説明

合わせガラス

【課題】JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格し、防犯性に優れ、固定窓または可動窓であるスイングサッシ等の窓およびドアに使用される、薄型軽量の合わせガラスを提供する。
【解決手段】各々の厚みが3.7mm以上、4.3mm以下の一対の板ガラスG1,2を0.38mm以上、0.78mm以下の遮音性樹脂膜1と0.38mm以上、0.76mm以下のポリビニルブチラール膜2を積層させた中間膜により接着一体化させ、サッシとした際に遮音等級T−3等級に合格し、且つ、P2Aに合格する合わせガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性に加え、防犯性を有する薄型軽量の合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅、特に集合住宅、道路の近く、鉄道沿線および空港の周辺の住宅等、ビル、オーディオルーム、ピアノ室、図書館、美術館等においては、好まれざる音、または音楽や会話の伝達を阻害する音である騒音に対する関心が高まり、建物の床、壁、天井等には吸音材が埋め込まれ、ドアにも遮音ドアが使用されるようになってきている。加えて、音が通過しやすい窓においても、断熱性能とともに防音性能を有することが求められる。よって、窓は、空気等の媒体の粗密波として伝わる縦波である音を減衰させることが要求されるようになってきた。
【0003】
合わせガラスは一対のガラス板にポリビニルブチラール(以下、PVBと略する)またはエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略する)等の透明性樹脂からなる樹脂中間膜を挟み、加熱、加圧および/または減圧して溶融接着したものであり、合わせガラスは樹脂中間膜に由来する樹脂中間層を有する。PVBを樹脂中間層とした合わせガラスは、不法侵入者がガラスを割ったとしても、PVBが丈夫であるので容易に穴が開くことなく、耐貫通性を有し防犯性に優れており、防犯ガラスとして市販されている。
【0004】
合わせガラスに音波が進入すると、媒体の粗密波として伝わる縦波である音は、樹脂中間層を通過する際、樹脂中間層の粘性抵抗により、波(振動)が熱となり減衰し、合わせガラスは、遮音性に優れる。遮音性を向上させるために、合わせガラスにおいて樹脂中間層の設計が行われている。
【0005】
例えば、樹脂の化学組成を変える等して、粘性を調整し遮音性能を高めた遮音性樹脂膜が開発された。特許文献1〜3には、モノマー組成比または分子量を変えたPVB膜を積層させる、あるいはPVBとは若干化学構造の異なるPVBを積層させる、または、PVB膜中に含有させた可塑剤の量の異なるPVBを積層させる等して、粘性の異なるPVB膜を積層させた遮音性樹脂膜が開示されている。従来のPVB、EVAのみからなる中間膜と同様に、一対のガラス板の間に挟みこみ加熱溶融することで、ガラス板を接着一体化させて合わせガラスとする。
【0006】
特許文献1には、 アセタール基の炭素数が4〜6であり、且つアセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が8〜30モル%であるポリビニルアセタール樹脂(A)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(A)と、アセタール基の炭素数が3〜4であり、かつ、アセチル基が結合しているエチレン基量の平均値の、主鎖の全エチレン基量に対するモル分率が4モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂(B)と可塑剤とからなる少なくとも1つの層(B)とが積層されてなる、合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0007】
また、特許文献2にはポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる厚み0.05mm以上の層(A)と、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤からなる層(B)とが、層(B)/層(A)/層(B)なる積層構成で積層され、層(A)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数6〜8のアルデヒド(a)と炭素数2〜4のアルデヒド(b)とにより共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(a)でアセタール化された部分と、アルデヒド(b)でアセタール化された部分との重量比が60:40〜100:0の範囲にあり、層(B)のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールが炭素数2〜4のアルデヒド(b)と、炭素数6〜8のアルデヒド(a)により共アセタール化された樹脂であって、アルデヒド(b)でアセタール化された部分と、アルデヒド(a)でアセタール化された部分との重量比が80:20〜100:0の範囲にあり、層(A)と層(B)の少なくとも一方のポリビニルアセタール樹脂は共アセタール化された樹脂であることを特徴とする遮音性樹脂膜が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、少なくとも、2層の(A)層と前記(A)層の間に挟着される(B)層との3層からなる積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記(A)層は、ポリビニルアセタール樹脂(P)及び可塑剤(W)を含有し、前記(B)層は、ポリビニルアセタール樹脂(Q)及び可塑剤(X)を含有し、かつ、前記(A)層よりも硬い層である合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0009】
また、本出願人は、本出願人に係る特許出願4において、ポリスチレンとゴム系樹脂の共重合でなる樹脂膜Aが、可塑化されたPVB、EVA、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系重合体、塩化ビニル重合体またはこれらの変性物の中から選ばれる透明樹脂膜で挟着されてなる樹脂中間膜およびそれを用いた合わせガラスを開示した。
【0010】
尚、サッシの遮音性能の規格は、JIS A 4706:2000「サッシ」に記載されている。即ち、JIS A 4706:2000「サッシ」において、サッシの遮音性は、遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級に分けられる。サッシの片側から音を出し、反対側でサッシによる音の反射、吸収減衰による音圧レベルの減少を測ることで、サッシの音響透過損失を前記JIS規格に定める各周波数で測定し、遮音等級T−1等級線、T−2等級線、T−3等級線、T−4等級線に準拠し、前記JISに記載された条件に適合、即ち、合格したサッシを、各々遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級とする。図1に、JIS A 4706:2000「サッシ」に記載される遮音等級線のグラフを示す。
【0011】
JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格するガラスサッシによる窓ガラスにおいて、市販される合わせガラスで厚みが最小となる構成は、各々の呼び厚さが6ミリ(許容厚さ、5.7mm〜6.3mm、品名、FL6)の一対のガラス板をPVBからなる樹脂中間膜で接着一体化させた合わせガラスであった。なお、呼び厚さは、JIS R 3202:1996「フロート板ガラス及び磨き板ガラス」により、表1のように規定される。
【0012】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−926号公報
【特許文献2】特開平5−104687号公報
【特許文献3】特開2004−2108号公報
【特許文献4】特開2007−91491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
個々の呼び厚さ6ミリ(品名、FL6)の一対のガラス板を用いた合わせガラスは、質量が約30kg/m2となる。この合わせガラスを嵌め込むサッシについても、窓ガラスの質量に相応する剛性が必要となり重くなるという問題があった。このため、材料費ばかりでなく、施工する際の作業性が悪く、施工費用も高くなるので、遮音性の良い薄型軽量の窓ガラスが求められている。
【0015】
遮音性を有したままで、合わせガラスを軽量化する手段として、ガラス板を薄くし樹脂中間膜を厚くする方法があるが、製造費が上昇し、作製および施工が容易でないという問題があった。
【0016】
また、コインシデンス効果の抑制のため、異なる厚みのガラス板を用いる等の方法がある。コインシデンス効果とは、具体的には板面に音が斜めに入射すると、板面上の位置によって音圧に位相差ができるため、板面にそって固有の屈曲強制振動を生じ、ある周波数で音の透過が大きくなり、遮音性能が低下する現象であり、コインシデンス限界周波数の異なるガラスを合わせガラスに用いることで発生が抑制される。しかしながら遮音等級T−3等級に合格するガラスサッシにおいて、薄い側のガラスの厚さを薄くするにも限界がある。また、厚い側を厚くするにも限界があり、際立った遮音性向上は望めないという問題があった。
【0017】
本発明は、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つJIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格する、尖った金属、例えば、金属ドライバー等による、こじ破り、バール等でガラスを破砕する打ち破りに対して、容易に貫通穴が開かない耐貫通性を擁し防犯性に優れ、固定窓または可動窓であるスイングサッシ等の窓およびドアに使用される、薄型軽量な合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意検討した結果、遮音性樹脂膜とPVB膜を積層させた樹脂中間膜を用いることで、一対の板ガラスに呼び厚さ6ミリ(許容厚さ、5.7mm〜6.3mm、品名、FL6)のガラス板を用いることなく、一対の呼び厚さ4ミリ(許容厚さ、3.7mm〜4.3mm、品名、FL4)のガラス板を用いた合わせガラスにおいて、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つJIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格する合わせガラスを得た。
【0019】
樹脂中間膜は、市販の15Mil(約0.38mm)または30Mil(約0.76mm)の厚みの、遮音性樹脂膜またはPVB膜を用い積層させたものを使用した。
【0020】
一対のガラス板に呼び厚さ、4ミリ(許容厚さ、3.7mm〜4.3mm、品名、FL4)のガラス板を用い、市販の厚さ15mil(約0.38mm)のPVB膜と、厚み15mil(約0.38mm)の遮音性樹脂膜を積層させてなる樹脂中間膜を挟み込んで加熱溶着し、接着一体化させてなる合わせガラスは、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格した。且つ、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格した。
【0021】
即ち、本発明は、各々の厚みが3.7mm以上、4.3mm以下の一対の板ガラスを0.38mm以上、0.76mm以下の遮音性樹脂膜と0.38mm以上、0.76mm以下のPVB膜を積層させた樹脂中間膜により接着一体化させ、サッシとした際にJIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格することを特徴とする上記の合わせガラスである。
【0022】
また、本発明の合わせガラスは、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格することを特徴とする上記の合わせガラスである。
【0023】
本発明は、各々の厚みが3.7mm以上、4.3mm以下の一対の板ガラスを0.38mm以上、0.76mm以下の遮音性樹脂膜と0.38mm以上、0.76mm以下のPVB膜を積層させた樹脂中間膜により接着一体化させ、サッシとした際にJIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つ、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格することを特徴とする上記の合わせガラスである。
【0024】
本発明の合わせガラスにおいて、遮音性中間膜には、モノマー組成比または分子量を変えたPVB、あるいはPVBとは若干化学構造の異なる樹脂、または含有させる可塑剤の量の異なるPVBから選ばれる、性質、特に粘性を意質的に変化させた変性PVBからなる膜を用いた積層体を用いることが好ましい。
【0025】
例えば、コア層に遮音性透明樹脂を用い、その外層にPVBを用い、遮音性透明樹脂をPVBで挟んだサンドイッチ構造の遮音性樹脂膜を用いることが好ましい。
【0026】
即ち、本発明は、遮音性樹脂膜に、変性PVBを用いてなることを特徴とする上記の合わせガラスである。
【0027】
また、本発明は、遮音性樹脂膜が、コア層に遮音性樹脂を用い、その外層にPVBを用い、遮音性樹脂をPVBで挟んだサンドイッチ構造の積層体であることを特徴とする上記の合わせガラスである。
【0028】
さらに、本発明は、上記の合わせガラスを取り付けてなることを特徴とする窓である。
【0029】
また、本発明は、上記の合わせガラスを取り付けてなることを特徴とするドアである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の合わせガラスにより、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つJIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格する、尖った金属、例えば、金属ドライバー等による、こじ破り、バール等でガラスを破砕する打ち破りに対して、容易に貫通穴が開かない耐貫通性を擁し、防犯性に優れ、固定窓または可動窓であるスイングサッシ等の窓およびドアに使用される、薄型軽量の合わせガラスが提供された。
【0031】
本発明において、樹脂中間膜に遮音性に優れる遮音性樹脂膜と耐貫通性に優れるPVB膜の積層体を用いたことで、遮音性樹脂膜に由来する遮音性が低下することなく、PVB膜に由来する耐貫通性が低下することなく、膜厚が薄くとも、優れた遮音性と対貫通性を合わせ持つ合わせガラスが得られた。
【0032】
具体的には、呼び厚さ4mm(許容厚さ、3.7mm〜4.3mm、品名、FL4)の一対のガラス板に、0.38mm以上、0.76mm以下の遮音性樹脂膜と、0.38mm以上、0.76mm以下のPVB膜を積層させた樹脂中間膜を挟み込み、加熱溶融させて、接着一体化させた合わせガラスは、サッシとした際にJIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つ、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格する
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】JIS A 4706:2000「サッシ」に記載される遮音等級線のグラフである。
【図2】本発明の合わせガラスの構成を示す断面図である。
【図3】実施例1の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【図4】実施例2の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【図5】実施例3の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【図6】実施例4の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【図7】比較例1の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図2に本発明の合わせガラスの構成を示す断面図を示す。
【0035】
本発明の合わせガラスは、各々の厚みが、3.7mm以上、4.3mm以下の一対のガラス板(品名、FL4)G1、G2を、0.38mm以上、0.76mm以下の遮音性樹脂膜1と、0.38mm以上、0.76mm以下のPVB膜2を積層させた樹脂中間膜により、接着一体化させ、サッシとした際にJIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つ、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格することを特徴とする厚さ、8.16mm以上、10.12mm以下の合わせガラスである。
【0036】
本発明の合わせガラスにおいて、各々のガラス板G1、G2の厚みが、3.7mmより薄いと、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T-3等級が満足されず、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aが満足されない。また、各々のガラス板G1、G2の厚みが、4.3mmより厚いことは、薄型軽量の合わせガラスを提供するという本発明の目的に反する。
【0037】
遮音性樹脂膜1の厚みが0.38mmより薄いと遮音性が得られなく、PVB膜2と組合せた際に、JIS R 3108:2007に準拠する遮音等級T-3等級が満足されないばかりか、市販品の標準仕様は、厚み15mil(0.38mm)刻みであり、0.38mmより薄い遮音性樹脂膜1は入手し難い。
【0038】
また、厚みが0.38mmより薄いPVB膜2は入手し難いばかりか、PVB膜2の厚みが0.38mmより薄いと耐貫通性が低下し、遮音性樹脂膜1と組合せた際に、JIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aが満足されないばかりか、市販品の標準仕様は、厚み15mil(0.38mm)刻みであり、0.38mmより薄いPVB膜2は入手し難い。
【0039】
また、遮音性樹脂膜1の厚み、PVB膜2の厚みが、0.76mmより厚いものは、薄型軽量の合わせガラスを提供する本発明の目的に反する。加えて、遮音性樹脂膜1の厚み、PVB膜2の厚みが、0.76mmより厚いものは、高価である。
【0040】
樹脂中間膜に遮音性に優れる遮音性樹脂膜1と耐貫通性に優れるPVB膜2の積層体を用いたことで、遮音性樹脂膜1に由来する遮音性が低下することなく、PVB膜2に由来する耐貫通性が低下することなく、膜厚が薄くとも、優れた遮音性と対貫通性を合わせ持つ合わせガラスが得られた。当該樹脂中間膜は、本発明の薄型軽量の合わせガラスに、サッシとした際にJIS A 4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格し、且つJIS R 3108:2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠する防犯性能区分P2Aに合格する性能を与えた。
【0041】
遮音性中間膜1には、モノマー組成比または分子量を変えたPVB、あるいはPVBとは若干化学構造の異なる樹脂、または含有させる可塑剤の量の異なるPVBから選ばれる、単なるPVB樹脂とは、性質、特に粘性を意識的に変化させた変性PVBを用いることが好ましい。
【0042】
本発明の合わせガラスにおいて、遮音性中間膜1、言い換えれば、単なるPVBに対して、粘性を調整し吸音性を向上させた変性PVBを用い、音により遮音性中間膜を振動させて、音のエネルギーを効率よく振動エネルギーから熱エネルギーに変えることで吸音させて、遮音性を発現する。
【0043】
例えば、コア層に遮音性透明樹脂を用い、その外層にPVBを用い、遮音性透明樹脂をPVBで挟んだサンドイッチ構造の遮音性樹脂膜1(遮音中間膜)が市販されており(積水化学工業株式会社製、商品名、エスレックアコースティックフィルム)、本発明に好適に使用される。該遮音性樹脂膜 1は、従来のPVBからなる中間膜層(外層)の間に遮音層(コア層)を設ける3層押出技術により製造され、従来のPVB膜2と同様の基本性能を保持しながら、遮音性能を大きく向上させ、人が最も聞き取りやすいとされる1000〜4000Hz付近で、従来の中間膜対比5dB、遮音効果が向上するとされる。
【0044】
また、本発明の合わせガラスにおいて、樹脂中間膜は透明であり、透過率が高いことが好ましい。しかしながら、装飾性を与えるために、PVB膜2側を染色することで、合わせガラスを着色ガラスとすることが可能である。
【0045】
本発明の合わせガラスに用いるガラス板G1、G2には、フロート法で製造された後、何ら処理がされていない生板ガラスのみでなく、フロート法で製造された後、軟化点近くまで加熱された後、空冷等で急冷され、ガラス板表面に引っ張り応力を与えた風冷強化ガラス、表面のナトリウムイオンを異なるイオンに置き換えた化学強化ガラス、または網入りガラス、金属線入りガラス等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の合わせガラスにおいて、ガラス板G1、G2表面に、金属および金属酸化物を積層させた熱線反射膜等の機能性薄膜を形成してもよいし、PVB膜2に熱線反射機能を有する銀微粒子等の機能性微粒子を練りこんだものを用いてもよい。
【実施例】
【0047】
図2に示すように、呼び厚さ4ミリ(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)、サイズ 1230mm×1480mmのガラス板G1、G2を用意し、これに、表2に示す構成の市販の遮音性樹脂膜1とPVB膜2を積層させた樹脂中間膜を挟みこんで、オートクレーブ内にいれ、ゴムバックに入れて減圧吸引しつつ、125℃下、1.47N/mm2 に加圧し、その状態に1時間保持し、樹脂中間膜の構成が異なる4種類の合わせガラス(実施例1〜4)を得た。遮音性樹脂膜1には、市販品(積水化学工業株式会社製、商品名、エスレックアコースティックフィルム)を用いた。
【0048】
【表2】

【0049】
(遮音性の測定)
実施例1〜4の合わせガラスに対し、JIS A 4706:2000「サッシ」に準拠し、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」による遮音性試験を行った。
【0050】
詳しくは、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に記載されるタイプI試験室(残響室)を使用し、2本の木製押縁(25mm×25mm)を用いて、ガラスの設置を行い、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に記載の方法で音響透過損失の測定を行った。
【0051】
音響透過損失の測定値が、前述のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準、「a)125Hz〜4000Hzの16点における音響透過損失が、全て該当する遮音等級線を上回ることとする。尚、各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。」「b)全周波数帯域において、数1の式によって、音響透過損失を換算し、その換算値(6点)が該当する遮音等級線を上回ることとする。」に対し、遮音等級T−3等級について、a)、b)いずれかの基準を満たした場合、遮音等級T−3等級に合格するとした。
【0052】
【数1】

【0053】
実施例1〜4および比較例の合わせガラスの遮音性の測定値を表3に示す。
【0054】
尚、比較例の合わせガラスは、呼び厚さ6ミリ(厚みの実測値、5.7mm、品名、FL6)の板ガラスを用意し、厚み、30Mil(0.76mm)のPVB膜のみを挟みこんだものであり、比較例の測定値のみは、板硝子協会「板ガラスの遮音性能 2000年版」より引用した。
【0055】
【表3】

【0056】
次いで、表3に示した実施例1の合わせガラスの遮音性の測定値を座標軸にプロットした。このようにして作成した、実施例1の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフを図3に示す。板ガラスG1(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)/遮音性樹脂膜1(厚みの実測値、0.76mm)/PVB膜2(厚みの実測値、0.76mm)/板ガラスG2(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)の構成の、厚み、8.92mmの実施例1の合わせガラスは、表3および図3に示すように、遮音等級T-3等級のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準a)、b)をともに満たし、遮音等級T-3等級に合格した。
【0057】
また、表3に示した実施例2の合わせガラスの遮音性の測定値を座標軸にプロットした、実施例2の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフを図4に示す。板ガラスG1(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)/遮音性樹脂膜1(厚みの実測値、0.76mm)/PVB膜2(厚みの実測値、0.38mm)/板ガラスG2(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)の構成の、厚み8.54mmの実施例2の合わせガラスは、表3および図4に示すように、遮音等級T-3等級のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準b)を満たし、遮音等級T-3等級に合格した。
【0058】
また、表3に示した実施例3の合わせガラスの遮音性の測定値を、座標軸にプロットした、実施例3の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフを図5に示す。板ガラスG1(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)/遮音性樹脂膜1(厚みの実測値、0.38mm)/PVB膜2(厚みの実測値、0.76mm)/板ガラスG2(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)の構成の、厚み、8.54mmの実施例3の合わせガラスは、表3および図5に示すように、遮音等級T-3等級のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準b)を満たし、遮音等級T-3等級に合格した。
【0059】
また、表3に示した実施例4の合わせガラスの遮音性の測定値を座標軸にプロットした、実施例4の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフを図6に示す。板ガラスG1(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)/遮音性樹脂膜1(厚みの実測値、0.38mm)/PVB膜2(厚みの実測値、0.38mm)/板ガラスG2(厚みの実測値、3.7mm、品名、FL4)の構成の、厚み、8.16mmの実施例4の合わせガラスは、表3および図6に示すように、遮音等級T-3等級のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準b)を満たし、遮音等級T-3等級に合格した。
【0060】
次いで、表3に示した比較例の合わせガラスの遮音性の測定値を、座標軸にプロットした、比較例の合わせガラスの遮音性能曲線のグラフを図7に示す。板ガラス(呼び厚さ6ミリ:許容厚さ、5.7mm〜6.3mm、品名、FL6)/PVB膜(厚みの実測値、0.76mm)/板ガラス(呼び厚さ6ミリ:許容厚さ、5.7mm〜6.3mm、品名、FL6)の構成の、比較例の合わせガラスは、表3および図7に示すように、遮音等級T-3等級のJIS A 4706:2000「サッシ」に記載の判断基準a)b)を満たし、遮音等級T-3等級に合格した。
【0061】
本発明の合わせガラス(実施例1〜4)は、比較例の合わせガラスと比べて、板ガラスG1、G2が各2.0mm以上、合わせガラスとして、4.0mm以上薄いにかかわらず、同等の遮音性能を示した。このことは、実施例1〜4の合わせガラスは、比較例の合わせガラスに対し、ガラス板G1、G2の板厚が2.0mm以上、薄いため、質量則に従い1000Hz以下の低音域の遮音効果は劣るものの、1000Hz〜4000Hzの中高音域においては、従来のPVB膜2に対し遮音性能を大きく向上させた遮音性樹脂膜1を用い、5dB以上、遮音効果を向上させた効果である。尚、質量則は、ガラス板の単位面積当たりの質量である面密度が大きいほど、透過損失が大きくなることで、コインシデンス限界周波数以下の周波数域の透過損失は、合わせガラスの厚みが厚くなるに従い大きくなる。
(防犯試験)
サイズを900mm×1100mmに変えた以外は前述と同様にして、実施例1〜4、比較例の合わせガラスを各々3体作製し、当該複層ガラスにJIS R 3108−2007「建築用ガラスの落球による防犯性能試験方法」に準拠し、防犯性能区分P2Aについての試験を実施した。
【0062】
試験は合わせガラスをなすガラス板G1を上にして、ガラス板G1の中央を中心とする1辺130mm±20mmの正三角形の頂点に、直径、100±0.2mm、質量、4.11±0.06kgの鋼球を、落下高さ、3000mmから1回ずつ、計3回落下させた。実施例1〜4、比較例1の合わせガラスにおいて前述の試験を実施し、全数、判定基準である鋼球の貫通は認められず、P2Aの要求性能を満足し、P2Aに合格した。
【0063】
実施例4の合わせガラスにおいては、遮音性樹脂膜1(厚み、0.38mm)とPVB膜2(厚み、0.38mm)を合わせた樹脂中間膜の厚みが0.76mmであるが、遮音性樹脂膜1と対貫通性に優れるPVB膜2を同時に用いたため、P2Aの要求性能を満足し、P2Aに合格した。
【符号の説明】
【0064】
G1、G2 ガラス板
1 遮音性樹脂膜
2 PVB膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の厚みが3.7mm以上、4.3mm以下の一対の板ガラスを0.38mm以上、0.78mm以下の遮音性樹脂膜と0.38mm以上、0.76mm以下のポリビニルブチラール膜を積層させた中間膜により接着一体化させ、サッシとした際にJIS A 4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級に合格することを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
JIS R 3108:2007に準拠する防犯性能区分P2Aに合格することを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
遮音性樹脂膜に、変性ポリビニルブチラールを用いてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
遮音性樹脂膜が、コア層に遮音性樹脂を用い、その外層にポリビニルブチラールを用い、遮音性樹脂膜をポリビニルブチラールで挟んだサンドイッチ構造の積層体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の合わせガラスを取り付けてなることを特徴とする窓。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の合わせガラスを取り付けてなることを特徴とするドア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−73898(P2011−73898A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224418(P2009−224418)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】