説明

合成樹脂発泡成形品の製造方法及び成形金型

【課題】 合成樹脂発泡成形品の製造において、欠肉等の充填不良の発生を可及的に防止して、複雑な形状の成形品であっても、効率的かつ安定した製造を可能にする合成樹脂発泡成形品の製造方法及び該製造方法を実施するための成形金型を提供する。
【解決手段】 合成樹脂発泡材料を金型内に注入し発泡硬化させて、所定形状の合成樹脂発泡成形品を得るに際し、上記金型のキャビティと連通する発泡ガス収容空間部を設けると共に、更にこの発泡ガス収容空間部に内圧が所定圧を超えた時に容積を拡大する圧力制御手段を付設し、上記発泡材料の発泡中に発生するガスを上記発泡ガス収容空間部に排出収容すると共に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時に上記圧力制御手段により該発泡ガス収容空間部の容積を拡大し、金型キャビティ内の充填不良の発生を防止することを特徴とする合成樹脂発泡成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム等の合成樹脂発泡成形品用の製造方法及び該製造方法の実施に用いる成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォーム等の合成樹脂発泡成形品を製造する場合、所定形状のキャビティ(成形空間部)を有する成形金型内に合成樹脂発泡材料を注入し、該材料を該キャビティ内で発泡硬化させた後、脱型することにより、所定形状の成形品を得ている。この際、上記材料をキャビティ内の隅々まで確実に充満させるには、上記成形金型に適宜なガス抜き機構を設けて、発泡中に発生するガス(発泡ガス)を上記キャビティ内から排出し、上記キャビティ内の圧力(発泡圧)を適切に調整する必要がある。例えば、特開2001−113539号公報(特許文献1)には、所定箇所に発泡ガスを型外に排出可能とする小さい隙間を有するシリンダー構造体を設けた自動車用シートパッドの発泡金型が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記の場合、通常、発泡体がガス抜き機構部分にはみ出すため、このはみ出した部分を成形品の脱型後に除去する必要があり、上記シリンダー構造体により多少は改善されるものの、依然としてその除去作業に手間と時間を要する。また、合成樹脂発泡成形品では、成形品全体の発泡倍率を均一にすることが求められるが、上記のように発泡ガスを金型外に排出する方法では、ガス抜き機構周辺部の発泡圧が低くなりやすいため、発泡圧に部分的なバラツキを生じやすく、均一な成形品を得ることが難しい場合がある。また、用途によってはより高い発泡圧を必要とする低発泡倍率(高密度)のものが求められるが、発泡ガスが自然に金型外へ放出されるため、必要な発泡圧が得にくい。上記の問題に対しては、これまでにも様々な技術が提案されており、例えば、特開2004−167814号公報(特許文献2)には、ガスの残留による欠肉部の発生を抑制するために、金型のキャビティとは別にエアー溜まり部(チャンバー)を設けることが提案されている。
【0004】
しかしながら、金型構造等の制約によりチャンバーの容積を十分に確保できない場合は、発泡体がキャビティ内に充満する前に、チャンバー内がガスで充満されて高圧状態になってしまい、その効果を十分に発揮することができないことがあった。一方、この問題を解消するためにはチャンバーの容積を大きくすることが有効であるが、設置スペースの確保が困難であったり、仮に設置できてもチャンバー内に流入する発泡体の量が多くなり、結果として材料のロスが増えてしまい経済的にも環境的にも好ましくない。更には、キャビティ内のチャンバー近傍における発泡体の流動が他の部分に比較して大きくなることから、発泡体内の気泡構造が不均一になりやすく、成形品の品質低下を招く懸念もある。
【0005】
上述した従来の成形金型においては、発泡ガスを収容する上記チャンバーの容積を適宜調整することができるものの、発泡成形時には事前に調整された容積に固定されているのが一般的である。しかしながら、合成樹脂発泡材料の発泡成形には、製造現場の気温や湿度、発泡材料の配合、攪拌条件や注入方法、金型の温度及び成形サイクル等の様々な条件が影響しており、常に一定の条件が保たれるとは限らず、発泡成形時の状況によっては、キャビティ内に発泡体が充満しきる前に、発泡ガスがチャンバー内に充満して発泡圧が過度に高くなってしまう場合もある。このような場合、その時点で発泡体の発泡膨張が止まってしまい、欠肉やエアー溜まり等の充填不良が発生してしまうことになる。特に、キャビティに袋小路を有する複雑な形状の成形品ほど部分的に圧力が高まりやすく、その影響は大きい。
【0006】
なお、出願人は特開2009−286054号公報(特許文献3)や特開2009−298057号公報(特許文献4)において、発泡体の欠肉等を可及的に防止するためのガス抜き機構を備えた成形金型をすでに提案している。
【0007】
このように、合成樹脂発泡成形品の製造において、欠肉等の不具合を抑制するために様々な技術が提案されているが、経済的及び環境的な見地から、更に効率的かつ安定した発泡成形を可能とするため、上述した問題を更に容易かつ確実に解消するための方策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−113539号公報
【特許文献2】特開2004−167814号公報
【特許文献3】特開2009−286054号公報
【特許文献4】特開2009−298057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、合成樹脂発泡成形品の製造において、欠肉等の充填不良の発生を可及的に防止して、複雑な形状の成形品であっても、効率的かつ安定した製造を可能にする合成樹脂発泡成形品の製造方法及び該製造方法を実施するための成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため、合成樹脂発泡材料を金型内に注入し発泡硬化させて、所定形状の合成樹脂発泡成形品を得るに際し、上記金型のキャビティと連通する発泡ガス収容空間部を設けると共に、更にこの発泡ガス収容空間部に内圧が所定圧を超えた時に容積を拡大する圧力制御手段を付設し、上記発泡材料の発泡中に発生するガスを上記発泡ガス収容空間部に排出収容すると共に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時に上記圧力制御手段により該発泡ガス収容空間部の容積を拡大し、金型キャビティ内の充填不良の発生を防止することを特徴とする合成樹脂発泡成形品の製造方法を提供する。
【0011】
即ち、本発明にかかる合成樹脂発泡成形品の製造方法は、キャビティ内の発泡圧が過度に高まった際に、上記圧力制御手段が作動することにより、発泡ガス収容空間部の容積を拡大することができ、キャビティ内の発泡ガス及び発泡体を発泡ガス収容空間部に更に導くことができるようになる。これにより、従来では発泡圧が過度に高まって充填不良が発生していた状況になっても、欠肉等が生じない良好な成形品を安定して製造することが可能となる。
【0012】
この場合、本発明にかかる合成樹脂発泡成形品の製造方法では、上記発泡ガス収容空間部を、金型の所定箇所に設けられたガス抜き孔に接続されたチャンバーと、該チャンバーに連通して接続された圧力制御手段とで構成することにより、圧力制御手段への発泡体の進入を可及的に抑制することができ、より効率的に発泡成形を製造することができるようになる。
【0013】
また、上記圧力制御手段を、上記チャンバーに接続されたシリンダーと該シリンダー内に配設されたピストンとを具備してなり、上記チャンバー内空部と上記シリンダー内空部とで上記発泡ガス収容空間部を構成すると共に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時に、その圧力により上記ピストンを移動させて容積を拡大させる構成とすることにより、発泡成形を繰り返し行うことが容易になり、更に効率的に発泡成形を製造することができるようになる。
【0014】
更に、本発明では、上記チャンバーと上記圧力制御手段とを柔軟性のあるフレキシブルチューブを用いて接続することにより、特に上記圧力制御手段の設置スペースが確保できない場合に、上記圧力制御手段が配置可能な位置まで発泡ガスの排出経路を導くことができるようになる。従って、成形金型の構造、成形品の形状、及び圧力制御手段の設置スペース等に応じて最適なベント構造を容易に構成することができ、金型設計の自由度を増すことができる。また、上記チャンバーと上記圧力制御手段の間に上記フレキシブルチューブがあることにより、チャンバー内が発泡体で充満してしまった場合に、発泡体が上記圧力制御手段へ進入するのを防ぐこともできる。
【0015】
また、本発明では、上記の合成樹脂発泡成形品の製造方法を実施するための一態様として、合成樹脂発泡材料を金型内に注入し発泡硬化させて、所定形状の合成樹脂発泡成形品を得る成形金型であって、金型の所定箇所に設けられたガス抜き孔に接続されるチャンバーと、シリンダー及び該シリンダー内に配設されたピストンを備え、上記チャンバーに連通して接続される圧力制御手段とを具備してなり、上記チャンバー内空部と上記シリンダー内空部とで上記金型のキャビティと連通する発泡ガス収容空間部を構成すると共に、上記発泡材料の発泡中に発生するガスを上記発泡ガス収容空間部に排出収容する際に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧力を超えた時に、その圧力により上記ピストンを移動させて上記発泡ガス収容空間部の容積を拡大するように構成したことを特徴とする合成樹脂発泡成形品の成形金型を提供する。
【0016】
この成形金型は、発泡圧に応じて発泡ガス収容空間部の容積を拡大する圧力制御手段を備えるもので、上記製造方法を容易に実施し得、ガス溜まりの発生しやすい袋形状部を有する複雑な形状の合成樹脂発泡成形品であっても容易かつ確実に製造することができるものである。また、この成形金型は、特に軟質ポリウレタンフォーム等からなる合成樹脂発泡成形品等に好適に使用することができ、例えば、自動車用シートパッド製造用として好適に使用することができるものである。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の合成樹脂発泡成形品の製造方法では、発泡ガスを排出収容する発泡ガス収容空間部に、発泡圧に応じて発泡ガスを排出収容する発泡ガス収容空間部の容積を適宜拡大することができる圧力制御手段を付設したことにより、可及的に成形品の充填不良の発生を防止し、合成樹脂発泡成形品をより容易かつ確実に安定して成形することができる。従って、成形品の品質が安定すると共に、不良品の発生や材料のロスを削減することができ、経済面及び環境面でより好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる成形金型の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1における圧力制御手段近傍を拡大した概略断面図である。(A)は発泡材料の注入前の様子を示し、(B)は発泡が進行してキャビティ内の発泡圧が所定圧を超え、ピストンが移動した後の様子を示す。
【図3】本発明にかかる成形金型の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実験用金型の概略斜視図である。
【図5】図4のA−A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の合成樹脂発泡成形品の製造方法について、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明にかかる合成樹脂発泡成形品の製造方法を実施する成形金型の一例を示すものである。この成形金型1は、自動車用シートのクッションパッド用の成形金型であり、成形金型本体2、チャンバー(エアー溜まり部)3及び圧力制御手段4で構成されている。
【0021】
上記成形金型本体2は、公知の合成樹脂発泡成形用の成形金型と同様の構成とすればよく、特に制限されるものではないが、ここではその一例として、自動車用シートのクッションパッド用の成形金型の例を示した。この金型本体2は、金型本体2の主体部分を構成する下型21と、この下型21の開放面を覆って該下型21に接合され、下型21との間に製品形状のキャビティcを形成する上型22及び中子型23とで構成されるものであり、上記上型22には該キャビティcと連通するガス抜き孔24が設けられている。なお、このガス抜き孔24の設置箇所は、金型の形状等に応じて任意に設定することができるが、特に図1に示すようなガス溜りが発生しやすい袋形状となっている箇所に形成することが好ましい。更に、ガス抜き孔24の個数も特に制限はなく、金型の形状等に応じてガス溜まりの発生が予想される箇所に適宜個数形成し得る。また、上記成形金型本体2の材質としては、合成樹脂発泡成形品用の成形金型として公知の材料を使用することができる。
【0022】
図2は、図1で示した成形金型1におけるチャンバー3及び圧力制御手段4近傍を拡大した概略断面図であり、本発明の要部を示すものである。ここで、図2(A)は合成樹脂発泡材料を金型1内に注入する前(平常時)の状態を示し、(B)は合成樹脂発泡材料が発泡硬化した発泡体fが金型1内に充満した状態を示している。
【0023】
上記チャンバー3は、特に制限されるものではないが、通常、所定の直径及び長さの硬質材料からなるパイプ状の部材であり、上記金型本体2の上記ガス抜き孔24に接続される。材質としては、公知の金属や樹脂材料を使用することができ、特に制限されるものではないが、アルミ材を加工したもの等を好適に用いることができる。また、上記チャンバー3は、通常の方法で上記金型本体2のガス抜き孔24に接続すればよく、上記ガス抜き孔24に嵌着あるいは螺着し、発泡ガスが漏れることなく、かつ使用時の振動や発泡圧等により外れないように固定されていればよい。なお、通常は着脱可能な連結構造とすることが好ましく、また接続部に公知のパッキン等を介在させてキャビティcの気密性を低下させないことが好ましい。
【0024】
上記圧力制御手段4は、上記チャンバー3に連通して接続され、発泡の状況に応じてキャビティc内の発泡圧の調整を行うものであり、シリンダー41、該シリンダー41内に配設されたピストン42、該ピストン42の上端面中心部に突設され、その先端部がシリンダー41の上端から外部に突出したピストンロッド43、及び該ピストンロッド43の周囲に同軸的に巻回配置され、上記ピストン42をチャンバー3との連結端側へと付勢するスプリング44で構成されている。
【0025】
この圧力制御手段4は、平常時において、図2(A)に示したように、シリンダー41内において上記ピストン42が、上記スプリング44によってチャンバー3との連結端側へと付勢された状態で、所定位置に保持されている。また、発泡成形時において、発泡の進行に伴いキャビティc内の発泡圧が上昇して発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時には、図2(B)に示したように、上記ピストン42がスプリング44の付勢力に抗して摺動することにより、上記シリンダー41内に上記ピストン42によって区画される新たな発泡ガス収容空間部が、上記チャンバー3内の発泡ガス収容空間部に連通するように形成される。このように、本発明の成形金型1では、発泡圧が過度に高まって、従来では充填不良が発生する状況になった場合でも、発泡ガス収容空間部の容積が拡大することにより、ガス抜き孔24周辺の発泡ガス及び発泡体fを更にチャンバー3内に導くことができるため、高圧下における反応完了前の発泡体の流動が可能となり、ガス抜き孔24の周辺に発生する欠肉等を可及的に防止できる。
【0026】
なお、上記ピストン42により区画される上記シリンダー41内の発泡ガス収容空間部の容積は、金型の仕様等に応じて適宜設定されるものであり、特に制限されるものではないが、成形金型の繰り返し使用を容易にする観点から、容積拡大後に発泡体fがシリンダー41内に進入しないようにすることが好ましく、上記チャンバー3の内容積よりも小さく設定することが好ましい。また、ここでは特に図示していないが、上記ピストン42としてはシリンダー41との気密性を確保するためにパッキンが取り付けられているものを好適に使用できる。
【0027】
スプリング44は、特に制限されるものではないが、平常時はピストン42をシリンダー41のチャンバー連結端側の所定位置に移動・保持することができ、かつ所定の発泡圧によりシリンダーが押圧された際に収縮する程度の強さのものとすればよい。
【0028】
上記圧力制御手段4は、通常の方法で上記チャンバー3の開口部に接続すればよく、必要に応じて公知のコネクタ類やパイプ等の適宜な部材を用いて上記開口部に嵌着あるいは螺着し、発泡ガスが漏れることなく、かつ使用時の振動や発泡圧等により外れないように固定されていればよい。なお、通常は着脱可能な連結構造とすることが好ましく、また接続部に公知のパッキン等を介在させてキャビティcの気密性を低下させないことが好ましい。なお、この圧力制御手段4としては、市販品を用いることができ、例えば、空気圧によって作動するエアーシリンダー、機械的制御により作動する機械式シリンダー、及び電気的制御により作動する電気式シリンダー等を用いることができる。本発明では、より簡便に使用できるエアーシリンダーを好適に用いることができる。上記シリンダーは、適宜な容積のものを選定して、公知の方法により取り付ければよい。この場合、上記シリンダーが作動を開始する圧力は、目的とする発泡成形品や発泡材料、発泡成形条件などに応じて適宜設定され、特に制限されるものではないが、通常、ポリウレタン発泡材料を用いたクッションパッドの成形では、50〜200kPaGの範囲に設定することが好ましい。また、電気式シリンダーを用いた場合は、圧力センサー等の公知の圧力検知手段により型内の圧力を測定し、その測定結果に応じてシリンダーの動作を制御することにより、発泡圧をより精密に制御することが可能となる。なお、ここでは上記チャンバー3と別体に構成した圧力制御手段4をチャンバー3に接続した例を示したが、場合によっては、ピストン42及びスプリング44を直接チャンバー3内に配設して、上記圧力制御手段4と同様の構成を、チャンバー3内に直接設けることも可能である。
【0029】
図3は、本発明の他の実施例を示す概略断面図であり、チャンバー3とシリンダー41とを柔軟性のあるフレキシブルチューブ45を介して接続したものである。このフレキシブルチューブ45は、上記シリンダー41の設置位置やスペースに応じて自在に湾曲させることができる程度の柔軟性を有するものとすることが好ましい。その材質としては、耐熱性があり合成樹脂発泡成形品の成形金型用として公知の材料を使用することができ、特に制限されるものではないが、具体的にはポリウレタンチューブ等を好適に用いることができる。なお、上記フレキシブルチューブ45の直径及び長さは、金型の構造や上記チャンバー3及びシリンダー41の設置位置等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されるものではない。
【0030】
この場合、上記フレキシブルチューブ45は、通常の方法で上記チャンバー3及びシリンダー44に着脱可能に接続すればよく、発泡ガスが漏れることなく、かつ使用時の振動や発泡圧等により外れない程度に固定されていればよい。例えば、端部に各種カプラーや公知のコネクタ類を取り付けて上記チャンバー3及びシリンダー44に接続すればよい。また、接続部に公知のパッキン等を介在させキャビティ21の気密性低下を抑制することも任意である。
【0031】
本発明の成形金型を用いて合成樹脂発泡成形品を製造する場合について、具体的に説明する。まず、所定温度に温調した成形金型本体2のキャビティc内に、ポリウレタン等の合成樹脂発泡材料を注入して、成形金型1を密閉し、発泡を開始する。該発泡材料は、キャビティc内で発泡ガスを放出しながら発泡膨張し、キャビティc内に充満していく。この時、発泡ガスはチャンバー3内の発泡ガス収容空間部に排出収容されていく。更に発泡が進行して、チャンバー3内の圧力が高まり、内圧が所定圧を超えた時点で、シリンダー41内のピストン42が気密状態で摺動してチャンバー3と連通した新たな空間部がシリンダー41内に形成され、発泡ガスを収容可能な容積が拡大する。このように、圧力制御手段4の作動によって発泡ガス収容空間部が拡大したことにより、ガス抜き孔24周辺の発泡ガスが更に収容され、発泡体fはチャンバー3内まで適度に進入し、所定の発泡圧に達した時点で、該発泡材料の発泡膨張が停止する。その状態で所定時間が経過した後、発泡材料の反応が終了する。この時、キャビティc内は、発泡体fが確実に充満しており、欠肉等のない成形品を得ることができる。最終的に成形品(発泡体f)を金型1から脱型した後、成形品からチャンバー3内にはみ出した部分を除去することにより所定の形状が得られる。また、成形品を脱型した時、シリンダー41内のピストン42は、ピストンロッド43の周囲に巻回配置されたスプリング44によってチャンバー連結端側に付勢されて再び所定位置に戻る。なお、発泡中に過度な高圧状態となることなく良好に発泡成形が進み、チャンバー3内の圧力が所定圧に達しなかった場合は、上記ピストン42は所定位置から移動することはなく、発泡ガス収容空間部の容積は変化しない。これにより、袋形状部を有する複雑な形状の合成樹脂発泡成形品を製造する場合においても、欠肉等の充填不良のない成形品をより容易かつ確実に得ることができる。
【0032】
ここでは本発明にかかる成形金型の例として自動車用シートパッドを成形するための金型を示したが、本発明はポリウレタンフォームを始めとするあらゆる種類の合成樹脂発泡成形品に対応することができるものであり、特に制限されるものではない。
【0033】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、各部の構成や形状、配置、組み合わせなどは、適宜変更することができる。例えば、上記の実施例では、チャンバー3及び圧力制御手段4を上型22のガス抜き孔24に接続した例を示したが、金型の構造によっては下型21や中子型23にガス抜き孔24を形成して接続することも可能であり、その他の構成等も本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して差し支えない。
【0034】
また、発泡圧が高くなりすぎて、上記の圧力制御手段のみでは発泡圧の制御が困難な場合は、例えば、必要に応じてガス抜き手段として、安全弁や機械式の弁、電磁弁等の制御弁をチャンバー3及び圧力制御手段4の任意の箇所に設け、所定の圧力を超えた時に上記制御弁を適宜解放してチャンバー3内の圧力を下げるように構成することもできる。この場合、チャンバー3内の発泡圧を公知の圧力センサー等の圧力検知手段により検知して、上記制御弁の動作を制御するように構成するとよい。
【0035】
以下、実験例を示し、本発明にかかる製造方法の効果をより具体的に説明する。
【0036】
1.成形金型
まず、実験用の金型として、図4及び図5に示す成形金型1aを用いた。該成形金型1aは、成形金型本体2a、チャンバー3a及び圧力制御手段4aから構成される。ここで、該成形金型本体2aは、上面が開放された箱形で、その内側に幅400mm×長さ400mm×高さ100mmのキャビティcが形成された下型21aと、この下型21aの開放面を覆って該下型21aに接合される上型22aとから構成される。また、該上型22aの内面には直径100mm×高さ50mmの円柱状の突起部が4個均等な位置に形成されており、直方体の上面に4個の円柱状突起部が均等配置された形状を有する成形品が得られるようになっている。そして、上記上型22aの突起部形成位置にはガス抜き孔24aが設けられ、該ガス抜き孔24aに容積約15cm3の終端部が閉塞された円筒状のチャンバー3aが嵌着されている。更に、上記突起部のうちの1個に圧力制御手段として、上記図2の圧力制御手段4と同様の構成を有する容積約8cm3のエアーシリンダー4a(CKD社製、型番:SSD−X20−10)が接続されている。なお、ここでは特に図示していないが、上記成形金型1aには、加熱用のヒーター、温度センサー及び上下型を接合・固定するためのクランプ等の通常必要とされる部品が取り付けられている。
【0037】
2.発泡成形
合成樹脂発泡材料として、発泡剤や触媒等の各種添加剤を適宜配合した、ポリオール成分を含む第1液及びイソシアネート成分を含む第2液からなる公知の2液型のウレタン発泡原液を用いた。該ウレタン発泡原液は、常法に従って所定量の第1液及び第2液を混合した後、約60℃に設定した上記の金型内に注入した。上記発泡原液を金型内に注入した後、上下型を接合して型締めし、その状態で4分間保持して、発泡硬化させた。この時、チャンバー3aに接続された上記圧力制御手段4aにおいて、ピストンロッド43の移動が確認され、発泡の進行に伴い発泡圧が高まったことにより上記圧力制御手段4aが作動して発泡ガス収容空間部の容積が拡大したことが確認できた。
発泡硬化が終了して、金型を開けたところ、4個の突起部のうち、圧力制御手段4aを接続しなかった突起部では、3個全てで欠肉を生じていたが、圧力制御手段4aを接続した突起部では発泡体が隅々まで充満しており、欠肉を生じることなく良好に形成されていることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1,1a 成形金型
2,2a 成形金型本体
21,21a 下型
22,22a 上型
23 中子型
24,24a ガス抜き孔
3,3a チャンバー(エアー溜まり部)
4,4a 圧力制御手段
41 シリンダー
42 ピストン
43 ピストンロッド
44 スプリング
45 フレキシブルチューブ
c キャビティ
f 発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡材料を金型内に注入し発泡硬化させて、所定形状の合成樹脂発泡成形品を得るに際し、上記金型のキャビティと連通する発泡ガス収容空間部を設けると共に、更にこの発泡ガス収容空間部に内圧が所定圧を超えた時に容積を拡大する圧力制御手段を付設し、上記発泡材料の発泡中に発生するガスを上記発泡ガス収容空間部に排出収容すると共に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時に上記圧力制御手段により該発泡ガス収容空間部の容積を拡大し、金型キャビティ内の充填不良の発生を防止することを特徴とする合成樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
上記発泡ガス収容空間部を、金型の所定箇所に設けられたガス抜き孔に接続されたチャンバーと、該チャンバーに連通して接続された圧力制御手段とで構成した請求項1記載の合成樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
上記圧力制御手段が、上記チャンバーに接続されたシリンダーと該シリンダー内に配設されたピストンとを具備してなり、上記チャンバー内空部と上記シリンダー内空部とで上記発泡ガス収容空間部を構成すると共に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧を超えた時に、その圧力により上記ピストンを移動させて容積を拡大させる請求項2記載の合成樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項4】
上記チャンバーと上記圧力制御手段とをフレキシブルチューブで接続した請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項5】
キャビティ内のガス溜りの発生が予想される箇所にガス抜き孔を形成して、このガス抜き孔に上記発泡ガス収容空間部を接続する請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項6】
合成樹脂発泡材料を金型内に注入し発泡硬化させて、所定形状の合成樹脂発泡成形品を得る成形金型であって、
金型の所定箇所に設けられたガス抜き孔に接続されるチャンバーと、
シリンダー及び該シリンダー内に配設されたピストンを備え、上記チャンバーに連通して接続される圧力制御手段とを具備してなり、
上記チャンバー内空部と上記シリンダー内空部とで上記金型のキャビティと連通する発泡ガス収容空間部を構成すると共に、
上記発泡材料の発泡中に発生するガスを上記発泡ガス収容空間部に排出収容する際に、該発泡ガス収容空間部の内圧が所定圧力を超えた時に、その圧力により上記ピストンを移動させて上記発泡ガス収容空間部の容積を拡大するように構成したことを特徴とする合成樹脂発泡成形品の成形金型。
【請求項7】
上記チャンバーと上記圧力制御手段とをフレキシブルチューブで接続した請求項6記載の合成樹脂発泡成形品の成形金型。
【請求項8】
上記合成樹脂発泡成形品が軟質ポリウレタンフォーム成形品である請求項6又は7記載の合成樹脂発泡成形品の成形金型。
【請求項9】
自動車用シートパッドを成形するための金型である請求項6〜8のいずれか1項に記載の合成樹脂発泡成形品の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207082(P2011−207082A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77542(P2010−77542)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】