、本発明は、所望の形状を有する弾性体を用意する工程と、前記弾性体上に弾性率可変材料を設置する工程と、刺激付与手段を設置する工程と、を含む可変吸音装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸音をさせる弾性体の弾性率を、弾性率可変材料で変化させることができるので、アクティブ吸音が可能な吸音装置が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の第1は、弾性体と、前記弾性体の少なくとも一部に設置されている弾性率可変材料と、前記弾性率可変材料の弾性率を変化させる刺激付与手段と、を含むことを特徴とする可変吸音装置である。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による可変吸音装置の一部である、弾性体と弾性率可変材料とを組み合わせた構造体を示す概略図である。弾性体1の表面に弾性率可変材料2が備えられ、弾性率可変材料2の両端には電極3が設けられている。電極3には導線4が繋がれており、導線4によって刺激印加手段、例えば、電圧印加装置と接続することができる。
【0013】
弾性率可変材料2に外部刺激が印加されると、弾性率可変材料の弾性率が変化する。これにより、本発明の可変吸音装置が吸音できる音の周波数をアクティブに変化させることができる。また、弾性体の種類、重量、および弾性率、さらに、弾性率可変材料の設置方法、外部刺激源の強度(電圧、湿度など)を適宜選択することによって、吸音できる周波数の領域および吸音率のピーク周波数をコントロールすることができる。
【0014】
吸音できる音の周波数をアクティブに変化させることができる理由は、下記のようなメカニズムによるためと考えられる。
【0015】
一般的に、0次モードの振動を起こす吸音膜に対して完全剛体からなる振動の節が設置されると、膜の振動は1次モードに変わり、膜の吸音周波数は高周波数側にシフトする(図2A参照)。本発明の場合、前記吸音膜の役割を果たすのは弾性体であり、振動の節の役割を果たすのは弾性率変化材料である。このような材料の構成にした場合、前記弾性率可変材料は完全な節とはなりえず、前記弾性体に0次および1次の両方の振動モードが存在すると考えられる。この状態で節の部分の弾性率が変わると(すなわち、剛性が上がる)と、1次モードがさらに進行すると推測され、そのため吸音周波数が高周波側にシフトすると考えられる(図2B参照)。
【0016】
前記弾性体に対して、種々の配置形状で弾性率可変材料を設置すると、完全剛体で振動の節を1本設置した場合に生じる1次の振動モード以外の振動モードが生じ、吸音周波数の高周波数側への周波数ピークのシフト幅が、配置形状によって異なってくると考えられる。
【0017】
本発明で用いられる弾性率可変材料は、導電性高分子または導電性高分子と水分子を保持する能力を有する添加剤とを含むことが好ましい。ここで、本発明において、「水分子を保持する能力を有する添加剤」とは、親水性基を有する添加剤を意味し、さらに具体的には、25℃において、単位質量あたりの化合物の水を吸着する量(吸着能)が、弾性率可変材料に含まれうる導電性高分子よりも上回る化合物を意味する。
【0018】
前記吸着能は、例えば、以下の方法で算出することができる。
【0019】
まず、導電性高分子のみからなるフィルムを作製し、相対湿度30%と相対湿度70%との環境に前記導電性高分子のみからなるフィルムを放置し水を吸着させ、フィルムの質量をそれぞれ求める。得られた質量をグラフ上にプロットし、得られた直線を外挿し相対湿度0%での質量を求める。その質量は導電性高分子のみの質量を表すため、その質量を例えば相対湿度70%の環境下に放置したフィルムの質量から除けば、相対湿度70%において水が何g吸着されたかが分かる。そして、その水の量を導電性高分子の質量で割ると、導電性高分子の単位質量あたりの水の吸着量がわかる。
【0020】
次に、添加剤と導電性高分子との混合物からフィルムを作製し、上記と同様の方法により、得られたフィルム中の添加剤の質量と導電性高分子の質量とをそれぞれ求める。そして、例えば相対湿度70%の環境下に放置したフィルムの質量から、添加剤の質量と導電性高分子の質量とを除けば、相対湿度70%において水が何g吸着されたかが分かる。そして、その水の量を添加剤の質量で割ると、添加剤の単位質量あたりの水の吸着量がわかる。こうして得られた添加剤の単位質量あたりの水の吸着量と、上記で得られた導電性高分子の単位質量あたりの水の吸着量とを比較する。
【0021】
本発明で用いられる弾性率可変材料の弾性率が、外部刺激により変化するメカニズムは、H.Okuzaki et al.,Macromolecules,33,8307−8311(2000)に記載されているような、以下のメカニズムであると推測される。
【0022】
湿度の刺激を与え、かつ、電圧が印加されていない場合の本発明で用いられる弾性率可変材料は、その内部に水分子が保持されている状態である。弾性率可変材料中の水分子は可塑剤として働き、弾性率可変材料中の導電性高分子鎖の運動性を高めることで、弾性率可変材料の弾性率を低下させていると考えられる。この弾性率可変材料に電圧を加えると、弾性率可変材料中の導電性高分子内にジュール熱が発生する。発生したジュール熱により、弾性率可変材料中の水分子は吐き出される。その結果、弾性率が大きくなると考えられる。
【0023】
かような弾性率可変材料を前記弾性体に設置する場合、弾性率可変材料を、弾性体の表面を均等に分割するように配置すると、弾性率可変材料の弾性率を変化させたときに弾性率可変材料が振動の節となることで、分割するように配置された弾性体の剛性が変化する。したがって、吸音する音の周波数を任意に可変することができる。例えば、図3に示すような、直方体状の弾性体1に対する弾性率可変材料2の設置箇所の実施形態が挙げられる。また、例えば、円盤状の弾性体1に対しては、図4A〜図4Eに示すような短冊状の弾性率可変材料2を設置する実施形態、図4Fに示すような同心円状に弾性率可変材料2を設置する実施形態、図4Gに示すような弾性体1の片面全体に弾性率可変材料2を設置する実施形態などが挙げられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
前記弾性率可変材料を設置する面積は、特に制限されないが、前記弾性体の全表面積に対して、好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜40%、さらに好ましくは25〜35である。
【0025】
本発明で用いられる弾性率可変材料は、水分子を保持する機能を有する前記の添加剤を、弾性率可変材料の全質量に対して、好ましくは1〜50質量%含むことが好ましい。添加剤の含有量を前記範囲に制御することにより、得られる弾性率可変材料がゲル状とならず体積の増大を抑制することができ、また、低い駆動電圧で、弾性率可変材料のより大きな弾性率の変化を発現させうる。
【0026】
以下、本発明の可変吸音装置を構成する要素について、さらに詳細に説明する。
【0027】
[弾性体]
本発明に用いられる弾性体は、特に制限されないが、常温(20〜25℃)で弾性を示す材料であることが好ましい。その具体的な例としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ホスファゼンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(H−SBR)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、水素添加スチレン−イソプレン/ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、部分水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる、結晶性ポリエチレンブロックとエチレンおよびブチレンを共重合させた形の非晶性ブロックとを有するブロック共重合体(CEBC)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)、メタロセン触媒を用い合成したエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ゴム(ACM、ANM)、フッ素系ゴム、ポリエステル系(共)重合体(エラストマー)、ポリアミドポリエステル系(共)重合体(エラストマー)、ウレタンゴム、またはシリコンゴムなどが挙げられる。これら弾性体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0028】
これらの中でも、ポリ塩化ビニルおよびシリコンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0029】
前記弾性体の形状は、特に制限されず、車両内の設置場所に合わせて適宜選択される。前記形状の具体的な例としては、例えば、球状、円柱状、円盤状、直方体状、立方体状、シート状、またはフィルム状などが挙げられる。
【0030】
[弾性率可変材料]
本発明で用いられる弾性率可変材料は、特に制限されないが、導電性高分子または導電性高分子と水分子を保持する機能を有する添加剤とを含む材料であることが好ましい。
【0031】
以下、導電性高分子および水分子を保持する機能を有する添加剤について説明する。
【0032】
<導電性高分子>
本発明で用いられる導電性高分子は、導電性を示す高分子であれば特に制限されず、具体的な例としては、例えば、ポリアセチレン、ポリメチルアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリフルオロアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレンなどのポリアセチレン系高分子;ポリパラフェニレンなどのポリフェニレン系高分子;ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチル−3−メチルピロール)、ポリ(N−エチル−3−ドデシルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)などのポリピロール系高分子;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェン系高分子;ポリフラン;ポリセレノフェン;ポリイソチアナフテン;ポリフェニレンスルフィド;ポリアニリン;ポリフェニレンビニレン;ポリチオフェンビニレン;ポリぺリナフタレン;ポリアントラセン;ポリナフタレン;ポリピレン;ポリアズレン;またはこれらの誘導体が好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、安定性、信頼性、または入手の容易さなどの観点から、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリンがより好ましい。
【0033】
本発明における導電性高分子の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。製造方法の具体的な例としては、例えば、化学重合法、電解重合法、可溶性前駆体法、マトリックス(鋳型)重合法、もしくはCVDなどの蒸着法、または水や有機溶媒に分散させた導電性高分子分散溶液を展延法(キャスト法)により製膜し、分散液を蒸発、乾燥させる方法などが挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる導電性高分子は、さらにドーパントを含んでいてもよい。ドーパントを前記導電性高分子に添加することにより、より高い導電性を発現させることができる。
【0035】
前記ドーパントの具体的な例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロ硼酸イオン;六フッ化ヒ酸イオン;硫酸イオン;硝酸イオン;チオシアン酸イオン;六フッ化ケイ酸イオン;燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオンなどの燐酸系イオン;トリフルオロ酢酸イオン;トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオンなどのアルキルベンゼンスルホン酸イオン;メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオンなどのアルキルスルホン酸イオン;または、ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオンなどの高分子イオンなどが好ましく挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、高い導電性を容易に調整でき、かつ、水分子を保持するために有用な親水骨格を有することから、ポリスチレンスルホン酸イオンがより好ましい。
【0036】
前記ドーパントの添加量は、前記導電性高分子に対して好ましくは3〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0037】
前記導電性高分子の形態は、特に制限されず、固状、液状、粉末状、粒状、または溶液状など、いずれの形態であってもよい。
【0038】
<水分子を保持する機能を有する添加剤>
本発明で用いられる弾性率可変材料には、水分子を保持する機能を有する添加剤が含まれうる。前記水分子を保持する機能を有する添加剤は、アルコール化合物、フェノール化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物、およびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物、または界面活性剤であることが好ましい。前記有機化合物および前記界面活性剤は、親水性基を有することから、水分子を保持する機能を有し、弾性率可変材料の弾性率変化をより大きくすることができる。
【0039】
前記有機化合物および前記界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
以下、前記有機化合物および前記界面活性剤について説明する。
【0041】
<有機化合物>
前記添加剤として有機化合物を用いる場合、アルコール化合物、フェノール化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物、およびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物であることが好ましい。
【0042】
前記アルコール化合物の具体的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、またはジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,9−ノナンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、アダマンタンテトラオール、1,3−ジメチルアダマンタン−5,7−ジオール、キシリトール、ソルビトール、グルコース、スクロール、ポリエチレングリコール、またはポリビニルアルコールなどの多価アルコールが好ましく挙げられる。
【0043】
前記アルコール化合物を用いる場合、多価アルコールを用いることがより好ましい。前記多価アルコールは、親水性部分が多く存在するため、水分子を保持する能力が高いという特性を有し、また、沸点が高いため、本発明で用いられる弾性率可変材料の製膜の際に、導電性高分子中に残留しやすいという性質を有するためである。
【0044】
前記フェノール化合物の具体的な例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、メチルカテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、またはジヒドロキシジメチルナフタレンなどが好ましく挙げられる。
【0045】
前記アルデヒド化合物の具体的な例としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ピルビンアルデヒド、グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ジフェニルアルデヒド、またはクロトンアルデヒドなどが好ましく挙げられる。
【0046】
前記ケトン化合物の具体的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、またはジアセトンアルコールなどが好ましく挙げられる。
【0047】
前記カルボン酸化合物の具体的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、酒石酸等の脂肪族オキシカルボン酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シクロヘキセンモノカルボン酸、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などの脂環式カルボン酸、安息香酸、トルイル酸、アニス酸、p−(tert−ブチル)安息香酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メリット酸などの芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。また、カルボン酸無水物も好適に用いることができ、その具体的な例としては、上記のカルボン酸類の酸無水物が挙げられる。
【0048】
前記カルボン酸エステル化合物としては、上記のカルボン酸化合物のモノまたは多価エステルを使用することができ、その具体例としては、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、ピバリン酸プロピル、ピバリン酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジイソブチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジイソブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、酒石酸ジイソブチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−(tert−ブチル)安息香酸エチル、p−アニス酸エチル、α−ナフトエ酸エチル、α−ナフトエ酸イソブチル、ケイ皮酸エチル、フタル酸モノメチル、フタル酸モノブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジアリル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、ナフタル酸ジエチル、ナフタル酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラメチル、ピロメリット酸テトラエチル、またはピロメリット酸テトラブチルなどが好ましく挙げられる。
【0049】
前記エーテル化合物の具体的な例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジ−2−エチルヘキシルエーテル、ジアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、またはプロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどが好ましく挙げられる。
【0050】
前記スルホン酸化合物の具体的な例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはp−トルエンスルホン酸などが好ましく挙げられる。
【0051】
前記アミン化合物の具体的な例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、または1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などが好ましく挙げられる。
【0052】
前記アミド化合物の具体的な例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジ−n−プロピルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド、N,N−ジメチルブタナミド、N,N−ジエチルブタナミド、N,N−ジ−n−プロピルブタナミド、N−アセチルピロジリン、N−プロピオニルピロリジン、N−ブチリルピロリジン、N−アセチルピペリジン、N−プロピオニルピペリジン、N−ブチリルピロリジン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素などが好ましく挙げられる。
【0053】
これら有機化合物の中でも、さらに好ましいものは、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルエチルケトン、およびN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコールである。
【0054】
前記有機化合物の含有量は、前記弾性率可変材料の総質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量である。前記有機化合物の含有量が1質量%未満であると、弾性率可変材料の水分子を保持する能力が低下し、外部刺激を与えた場合の材料の弾性率変化が得られない場合がある。前記有機化合物の含有量が50質量%を超えると、得られる材料がゲル状となる場合があり、また、材料の導電性が低下する場合がある。
【0055】
<界面活性剤>
本発明で用いられる弾性率可変材料に含まれうる界面活性剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤などが挙げられ、これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記陽イオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、またはポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
【0057】
前記陰イオン性界面活性剤の例としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、またはナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが好ましく挙げられる。
【0058】
前記非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコール、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体などが好ましく挙げられる。
【0059】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0060】
前記両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類、または加水分解コラーゲン類などが好ましく挙げられる。
【0061】
これら界面活性剤の中でも、添加剤としてさらに好ましいものは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、およびドデシルベンゼンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0062】
前記界面活性剤の含有量は、前記弾性率可変材料の総質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。前記界面活性剤の含有量が1質量%未満であると、前記弾性率可変材料中の導電性高分子の水分子を保持する能力が低下し、外部刺激を与えた場合の弾性率可変材料の弾性率変化が得られない場合がある。前記界面活性剤の含有量が50質量%を超えると、得られる弾性率可変材料がゲル状となる場合があり、また、弾性率可変材料の導電性が低下する場合がある。
【0063】
本発明で用いられる弾性率可変材料の形状は、特に制限されず、シート状、フィルム状などの形態を有しうる。しかしながら、弾性体へ密着した状態で貼り付けがしやすいことや、スピンコートや印刷法などで簡単に弾性体へ貼り付けられることから、前記弾性率可変材料はフィルム状であることが好ましい。この際、フィルムの厚さは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。前記厚さが1μm未満の場合、フィルム強度が弱くなる場合があり、50μmを超えると、フィルム深部の水分子が脱離するまでの時間が余計にかかるため、応答速度が遅くなる場合がある。
【0064】
また、本発明の弾性率可変材料は、その特性を損なわない範囲内で、顔料、着色剤などの無機粒子などの添加成分を含むことができる。
【0065】
前記弾性体と前記弾性率可変材料との質量比は、特に制限されないが、好ましくは60:1〜1:1、より好ましくは12:1〜3:1である。
【0066】
前記弾性率可変材料の製造方法は、特に制限されないが、導電性高分子および添加剤を溶媒に加え、攪拌・混合し混合物を得る第1の工程と、前記の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が弾性率可変材料の全質量に対して50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、弾性率可変材料を得る第2の工程とを含む製造方法が好ましい。この製造方法の詳細については後述する。
【0067】
[刺激付与手段]
本発明で用いられる刺激付与手段は、例えば、熱、磁場、電場、光、または湿度などの外部刺激を付与する手段が挙げられる。その具体的な例としては、例えば、熱を付与する手段であるヒーター、磁場を付与する手段である電磁石、電圧を付与する手段である電圧印加装置、光を付与する手段である可視光ランプ、紫外光ランプ、湿度を付与する手段である加湿器などが挙げられる。これら刺激付与手段は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。これらの中でも、電圧印加装置および加湿器からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、電圧印加装置および加湿器を併用することがさらに好ましい。
【0068】
これらの中でも、弾性率可変材料の弾性率の変化を効率よく得るという観点から、電圧印加装置および加湿器を併用することが好ましい。
【0069】
前記刺激付与手段は、前記弾性体と前記弾性率可変材料とを含む構造体に直接接続されていてもよいし、接続されていなくてもよいし、構造体に直接接続されるものと直接接続されないものとを併用してもよいが、外部刺激による弾性率可変材料の弾性率の変化を効率よく得るために、前記刺激付与手段は、前記弾性体と前記弾性率可変材料とを含む構造体と直接接続されるものを含むことが好ましい。
【0070】
外部刺激による前記弾性率可変材料の弾性率の変化を発現させるために、前記弾性率可変材料が、相対湿度が好ましくは30〜90%RH、より好ましくは70〜90%RHの環境下に、好ましくは10分〜1時間曝されるようにして、水分子を吸着させる。本発明で用いられる弾性率可変材料が弾性率の変化を起こすためには、前記弾性率可変材料中の導電性高分子がジュール熱を発生させて、水分子が脱離することが必要である。このジュール熱を発生させるための外部刺激は電圧であることがより好ましい。
【0071】
ジュール熱を発生させるための外部刺激として電圧を用いる場合、水分子が吸着した本発明に用いられる弾性率可変材料は、好ましくは1〜10V、より好ましくは1〜5Vの電圧を印加することにより、弾性率が変化しうる。
【0072】
本発明の第2は可変吸音装置の製造方法である。本発明の可変吸音装置の製造方法は、(1)所望の形状を有する弾性体を用意する工程と、(2)前記弾性体上に弾性率可変材料を設置する工程と、(3)刺激付与手段を設置する工程と、を含む。
【0073】
以下、かような製造方法について、工程順に詳細に説明するが、本発明は下記の形態のみに制限されるものではない。
【0074】
[(1)弾性体を用意する工程]
本発明で用いられる弾性体は、市販のものを購入して用いても良いし、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合などの重合方法により得られたものを用いても良い。
【0075】
前記重合体を所望の形状にする方法も、特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、2つの熱ロール間を通す方法(加熱圧延法)、プレス機を用いて圧延する方法、裁断機によって裁断する方法などが挙げられる。
【0076】
[(2)前記弾性体上に弾性率可変材料を設置する工程]
次に、前記弾性体上に前記弾性率可変材料を設置する。前記弾性率可変材料を設置する面積は、前記弾性体の全表面積に対して、好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜40%、さらに好ましくは25〜35%である。
【0077】
上記のような設置面積の範囲を満たすように設置すれば、前記弾性率可変材料の設置場所や設置形状は、前述のように特に制限されない。
【0078】
設置方法も、特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。具体的には、例えば、(a)あらかじめ作製しておいた弾性率可変材料のシートまたはフィルムを、粘着剤または両面テープなどにより前記弾性体に貼り付ける方法;(b)前記弾性体上に溶液キャスト法、スピンコート法、印刷法、またはスプレー法などにより弾性率可変材料を直接塗布し製膜する方法などが挙げられる。
【0079】
前記(a)の方法において、弾性率可変材料をあらかじめ作製する場合、前記弾性率可変材料は、導電性高分子および添加剤を溶媒に加え、攪拌・混合し混合物を得る第1の工程と、前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、弾性率可変材料フィルムを得る第2の工程と、を含む製造方法により製造することが好ましい。
【0080】
以下、前記第1の工程および前記第2の工程を説明する。
【0081】
<第1の工程>
前記第1の工程は、導電性高分子と添加剤とを溶媒に加え、攪拌および混合し混合物を得る工程である。
【0082】
前記導電性高分子および前記添加剤は、上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0083】
前記溶媒は、前記導電性高分子および前記添加剤を溶解するものであれば特に制限はない。しかし、後述する第2の工程において溶媒のみを除去し、導電性高分子中の添加剤量の制御を容易にするという観点から、前記添加剤よりも低い沸点を有する溶媒を選択することが好ましい。
【0084】
このような溶媒の例としては、水、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、iso−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒;エチルエーテル、iso−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒などを挙げることができ、これらは単独でもまたは2種以上を混合しても用いることができる。
【0085】
なお、前記導電性高分子が溶液状である場合、導電性高分子溶液に添加剤を加えて攪拌・混合することにより混合物を得てもよい。
【0086】
攪拌する際の温度は、好ましくは10〜30℃であり、攪拌時間は、好ましくは5〜15分である。
【0087】
本発明で用いられる弾性率可変材料中に残留する添加剤の量と導電率とのバランスの観点から、本工程で得られる混合物中の導電性高分子の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0088】
また、本発明で用いられる弾性率可変材料中に残留する添加剤の量と導電率とのバランスの観点から、本工程で得られる混合物中の添加剤の含有量は、好ましくは95〜60質量%、より好ましくは95〜70質量%である。
【0089】
<第2の工程>
第2の工程は、前記第1の工程で得られた混合物を溶液キャスト法により製膜し、水分子を保持する機能を有する添加剤が50〜1質量%となるように膜を乾燥させ、弾性率可変材料を得る工程である。
【0090】
混合物がキャストされる基材や容器は、例えば、ガラス製やテフロン製のシャーレ、ガラス基板、シリコンウェハ、金属板などが挙げられる。この際、基材として
混合物中の溶媒を乾燥する際用いられる装置も、特に制限されず、例えば、オーブン、ホットプレート、ドライヤーなどが挙げられる。
【0091】
溶媒を乾燥する温度は、導電性高分子の種類、溶媒の種類、添加剤の種類や残存させる添加剤の量によって適宜決定されうるが、一般的には、60℃を下限とし、前記溶媒の熱重量分析(TG:Thermogravimetric Analysis)により得られる、前記溶媒の重量減少の開始温度を上限とする範囲が好ましい。例えば、導電性高分子としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTとも称す)/ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSとも称す)を用い、溶媒として水を用いた場合、溶媒を乾燥する温度の範囲は、好ましくは70〜120℃である。
【0092】
溶媒を乾燥する時間は、導電性高分子の種類、溶媒の種類、添加剤の種類や残存させる添加剤の量によって適宜決定されうる。例えば、導電性高分子としてPEDOT/PSSを用い、溶媒として水を用いた場合、溶媒を乾燥する時間は、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは3〜12時間である。
【0093】
以上は、前記(a)の方法における、弾性率可変材料をあらかじめ作製する方法の説明であるが、前記(b)の方法のように、弾性体の表面上に弾性率可変材料を直接製膜する場合は、前記弾性体の表面に前記第1の工程で得られた混合物を、スピンコート法、印刷法、またはスプレー法などにより弾性体の表面上に直接塗布し、製膜すればよい。混合物を塗布する際は、前記弾性体の表面に、例えば、メタルマスクまたはフォトマスクなどを用いて、混合物を塗布しない部分をマスクしておけばよい。マスクをした後、前記混合物を塗布し、溶媒および添加剤を乾燥させて製膜し、最後にマスクを取り除けば、弾性体上に所望の形状を有する弾性率可変材料を設置することができる。
【0094】
製膜に用いられる乾燥装置および製膜の際の乾燥条件は、前記第2の工程と同様の装置および条件が適用されうる。
【0095】
[(3)刺激付与手段を設置する工程]
続いて、刺激付与手段を設置する。外部刺激による弾性率可変材料の弾性率の変化を効率よく得るために、前記刺激付与手段は、前記弾性体と前記弾性率可変材料とを含む構造体と直接接続されるものを含むことが好ましい。構造体と直接接続される刺激付与手段の例としては、電圧印加装置が挙げられる。
【0096】
前記構造体と前記電圧印加装置とを接続する場合、前記弾性率可変材料の両端に1対の電極を設け、導線により前記電圧印加装置と接続することが好ましい。
【0097】
本発明の可変吸音装置は、車室外からの騒音を効果的に低減させることができる箇所にある部品、例えば、図5に示すような、車両のヘッドライニング(車室内天井の内張り)5、ダッシュインシュレータ6、フロアインシュレータ7、ヘッドレスト8に備えることができる。
【0098】
また、本発明による可変吸音装置は、汎用的な吸音材、例えば、ウレタン、グラスウール、粗毛フェルトなどと併用して用いることもできる。
【実施例】
【0099】
本発明を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が、下記の実施例のみに制限されるわけではない。なお、本実施例で用いた導電率可変材料は、下記の方法により作製した。
【0100】
【化1】

【0101】
[弾性率可変材料の作製]
導電性高分子であるPEDOT/PSS(上記化学式(1)参照) 1.3質量%水溶液(Baytron社製、Baytron(登録商標)P AG)を19gと、添加剤であるエチレングリコール(以下、EGとも称す)1.0gとを、テフロンシャーレに取り、マグネティックスターラーで10分間攪拌した。その後、攪拌した混合物を、オーブン(Fisher Scientific社製、型番:Model280A)を用いて温度70℃で12時間乾燥させ、続いて160℃で1時間減圧乾燥することによって、フィルム状の弾性率可変材料を得た。
【0102】
[吸音率評価用サンプルの作製]
(実施例1)
ポリ塩化ビニルシート(膜厚:300μm、弾性率0.02GPa)を、直径100mmの円形に切り出した(質量:3g)。別途、前記のようにして得られた弾性率可変材料を、10mm×100mmの短冊状に切り出した。
【0103】
短冊状の弾性率可変材料を、円形のポリ塩化ビニルシートの中心を通るように、両面テープで貼り付けた(図4A参照)。弾性率可変材料の両端から3mmの位置に導電性ペースト(藤倉化成株式会社製、ドータイト(登録商標)D−550)を塗布し導線を取り付け、吸音率評価用サンプルを作製した。
【0104】
(実施例2)
図4Bに示すように、ポリ塩化ビニルシートの両面に弾性率可変材料を設置したこと以外は、実施例1と同様にして吸音率評価用サンプルを作製した。
【0105】
(実施例3)
図4Cに示すように、ポリ塩化ビニルシートの片面に弾性率可変材料を設置したこと以外は、実施例1と同様にして吸音率評価用サンプルを作製した。
【0106】
(実施例4)
図4Dに示すように、ポリ塩化ビニルシートの片面に弾性率可変材料を設置したこと以外は、実施例1と同様にして吸音率評価用サンプルを作製した。
【0107】
(実施例5)
図4Eに示すように、ポリ塩化ビニルシートの片面に弾性率可変材料を設置したこと以外は、実施例1と同様にして吸音率評価用サンプルを作製した。
【0108】
(実施例6)
図4Gに示すように、ポリ塩化ビニルシートの片面に弾性率可変材料を設置したこと以外は、実施例1と同様にして吸音率評価用サンプルを作製した。
【0109】
(比較例)
弾性率可変材料の代わりにビニールテープを用いた以外は、実施例1と同様にして、吸音率評価用サンプルを作製した。
【0110】
<垂直入射吸音率の測定>
垂直入射吸音率は、ブリュエル・ケアー社製の吸音率評価システムを用いて測定した。吸音率評価システムの概略図を図6に示した。
【0111】
実施例1〜6および比較例の吸音率評価用サンプル14)を、外径100mm、幅5mmのリング状のサンプルホルダー15で挟み込むようにして、サンプルを固定した。このため、吸音測定に有効な領域の直径は90mmである。弾性率可変材料に取り付けられた導線17は、サンプルホルダー15の内側を通した後、ダミーマイクロフォン12から外部へ出し、電圧印加装置18へ繋いだ。その後、図6に示す吸音率評価システム全体を、恒温恒湿槽内に入れた。測定条件は、下記の表1の通りである。
【0112】
【表1】

【0113】
[吸音率について]
吸音率測定用サンプルに音が入射すると、音の反射、吸収、および透過を生じ、入射音のエネルギーIは、反射音I、吸音I、透過音Iに分離される。吸音率αは、入射音に対する、反射されない音の割合であるため、下記数式1で表される。
【0114】
【数1】

【0115】
そのため、Iが0であっても、Iが大きくなればαは増加し、サンプルが無い場合においても、α=1となる。しかし、音響測定においては、サンプルの背後に剛壁(図6の16)と呼ばれる金属の板を配置する。この剛壁16は100%音を反射する(It≒0)と考え、吸音率は下記数式2のように表される。
【0116】
【数2】

【0117】
そのため、本測定で得た吸音率は入射音に対する吸音の割合を示す。
【0118】
得られた吸音率のピーク周波数を表2に、実施例1〜7の吸音率評価用サンプルを用いた場合の発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフを図7A〜図12Bに、それぞれ示す。
【0119】
【表2】

【0120】
上記表2および図7A〜図12Bからわかるように、比較例の吸音装置は吸音率のピーク周波数が変化しなかったが、実施例の本発明の可変吸音装置は、湿度条件および電圧を変化させることにより、吸音率のピーク周波数が変化した。相対湿度30%の結果と相対湿度70%の結果とを比較すると、相対湿度30%の条件下に置いた弾性率可変材料の吸湿量が少ないため、高周波数側にピークが出ていると考えられる。
【0121】
電圧をかけていない(0V)場合の吸音率のピーク周波数について、実施例2の場合、弾性率可変材料を2枚貼り付けているため、上記数式1より質量の項が効き、吸音率のピーク周波数が低周波数側に出る。しかし、0Vと4Vとの間のピークの変化幅について、実施例1と2とを比較した場合、実施例2の方が大きくなった。これは、振動の節の数が実施例1よりも実施例2のほうが多く、振動モードが異なるためと考えられる。
【0122】
このことから、弾性率可変材料の設置箇所が多いほど、振動の節の数が多くなり、吸音率のピーク周波数が高周波数側へシフトしやすくなるが、弾性率可変材料の質量が大きくなることにより吸音率のピーク周波数が低周波数側へシフトする影響も出てくると考えられる。よって、振動の節の数と弾性率可変材料の質量との双方が、吸音率のピーク周波数に影響すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の一実施形態による可変吸音装置の一部である、弾性体と弾性率可変材料とを組み合わせた構造体を示す概略図である。
【図2A】本発明の可変吸音装置の吸音メカニズムを説明する模式図である。
【図2B】本発明の可変吸音装置の吸音メカニズムを説明する模式図である。
【図3】本発明による可変吸音装置に含まれる弾性率可変材料の設置例を示す概略図である。
【図4A】実施例1で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図4B】実施例2で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図4C】実施例3で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図4D】実施例4で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図4E】実施例5で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図4F】本発明の他の一実施形態による可変吸音装置の一部である、弾性体と弾性率可変材料とを組み合わせた構造体を示す概略図である。
【図4G】実施例6で作製した吸音率評価用サンプルを示す概略図である。
【図5】本発明の可変吸音装置の設置場所の例を示す概略図である。
【図6】実施例で用いた吸音率評価システムを示す概略図である。
【図7A】実施例1の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図7B】実施例1の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図8A】実施例2の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図8B】実施例2の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図9A】実施例3の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図9B】実施例3の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図10A】実施例4の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図10B】実施例4の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図11A】実施例5の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図11B】実施例5の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図12A】実施例6の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図12B】実施例6の吸音率評価用サンプルを用いた場合の、発生した音の周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0124】
1 弾性体、
2 弾性率可変材料、
3 電極、
4、17 導線、
5 ヘッドライニング、
6 ダッシュインシュレータ、
7 フロアインシュレータ、
8 ヘッドレスト、
10 吸音率評価システム、
11 スピーカー、
12 ダミーマイクロフォン、
13 マイクロフォン、
14 吸音率評価用サンプル、
15 サンプルホルダー、
16 剛壁、
18 電圧印加装置、
19 入射音、
20 反射音。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、
前記弾性体の少なくとも一部に設置されている弾性率可変材料と、
前記弾性率可変材料の弾性率を変化させる刺激付与手段と、
を含むことを特徴とする、可変吸音装置。
【請求項2】
前記弾性率可変材料が前記弾性体の少なくとも一方の表面を均等に分割するように配置していることを特徴とする、請求項1に記載の可変吸音装置。
【請求項3】
前記弾性率可変材料は、同一方向に沿って複数条に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の可変吸音装置。
【請求項4】
前記弾性率可変材料は、格子状に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の可変吸音装置。
【請求項5】
前記弾性率可変材料は、同心円状に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の可変吸音装置。
【請求項6】
前記弾性率可変材料が前記弾性体の少なくとも一方の表面の全面に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の可変吸音装置。
【請求項7】
前記弾性率可変材料が、導電性高分子であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の可変吸音装置。
【請求項8】
前記弾性体が、ポリ塩化ビニルおよびシリコンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の可変吸音装置。
【請求項9】
前記刺激付与手段が、電圧印加装置であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の可変吸音装置。
【請求項10】
さらに加湿器を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の可変吸音装置。
【請求項11】
所望の形状を有する弾性体を用意する工程と、
前記弾性体上に弾性率可変材料を設置する工程と、
刺激付与手段を設置する工程と、
を含む可変吸音装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の可変吸音装置または請求項11の製造方法によって製造された可変吸音装置を備えることを特徴とする車両用部品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2009−40153(P2009−40153A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205656(P2007−205656)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】