説明

台タイヤ加硫装置

【課題】外気温の変化によって加硫装置における加硫プロセスの変更を不要とし、加硫中における加硫装置からの放熱量を一定にすることが可能な台タイヤの加硫装置を提供することを目的とする。
【解決手段】未加硫の台タイヤを加硫する台タイヤ加硫装置であって、台タイヤのサイド部及びクラウン部を包囲する金型と、金型の幅方向外側に位置し、金型を加熱する加熱手段と、金型における台タイヤのクラウン部を包囲する位置に設けられる温度調節手段とを有し、温度調節手段が、台タイヤのトレッド貼付面を型付けする面よりも半径方向外側に位置する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台タイヤの加硫装置に関し、特に金型から外気に対して放出される熱量を一定にすることが可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの加硫方法としては、グリーンタイヤと称される未加硫のタイヤを加硫装置の金型内部に配置し、金型の加熱と同時に袋状のブラダーと呼ばれる加圧装置により未加硫のタイヤを内側から金型に対して押圧しつつ加圧加熱状態で加硫することによって、製品としてのタイヤを得る方法が知られている。
例えば、特許文献1に開示される大型タイヤの製造方法は、加硫装置内に配置された未加硫のタイヤを温度制御しながら加熱することによって、加硫後のタイヤが部分的に過加硫となることを防止する方法である。具体的には、タイヤサイド部の型付けを行う金型の温度をタイヤトレッド部の型付けを行う金型の温度よりも低い温度となるように制御して加硫することにより、加硫後のタイヤ全体の加硫度を均一とし、タイヤの品質を向上させることが可能な方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されるような方法は、加硫度が均一になるように金型の温度を制御しても、タイヤサイド部に比べ熱源から遠いタイヤクラウン部の金型は、当該金型から外気に対して放出される熱量が加硫装置を設置している場所の外気温度に応じて変化し易いため、タイヤクラウン部の金型の温度がタイヤサイド部の金型の温度よりも低下し、金型内の温度を均一に保つことができなかった。その結果、製品としてのタイヤ内に加硫度のバラツキが生じ、季節によって変動する外気温によりタイヤの品質が変化するという問題が生じていた。
また、上記問題を解決するために、加硫装置におけるタイヤの加硫時間や加硫温度等を精密に制御しようとすると、加硫プロセスの変更や制御が極めて複雑となり、さらに、加硫プロセスの変更による人為的ミスの発生や変更による製品の不良率が増加するという虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−172622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、外気温の変化によって加硫装置における加硫プロセスの変更を不要とし、加硫中における加硫装置からの放熱量を一定にすることが可能な台タイヤの加硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の第一の構成として、未加硫の台タイヤを加硫する台タイヤ加硫装置であって、台タイヤのサイド部及びクラウン部を包囲する金型と、金型の幅方向外側に位置し、金型を加熱する加熱手段と、金型における台タイヤのクラウン部を包囲する位置に設けられる温度調節手段とを有し、当該温度調節手段が、台タイヤのトレッド貼付面を型付けする面よりも半径方向外側に位置する構成とした。
本構成によれば、台タイヤのトレッド貼付面を型付けする面よりも半径方向外側に台タイヤのクラウン部に対応する位置の温度を調節する温度調節手段が配置されるため、季節によって変動する外気温の影響を受けることなく、金型から外部に放出される熱量を一定にすることが可能となる。また、放熱量が一定になることにより、外気温に応じて加硫装置の加硫プロセスを変更する必要が無くなるため、加硫プロセスの変更による人為的ミスの発生や製品の不良率の増加を防止することができる。
また、本発明の第二の構成として、温度調節手段は、加熱手段内に供給される加熱媒体の温度よりも低い冷却媒体を導通可能な流路であって、当該流路が金型の内部又は外周面に当接して設けられた構成とした。
本構成によれば、前記第一の構成から生じる効果に加えて、冷却媒体の温度を調節することによって、加硫装置から外部に放出される放熱量を制御することができ、台タイヤ内部の加硫度を均一にすることが可能となる。
また、本発明の第三の構成として、温度調節手段は、金型における台タイヤのクラウン部を包囲する位置に設けられる断熱材であって、当該断熱材が金型と外気との接触を遮断する構成とした。
本構成によれば、前記第一の構成から生じる効果と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第四の構成として、金型は、台タイヤのビード部を加熱するビード部加熱手段を備える構成とした。
本構成によれば、台タイヤのビード部を局部的に加熱するビード部加熱手段を備えるため、ビード部を極めて短時間で加硫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】加硫装置に台タイヤを配置した状態を示す断面図である(実施形態1)。
【図2】加硫装置に台タイヤを配置した状態を示す断面図である(実施形態2)。
【図3】加硫装置に台タイヤを配置した状態を示す断面図である(実施形態3)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、台タイヤの加硫装置1内に未加硫の台タイヤ2を配置した状態を示す断面図である。
同図を用いて、加硫装置1の構造及び加硫装置1による加硫方法について説明する。同図において、台タイヤ2を加硫成型する加硫装置1は、概略、下加熱手段3、下金型4、下ビードリング5、下側温度調節手段6、上加熱手段7、上金型8、上ビードリング9、上側温度調節手段10、恒温槽11、固定盤12、昇降機構13及びブラダー15を備える。
加熱手段の一例としての下加熱手段3は、円環状の板体であって、図外の熱源供給装置から内部に高温高圧の蒸気や液体等の加熱媒体が供給される流路3Aを有する。流路3Aは、横置き状態で配置される加硫装置1内に台タイヤ2の下側のビード部Tb及び下側のサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の通路であって、主として上方に位置する下金型4を介して下側のビード部Tb及び下側のサイド部Tsを加熱する。即ち、本例において、下加熱手段3が主として台タイヤ2の下側のビード部Tb及び下側のサイド部Tsの加硫を担う熱源として機能する。下加熱手段3の上面側には、下金型4が固定される。
下金型4は、例えばアルミ製の断面L字状の円環金属体であって、下方に位置する熱源としての下加熱手段3からの熱を台タイヤ2に伝達可能である。下金型4は、横置き状態に配置された台タイヤ2の下側のサイド部Tsと対向する内周面が型付面4pとして形成されたサイド型付部4Aと、横置き状態に配置された台タイヤ2のクラウン部Tcと対向する内周面が型付面4qとして形成されたクラウン型付部4Bとからなる。
サイド型付部4Aの型付面4pは、台タイヤ2の下側のサイド部Tsを囲繞するように湾曲した面として形成される。クラウン型付部4Bの型付面4qは、型付面4pと連続して台タイヤ2の幅方向に略垂直に立ち上がり、台タイヤ2のクラウン部Tcの幅方向中間位置まで延長する。
即ち、台タイヤ2の下側のサイド部Ts及びクラウン部Tcは、下金型4のサイド型付部4Aの型付面4pとクラウン型付部4Bの型付面4qとによって包囲された状態となる。
下金型4の内部には、下ビード部加熱手段16が形成される。ビード部を加熱する一例としての下ビード部加熱手段16は、台タイヤ2の下側のビード部Tbの下方側に加硫時に高温高圧の加熱媒体が図外の熱源供給装置から内部に供給される円環流路であって、下側のビード部Tbの加硫反応を促進する。
下金型4の上方側には、着脱自在な下ビードリング5が取着される。下ビードリング5は、台タイヤ2の下側のビード部Tbの型付けを行うとともに把持部を介して後述のブラダー15を保持する円環体である。
【0008】
上加熱手段7は、下加熱手段3と同様、円環状の板体である。
上加熱手段7は、下加熱手段3に対して上下方向に離間し、下加熱手段3と対をなすように平行に配置され、後述の昇降機構13によって昇降動作が可能である。上加熱手段7の内部には、加硫時に高温高圧の加熱媒体が図外の熱源供給装置から供給される流路7Aが設けられる。流路7Aは、台タイヤ2の上側のビード部Tb及び上側のサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の通路であって、主として下方に位置する上金型8を介して上側のビード部Tb及び上側のサイド部Tsを加熱する。即ち、本例において、上加熱手段7が主として台タイヤ2の上側のビード部Tb及び上側のサイド部Tsの加硫を担う熱源として機能する。上加熱手段7の下面側には、上金型8が固定される。
上金型8は、下金型4と対をなすアルミ製の断面L字状の円環金属体であって、上方に位置する熱源としての上加熱手段7からの熱を台タイヤ2に伝達可能である。
上金型8は、下金型4と同様に、横置き状態に配置された台タイヤ2の上側のサイド部Tsと対向する内周面が型付面8pとして形成されたサイド型付部8Aと、横置き状態に配置された台タイヤ2のクラウン部Tcと対向する内周面が型付面8qとして形成されたクラウン型付部8Bとからなる。サイド型付部8Aの型付面8pは、台タイヤ2の上側のサイド部Tsを囲繞するように湾曲した面として形成される。クラウン型付部8Bの型付面8qは、型付面8pと連続して台タイヤ2の幅方向に略垂直に垂下し、台タイヤ2のクラウン部Tcの幅方向中間位置まで延長する。
即ち、台タイヤ2の上側のサイド部Ts及びクラウン部Tcは、上金型8のサイド型付部8Aの型付面8pとクラウン型付部8Bの型付面8qとによって包囲された状態となる。
よって、下金型4と上金型8とが組み付けられた状態において、台タイヤ2の上下のサイド部Ts及びクラウン部Tcは、全周に渡って包囲された状態となる。
上金型8の内部には、上ビード部加熱手段17が形成される。上ビード部加熱手段17は、台タイヤ2の上側のビード部Tbの上方側に加硫時に高温高圧の加熱媒体が図外の熱源供給装置から内部に供給される円環流路であって、上側のビード部Tbの加硫反応を促進する。
上金型8の下方側には、着脱自在な上ビードリング9が取着される。上ビードリング9は、台タイヤ2の上側のビード部Tbの型付けを行うとともに把持部を介して後述のブラダー15を保持する円環体である。
【0009】
下金型4及び上金型8の半径方向外側には、それぞれ下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10が設けられる。下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10は、下金型4及び上金型8の半径方向外側の面に当接して配置される複数本の金属性の円環状の配管6A;10Aであって、恒温槽11から内部に供給される冷却媒体によって、高温の下金型4及び上金型8の熱が、低温の配管6A;10A内部に供給される冷却媒体へと伝達し、下金型4及び上金型8の半径方向外側表面を冷却可能である。
恒温槽11は、内部に冷却媒体としての水を貯留する収容体であって、貯留した水が一定の温度となるように冷却、或いは、加熱しつつ温度を保持し、下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10の配管6A;10Aに対して図外の配管入口から水を供給する。配管6A;10A内に供給された水は、出口方向へと流下し、図外の配管出口から恒温槽11へと戻る。即ち、水は、配管6A;配管10Aと恒温槽11との間を循環する。
なお、本実施例において冷却媒体の一例として水を用いて説明したが、本例はこれに限らず、下金型4及び上金型8の熱を吸収可能な冷却流体、冷却ガス、或いは、通電により冷却可能なペルチェ素子などでもよい。
【0010】
上加熱手段7の上面側には、固定盤12が接合される。固定盤12は、上加熱手段7よりも大径な板体であって、中央部に後述の昇降機構13が貫通する。
昇降機構13は、加硫装置1の半径方向中心に位置し、固定盤12と連結される。昇降機構13は、固定盤12に対して直交するように取付けられ、内部にピストンを有するシリンダーである。昇降機構13は、固定盤12を貫通し、上加熱手段7まで延長する。昇降機構13の下端には、可動プレート14が連結される。可動プレート14は、固定盤12と同様の方向に延長する延長方向に細長な板体であって、昇降機構13の下端部に取付けられる。可動プレート14の両端部は、円環状の上加熱手段7と連結される。
よって、昇降機構13が作動することにより、固定盤12に連結された上加熱手段7、上金型8及び上側温度調節手段10が一体的に昇降動作し、下方に位置する下加熱手段3、下金型4及び下側温度調節手段6に対して接近、又は、離間する。
【0011】
下ビードリング5及び上ビードリング9によって把持されるブラダー15は、伸長可能な袋状のゴム体であり、台タイヤ2の内周面に沿って密着するように配置される。
ブラダー15には、加硫時に高温高圧の加圧媒体が図外の熱源供給装置から供給され、未加硫の台タイヤ2の内部において、台タイヤ2の内周面に沿って密着しながら膨張する。
即ち、下金型4、上金型8、下ビードリング5及び上ビードリング9によって形成される空間内に配置された台タイヤ2は、加硫時にブラダー15の膨張に伴って下金型4、下ビードリング5、上金型8及び上ビードリング9に押し付けられながら加熱されることにより、加硫される。
【0012】
図1を用いて、加硫装置1による台タイヤ2の加硫方法を説明する。
まず、同図で示すように、台タイヤ2は、加硫装置1の内部に横置き状態で配置されるタイヤの土台となる部材である。台タイヤ2は、概略、上下方向に隔てて設けられる一対のビードコア2Bを有するビード部Tbと、当該ビード部Tbに跨るようにトロイダル状に延長し、下側のサイド部Ts、上側のサイド部Ts及びクラウン部Tcの台タイヤ2の骨格を形成するカーカス2Cと、クラウン部Tcにおいてカーカス2C上に積層される複数のベルト2Dとによって形成される。
【0013】
加硫方法としては、まず、昇降機構13のシリンダーを作動させることによって、固定盤12に連結された上加熱手段7、上金型8及び上側温度調節手段10を上昇させる。次に、上金型8及び上側温度調節手段10が上昇した状態において、予め図外の成型装置で成型された未加硫の台タイヤ2を下金型4上に横置き状態で載置する。
【0014】
次に、下ビードリング5及び上ビードリング9を螺合することにより、台タイヤ2の上下の開口を閉鎖する。そして、昇降機構13のシリンダーを作動させ、固定盤12に連結された上加熱手段7、上金型8及び上側温度調節手段10を下降させる。
上金型8の降下に伴い、下金型4、下ビードリング5、上金型8、上ビードリング9が台タイヤ2を加硫可能な密閉空間を形成する。そして、下加熱手段3の流路3A、上加熱手段7の流路7A、及びブラダー15内に図外の熱源供給装置から加熱媒体を供給することにより、加硫装置1における加硫成型が開始される。
【0015】
加硫成型が開始されると、予め恒温槽11で所定の温度に設定された水が、下側温度調節手段6の配管6A内及び上側温度調節手段10の配管10A内に供給される。加硫成型中は、恒温槽11から下側温度調節手段6の配管6A及び上側温度調節手段10の配管10Aへ供給された水が下金型4及び上金型8を冷却しつつ、常時配管6A内及び配管10A内を循環する。
【0016】
また、加硫成型が開始されると、加硫装置1内に配置された台タイヤ2には、周囲を取り囲むように配置される下金型4、上金型8及び台タイヤ2の内周面に密着するブラダー15により圧力が印加され、下金型4及び上金型8の内周面に台タイヤ2のサイド部Ts及びクラウン部Tcが押し付けられ、サイド部Ts及びクラウン部Tcが下金型4、上金型8の内周面形状に沿った形状に成型される。
なお、本実施例においては、台タイヤ2のビード部Tbにビードフィラーが内挿されていないいわゆるフィラーレスタイヤについて説明したが、ビード部Tbに加硫済み又は未加硫のビードフィラーが内挿されていてもよい。また、未加硫のビードフィラーが内挿される場合には、下ビード部加熱手段16及び上ビード部加熱手段17に図外の熱源供給装置から加熱媒体が供給され、ビード部Tbの加硫が促進される。
【0017】
図1内の矢印で示すように加硫成型時において、熱源としての下加熱手段3及び上加熱手段7から発生する熱は、下金型4及び上金型8における下側及び上側のサイド型付部4A;8Aへと伝達し、下金型4及び上金型8に伝達された熱が下ビードリング5、上ビードリング9、下金型4及び上金型8における下側及び上側のクラウン型付部4B;8Bへと徐々に伝達し、台タイヤ2のビード部Tb、サイド部Ts及びクラウン部Tcが加硫に必要な温度に達するまで加熱される。
また、下金型4及び上金型8に伝達された熱が下ビードリング5、上ビードリング9、下金型4及び上金型8における下側及び上側のクラウン型付部4B;8Bへと徐々に伝達した熱は、当該部分を包囲するように設けられた半径方向外側の下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10側に伝達し、下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10から放熱される。
【0018】
以上、説明したとおり、本実施形態に係る台タイヤ2の加硫装置1によれば、下金型4及び上金型8の半径方向外側に、下金型4及び上金型8を冷却する下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10を備えたことにより、熱源としての下加熱手段3及び上加熱手段7から発生する熱は、下金型4及び上金型8における下側及び上側のサイド型付部4A;8Aへと伝達し、下金型4及び上金型8に伝達された熱が下ビードリング5、上ビードリング9、下金型4及び上金型8における下側及び上側のクラウン型付部4B;8Bへと徐々に伝達し、下金型4及び上金型8の半径方向外側を包囲するように設けられた下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10側に伝達し、下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10から放熱されるため、加硫装置1が設置される場所の季節によって変動する外気温の影響を受けることなく下金型4及び上金型8から下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10によって吸熱される温度が一定となり、加硫装置1から外部に放出される熱量を一定とすることが可能となる。
また、放熱量が一定になることにより、外気温に応じた加硫プロセスの頻繁な変更、或いは、加硫プロセスの精密な制御の必要性がなくなり、恒温槽11に貯留される水の設定温度を変更するだけで、加硫プロセスの変更等による人為的ミスの発生や製品の不良率の増加を防止することができる。
また、下側温度調節手段6及び上側温度調節手段10の冷却媒体の温度を精密に制御することにより、加硫装置1内の加硫温度に温度分布の勾配を設けることができ、加硫装置1内に配置された台タイヤ2の反応速度を常に一定にするように制御することが可能となり、台タイヤ2における未加硫部位、或いは、過加硫部位の発生を無くすことができる。
また、台タイヤ2のビード部Tbに対応する位置に下ビード部加熱手段16及び上ビード部加熱手段17を設けたので、未加硫のビードフィラーを有する台タイヤ2のビード部Tbを極めて短時間で加硫することができる。
【0019】
図2は、実施形態2に係る加硫装置1内を示す断面図である。以下、本発明に係る他の実施形態(実施形態2)について説明する。
本実施形態においては、下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21が下金型4及び上金型8の内部に設けられた点で上記実施形態(実施形態1)と異なる。なお、上記実施形態と同一構成については、同一符号を用い、その説明を省略する。
同図において下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21は、断面矩形の円環状流路であって、下金型4及び上金型8のクラウン部Tcを型付けする面よりも半径方向外側に配置される。下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21の流路には、実施形態1と同様、冷却媒体としての水が供給され、下金型4及び上金型8よりも低い温度に保たれる。
【0020】
本実施形態に係る加硫装置1においても、下金型4及び上金型8の内部に、下金型4及び上金型8を冷却する下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21を備えたことにより、熱源としての下加熱手段3及び上加熱手段7から発生する熱は、下金型4及び上金型8における下側及び上側のサイド型付部4A;8Aへと伝達し、下金型4及び上金型8に伝達された熱が下ビードリング5、上ビードリング9、下金型4及び上金型8における下側及び上側のクラウン型付部4B;8Bへと徐々に伝達し、当該部分を包囲するように設けられた半径方向外側の下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21側に伝達し、下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21から放熱されるため、加硫装置1が設置される場所の季節によって変動する外気温の影響を受けることなく下金型4及び上金型8から下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21によって吸熱される温度が一定となり、加硫装置1から外部に放出される熱量を一定とすることが可能となる。
また、放熱量が一定になることにより、外気温に応じた加硫プロセスの頻繁な変更、或いは、加硫プロセスの精密な制御の必要性がなくなり、恒温槽11に貯留される水の設定温度を変更するだけで、加硫プロセスの変更等による人為的ミスの発生や製品の不良率の増加を防止することができる。
また、下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21の冷却媒体の温度を精密に制御することにより、加硫装置1内の加硫温度に温度分布の勾配を設けることができ、加硫装置1内に配置された台タイヤ2の反応速度を常に一定にするように制御することが可能となり、台タイヤ2における未加硫部位、或いは、過加硫部位の発生を無くすことができる。
また、台タイヤ2のビード部Tbに対応する位置に下ビード部加熱手段16及び上ビード部加熱手段17を設けたので、未加硫のビードフィラーを有する台タイヤ2のビード部Tbを極めて短時間で加硫することができる。
また、下金型4及び上金型8の内部に下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21を設けたことにより、熱源としての下加熱手段3及び上加熱手段7と下側温度調節手段20及び上側温度調節手段21との距離が実施形態1における加硫装置よりも近くなるため、下金型4及び上金型8から効率的に熱を吸熱することができ、台タイヤ2のクラウン部Tcの加硫温度をより精密に制御することが可能となる。
【0021】
図3は、実施形態3に係る加硫装置1を示す断面図である。以下、本発明に係る他の実施形態(実施形態3)について説明する。
本実施形態においては、下側温度調節手段30及び上側温度調節手段31が断熱材である点で実施形態1,2と異なる。
同図において下側温度調節手段30及び上側温度調節手段31は、下金型4及び上金型8の半径方向外側の面に密着して配置された断熱材である。
断熱材は、グラスウール等であって、実質的に下金型4及び上金型8と外気との接触を遮断し、熱移動を無くすものであればよい。
【0022】
本実施形態に係る加硫装置1においても、下金型4及び上金型8の半径方向外側に、下金型4及び上金型8と外気との熱移動を遮断する下側温度調節手段30及び上側温度調節手段31を備えたことにより、熱源としての下加熱手段3及び上加熱手段7から発生する熱は、下金型4及び上金型8における下側及び上側のサイド型付部4A;8Aへと伝達し、下金型4及び上金型8に伝達された熱が下ビードリング5、上ビードリング9、下金型4及び上金型8における下側及び上側のクラウン型付部4B;8Bへと徐々に伝達し、当該部分を包囲するように設けられた半径方向外側の下側温度調節手段30及び上側温度調節手段31側に伝達し、下側温度調節手段30及び上側温度調節手段31から放熱されるため、加硫装置1が設置される場所の季節によって変動する外気温の影響を受けることなく、加硫装置1から外部に放出される熱量を一定とすることが可能となる。
また、放熱量が一定になることにより、外気温に応じた加硫プロセスの頻繁な変更、或いは、加硫プロセスの精密な制御の必要性がなくなり、恒温槽11に貯留される水の設定温度を変更するだけで、加硫プロセスの変更等による人為的ミスの発生や製品の不良率の増加を防止することができる。
また、台タイヤ2のビード部Tbに対応する位置に下ビード部加熱手段16及び上ビード部加熱手段17を設けたので、未加硫のビードフィラーを有する台タイヤ2のビード部Tbを極めて短時間で加硫することができる。
【0023】
次に、上記複数の実施形態に係る加硫装置1によって加硫された台タイヤ2を製品タイヤとして成型する方法について概説する。加硫成型を終えた台タイヤ2は、バフ掛け工程、トレッド貼付工程及び加硫工程を経て、製品タイヤとして成型される。
バフ掛け工程においては、台タイヤ2の外周面が図外のバフ掛け機によって研磨され、表面のゴムが目粗しされた状態とされる。つまり、加硫成型直後の台タイヤ2の外周面に相当するトレッド貼付面は、バフ掛け工程を経ることによって、目粗しされることによりバフ掛け面となる。
【0024】
トレッド貼付工程においては、台タイヤ2を保持する図外のタイヤ保持手段に対して台タイヤ2に内圧を加えた状態で保持させ、バフ掛け面に対してクッションゴムと呼ばれる未加硫ゴムを塗布、貼着し、当該クッションゴムを介して予め作成されたタイヤトレッドを台タイヤ2の外周面に巻き付けた状態とする。
【0025】
タイヤトレッドが巻き付けられた台タイヤ2は、加硫缶と呼ばれる加硫装置に搬入され、台タイヤ2とタイヤトレッドとの間に介在するクッションゴムが加硫されることにより台タイヤ2とタイヤトレッドとが一体化され、製品としての性能を発揮し得る製品タイヤとして製造される。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記実施形態においては、台タイヤ2を成型する金型を下金型4及び上金型8の上下(幅方向)二分割としたが、上下のタイヤサイド部Ts及びタイヤクラウン部Tcをそれぞれ個別に成型する複数の金型により、加硫を行う加硫装置を採用してもよい。さらに、上記実施例においては、タイヤクラウン部Tcを直接的に加熱するいわゆるアウターリングを設けない構成としたが、当該アウターリングが有する内部流路内に冷却媒体を供給し、タイヤクラウン部Tcに伝達された熱をアウターリングによって放熱させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 加硫装置、2 台タイヤ、2B ビードコア、2C カーカス、2D ベルト、
3 下加熱手段、4 下金型、5 下ビードリング、
6 下側温度調節手段、6A 配管、7 上加熱手段、8 上金型、
9 上ビードリング、10 上側温度調節手段、10A 配管、
11 恒温槽、12 固定盤、13 昇降機構、15 ブラダー、
20 下側温度調節手段、21 上側温度調節手段、
30 下側温度調節手段、31 上側温度調節手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫の台タイヤを加硫する台タイヤ加硫装置であって、
前記台タイヤのサイド部及びクラウン部を包囲する金型と、
前記金型の幅方向外側に位置し、前記金型を加熱する加熱手段と、
前記金型における前記台タイヤのクラウン部を包囲する位置に設けられる温度調節手段とを有し、
当該温度調節手段が、前記台タイヤのトレッド貼付面を型付けする面よりも半径方向外側に位置することを特徴とする台タイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記温度調節手段は、前記加熱手段内に供給される加熱媒体の温度よりも低い冷却媒体
を導通可能な流路であって、
当該流路が前記金型の内部又は外周面に当接して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の台タイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記温度調節手段は、前記金型における前記台タイヤのクラウン部を包囲する位置に設けられる断熱材であって、
当該断熱材が前記金型と外気との接触を遮断することを特徴とする請求項1に記載の台タイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記金型は、前記台タイヤのビード部を加熱するビード部加熱手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の台タイヤ加硫装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−6199(P2012−6199A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142792(P2010−142792)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】