可変圧縮比変更機構を有する内燃機関の制御装置
【課題】 機関への高圧縮比運転要求に対する応答性能を出来るだけ向上しながらもエミッションを良好に維持することができる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】 制御装置は、機械圧縮比を変更する圧縮比変更機構を備えるとともに排気通路に触媒を備えた機関に適用される。制御装置は、機関に高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合(ステップ710)、触媒から排出される特定成分が過度に増加することが推定されるときには高圧縮比運転を禁止又は抑制する(ステップ720)。更に、制御装置は、高圧縮比運転が禁止又は抑制された時点から所定時間以内に更なる高圧縮比運転要求が発生するとき、高圧縮比運転を実行する(ステップ730、740〜760)。
【解決手段】 制御装置は、機械圧縮比を変更する圧縮比変更機構を備えるとともに排気通路に触媒を備えた機関に適用される。制御装置は、機関に高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合(ステップ710)、触媒から排出される特定成分が過度に増加することが推定されるときには高圧縮比運転を禁止又は抑制する(ステップ720)。更に、制御装置は、高圧縮比運転が禁止又は抑制された時点から所定時間以内に更なる高圧縮比運転要求が発生するとき、高圧縮比運転を実行する(ステップ730、740〜760)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に触媒を有するとともに機械圧縮比を変更することができる可変圧縮比変更機構を有する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転状態に応じて機械圧縮比を変更するための可変圧縮比変更機構を有する内燃機関が提案されている。このような可変圧縮比内燃機関は、例えば、以下の何れかの手法等に基づいて機械圧縮比を変更する。
(1)リンク機構を用いてピストンの移動量(ピストンが下死点位置から上死点位置にまで移動する際の移動距離)を変更させる(例えば、特許文献1を参照。)。
(2)クランクケースに対するシリンダブロックの傾斜角を変更させる。
(3)シリンダブロックをクランクケースに対してシリンダの軸線方向に移動させる(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。
(4)ピストンとクランク軸との距離を変更させる(例えば、特許文献4及び特許文献5を参照)。
【0003】
従来の可変圧縮比内燃機関の制御装置の一つは、所定時間の経過毎に検出される運転状態パラメータ(エンジン回転数、負荷等)に基づいて目標機械圧縮比を決定し、目標機械圧縮比が決定された後、即座に目標機械圧縮比と実際の機械圧縮比とを一致させる処理を行うようになっている(特許文献5を参照。)。
【特許文献1】特開2003−328794号公報
【特許文献2】特開2003−206771号公報
【特許文献3】特開2007−303423号公報
【特許文献4】特開平2−163429号公報
【特許文献5】特開2004−278415号公報
【発明の開示】
【0004】
ところで、機械圧縮比を一時的に増大させることにより、例えば、機関の加速性能等を向上させることが検討されている。しかしながら、発明者は、このような高圧縮比運転要求に応じて即座に機械圧縮比を変更するとエミッションが悪化する場合があることを見出した。以下、この点について述べる。
【0005】
可変圧縮比内燃機関の排気通路には、通常の内燃機関と同様、排気浄化用の触媒装置(三元触媒、以下、単に「触媒」とも称呼する。)が配設されている。触媒は、その温度がその活性温度以上である場合、触媒に流入する排ガスを効率良く浄化することができる。換言すると、触媒の温度がその活性温度よりも低下している場合、触媒は十分な排ガス浄化性能を発揮することができない。
【0006】
例えば、触媒の温度がその活性温度近傍であるとき、機関に対して機械圧縮比の増大が要求されたと仮定する。機械圧縮比が高い場合の排ガス温度は、機械圧縮比が低い場合の排ガス温度よりも低い。従って、触媒の温度がその活性温度近傍である場合、機関に対する要求に応じて機械圧縮比を即座に増大させると、触媒の温度がその活性温度よりも低下する。この結果、触媒が排ガスを効率良く浄化することができないという問題が生じる。
【0007】
そこで、発明者は、機関に対して機械圧縮比の変更が要求された場合、機械圧縮比の変更によりエミッションが大幅に悪化することが予測されるときには機械圧縮比を変更させない方が、エミッションを良好にすることができるとの知見を得た。
【0008】
一方、機関に対して機械圧縮比の変更が要求された場合に機械圧縮比を変更させないことは、ドライバビリティ低下の原因となる虞がある。そこで、発明者は、所定の条件が成立するときには機械圧縮比を一時的に増大することにより、エミッションの低下を抑えるとともにドライバビリティを良好にすることができるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。即ち、本発明の目的は、機関に対して機械圧縮比を増大させる要求が発生した場合において、その要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0010】
より具体的に述べると、本発明の可変圧縮比内燃機関の制御装置は、
排気通路に配設されるとともに排ガス中の特定成分を浄化する触媒と、「ピストンが上死点位置にあるときの燃焼室容積」に対する「同ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積」の比である「機械圧縮比」を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を有する可変圧縮比内燃機関に適用される。
【0011】
この制御装置は、
前記機関の運転状態を表す運転状態パラメータに基づいて基本機械圧縮比を決定する「基本機械圧縮比決定手段」と、
前記基本機械圧縮比を一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する「高圧縮比運転要求発生判定手段」と、
「前記高圧縮比運転要求が発生していない」と判定されているときに前記基本機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定し、「前記高圧縮比運転要求が発生している」と判定されているときに前記基本機械圧縮比に「所定量」を加えた機械圧縮比である「増大後機械圧縮比」を最終的な目標機械圧縮比として設定する「目標機械圧縮比設定手段」と、
前記機関の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように前記機械圧縮比変更機構に指示を送出する「機械圧縮比制御手段」と、
を備える。
【0012】
更に、前記「目標機械圧縮比設定手段」は、
前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比から前記増大後機械圧縮比に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、前記触媒において浄化されることなく同触媒から排出される前記特定成分の増加量である「排気成分増加量」が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する「排気状態推定手段」と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合に「前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなる」と推定されるとき、前記最終的な目標機械圧縮比を「前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する「機械圧縮比増大抑制手段」と、
を備える。
【0013】
上記構成によれば、機関に所定の高圧縮比運転要求が発生した場合、「機械圧縮比が基本機械圧縮比から増大後機械圧縮比へ変更されたときの触媒から排出される排ガス中の特定成分の増加量(即ち、排気成分増加量)が所定の許容値よりも「大きく」なる」と推定されるとき、機械圧縮比は「基本機械圧縮比」又は「基本機械圧縮比と増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定される。即ち、この場合、機関に高圧縮比運転要求が発生したとしても機械圧縮比は増大後機械圧縮比にまでは増大させられない。換言すると、「排気成分増加量が所定の許容値「以下」になる」と推定される場合、機械圧縮比は「増大後機械圧縮比」に設定される。この結果、本発明の制御装置は、エミッションを良好に維持し、且つ、高圧縮比運転要求に出来るだけ応えることにより機関の性能を向上することができる。
【0014】
ここで、「高圧縮比運転要求」としては、例えば、機関への加速要求、及び、フューエルカット以外においてエンジンブレーキ力を増大させるための機械圧縮比増大要求等が挙げられる。
「排ガス中の特定成分」とは、例えば、窒素酸化物(NOx)及び未燃物(HC,CO等)であって、排ガス清浄化の観点から排ガス中におけるその含有量を低減することが求められる物質である。
【0015】
高圧縮比運転要求が発生した場合に基本機械圧縮比に加えられる「所定量」は、例えば、機関に要求される高圧縮比運転要求の大きさ等に基づいて決定することができる。また、高圧縮比運転要求の大きさは、例えば、アクセルペダル操作量の時間微分値、及び、筒内吸入空気量の時間微分値等の「機関の負荷の変化量(単位時間あたりの機関の負荷の増加量)」に基づいて決定することができる。
【0016】
排気成分増加量の「許容値」は、例えば、機関に求められる排ガス浄化性能に基づいて決定することができる。また、「排気成分増加量が許容値よりも大きいか否か」は、高圧縮比運転要求発生時の触媒の温度に基づいて判定することができる。更に、「排気成分増加量が許容値よりも大きいか否か」は、機関の運転状態パラメータ(例えば、負荷、回転数、機械圧縮比及び触媒温度等)に基づいて排気成分の増加量を推定し、その推定された増加量に基づいて判定することができる。
【0017】
この制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する「第1加速要求」が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定するように構成されることが好適である。
【0018】
上述したように、機関に対する高圧縮比運転要求には、機関への加速要求、及び、エンジンブレーキ力増大のための機械圧縮比増大要求等が挙げられる。上記構成によれば、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である「加速要求」に対して本発明の制御装置を適用することができる。これにより、機関に加速要求が発生した場合、エミッションの悪化が予想されるときには機械圧縮比が増大されない(即ち、機械圧縮比の増大が禁止される)か又は機械圧縮比の増大量が小さくされる(即ち、機械圧縮比の増大が抑制される)。その結果、エミッションを良好に維持しながら機関の加速応答性を出来るだけ向上することができる。
【0019】
ここで、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量の「第1所定量」は、機関のエミッションと機関の加速応答性能とを勘案した適値に設定することができる。
また、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量の大きさは、例えば、「アクセルペダル操作量の時間微分値」、及び、「筒内吸入空気量の時間微分値等の機関の負荷の変化量(単位時間あたりの機関の負荷の増加量)」に基づいて決定することができる。
【0020】
このような制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
「前記第1加速要求が発生した」と判定した場合において前記排気状態推定手段により「前記排気成分増加量が前記許容値よりも「大きく」なる」と推定されたとき、「同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間以内」において前記機関の発生トルクを増大させる要求である「第2加速要求」が発生したか否かを判定するように構成され、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記「第2加速要求が発生した」と判定されたとき「前記最終的な目標機械圧縮比を前記増大後機械圧縮比に設定する」ように構成されることが好適である。
【0021】
前述したように、「排気成分増加量が所定の許容値よりも「大きく」なる」と推定される場合、機関に加速要求が発生したとしても機械圧縮比の増大は禁止又は抑制される。しかしながら、機関に第1回目の加速要求(第1加速要求)が発生した後の所定時間以内において更に第2回目の加速要求(第2加速要求)が発生した場合、機関に対する加速要求が非常に強いと考えられる。
【0022】
そこで、上記構成によれば、機関に加速要求(第1加速要求)が発生したときに「排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなる」と判定されたために機械圧縮比の増大が禁止又は抑制され、その後、加速要求が消滅したと判定された時点から所定時間(第1所定時間)以内に更なる加速要求(第2加速要求)が発生した場合、機械圧縮比は増大後機械圧縮比にまで増大させられる。この結果、機関に対する加速要求が非常に強いと考えられるときには機械圧縮比が増大させられるから、機関の出力トルクを応答性良く増大させることができる。従って、運転者の強い加速要求に適切に対応し得る内燃機関を提供することができる。
【0023】
ここで、「第2加速要求」は、例えば、以下のように決定することができる。即ち、第1加速要求が消滅した時点でのアクセルペダル位置を基準位置とし、この基準位置に対してアクセルペダル位置が所定量だけ増加した場合、「第2加速要求」発生したと判定することができる。なお、このときの「所定量」は、機関に求められる応答性能等に応じて決定することができる。
また、「第2加速要求」は、「第1加速要求」と同様、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量に基づいて決定することもできる。この場合、「第2加速要求」は「第1加速要求」と同じでもよく、相違してもよい。
【0024】
更に、このような制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき、前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成される。
【0025】
前述したように、機械圧縮比が増大させられた場合、排気温度が低下するのに伴って触媒の温度は低下する。しかしながら、機械圧縮比が増大させられる時点での触媒温度がその活性温度に対して十分に高い場合、機械圧縮比の増大により触媒温度が低下しても触媒の排ガス浄化性能を要求される範囲内に維持することができる。
【0026】
そこで、上記排気状態推定手段は、前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定する。換言すると、「触媒の温度が所定の許容温度以上であれば排気成分増加量が許容値以下である」と判定される。これにより、触媒の温度が所定の許容温度以上であるとき、制御装置は、機関に対する高圧縮比運転要求に応じて機械圧縮比を直ちに増大させる。この結果、エミッションの悪化を招くことなく機関への高圧縮比運転要求にできる限り応えることができる。
【0027】
ここで、触媒の「許容温度」は、触媒の活性温度よりも高い温度であり、高圧縮比運転を実行した場合にも触媒温度が活性温度以下とならないと推定できる温度に設定することが好ましい。
【0028】
更に、このような制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記増大後機械圧縮比を前記最終的な目標機械圧縮比として設定した時点以降において、
(A)同時点から第2所定時間が経過したか否か、
(B)前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か、
(C)前記機関を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か、及び、
(D)前記機関を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か、
からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合、前記最終的な目標機械圧縮比を「前記基本機械圧縮比」又は「同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する機械圧縮比復帰手段と、
を含むように構成される。
【0029】
上述したように、高圧縮比運転が実行されている期間、触媒の温度は低下する。従って、高圧縮比運転が長時間に亘って実行された場合、触媒の温度がその許容温度以下となりエミッションが悪化する虞がある。
そこで、上記構成によれば、所定の高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合、最終的な機械圧縮比は増大後機械圧縮比から「基本機械圧縮比」又は「同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」へと減少させられる。これにより、高圧縮比運転を必要な期間にのみ実行することができ、エミッション及び燃費を良好にすることができる。
【0030】
ここで、「高圧縮比運転停止条件」に含まれる「第2所定時間」、「発生トルク変化量の第2所定量」及び「速度変化量閾値」は、本発明の内燃機関に求められる排ガス浄化性能等を勘案した適値に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による可変圧縮比内燃機関の制御装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される可変圧縮比内燃機関10の概略断面図である。
【0033】
この機関10は、多気筒(直列4気筒)・ピストン往復動型・火花点火式・ガソリン内燃機関である。また、この機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。なお、図1は特定の気筒の断面を示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0034】
機関10は、クランクケース11、オイルパン12、シリンダブロック13及びシリンダヘッド部14を含んでいる。
クランクケース11は、クランクシャフト11aを回転可能に支持している。オイルパン12は、クランクケース11の下方(下部)においてクランクケース11に固定されている。オイルパン12は、クランクケース11とともに、クランクシャフト11a及び潤滑油等を収容する空間を形成している。
【0035】
シリンダブロック13は、クランクケース11の上方に配置されている。シリンダブロック13は、中空円筒状のシリンダ(シリンダボア)13aを複数個(4気筒分)備えている。ピストン13bは略円筒形であり、シリンダ13aに収容されている。ピストン13bは、コネクティングロッド13cによってクランクシャフト11aに連結されている。シリンダブロック13は、後述するように、クランクケース11に対してシリンダ13aの軸線CC方向(以下、「上下方向」とも称呼する。)に移動することにより、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。なお、機械圧縮比は、「ピストン13bが上死点(圧縮上死点)位置にあるときの燃焼室容積に対するピストン13bが下死点(吸気下死点)位置にあるときの燃焼室容積の比」として定義される。
【0036】
シリンダヘッド部14は、シリンダブロック13の上方に配置され、シリンダブロック13に固定されている。シリンダヘッド部14には、燃焼室の上面を形成するシリンダヘッド下面14a、燃焼室に連通する吸気ポート14b、及び、燃焼室に連通する排気ポート14cが形成されている。
【0037】
更に、シリンダヘッド部14は、吸気ポート14bを開閉する吸気弁14d、吸気弁14dを駆動するインンテークカムを備えるインテークカムシャフト14e、可変吸気タイミング装置14f、排気ポート14cを開閉する排気弁14g、排気弁14gを駆動するエキゾーストカムを備えるエキゾーストカムシャフト14h、点火プラグ14i及びイグニッションコイルを含むイグナイタ14j等を収容している。イグナイタ14jは、後述する電気制御装置からの点火指示信号に応答して燃焼室内に露呈した点火プラグ14iの火花発生部に点火用の火花を発生させるようになっている。シリンダヘッド部14の上部には、ヘッドカバー14kが固定されている。
【0038】
可変吸気タイミング装置14fは、例えば、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)等に記載されているように周知の装置である。可変吸気タイミング装置14fは、図示しない作動油供給制御弁及び図示しない油圧ポンプを備え、これらによって作動油が給排されることにより、インテークカムシャフト14eに対するインテークカムの位相を所望の量だけ進角及び遅角させることができる。
【0039】
機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。この機械圧縮比変更機構15は、例えば、特開2003−206771号公報(上記特許文献2)、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)、特開2007−321589号公報及び特開2004−218522号公報等に開示された機構と同様の周知の機構である。以下、図1乃至図4を参照しながら簡単に説明する。
【0040】
機械圧縮比変更機構15は、ケース側軸受形成部15aと、ブロック側軸受形成部15bと、軸状駆動部15cと、を含んでいる。ケース側軸受形成部15aは、図2に示したように、複数の第1軸受形成部15a1と複数の第2軸受形成部15a2とにより構成される。第1軸受形成部15a1のそれぞれは、クランクケース11の左右の縦壁部に形成されている。第1軸受形成部15a1のそれぞれは、半円形の凹部を形成している。互いに隣接する第1軸受形成部15a1の間には、縦壁部を貫通する縦長孔15a3が形成されている。
【0041】
第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1が形成する半円形の凹部と同径の半円形の凹部を備えている。第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1の半円形の凹部と第2軸受形成部15a2の半円形の凹部とが互いに対向するように、第1軸受形成部15a1のそれぞれにボルトにより固定されるキャップである。
【0042】
複数の第1軸受形成部15a1及び複数第2軸受形成部15a2は、図1に示した円柱状の軸受孔(カム収納孔)H1を複数形成する。複数の軸受孔H1の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H1の軸線は、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びる。
【0043】
ブロック側軸受形成部15bのそれぞれは、図1乃至図3に示したように、略直方体であり、円柱状の軸受孔H2を備える部材である。ブロック側軸受形成部15bは、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、クランクケース11の縦壁部に形成された縦長孔15a3内に収容される。ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13の左右の側壁部にボルト固定される。このような構成により、軸受孔H1及び軸受孔H2は、シリンダ13aの配列方向に沿って交互に配列される。
【0044】
縦長孔15a3のシリンダ軸線CC方向の長さは、ブロック側軸受形成部15bのシリンダ軸線CC方向の長さより長く設定されている。これにより、ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13と一体的となってクランクケース11に対してシリンダ軸線CC方向に移動可能となっている。
【0045】
総てのブロック側軸受形成部15bがシリンダブロック13に固定されたとき、ブロック側軸受形成部15bのそれぞれが備える軸受孔H2の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H2の軸線は、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びている。シリンダブロック13の左の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線とシリンダブロック13の右の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線との距離は、クランクケース11の左側に形成される軸受孔H1の軸線とクランクケース11の右側に形成される軸受孔H1の軸線との距離と同一である。
【0046】
一方、軸状駆動部15cは、軸受孔H1及び軸受孔H2に挿通される。軸状駆動部15cは、図2及び軸状駆動部15cの断面図である図4に示したように、小径の軸部15c1と、固定円筒部15c2と、回転円筒部15c3と、を備えている。
【0047】
固定円筒部15c2は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態にて軸部15c1に固定されている。固定円筒部15c2は、軸部15c1よりも大径であって且つ軸受孔H1と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。固定円筒部15c2は、クランクケース11のケース側軸受形成部15aに設けられた軸受孔H1に収容される。固定円筒部15c2は、その中心軸回りに軸受孔H1の壁面に当接しながら回転する。
【0048】
回転円筒部15c3は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態で軸部15c1に回転可能に取り付けられている。回転円筒部15c3は、軸部15c1及び固定円筒部15c2よりも大径であって軸受孔H2と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。回転円筒部15c3は、シリンダブロック13に固定されたブロック側軸受形成部15bに設けられた軸受孔H2に収容される。回転円筒部15c3は、軸受孔H2の壁面に当接しながら回転する。なお、左右一対の軸状駆動部15c、左右の軸受孔H1及び左右の軸受孔H2は、複数のシリンダ軸線CCを通る平面に関して互いに鏡像の関係を有している。
【0049】
更に、軸状駆動部15cのそれぞれは、図2に示したように、その軸線方向中央位置近傍にギア15c4を備えている。ギア15c4は、軸部15c1の中心軸に対して偏心し、且つ、固定円筒部15c2(従って、軸受孔H1)と同軸となるように軸部15c1に固定されている。即ち、ギア15c4の回転中心軸は固定円筒部15c2の中心軸と一致している。一対のギア15c4のそれぞれには、図示しない一対のウォームギアのそれぞれが噛合している。そのウォームギアはクランクケース11に固定された図示しない単一のモータ(図5に示したモータ15Mを参照。)の出力軸に取り付けられている。一対のウォームギアは、互いに逆方向に回転する螺旋溝を有している。従って、一対の軸状駆動部15cは、モータを回転させたとき、各固定円筒部15c2の中心軸周りに互いに逆方向に回転するようになっている。
【0050】
図4は、クランクケース11及びシリンダブロック13の前面Pf側からみて右側に位置する軸状駆動部15cの動きを概念的に示した図である。例えば、図4の(A)に示したように、固定円筒部15c2の中心c2、軸部15c1の中心c1及び回転円筒部15c3の中心c3が、この順に同一直線上に位置している場合、クランクケース11(軸受孔H1の中心)とシリンダブロック13(軸受孔H2の中心)との距離Dは距離D1となって、最大の距離となる。従って、ピストン13bが上死点位置にあるときの燃焼室の容積は大きくなる。この結果、内燃機関10の機械圧縮比は低く(小さく)なる。
【0051】
図4の(A)に示した状態からモータが駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(B)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D2となる。更に、図4の(B)に示した状態からモータが同一回転方向に駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(C)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D3となる。距離D3は距離D2よりも小さく、距離D2は距離D1よりも小さい。従って、図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(A)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。図4の(C)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。
【0052】
このような構造を備える機械圧縮比変更機構15は、後述する電気制御装置からの電動モータ15M(機械圧縮比変更機構のアクチュエータ)への駆動信号に応じて、シリンダブロック13とクランクケース11との距離を変更し、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。
【0053】
機関10は、図1に示したように、燃料噴射弁(インジェクタ)16を備えている。燃料噴射弁16は、インテークマニホールド21の枝部に固定されている。燃料噴射弁16は燃料噴射指示信号に応答して、その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を吸気ポート14b内に噴射するようになっている。図5に示したように、燃料噴射弁16は各気筒毎に設けられている。
【0054】
機関10は、図5に示したように、燃焼室にガソリン混合気を供給するための吸気系統20と、燃焼室からの排ガスを外部に放出するための排気系統30と、を含んでいる。
【0055】
吸気系統20は、前述したインテークマニホールド21、吸気管(吸気ダクト)22、エアフィルタ23、スロットル弁24及びスロットル弁アクチュエータ24aを備えている。
インテークマニホールド21は、複数の枝部21aとサージタンク21bとからなっている。各枝部21aの一端は各吸気ポート14bに接続され、各枝部21aの他端はサージタンク21bに接続されている。吸気管22はサージタンク21bに接続されている。インテークマニホールド21及び吸気管22は、各吸気ポート14bとともに吸気通路を構成している。エアフィルタ23は吸気管22の端部に設けられている。スロットル弁24は吸気管22に回動可能に設けられ、回動することにより吸気管22が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)24aは、DCモータからなり、電気制御装置50からの指示信号に応答してスロットル弁24を回転駆動するようになっている。
【0056】
排気系統30は、エキゾーストマニホールド31、エキゾーストパイプ(排気管)32及び触媒33を備えている。
エキゾーストマニホールド31は、各排気ポート14cに接続された複数の枝部31aと、それらの枝部31aが集合した集合部31bと、を備えている。エキゾーストパイプ32は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bに接続されている。エキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32は、各排気ポート14cとともに排気経路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド31の集合部31bとエキゾーストパイプ32とが形成する排ガスを通過させるための経路を、便宜上「排気通路」とも称呼する。
【0057】
触媒33は、ジルコニア等のセラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(白金及びロジウム等)」及び「セリア(CeO2)等の酸素吸蔵物質」を担持する三元触媒である。触媒33は、その貴金属の温度が活性温度以上である場合(即ち、触媒が活性化している場合)、機関10から排出され且つ触媒33に流入する未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進する。従って、触媒33が活性化していて且つ機関の排ガスの空燃比(即ち、触媒33に流入するガスの空燃比)が理論空燃比であるとき、触媒33は排ガス中の未燃物及び窒素酸化物を同時に高い浄化率にて浄化することができる。上記貴金属の活性温度は触媒33の活性温度(許容温度)とも称呼され、例えば600℃程度である。
【0058】
更に、第1制御装置は、図5に示したように、熱線式エアフローメータ41、機関回転速度センサ42、ストロークセンサ43、上流側空燃比センサ44、下流側空燃比センサ45、アクセル開度センサ46、ブレーキスイッチ47、水温センサ48及び触媒温度センサ49を備えている。また、第1制御装置は、機関10を搭載した車両の速度SPDを表す信号を出力する車速センサ(図示省略)、及び、スロットル弁24の開度を検知しスロットル弁開度TAを表す信号を出力するスロットルポジションセンサ(図示省略)を備えている。
【0059】
エアフローメータ41は、吸気管22内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
【0060】
機関回転速度センサ42は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ42から出力される信号は電気制御装置50により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置50は、機関回転速度センサ42及び図示しないカムポジションセンサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0061】
ストロークセンサ43は、クランクケース11(例えば、クランクケース11の上端)とシリンダブロック13(例えば、シリンダブロック13の下端)との距離を計測し、その距離STを表す信号を出力するようになっている。電気制御装置50は、距離STに基づいて機関10の実際の機械圧縮比εmactを取得することができる。
【0062】
上流側空燃比センサ44は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bと触媒33との間の位置においてエキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ44は、上流側空燃比センサ44が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。より具体的に述べると、上流側空燃比センサ44は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ44は、被検出ガスの空燃比A/Fが大きくなる(リーンとなる)ほど増大する出力値Vabyfsを出力するようになっている。電気制御装置50は、この出力値Vabyfsに基づいて検出空燃比abyfsを取得するようになっている。
【0063】
下流側空燃比センサ45は、触媒33の下流においてエキゾーストパイプ32(主通路部)に配設されている。より詳細には、下流側空燃比センサ45は、触媒33の下流におけるエキゾーストパイプ32に配設されている。下流側空燃比センサ45は、下流側空燃比センサ45が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(即ち、触媒33から流出した排ガスである被検出ガス)の空燃比に応じた出力値Voxsを出力するようになっている。
【0064】
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ45は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ45は、酸素濃度センサとも称呼される。下流側空燃比センサ45は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)(=Vstoich)の電圧を出力するようになっている。更に、下流側空燃比センサ45は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する)電圧を出力するようになっている。
【0065】
アクセル開度センサ46は、運転者によって操作されるアクセルペダルApの操作量を検出し、アクセルペダルApの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
ブレーキスイッチ47は、ブレーキペダルBpが操作されたとき(制動操作があったとき)オン信号(Hi信号)を出力し、ブレーキペダルBpが操作されていないとき(制動操作がないとき)オフ信号(Lo信号)を出力するようになっている。
水温センサ48は、機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
触媒温度センサ49は、触媒33の温度を検出し、触媒温度TCSを表す信号を出力するようになっている。
【0066】
電気制御装置50は、CPU、ROM、RAM、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0067】
電気制御装置50のインターフェースは、前記センサ41〜49と接続され、CPUにセンサ41〜49からの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置50のインターフェースは、CPUの指示に応じて、可変吸気タイミング装置14f、各気筒のイグナイタ14j、各気筒の燃料噴射弁16、スロットル弁アクチュエータ24a及び機械圧縮比変更機構15の電動モータ15M等に指示信号及び/又は駆動信号等を送出するようになっている。
【0068】
次に、上述のように構成された第1制御装置の作動について説明する。
【0069】
(制御の概要)
第1制御装置は、機関の運転状態を表す運転状態パラメータ(例えば、後述する筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NE)に基づいて基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する。基本目標機械圧縮比εmtgtbは、単に「基本機械圧縮比」とも称呼される。通常運転時、この基本目標機械圧縮比εmtgtbが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに設定される。第1制御装置は、実際の機械圧縮比εmactが「設定された目標機械圧縮比εmtgt」に一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示を与える。
【0070】
一方、第1制御装置は、機関に所定の高圧縮比運転要求が発生したとき、以下の条件1及び条件2の何れかが成立した場合、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量を加えた機械圧縮比(増大後機械圧縮比)」又は「基本機械圧縮比と増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する。そして、第1制御装置は、実際の機械圧縮比εmactが設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示を与える。なお、以下では、最終的な目標機械圧縮比εmtgtが増大後機械圧縮比に設定されている状態における運転を「高圧縮比運転」と称呼する。
【0071】
(条件1)目標機械圧縮比を増大後機械圧縮比に設定することにより実際の機械圧縮比を増大させる場合における「触媒から排出される特定成分の増加量(排気成分増加量)」が所定の許容値以下であると推定されるとき。
(条件2)上記条件1が成立しない場合、上記高圧縮比運転要求が消滅したと判定された時点から所定時間以内において所定の更なる(別の、第2の)高圧縮比運転要求が発生したとき。
【0072】
上述したように、機械圧縮比が高い場合の排ガス温度は、機械圧縮比が低い場合の排ガス温度よりも低い。そのため、高圧縮比運転が実行されると触媒33の温度は低下する。そこで、第1制御装置は、上記条件1が成立するか否かを判定し、条件1が成立するときに高圧縮比運転を実行する。これにより、エミッションを良好に維持することができる。
【0073】
更に、第1制御装置は、上記条件1が成立しない場合であっても、上記条件2が成立するときには高圧縮比運転を実行する。これにより、機関に対する高圧縮比運転要求が非常に強いと考えられるときには高圧縮比運転が実行される。従って、エミッションを出来るだけ良好に維持しながらも高圧縮比運転が真に必要とされる場合に高圧縮比運転が実行されるので、機関の応答性を十分に高めることができる。
【0074】
(実際の作動)
以下、第1制御装置の実際の作動について説明する。
第1制御装置の電気制御装置50のCPUは、図6乃至図10にフローチャートにより示した各ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。
【0075】
より具体的に述べると、CPUは所定のタイミングにて図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進み、筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NEに対する基本目標機械圧縮比εmtgtbの関係を予め定めた基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(Mc,NE)に現時点における筒内吸入空気量Mcと機関回転速度NEとを適用することにより、現時点における基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する。
【0076】
次いで、CPUはステップ620に進んで、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。圧縮比増大フラグXUPは、その値が「0」であるとき、機関10の運転状態が上述した高圧縮比運転を実行すべきでない状態であることを示す。一方、圧縮比増大フラグXUPは、その値が「1」であるとき、機関10の運転状態が高圧縮比運転を実行すべきである状態であることを示す。更に、圧縮比増大フラグXUPの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときに実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0077】
いま、機関10は定常運転を行っており、機関10に高圧縮比運転要求が発生していないと仮定する。この仮定に従えば、現時点では機関10の運転状態は高圧縮比運転を実行すべきでない状態であるから、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」である。従って、CPUはステップ620にて「No」と判定し、ステップ630に進んでステップ610にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進んで、加速要求フラグXACCの値が「1」であるか否かを判定する。加速要求フラグXACCは、その値が「0」であるとき、機関10にその発生トルクの単位時間あたりの変化量を所定量以上とすることを要求する加速要求(即ち、高圧縮比運転要求)が発生していないことを示す。一方、加速要求フラグXACCは、その値が「1」であるとき、同加速要求が発生していることを示す。加速要求フラグXACCの値は、後述する図8に示した高圧縮比要求判定ルーチンのステップ820のみにおいて「1」に設定される。このステップ820は、加速要求が発生しているときにのみ実行されるようになっている。更に、加速要求フラグXACCの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0079】
上述の仮定に従えば、機関10は定常運転を行っているから、加速要求フラグXACCの値は「0」である。従って、CPUは、ステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、アクセル開度センサ46により検出されるアクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpが所定のアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上であるか否かを判定する。
ここで、アクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthは、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となったときに機関10に上記加速要求が発生していると判定できる値に設定されている。
【0081】
上述の仮定に従えば、機関10は定常運転を行っているから、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpは実質的にゼロであり、アクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さい。従って、CPUは、ステップ810にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、加速要求フラグXACCの値を「1」に設定するステップ820の処理は行われない。よって、加速要求フラグXACCの値は「0」に維持される。
【0082】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では、上述したように、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」である。従って、CPUは、ステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0083】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE及び実際の機械圧縮比εmactに対する排気温度Texの関係を予め定めた排気温度テーブルMapTex(Mc,NE,εmact)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE及び実際の機械圧縮比εmactを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
【0084】
次いで、CPUは、ステップ1020に進んで下記の(1)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)する。(1)式においてαは0よりも大きく1よりも小さい所定の定数、TempC(k)は更新される前の触媒温度TempC、TempC(k+1)は更新後の触媒温度TempCである。
TempC(k+1)=α・TempC+(1−α)・Tex ・・・(1)
CPUは、上記(1)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
以上に説明したように、機関10が定常運転を行っている場合、加速要求フラグXACCの値は「0」に維持される。更に、圧縮比増大フラグXUPの値も「0」に維持されるから、実際の機械圧縮比εmactが、基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(Mc,NE)に基づいて求められる基本目標機械圧縮比εmtgtbに一致させられる。
【0086】
この状態において、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となる加速要求が機関10に発生したと仮定する。このような状態は、例えば、機関10を搭載した車両が他の車両等の追い越しを図るとき、及び、停止状態から急発進するとき等において発生する。
【0087】
上述の仮定に従えば、CPUは図8のステップ800からステップ810に進んだとき、そのステップ810にて「Yes」と判定する。そして、CPUはステップ820に進んで加速要求フラグXACCの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ830に進んで現時点でのアクセルペダル開度Accpをアクセルペダル基準開度Accp0として格納し、ステップ840に進んで加速要求消滅後経過時間タイマT1(以下、「タイマT1」とも称呼する。)の値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続して発生している場合、CPUは図8のルーチンを実行する毎に、ステップ830にてその時点でのアクセルペダル開度Accpをアクセルペダル基準開度Accp0として格納することを繰り返す。同様に、CPUは、ステップ840にてタイマT1をゼロに設定することを繰り返す。即ち、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にアクセルペダル基準開度Accp0をその時点でのアクセルペダル開度Accpに更新し、タイマT1をゼロに更新する。
【0089】
この状態(加速要求フラグXACCの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進むと、CPUはそのステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進む。
そして、CPUは、以下の条件1及び条件2の何れかが成立したか否かを判定し、それらの条件の何れかが成立したときに圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定することにより、高圧縮比運転を実施する。
【0090】
(条件1)目標機械圧縮比を増大後機械圧縮比に設定することにより実際の機械圧縮比を増大させたと仮定した場合における触媒から排出される「特定成分の増加量(排気成分増加量)」が所定の許容値以下であると推定される場合。具体的には、図10のルーチンにより推定される触媒温度TempCが、所定の触媒閾値温度TempCth以上である場合。
(条件2)上記高圧縮比運転要求が消滅したと判定された時点から所定時間以内において所定の更なる高圧縮比運転要求が発生したとき。具体的には、上記タイマT1が所定の加速要求消滅後経過閾値時間T1th(以下、「閾値時間T1th」とも称呼する。)よりも小さい期間において、アクセルペダル開度Accpと加速要求消滅時のアクセルペダル開度(アクセルペダル基準開度Accp0)との差(以下、「アクセルペダル踏み増し量」とも称呼する。)が所定値DAよりも大きくなったとき。
以下、ステップ720以降の処理について、場合を分けて説明する。
【0091】
−条件1が成立する場合−
CPUは、図7のステップ720に進んだとき、そのステップ720にて触媒33の温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上であるか否かを判定する。条件1が成立する場合、このステップ720の判定条件は成立している。従って、CPUはそのステップ720にて「Yes」と判定し、ステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0092】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図6のステップ600から処理を開始し、ステップ610を経由してステップ620に進むと、CPUはそのステップ620にて「Yes」と判定する。その後、CPUはステップ650以降に進み、高圧縮比運転を実行する。具体的には、CPUは、そのステップ650において「ステップ610にて決定されている基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値」を、最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定する。
【0093】
次いで、CPUはステップ660に進み、前記ステップ650にて決定された目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMax以上であるか否かを判定する。目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMaxよりも小さい場合、CPUはステップ660にて「No」と判定し、ステップ640に直接進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0094】
これに対し、ステップ650にて設定された目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMax以上である場合、CPUはステップ660にて「Yes」と判定してステップ670に進み、目標機械圧縮比εmtgtに最大機械圧縮比εmMaxを設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、ステップ660及びステップ670の処理により、目標機械圧縮比εmtgtは最大機械圧縮比εmMaxよりも大きくならないように制御される。
【0095】
以上に説明したように、上記条件1が成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定され、高圧縮比運転が実行される。
【0096】
−条件2が成立する場合−
この場合においても、条件1が成立していると、CPUは図7のステップ720を経由してステップ730に進む。従って、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定されるから、上述したように高圧縮比運転が実行される。
【0097】
一方、条件1が成立していない場合、CPUは図7のステップ720に進んだとき、そのステップ720にて「No」と判定してステップ740に進む。
【0098】
CPUはステップ740にて、下記の(2)式に従ってタイマT1を更新・決定する。(2)式において、T1(k+1)はステップ740の今回の処理により更新されるタイマT1を表し、T1(k)はステップ740の今回の処理により更新される直前のタイマT1を表す。即ち、CPUは、今回の処理によりタイマT1を加速要求消滅後経過時間タイマ増分ΔT1(以下、「タイマ増分ΔT1」とも称呼する。)だけ増大する。
T1(k+1)=T1(k)+ΔT1 ・・・(2)
次いで、CPUはステップ750に進み、タイマT1が閾値時間T1thよりも小さいか否かを判定する。
【0099】
上述したように、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にタイマT1をゼロに更新している。従って、上記加速要求が継続している期間、ステップ740の処理が実行されたとしても、タイマT1は閾値時間T1th以上にならない。このため、CPUはステップ750にて「Yes」と判定してステップ760に進む。
【0100】
CPUは、ステップ760にて、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きいか否かを判定する。上述したように、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にアクセルペダル基準開度Accp0をその時点でのアクセルペダル開度Accpに更新している。従って、上記加速要求が発生している期間、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)は所定値DAよりも大きくならない。このため、CPUはステップ760にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、後述するステップ730の処理が実行されないので、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」に維持される。従って、高圧縮比運転は実行されない。
【0101】
この状態において、上記加速要求が消滅すると(即ち、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さくなると)、アクセルペダル基準開度Accp0がその加速要求消滅時でのアクセルペダル開度Accpに維持され、且つ、タイマT1はゼロに更新されなくなる。
【0102】
この結果、ステップ750の処理が繰り返し実行されることによりタイマT1の値は次第に増大する。そして、タイマT1の値が閾値時間T1thに到達する前の時点にて、運転者がアクセルペダルApを踏み込むことによりアクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きくなると、CPUはステップ750及びステップ760の両ステップにて「Yes」と判定する。この場合、CPUはステップ730に進み、そのステップ730にて圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。このような状態は、例えば、上記加速要求に対して高圧縮比運転が実行されなかったことに起因して機関10の出力トルクが不足し、運転者が機関10に更なる加速を要求した場合(アクセルペダルApを更に踏み込んだ場合)等において発生する。
【0103】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図6のルーチンを実行すると、上記条件1が成立する場合と同様、図6のステップ650乃至ステップ670を経てステップ640の処理がなされる。この結果、高圧縮比運転が実行される。
【0104】
一方、タイマT1が閾値時間T1thに到達するまでの期間において、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きくならなかった場合、CPUはステップ750にて「No」と判定してステップ770に進む。そして、CPUは、ステップ770にて加速要求フラグXACCの値を「0」に設定し、ステップ780に進んでタイマT1の値をゼロに設定する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」に維持されているから、高圧縮比運転は実行されない。
【0105】
また、このとき、加速要求フラグXACCの値が「0」に設定される。従って、これ以降の期間において加速要求フラグXACCが再び「1」に設定されるまでは、CPUが図7のルーチンを実行した場合、CPUはそのステップ700からステップ710に進んで「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを終了するようになる。
【0106】
更に、上記条件1及び条件2の何れが成立する場合においても、CPUは図9のルーチンを所定の時間の経過毎に繰り返し実行する。具体的には、CPUは、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進んで、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。
【0107】
現時点が、条件1及び条件2の何れかが成立して圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した直後であると仮定する。このとき、圧縮比増大フラグXUPの値は「1」であるから、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進む。そして、CPUは、以下の条件A乃至条件Dの何れかが成立するか否かを判定し、それらの条件の何れかが成立したとき、圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。この結果、高圧縮比運転が停止される。なお、以下では、後述する条件A乃至条件Dを「高圧縮比運転停止条件」とも称呼する。
【0108】
(条件A)機関10に定常走行要求が発生した場合。具体的には、「アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpの絶対値」が所定値δ1よりも小さくなった場合。
(条件B)機関10を搭載した車両の速度の変化が所定値よりも小さくなった場合。具体的には、「同速度の単位時間あたりの変化量ΔSPDの絶対値」が所定値δ2よりも小さくなった場合。
(条件C)機関10を搭載した車両の制動装置が操作された場合。具体的には、ブレーキペダルBpが操作されることにより、ブレーキスイッチ47からの出力信号がオフ信号からオン信号に変化した場合。
(条件D)圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した時点から所定時間が経過した場合。具体的には、下記の高圧縮比運転継続時間タイマT2(以下、「タイマT2」とも称呼する。)が所定の高圧縮比運転継続閾値時間T2th(以下、「閾値時間T2th」とも称呼する。)以上となった場合。
以下、ステップ920以降の処理について、場合を分けて説明する。
【0109】
−条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合−
CPUは、図9のステップ920に進んだとき、そのステップ920にて、現時点が圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した直後であるか否かを判定する。上述の仮定に従えば、CPUはステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進み、タイマT2にゼロを設定してステップ940に進む。
【0110】
CPUは、ステップ940にて下記の(3)式に従ってタイマT2を更新・決定する。(3)式において、T2(k+1)はステップ940の今回の処理により更新されるタイマT2を表し、T2(k)はステップ940の今回の処理により更新される直前のタイマT2を表す。即ち、CPUは、今回の処理によりタイマT2を高圧縮比運転継続時間タイマ増分ΔT2(以下、「タイマ増分ΔT2」とも称呼する。)だけ増大する。
T2(k+1)=T2(k)+ΔT2 ・・・(3)
【0111】
次いで、CPUはステップ950に進み、タイマT2が閾値時間T2th以上であるか否かを判定する。現時点はタイマT2がゼロに設定された直後であるから、タイマT2はゼロからタイマ増分ΔT2だけ増大された値となる。従って、タイマT2は閾値時間T2thよりも小さいから、CPUはステップ950にて「No」と判定してステップ960に進む。
【0112】
CPUは、そのステップ960にて「アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpの絶対値」が所定値δ1よりも小さいか否か、「機関10を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量ΔSPDの絶対値」が所定値δ2よりも小さいか否か、及び、「ブレーキスイッチ47からの出力信号」がオン信号であるか否かのうちの少なくとも一つが成立するか否かを判定する。上述の条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合、CPUは、そのステップ960にて「Yes」と判定し、ステップ980に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定された状態)において、CPUが図6のステップ600から処理を開始すると、CPUはステップ610乃至ステップ640へと進む。従って、基本目標機械圧縮比εmtgtbが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに設定され、実際の機械圧縮比εmactが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに一致するように電動モータ15Mに指示信号が送出される。
従って、上述の条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定され、高圧縮比運転が停止される。
【0114】
−条件Dが成立する場合−
一方、ステップ960にて上述の条件A乃至条件Cの何れも成立しない場合、CPUはそのステップ960にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、圧縮比増大フラグXUPの値は「1」に維持されるから、高圧縮比運転は継続する。
【0115】
上述の条件A乃至条件Cの何れも成立しない状態が継続すると、図9のステップ940の処理が繰り返し実行されるから、タイマT2はしだいに増大して閾値時間T2thに到達する(即ち、条件Dが成立する)。このとき、CPUが図9のステップ950に進むと、CPUはそのステップ950にて「Yes」と判定し、ステップ970に進んでタイマT2に「0」を設定する。次いで、CPUはステップ980に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定された状態)において、CPUが図6のルーチンを実行すると、上述の条件A乃至条件Cが成立する場合と同様、実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように電動モータ15Mに指示信号が送出される。
従って、上述の条件Dが成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定され、高圧縮比運転が停止される。
なお、第1制御装置は、上述の条件A乃至条件Dのうちの少なくとも一つ以上の条件を「高圧縮比運転停止条件」と判定するように構成されてもよい。
【0117】
以上、説明したように、第1制御装置は、
機関10の運転状態を表す運転状態パラメータ(例えば、機関回転数NE、筒内吸入空気量Mc及びアクセルペダル操作量Accp)に基づいて基本機械圧縮比εmtgtbを決定する基本機械圧縮比決定手段(図6のステップ610を参照。)と、
基本目標機械圧縮比εmtgtbを一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する高圧縮比運転要求発生判定手段(図8のステップ810を参照。)と、
前記高圧縮比運転要求が発生していないと判定されているときに基本目標機械圧縮比εmtgtbを最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定し、前記高圧縮比運転要求が発生していると判定されているときに基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた機械圧縮比である増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定する目標機械圧縮比設定手段(図6のルーチンを参照。)と、
機関10の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15に指示を送出する機械圧縮比制御手段(図6のステップ640を参照。)と、
を備える。
【0118】
そして、前記目標機械圧縮比設定手段は、
最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbから増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合に触媒33において浄化されることなく触媒33から排出される特定成分の増加量である排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段(図7のステップ720を参照。)と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合(図7のステップ710にて「Yes」と判定された場合)に前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されるとき(図7のステップ720にて「No」と判定されるとき)、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbに設定する機械圧縮比増大抑制手段(図6のルーチンを参照。)と、
を含む。
【0119】
更に、第1制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する第1加速要求が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定する(図8のステップ810にて「Yes」と判定する)ように構成される。
【0120】
また、第1制御装置は、排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなると推定されるとき、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。しかしながら、本発明の制御装置は、この場合、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比(即ち、εmtgtb<εmtgt<(εmtgtb+Δεm)となる機械圧縮比)」に設定するように構成してもよい。
【0121】
従って、第1制御装置は、機関10に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である第1加速要求)が発生した場合であっても、排気成分増加量が過度に大きくなると推定されるとき、機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。これにより、エミッションを良好に維持することができる。
【0122】
更に、第1制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記第1加速要求が発生したと判定した場合(図7のステップ710にて「Yes」と判定された場合)において、前記排気状態推定手段により前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されたとき(図7のステップ720にて「No」と判定されたとき)、同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間T1th以内において機関10の発生トルクを増大させる要求である第2加速要求が発生したか否かを判定するように構成され(図7のステップ740乃至ステップ780を参照。)、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記第2加速要求が発生したと判定されたとき(図7のステップ760にて「Yes」と判定されたとき)増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定するように構成される(図6のルーチンを参照。)。
【0123】
従って、第1制御装置は、機関10に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、加速要求)が発生した場合において排気成分増加量が過度に大きくなると判定されたとき、その高圧縮比運転要求が発生した時点においては機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。しかしながら、上記高圧縮比運転が消滅したと判定された時点から所定時間(第1所定時間T1th)以内の期間において更なる高圧縮比運転要求が発生した場合、機械圧縮比は増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)にまで増大させられる。これにより、機関10に対する加速要求が非常に強いと考えられるときには機関10の出力トルクを応答性良く増大させることができる。
【0124】
更に、第1制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度以上よりも低いとき、前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成される(図7のステップ720を参照。)。
【0125】
前述したように、機械圧縮比が増大させられる時点での触媒温度がその活性温度に対して十分に高い場合、機械圧縮比の増大により触媒温度が低下しても触媒の排ガス浄化性能を要求される範囲内に維持することができる。従って、第1制御装置は、触媒の温度が所定の許容温度以上であるとき、機関10に対する高圧縮比運転要求に応じて機械圧縮比を増大させる。これにより、第1制御装置は、機関10への高圧縮比運転要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる。
【0126】
更に、第1制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定した時点以降において、同時点から第2所定時間T2thが経過したか否か(図9のステップ950を参照。)、機関10の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か(図9のステップ960における「|ΔAccp|<δ1」を参照。)、機関10を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か(図9のステップ960における「|ΔSPD|<δ2」を参照。)、及び、機関10を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か(図9のステップ960における「ブレーキスイッチ オン」を参照。)からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段(図9のルーチンを参照。)と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合(図9のステップ950及びステップ960の何れかにおいて「Yes」と判定された場合)に最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtb」又は「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)との間の機械圧縮比」に設定する機械圧縮比復帰手段(図9のステップ980及び図6のルーチンを参照。)と、
を含むように構成される。
【0127】
従って、第1制御装置は、所定の高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定した場合、高圧縮比運転を直ちに停止する。これにより、高圧縮比運転を必要な期間にのみ実行することができ、エミッション及び燃費を良好にすることができる。
【0128】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、そのCPUが図7の分岐点A、分岐点B及び分岐点Cの間の処理に代わる図11にフローチャートにより示した処理を実行する点においてのみ、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
【0129】
第2制御装置のCPUは、「図7の分岐点A、分岐点B及び分岐点Cの間の処理を図11にフローチャートにより示した処理に置換して得られる圧縮比増大フラグ設定ルーチン」を所定の時間毎に繰り返し実行するようになっている。第2制御装置の具体的な作動について、以下に記載する。
【0130】
第2制御装置のCPUは、第1制御装置と同様、図6乃至図10の処理を所定の時間毎に繰り返し実行している。
ここで、機関10が定常運転を行っている場合(即ち、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」である場合)に図6のルーチンが実行されたと仮定する。
この仮定に従えば、第1制御装置と同様、CPUは図6のステップ620にて「No」と判定し、ステップ630に進んでステップ610にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで、実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0131】
更に、この定常運転がなされている機関10に対してアクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となる加速要求が発生し、この加速要求が所定時間継続した後に同加速要求が消滅した(即ち、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さくなった)ときに図7のルーチンが実行されたと仮定する。
【0132】
このとき、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、そのステップ710にて「Yes」と判定する。次いで、CPUは分岐点Aを経由して図11のステップ1110に進み、図6のステップ610にて設定された「現時点の基本目標機械圧縮比εmtgtb」を機械圧縮比εmとして格納し、ステップ1120に進む。CPUはそのステップ1120にて、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する排気中の窒素酸化物(NOx)の量の関係を予め定めた窒素酸化物量推定関数f(Mc,NE,εm,TempC)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、触媒温度TempC、及び、ステップ1110にて格納した機械圧縮比εmを適用することにより、「現時点における排気中の窒素酸化物の量」を取得(推定)し、取得した値を第1窒素酸化物量NOxbeforeに格納する。
【0133】
次いで、CPUはステップ1130に進んで上述の基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値(即ち、増大後機械圧縮比)を機械圧縮比εmとして格納し、ステップ1140に進む。即ち、CPUはステップ1130において、現時点での運転状態パラメータに基づいて決定される基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値を仮想的に準備し、この値を機械圧縮比εmに設定する。CPUはそのステップ1140にて、上記ステップ1120と同様に、窒素酸化物量推定関数f(Mc,NE,εm,TempC)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、触媒温度TempC、及び、ステップ1130にて格納した機械圧縮比εmを適用することにより、「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の窒素酸化物の量」を取得(推定)し、取得した値を第2窒素酸化物量NOxafterに格納する。
【0134】
そして、CPUはステップ1150に進み、第2窒素酸化物量NOxafterと第1窒素酸化物量NOxbeforeとの差(即ち、排気成分増加量)が窒素酸化物増大閾値量NOxth(以下、「閾値量NOxth」とも称呼する。)以下であるか否かを判定する。この差が閾値量NOxth以下である場合、CPUはそのステップ1150にて「Yes」と判定し、分岐点Cを経由して図7のステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPを「1」に設定する。その後、CPUは図7のステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(圧縮比増大フラグXUPが「1」の状態)にて図6のルーチンが実行された場合、上述の第1制御装置と同様、高圧縮比運転が実行される。
【0135】
一方、図11のステップ1150にて、第2窒素酸化物量NOxafterと第1窒素酸化物量NOxbeforeとの差(即ち、排気成分増加量)が閾値量NOxthよりも大きい場合、CPUはそのステップ1150にて「No」と判定し、分岐点Bを経由して図7のステップ740に進む。
その後、CPUは、第1実施形態と同様、図7のステップ740乃至ステップ780において「上記加速要求が消滅した時点から閾値時間T1th以内にアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくなるか否か」を判定する。
【0136】
具体的には、閾値時間T1th以内においてアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくなる場合、CPUは図7のステップ760にて「Yes」と判定し、ステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(圧縮比増大フラグXUPが「1」の状態)にて図6のルーチンが実行された場合、上述の第1制御装置と同様、高圧縮比運転が実行される。
【0137】
一方、アクセルペダル踏み増し量が所定値DA以下である場合、CPUは図7のステップ760にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
この場合、圧縮比増大フラグXUPは「0」であるから、高圧縮比運転は実行されない。
【0138】
また、上記加速要求が消滅した時点から閾値時間T1thが経過するまでの期間においてアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくならなかった場合、CPUは図7のステップ750にて「No」と判定し、ステップ770及びステップ780を経由してステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合においても圧縮比増大フラグXUPは「0」であるから、高圧縮比運転は実行されない。
なお、第2制御装置は第1制御装置と同様の処理にて高圧縮比運転を停止する。
【0139】
以上に説明したように、第2制御装置は、
最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbから増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、触媒33において浄化されることなく触媒33から排出される特定成分(NOx)の増加量である排気成分増加量(NOxafter−NOxbefore)が所定の許容値ΔNOxthよりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段(図11のステップ1110乃至ステップ1150を参照。)を備える。
【0140】
また、第2制御装置は、第1制御装置と同様、排気成分増加量(NOxafter−NOxbefore)が所定の許容値ΔNOxthよりも大きくなると推定されるとき、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比(即ち、εmtgtb<εmtgt<(εmtgtb+Δεm)となる機械圧縮比)」に設定するように構成してもよい。
【0141】
従って、第2制御装置は、第1制御装置と同様、機関に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である加速要求)が発生した場合であっても、排気成分増加量が過度に大きくなると推定されるとき、機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。更に、第2制御装置は、この排気成分増加量をより直接的に評価することができる。これにより、第2制御装置は、エミッションを良好に維持しつつ、機関の応答性能を必要以上に低下させないように制御することができる。
【0142】
上述の第2制御装置は、その排気状態判定手段において、「現時点における排気中の窒素酸化物の量(NOxbefore)」と「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の窒素酸化物の量(NOxafter)」との差(NOxafter−NOxbefore)を排気成分増加量(以下、便宜上、「排気成分増加量(NOx)」とも称呼する。)とし、この排気成分増加量(NOx)が所定の許容値NOxthよりも大きいか否かを判定する。
しかしながら、これに代え、排気成分増加量を「排気中の炭化水素(HC)の量」或いは「排気中の一酸化炭素(CO)の量」に基づいて評価してもよい。
【0143】
具体的には、第2制御装置は、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する「排気中の炭化水素(HC)の量」の関係を予め定めた炭化水素量推定関数g(Mc,NE,εm,TempC)に基づいて「現時点における排気中の炭化水素の量(HCbefore)」及び「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の炭化水素の量(HCafter)」を取得(推定)し、これらの差(HCafter−HCbefore)が所定の許容値HCthよりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。なお、以下では、便宜上、上述した「炭化水素量の差」を「排気成分増加量(HC)」とも称呼する。
【0144】
また、第2制御装置は、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する「排気中の一酸化炭素(CO)の量」の関係を予め定めた一酸化炭素量推定関数h(Mc,NE,εm,TempC)に基づいて「現時点における排気中の一酸化炭素の量(CObefore)」及び「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の一酸化炭素の量(COafter)」を取得(推定)し、これらの差(COafter−CObefore)が所定の許容値COthよりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。なお、以下では、便宜上、上述した「一酸化炭素量の差」を「排気成分増加量(CO)」とも称呼する。
【0145】
更に、第2制御装置は、上述した排気成分増加量(NOx)、排気成分増加量(HC)及び排気成分増加量(CO)の全て(以下、便宜上、「三種の増加量」とも称呼する。)を取得(推定)し、それらのうちの少なくとも一つが所定の許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。また、第2制御装置は、三種の増加量のうちの少なくとも二つが各許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよく、それらの全てが各許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。
【0146】
以上、説明したように、本発明の各実施形態によれば、機関10に対して機械圧縮比の変更が要求された場合において、機械圧縮比変更の要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる。
【0147】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記各実施形態においては、高圧縮比運転が実行される際の機械圧縮比の増大量として「Δεm(定数)」を採用した。これに代え、機械圧縮比の増大量として、機関10に加速要求が発生した時点での機関の運動状態パラメータ(アクセルペダル操作量、スロットル弁開度及び充填率等)に基づき決定される「変数」を採用してもよい。
【0148】
また、上記各実施形態においては、高圧縮比運転の停止条件を複数例示している。しかしながら、高圧縮比運転の停止条件は上述の例に限られず、機関への高圧縮比運転要求が消滅又は低下したと判断できる情報の何れを用いてもよい。
更に、上記各実施形態においては、触媒33の温度を排気温Texに基づいて推定している(図10を参照。)。これに代え、例えば、触媒温度センサ49によって触媒33の温度TempCを直接検知してもよい。
更に、上記各実施形態において、タイマ増分ΔT1及びタイマ増分ΔT2は「定数」であったが、機関の運転状態パラメータ等に基づいて決定される「変数」としてもよい。
【0149】
また、上記各実施形態においては、機械圧縮比変更機構として図1乃至図4に示す機構を採用している。しかしながら、機械圧縮比変更機構として、例えば、上述した特許文献1乃至特許文献5に記載されている機構を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置が適用される可変圧縮比内燃機関の概略断面図である。
【図2】図2に示した内燃機関の機械圧縮比変更機構を示す同機関の分解斜視図である。
【図3】図2に示した内燃機関のシリンダブロックの斜視図である。
【図4】図2に示した機械圧縮比変更機構の作動を説明するための図である。
【図5】図2に示した内燃機関の概略平面図である。
【図6】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する機械圧縮比制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する圧縮比増大フラグ設定ルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する高圧縮比要求判定ルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する圧縮比増大フラグ解除ルーチンを示したフローチャートである。
【図10】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する触媒温度推定ルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンの一部を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0151】
10…可変圧縮比内燃機関、11…クランクケース、11a…クランクシャフト、13…シリンダブロック、13a…シリンダ、13b…ピストン、14…シリンダヘッド部、14c…排気ポート、14g…排気弁、15…機械圧縮比変更機構、15M…アクチュエータ(電動モータ)、16…燃料噴射弁(インジェクタ)、20…吸気系統、30…排気系統、31…エキゾーストマニホールド、32…エキゾーストパイプ、33…触媒、50…電気制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に触媒を有するとともに機械圧縮比を変更することができる可変圧縮比変更機構を有する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転状態に応じて機械圧縮比を変更するための可変圧縮比変更機構を有する内燃機関が提案されている。このような可変圧縮比内燃機関は、例えば、以下の何れかの手法等に基づいて機械圧縮比を変更する。
(1)リンク機構を用いてピストンの移動量(ピストンが下死点位置から上死点位置にまで移動する際の移動距離)を変更させる(例えば、特許文献1を参照。)。
(2)クランクケースに対するシリンダブロックの傾斜角を変更させる。
(3)シリンダブロックをクランクケースに対してシリンダの軸線方向に移動させる(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。
(4)ピストンとクランク軸との距離を変更させる(例えば、特許文献4及び特許文献5を参照)。
【0003】
従来の可変圧縮比内燃機関の制御装置の一つは、所定時間の経過毎に検出される運転状態パラメータ(エンジン回転数、負荷等)に基づいて目標機械圧縮比を決定し、目標機械圧縮比が決定された後、即座に目標機械圧縮比と実際の機械圧縮比とを一致させる処理を行うようになっている(特許文献5を参照。)。
【特許文献1】特開2003−328794号公報
【特許文献2】特開2003−206771号公報
【特許文献3】特開2007−303423号公報
【特許文献4】特開平2−163429号公報
【特許文献5】特開2004−278415号公報
【発明の開示】
【0004】
ところで、機械圧縮比を一時的に増大させることにより、例えば、機関の加速性能等を向上させることが検討されている。しかしながら、発明者は、このような高圧縮比運転要求に応じて即座に機械圧縮比を変更するとエミッションが悪化する場合があることを見出した。以下、この点について述べる。
【0005】
可変圧縮比内燃機関の排気通路には、通常の内燃機関と同様、排気浄化用の触媒装置(三元触媒、以下、単に「触媒」とも称呼する。)が配設されている。触媒は、その温度がその活性温度以上である場合、触媒に流入する排ガスを効率良く浄化することができる。換言すると、触媒の温度がその活性温度よりも低下している場合、触媒は十分な排ガス浄化性能を発揮することができない。
【0006】
例えば、触媒の温度がその活性温度近傍であるとき、機関に対して機械圧縮比の増大が要求されたと仮定する。機械圧縮比が高い場合の排ガス温度は、機械圧縮比が低い場合の排ガス温度よりも低い。従って、触媒の温度がその活性温度近傍である場合、機関に対する要求に応じて機械圧縮比を即座に増大させると、触媒の温度がその活性温度よりも低下する。この結果、触媒が排ガスを効率良く浄化することができないという問題が生じる。
【0007】
そこで、発明者は、機関に対して機械圧縮比の変更が要求された場合、機械圧縮比の変更によりエミッションが大幅に悪化することが予測されるときには機械圧縮比を変更させない方が、エミッションを良好にすることができるとの知見を得た。
【0008】
一方、機関に対して機械圧縮比の変更が要求された場合に機械圧縮比を変更させないことは、ドライバビリティ低下の原因となる虞がある。そこで、発明者は、所定の条件が成立するときには機械圧縮比を一時的に増大することにより、エミッションの低下を抑えるとともにドライバビリティを良好にすることができるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。即ち、本発明の目的は、機関に対して機械圧縮比を増大させる要求が発生した場合において、その要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0010】
より具体的に述べると、本発明の可変圧縮比内燃機関の制御装置は、
排気通路に配設されるとともに排ガス中の特定成分を浄化する触媒と、「ピストンが上死点位置にあるときの燃焼室容積」に対する「同ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積」の比である「機械圧縮比」を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を有する可変圧縮比内燃機関に適用される。
【0011】
この制御装置は、
前記機関の運転状態を表す運転状態パラメータに基づいて基本機械圧縮比を決定する「基本機械圧縮比決定手段」と、
前記基本機械圧縮比を一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する「高圧縮比運転要求発生判定手段」と、
「前記高圧縮比運転要求が発生していない」と判定されているときに前記基本機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定し、「前記高圧縮比運転要求が発生している」と判定されているときに前記基本機械圧縮比に「所定量」を加えた機械圧縮比である「増大後機械圧縮比」を最終的な目標機械圧縮比として設定する「目標機械圧縮比設定手段」と、
前記機関の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように前記機械圧縮比変更機構に指示を送出する「機械圧縮比制御手段」と、
を備える。
【0012】
更に、前記「目標機械圧縮比設定手段」は、
前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比から前記増大後機械圧縮比に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、前記触媒において浄化されることなく同触媒から排出される前記特定成分の増加量である「排気成分増加量」が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する「排気状態推定手段」と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合に「前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなる」と推定されるとき、前記最終的な目標機械圧縮比を「前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する「機械圧縮比増大抑制手段」と、
を備える。
【0013】
上記構成によれば、機関に所定の高圧縮比運転要求が発生した場合、「機械圧縮比が基本機械圧縮比から増大後機械圧縮比へ変更されたときの触媒から排出される排ガス中の特定成分の増加量(即ち、排気成分増加量)が所定の許容値よりも「大きく」なる」と推定されるとき、機械圧縮比は「基本機械圧縮比」又は「基本機械圧縮比と増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定される。即ち、この場合、機関に高圧縮比運転要求が発生したとしても機械圧縮比は増大後機械圧縮比にまでは増大させられない。換言すると、「排気成分増加量が所定の許容値「以下」になる」と推定される場合、機械圧縮比は「増大後機械圧縮比」に設定される。この結果、本発明の制御装置は、エミッションを良好に維持し、且つ、高圧縮比運転要求に出来るだけ応えることにより機関の性能を向上することができる。
【0014】
ここで、「高圧縮比運転要求」としては、例えば、機関への加速要求、及び、フューエルカット以外においてエンジンブレーキ力を増大させるための機械圧縮比増大要求等が挙げられる。
「排ガス中の特定成分」とは、例えば、窒素酸化物(NOx)及び未燃物(HC,CO等)であって、排ガス清浄化の観点から排ガス中におけるその含有量を低減することが求められる物質である。
【0015】
高圧縮比運転要求が発生した場合に基本機械圧縮比に加えられる「所定量」は、例えば、機関に要求される高圧縮比運転要求の大きさ等に基づいて決定することができる。また、高圧縮比運転要求の大きさは、例えば、アクセルペダル操作量の時間微分値、及び、筒内吸入空気量の時間微分値等の「機関の負荷の変化量(単位時間あたりの機関の負荷の増加量)」に基づいて決定することができる。
【0016】
排気成分増加量の「許容値」は、例えば、機関に求められる排ガス浄化性能に基づいて決定することができる。また、「排気成分増加量が許容値よりも大きいか否か」は、高圧縮比運転要求発生時の触媒の温度に基づいて判定することができる。更に、「排気成分増加量が許容値よりも大きいか否か」は、機関の運転状態パラメータ(例えば、負荷、回転数、機械圧縮比及び触媒温度等)に基づいて排気成分の増加量を推定し、その推定された増加量に基づいて判定することができる。
【0017】
この制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する「第1加速要求」が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定するように構成されることが好適である。
【0018】
上述したように、機関に対する高圧縮比運転要求には、機関への加速要求、及び、エンジンブレーキ力増大のための機械圧縮比増大要求等が挙げられる。上記構成によれば、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である「加速要求」に対して本発明の制御装置を適用することができる。これにより、機関に加速要求が発生した場合、エミッションの悪化が予想されるときには機械圧縮比が増大されない(即ち、機械圧縮比の増大が禁止される)か又は機械圧縮比の増大量が小さくされる(即ち、機械圧縮比の増大が抑制される)。その結果、エミッションを良好に維持しながら機関の加速応答性を出来るだけ向上することができる。
【0019】
ここで、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量の「第1所定量」は、機関のエミッションと機関の加速応答性能とを勘案した適値に設定することができる。
また、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量の大きさは、例えば、「アクセルペダル操作量の時間微分値」、及び、「筒内吸入空気量の時間微分値等の機関の負荷の変化量(単位時間あたりの機関の負荷の増加量)」に基づいて決定することができる。
【0020】
このような制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
「前記第1加速要求が発生した」と判定した場合において前記排気状態推定手段により「前記排気成分増加量が前記許容値よりも「大きく」なる」と推定されたとき、「同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間以内」において前記機関の発生トルクを増大させる要求である「第2加速要求」が発生したか否かを判定するように構成され、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記「第2加速要求が発生した」と判定されたとき「前記最終的な目標機械圧縮比を前記増大後機械圧縮比に設定する」ように構成されることが好適である。
【0021】
前述したように、「排気成分増加量が所定の許容値よりも「大きく」なる」と推定される場合、機関に加速要求が発生したとしても機械圧縮比の増大は禁止又は抑制される。しかしながら、機関に第1回目の加速要求(第1加速要求)が発生した後の所定時間以内において更に第2回目の加速要求(第2加速要求)が発生した場合、機関に対する加速要求が非常に強いと考えられる。
【0022】
そこで、上記構成によれば、機関に加速要求(第1加速要求)が発生したときに「排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなる」と判定されたために機械圧縮比の増大が禁止又は抑制され、その後、加速要求が消滅したと判定された時点から所定時間(第1所定時間)以内に更なる加速要求(第2加速要求)が発生した場合、機械圧縮比は増大後機械圧縮比にまで増大させられる。この結果、機関に対する加速要求が非常に強いと考えられるときには機械圧縮比が増大させられるから、機関の出力トルクを応答性良く増大させることができる。従って、運転者の強い加速要求に適切に対応し得る内燃機関を提供することができる。
【0023】
ここで、「第2加速要求」は、例えば、以下のように決定することができる。即ち、第1加速要求が消滅した時点でのアクセルペダル位置を基準位置とし、この基準位置に対してアクセルペダル位置が所定量だけ増加した場合、「第2加速要求」発生したと判定することができる。なお、このときの「所定量」は、機関に求められる応答性能等に応じて決定することができる。
また、「第2加速要求」は、「第1加速要求」と同様、機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量に基づいて決定することもできる。この場合、「第2加速要求」は「第1加速要求」と同じでもよく、相違してもよい。
【0024】
更に、このような制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき、前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成される。
【0025】
前述したように、機械圧縮比が増大させられた場合、排気温度が低下するのに伴って触媒の温度は低下する。しかしながら、機械圧縮比が増大させられる時点での触媒温度がその活性温度に対して十分に高い場合、機械圧縮比の増大により触媒温度が低下しても触媒の排ガス浄化性能を要求される範囲内に維持することができる。
【0026】
そこで、上記排気状態推定手段は、前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定する。換言すると、「触媒の温度が所定の許容温度以上であれば排気成分増加量が許容値以下である」と判定される。これにより、触媒の温度が所定の許容温度以上であるとき、制御装置は、機関に対する高圧縮比運転要求に応じて機械圧縮比を直ちに増大させる。この結果、エミッションの悪化を招くことなく機関への高圧縮比運転要求にできる限り応えることができる。
【0027】
ここで、触媒の「許容温度」は、触媒の活性温度よりも高い温度であり、高圧縮比運転を実行した場合にも触媒温度が活性温度以下とならないと推定できる温度に設定することが好ましい。
【0028】
更に、このような制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記増大後機械圧縮比を前記最終的な目標機械圧縮比として設定した時点以降において、
(A)同時点から第2所定時間が経過したか否か、
(B)前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か、
(C)前記機関を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か、及び、
(D)前記機関を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か、
からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合、前記最終的な目標機械圧縮比を「前記基本機械圧縮比」又は「同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する機械圧縮比復帰手段と、
を含むように構成される。
【0029】
上述したように、高圧縮比運転が実行されている期間、触媒の温度は低下する。従って、高圧縮比運転が長時間に亘って実行された場合、触媒の温度がその許容温度以下となりエミッションが悪化する虞がある。
そこで、上記構成によれば、所定の高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合、最終的な機械圧縮比は増大後機械圧縮比から「基本機械圧縮比」又は「同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」へと減少させられる。これにより、高圧縮比運転を必要な期間にのみ実行することができ、エミッション及び燃費を良好にすることができる。
【0030】
ここで、「高圧縮比運転停止条件」に含まれる「第2所定時間」、「発生トルク変化量の第2所定量」及び「速度変化量閾値」は、本発明の内燃機関に求められる排ガス浄化性能等を勘案した適値に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による可変圧縮比内燃機関の制御装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される可変圧縮比内燃機関10の概略断面図である。
【0033】
この機関10は、多気筒(直列4気筒)・ピストン往復動型・火花点火式・ガソリン内燃機関である。また、この機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。なお、図1は特定の気筒の断面を示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0034】
機関10は、クランクケース11、オイルパン12、シリンダブロック13及びシリンダヘッド部14を含んでいる。
クランクケース11は、クランクシャフト11aを回転可能に支持している。オイルパン12は、クランクケース11の下方(下部)においてクランクケース11に固定されている。オイルパン12は、クランクケース11とともに、クランクシャフト11a及び潤滑油等を収容する空間を形成している。
【0035】
シリンダブロック13は、クランクケース11の上方に配置されている。シリンダブロック13は、中空円筒状のシリンダ(シリンダボア)13aを複数個(4気筒分)備えている。ピストン13bは略円筒形であり、シリンダ13aに収容されている。ピストン13bは、コネクティングロッド13cによってクランクシャフト11aに連結されている。シリンダブロック13は、後述するように、クランクケース11に対してシリンダ13aの軸線CC方向(以下、「上下方向」とも称呼する。)に移動することにより、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。なお、機械圧縮比は、「ピストン13bが上死点(圧縮上死点)位置にあるときの燃焼室容積に対するピストン13bが下死点(吸気下死点)位置にあるときの燃焼室容積の比」として定義される。
【0036】
シリンダヘッド部14は、シリンダブロック13の上方に配置され、シリンダブロック13に固定されている。シリンダヘッド部14には、燃焼室の上面を形成するシリンダヘッド下面14a、燃焼室に連通する吸気ポート14b、及び、燃焼室に連通する排気ポート14cが形成されている。
【0037】
更に、シリンダヘッド部14は、吸気ポート14bを開閉する吸気弁14d、吸気弁14dを駆動するインンテークカムを備えるインテークカムシャフト14e、可変吸気タイミング装置14f、排気ポート14cを開閉する排気弁14g、排気弁14gを駆動するエキゾーストカムを備えるエキゾーストカムシャフト14h、点火プラグ14i及びイグニッションコイルを含むイグナイタ14j等を収容している。イグナイタ14jは、後述する電気制御装置からの点火指示信号に応答して燃焼室内に露呈した点火プラグ14iの火花発生部に点火用の火花を発生させるようになっている。シリンダヘッド部14の上部には、ヘッドカバー14kが固定されている。
【0038】
可変吸気タイミング装置14fは、例えば、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)等に記載されているように周知の装置である。可変吸気タイミング装置14fは、図示しない作動油供給制御弁及び図示しない油圧ポンプを備え、これらによって作動油が給排されることにより、インテークカムシャフト14eに対するインテークカムの位相を所望の量だけ進角及び遅角させることができる。
【0039】
機関10は機械圧縮比を変更するための機械圧縮比変更機構15を備えている。この機械圧縮比変更機構15は、例えば、特開2003−206771号公報(上記特許文献2)、特開2007−303423号公報(上記特許文献3)、特開2007−321589号公報及び特開2004−218522号公報等に開示された機構と同様の周知の機構である。以下、図1乃至図4を参照しながら簡単に説明する。
【0040】
機械圧縮比変更機構15は、ケース側軸受形成部15aと、ブロック側軸受形成部15bと、軸状駆動部15cと、を含んでいる。ケース側軸受形成部15aは、図2に示したように、複数の第1軸受形成部15a1と複数の第2軸受形成部15a2とにより構成される。第1軸受形成部15a1のそれぞれは、クランクケース11の左右の縦壁部に形成されている。第1軸受形成部15a1のそれぞれは、半円形の凹部を形成している。互いに隣接する第1軸受形成部15a1の間には、縦壁部を貫通する縦長孔15a3が形成されている。
【0041】
第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1が形成する半円形の凹部と同径の半円形の凹部を備えている。第2軸受形成部15a2のそれぞれは、第1軸受形成部15a1の半円形の凹部と第2軸受形成部15a2の半円形の凹部とが互いに対向するように、第1軸受形成部15a1のそれぞれにボルトにより固定されるキャップである。
【0042】
複数の第1軸受形成部15a1及び複数第2軸受形成部15a2は、図1に示した円柱状の軸受孔(カム収納孔)H1を複数形成する。複数の軸受孔H1の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H1の軸線は、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びる。
【0043】
ブロック側軸受形成部15bのそれぞれは、図1乃至図3に示したように、略直方体であり、円柱状の軸受孔H2を備える部材である。ブロック側軸受形成部15bは、クランクケース11の上部にシリンダブロック13が配置された状態において、クランクケース11の縦壁部に形成された縦長孔15a3内に収容される。ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13の左右の側壁部にボルト固定される。このような構成により、軸受孔H1及び軸受孔H2は、シリンダ13aの配列方向に沿って交互に配列される。
【0044】
縦長孔15a3のシリンダ軸線CC方向の長さは、ブロック側軸受形成部15bのシリンダ軸線CC方向の長さより長く設定されている。これにより、ブロック側軸受形成部15bは、シリンダブロック13と一体的となってクランクケース11に対してシリンダ軸線CC方向に移動可能となっている。
【0045】
総てのブロック側軸受形成部15bがシリンダブロック13に固定されたとき、ブロック側軸受形成部15bのそれぞれが備える軸受孔H2の中心軸は一つの直線上に配列される。その軸受孔H2の軸線は、複数のシリンダ13aの配列方向に平行な方向に延びている。シリンダブロック13の左の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線とシリンダブロック13の右の側壁部に形成される軸受孔H2の軸線との距離は、クランクケース11の左側に形成される軸受孔H1の軸線とクランクケース11の右側に形成される軸受孔H1の軸線との距離と同一である。
【0046】
一方、軸状駆動部15cは、軸受孔H1及び軸受孔H2に挿通される。軸状駆動部15cは、図2及び軸状駆動部15cの断面図である図4に示したように、小径の軸部15c1と、固定円筒部15c2と、回転円筒部15c3と、を備えている。
【0047】
固定円筒部15c2は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態にて軸部15c1に固定されている。固定円筒部15c2は、軸部15c1よりも大径であって且つ軸受孔H1と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。固定円筒部15c2は、クランクケース11のケース側軸受形成部15aに設けられた軸受孔H1に収容される。固定円筒部15c2は、その中心軸回りに軸受孔H1の壁面に当接しながら回転する。
【0048】
回転円筒部15c3は、軸部15c1の中心軸に対して偏心した状態で軸部15c1に回転可能に取り付けられている。回転円筒部15c3は、軸部15c1及び固定円筒部15c2よりも大径であって軸受孔H2と同一径の正円形のカムプロフィールを備えた円筒状部材である。回転円筒部15c3は、シリンダブロック13に固定されたブロック側軸受形成部15bに設けられた軸受孔H2に収容される。回転円筒部15c3は、軸受孔H2の壁面に当接しながら回転する。なお、左右一対の軸状駆動部15c、左右の軸受孔H1及び左右の軸受孔H2は、複数のシリンダ軸線CCを通る平面に関して互いに鏡像の関係を有している。
【0049】
更に、軸状駆動部15cのそれぞれは、図2に示したように、その軸線方向中央位置近傍にギア15c4を備えている。ギア15c4は、軸部15c1の中心軸に対して偏心し、且つ、固定円筒部15c2(従って、軸受孔H1)と同軸となるように軸部15c1に固定されている。即ち、ギア15c4の回転中心軸は固定円筒部15c2の中心軸と一致している。一対のギア15c4のそれぞれには、図示しない一対のウォームギアのそれぞれが噛合している。そのウォームギアはクランクケース11に固定された図示しない単一のモータ(図5に示したモータ15Mを参照。)の出力軸に取り付けられている。一対のウォームギアは、互いに逆方向に回転する螺旋溝を有している。従って、一対の軸状駆動部15cは、モータを回転させたとき、各固定円筒部15c2の中心軸周りに互いに逆方向に回転するようになっている。
【0050】
図4は、クランクケース11及びシリンダブロック13の前面Pf側からみて右側に位置する軸状駆動部15cの動きを概念的に示した図である。例えば、図4の(A)に示したように、固定円筒部15c2の中心c2、軸部15c1の中心c1及び回転円筒部15c3の中心c3が、この順に同一直線上に位置している場合、クランクケース11(軸受孔H1の中心)とシリンダブロック13(軸受孔H2の中心)との距離Dは距離D1となって、最大の距離となる。従って、ピストン13bが上死点位置にあるときの燃焼室の容積は大きくなる。この結果、内燃機関10の機械圧縮比は低く(小さく)なる。
【0051】
図4の(A)に示した状態からモータが駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(B)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D2となる。更に、図4の(B)に示した状態からモータが同一回転方向に駆動されることにより固定円筒部15c2及び軸部15c1が固定円筒部15c2の中心軸周りに回転すると、図4の(C)に示した状態となる。このとき、前記距離Dは距離D3となる。距離D3は距離D2よりも小さく、距離D2は距離D1よりも小さい。従って、図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(A)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。図4の(C)に示した状態にあるときの機械圧縮比は図4の(B)に示した状態にあるときの機械圧縮比よりも高く(大きく)なる。
【0052】
このような構造を備える機械圧縮比変更機構15は、後述する電気制御装置からの電動モータ15M(機械圧縮比変更機構のアクチュエータ)への駆動信号に応じて、シリンダブロック13とクランクケース11との距離を変更し、機関10の機械圧縮比を変更するようになっている。
【0053】
機関10は、図1に示したように、燃料噴射弁(インジェクタ)16を備えている。燃料噴射弁16は、インテークマニホールド21の枝部に固定されている。燃料噴射弁16は燃料噴射指示信号に応答して、その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を吸気ポート14b内に噴射するようになっている。図5に示したように、燃料噴射弁16は各気筒毎に設けられている。
【0054】
機関10は、図5に示したように、燃焼室にガソリン混合気を供給するための吸気系統20と、燃焼室からの排ガスを外部に放出するための排気系統30と、を含んでいる。
【0055】
吸気系統20は、前述したインテークマニホールド21、吸気管(吸気ダクト)22、エアフィルタ23、スロットル弁24及びスロットル弁アクチュエータ24aを備えている。
インテークマニホールド21は、複数の枝部21aとサージタンク21bとからなっている。各枝部21aの一端は各吸気ポート14bに接続され、各枝部21aの他端はサージタンク21bに接続されている。吸気管22はサージタンク21bに接続されている。インテークマニホールド21及び吸気管22は、各吸気ポート14bとともに吸気通路を構成している。エアフィルタ23は吸気管22の端部に設けられている。スロットル弁24は吸気管22に回動可能に設けられ、回動することにより吸気管22が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)24aは、DCモータからなり、電気制御装置50からの指示信号に応答してスロットル弁24を回転駆動するようになっている。
【0056】
排気系統30は、エキゾーストマニホールド31、エキゾーストパイプ(排気管)32及び触媒33を備えている。
エキゾーストマニホールド31は、各排気ポート14cに接続された複数の枝部31aと、それらの枝部31aが集合した集合部31bと、を備えている。エキゾーストパイプ32は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bに接続されている。エキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32は、各排気ポート14cとともに排気経路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド31の集合部31bとエキゾーストパイプ32とが形成する排ガスを通過させるための経路を、便宜上「排気通路」とも称呼する。
【0057】
触媒33は、ジルコニア等のセラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(白金及びロジウム等)」及び「セリア(CeO2)等の酸素吸蔵物質」を担持する三元触媒である。触媒33は、その貴金属の温度が活性温度以上である場合(即ち、触媒が活性化している場合)、機関10から排出され且つ触媒33に流入する未燃物(HC,CO等)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進する。従って、触媒33が活性化していて且つ機関の排ガスの空燃比(即ち、触媒33に流入するガスの空燃比)が理論空燃比であるとき、触媒33は排ガス中の未燃物及び窒素酸化物を同時に高い浄化率にて浄化することができる。上記貴金属の活性温度は触媒33の活性温度(許容温度)とも称呼され、例えば600℃程度である。
【0058】
更に、第1制御装置は、図5に示したように、熱線式エアフローメータ41、機関回転速度センサ42、ストロークセンサ43、上流側空燃比センサ44、下流側空燃比センサ45、アクセル開度センサ46、ブレーキスイッチ47、水温センサ48及び触媒温度センサ49を備えている。また、第1制御装置は、機関10を搭載した車両の速度SPDを表す信号を出力する車速センサ(図示省略)、及び、スロットル弁24の開度を検知しスロットル弁開度TAを表す信号を出力するスロットルポジションセンサ(図示省略)を備えている。
【0059】
エアフローメータ41は、吸気管22内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
【0060】
機関回転速度センサ42は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ42から出力される信号は電気制御装置50により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置50は、機関回転速度センサ42及び図示しないカムポジションセンサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0061】
ストロークセンサ43は、クランクケース11(例えば、クランクケース11の上端)とシリンダブロック13(例えば、シリンダブロック13の下端)との距離を計測し、その距離STを表す信号を出力するようになっている。電気制御装置50は、距離STに基づいて機関10の実際の機械圧縮比εmactを取得することができる。
【0062】
上流側空燃比センサ44は、エキゾーストマニホールド31の集合部31bと触媒33との間の位置においてエキゾーストマニホールド31及びエキゾーストパイプ32の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ44は、上流側空燃比センサ44が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。より具体的に述べると、上流側空燃比センサ44は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ44は、被検出ガスの空燃比A/Fが大きくなる(リーンとなる)ほど増大する出力値Vabyfsを出力するようになっている。電気制御装置50は、この出力値Vabyfsに基づいて検出空燃比abyfsを取得するようになっている。
【0063】
下流側空燃比センサ45は、触媒33の下流においてエキゾーストパイプ32(主通路部)に配設されている。より詳細には、下流側空燃比センサ45は、触媒33の下流におけるエキゾーストパイプ32に配設されている。下流側空燃比センサ45は、下流側空燃比センサ45が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(即ち、触媒33から流出した排ガスである被検出ガス)の空燃比に応じた出力値Voxsを出力するようになっている。
【0064】
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ45は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ45は、酸素濃度センサとも称呼される。下流側空燃比センサ45は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)(=Vstoich)の電圧を出力するようになっている。更に、下流側空燃比センサ45は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する)電圧を出力するようになっている。
【0065】
アクセル開度センサ46は、運転者によって操作されるアクセルペダルApの操作量を検出し、アクセルペダルApの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
ブレーキスイッチ47は、ブレーキペダルBpが操作されたとき(制動操作があったとき)オン信号(Hi信号)を出力し、ブレーキペダルBpが操作されていないとき(制動操作がないとき)オフ信号(Lo信号)を出力するようになっている。
水温センサ48は、機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
触媒温度センサ49は、触媒33の温度を検出し、触媒温度TCSを表す信号を出力するようになっている。
【0066】
電気制御装置50は、CPU、ROM、RAM、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0067】
電気制御装置50のインターフェースは、前記センサ41〜49と接続され、CPUにセンサ41〜49からの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置50のインターフェースは、CPUの指示に応じて、可変吸気タイミング装置14f、各気筒のイグナイタ14j、各気筒の燃料噴射弁16、スロットル弁アクチュエータ24a及び機械圧縮比変更機構15の電動モータ15M等に指示信号及び/又は駆動信号等を送出するようになっている。
【0068】
次に、上述のように構成された第1制御装置の作動について説明する。
【0069】
(制御の概要)
第1制御装置は、機関の運転状態を表す運転状態パラメータ(例えば、後述する筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NE)に基づいて基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する。基本目標機械圧縮比εmtgtbは、単に「基本機械圧縮比」とも称呼される。通常運転時、この基本目標機械圧縮比εmtgtbが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに設定される。第1制御装置は、実際の機械圧縮比εmactが「設定された目標機械圧縮比εmtgt」に一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示を与える。
【0070】
一方、第1制御装置は、機関に所定の高圧縮比運転要求が発生したとき、以下の条件1及び条件2の何れかが成立した場合、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量を加えた機械圧縮比(増大後機械圧縮比)」又は「基本機械圧縮比と増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比」に設定する。そして、第1制御装置は、実際の機械圧縮比εmactが設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示を与える。なお、以下では、最終的な目標機械圧縮比εmtgtが増大後機械圧縮比に設定されている状態における運転を「高圧縮比運転」と称呼する。
【0071】
(条件1)目標機械圧縮比を増大後機械圧縮比に設定することにより実際の機械圧縮比を増大させる場合における「触媒から排出される特定成分の増加量(排気成分増加量)」が所定の許容値以下であると推定されるとき。
(条件2)上記条件1が成立しない場合、上記高圧縮比運転要求が消滅したと判定された時点から所定時間以内において所定の更なる(別の、第2の)高圧縮比運転要求が発生したとき。
【0072】
上述したように、機械圧縮比が高い場合の排ガス温度は、機械圧縮比が低い場合の排ガス温度よりも低い。そのため、高圧縮比運転が実行されると触媒33の温度は低下する。そこで、第1制御装置は、上記条件1が成立するか否かを判定し、条件1が成立するときに高圧縮比運転を実行する。これにより、エミッションを良好に維持することができる。
【0073】
更に、第1制御装置は、上記条件1が成立しない場合であっても、上記条件2が成立するときには高圧縮比運転を実行する。これにより、機関に対する高圧縮比運転要求が非常に強いと考えられるときには高圧縮比運転が実行される。従って、エミッションを出来るだけ良好に維持しながらも高圧縮比運転が真に必要とされる場合に高圧縮比運転が実行されるので、機関の応答性を十分に高めることができる。
【0074】
(実際の作動)
以下、第1制御装置の実際の作動について説明する。
第1制御装置の電気制御装置50のCPUは、図6乃至図10にフローチャートにより示した各ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。
【0075】
より具体的に述べると、CPUは所定のタイミングにて図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進み、筒内吸入空気量Mc及び機関回転速度NEに対する基本目標機械圧縮比εmtgtbの関係を予め定めた基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(Mc,NE)に現時点における筒内吸入空気量Mcと機関回転速度NEとを適用することにより、現時点における基本目標機械圧縮比εmtgtbを決定する。
【0076】
次いで、CPUはステップ620に進んで、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。圧縮比増大フラグXUPは、その値が「0」であるとき、機関10の運転状態が上述した高圧縮比運転を実行すべきでない状態であることを示す。一方、圧縮比増大フラグXUPは、その値が「1」であるとき、機関10の運転状態が高圧縮比運転を実行すべきである状態であることを示す。更に、圧縮比増大フラグXUPの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときに実行されるイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0077】
いま、機関10は定常運転を行っており、機関10に高圧縮比運転要求が発生していないと仮定する。この仮定に従えば、現時点では機関10の運転状態は高圧縮比運転を実行すべきでない状態であるから、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」である。従って、CPUはステップ620にて「No」と判定し、ステップ630に進んでステップ610にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進んで、加速要求フラグXACCの値が「1」であるか否かを判定する。加速要求フラグXACCは、その値が「0」であるとき、機関10にその発生トルクの単位時間あたりの変化量を所定量以上とすることを要求する加速要求(即ち、高圧縮比運転要求)が発生していないことを示す。一方、加速要求フラグXACCは、その値が「1」であるとき、同加速要求が発生していることを示す。加速要求フラグXACCの値は、後述する図8に示した高圧縮比要求判定ルーチンのステップ820のみにおいて「1」に設定される。このステップ820は、加速要求が発生しているときにのみ実行されるようになっている。更に、加速要求フラグXACCの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0079】
上述の仮定に従えば、機関10は定常運転を行っているから、加速要求フラグXACCの値は「0」である。従って、CPUは、ステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、アクセル開度センサ46により検出されるアクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpが所定のアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上であるか否かを判定する。
ここで、アクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthは、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となったときに機関10に上記加速要求が発生していると判定できる値に設定されている。
【0081】
上述の仮定に従えば、機関10は定常運転を行っているから、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpは実質的にゼロであり、アクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さい。従って、CPUは、ステップ810にて「No」と判定し、ステップ895に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、加速要求フラグXACCの値を「1」に設定するステップ820の処理は行われない。よって、加速要求フラグXACCの値は「0」に維持される。
【0082】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では、上述したように、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」である。従って、CPUは、ステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0083】
更に、CPUは、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE及び実際の機械圧縮比εmactに対する排気温度Texの関係を予め定めた排気温度テーブルMapTex(Mc,NE,εmact)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE及び実際の機械圧縮比εmactを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
【0084】
次いで、CPUは、ステップ1020に進んで下記の(1)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)する。(1)式においてαは0よりも大きく1よりも小さい所定の定数、TempC(k)は更新される前の触媒温度TempC、TempC(k+1)は更新後の触媒温度TempCである。
TempC(k+1)=α・TempC+(1−α)・Tex ・・・(1)
CPUは、上記(1)式に従って触媒温度TempCを更新・取得(推定)した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0085】
以上に説明したように、機関10が定常運転を行っている場合、加速要求フラグXACCの値は「0」に維持される。更に、圧縮比増大フラグXUPの値も「0」に維持されるから、実際の機械圧縮比εmactが、基本目標機械圧縮比テーブルMapεmtgtb(Mc,NE)に基づいて求められる基本目標機械圧縮比εmtgtbに一致させられる。
【0086】
この状態において、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となる加速要求が機関10に発生したと仮定する。このような状態は、例えば、機関10を搭載した車両が他の車両等の追い越しを図るとき、及び、停止状態から急発進するとき等において発生する。
【0087】
上述の仮定に従えば、CPUは図8のステップ800からステップ810に進んだとき、そのステップ810にて「Yes」と判定する。そして、CPUはステップ820に進んで加速要求フラグXACCの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ830に進んで現時点でのアクセルペダル開度Accpをアクセルペダル基準開度Accp0として格納し、ステップ840に進んで加速要求消滅後経過時間タイマT1(以下、「タイマT1」とも称呼する。)の値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続して発生している場合、CPUは図8のルーチンを実行する毎に、ステップ830にてその時点でのアクセルペダル開度Accpをアクセルペダル基準開度Accp0として格納することを繰り返す。同様に、CPUは、ステップ840にてタイマT1をゼロに設定することを繰り返す。即ち、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にアクセルペダル基準開度Accp0をその時点でのアクセルペダル開度Accpに更新し、タイマT1をゼロに更新する。
【0089】
この状態(加速要求フラグXACCの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進むと、CPUはそのステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進む。
そして、CPUは、以下の条件1及び条件2の何れかが成立したか否かを判定し、それらの条件の何れかが成立したときに圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定することにより、高圧縮比運転を実施する。
【0090】
(条件1)目標機械圧縮比を増大後機械圧縮比に設定することにより実際の機械圧縮比を増大させたと仮定した場合における触媒から排出される「特定成分の増加量(排気成分増加量)」が所定の許容値以下であると推定される場合。具体的には、図10のルーチンにより推定される触媒温度TempCが、所定の触媒閾値温度TempCth以上である場合。
(条件2)上記高圧縮比運転要求が消滅したと判定された時点から所定時間以内において所定の更なる高圧縮比運転要求が発生したとき。具体的には、上記タイマT1が所定の加速要求消滅後経過閾値時間T1th(以下、「閾値時間T1th」とも称呼する。)よりも小さい期間において、アクセルペダル開度Accpと加速要求消滅時のアクセルペダル開度(アクセルペダル基準開度Accp0)との差(以下、「アクセルペダル踏み増し量」とも称呼する。)が所定値DAよりも大きくなったとき。
以下、ステップ720以降の処理について、場合を分けて説明する。
【0091】
−条件1が成立する場合−
CPUは、図7のステップ720に進んだとき、そのステップ720にて触媒33の温度TempCが触媒閾値温度TempCth以上であるか否かを判定する。条件1が成立する場合、このステップ720の判定条件は成立している。従って、CPUはそのステップ720にて「Yes」と判定し、ステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。次いで、CPUはステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0092】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図6のステップ600から処理を開始し、ステップ610を経由してステップ620に進むと、CPUはそのステップ620にて「Yes」と判定する。その後、CPUはステップ650以降に進み、高圧縮比運転を実行する。具体的には、CPUは、そのステップ650において「ステップ610にて決定されている基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値」を、最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定する。
【0093】
次いで、CPUはステップ660に進み、前記ステップ650にて決定された目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMax以上であるか否かを判定する。目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMaxよりも小さい場合、CPUはステップ660にて「No」と判定し、ステップ640に直接進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0094】
これに対し、ステップ650にて設定された目標機械圧縮比εmtgtが最大機械圧縮比εmMax以上である場合、CPUはステップ660にて「Yes」と判定してステップ670に進み、目標機械圧縮比εmtgtに最大機械圧縮比εmMaxを設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、ステップ660及びステップ670の処理により、目標機械圧縮比εmtgtは最大機械圧縮比εmMaxよりも大きくならないように制御される。
【0095】
以上に説明したように、上記条件1が成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定され、高圧縮比運転が実行される。
【0096】
−条件2が成立する場合−
この場合においても、条件1が成立していると、CPUは図7のステップ720を経由してステップ730に進む。従って、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定されるから、上述したように高圧縮比運転が実行される。
【0097】
一方、条件1が成立していない場合、CPUは図7のステップ720に進んだとき、そのステップ720にて「No」と判定してステップ740に進む。
【0098】
CPUはステップ740にて、下記の(2)式に従ってタイマT1を更新・決定する。(2)式において、T1(k+1)はステップ740の今回の処理により更新されるタイマT1を表し、T1(k)はステップ740の今回の処理により更新される直前のタイマT1を表す。即ち、CPUは、今回の処理によりタイマT1を加速要求消滅後経過時間タイマ増分ΔT1(以下、「タイマ増分ΔT1」とも称呼する。)だけ増大する。
T1(k+1)=T1(k)+ΔT1 ・・・(2)
次いで、CPUはステップ750に進み、タイマT1が閾値時間T1thよりも小さいか否かを判定する。
【0099】
上述したように、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にタイマT1をゼロに更新している。従って、上記加速要求が継続している期間、ステップ740の処理が実行されたとしても、タイマT1は閾値時間T1th以上にならない。このため、CPUはステップ750にて「Yes」と判定してステップ760に進む。
【0100】
CPUは、ステップ760にて、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きいか否かを判定する。上述したように、上記加速要求(ΔAccp≧ΔAccpth)が継続している期間、CPUは図8のルーチンを実行する毎にアクセルペダル基準開度Accp0をその時点でのアクセルペダル開度Accpに更新している。従って、上記加速要求が発生している期間、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)は所定値DAよりも大きくならない。このため、CPUはステップ760にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、後述するステップ730の処理が実行されないので、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」に維持される。従って、高圧縮比運転は実行されない。
【0101】
この状態において、上記加速要求が消滅すると(即ち、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さくなると)、アクセルペダル基準開度Accp0がその加速要求消滅時でのアクセルペダル開度Accpに維持され、且つ、タイマT1はゼロに更新されなくなる。
【0102】
この結果、ステップ750の処理が繰り返し実行されることによりタイマT1の値は次第に増大する。そして、タイマT1の値が閾値時間T1thに到達する前の時点にて、運転者がアクセルペダルApを踏み込むことによりアクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きくなると、CPUはステップ750及びステップ760の両ステップにて「Yes」と判定する。この場合、CPUはステップ730に進み、そのステップ730にて圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。このような状態は、例えば、上記加速要求に対して高圧縮比運転が実行されなかったことに起因して機関10の出力トルクが不足し、運転者が機関10に更なる加速を要求した場合(アクセルペダルApを更に踏み込んだ場合)等において発生する。
【0103】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「1」に設定された状態)において、CPUが図6のルーチンを実行すると、上記条件1が成立する場合と同様、図6のステップ650乃至ステップ670を経てステップ640の処理がなされる。この結果、高圧縮比運転が実行される。
【0104】
一方、タイマT1が閾値時間T1thに到達するまでの期間において、アクセルペダル踏み増し量(Accp−Accp0)が所定値DAよりも大きくならなかった場合、CPUはステップ750にて「No」と判定してステップ770に進む。そして、CPUは、ステップ770にて加速要求フラグXACCの値を「0」に設定し、ステップ780に進んでタイマT1の値をゼロに設定する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、圧縮比増大フラグXUPの値は「0」に維持されているから、高圧縮比運転は実行されない。
【0105】
また、このとき、加速要求フラグXACCの値が「0」に設定される。従って、これ以降の期間において加速要求フラグXACCが再び「1」に設定されるまでは、CPUが図7のルーチンを実行した場合、CPUはそのステップ700からステップ710に進んで「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを終了するようになる。
【0106】
更に、上記条件1及び条件2の何れが成立する場合においても、CPUは図9のルーチンを所定の時間の経過毎に繰り返し実行する。具体的には、CPUは、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進んで、圧縮比増大フラグXUPの値が「1」であるか否かを判定する。
【0107】
現時点が、条件1及び条件2の何れかが成立して圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した直後であると仮定する。このとき、圧縮比増大フラグXUPの値は「1」であるから、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進む。そして、CPUは、以下の条件A乃至条件Dの何れかが成立するか否かを判定し、それらの条件の何れかが成立したとき、圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。この結果、高圧縮比運転が停止される。なお、以下では、後述する条件A乃至条件Dを「高圧縮比運転停止条件」とも称呼する。
【0108】
(条件A)機関10に定常走行要求が発生した場合。具体的には、「アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpの絶対値」が所定値δ1よりも小さくなった場合。
(条件B)機関10を搭載した車両の速度の変化が所定値よりも小さくなった場合。具体的には、「同速度の単位時間あたりの変化量ΔSPDの絶対値」が所定値δ2よりも小さくなった場合。
(条件C)機関10を搭載した車両の制動装置が操作された場合。具体的には、ブレーキペダルBpが操作されることにより、ブレーキスイッチ47からの出力信号がオフ信号からオン信号に変化した場合。
(条件D)圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した時点から所定時間が経過した場合。具体的には、下記の高圧縮比運転継続時間タイマT2(以下、「タイマT2」とも称呼する。)が所定の高圧縮比運転継続閾値時間T2th(以下、「閾値時間T2th」とも称呼する。)以上となった場合。
以下、ステップ920以降の処理について、場合を分けて説明する。
【0109】
−条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合−
CPUは、図9のステップ920に進んだとき、そのステップ920にて、現時点が圧縮比増大フラグXUPの値が「0」から「1」に変化した直後であるか否かを判定する。上述の仮定に従えば、CPUはステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進み、タイマT2にゼロを設定してステップ940に進む。
【0110】
CPUは、ステップ940にて下記の(3)式に従ってタイマT2を更新・決定する。(3)式において、T2(k+1)はステップ940の今回の処理により更新されるタイマT2を表し、T2(k)はステップ940の今回の処理により更新される直前のタイマT2を表す。即ち、CPUは、今回の処理によりタイマT2を高圧縮比運転継続時間タイマ増分ΔT2(以下、「タイマ増分ΔT2」とも称呼する。)だけ増大する。
T2(k+1)=T2(k)+ΔT2 ・・・(3)
【0111】
次いで、CPUはステップ950に進み、タイマT2が閾値時間T2th以上であるか否かを判定する。現時点はタイマT2がゼロに設定された直後であるから、タイマT2はゼロからタイマ増分ΔT2だけ増大された値となる。従って、タイマT2は閾値時間T2thよりも小さいから、CPUはステップ950にて「No」と判定してステップ960に進む。
【0112】
CPUは、そのステップ960にて「アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpの絶対値」が所定値δ1よりも小さいか否か、「機関10を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量ΔSPDの絶対値」が所定値δ2よりも小さいか否か、及び、「ブレーキスイッチ47からの出力信号」がオン信号であるか否かのうちの少なくとも一つが成立するか否かを判定する。上述の条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合、CPUは、そのステップ960にて「Yes」と判定し、ステップ980に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定された状態)において、CPUが図6のステップ600から処理を開始すると、CPUはステップ610乃至ステップ640へと進む。従って、基本目標機械圧縮比εmtgtbが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに設定され、実際の機械圧縮比εmactが最終的な目標機械圧縮比εmtgtに一致するように電動モータ15Mに指示信号が送出される。
従って、上述の条件A乃至条件Cの何れかが成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定され、高圧縮比運転が停止される。
【0114】
−条件Dが成立する場合−
一方、ステップ960にて上述の条件A乃至条件Cの何れも成立しない場合、CPUはそのステップ960にて「No」と判定し、ステップ995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、圧縮比増大フラグXUPの値は「1」に維持されるから、高圧縮比運転は継続する。
【0115】
上述の条件A乃至条件Cの何れも成立しない状態が継続すると、図9のステップ940の処理が繰り返し実行されるから、タイマT2はしだいに増大して閾値時間T2thに到達する(即ち、条件Dが成立する)。このとき、CPUが図9のステップ950に進むと、CPUはそのステップ950にて「Yes」と判定し、ステップ970に進んでタイマT2に「0」を設定する。次いで、CPUはステップ980に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
この状態(圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定された状態)において、CPUが図6のルーチンを実行すると、上述の条件A乃至条件Cが成立する場合と同様、実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように電動モータ15Mに指示信号が送出される。
従って、上述の条件Dが成立する場合、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」に設定され、高圧縮比運転が停止される。
なお、第1制御装置は、上述の条件A乃至条件Dのうちの少なくとも一つ以上の条件を「高圧縮比運転停止条件」と判定するように構成されてもよい。
【0117】
以上、説明したように、第1制御装置は、
機関10の運転状態を表す運転状態パラメータ(例えば、機関回転数NE、筒内吸入空気量Mc及びアクセルペダル操作量Accp)に基づいて基本機械圧縮比εmtgtbを決定する基本機械圧縮比決定手段(図6のステップ610を参照。)と、
基本目標機械圧縮比εmtgtbを一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する高圧縮比運転要求発生判定手段(図8のステップ810を参照。)と、
前記高圧縮比運転要求が発生していないと判定されているときに基本目標機械圧縮比εmtgtbを最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定し、前記高圧縮比運転要求が発生していると判定されているときに基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた機械圧縮比である増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定する目標機械圧縮比設定手段(図6のルーチンを参照。)と、
機関10の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15に指示を送出する機械圧縮比制御手段(図6のステップ640を参照。)と、
を備える。
【0118】
そして、前記目標機械圧縮比設定手段は、
最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbから増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合に触媒33において浄化されることなく触媒33から排出される特定成分の増加量である排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段(図7のステップ720を参照。)と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合(図7のステップ710にて「Yes」と判定された場合)に前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されるとき(図7のステップ720にて「No」と判定されるとき)、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbに設定する機械圧縮比増大抑制手段(図6のルーチンを参照。)と、
を含む。
【0119】
更に、第1制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する第1加速要求が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定する(図8のステップ810にて「Yes」と判定する)ように構成される。
【0120】
また、第1制御装置は、排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなると推定されるとき、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。しかしながら、本発明の制御装置は、この場合、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比(即ち、εmtgtb<εmtgt<(εmtgtb+Δεm)となる機械圧縮比)」に設定するように構成してもよい。
【0121】
従って、第1制御装置は、機関10に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である第1加速要求)が発生した場合であっても、排気成分増加量が過度に大きくなると推定されるとき、機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。これにより、エミッションを良好に維持することができる。
【0122】
更に、第1制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記第1加速要求が発生したと判定した場合(図7のステップ710にて「Yes」と判定された場合)において、前記排気状態推定手段により前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されたとき(図7のステップ720にて「No」と判定されたとき)、同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間T1th以内において機関10の発生トルクを増大させる要求である第2加速要求が発生したか否かを判定するように構成され(図7のステップ740乃至ステップ780を参照。)、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記第2加速要求が発生したと判定されたとき(図7のステップ760にて「Yes」と判定されたとき)増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定するように構成される(図6のルーチンを参照。)。
【0123】
従って、第1制御装置は、機関10に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、加速要求)が発生した場合において排気成分増加量が過度に大きくなると判定されたとき、その高圧縮比運転要求が発生した時点においては機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。しかしながら、上記高圧縮比運転が消滅したと判定された時点から所定時間(第1所定時間T1th)以内の期間において更なる高圧縮比運転要求が発生した場合、機械圧縮比は増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)にまで増大させられる。これにより、機関10に対する加速要求が非常に強いと考えられるときには機関10の出力トルクを応答性良く増大させることができる。
【0124】
更に、第1制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度以上よりも低いとき、前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成される(図7のステップ720を参照。)。
【0125】
前述したように、機械圧縮比が増大させられる時点での触媒温度がその活性温度に対して十分に高い場合、機械圧縮比の増大により触媒温度が低下しても触媒の排ガス浄化性能を要求される範囲内に維持することができる。従って、第1制御装置は、触媒の温度が所定の許容温度以上であるとき、機関10に対する高圧縮比運転要求に応じて機械圧縮比を増大させる。これにより、第1制御装置は、機関10への高圧縮比運転要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる。
【0126】
更に、第1制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)を最終的な目標機械圧縮比εmtgtとして設定した時点以降において、同時点から第2所定時間T2thが経過したか否か(図9のステップ950を参照。)、機関10の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か(図9のステップ960における「|ΔAccp|<δ1」を参照。)、機関10を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か(図9のステップ960における「|ΔSPD|<δ2」を参照。)、及び、機関10を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か(図9のステップ960における「ブレーキスイッチ オン」を参照。)からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段(図9のルーチンを参照。)と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合(図9のステップ950及びステップ960の何れかにおいて「Yes」と判定された場合)に最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtb」又は「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)との間の機械圧縮比」に設定する機械圧縮比復帰手段(図9のステップ980及び図6のルーチンを参照。)と、
を含むように構成される。
【0127】
従って、第1制御装置は、所定の高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定した場合、高圧縮比運転を直ちに停止する。これにより、高圧縮比運転を必要な期間にのみ実行することができ、エミッション及び燃費を良好にすることができる。
【0128】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、そのCPUが図7の分岐点A、分岐点B及び分岐点Cの間の処理に代わる図11にフローチャートにより示した処理を実行する点においてのみ、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
【0129】
第2制御装置のCPUは、「図7の分岐点A、分岐点B及び分岐点Cの間の処理を図11にフローチャートにより示した処理に置換して得られる圧縮比増大フラグ設定ルーチン」を所定の時間毎に繰り返し実行するようになっている。第2制御装置の具体的な作動について、以下に記載する。
【0130】
第2制御装置のCPUは、第1制御装置と同様、図6乃至図10の処理を所定の時間毎に繰り返し実行している。
ここで、機関10が定常運転を行っている場合(即ち、圧縮比増大フラグXUPの値が「0」である場合)に図6のルーチンが実行されたと仮定する。
この仮定に従えば、第1制御装置と同様、CPUは図6のステップ620にて「No」と判定し、ステップ630に進んでステップ610にて決定された基本目標機械圧縮比εmtgtbを目標機械圧縮比εmtgtに設定する。次いで、CPUはステップ640に進んで、実際の機械圧縮比εmactが目標機械圧縮比εmtgtに一致するように機械圧縮比変更機構15の電動モータ15Mに指示信号を送出する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0131】
更に、この定常運転がなされている機関10に対してアクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpth以上となる加速要求が発生し、この加速要求が所定時間継続した後に同加速要求が消滅した(即ち、アクセルペダル操作量の時間微分値ΔAccpがアクセルペダル操作量の時間微分閾値ΔAccpthよりも小さくなった)ときに図7のルーチンが実行されたと仮定する。
【0132】
このとき、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、そのステップ710にて「Yes」と判定する。次いで、CPUは分岐点Aを経由して図11のステップ1110に進み、図6のステップ610にて設定された「現時点の基本目標機械圧縮比εmtgtb」を機械圧縮比εmとして格納し、ステップ1120に進む。CPUはそのステップ1120にて、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する排気中の窒素酸化物(NOx)の量の関係を予め定めた窒素酸化物量推定関数f(Mc,NE,εm,TempC)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、触媒温度TempC、及び、ステップ1110にて格納した機械圧縮比εmを適用することにより、「現時点における排気中の窒素酸化物の量」を取得(推定)し、取得した値を第1窒素酸化物量NOxbeforeに格納する。
【0133】
次いで、CPUはステップ1130に進んで上述の基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値(即ち、増大後機械圧縮比)を機械圧縮比εmとして格納し、ステップ1140に進む。即ち、CPUはステップ1130において、現時点での運転状態パラメータに基づいて決定される基本目標機械圧縮比εmtgtbに所定量Δεmを加えた値を仮想的に準備し、この値を機械圧縮比εmに設定する。CPUはそのステップ1140にて、上記ステップ1120と同様に、窒素酸化物量推定関数f(Mc,NE,εm,TempC)に現時点における筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、触媒温度TempC、及び、ステップ1130にて格納した機械圧縮比εmを適用することにより、「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の窒素酸化物の量」を取得(推定)し、取得した値を第2窒素酸化物量NOxafterに格納する。
【0134】
そして、CPUはステップ1150に進み、第2窒素酸化物量NOxafterと第1窒素酸化物量NOxbeforeとの差(即ち、排気成分増加量)が窒素酸化物増大閾値量NOxth(以下、「閾値量NOxth」とも称呼する。)以下であるか否かを判定する。この差が閾値量NOxth以下である場合、CPUはそのステップ1150にて「Yes」と判定し、分岐点Cを経由して図7のステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPを「1」に設定する。その後、CPUは図7のステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(圧縮比増大フラグXUPが「1」の状態)にて図6のルーチンが実行された場合、上述の第1制御装置と同様、高圧縮比運転が実行される。
【0135】
一方、図11のステップ1150にて、第2窒素酸化物量NOxafterと第1窒素酸化物量NOxbeforeとの差(即ち、排気成分増加量)が閾値量NOxthよりも大きい場合、CPUはそのステップ1150にて「No」と判定し、分岐点Bを経由して図7のステップ740に進む。
その後、CPUは、第1実施形態と同様、図7のステップ740乃至ステップ780において「上記加速要求が消滅した時点から閾値時間T1th以内にアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくなるか否か」を判定する。
【0136】
具体的には、閾値時間T1th以内においてアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくなる場合、CPUは図7のステップ760にて「Yes」と判定し、ステップ730に進んで圧縮比増大フラグXUPの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この状態(圧縮比増大フラグXUPが「1」の状態)にて図6のルーチンが実行された場合、上述の第1制御装置と同様、高圧縮比運転が実行される。
【0137】
一方、アクセルペダル踏み増し量が所定値DA以下である場合、CPUは図7のステップ760にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
この場合、圧縮比増大フラグXUPは「0」であるから、高圧縮比運転は実行されない。
【0138】
また、上記加速要求が消滅した時点から閾値時間T1thが経過するまでの期間においてアクセルペダル踏み増し量が所定値DAよりも大きくならなかった場合、CPUは図7のステップ750にて「No」と判定し、ステップ770及びステップ780を経由してステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合においても圧縮比増大フラグXUPは「0」であるから、高圧縮比運転は実行されない。
なお、第2制御装置は第1制御装置と同様の処理にて高圧縮比運転を停止する。
【0139】
以上に説明したように、第2制御装置は、
最終的な目標機械圧縮比εmtgtを基本目標機械圧縮比εmtgtbから増大後機械圧縮比(εmtgtb+Δεm)に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、触媒33において浄化されることなく触媒33から排出される特定成分(NOx)の増加量である排気成分増加量(NOxafter−NOxbefore)が所定の許容値ΔNOxthよりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段(図11のステップ1110乃至ステップ1150を参照。)を備える。
【0140】
また、第2制御装置は、第1制御装置と同様、排気成分増加量(NOxafter−NOxbefore)が所定の許容値ΔNOxthよりも大きくなると推定されるとき、最終的な目標機械圧縮比εmtgtを「基本目標機械圧縮比εmtgtbと増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比(即ち、εmtgtb<εmtgt<(εmtgtb+Δεm)となる機械圧縮比)」に設定するように構成してもよい。
【0141】
従って、第2制御装置は、第1制御装置と同様、機関に高圧縮比運転要求(本実施形態においては、機関に対する高圧縮比運転要求の代表例である加速要求)が発生した場合であっても、排気成分増加量が過度に大きくなると推定されるとき、機械圧縮比の増大を禁止又は抑制する。更に、第2制御装置は、この排気成分増加量をより直接的に評価することができる。これにより、第2制御装置は、エミッションを良好に維持しつつ、機関の応答性能を必要以上に低下させないように制御することができる。
【0142】
上述の第2制御装置は、その排気状態判定手段において、「現時点における排気中の窒素酸化物の量(NOxbefore)」と「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の窒素酸化物の量(NOxafter)」との差(NOxafter−NOxbefore)を排気成分増加量(以下、便宜上、「排気成分増加量(NOx)」とも称呼する。)とし、この排気成分増加量(NOx)が所定の許容値NOxthよりも大きいか否かを判定する。
しかしながら、これに代え、排気成分増加量を「排気中の炭化水素(HC)の量」或いは「排気中の一酸化炭素(CO)の量」に基づいて評価してもよい。
【0143】
具体的には、第2制御装置は、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する「排気中の炭化水素(HC)の量」の関係を予め定めた炭化水素量推定関数g(Mc,NE,εm,TempC)に基づいて「現時点における排気中の炭化水素の量(HCbefore)」及び「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の炭化水素の量(HCafter)」を取得(推定)し、これらの差(HCafter−HCbefore)が所定の許容値HCthよりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。なお、以下では、便宜上、上述した「炭化水素量の差」を「排気成分増加量(HC)」とも称呼する。
【0144】
また、第2制御装置は、筒内吸入空気量Mc、機関回転速度NE、機械圧縮比εm及び触媒温度TempCに対する「排気中の一酸化炭素(CO)の量」の関係を予め定めた一酸化炭素量推定関数h(Mc,NE,εm,TempC)に基づいて「現時点における排気中の一酸化炭素の量(CObefore)」及び「機械圧縮比を所定量Δεmだけ増大させた場合の排気中の一酸化炭素の量(COafter)」を取得(推定)し、これらの差(COafter−CObefore)が所定の許容値COthよりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。なお、以下では、便宜上、上述した「一酸化炭素量の差」を「排気成分増加量(CO)」とも称呼する。
【0145】
更に、第2制御装置は、上述した排気成分増加量(NOx)、排気成分増加量(HC)及び排気成分増加量(CO)の全て(以下、便宜上、「三種の増加量」とも称呼する。)を取得(推定)し、それらのうちの少なくとも一つが所定の許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。また、第2制御装置は、三種の増加量のうちの少なくとも二つが各許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよく、それらの全てが各許容値よりも大きいか否かを判定するように構成されてもよい。
【0146】
以上、説明したように、本発明の各実施形態によれば、機関10に対して機械圧縮比の変更が要求された場合において、機械圧縮比変更の要求にできる限り応えながらもエミッションを良好に維持することができる。
【0147】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記各実施形態においては、高圧縮比運転が実行される際の機械圧縮比の増大量として「Δεm(定数)」を採用した。これに代え、機械圧縮比の増大量として、機関10に加速要求が発生した時点での機関の運動状態パラメータ(アクセルペダル操作量、スロットル弁開度及び充填率等)に基づき決定される「変数」を採用してもよい。
【0148】
また、上記各実施形態においては、高圧縮比運転の停止条件を複数例示している。しかしながら、高圧縮比運転の停止条件は上述の例に限られず、機関への高圧縮比運転要求が消滅又は低下したと判断できる情報の何れを用いてもよい。
更に、上記各実施形態においては、触媒33の温度を排気温Texに基づいて推定している(図10を参照。)。これに代え、例えば、触媒温度センサ49によって触媒33の温度TempCを直接検知してもよい。
更に、上記各実施形態において、タイマ増分ΔT1及びタイマ増分ΔT2は「定数」であったが、機関の運転状態パラメータ等に基づいて決定される「変数」としてもよい。
【0149】
また、上記各実施形態においては、機械圧縮比変更機構として図1乃至図4に示す機構を採用している。しかしながら、機械圧縮比変更機構として、例えば、上述した特許文献1乃至特許文献5に記載されている機構を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置が適用される可変圧縮比内燃機関の概略断面図である。
【図2】図2に示した内燃機関の機械圧縮比変更機構を示す同機関の分解斜視図である。
【図3】図2に示した内燃機関のシリンダブロックの斜視図である。
【図4】図2に示した機械圧縮比変更機構の作動を説明するための図である。
【図5】図2に示した内燃機関の概略平面図である。
【図6】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する機械圧縮比制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する圧縮比増大フラグ設定ルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する高圧縮比要求判定ルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する圧縮比増大フラグ解除ルーチンを示したフローチャートである。
【図10】図5に示した電気制御装置のCPUが実行する触媒温度推定ルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンの一部を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0151】
10…可変圧縮比内燃機関、11…クランクケース、11a…クランクシャフト、13…シリンダブロック、13a…シリンダ、13b…ピストン、14…シリンダヘッド部、14c…排気ポート、14g…排気弁、15…機械圧縮比変更機構、15M…アクチュエータ(電動モータ)、16…燃料噴射弁(インジェクタ)、20…吸気系統、30…排気系統、31…エキゾーストマニホールド、32…エキゾーストパイプ、33…触媒、50…電気制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配設されるとともに排ガス中の特定成分を浄化する触媒と、ピストンが上死点位置にあるときの燃焼室容積に対する同ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積の比である機械圧縮比を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を有する可変圧縮比内燃機関に適用され、
前記機関の運転状態を表す運転状態パラメータに基づいて基本機械圧縮比を決定する基本機械圧縮比決定手段と、
前記基本機械圧縮比を一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する高圧縮比運転要求発生判定手段と、
前記高圧縮比運転要求が発生していないと判定されているときに前記基本機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定し、前記高圧縮比運転要求が発生していると判定されているときに前記基本機械圧縮比に所定量を加えた機械圧縮比である増大後機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定する目標機械圧縮比設定手段と、
前記機関の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように前記機械圧縮比変更機構に指示を送出する機械圧縮比制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比から前記増大後機械圧縮比に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、前記触媒において浄化されることなく同触媒から排出される前記特定成分の増加量である排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合に前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されるとき、前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比に設定する機械圧縮比増大抑制手段と、
を含む制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する第1加速要求が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定するように構成された制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記第1加速要求が発生したと判定した場合に前記排気状態推定手段により前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されたとき、同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間以内において前記機関の発生トルクを増大させる要求である第2加速要求が発生したか否かを判定するように構成され、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記第2加速要求が発生したと判定されたとき前記最終的な目標機械圧縮比を前記増大後機械圧縮比に設定するように構成された制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成された制御装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記増大後機械圧縮比を前記最終的な目標機械圧縮比として設定した時点以降において、同時点から第2所定時間が経過したか否か、前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か、前記機関を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か、及び、前記機関を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か、からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合に前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比に設定する機械圧縮比復帰手段と、
を含む制御装置。
【請求項1】
排気通路に配設されるとともに排ガス中の特定成分を浄化する触媒と、ピストンが上死点位置にあるときの燃焼室容積に対する同ピストンが下死点位置にあるときの燃焼室容積の比である機械圧縮比を指示に応じて変更し得る機械圧縮比変更機構と、を有する可変圧縮比内燃機関に適用され、
前記機関の運転状態を表す運転状態パラメータに基づいて基本機械圧縮比を決定する基本機械圧縮比決定手段と、
前記基本機械圧縮比を一時的に増大させる高圧縮比運転要求が発生しているか否かを前記運転状態パラメータに基づいて判定する高圧縮比運転要求発生判定手段と、
前記高圧縮比運転要求が発生していないと判定されているときに前記基本機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定し、前記高圧縮比運転要求が発生していると判定されているときに前記基本機械圧縮比に所定量を加えた機械圧縮比である増大後機械圧縮比を最終的な目標機械圧縮比として設定する目標機械圧縮比設定手段と、
前記機関の実際の機械圧縮比が前記設定された最終的な目標機械圧縮比に一致するように前記機械圧縮比変更機構に指示を送出する機械圧縮比制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比から前記増大後機械圧縮比に変更することにより実際の機械圧縮比を増大させた場合、前記触媒において浄化されることなく同触媒から排出される前記特定成分の増加量である排気成分増加量が所定の許容値よりも大きくなるか否かを推定する排気状態推定手段と、
前記高圧縮比運転要求が発生したと判定された場合に前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されるとき、前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比に設定する機械圧縮比増大抑制手段と、
を含む制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を第1所定量以上とすることを要求する第1加速要求が発生しているか否かを判定し、同第1加速要求が発生していると判定したとき前記高圧縮比運転要求が発生していると判定するように構成された制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記高圧縮比運転要求発生判定手段は、
前記第1加速要求が発生したと判定した場合に前記排気状態推定手段により前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると推定されたとき、同第1加速要求が消滅したと判定した時点から第1所定時間以内において前記機関の発生トルクを増大させる要求である第2加速要求が発生したか否かを判定するように構成され、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記第2加速要求が発生したと判定されたとき前記最終的な目標機械圧縮比を前記増大後機械圧縮比に設定するように構成された制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記排気状態推定手段は、
前記触媒の温度が所定の温度よりも低いとき前記排気成分増加量が前記許容値よりも大きくなると判定するように構成された制御装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、
前記目標機械圧縮比設定手段は、
前記増大後機械圧縮比を前記最終的な目標機械圧縮比として設定した時点以降において、同時点から第2所定時間が経過したか否か、前記機関の発生トルクの単位時間あたりの変化量を前記第1所定量よりも小さい第2所定量以下とする定常走行要求が発生したか否か、前記機関を搭載した車両の速度の単位時間あたりの変化量が所定の速度変化量閾値以下となったか否か、及び、前記機関を搭載した車両の制動装置が操作されたか否か、からなる高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記停止条件判定手段により前記高圧縮比運転停止条件のうちの少なくとも一つが成立したと判定された場合に前記最終的な目標機械圧縮比を前記基本機械圧縮比又は同基本機械圧縮比と前記増大後機械圧縮比との間の機械圧縮比に設定する機械圧縮比復帰手段と、
を含む制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−25010(P2010−25010A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188404(P2008−188404)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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