説明

各種用途に用いられる熱改質カーボンブラック及びその製造方法

電気加熱式流動床炉は、カーボンブラック材のような微細粒状物質を連続的に熱処理するための工程に使用されるように作られている。前記熱処理工程は、非反応性の流動化ガスを炉のノズルを通じて所定速度で連続的に導入し、未熱処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックの流動床を形成し、電極に電圧を印加して流動床を加熱し、熱処理されたカーボンブラックを排出管から連続的に回収することにより行われる。排出管から回収されたカーボンブラックは、黒鉛化され、硫黄及びPAHが除去されており、水分の吸収作用は殆ど無く、高い耐酸化性を有している。得られたファーネスカーボンブラックは、粒径が7〜100nm、油吸収量が50〜300ml/100gである。なお、サーマルブラックは、粒径が200〜500nm、油吸収量は50ml/100gよりも少ない。熱で改質されたカーボンブラックは、食品と接触する種々の用途、水硬化性ポリマー系、亜鉛炭素乾電池、その他の電気化学的電源及び他の電子的用途、半導体ワイヤ及びケーブル、及びブラダ化合物の性能特性を向上させると共に、熱伝導性及び加工性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明者>
アヤーラ,ホルヘ アルマンド、メキシコ国籍、GA 30144,ケネソー,クラレドン トレース 2690;
ワング,ウェイドング、中国国籍、GA 30066,マリエッタ,アップランド ドライブ 3775;
エドワーズ,チャールズ、アメリカ合衆国国籍、GA 30075,ロズウェル,ウッドフォード パス 4455;
ハード,チャールズ アール.、アメリカ合衆国国籍、GA 30188,ウッドストック,メープル クリーク チェース 219
ランバ,ラクシット、インド国籍、GA 30101,アクワース,ブレードウッド ベンド 6087
<関連出願の説明>
本願は、2004年2月25日に出願された米国特許出願第10/786690号の一部継続出願であり、前記米国特許出願はは、2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666048号の一部継続出願である。
本願は、2004年2月25日に出願された米国特許出願第10/786690号の優先権を主張する。
本願は、2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666048号の優先権を主張する。
2004年2月25日に出願された米国特許出願第10/786690号と、2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666048号は、引用を以て本願に組み入れられるものとする。
<付属マイクロフィッシュへの言及>
非適用
<発明の背景>
1.発明の分野
本発明は、熱処理されたカーボンブラックに関する。本発明は、より具体的には、熱で改質されたカーボンブラック(thermally modified carbon blacks)に関するもので、食品と接触する種々の用途、水硬化型ポリマー系、亜鉛−炭素乾電池、亜鉛二酸化マンガンアルカリ電池、その他の電気化学的電源及び電子的用途、半導体ワイヤ及びケーブル用として優れた特性を有し、硬化性ブラダ化合物にすぐれた特性をもたらし、さらなる用途を提供する。カーボンブラックは、本発明に係る連続的熱処理工程で製造される。
【背景技術】
【0002】
<発明の全体背景>
従来、カーボンブラック材は、経済のあらゆる局面において数多くの用途を有しており、広範囲に亘る市場製品には、組成の一部にカーボンブラックが含まれている。しかしながら、使用形態によっては、例えば高純度カーボンブラック材がもつ特性を有するカーボンブラックを使用することがさらに有利であることが分かった。しかし、これまでは、このような高純度のカーボンブラックを、商業的用途に十分な量を製造したり、経済的継続を可能とするのに十分短い時間で製造することが困難であった。現在、産業によっては、性能が改良されたカーボンブラックに対する要請がある。これら産業における用途として、食品と接触する種々の用途、水硬化型ポリマー系、亜鉛−炭素乾電池、亜鉛二酸化マンガンアルカリ電池、その他の電気化学的電源及び電子的用途、半導体ワイヤ及びケーブル用があるが、これらに限定されるものではない。これら用途に使用できる高純度のカーボンブラックは、後記する本発明に係る連続熱処理工程によって製造されるカーボンブラックである。
【0003】
<食品と接触する種類の用途>
食品医薬品局(FDA)の規則21CFR178.3297では、全温度条件下で、食品を生産、製造、包装、加工、調製、処理、パッケージング、輸送又は保持する際に、ポリマー(2.5重量%以下の装填)の着色剤として、高純度ファーネスブラック(<5ppbのベンゾアルファピレンを有する<500ppbの22多環式芳香族炭化水素(PAH)化合物)を使用することを許可している。典型的なファーネスブラックのPAH濃度は、FDA規則で許容される値よりも高い。FDA規則に適合するグレードのファーネスカーボンブラックの数は非常に限られている。しかしながら、これらグレードで提供される形態(morphology)は、しばしば限られている。これら用途には、FDA規則の対象外であるチャンネルブラックも使用されるが、これは、西半球つまり西ヨーロッパではもはや製造されていない。
【0004】
広範囲の形態を有する食品と接触する種々の用途において、FDAの全ての規則に適合させるのに必要な特性を有するように熱的に改質されたカーボンブラックを製造することは有益である。
本明細書の中に記載するカーボンブラックの形態について、一次粒子のサイズ及びサイズ分布、並びにアグリゲートのサイズ及びサイズ分布はASTM−D3849によって測定される。
【0005】
<半導体ワイヤ及びケーブルの用途>
カーボンブラックは、絶縁された送電ケーブルの半導電性シールドに使用されている。これらの半導電性材料の体積抵抗率は、一般的には、10-1〜108オーム−cmの範囲内である。これらの材料は、典型的には、ポリオレフィン、導電性カーボンブラック、酸化防止剤及びその他の添加剤を含んでいる。これらシールドの主な目的は、静電気の蓄積を防止することにより、一次絶縁の長期寿命を確保することである。ケーブル寿命は長い方が好ましく、それは導体シールドの界面の滑らかさを通じて達成される。表面の滑らかさは、粒径が大きい(表面積が小さい)カーボンブラックを用いることによって実現される。しかしながら、カーボンブラックの粒径が大きいほど、抵抗が高くなる。半導体化合物の界面の滑らかさを高めるために、一般的に、アセチレンカーボンブラックが用いられる。しかしながら、この種のブラックは、製造及び加工が難しいため、ファーネスカーボンブラックと比べると、形態が非常に限定される問題がある。
【0006】
化合物に対して、少なくともアセチレンカーボンブラックと同等レベルの界面の滑らかさを有し、加工が容易で、より優れた導電性及びメルトフロー特性をもたらすことができ、さらには、アセチレンブラックとは異なり、様々な形態を得ることができ、また、半導性化合物において極めて望ましい特性である低吸湿性を有するように、熱で改質されたファーネスカーボンブラックを製造することは利益がある。
【0007】
<電気化学的電源>
「電気化学的電源(electrochemical power source)」という用語は、一般的には、化学的又は電気化学的反応の結果として電流を生成することができる装置であると理解される。炭素質材料(carbonaceous materials)は、据置式電源及び可搬式電源に広く使用されている。世界の市場には、約50種類の商業的に実現可能な電気化学的電源がある。それらの多くは、設計上、1又は複数の理由でカーボンを使用している。
【0008】
炭素質材料の用途は、以下に記載の幾つかの主なグループに分けることができ、それらは、発行された文献にて参照することができる。
[1] I. Barsukov. Applications for Battery Carbons., Battery Power Products and Technology, v. 4, 9, P.30, 2000.
[2] I.V. Barsukov, J.E. Doninger, P.L. Zaleski. Novel Classification and an Application Overview of Graphitic Products used in Power Sources., Book of Abstracts of the 54th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry, Sao Pedro, Brazil, Abstract # 445, 8-9/2003.
[Carbon additives, which enhance electronic conductivity of battery active materials]:リチウムイオン電池及びリチウムポリマー電池の正極の他、殆ど全てのアルカリ一次及び再充電可能な鉛酸及びリチウム一次電池系に使用される。
[Graphitic carbon as electrode active material]:リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、並びににメタルフリー電池及びセミメタル電池の一部に使用される。
[Catalysts of chemical and electrochemical reactions in batteries and fuel cells]:用途の一例として、亜鉛空気電池又は「補聴器」用電池系のガス拡散電極の他、燃料電池のガス拡散層がある。
[Carbon as battery assembly components and "processing aid" additives]:用途には、 燃料電池のセパレータプレート、炭素/亜鉛(重負荷用)電池の炭素棒、炭素−炭素複合電池、スーパーコンデンサなどがある。
[Application of carbonaceous materials as an ingredient of the coatings used in power sources]:カーボンコーティングの適用例として、二重層の電子キャパシタ、電気化学的ウルトラキャパシタ「スーパーキャパシタ」、亜鉛炭素電池、リチウムイオンポリマーのカソード及びアノードの集電体の基体コーティング、電解液を有するリチウムイオン電池(正極及び負極用フォイルコーティング)、亜鉛空気一次及び再充電可能電池、アルカリ亜鉛二酸化マンガン一次及び再充電可能電池の缶コーティングがある。
【0009】
本願発明は、上記記載の全ての用途に適用できるもので、商業的に実施可能の他、開発段階にある可搬式及び据置式の電源を含んでいる。
電源に必要とされる炭素質材料の特性に関する幾つかの例を以下に記載する。
【発明の開示】
【0010】
<亜鉛−炭素「乾電池」への適用>
アセチレンカーボンブラックは、一般的には、(亜鉛−炭素)乾電池に使用され、導電性をカソード(二酸化マンガン)に付与し、さらに電解質を保持(吸収)する。このように、カソード混合物中により多くの電解質を保持するができるので、アセチレンブラックは魅力的な材料である。しかしながら、混合工程中、電解質の保持能力が低下しないように、カーボンブラック凝集体(アグリゲート)の著しい剪断(構造上の破壊)を防止せねばならない。アセチレンブラックの凝集体は大きいが、構造は弱い[D. Linden, Handbook of Batteries and Fuel Cells, 3rd ed., McGraw-Hill Book Co., Inc. New York, N.Y. 1995]。アセチレンブラックの望ましい特性は、硫黄が少なく、吸湿性が低く、電解質吸収力が大きいことにある。
【0011】
それゆえ、アセチレンブラックの好ましい特性を全て具備すると共に、凝集体の構造強度がより大きく、熱酸化に対する抵抗性にすぐれるように、熱で改質された(thermally modified)カーボンブラックを製造することは有益である。
【0012】
<アルカリ電池系>
電気化学系の一次及び二次アルカリ電池Zn\KOH\MnO2は、この範疇における電源の代表例である。これら電池において、粉末炭素質材料は、MnO2(電解二酸化マンガン(EMD)又は化学的二酸化マンガン(CMD))カソードの導電性を向上させることを目的として使用される。また、これら電池には、「缶コーティング」とも称される炭素含有導電性懸濁液が、処理助剤として、また、EMDカソードと正極集電体の界面における導電性ブリッジ橋(conductivity bridge)として使用される。
【0013】
従来のカーボン(及び/又はアセチレン)ブラックは、1980年中頃には、多くのアルカリ亜鉛二酸化マンガン電池において、少なくとも導電性向上を目的とするための使用は中止されていた。しかしながら、一部の電池メーカーは、今でも、特定電源の放電電流密度性能を高めるために、少量のカーボン(アセチレン)ブラック(MnO2ベースの電極に対して0.01〜8重量%)を使用している。しかしながら、カーボン(アセチレンブラック)とMnO2の間で熱力学的に不安定な反応が起こる可能性が高いため、炭素質材料の適用は制限される。カーボンブラック構造は黒鉛の性質を有するので、表面グループの量(炭素表面の化学物質に到達する酸素の量)が減少し、カーボンブラックの粒径が粗大化し、粉末の「スプリングバック」特性が制御される。また、MnO2と、例えばグラファイトの如き他の炭素質材料と混合することにより、MnO2マトリックスの導電性が向上するので、この電気化学系では、カーボンブラックは、唯一の炭素質材料として、又は作り出されたブレンド又は複合物の一部として用いられることができる。以下に記載の方法によってカーボンブラックを熱処理することにより、前記用途に適合させることができる。
【0014】
<水硬化型ポリマー系(Moisture Cured Polymer Systems)への適用>
カーボンブラックをシーラントに用いる場合、最も重要の要件の一つは、水分吸収性つまり吸湿性(moisture pickup)が非常に小さいことである。シーラントのメーカーは、カーボンブラックを乾燥しなければならず、水分吸収を防止するために乾燥窒素のもとで保存しなければならない。これは、工程数を増やすので、コスト高を招く。それゆえ、水分吸収が実質的にゼロとなるように熱改質されたカーボンブラックを製造することは有益であり、これにより、カーボンブラックの乾燥工程の実施及び乾燥条件下での保存が不要となる。
【0015】
<硬化性ブラダ(curing bladder)への適用>
この用途では、熱処理によって改質されたカーボンブラックを硬化性ブラダ化合物に使用することにより、(疲労特性によって予想される)ブラダの寿命を長くすることができ、従来の硬化性ブラダ化合物と比べて熱交換の向上がもたらされる。
【0016】
一般的に、これまでのブラダ化合物は、N300シリーズのカーボンブラックを使用するか、又はアセチレンカーボンブラックとN300シリーズのブラックを組み合わせたものを使用する。N300シリーズのブラックはブラダ化合物を強度を向上させるのに対し、アセチレンブラックは、硬化ブラダの重要な要素である熱伝導率の向上に寄与する。
【0017】
この用途において、熱処理されたブラックは、アセチレンブラックと比べて、熱伝導性の向上に寄与する。それゆえ、これらブラックとN300シリーズの組合せを含む硬化性ブラダ化合物は、よりすぐれた熱伝導性を有し、より長い疲労寿命を有する。ブラックは、単独使用でもよいし、組合せ使用でもよい。例えば、熱処理されたブラックとN300シリーズのカーボンブラックを挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
<熱処理されたグラファイトカーボンブラックの他の適用例>
熱処理された本発明に係るカーボンブラックは、単独で使用されることもできるが、他の材料との混合物(つまり人工的に作り出された複合材)の一部として、従来のカーボンブラックの代替物として使用されることもできる。その用途は数多くあり、電子抵抗に依存する装置の構成要素(例:マイクロホンの構成要素、抵抗器、歪み感受性、温度感受性及び電流感受性の抵抗器)、石油掘削用添加物(例:ストップロス循環井戸及び石油掘削市場において、単独で使用されてもよいし、又は他のストップロス添加剤と共に使用されてもよく、限定されるものでないが、グラファイト、カーボンブラックの他の形態、ガラスビーズなどがある)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
<現在のファーネス処理工程>
上記用途及び他の多くの潜在的用途に適合し得る十分な純度のカーボンブラックを製造する上で重要な点は、カーボンブラックが熱処理工程により熱で改質されることである。高純度のカーボンブラックはこれまでバッチ式黒鉛化法(batch graphitization methods)によって製造されてきたが、この方法は、工程を完了するのに数日乃至数週間を要したため、得られる純粋なカーボンブラックは、商業的に必要な量を合理的な価格で得られるものではなかった。熱処理されたカーボンブラックは、熱伝導性向上のための構成要素(例えば、硬化性ブラダ化合物、熱伝達流体など)として使用されることもできる。
【0020】
炭素質材料の高温精製と高温化学合成のために電気加熱式流動床(Electro Thermal Fluidized Bed; EFB)炉を使用することは公知であり、夫々、米国特許第4160813号及び第4547430号に記載されている。これらの方法は、米国特許第4543240号に示されるように、流動床炉を使用するもので、前記EFB炉の流動床部の横断面は、その高さに沿ってほぼ一定であり、流動化ガスは、炉の底部にある分散板を通過して略垂直方向に延びる複数のガスノズルを通じて炉の中へ導入される。この種のEFB炉は、一般的に、気泡式EFB炉("bubble" EFB furnaces)と呼ばれる。
【0021】
気泡式EFB炉を用いた精製及び熱処理方法は、106μm(140メッシュ)程度の粒子に有効である。しかしながら、気泡式EFB炉の場合、75μm(200メッシュ)よりも小さな粒子に対してはうまく実行することができない。さらに、気泡式EFB炉は、例えば、フレーク状、針状その他不規則形状の粒子には有効でなく、また、粒径分布が広範囲に亘る粒子、特に、材料に含まれる150μm(100メッシュ)よりも小さな微粒子の含有量が多い(30%より大)場合にも有効でない。
【0022】
気泡式EFB炉を用いて多分散材料の処理及び/又は合成を行なうと、106μm(140メッシュ)より小さい粒子の生成を伴う。即ち、粒子は、EFB炉の有効領域の外側を流動化ガスによって循環させられる。この結果、原料に対して、処理された製品の収率は低下する。これは、特に気泡式EFB炉を用いた場合に当てはまるもので、気泡式EFB炉では、原料が流動床の上部に導入され、処理された粒子が炉の底部から排出されるからである。
【0023】
特に、40μm(325メッシュ)よりも小さな微粒子や形状が不規則な粒子の場合、流動化ガスが気泡式EFB炉のチャンネルを通過する際、粒子を均一に流動させることは極めて困難であるか、又は不可能であることがわかった。この理由は、微粒子の表面積が比較的大きいことから、小粒子間の凝集力(グラム/インチ2)が高くなることと、流動床の底部に流動化ガスの停滞域が生成されることによると考えられている。
【0024】
それらの欠点は、気泡式EFB炉の特定の流体力学のためである。特に、ガス分散板とその複数の垂直向きのガスノズルによって多くの局部的循環ゾーンが作られ、各ゾーンは、分散板上の単一ノズル又は複数のノズルの周りに形成され、粒子とガスの混合物の上向きの流れと、粒子の下向きの流れが生成される。
【0025】
<発明の要旨>
本発明は、高純度カーボンブラックを製造する方法において、新規な電気加熱式流動床炉を提供するもので、炉の本体は、上部円筒部と下部円筒部を有しており、上部円筒部の直径は、下部円筒部の直径より大きい。下部円筒部の下方に円錐部があり、円錐部と下部円筒部は流動化ゾーンを形成し、上部円筒部はオーバヘッド(overbed)ゾーンを形成する。炉には、上部円筒部及び下部円筒部を延びる少なくとも1つの電極が配備され、円錐部の下端には、処理後の材料を排出する排出管が設けられている。炉本体の上部には、原材料を下部円筒部に導入するための供給管と、流動化ガスを排出するための少なくとも1つのガス排気管が配備される。円錐部には、流動化ガスを炉内に導入するため複数のノズルが配備され、ノズルは、ほぼ水平面内に配置され、ノズルを通って導入される流動化ガスの流れは交差し、炉本体の中央部に上向きの流れを形成する。
【0026】
このような電気加熱式流動床炉は、カーボンブラック材のような微細粒状物質を連続加熱処理するための新規な工程に用いられるように構成されており、前記工程は、非反応性(non-reactive)流動化ガスを所定速度で炉のノズルを通じて連続導入し、未処理のカーボンブラック材の流動床が形成されるように、供給管を通じて、カーボンブラック材を所定速度で連続的に炉の中へ導入し、流動床が加熱されるように電極に電圧を印加し、処理されたカーボンブラックを排出管から連続的に回収することを含んでいる。カーボンブラックを熱で改質するために使用される本発明の熱処理工程は、2003年9月18日に出願され、Superior Graphite Co.へ譲渡された米国特許出願第10/666614号"Method and Apparatus For Heat Treatment of Fine Particles In An Electrothermal Fluized Bed furnace"に開示されており、この特許出願の内容全体は、引用を以て本願への記載加入とする。
【0027】
排出管から回収されたカーボンブラックは、PAHと硫黄が実質的に除去されている。このカーボンブラックは略黒鉛化され、カーボンブラックによる水分吸収は殆ど無く、改良された耐酸化性を示している。また、熱処理されたカーボンブラックは、金属と灰は殆ど含まれておらず、流動性の向上、pHの上昇、熱伝導性の向上、弾力性の向上を呈する。さらにまた、得られたファーネスカーボンブラックは、粒径が7〜100nm、油吸収量は50〜300ml/100gである。一方、サーマルブラックは、粒径が200〜500nm、油吸収量は50ml/100gである。
【0028】
さらにまた、この連続処理工程では、形態学的にも十分な範囲内の熱改質ファーネスカーボンブラック及びサーマルカーボンブラックを、商業的に有用な量を製造することができ、これらカーボンブラックは、所定用途での使用において経済的効果をもたらす。
【0029】
熱で改質されたカーボンブラックは、食品と接触する種々の用途、水硬化型ポリマー系、亜鉛炭素乾電池、アルカリ電池のような電気化学的用途、その他の電気化学的電源及び他の電子的用途、半導体ワイヤ及びケーブルの用途、熱伝導性び加工性が改良された硬化性ブラダ化合物、ここには具体的に記載されないが適用可能な他の用途において、改良された性能を発揮できるような特性及び純度を有している。カーボンブラックは、前述の連続的熱処理によって製造されるが、前述以外にも、関連する他の方法によっても製造されることはできるであろう。
【0030】
本発明の目的は、電気加熱式流動床炉の工程にて、カーボンブラック材のような微細粒状物質の特性を熱で改質する方法を提供するものであるが、以下の説明では、前記工程を「熱処理工程(heat treatment process)」と称されることもある。
【0031】
本発明のさらなる目的は、食品と接触する種々の用途において、FDA規則に適合するように熱で改質されたカーボンブラックを提供することである。
【0032】
本発明のさらなる目的は、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンアクリレート、シアノアクリレート、エポキシ及びシリコーン等の水硬化型ポリマー系の用途において、カーボンブラックの性能特性が改善されるように熱で改質されたカーボンブラックを提供することである。
【0033】
本発明のさらなる目的は、亜鉛炭素乾電池に用いられ、アセチレンブラック又は高構造(high structure)カーボンブラックのもつ好ましい特性を全て有すると共に、電極マトリックスにおける高導電性、より強い構造、制御された弾力性、電解質吸収性、すぐれた耐熱酸化性を具備するように、熱処理工程を経て製造され、熱で改質されたカーボンブラックを提供することである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、アルカリ、リチウムイオンその他の電気化学的電源に用いられ、アセチレンブラック又は高構造カーボンブラックのもつ好ましい特性を全て有すると共に、電極(活性)マトリックスにおける高導電性、より強い構造、制御された弾力性、電解質吸収性、すぐれた耐熱酸化性を具備するように、熱処理工程を経て製造され、熱で改質されたカーボンブラックを提供することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、導電性用として用いられ、アセチレンブラック又は高構造カーボンブラックのもつ好ましい特性を全て有すると共に、活性マトリックスにおける高導電性、より強い凝集体構造、制御された弾力性、すぐれた耐熱酸化性を具備するように、熱処理工程を経て製造され、熱で改質されたカーボンブラックを提供することである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、半導体ケーブル用として用いられるように、熱処理工程を経て製造されたカーボンブラックを提供するもので、少なくともアセチレンブラックと同等の界面の滑らかさを有し、加工性、導電性及びメルトフロー特性を良好にする一方で、アセチレンブラックとは異なり、種々の形態製作が可能であり、吸湿性が低い。この低吸湿性は、半導体化合物として極めて望ましい特性である。
【0037】
本発明のさらなる目的は、電気加熱式流動床炉での熱処理工程を経て製造された高純度カーボンブラックを提供するものである。カーボンブラックは、PAH及び硫黄がほぼ除去され、ほぼ黒鉛化され、揮発性金属の含有量が低減されており、カーボンブラックによる水分吸収は殆んど無く、カーボンブラックの耐酸化性は向上する。
【0038】
本発明のさらなる目的は、熱処理工程を経て熱処理されたカーボンブラックを提供するもので、粒径7〜100nm及び油吸収量50〜300ml/100gのファーネスカーボンブラックと、粒径200〜500nm及び油吸収量50ml/100g未満のサーマルブラックを含んでいる。
【0039】
本発明のさらなる目的は、対象とする用途により異なる重要な特性、例えば、漆黒度(jetness)、粘度/加工、分散性、衝撃強さなどの性能特性に応じて、所望の特性を有するファーネスカーボンブラック又はサーマルカーボンブラックを提供することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、形態に関する自由度が大きく、カーボンブラック充填ポリマーのマスターバッチで、40%よりも多くの装填が可能なカーボンブラックを提供することである。これは、FDA規則に適合するこれまでのカーボンブラックでは達成できなかったものである。
【0041】
本発明のさらなる目的は、熱処理工程において熱処理されたカーボンブラックを提供するもので、ブチル硬化性ブラダ化合物の中にPureBlackをN330と共に含んでおり、該化合物は、改良された熱伝導性と、改良された疲労性能を発揮する。
【0042】
本発明のさらなる目的は、熱処理により熱で改質されたカーボンブラックを硬化性ブラダ化合物に適用することであり、従来の硬化性ブラダ化合物と比べて、ブラダ寿命の向上及び改良された熱伝導性をもたらすことができる。
【0043】
本発明の性質、目的及び利点については、以下の詳細な説明によって理解されるであろう。なお、添付の図面において、同じ要素については、同じ符号を付している。
【0044】
熱で改質された本発明のカーボンブラックは、食品と接触する種々の用途、水硬化型ポリマー系、乾電池、アルカリ電池、亜鉛空気電池、リチウムイオン電池、ニッケル−金属水素化物電池、ニッケルカドミウム電池及び他の電気化学電源、その他の電気化学的用途、半導体ワイヤ及びケーブル用として優れた特性を有することができる特性及び純度を有している。なお、本発明のカーボンブラックは、ここには記載されない他の用途に対しても適用することができる。
【0045】
熱で改質された本発明のカーボンブラックの様々な用途を説明する前に、図1を参照して、電気加熱式流動床炉について説明する。本発明の方法は、前記炉を通過させることによって行われ、カーボンブラックは熱で改質され、様々な用途において独特の品質がもたらされる。
【0046】
図面を参照すると、本発明のファウンテン型(fountain-type)EFB炉(1)が示されている。ファウンテン型流動床は、噴出(spout)型又はジェット(jetting)型流動床としても知られており、その主な特徴は、単一の強い循環流が形成されることであり、粒子とガスの混合物は、流動床の中央部を上向きに流れ、粒子は、炉壁に沿って下向きに流れる。中央の上向きの高速の流れは、固体粒子を共に運搬し、微細な粒子群の形成を防いで、チャンネル形成が防止される。垂直方向の速度勾配により、多分散粒子材料の全てのフラクションの十分な流動化が達成される。
【0047】
図1を参照すると、炉は本体シェル(10)を有し、一般的に、スチールから作られ、断熱材(14)で被覆されている。炉本体(12)は、一般的に、グラファイトで作られている。炉本体は、下部円筒部(16)と上部円筒部(18)を有しており、上部円筒部(18)は、下部円筒部(16)の上方にあり、中央の円筒部(16)よりも直径が大きい。中央の円筒部(16)の下には、円錐形のガス分配器(20)が配備され、該ガス分配器(20)は流動化ガスを分配する複数の分配ノズル(22)を有している。ノズル(22)は、流体の流通可能にプレナム(24)と接続され、流動化ガスは入口(26)から前記プレナム(24)へ導入される。円錐形のガス分配器(20)の中心角(アルファ)は、30〜90度、望ましくは、40〜60度である。炉本体(12)において、ガス分配ノズル(22)の上から、下部円筒部(16)の上面部までの空間は、流動床ゾーン(28)を構成する。流動床ゾーンより上の空間は、上部円筒部(18)と略一致しており、床上空間又はフリーボードゾーン(30)として知られている。本発明の炉において、流動床領域(28)の作用高さHfbは、ノズル(22)と下部円筒部(18)の上端部との間の距離と略一致する。流動床ゾーン(28)の最上部で気泡流動化領域が形成されないように、Hfbは、下部円筒部(16)の内径IDfbの1.5〜2倍以下であることが望ましい。なお、取り込まれた全ての粒子がガスの流れから分離されて、炉の流動床空間へ確実に戻されるように、フリーボード領域つまり床上空間HOV.Sの最小高さは、流動床Hfbの高さの1.5倍が望ましい。
【0048】
各々の円筒部(16)(18)と、円錐形のガス分配器(20)は、断面が円形又は楕円形であることが好ましい。その他の形状の断面(例えば、正方形、矩形、八角形など)であっても、所望の流体力学特性を発揮することはできるが、実際には、そのような形状は、炉による熱膨張のため、実行不可能であろう。
【0049】
細長い電極(32)は、最上部(34)から、上部円筒部(18)及び下部円筒部(16)を通って、炉本体(12)の中を延びている。電極(32)は、例えばグラファイトのように、導電性で耐熱性の材料から作られることが望ましい。単一の電極が使用される場合、その電極は、垂直軸Yと同一線上に揃うように炉本体の中央に配置されなければならない。複数の電極が使用される場合、電極は、中心軸Yの周囲に対称に配置されなければならない。下部円筒部(16)は、細長い電極(32)に関してほぼ同軸に配置された第2のスリーブ型電極(36)を含んでいる。スリーブ型電極もまた、例えばグラファイトのように、導電性で耐熱性の材料から作られることが望ましい。電極(32)(36)は、電源(図示せず)の両端部に接続されており、電源は、一般的に、2つの電極(32)(36)間に20〜200ボルトを供給する。電極間に電極が印加されると、電気エネルギーの熱への変換式I2rに基づく直接電気抵抗により、流動化材料は急速に加熱される。
【0050】
炉本体(12)の流動床ゾーン(28)へ原料を連続供給するために、供給管(38)が配備されている。図示の如く、供給管(38)は、垂直方向に配備され、炉本体(12)の最上部(34)から、上部円筒部(18)を通って下向きに延びており、その出口は、下部円筒部(16)の最上部又はそれより下の壁に隣接している。それゆえ、原材料は、供給管(38)から流動床の中へ導入される。流動床の少なくとも上面は、流動床の中を循環する固体粒子が下向きに流れる領域である。このため、原材料の流動床への装填はより容易に行われるから、未処理の粒子が流動化ガスが上向きの流れに取り込まれてオーバベッド(床上)空間へ運び込まれる可能性は少なくなり、処理された粒子と原材料の混合はより良好に行われる。
【0051】
炉本体の底部は、排出口(40)を含んでおり、該排出口を通じて、固形廃棄物は、機械的装置又は可動部材を用いることなく、重力流によって連続的に引き出される。排出口(40)は、円錐形のガス分配器(20)から垂下し、排出口(40)への入口は、円錐形のガス分配器(20)の先端と略一致している。
【0052】
ガス状廃棄物は、炉本体(12)の最上部(34)にある1又は複数の排出管又はガス排気管(42)を通じて引き出される。この廃棄ガスは、必要に応じて、粒子及びガス状汚染物質を制御するために、容易に浄化され、処理されることができる。
【0053】
本発明において、円錐形のガス分配器(20)は、複数の流動化ガス用入口ノズル(22)(8個を図示)を含んでおり、該ノズルを通じて、流動化ガスは炉本体(12)に導入される。本発明の方法において、流動化ガスは、典型的には、窒素、アルゴン、又はその他の非反応性ガスである。ノズル(22)の向きは、流動化ガスが交わるようにスプレーされ、強力で一様な上向きの流れが形成される方向である。流動化ガスがノズルから出る速度(流動化ガス速度)は、流動化される材料の粒径に依存することは理解されるであろう。
【0054】
一実施例において、図3に最もよく示されているように、ノズル(22)は、夫々の軸Xが放射状に配置されており、流動化ガスは、円錐形のガス分配器(20)の中心に向けて放出される。他の望ましい実施例として、ノズル(22)は、図4に最もよく示されるように、夫々の軸Xが、ノズルの位置にて、円錐形のガス分配器(20)の接線に対して10〜20°の角度β(ベータ)を成すように配置される。ノズル(22)の軸Xがノズル円の略接線方向に配置されることにより、流動床の回転がもたらされ、流動床はより安定する。また、細長い電極(32)の位置が中心軸Yからどのように偏位しても、その影響は少なくなる。このため、流動粒子と高速の円錐形ガス分配器(20)との接触は防止されるので、摩擦による過度の損耗を防ぐことができる。
【0055】
流動化ガスが、処理される粒子の炉(10)からの排出を妨害又は中断しないように、ノズル(22)は、ガス分配器(20)と排出口(40)の入口の接続部から高さHNの位置に配置されることが好ましい。HNは、円錐形のガス分配器(20)の全体高さHTCの0.5〜0.75が望ましく、0.6〜0.65HTCがより望ましい。
【0056】
各ノズル(22)は、そのX軸に直交するリング径を有しており、そこで自由断面積が規定される。ノズル(22)の自由断面積の合計は、流動床の円筒部の断面積、即ち下部円筒部(16)の断面積の0.15〜0.5%とすべきである。ノズル(22)の自由断面積は、流動床の断面積の0.25〜0.4%が好ましい。
【0057】
EFB炉にて微粒子材料を処理する本発明の方法は、前記説明から自明であろう。まず、未処理の粒子材料が、供給管(38)を通り、EFB炉(10)の反応ゾーンへ、重力によって連続的に供給される。未処理の粒子材料は、微細で不規則な形状又は多分散系の材料を含んでいてもよい。実験例では、多分散系材料は、粒径1.7mm(12メッシュ)から5μmまで小さいものが含まれる。さらに、未処理の粒子は、導電性又は半導性の材料であり、例えばカーボンブラック、コーク(フルードコーク(fluid coke)、グリーン・フレキシベッド・コーク(green flexi-bed coke)、ディレードコーク(delayed coke)など)及びグラファイトなどの炭素質材料である。未処理の粒子材料は、粒子の下向きの流れの流動ゾーンの最上部又はその直ぐ内部位置で、供給管(38)から排出される。
【0058】
供給管から排出された材料は、下部円筒部(16)の位置に略対応する炉の領域内で流動状態に維持され、電流が流動床を通って送られ、材料は、一般的には2200〜2400℃の高温に均一に加熱される。
【0059】
処理された粒子材料は、未処理の粒子が導入された速度と略同じ速度で、重力作用によよって排出管(40)を通じて連続的に引き出される。その速度は、流動床内で粒子材料が所望の熱処理を施されるのに十分な時間を得られる速度である。EFB炉を使用する本発明の方法において、未処理材料を排出するために、炉内部には、機械的な装置又は可動部品を必要としない。
【0060】
管(40)を通じて排出された後、処理後の材料は、冷却チャンバー(図示せず)で冷却される。また、ガス状排出物は、炉本体(12)の最上部(34)にあるガス排気管(42)を通じて引き出されることができる。このガス状排出物は、汚染物質としての要求程度に応じて、容易に洗浄及び処理されることができる。
【0061】
本発明のEFB炉を使用し、微粒子を熱処理することにより、処理された粒子の回収率の試験結果は90+%であり、従来の気泡式EFB炉を使用したときの回収率(一般的には66%より少ない)と比べて、回収率は著しく向上した。さらに、流動化の臨界速度は、気泡式EFB炉の速度と比べて低下し、本発明のEFB炉では約0.30フィート/秒〜約0.25フィート/秒であった。
【0062】
カーボンブラックの熱処理工程では、性能特性を改良するために、800〜3000℃の範囲内で熱処理される。下記の各用途において、熱処理工程の後、ファーネスカーボンブラックは、粒径が7〜100nmであり、油吸収量が約50〜300ml/100gである。サーマルブラックは、粒径250〜500nmであり、油吸収量が50ml/100gより少ない。各場合とも、上述した連続加熱炉工程でカーボンブラックの熱処理を行なうと、硫黄は実質的に除去され、カーボンブラックが黒鉛化され、カーボンブラックの耐酸化性は向上する。様々な用途において、これら変質した特性の利点は、テーブル1「熱改質によって付与されたカーボンブラック特性のマトリックス及び種々の用途にもたらす効果」に記載されており、その詳細は次のとおりである。
【0063】
<熱で改質されたカーボンブラックと水硬化型ポリマー系>
テーブル2は、熱処理なしのカーボンブラックと、図1〜図4を参照して説明した型式の炉(10)を使用して本発明の熱処理法によって熱処理したカーボンブラックについて、水分吸収データが示されている。テーブル2に示されるように、4種類のカーボンブラックについて、熱処理なしのものと熱処理を施したものを、1時間後及び平衡時の水分吸収率を測定した。テーブル2の結果から明らかなように、熱処理されたカーボンブラックは、熱処理なしのカーボンブラックよりも、水分吸収率が著しく低い。例えば、熱処理なしのサーマルブラックは1時間後の水分吸収率が0.18%であるが、熱処理されたサーマルブラックは同じ1時間後の水分吸収率が0.02%である。テーブル2に示されるように、水分吸収率の大きな差異は、他のカーボンブラック試料、CDX−975U(熱処理なし2.41%、熱処理有り0.17%)、N220(熱処理なし1.48%、熱処理あり0.08%)、N330(熱処理なし0.6%、熱処理あり0.02%)にも認められる。比較結果は、テーブル2中、「平衡時の水分吸収率(%)」に示されている。なお、テーブル2のカーボンブラックは、熱処理なしと熱処理ありの両方とも、コロンビアン・ケミカルズ・カンパニー製のカーボンブラックである。
【0064】
カーボンブラック中の金属不純物(塩)も、水分吸収を促進する。テーブル3は、熱処理を施すことにより、カーボンブラック(N220及びN330)中の金属及び灰の含有量が減少することを示している。
【0065】
技術背景の項で記載したように、水分吸収率が少ないこと(低吸湿性)は、水硬化型ポリマー系、半導体ワイヤ及びケーブルの製造において、重要な利点をもたらす。
【0066】
<熱で改質されたカーボンブラックと半導体ワイヤ及びケーブル>
発明の背景において、カーボンブラックは、絶縁電源ケーブル用半導体シールドに使用されることを説明した。アセチレンカーボンブラックは、一般的には、半導体化合物の界面に優れた滑らかさを与えるために使用される。しかしながら、この種のブラックは、ファーネスカーボンブラックと比べて製造及び加工が困難である。図1を参照して説明したように、カーボンブラックに熱処理を実施することにより、熱で改質されたファーネスカーボンブラックが製造され、得られたカーボンブラックは、界面の滑らかさが少なくともアセチレンカーボンブラックで得られるのと同等である。さらに、熱で改質されたカーボンブラックは、加工が容易であり、導電性及びメルトフロー特性が向上する。さらにまた、熱で改質されたカーボンブラックは、アセチレンブラックと比べて遙かに広い範囲の形態の製造が可能であり、半導体化合物に非常に望ましい低吸湿特性を有している。
【0067】
次に、テーブル4「コロイド特性」について説明する。テーブル4は、異なる3種類のカーボンブラックの比較を示しており、それらブラックは、CDX−975U(半導体化合物に使用されるファーネスカーボンブラック)、アセチレンブラック、及び上記熱処理法に基づいて約2000℃で熱処理されたCDX−975Uである。異なる3種類のカーボンブラックの様々な特性を比較すると、熱処理されたブラックは、ヨウ素価(mg/g)が98.8、NSA(m2/g)は71.9、DBPA(ml/100g)は156.8、イオン含有量は0.01%、pHは10.6、含水率は0.0である。テーブル4において、熱処理されたカーボンブラックとアセチレンブラックを比べると、コロイド特性は非常に似ているが、熱処理されたカーボンブラックは、広範な形態を提供することができるので、用途がより広く、より望ましい。
【0068】
非常に高構造のファーネスブラック及びアセチレンブラックの4種類の試料について、パラフィン油を使用し、油吸収量(oil absorption number; OAN)と、圧縮による油吸収量(compressed oil absorption number; COAN)を分析した。テーブル5の結果は、シャウィニガン(shawinigan)アセチレンブラックの構造安定性が最も小さいことを示している。熱処理されたCDX−975Uの2試料は、アセチレンブラックと比べて安定性が高いことを示している。凝集構造の安定性が高いと、これらカーボンブラックの導電性及び加工性が向上する。
【0069】
次に、テーブル6「10Ml LDPEに30%含有させたときの水分吸収(MPU)とメルトフロー特性」について説明する。前記と同じカーボンブラックの3つの試料について、10Ml LDPEに30重量%化合させたときのMPU特性とメルトフローインデックスを比較した。熱処理されたブラックは、化合前では、1時間後MPUは0.17%、平衡時のMPUは0.27%であり、化合物の平衡時のMPUは0.01%、メルトフローインデックス(g/10ml)は7.0である。これらの値を、熱処理なしの2つのブラック試料の特性と比較すると、熱処理されたカーボンブラックの特性は、より望ましいことが明らかである。なお、メルトフローインデックスの荷重条件は、190℃、10キログラムである。
【0070】
テーブル7は、アセチレンブラックと、熱処理されたCDX−975Uの2種類のカーボンブラックを含むポリエチレンについて、体積抵抗率と加工性の関係を示している。テーブル7は、対数体積抵抗率(オームcm)に対するメルトフロー(gm/10min)のグラフであり、熱処理されたカーボンブラックは、他のカーボンブラックよりも体積抵抗率(オームcm)が非常に低いことを示している。
【0071】
次に、CDX 975Uについて、熱重量法を用いて、450〜650℃の純酸素及び大気中での燃焼速度を比較した。テーブル8は、燃焼速度(1分当たりの重量パーセント損失)を示している。これらは、サーモグラムの一次微分から推定したものである。燃焼速度が減少すると、燃焼の活性化エネルギーは熱処理の関数として増加する。CDX−975Uの熱処理は、2000℃の温度で行なった。
【0072】
試料は、まず最初に、目標の燃焼温度まで加熱し、不活性雰囲気下で10分間平衡化した後、2〜4時間、純酸素又は大気中に保持した。燃焼の活性化エネルギーは、アレニウスプロットの傾きから計算し、その結果はテーブル8に示されている。熱処理されたカーボンブラック試料の活性化エネルギーは、対照のCDX−975Uよりも高いことが示されている。
【0073】
<硫黄の関連試験方法>
カーボンブラック中の全硫黄分の測定に用いた方法は、酸素富化雰囲気でカーボンブラック試料を燃焼し、存在するすべての硫黄をSO2に転換するものである。検出されたSO2は、赤外線検出法によって定量化される。これは、"ASTM Standards", Vol. 9.01, Method 1619, part C-94,"Standard Test Methods for Carbon Black-sulphur Content(カーボンブラックの硫黄含有量の標準試験方法)"に記載されている。
【0074】
カーボンブラックの硫黄含有量は、原料油の硫黄含有量と直接関連がある。入手可能な原料油の大部分は、硫黄レベルが比較的高く、一般的には2%を越えている。カーボンブラック中の硫黄の大部分は、化学的に結合しており、反応性ではない。しかしながら、少量でも硫黄が含まれると、各種ゴム及び産業に大きな影響を及ぼすことになる。
【0075】
<化合されたプラスチックの1時間後及び平衡時の水分吸収≫
粒状プラスチック化合物を、一晩中80+25℃にて真空オーブンで乾燥し、冷却後、制御された湿度チャンバー(湿度=71+3%、温度=23+2℃)に移した。試料は、化合物の水分吸収量を測定するために、一定の間隔(最初の1時間は15分毎、その後の24時間は4時間毎、その後は24時間毎)で重さを測定した。測定時間は、一般的に、100時間を超える。化合物の平衡時の水分吸収量は、データのグラフィック処理により求めた。カーボンブラックが、プラスチックに化合された後、大気中の水分を吸収することは、加工中のプラスチックの特性に悪影響を与える。
【0076】
<カーボンブラックの1時間後と平衡時の水分吸収≫
この試験方法は、粉末又はビードのどちらの形態のカーボンブラックにも適用可能である。試料は、真空(1mmHg以下)下、100±25℃で少なくとも4時間乾燥させる。試料は、真空系から除去した後も、真空下にて、制御された温度及び湿度(湿度=71+3%及び温度=23+2℃)のグローブボックスに移される。真空状態を解除した後、ブラックは、予め計量されたアルミニウム製ディッシュに直ちに移され、カーボンブラックの重力測定が行われる。水分吸収量を求めるために、試料を、一定の間隔(最初の1時間は15分毎、その後の24時間は4時間毎、その後は24時間毎)で重量測定を行なう。カーボンブラックの平衡時のMPUの測定は、一般的には、1週間以上、一定の間隔で行われる。ブラックによって吸収される水分量は、カーボンブラックの物理的及び化学的特性によって影響を受ける。
【0077】
<熱で改質されたカーボンブラックを、食品と接触する種々の用途への適用>
カーボンブラックは、全温度条件下で、食品を生産、製造、包装、加工、調製、処理、パッケージング、輸送又は保持する際に、ポリマーの着色剤として、かなり頻繁に使用される。典型的なファーネスブラックのPAHレベルは、FDA規則で許容されるレベルを超えている。FDA規則に適合する品質のファーネスカーボンブラックは、非常に限定された数しか存在しない。しかしながら、これら品質を有するカーボンブラックも、製造可能な形態は限られている。そのような用途に使用されるチャンネルブラックは、FDA規則の対象外であるが、ますます入手困難になってきている。さらに、チャンネルブラックは、加工特性が極めて悪い。これに対し、熱で改質された本発明のカーボンブラックは、食品と接触する種々の用途に関するFDAの全規則に適合し得る特性を有しており、PAHレベルについても、PDA規則の許容範囲よりも低レベルである。
【0078】
本発明のカーボンブラックを、食品と接触する種々の用途に適用する際、それら用途に関するFDA基準に適合させるために、所定グレードのファーネス又はサーマルカーボンブラックへ熱改質するための熱処理は、連続式熱処理法が用いられる。この熱処理法の利点は、対象とする用途により異なる重要な特性、例えば、漆黒度、粘度/加工、分散性、衝撃強さなどの性能特性に応じて、どんなカーボンブラックでも使用できる自由度(flexibility)をユーザーに提供できることである。形態に関するこの自由度により、カーボンブラック充填ポリマーのマスターバッチは、40%よりも多くの装填(loadings)が可能となる。これは、これまでのFDA規則適合カーボンブラックでは達成できなかったものである。本発明は、カーボンブラックのPAH(多環式芳香族炭化水素)含有量をFDA基準に適合するレベルまで低減するのに有効な熱処理を明らかにするものである。例として挙げたN700シリーズ及びCDX−975Uは、コロンビアン・ケミカルズ・コーポレイションの製品である。
【0079】
FDA規格のスクロマトグラフィー・マススペクトル(GC−MS)法は、食品と接触する種々の用途におけるCBのPAH(多環式芳香族炭化水素)含有量の分析のために開発された。この方法は、カーボンブラックのPAH含有量を低減するために、特別な熱処理技術の能力を評価するために使用される。
【0080】
<PAH(多環式芳香族炭化水素)>
カーボンブラックは、常に、高温ガス流の中で形成され、熱分解を伴う。そのような炭素質原材料の熱分解により、芳香族化(環形成)がもたらされる。カーボンブラック形成過程において、環形成は、これらの芳香族環の縮合(condensation)が起こり、PAH化合物を生成し、これがカーボンブラック内に保持される。
【0081】
<FDA食品添加物規則>
FDA規格に適合する高純度のファーネスブラックは、22種類の500ppb(10億分の1)以下のPAH化合物(テーブル9参照)と、5ppb以下のベンゾピレンを含んでいる。PAH含有量の測定は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により行われる。
【0082】
<カーボンブラックの食品接触試験>
高温でのCBの熱処理は、CBの表面特性に著しい効果を生じる。熱処理されたCDX−975U、N700シリーズ及び熱処理なしのN700シリーズのカーボンブラックのPAH含有量は、FDA規格のGC−MS試験法を用いて求めた。その結果はテーブル10に要約されている。FDA規格に適合する競合カーボンブラックが、比較のために含められている。
【0083】
N700シリーズのカーボンブラックのPHA不純物は、熱処理によって大いに低減されること(≒1000X)は明らかである。N700シリーズ及びCDX−975UのカーボンブラックのPAHs及びBaPの合計含有量は極めて低く、FDA食品添加物用途の規制に適合する。CDX−975Uは、熱処理を行なうことにより、競合製品の純度(低PAH)を大きく凌いでいる。なお、CDX−975Uの熱処理温度は2000℃である。
PAH低減のための熱処理の一般的適用性をさらに強めるために、2種類の追加の製品グレードに対する結果をテーブル11に示している。
【0084】
<電気化学的電源用に用いられる熱改質カーボンブラックの実験例>
熱改質カーボンブラックのこの分野への適用に関して、亜鉛炭素電池及びアルカリ電池における試験結果の例を挙げる。上記電池系とその他電池系との間には類似点があるので、特許請求の範囲を、後述する他の多くの電池系まで広げることが可能となる。
【0085】
<実験例#1:亜鉛炭素乾電池への適用>
カーボンブラックは、乾電池(亜鉛炭素電池)に使用される。カーボンブラックは、この種電池系では、正極と炭素棒の両方に用いられる。
【0086】
本発明をこれに適用する場合、乾電池の性能特性を向上させるために、ここに開示した連続熱処理工程を利用し、800〜3000℃で熱処理することにより、ファーネスカーボンブラックの範囲を熱で改質する。
【0087】
電池のモックアップ試験結果研究(インド、SPICサイエンスファウンデーションの中央エネルギー研究所で実施)の報告において、すべての試験は、25mA、50mA及び100mAの放電電流で行われ、その結果はテーブル12に示されている。カソードの組成は、MnO2(87.5%)+グラファイト(2%)+カーボン試料(10.5%)+ZnCl2(30%)であった。
【0088】
試験された全ての試料の容量は、放電電流が低いときには高かった。しかしながら、硫黄含有量に関する傾向は同じであり、硫黄含有量の低い試料は、硫黄含有量の高い使用と比べて、カソード容量が優れている。
【0089】
結論として、前記の結果から明らかなように、カーボンブラックに熱処理を行ない、カーボンブラックを熱で改質することにより、優れた特性のカーボンブラックを作ることができる。
【0090】
<実験例#2:熱処理されたカーボンブラックをアルカリ電池に使用>
熱処理によるカーボンブラックの導電性向上を調べるために、Zn/KOH/MnO2の電気化学系のアルカリ電池を製作し、試験を行なった。
【0091】
アルカリ亜鉛二酸化マンガン系の電気化学電池(LR2016サイズ)を製造し、スペリオル・グラファイト・カンパニーで試験を行なった。電池の構造、並びに電池の製造及び試験の手順は以下に記載のとおりである。
【0092】
試験に使用した電気化学的装置は典型的なもので、図5に示されるとおり、標準の2016サイズ(直径20mm、高さ1.6mm)のコイン型電池である。この電池のステンレススチール製ハウジングは、Hoshen(日本企業)から入手可能である。図5は、電池の概要を一部破断斜視図で示している。この電池の構造は、例えば、文献[D. Linden. "Handbook of Batteries and Fuel Cells.", McGraw-Hill Book Co., Inc., New York, 1995, P. 10.10]に記載されている。
【0093】
図5に示される電池は、主たる構成要素として、ステンレス鋼のアノードキャップ(1)、カソードキャップ(6)及びナイロンガスケット(7)を有し、これらは電池のハウジングを示している。カソードキャップの内部は、エアブラシにより、グラファイトを含有した缶コーティング(5)が吹き付けられている。このコーティングは、例えば、スペリオル・グラファイト・カンパニーから入手可能であり、「Formula 39A」と称される商品である。カソード(3)は、活性材料EMDから成る。この材料の一例は、標準的なアルカリ電池ABであり、Kerr McGee(米国)から入手可能である。カソード中のEMD量に関する電気化学データの報告は、0.35g又は0.3gのどちらかである。導電性向上の目的でEMDに添加されてきたのはカーボンブラックの粉末である。カーボン量は、試験の目的によって異なる。ここでは、EMD/炭素の比が20/1に関するデータを報告する。湿性カソード合剤(wet cathode mix)(30重量%又は37重量%KOHの電解質を含浸)が、予め形成されたコーティング(4)及び乾燥カソードキャップへ押し込まれる。圧力は、例えばCarver, Inc.(米国)製の半自動式油圧プレスによって加えられる。例えば、約4210ポンド/cm2(18.7キロニュートン/cm2)の圧力を30秒間加えることにより、カソードペレットが形成される。電極の最終厚さは、電極の密度の指標として、監視及び制御される。ZirCar(米国)から入手可能な2層のZr布セパレータ(5)が、カソードとアノード(2)の間に配置される。前記セパレータは、2層の不織布セパレータを使用することもできる。セパレータは、電池の中に装填する前で、KOH電解質が含浸されている。アノード(2)は、Doral Distribution(スイス)から入手可能な亜鉛パウダー(品名:Zinc Doralloy 104<0.036mm)を使用した。その使用量は、対電極のEMDの量と等しくなるように調整される。アノードペーストも同様に、電池を組み立てる前に、KOH電解質が含浸される。電池は、この種電池用として入手可能なHoshen Corp.(日本)製クリンプ装置を用いてシールされる。
【0094】
効果を確認するために、各々について最大20個の電池を作製した。これら電池は、マルチチャンネル式電池サイクラー、例えばArbin Instruments(米国)製の16チャンネル型モデルを使用し、放電させた。電池に加えられた電流密度は、「実験例」の項で具体的に記載されている。
【0095】
ここでの実験の大部分は、アルカリ亜鉛二酸化マンガン一次電池において、従来のカーボンブラックと熱改質カーボンブラックの性能について記載するが、この材料を用いた他の電池についても同様に性能が向上するものと考えられる。この考えは、アルカリ電池以外の他の多くの電池系において、導電性向上機構に類似性があるという研究結果に基づいている。なお、例えば、「補聴器」用の亜鉛空気一次電池、Liイオン及びLiイオンポリマー二次電池、産業用ニッケルカドミウム再充電可能電池、リザーブ電池、電気化学的ウルトラキャパシタ、燃料電池その他の電源において、熱改質されたカーボンブラックは、従来のグラファイトと比べて、より効果的に作用するものと考えられる。
【0096】
図5Aは、カーボンブラックの5つの試料の放電曲線を示しており、これら試料は次の通りである。
【0097】
−コロンビアン・ケミカルズ・カンパニーによって製造され、2400℃で60分間熱処理されたサーマルカーボンブラックの試料(熱処理サイクルはスペリオル・グラファイト・カンパニーによって行なわれた)。
−コロンビアン・ケミカルズ・カンパニーによって製造された儘のサーマルカーボンブラックの試料。
−スペリオル・グラファイト・カンパニーのKY及びARKの炉で使用されたファーネブラック。
−Erachem Comilog(ベルギー)製スーパーSのカーボンブラック試料。
−熱処理されたCDX−975Uの試料。
−熱処理なしのCDX−975Uの試料。
これら試料は、200メッシュのスクリーンを通して(強く)ブラッシングすることにより、サイズは小さくされている。
【0098】
図5Aは、種々のカーボンブラック及び/又は熱処理されたカーボンブラックを含むLR2016電池の定電流(Galvanostatic)放電曲線である。各試料について、最も典型的な2つの電池に対する曲線が示されている。図5Aのグラフから明らかなように、熱処理されたサーマルブラックは、熱処理なしのサーマルブラックと比べて、5倍以上の導電性の向上をもたらすことが分かる。熱処理なしのサーマルブラックと熱処理したサーマルブラックは、KY及びARKのファーネスで用いられたファーネスブラックと比較してプロットしている。熱処理なしのサーマルブラックとファーネスブラックとの類似性は明らかであろう。黒鉛化後、カーボンブラックの性能は5倍向上する。一般的に、ファーネスブラックは、導電性より絶縁性であることが知られているので、それが熱処理されたものであっても、高構造カーボンであるスーパーS、熱処理なしのCDX−975U及び熱処理されたCDX−975Uを凌ぐとは考えていなかった。
【0099】
同じグラフにおいて、電池に高容量をもたらし、膨張黒鉛(電気化学系のアルカリ電池用の最先端の導電性向上用添加剤で、スペリオル・グラファイト・カンパニー製のGA−17)と同様の性能を有することで知られているカーボンブラックスーパーS(Erachem製)について、コロンビアン・ケミカル製の熱処理なしのCDX−975U及び熱処理されたCDX−975Uと性能を比較した。図5Aに示されるように、熱処理されたCDX−975Uを含む電池は、他のものと比べて、最も高い放電能力を示した。なお、熱処理なしのCDX−975Uは、表面積が大きい(約170m2/g)ため、熱処理されたCDX−975U(表面積は約68m2/g)が含まれる電池よりも、平均放電電圧は高い値を示している。また、CDX−975Uは、部分的にはその大きな表面積が理由で、MnO2と熱力学的に不安定な反応を起こし易いため、用いられることができない。
【0100】
<実験例#3:熱処理されているが黒鉛化されていないカーボンブラック粉末をエネルギー用に用いたときの抵抗性及びスプリングバック特性>
黒鉛化される前と後のカーボンブラック粉末について、表面積、抵抗性(resistivities)及び弾力性(resiliencies)を、次に示す表に記載している。これら3つの物理学的性質は、電気化学的用途では非常に重要である。試験方法は次のとおりである。
【0101】
「弾力性」(膨張率)試験では、まず、試料を、円筒形モールド内の2つのプラグの間で圧縮する。このモールド組立体は、690バール(10000psi)の荷重を受ける。この荷重で安定したときの組立体の高さを測定する。次に、荷重を取り除くと、組立体は、安定した高さに達するま垂直方向に延びる。圧縮時の当初高さに対する高さの増加率を計算によって求める。
【0102】
次の表に示されるように、熱処理による弾力性の変化は著しい。この弾力性は、電源の電極剤混合の処理で重要である。
【0103】
電気抵抗試験では、試料から所定サイズ及び体積の試験片を作製し、試験片を非導電性円筒形モールドの中に入れ、2つの金属電極によって荷重を付加した。ケルビンブリッジを用いて、これら電極間の一方向の抵抗を測定した。抵抗は、オーム−インチで算出した。
【0104】
電池及び他の電源では、導電性は高い(抵抗は小さい)方が好ましい。次の表に示されるとおり、熱処理された試料は全て、熱処理なしのものと比べて、導電性にすぐれている。これは、熱処理されらものは、おそらく黒鉛化の度合いが高いことによるものと考えられる。
【0105】
【表1】

【0106】
上記表の結果を分析すると、熱処理を施すことにより、カーボンの表面積は一般的に減少することを示している。表面積の減少は、表面の活性基(active groups)の減少に関係していると考えられ、それが、通常は、電気的及び電気化学的用途で起こる副反応を制限している。熱処理されたカーボンブラックをスラリーにせねばならない用途では、装填率が高いほど、一般的に、加工が容易になる。実験を重ねることにより、熱処理によって表面積が6〜70m2/gのカーボンブラックを製造することができた。
【0107】
上記表の結果をさらに分析すると、熱処理されたカーボンブラックの導電性は、供給材料と比べて向上することを示している。導電性の向上は、コーティング、電極、組立体又は他の用途を含む殆んど全てのカーボンの究極の目標である。本発明の方法に基づいて作製したカーボンブラックの抵抗は、0.17オーム−インチ(0.43オーム−cm)以下であり、これは、熱処理されたカーボンブラックに固有のものであると考えられるから、特許請求の範囲に規定している。
【0108】
上記表の結果を分析すると、熱処理されたカーボンブラックの弾力性の値が上昇しており、発明者らの知見では、40〜200%(表の実験例では42〜81%)の範囲内で制御可能である。
【0109】
<実験例#4:他の電気化学的電源及び電子などの用途>
上記2つの例に見られる利点は、数多くの他の電気化学的電源、電子及びストップロス流体の用途まで拡大されるであろう。
【0110】
ここで開示されるように、熱処理され、部分的に黒鉛化されたカーボンブラックを製造する方法を利用することにより、得られた製品は、その特性により、広範囲に亘る電気化学的及び電子的用途、特に以下に記載の仕様を有する可搬式及び据置式のエネルギーシステムへ利用可能であり、その製品は、以下の記載において、PUREBLACK(コロンビアン・ケミカルズ・カンパニー及びスペリオル・グラファイト・カンパニー共有の商標)と称するものとする。
【0111】
熱によって改良されたカーボンブラックは、多くの据置式及び可搬式の電源において広範な使用が可能である。その用途は、以下に記載の6つの主なグループに分けられる。
1.電池活性剤の導電性を向上させる作用を有し、熱で改良されたカーボンブラック添加物。
2.部分的に黒鉛化され、熱で改良され、電極活性剤として用いられるカーボンブラック。
3.熱で改良され、電池の化学的及び電気化学的反応の触媒として用いられるカーボンブラック。
4.熱で改良され、電池組立体の構成要素として用いられるカーボンブラック。
5.熱で改良され、電源のコーティングの構成成分として用いられるカーボンブラック。
6.熱で改良され、電気抵抗依存性の用途の構成成分として用いられるカーボンブラック。
【0112】
上記の熱改良カーボンブラックは、上記のどの用途においても、単独で用いることもできるし、又は、種類及び量に関係なく、グラファイト及び/又はカーボンブラック、及び/又は他の化学物質を組み合わせて用いることもできる。上記用途に用いられる熱改良カーボンブラックは、他の材料と共に処理されたり、他の材料に積層又は塗布される。熱で改良されたカーボンブラックは、現在、十分に知られていない用途に対しても適用される可能性はある。
【0113】
具体的な適用例を以下に記載する。
【0114】
電池活性剤の導電性を向上させる作用を有し、熱で改良されたカーボンブラック添加物の例は次のとおりである。
亜鉛炭素一次電池;マグネシウム及びアルミニウム一次電池;アルカリ二酸化マンガン電池;酸化第2水銀電池;酸化銀電池;亜鉛空気電池(底部を有する円筒形形状);リチウム電池(リチウム/二酸化硫黄一次電池、リチウム/塩化チオニル一次電池、リチウム/オキシクロライド電池、リチウム/二酸化マンガン電池(一次及び再充電可能)、リチウム/カーボンモノフルオライド電池)、リチウム/二硫化鉄電池、リチウム/酸化銅電池、リチウム/オキシリン酸銅電池、リチウム/銀バナジウム酸一次及び二次電池;固体電解質電池(Li/LiI(A1203)/金属塩電池、ヨウ化リチウム電池;Ag/RbAg415/Me4Nin、C電池);リザーブ電池(マグネシウム/注液電池、亜鉛/酸化銀リザーブ電池、スピン依存性リザーブ電池、常温Liアノードリザーブ電池、サーマル電池);二次電池(鉛/酸電池、鉄電極電池、ニッケルカドミウム電池(産業用、航空宇宙用、消費者用(可搬密閉型NiCd))、可搬密閉型Ni−MH電池、推進及び産業用Ni−MH電池、Ni−亜鉛電池、Ni水素電池、酸化銀電池);再充電可能な常温Li電池(リチウム/イオン電池、リチウム/イオンポリマー電池);再充電可能な亜鉛/アルカリ/二酸化マンガン電池;電気自動車用、ハイブリッド車用、新興市場用の高性能電池(金属−空気電池、亜鉛臭素電池、ナトリウム−ベータ電池、リチウム/硫化鉄電池)、燃料電池(全ての可搬式及び据置式電池)、電気化学的ウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)、二重層キャパシタ。
【0115】
部分的に黒鉛化され、熱で改良され、電極活性剤として用いられるカーボンブラックの例は次のとおりである。リチウム−イオン、リチウム−イオンポリマー電池、メタルフリー電池及び半金属電池の負極活性剤の組成物の一部又は単独材料として用いられる。
【0116】
熱で改良され、電池の化学的及び電気化学的反応の触媒として用いられるカーボンブラックの例は次のとおりである。
亜鉛−空気一次及び再充電可能電池、あらゆる種類(可搬式及び据置式)の燃料電池のガス拡散層、その他の電源系(例えば、電気化学的センサー等)のガス拡散電極。
【0117】
熱で改良され、電池組立体の構成要素及び「加工助剤(processing aid)」として用いられるカーボンブラックの例は次のとおりである。メタルフリー電池及び半金属電池の集電体、燃料電池のセパレータ板、亜鉛/炭素一次電池の炭素棒、リチウム−イオン電池及びリチウム−イオンポリマー電池の正極/負極の添加剤、一価及び二価酸化銀電池、焼結型電極構造を有するNi−Cd及びNi−MH電池、炭素−炭素複合電池の組立体の部品。
【0118】
熱で改良され、電源のコーティングの構成成分として用いられるカーボンブラックの例は次のとおりである。二重層電子コンデンサ、電気化学的ウルトラキャパシタ「スーパーキャパシタ」亜鉛−炭素電池のカーボンコーティング;リチウム−イオンポリマーカソード及びアノード、液体電解質を有するリチウム−イオン電池(正極及び負極のホイル・コーティング)、亜鉛−空気一次及び再充電可能電池の集電用基体コーティング;亜鉛・アルカリ・二酸化マンガン一次及び再充電可能電池の缶コーティング。
【0119】
熱で改良され、電気抵抗依存性の用途の構成成分として用いられるカーボンブラックの例は次のとおりである。マイクロホン、抵抗器、歪感受性抵抗器、温度感受性抵抗器及び電流感受性抵抗器の構成要素。TV受像管及び「ブラックマトリッス」のコーティング。
【0120】
熱で改良されたカーボンブラックは、ストップロス循環井戸及び石油掘削市場にて、単独で用いられるたり、他のストップロス添加剤と共に用いられる。ここでのカーボンブラックは、グラファイト、他の形態のカーボンブラック、ガラスビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
<熱処理されたカーボンブラックの硬化性ブラダへの適用>
テーブル13〜テーブル20は、本発明に係る熱処理工程によって熱処理されたカーボンブラックの品質改良を示すもので、硬化性ブラダ化合物に対し、寿命及び熱伝導性の向上がもたらされる。
【0122】
一般的に、この用途では、熱処理されたブラックによるブラダ化合物の熱伝導性と寿命の向上効果は、対照のアセチレンブラックよりも大である。
【0123】
テーブル13〜テーブル20は、熱改質された2種類のカーボンブラックの特性について、アセチレンブラック(硬化ブラダ用として一般的に使用されている対照ブラック)との比較を示している。なお、熱改質されたブラックとアセチレンブラックは両方とも、N330カーボンブラックと共に使用した。
【0124】
テーブル13は、テーブル14の化合物に使用されたカーボンブラックのコロイド特性を示しており、適用結果はテーブル15〜テーブル20に示されている。カーボンブラック「A」及び「B」は、2000℃の温度での熱処理により熱改質されたものである。
【0125】
テーブル14は、硬化性ブラダの評価を示すものである。
【0126】
テーブル15及びテーブル16は、熱改質されたブラックを用いて調製された化合物は、対照化合物よりも、僅かに粘性が大きいことを示している。
【0127】
テーブル17は、熱改質されたカーボンブラックを用いて調製された化合物の硬化特性は、対照化合物と略同等であることを示している。
【0128】
テーブル18を参照すると、前記化合物は、対照ブラックと比べて、よく分散されていることを示している。テーブル19を参照すると、熱改質されたブラックを用いて調製された化合物のモジュラス(modulus)は、対照よりも幾分低いが、これは炭素含有量を少し増やすと同等になり、熱伝導率はさらに向上する。
【0129】
テーブル20は、熱改質されたブラックを用いて調製された化合物は、熱伝導性に優れることを示しており、また、寿命向上をもたらす利点がある。
【0130】
前記実施例は、単なる例示として示されるもので、発明の範囲は特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係るファウンテン型EFB炉の垂直断面図である。
【図2】図1のファウンテン型EFB炉の平面図である。
【図3】図1の3−3線に沿うファウンテン型EFB炉の断面図であって、流動化ガス分配ノズルを示す図である。
【図4】流動化ガス分配ノズルの他の構成例を示す図である。
【図5】LR2016電池の断面図である。
【図5A】LR2016電池のガルバニック電流放電曲線である。
【0132】
【図6】テーブル1は、熱改質によって付与されたカーボンブラック特性のマトリックス及び種々の用途にもたらされる効果を示す表である。
【図7】テーブル2は、熱処理なしのカーボンブラックと熱処理されたカーボンブラックの水分吸収データを示す表である。
【図8】テーブル3は、熱処理なしのカーボンブラックと熱処理されたカーボンブラックの金属不純物、灰分及び硫黄含有量を示す表である。
【図9】テーブル4は、熱処理されたカーボンブラックとアセチレンカーボンブラックのコロイド特性を示す表である。
【図10】テーブル5は、VHSブラックの構造安定性を示す表である。
【図11】テーブル6は、 10Ml LDPEに30%含有させときの水分吸収(MPU)とメルトフロー特性を示す表である。
【図12】テーブル7は、ポリエチレンにおける体積抵抗率と加工性の関係を示す表である。
【図13】テーブル8は、熱処理なしの975Uと熱処理された975Uの燃焼速度と活性化エネルギーを示す表である。
【図14】テーブル9は、PAH化合物に関するFDAの規定を示す表である。
【図15】テーブル10は、FDA規格に適合する競合カーボンブラック、熱処理されたCDX−975U、熱処理されたN700シリーズのカーボンブラック、対照であるN700シリーズのカーボンブラックについて、PAH含有量(ppb)を示す表である。
【図16】テーブル11は、N220、N330、熱処理されたN220、熱処理されたN330のカーボンブラックの試料について、PAH含有量を示す表である。
【図17】テーブル12は、熱処理なしのカーボンブラックと熱処理されたカーボンブラックの試料について、異なる3種類の放電速度における最大放電容量を示すグラフである。
【図18】テーブル13は、アセチレンブラック(対照)、熱で改質されたカーボンブラックA及びB、N330について、コロイド特性を示す表である。
【図19】テーブル14は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、硬化性ブラダの組成を示す表である。
【図20】テーブル15は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、加工特性を示す表である。
【図21】テーブル16は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、キャピラリーレオメータによる特性を示す表である。
【図22】テーブル17は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、MDR硬化特性を示す表である。
【図23】テーブル18は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、表面分析装置による分散特性を示す表である。
【図24】テーブル19は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物について、応力−歪、時効−非時効の特性を示す表である。
【図25】テーブル20は、対照化合物と熱改質カーボンブラックを含む化合物の性能特性を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続式電気加熱炉での処理工程によって製造され、粒径7nm〜500nm、油吸着量30〜300ml/100gである熱改質カーボンブラック。
【請求項2】
カーボンブラックは、サーマルブラックカーボン及びファーネスブラックを含む請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項3】
処理工程は、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックが流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を加熱し、
e.処理されたカーボンブラックを、炉の排出管から連続的に回収する、
ことを含んでいる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項4】
熱処理されたカーボンブラックは、食品と接触する用途に使用される請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項5】
熱処理されたカーボンブラックは、水硬化型ポリマー系に使用される請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項6】
熱処理されたカーボンブラックは、亜鉛炭素乾電池に使用される請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項7】
熱処理されたカーボンブラックは、半導体ワイヤ及びケーブルに使用される請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項8】
熱処理は、800〜3000℃で行われる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項9】
熱処理により、硫黄が除去され、カーボンブラックが黒鉛化され、PAH含有量が低減され、揮発性金属の含有量が低減され、カーボンブラックによる水分吸収量が最少に抑えられる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項10】
カーボンブラックは、炭素質材料として、電気化学的電源の電極剤の中に含まれる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項11】
カーボンブラックは、他の炭素質材料と共に用いられ、前記炭素質材料の合計量の0.01〜8重量%である請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項12】
カーボンブラックは、油田掘削泥の中に含められ、油田掘削泥の合計量の0.01〜8重量%である請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項13】
カーボンブラックは、炭素質材料として、TVの陰極線管用コーティング剤に含まれる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項14】
カーボンブラックは、TVの陰極線管用コーティング剤の炭素質材料合計量の0.01%〜99.9%である請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項15】
カーボンブラックは、炭素質材料として、導電性コーティング剤の中に用いられる請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項16】
カーボンブラックは、導電性コーティング剤の炭素質材料合計量の0.01%〜99.9%量である請求項1の熱改質カーボンブラック。
【請求項17】
粒径7nm〜500nm、油吸着量30〜300ml/100gであり、連続式電気加熱炉の処理工程によって製造された熱改質カーボンブラックであって、前記処理工程は、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックが流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を800〜3000℃の温度に加熱し、
e.前記処理によって黒鉛化されたカーボンブラックを炉の排出管から連続的に回収する、工程を含んでおり、カーボンブラックは、硫黄及び残留PAHを殆ど含まず、吸湿性が最少で、高い耐酸化性を有している熱改質カーボンブラック。
【請求項18】
半導体ワイヤ及びケーブルに用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、前記カーボンブラックから調製された化合物は、界面の滑らかさ及び導電性にすぐれ、メルトフロー特性にすぐれる熱改質カーボンブラック。
【請求項19】
亜鉛炭素電池に用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、アセチレンブラックよりも強い構造及びすぐれた耐酸化性を有する熱改質カーボンブラック。
【請求項20】
食品と接触する用途に用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、FDA規格に適合する特性を有する熱改質カーボンブラック。
【請求項21】
水硬化型ポリマーに用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、低吸湿性の熱改質カーボンブラック。
【請求項22】
半導体ワイヤ及びケーブルに用いられるカーボンブラックであって、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱式炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックが流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を800〜3000℃の温度に加熱し、
e.前記処理によって黒鉛化されたカーボンブラックを炉の排出管から連続的に回収する工程を含む熱処理工程によって製造され、
カーボンブラックは、硫黄を殆ど含まず、吸湿性が最少で、高い耐酸化性を有しており、カーボンブラックが配合された化合物は、界面の滑らかさ及び導電性にすぐれ、メルトフロー特性にすぐれる熱改質カーボンブラック。
【請求項23】
亜鉛炭素乾電池に用いられるカーボンブラックであって、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックの流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を800〜3000℃の温度に加熱し、
e.前記処理によって黒鉛化されたカーボンブラックを炉の排出管から連続的に回収することを含む熱処理工程によって製造され、
カーボンブラックは、硫黄を殆ど含まず、吸湿性が最少で、高い耐酸化性を有しており、導電性にすぐれる熱改質カーボンブラック。
【請求項24】
ポリウレタンフォーム、ポリウレタンアクリレート、シアノアクリレート、エポキシ及びシリコーンを含む群から選択される水硬化型ポリマーに用いられるカーボンブラックであって、黒鉛化された粒径が7〜500nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックの流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を800〜3000℃の温度に加熱し、
e.前記処理によって黒鉛化されたカーボンブラックを炉の排出管から連続的に回収することを含む熱処理工程によって製造され、
カーボンブラックは、硫黄を殆ど含まず、吸湿性が最少で、高い耐酸化性を有しており、低吸湿性である熱改質カーボンブラック。
【請求項25】
食品と接触する用途に用いられるカーボンブラックであって、黒鉛化された粒径が7〜100nm、油吸収量が約30〜300ml/100gであり、
a.流動化ゾーンを構成する第1の部分とオーバベッドゾーンを構成する第2の部分を有し、流動化ガスを導入する複数のノズルを具える電気加熱炉を準備し、
b.前記ノズルを通じて、非反応性流動化ガスを導入し、炉内に前記ガスの上向きの流れを形成し、
c.未処理のカーボンブラック材料を所定速度で炉の中に導入して、カーボンブラックの流動床を形成し、
d.炉内の電極に電圧を印加して、流動床を800〜3000℃の温度に加熱し、
e.前記処理によって黒鉛化されたカーボンブラックを炉の排出管から連続的に回収することを含む熱処理工程によって製造され、
カーボンブラックは、硫黄を殆ど含まず、吸湿性が最少で、高い耐酸化性を有しており、PAH含有量が低減された熱改質カーボンブラック。
【請求項26】
Zn/KOH/MnO2からなる電気化学系のアルカリ電池であって、熱で改質されたカーボンブラックがカソード剤に含まれているアルカリ電池。
【請求項27】
熱で改質されたカーボンブラックは、導電性付与の添加剤として、他の炭素質材料と共に用いられ、前記カーボンブラックは、炭素質材料の合計量の0.01%〜8重量%である請求項26のアルカリ電池。
【請求項28】
熱で改質されたカーボンブラックが電極剤に含まれている電気化学電池。
【請求項29】
熱で改質されたカーボンブラックは、導電性付与の添加剤として、他の炭素質材料と共に用いられ、前記カーボンブラックは、炭素質材料の合計量の0.01%〜8重量%である請求項28の電気化学電池。
【請求項30】
電池は、炭素質材料の導電性コーティングを有しており、炭素質材料の合計量の0.01%〜99.9%である請求項28の電気化学電池。
【請求項31】
熱で改質されたカーボンブラックを含む電気化学電池の組立体又は部品。
【請求項32】
熱で改質されたカーボンブラックを組立体の0.01%〜99.9重量%含む電気化学電池の組立体又は部品。
【請求項33】
組立体は、プレス成形、モールディング、圧縮成形、電気固化、熱間プレス及び熱間圧延からなる群から選択される工程によって作製される請求項31の組立体。
【請求項34】
熱で改質されたカーボンブラックを含む電気化学電池であって、前記カーボンブラックは、化学的及び電気化学反応及び工程の触媒として、添加剤として用いられている電気化学電池。
【請求項35】
熱で改質されたカーボンブラックを含む電気化学電池であって、前記カーボンブラックは、化学的及び電気化学反応及び工程の触媒として、添加剤として用いられ、触媒含有電極の0.01%〜99.9%である電気化学電池。
【請求項36】
熱で改質されたカーボンブラックを含む電気抵抗依存性装置であって、前記カーボンブラックは、他の粉末材料と共に用いられ、装置の0.01%〜99.9重量%含まれる電気抵抗依存性装置。
【請求項37】
タイヤ製造用硬化性ブラダに用いられるカーボンブラックであって、粒径が7nm〜500nm、油吸着量が30〜300ml/100gであり、前記カーボンブラックが含まれる硬化性ブラダ化合物は、従来のブラダ化合物よりも熱伝導性にすぐれ、長い疲労寿命を有する熱改質カーボンブラック。
【請求項38】
カーボンブラックは、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造される請求項37の熱改質カーボンブラック。
【請求項39】
熱改質カーボンブラックは、ファーネスブラックと共に用いられる請求項37の熱改質カーボンブラック。
【請求項40】
硬化性ブラダに用いられるとき、アセチレンブラック及び従来のカーボンブラックに代えて用いられる請求項37の熱改質カーボンブラック。
【請求項41】
改良された硬化性ブラダ化合物であって、熱で改質されたカーボンブラックを含んでおり、該カーボンブラックは、粒径が7nm〜500nm、油吸着量が30〜300ml/100gであり、前記カーボンブラックがファーネスブラックと共に使用されたとき、従来のブラダ化合物よりも、熱伝導性がすぐれ、長い疲労寿命を有する硬化性ブラダ化合物。
【請求項42】
ブラダ化合物は、硬化性ブラダの使用寿命を向上させる請求項41の硬化性ブラダ化合物。
【請求項43】
タイヤ製造用硬化性ブラダに用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、従来のブラダ化合物よりも熱伝導性にすぐれ、長い疲労寿命を有する熱改質カーボンブラック。
【請求項44】
粒径が7nm〜500nm、油吸着量が30〜300ml/100gである請求項43の熱改質カーボンブラック。
【請求項45】
タイヤ製造用硬化性ブラダに用いられるカーボンブラックであって、連続式電気加熱炉での処理工程を経て製造され、粒径が7nm〜500nm、油吸着量が30〜300ml/100gであり、従来のブラダ化合物よりも熱伝導性にすぐれる熱改質カーボンブラック。
【請求項46】
従来のブラダ化合物は、アセチレンブラックを含んでいる請求項45の熱改質カーボンブラック。
【請求項47】
カーボンブラックは、化合物の疲労寿命を向上させる請求項45の熱改質カーボンブラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−505975(P2007−505975A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526961(P2006−526961)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029881
【国際公開番号】WO2005/028569
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506093430)コロンビアン ケミカルズ カンパニー (6)
【氏名又は名称原語表記】COLUMBIAN CHEMICALS COMPANY
【出願人】(506092189)スペリオル グラファイト カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】SUPERIOR GRAPHITE CO.
【Fターム(参考)】