説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】合わせガラスを構成するのに用いられた場合に、得られた合わせガラスにおける高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス用中間膜1は、第1の層2と第2の層3と第3の層4とがこの順で積層された構造を有する。第1,第2,第3の層2,3,4はそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。第1の層2に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、第2,第3の層3,4に含まれているポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低い。第1の層2の厚み(T1)の第2,第3の層3,4の合計厚み(T2+T3)に対する比(T1/(T2+T3))は0.14以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及び建築物などの合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
近年、合わせガラスを軽量化するために、合わせガラスの厚みを薄くすることが検討されている。しかし、合わせガラスの厚みを薄くすると、遮音性が低くなる。遮音性が低い合わせガラスを自動車のフロントガラス等に用いた場合には、風切り音又はワイパーの駆動音等の5000Hz程度の音域の音に対して、遮音性が充分に得られないという問題がある。
【0004】
そこで、中間膜の材料の変更により、合わせガラスの遮音性を高めることが検討されている。
【0005】
合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部以上の可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として、又は他の層と積層されて多層の中間膜として用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、内燃機関を用いた燃料自動車から、電気モータを用いた電気自動車及び内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車等への移行が進行している。内燃機関を用いた燃料自動車に用いられる合わせガラスでは、比較的低周波域での遮音性が特に求められている。但し、内燃機関を用いた燃料自動車に用いられる合わせガラスでも、高周波域での遮音性が高いことが望ましい。これに対して、電気モータを利用した電気自動車及びハイブリッド電気自動車に用いられる合わせガラスでは、電気モータの駆動音を効果的に遮断するために高周波域における高い遮音性が特に求められる。
【0008】
上記特許文献1に記載の中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの高周波域における遮音性が充分ではなく、従ってコインシデンス効果による遮音性の低下が避けられないことがある。
【0009】
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したとき、ガラス板の剛性と慣性とによって、ガラス面上を横波が伝播して横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。また、合わせガラスには、広い温度範囲に渡り、高い遮音性が発揮されることも求められる。
【0010】
また、上記特許文献1に記載の遮音層と他の層とが積層された多層中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの20℃付近での遮音性をある程度高めることができる。しかし、多層中間膜が上記遮音層を有するため、該多層中間膜を用いた合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0011】
さらに、近年、合わせガラスの遮音性を高めるために、中間膜中の可塑剤の含有量を多くすることが検討されている。中間膜中の可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスの遮音性を改善できる。しかしながら、可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0012】
本発明の目的は、合わせガラスを構成するのに用いられた場合に、得られた合わせガラスにおける高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【0013】
本発明の限定的な目的は、高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡り高いだけでなく、発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の広い局面によれば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、上記第1の層の第1の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、上記第1の層の上記第1の表面とは反対の第2の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、上記第1の層の厚みの上記第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0015】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも5モル%以上低い。
【0016】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が25モル%未満であり、かつアセチル化度が30モル%未満である。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率がそれぞれ10モル%以上、50モル%以下、かつアセチル化度がそれぞれ3モル%未満である。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層における上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が20〜90重量部である。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第2,第3の層における上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量がそれぞれ10〜60重量部である。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上である。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られている。
【0023】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であるか、又は上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上であることが好ましい。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であることが好ましい。さらに、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上であることも好ましい。
【0024】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス構成部材と、第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、第2の層と第1の層と第3の層とがこの順で積層された構造を有し、該第1〜第3の層がそれぞれポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、上記第1の層の厚み(T1)の上記第2,第3の層の合計厚み(T2+T3)に対する比(T1/(T2+T3))が0.14以下であるので、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図3】図3は、第1の層に含まれるポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む樹脂膜を用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合の損失正接tanδと温度との関係及び弾性率G’と温度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを模式的に部分切欠断面図で示す。
【0029】
図1に示す中間膜1は、多層中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2aに積層された第2の層3と、第1の層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2bに積層された第3の層4とを備える。第1の層2は、中間層であり、遮音層として主に機能する。第2,第3の層3,4は、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層2は、第2,第3の層3,4の間に挟み込まれている。従って、中間膜1は、第2の層3と、第1の層2と、第3の層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0030】
第1,第2,第3の層2,3,4はそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。第2の層3と第3の層4との組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。第2,第3の層3,4にポリビニルアセタール樹脂が含まれているので、第2,第3の層3,4と合わせガラス構成部材との接着力が充分に高くなる。
【0031】
本実施形態の主な特徴は、第1の層2に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、第2,第3の層3,4に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、しかも第1の層2の厚みの第2,第3の層3,4の合計厚みに対する比であるT1/(T2+T3)が0.14以下であることである。すなわち、中間膜1では、第1の層2の厚み(μm)をT1、第2の層3の厚み(μm)をT2、第3の層4の厚み(μm)をT3としたときに、第1の層2の厚みの第2,第3の層3,4の合計厚みに対する比であるT1/(T2+T3)が0.14以下である。これによって、中間膜1を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる。特に、3kHzを超える高周波域での遮音性を効果的に高めることができる。
【0032】
合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記比は、好ましくは0.13以下、より好ましくは0.12以下、更に好ましくは0.11以下、特に好ましくは0.10以下、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。
【0033】
合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、第1の層の厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。
【0034】
ところで、遮音性が高められた多層構造を有する合わせガラス用中間膜では、合わせガラスに発泡が生じやすいという問題がある。
【0035】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制する観点からは、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(以下、含有率差(1−2)と記載することがある)が、9.2モル%以下であり、更に第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(含有率差(1−2))が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であることが好ましい。上記含有率差(1−2)は、8.5モル%を超えかつ9.2モル%以下であってもよく、更に8.5モル%以下であってもよい。
【0036】
また、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(以下、含有率差(1−3)と記載することがある)が、9.2モル%以下であり、更に第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(含有率差(1−3))が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であることが好ましい。但し、含有率差(1−3)が、8.5モル%以下であっても、含有率差(1−2)が8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は8モル%以下であることが好ましい。上記含有率差(1−3)は、8.5モル%を超え、9.2モル%以下であってもよく、更に8.5モル%以下であってもよい。
【0037】
本発明者らは、上記発泡の発生及び発泡の成長を抑制するために鋭意検討した結果、第1〜第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率を上記のように制御することにより、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できることを見出した。可塑剤の移行を抑制でき、かつ合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できるため、各層の可塑剤の含有量、特に第1の層2中の可塑剤の含有量を多くすることができる。このため、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0038】
なお、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が、第2,第3の層3,4中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量よりも多いと、発泡がより一層生じやすい傾向がある。さらに、発泡が一旦生じると、発生した発泡が核となり、発泡が成長する傾向がある。これに対して、第1〜第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率を上記のように制御することにより、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できる。
【0039】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2,第3の層3,4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率との差(含有率差(1−2)及び含有率差(1−3))の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は2モル%、好ましい上限は8.5モル%、より好ましい上限は7.8モル%、更に好ましい上限は7モル%、特に好ましい上限は5.6モル%である。合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を更に一層抑制することができることから、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2,第3の層3,4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率との差(含有率差(1−2)及び含有率差(1−3))は好ましくは5モル%以下、より好ましくは4.5モル%以下、より一層好ましくは4モル%以下、更に好ましくは3.5モル%以下である。
【0040】
また、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、絶対分子量100万以上の高分子量成分(以下、高分子量成分Xと記載することがある)を含むか、又は第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリスチレン換算分子量(以下、分子量yと記載することがある)100万以上の高分子量成分(以下、高分子量成分Yと記載することがある)を含むことが好ましい。該高分子量成分X,Yは、ポリビニルアセタール樹脂である。第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合が7.4%以上であるか、又は第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合が9%以上であることが好ましい。
【0041】
第1の層2を樹脂膜Bとして用いて、該樹脂膜Bの粘弾性を測定した場合(試験法B)に、該樹脂膜Bのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上であることも好ましい。
【0042】
上記試験法Bでは、第1の層2が上記樹脂膜Bとして用いられ、第1の層2自体が樹脂膜Bである。
【0043】
上記樹脂膜Bは、第1の層2であり、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤とを第1の層2中での重量比で含む。上記試験法Bでは、合わせガラス用中間膜1において可塑剤を移行させた後に、上記弾性率G’(Tg+80)及び弾性率G’(Tg+30)を測定することが好ましい。上記試験法Bでは、合わせガラス用中間膜1を湿度30%(±3%、温度23℃に1ヶ月間保管して、合わせガラス用中間膜1において可塑剤を移行させた後に、上記弾性率G’(Tg+80)及び弾性率G’(Tg+30)を測定することがより好ましい。
【0044】
本発明者らは、上記発泡の発生及び発泡の成長を抑制するために鋭意検討した結果、上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上であることにより、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できることも見出した。第1の層2中の上記可塑剤の含有量が多くても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できるため、合わせガラスの遮音性を高めることができる。特に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.65以上であるように構成された第1の層2の両面に第2,第3の層3,4が積層された合わせガラス用中間膜1の使用により、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制できる。
【0045】
上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、0.65以上であり、好ましくは1.0以下である。上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.65以上であると、かなり過酷な条件で又は長期間にわたり合わせガラスが保管されたとしても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制できる。また、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が上記下限以上及び上記上限以下であると、かなり過酷な条件で又は長期間にわたり合わせガラスが保管されたとしても、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できる。
【0046】
また、合わせガラスの遮音性を充分に高める観点からは、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は40重量部以上であることが好ましい。第1の層2の可塑剤の含有量が多くても、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.65以上であるように第1の層2を構成することによって、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。
【0047】
上記ガラス転移温度Tg(℃)は、上記粘弾性の測定により得られた測定結果から得られる損失正接tanδのピーク温度を示す。合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、より好ましくは0.7以上、より好ましくは0.95以下であり、さらに好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.9以下である。特に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))をポリビニルアルコールの平均重合度で制御する場合、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制し、かつ合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.66以上、更に好ましくは0.67以上、特に好ましくは0.7以上、好ましくは0.82以下、より好ましくは0.8以下である。更に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が0.82以下、又は、0.8以下であると、中間膜を容易に成形することができる。
【0048】
上記試験法Bによる上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))を0.65以上にする方法としては、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコールを使用する方法や、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法等が挙げられる。上記第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間の相互作用を強くする方法として、該ポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法や、化学的に架橋する方法が挙げられる。なかでも、中間膜1を押出機にて容易に成形することができることから、第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂を合成する際に、平均重合度が比較的高いポリビニルアルコールを使用する方法や第1の層2中のポリビニルアセタール樹脂の分子間を物理的に架橋する方法が好ましい。
【0049】
上記粘弾性の測定により得られる損失正接tanδと温度との関係及び弾性率G’と温度との関係の一例を、図3を用いて説明する。
【0050】
損失正接tanδと温度とは、図3に示すような関係にある。損失正接tanδのピークPにおける温度がガラス転移温度Tgである。
【0051】
また、図3に示す破線A2の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgと、実線A1の弾性率G’におけるガラス転移温度Tgとは同じ温度である。例えば、弾性率G’(Tg+30)を基準として弾性率G’(Tg+80)の変化量Dが小さいほど、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。実線A1の弾性率G’における変化量D1は、破線A2の弾性率G’における変化量D2よりも小さい。従って、図3においては、変化量D2が比較的大きい破線A2の弾性率G’を示す場合よりも、変化量D1が比較的小さい実線A1の弾性率G’を示す場合の方が、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を効果的に抑制できる。
【0052】
上記G’(Tg+30)は、20万Pa以上であることが好ましい。上記G’(Tg+30)は、より好ましくは22万Pa以上、さらに好ましくは23万Pa以上、特に好ましくは24万Pa以上、好ましくは1000万Pa以下、より好ましくは500万Pa以下、特に好ましくは100万Pa以下、最も好ましくは50万Pa以下、更に最も好ましくは30万Pa以下である。上記G’(Tg+30)が上記下限以上であると、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できる。
【0053】
なお、上記弾性率G’と温度との関係は、ポリビニルアセタール樹脂の種類に大きく影響され、特にポリビニルアセタール樹脂を得るために用いられる上記ポリビニルアルコールの平均重合度に大きく影響され、可塑剤の種類には大きく影響されず、一般の可塑剤の含有量では該可塑剤の含有量に大きく影響されない。
【0054】
また、合わせガラス用中間膜における発泡の発生を抑制するために、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂が、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られていることも好ましい。この場合に、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))は、0.65以上でなくてもよいが、0.65以上であることが好ましい。また、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、第1の層2中の平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られている上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が、40重量部以上であることが好ましい。さらに、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、第1の層2中の平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、30モル%以下であることが好ましい。
【0055】
また、合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は好ましくは40重量部以上、より好ましくは50重量部以上、更に好ましくは55重量部以上、特に好ましくは60重量部以上である。このように第1の層2中の可塑剤の含有量が多くても、第1〜第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率を上記のように制御したり、上記比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))を制御したりすることで、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層効果的に抑制できる。
【0056】
以下、本発明に係る合わせガラス用中間膜を構成する第1〜第3の層の詳細、並びに該第1〜第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の詳細を説明する。
【0057】
(ポリビニルアセタール樹脂)
上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含む。上記第2の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含む。上記第3の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含む。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記第1〜第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)は、ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が、ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の各水酸基の含有率よりも低ければ特に限定されない。
【0059】
合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の各水酸基の含有率よりも3モル%以上低いことが好ましく、5モル%以上低いことが好ましく、7モル%以上低いことが好ましい。
【0060】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは0モル%以上であり、好ましくは30モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、可塑剤のブリードアウトが生じ難くなり、かつ中間膜の耐湿性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、より好ましくは25モル%未満である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上、特に好ましくは20モル%以上、更に好ましくは24モル%以下である。
【0061】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の水酸基の含有率(水酸基量)はそれぞれ、好ましくは10モル%以上、好ましくは50モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の水酸基の含有率はそれぞれ、更に好ましくは25モル%以上、更に好ましくは45モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、可塑剤のブリードアウトが生じ難くなり、かつ中間膜の耐湿性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の水酸基の含有率(水酸基量)はそれぞれ、より好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%未満である。
【0062】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」もしくはASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0063】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、0モル%以上であり、好ましくは40モル%以下である。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、特に好ましくは3モル%以上、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%未満である。
【0064】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度はそれぞれ、0モル%以上であり、好ましくは10モル%以下である。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の強度が高くなり、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度はそれぞれ、より好ましくは3モル%未満である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度はそれぞれ、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは2モル%以下である。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度が3モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。この結果、可塑剤のブリードアウトをより一層抑制できる。合わせガラスの遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度よりも高いことが好ましい。
【0065】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法、又は、ASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。上記アセチル化度の測定方法は、ASTM D1396−92に準拠した方法がよい。
【0066】
合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記含有率差(1−2)が、8.5モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が8モル%を超えることが好ましい。合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記含有率差(1−3)が、8.5モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が8モル%を超えることが好ましい。
【0067】
合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記含有率差(1−2)が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合又は上記含有率差(1−2)が、9.2モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度が68モル%以上であるか、又は水酸基の含有率が31.5モル%未満であることが好ましい。合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記含有率差(1−3)が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合又は上記含有率差(1−3)が、9.2モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度が68モル%以上であるか、又は水酸基の含有率が31.5モル%未満であることが好ましい。
【0068】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内であり、75〜99.8モル%の範囲内であることが好ましく、80〜99.8モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0069】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)を得るための上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0070】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、2700以上、5000以下であることが特に好ましい。
【0071】
合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をさらに一層抑制する観点からは、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂(1)を得るために用いられる上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は3010、好ましい下限は3050、好ましい下限は3500、好ましい下限は3600、好ましい下限は4000、好ましい下限は4050、好ましい上限は7000、好ましい上限は6000、好ましい上限は5000、好ましい上限は4900、好ましい上限は4500である。特に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、合わせガラスの遮音性を充分に高め、かつ中間膜を容易に成形できることから、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂(1)を得るために用いられる上記ポリビニルアルコールの平均重合度は3010以上であることが好ましく、3020以上であることがより好ましく、4000以下であることが好ましく、4000未満であることがより好ましく、3800以下であることが更に好ましく、3600以下であることが特に好ましく、3500以下であることが最も好ましい。
【0072】
また、上記第2,3の層中のポリビニルアセタール樹脂(2),(3)は、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造できる。上記第2,3の層中のポリビニルアセタール樹脂(2),(3)を得るためのポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、更に好ましい下限は1000、特に好ましい下限は1500、好ましい上限は4000、より好ましい上限は3500、更に好ましい上限は3000、特に好ましい上限は2500である。上記平均重合度が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記平均重合度が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の成形が容易になる。
【0073】
上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂(1)を得るために用いるポリビニルアルコールの平均重合度は、上記第2,3の層中のポリビニルアセタール樹脂(2),(3)を得るために用いるポリビニルアルコールの平均重合度よりも高いことが好ましく、500以上高いことが好ましく、800以上高いことが好ましく、1000以上高いことがより好ましく、1300以上高いことが更に好ましく、1800以上高いことが特に好ましい。
【0074】
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0075】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなり、低温における固体音の遮音性がより一層高くなる。
【0076】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第1〜第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の合成は容易である。さらに、ポリビニルブチラール樹脂の使用により、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力がより一層適度に発現する。さらに、耐光性及び耐候性等をより一層高めることができる。
【0078】
更に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制することができ、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができることから、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂(1)は、アセチル化度が8モル%未満であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂A」ともいう)、又は、アセチル化度が8モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂B」ともいう)であることが好ましい。
【0079】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル化度aは8モル%未満であり、7.5モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることが好ましく、0.8モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることが好ましい。上記アセチル化度aが上記上限以下及び上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなり、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0080】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセタール化度aの好ましい下限は68モル%、より好ましい下限は70モル%、更に好ましい下限は71モル%、特に好ましい下限は72モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は83モル%、更に好ましい上限は81モル%、特に好ましい上限は79モル%である。上記アセタール化度aが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Aを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの水酸基の含有率aは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、23モル%以下であることが好ましく、16モル%以上であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、19モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率aが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率aが上記下限以上であると、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0083】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは、8モル%以上であり、9モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることが好ましく、40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが好ましく、28モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることが好ましく、19.5モル%以下であることが好ましい。上記アセチル化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセチル化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間をより一層短縮できることから、上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは20モル%未満であることが好ましい。
【0084】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセタール化度bの好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は52.5モル%、更に好ましい下限は54モル%、特に好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%、より好ましい上限は77モル%、更に好ましい上限は74モル%、特に好ましい上限は71モル%である。上記アセタール化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0085】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの水酸基の含有率bは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることが好ましく、23モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率bが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率bが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性を高めることができる。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0087】
上記ポリビニルアセタール樹脂A及び上記ポリビニルアセタール樹脂Bは、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することで得られることが好ましい。上記アルデヒドは炭素数1〜10のアルデヒドであることが好ましく、炭素数4又は5のアルデヒドであることがより好ましい。上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は3010、好ましい下限は3050、好ましい下限は3500、好ましい下限は3600、好ましい下限は4000、好ましい下限は4050、好ましい上限は7000、好ましい上限は6000、好ましい上限は5000、好ましい上限は4900、好ましい上限は4500である。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂A,Bは、平均重合度が3000を超え、4000未満であるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られていることが特に好ましい。特に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、合わせガラスの遮音性を充分に高め、かつ中間膜を容易に成形できることから、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂A,Bを得るために用いられる上記ポリビニルアルコールの平均重合度は3010以上であることが好ましく、3020以上であることがより好ましく、4000以下であることが好ましく、4000未満であることがより好ましく、3800以下であることが更に好ましく、3600以下であることが特に好ましく、3500以下であることが最も好ましい。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)〜(3)の重量平均分子量の好ましい下限は100,000、より好ましい下限は300,000、好ましい上限は10,000,000、より好ましい上限は5,000,000である。上記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量が上記好ましい下限以下であると、中間膜の強度が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量が上記好ましい上限を超えると、得られる中間膜の強度が強くなりすぎることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0089】
なお、上記重量平均分子量及び上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量及び数平均分子量を示す。例えば、ポリスチレン換算での重量平均分子量及び数平均分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM−105」、「Shodex Standard SH−75」)として、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いる。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用する。恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月放置した多層中間膜から表面層(上記第2,第3の層)と中間層(上記第1の層)とを剥離し、剥離された第1の層(中間層)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.1重量%の溶液を調製する。得られた溶液をGPC装置により分析し、重量平均分子量及び数平均分子量を測定できる。GPC装置として、GPC用光散乱検出器(VISCOTEK社製「Model270(RALS+VISCO)」)が接続されたGPC装置(日立ハイテク社製「RI:L2490、オートサンプラー:L−2200、ポンプ:L−2130、カラムオーブン:L−2350、カラム:GL−A120−SとGL−A100MX−Sの直列」)を用いて、上記重量平均分子量及び上記数平均分子量を分析できる。
【0090】
(可塑剤)
第1〜第3の層に含まれている各可塑剤は特に限定されない。該可塑剤として従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0092】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0093】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0094】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0095】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0096】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0097】
【化1】

【0098】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数1〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは2〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2における有機基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上である。上記式(1)中のpは3以上であることが好ましい。上記有機基は、炭化水素基であってもよく、エーテル結合を少なくとも1つ有する有機基であってもよい。上記有機基がエーテル結合を有さない場合には、pは3〜10であることが好ましく、上記有機基がエーテル結合を有する場合には、pは2〜8であることが好ましい。
【0099】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。また、高周波域での遮音性が、広い温度範囲に渡りより一層高くなることから、上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジアセタート(3G1)、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)及びトリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)及びトリエチレングリコールジアセタート(3G1)の内の少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0100】
上記第1の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は好ましくは20重量部以上、好ましくは90重量部以下である。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記第1の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対して、上記可塑剤の含有量はより好ましくは50重量部以上、より好ましくは80重量部以下である。また、上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0101】
上記第2,第3の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)100重量部に対して、上記可塑剤の各含有量は、好ましくは10重量部以上、好ましくは60重量部以下である。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記第2,第3の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)100重量部に対して、上記可塑剤の各含有量は、より好ましくは25重量部以上、より好ましくは50重量部以下である。また、上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0102】
合わせガラスの遮音性に優れることから、上記第1の層における上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層における上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)100重量部に対する上記可塑剤の各含有量よりも多いことが好ましい。上記第1の層における上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層における上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)100重量部に対する上記可塑剤の各含有量より10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましい。
【0103】
(他の成分)
上記第1〜第3の層はそれぞれ、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
(合わせガラス用中間膜)
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは、0.1〜3mmの範囲内であることが好ましい。中間膜の厚みは、より好ましくは0.25mm以上、更に好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.6mm以上、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.85mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。第1の層の厚みは30〜200μmの範囲内であることが好ましい。第1の層の厚みは、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは50μm以上、特に好ましくは55μm以上、より好ましくは120μm以下、更に好ましくは90μm以下、特に好ましくは85μm以下である。第1の層の厚みが上記下限以上であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。第1の層の厚みが上記上限以下であると、高周波域での遮音性が、広い温度範囲に渡りより一層高くなる。第2,第3の層の厚みは100〜800μmの範囲内であることが好ましい。第2,第3の層の厚みは、より好ましくは150μm以上、更に好ましくは200μm以上、特に好ましくは250μm以上、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは450μm以下、特に好ましくは400μm以下である。第2,第3の層の厚みが上記下限以上であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。第2,第3の層の厚みが上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。
【0105】
第1,第2,第3の層の厚みを測定する方法は特に限定されず、各層を形成する際に測定してもよく、各層が積層された状態で測定してもよい。第1,第2,第3の層の厚みは、例えば、各層の厚み方向の切断面を光学顕微鏡により観察し、測定することができる。具体的には、23℃の環境下にて、第1,第2,第3の層の厚みが変わらないように、鋭利なカミソリ(炭素鋼、刃厚0.1mm、フェザー剃刃(フェザー安全剃刀社製)など)を用いて厚み方向の切断面を出し、第1,第2,第3の層の厚み方向の切断面を光学顕微鏡により、観察し、測定することができる。
【0106】
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、中間膜の面方向において、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14を超える領域があってもよい。第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14を超える領域がある場合でも、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下である領域において、合わせガラスにおける高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる。
【0107】
高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなることから、少なくとも中間膜の面方向における中心部分にて、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることが好ましい。高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなることから、少なくとも中間膜の面方向における50%以上の面積にて、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることがより好ましく、少なくとも中間膜の面方向における80%以上の面積にて、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることが更に好ましく、中間膜の面方向の全ての領域において、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることが特に好ましい。高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなることから、少なくとも中間膜の面方向における中心部分を含む50%以上の面積にて、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることがより好ましく、少なくとも中間膜の面方向における中心部分を含む80%以上の面積にて、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることが更に好ましく、中間膜の面方向の全ての領域において、第1の層の厚みの第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下であることが特に好ましい。
【0108】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0109】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2,第3の層とを別々に作製した後、第1の層と第2,第3の層とを積層して多層中間膜を得てもよく、第1の層と第2,第3の層とを共押出により積層して中間膜を得てもよい。
【0110】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2,第3の層が同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0111】
(合わせガラス)
図2に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を断面図で示す。
【0112】
図2に示す合わせガラス11は、中間膜1と、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22とを備える。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22の間に挟み込まれている。中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス構成部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス構成部材22が積層されている。第2の層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス構成部材21が積層されている。第3の層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス構成部材22が積層されている。
【0113】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス構成部材と、第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜として、本発明の合わせガラス用中間膜が用いられている。
【0114】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0115】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0116】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材の厚みは特に限定されないが、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0117】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0118】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜は、建築用又は車両用の中間膜であることが好ましく、車両用の中間膜であることがより好ましい。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜であることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、電気モータを用いた電気自動車及び内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車に好適に用いられる。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0119】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0120】
実施例及び比較例では、下記のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いた。なお、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠し、測定した。なお、ASTM D1396−92に準拠した方法により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0121】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂a(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度12モル%、水酸基の含有率23モル%)
【0122】
ポリビニルアセタール樹脂b(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度13モル%、水酸基の含有率22モル%)
ポリビニルアセタール樹脂b1(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度13モル%、水酸基の含有率22モル%)
ポリビニルアセタール樹脂b2(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度13モル%、水酸基の含有率22モル%)
ポリビニルアセタール樹脂b3(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度13モル%、水酸基の含有率22モル%)
【0123】
ポリビニルアセタール樹脂c(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度68モル%、アセチル化度1モル%、水酸基の含有率31モル%)
【0124】
ポリビニルアセタール樹脂d(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度75モル%、アセチル化度4モル%、水酸基の含有率21モル%)
【0125】
ポリビニルアセタール樹脂e(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度72モル%、アセチル化度8モル%、水酸基の含有率20モル%)
【0126】
ポリビニルアセタール樹脂f(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度55モル%、アセチル化度21モル%、水酸基の含有率24モル%)
【0127】
ポリビニルアセタール樹脂g(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度46モル%、アセチル化度30モル%、水酸基の含有率24モル%)
【0128】
ポリビニルアセタール樹脂h(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度79モル%、アセチル化度1モル%、水酸基の含有率20モル%)
【0129】
ポリビニルアセタール樹脂i(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度41モル%、アセチル化度35モル%、水酸基の含有率24モル%)
【0130】
ポリビニルアセタール樹脂j(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度71.8モル%、アセチル化度1.2モル%、水酸基の含有率27モル%)
【0131】
ポリビニルアセタール樹脂k(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度67.1モル%、アセチル化度0.9モル%、水酸基の含有率32モル%)
【0132】
ポリビニルアセタール樹脂l(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度65モル%、アセチル化度4モル%、水酸基の含有率31モル%)
【0133】
ポリビニルアセタール樹脂m(n−ブチルアルデヒドを使用、アルデヒドの炭素数4、アセタール化度63モル%、アセチル化度6モル%、水酸基の含有率31モル%)
【0134】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)
トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)
トリエチレングリコールジアセタート(3G1)
【0135】
(実施例1)
(1)中間膜の作製
ポリビニルアセタール樹脂a100重量部と、可塑剤(3GO)60重量部とをミキシングロールで充分に混練し、中間層用組成物を得た。
【0136】
2枚のフッ素樹脂シートの間に、得られる中間層Aの厚みのクリアランス板を介して、得られた中間層用組成物を挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚み70μmの中間層Aを得た。
【0137】
ポリビニルアセタール樹脂c100重量部と、可塑剤(3GO)40重量部とを充分に混練し、保護層用組成物を得た。
【0138】
2枚のフッ素樹脂シートの間に、得られる保護層Bの厚みのクリアランス板を介して、得られた保護層用組成物を挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚み350μmの2つの保護層Bを得た。
【0139】
保護層Bと中間層Aと保護層Bとをこの順に積層し、保護層B/中間層A/保護層Bの積層構造を有する積層体を得た。2枚のフッ素樹脂シートの間に、得られる中間膜の厚みのクリアランス板を介して、得られた積層体を150℃にてプレス成形して、厚み770μmの多層の中間膜を得た。なお、中間層A及び保護層Bの厚みは積層後も同一であった。また、面方向において、中間層A及び保護層Bの各厚みは略均一であった。
【0140】
(2)損失係数の測定に用いる合わせガラスの作製
得られた中間膜を、縦30mm×横320mmに切り出した。次に、2枚の透明なフロートガラス(縦25mm×横305mm×厚み2.0mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、損失係数の測定に用いる合わせガラスを得た。
【0141】
(3)発泡試験A及びBに用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を縦30cm×横15cmの大きさに切断し、温度23℃の環境下にて、10時間保管した。なお、得られた多層中間膜の両面にはエンボスが形成されており、そのエンボスの十点平均粗さは30μmであった。切断された多層中間膜において、多層中間膜の端部から縦方向にそれぞれ内側に向かって8cmの位置と、多層中間膜の端部から横方向にそれぞれ内側に向かって5cmの位置との交点4箇所に、直径6mmの貫通孔を作製した。
【0142】
透明なフロートガラス(縦30cm×横15cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、貫通孔を有する多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。積層体の外周縁は、熱融着により端部から幅2cmを封止することにより、エンボスに残留した空気及び貫通孔に残留した空気を封じ込めた。この積層体を135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着することで、残留した空気を多層中間膜中に溶かし込み、発泡試験A及びBに用いる合わせガラスを得た。なお、発泡試験A及びBに用いる合わせガラスについては、実施例4〜9,11〜15,17〜23の多層中間膜を用いて作製した。
【0143】
(実施例2〜23及び比較例1)
中間層A及び保護層Bに用いたポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類及び含有量、並びに中間層A及び保護層Bの厚みを下記の表1,2,5に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、多層中間膜及び合わせガラスを得た。
【0144】
(評価)
(1)損失係数
損失係数の測定に用いる合わせガラスを12℃、15℃、30℃及び33℃にそれぞれ、2ヶ月間保管した合わせガラスを用意した。測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、中央加振法により、保管後の合わせガラスの損失係数を測定した。
【0145】
12℃に保管された合わせガラスについて、12℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の4次モード(3.15kHz近傍)での損失係数、及び12℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の6次モード(6.3kHz近傍)での損失係数を評価した。
【0146】
15℃に保管された合わせガラスについて、15℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の4次モード(3.15kHz近傍)での損失係数、及び15℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の6次モード(6.3kHz近傍)での損失係数を評価した。
【0147】
30℃に保管された合わせガラスについて、30℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の4次モード(3.15kHz近傍)での損失係数、及び30℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の6次モード(6.3kHz近傍)での損失係数を評価した。
【0148】
33℃に保管された合わせガラスについて、33℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の4次モード(3.15kHz近傍)での損失係数、及び33℃の条件で測定された損失係数の共振周波数の6次モード(6.3kHz近傍)での損失係数を評価した。
【0149】
なお、各温度に保管された3つの合わせガラスについて、各温度条件で損失係数を測定し、得られた3つの損失係数のピーク値の平均値を下記の表3,6に示した。
【0150】
(2)発泡試験A(発泡の状態)
発泡試験Aに用いる合わせガラスを、実施例4〜9,11〜15,17〜23の多層中間膜について5枚作製し、50℃のオーブン内に100時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、発泡の有無及び発泡の大きさを平面視にて目視で観察し、発泡の状態を下記の判定基準で判定した。
【0151】
[発泡試験Aによる発泡の状態の判定基準]
5枚の合わせガラスに発生した発泡を、楕円で近似し、その楕円面積を発泡面積とした。5枚の合わせガラスにて観察された楕円面積の平均値を求め、合わせガラスの面積(30cm×15cm)に対する楕円面積の平均値(発泡面積)の割合(百分率)を求めた。
【0152】
○○:5枚全ての合わせガラスに発泡が観察されなかった
○:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%未満であった
△:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%以上、10%未満であった
×:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が10%以上であった
【0153】
(3)発泡試験B(発泡の状態)
発泡試験Bに用いる合わせガラスを、実施例4〜9,11〜15,17〜23及び比較例1の多層中間膜について30枚作製し、50℃のオーブン内に24時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、目視で発泡が観察された合わせガラスの枚数を確認し、下記の判定基準で判定した。
【0154】
[発泡試験Bによる発泡の状態の判定基準]
○○:目視で発泡が観察された合わせガラスは5枚以下であった
○:目視で発泡が観察された合わせガラスは6枚以上、10枚以下であった
△:目視で発泡が観察された合わせガラスは11枚以上、15枚以下であった
×:目視で発泡が観察された合わせガラスは16枚以上であった
【0155】
(4)試験法Bによる弾性率G’の測定
実施例4〜9,11〜15,17〜23の合わせガラス用中間膜を恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月間保管した。1ヶ月間保管した後すぐに、表面層と中間層と表面層とを剥離することにより、中間層を取り出した。2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に配置された型枠(縦2cm×横2cm×厚み0.76mm)内に、剥離された中間層1gを置き、温度150℃、プレス圧0kg/cmで10分間予熱した後、80kg/cmで15分間プレス成型した。予め20℃に設定したハンドプレス機に、プレス成型された中間層を配置し、10MPaで10分間プレスすることにより冷却した。次いで、2枚のPETフィルムの間に配置された型枠から、1枚のPETフィルムを剥離し、恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)で24時間保管した後、TAINSTRUMENTS社製のARES−G2を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で100℃から−10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。また、得られた測定結果とガラス転移温度Tgとから、(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)の値と、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の値とを読み取った。また、比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))を求めた。
【0156】
[比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))の判定基準]
○○:0.75以上
○:0.70以上、0.75未満
△:0.65以上、0.70未満
【0157】
中間膜の詳細を下記の表1,2,5に示す。評価結果を下記の表3,4,6に示す。下記表1,2,5において、3GOはトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、3GBはトリエチレングリコールジ−n−ブタノエート、3G1はトリエチレングリコールジアセタートを示す。*1は、「(第2の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率)−(第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率)」を示す。*2は、「第1の層の厚みT1(μm)/(第2の層の厚みT2(μm)+第3の層の厚みT3(μm))」を示す。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【符号の説明】
【0164】
1…中間膜
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第1の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
21…第1の合わせガラス構成部材
22…第2の合わせガラス構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、
前記第1の層の第1の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、
前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備え、
前記第1の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2,第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層の厚みの前記第2,第3の層の合計厚みに対する比が0.14以下である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2,第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも5モル%以上低い、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第2,第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率がそれぞれ10モル%以上、50モル%以下、かつアセチル化度がそれぞれ3モル%未満である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層における前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が20〜90重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第2,第3の層における前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量がそれぞれ10〜60重量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層を樹脂膜として用いて、該樹脂膜の粘弾性を測定した場合に、該樹脂膜のガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg+80)℃での弾性率G’(Tg+80)の(Tg+30)℃での弾性率G’(Tg+30)に対する比(G’(Tg+80)/G’(Tg+30))が、0.65以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上であるか、又は前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以上である、請求項9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%未満であり、かつアセタール化度が68モル%以上である、請求項9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
第1の合わせガラス構成部材と、
第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107821(P2013−107821A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282990(P2012−282990)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2012−504589(P2012−504589)の分割
【原出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】