合成樹脂製パレット用金型構造
【解決手段】エジェクターボックス密閉空間A1及び可動金型7と固定金型12とにより形成されたキャビティCに、圧縮ガスが注入された状態で、キャビティに、溶融樹脂を射出することにより、無発泡表面層と内部発泡部とからなるスキッドS’を成形するための合成樹脂製パレット用金型構造であって、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたものである。
【効果】溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【効果】溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製パレットを、カウンタープレッシャー法によって成形する際に用いられる金型構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビティへの溶融樹脂の射出前に、キャビティに圧縮ガスを注入して、キャビティ内を加圧状態とし、その後、キャビティ内を加圧状態に保持した状態で、溶融樹脂を、キャビティに注入することにより、製品を成形する、所謂、カウンタープレッシャー法による射出成形が、一例として、特許文献1に開示されている。このカウンタープレッシャー法により、表面層(スキン層)が、無発泡状態で、且つ、内部が、均一な発泡状態の製品を成形することができるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平1−22132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形においては、複数のノズルから、キャビティに注入された溶融樹脂の最終到達領域や溶融樹脂の合流領域において、溶融樹脂の圧力が高まることになり、固定金型と可動金型を離型しようとする圧力が加わることになる。固定金型と可動金型とのパーティング面に、所定以上の間隙ができると、この間隙に、溶融樹脂が入り込み、製品にばりが形成されることになる。
【0005】
カウンタープレッシャー法による射出成形の場合には、キャビティ内が加圧状態にあるので、通常の射出成形に比べて、固定金型と可動金型を離型しようとする圧力は大きく、また、キャビティ内に注入された圧縮ガスが、溶融樹脂の合流領域等において圧縮されて高温になり、この高温化された圧縮ガスにより、溶融樹脂の粘度が小さくなり、従って、固定金型と可動金型とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み、ばりが発生し易くなる。
【0006】
また、固定金型と可動金型との当接及び離型を繰り返すことにより、製品が射出成形されることになるが、固定金型と可動金型との当接及び離型との繰り返しにより、固定金型及び可動金型のパーティング面が変形することがあるが、このような変形が生じると、固定金型と可動金型とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み易くなり、ばりが発生する頻度が高くなる。この問題は、キャビティ内が加圧状態において、射出成形を行うカウンタープレッシャー法の場合においては、より深刻な問題となる。
【0007】
更に、合成樹脂製パレットのような大型の製品を成形する場合には、キャビティ内に充填される圧縮ガスの量も、何十リッターと多く、また、ノズルの数も多くなり、従って、溶融樹脂の合流領域や溶融樹脂に押された圧縮ガスの溜まる領域が増加することになり、ばりの発生が多くの箇所で起こるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の合成樹脂製パレット用金型構造が有する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した目的を達成するために、エジェクターボックス密閉空間及び可動金型と固定金型とにより形成されたキャビティに、圧縮ガスが注入された状態で、キャビティに、溶融樹脂を射出することにより、無発泡表面層と内部発泡部とからなるスキッドを成形するための合成樹脂製パレット用金型構造であって、第1には、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたものであり、第2には、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたものである。
【発明の効果】
【0010】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【0011】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を、より確実に防止することができ、従って、ばりの発生を、より確実に防止することができる。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り、何ら、本実施例に限定されるものではない。
【0013】
先ず最初に、図1〜図4を用いて、合成樹脂製パレット用金型構造について概説する。なお、図1には、溶着パレットのスキッドが成形される例が示されている。
【0014】
先ず最初に、合成樹脂製パレット用金型構造の可動金型等の可動側部分について概説する。
【0015】
1は、可動側取り付け板であり、2は、可動金型用受け板であり、3は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2との間に取着された筒状のエジェクターボックスである。4は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とを架橋するように取着されたガイドロッドである。なお、2aは、可動金型用受け板2に取着されたアンギュラーコアである。
【0016】
5は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とエジェクターボックス3とにより囲まれた密閉状空間(以下、エジェクターボックス密閉空間という。)A1内に収容されたエジェクタープレートであり、エジェクタープレート5に穿設された透孔5aに、ガイドロッド4が、ブッシュ6を介して、嵌入されている。5bは、可動金型用受け板2に対して反対側に位置するエジェクタープレート5の面に取着されたエジェクターロッドであり、エジェクターロッド5bは、可動側取り付け板1に穿設された透孔1aに挿入されている。また、5cは、エジェクタープレート5に取着されたエジェクターピンである。なお、エジェクターロッド5bは、図示されていないシリンダー部材等により、往復動するように構成されている。なお、1bは、可動側取り付け板1に穿設された透孔1aを囲むように、エジェクターボックス密閉空間A1内に位置する可動側取り付け板1の面に取着された円筒状の案内筒体であり、この案内筒体1bに、エジェクターロッド5bが、密閉状に嵌入されている。
【0017】
7は、可動金型用受け板2に取着された可動金型であり、本実施例においては、可動金型7は、複数の分割金型7aに分割されており、分割金型7aは、可動金型用受け板2に形成された凹部2bに組み込まれている。
【0018】
ガイドロッド4付近に位置するエジェクターボックス3には、エジェクターボックス密閉空間A1内に連通されたグリス注入用透孔3aが穿設されている。8は、グリス注入用透孔3aを閉鎖する密閉蓋であり、密閉蓋8の四隅には、ボルト挿入孔8aが穿設されており、また、グリス注入用透孔3aの付近に位置するエジェクターボックス3の外壁には、密閉蓋8のボルト挿入孔8aに挿入されたボルトBの先端部が螺合する螺子穴3bが形成されている。
【0019】
上述したように、エジェクタープレート5に穿設された透孔5aに、ガイドロッド4が、ブッシュ6を介して、嵌入されるように構成されているが、円筒状のブッシュ6の内周面には、円周方向に、複数本のグリス溝6aが形成されており、このグリス溝6aに、グリスを充填しておくことにより、ガイドロッド4に対して、エジェクタープレート5が円滑に往復動することができるように構成されている。
【0020】
後述するように、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とエジェクターボックス3とにより囲まれたエジェクターボックス密閉空間A1内には、製品の成形工程毎に、圧縮ガスが注入されることになるが、この繰り返し行われる圧縮ガスの注入工程において、グリスが、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aから押し出されて、エジェクタープレート5が円滑に往復動が行えないという問題が生じることになる。
【0021】
上述したような問題を解決するためには、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aに、定期的に、グリスを供給する必要があるが、従来の合成樹脂製パレット用金型構造においては、グリスを供給のために、合成樹脂製パレット用金型構造を分解する必要があり、グリスの供給に、相当の時間と労力を要していた。
【0022】
本実施例において、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aに、グリスを補充する場合には、密閉蓋8を、エジェクターボックス3の外壁に取り付けているボルトBを外し取り外すことにより、図4に示されているように、エジェクターボックス3に穿設されたグリス注入用透孔3aを開けて、このグリス注入用透孔3aから、噴霧状のグリスを、ガイドロッド4に吹きつけることにより、簡単に、且つ、短時間に、グリス溝6aへのグリスを補充を行うことができる。なお、グリス注入用透孔3a付近に、エジェクタープレート5が位置していると、ガイドロッド4への噴霧状のグリスの効果的な付着が行えないので、図4に示されているように、エジェクタープレート5が、グリス注入用透孔3aに位置しない状態で、グリスの噴霧を行うことが好ましい。
【0023】
また、図5及び図6には、円筒状のブッシュ6の内周面にグリス溝6aを形成する代わりに、ガイドロッド4の外周面に、グリス溝4aを形成した実施例が示されている。グリス溝4aは、圧縮ガスのエジェクターボックス密閉空間A1内への注入時に、エジェクタープレート5の透孔5a内に位置するガイドロッド4の外周面に形成されている。このように構成することにより、ガイドロッド4の外周面に形成されたグリス溝4aに、直接、圧縮ガスが吹きつけられることを防止することができ、従って、グリス溝4aからのグリスの排出を防止することができ、ひいては、グリス溝4aへのグリスの充填作業の回数を減らすことができる。
【0024】
次に、図1及び図7を用いて、合成樹脂製パレット用金型構造の固定金型等の固定側部分について概説する。
【0025】
10は、固定側取り付け板であり、11は、固定側取り付け板10に取着された固定金型用受け板である。12は、固定金型であり、本実施例においては、固定金型12は、固定金型用受け板11に形成された凹部11aに組み込まれている。なお、固定金型12も、可動金型7と同様に、複数の分割金型に、必要に応じて、分割することができる。11aは、固定金型用受け板11に配設されたアンギュラーピンであり、アンギュラーピン11aは、図7に示されているように、可動金型7と固定金型12とが当接した際に、アンギュラーコア2aに形成された透孔2a1に挿入れるように構成されている。
【0026】
13は、合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分に配設された複数個のノズルであり、ノズル13を介して、可動金型7と固体金型12により形成されるキャビティCに、溶融樹脂が注入されることになる。
【0027】
次に、キャビティC及びエジェクターボックス密閉空間A1内へ圧縮ガスを注入する圧縮ガス注入構造について説明する。
【0028】
3cは、エジェクターボックス3に形成された、エジェクターボックス密閉空間A1に圧縮ガスを注入するためのエジェクターボックス側通路であり、エジェクターボックス側通路3cには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p1が取着されている。また、2cは、可動金型用受け板2に形成された、キャビティCに、可動金型7側から圧縮ガスを注入するための可動金型側通路であり、可動金型側通路2cには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p2が取着されている。更に、11bは、固定金型用受け板11及び固体金型12に形成された、キャビティCに、固定金型12側から圧縮ガスを注入するための固定金型側通路であり、固定金型側通路11bには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p3が取着されている。
【0029】
配管p1〜p3は、図示されていない切替弁に連結されており、切替弁は、配管p1〜p3に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給位置と、配管p1〜p3への圧縮ガスの供給を停止する圧縮ガス供給停止位置と、配管p1〜p3を、大気に連通させる自然排気位置とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。
【0030】
次に、上述した合成樹脂製パレット用金型構造を使用したスキッドの成形工程について説明する。
【0031】
図7に示されているように、可動金型7と固定金型12とが接合された状態で、先ず最初に、配管p1を介して、エジェクターボックス側通路3cから、エジェクターボックス密閉空間A1に圧縮ガスを供給する。また、配管p2を介して、可動金型側通路2cに圧縮空気を供給すると、圧縮ガスは、可動金型用受け板2と可動金型7との当接間隙G1及び可動金型7を構成する分割金型7a同士の当接間隙G2を経て、キャビティCに供給され、更に、配管p3を介して、固定金型側通路11bに圧縮空気を供給すると、圧縮ガスは、可動金型7と固定金型12とのパーティング面を経て、キャビティCに供給されることになる。このようにして、エジェクターボックス密閉空間A1及びキャビティCに、圧縮ガスが充填されることになる。
【0032】
上述したように、エジェクターボックス密閉空間A1及びキャビティCに、圧縮ガスが充填された後、切替弁を、配管p1〜p3への圧縮ガスの供給を停止する圧縮ガス供給停止位置に切り換え、その後、ノズル13から、キャビティCに、溶融樹脂を射出する。キャビティC内に、溶融樹脂が60〜90%程度、注入された時点で、切替弁を、圧縮ガス供給停止位置から、配管p1〜p3を、大気に連通させる自然排気位置に切り換えて、キャビティC内の圧縮ガスを、大気に排出させる。
【0033】
その後、可動側取り付け板1や可動金型用受け板2やエジェクターボックス3や可動金型7等からなる合成樹脂製パレット用金型構造の可動側部分を、固定側取り付け板10や固定金型用受け板11や固定金型12等からなる合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分から離反させることにより、固定金型12から、可動金型7を離型させる。次いで、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2との略中間位置にあるエジェクタープレート5を、図示されていないシリンダー部材等により、図8に示されているように、可動金型用受け板2方向に移動させて、エジェクターピン5cを、可動金型7から押し出して、射出成形されたスキッドを、可動金型7から取り外す。
【0034】
一例として、図9には、6つのノズル13が、合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分に略均等に配置されており、溶融樹脂は、共通通路H及び分岐通路h1〜h6を経て、6つのノズル13から、可動金型7と固体金型12により形成されるキャビティCに注入されることになる。
【0035】
分岐通路h1から注入された溶融樹脂と分岐通路h2から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.2 において、合流されることになり、分岐通路h2から注入された溶融樹脂と分岐通路h3から注入された溶融樹脂は、合流領域J2.3 において、合流されることになり、分岐通路h3から注入された溶融樹脂と分岐通路h4から注入された溶融樹脂は、合流領域J3.4 において、合流されることになり、分岐通路h4から注入された溶融樹脂と分岐通路h5から注入された溶融樹脂は、合流領域J4.5 において、合流されることになり、分岐通路h5から注入された溶融樹脂と分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J5.6 において、合流されることになり、分岐通路h1から注入された溶融樹脂と分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.6 において、合流されることになる。また、分岐通路h1から注入された溶融樹脂、分岐通路h2から注入された溶融樹脂、分岐通路h3から注入された溶融樹脂及び分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.2.3.6 において、合流されることになり、更に、分岐通路h3から注入された溶融樹脂、分岐通路h4から注入された溶融樹脂、分岐通路h5から注入された溶融樹脂及び分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J3.4.5.6 において、合流されることになる。
【0036】
上述したような、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 においては、上述したように、可動金型7と固定金型12とを離型しようとする圧力は大きく、また、キャビティ内に注入された圧縮ガスが、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 において圧縮されて高温になり、この高温化された圧縮ガスにより、溶融樹脂が加熱されて、溶融樹脂の粘度が小さくなり、従って、可動金型7と固定金型12とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み易くなり、ばりが発生し易くなり、更に、可動金型7と固定金型12との当接及び離型との繰り返しにより、可動金型7と固定金型12のパーティング面が変形することになり、特に、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の変形が大きくなることになる。
【0037】
上述したよう課題を解決するために、本実施例においては、図10に示されているように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分の硬度より高くしたものであり、好ましくは、30以上としたものである。
【0038】
カウンタープレッシャー法における射出成形においては、可動金型7及び固定金型12に使用されている鋼材の硬度(ロックウエル硬度)は、通常、10程度であるが、本発明においては、上述したように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分の硬度より、大きくしたものであり、好ましくは、30以上としたものである。
【0039】
上述したように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分より大きく、好ましくは、30以上としたことにより、可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【0040】
また、上述したように、可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8のみに、硬度30以上の鋼材を使用することにより、合成樹脂製パレット用金型構造のコスト上昇を抑えることができる。
【0041】
図11には、一例として、固定金型12の合流領域部分に位置する部分に、凹部12aを形成し、この凹部12aに、硬度30以上の鋼材で作成した入れ子12bが取り付けられた例が示されている。また、可動金型7にも、固定金型12の入れ子12bと対向する部分に、凹部7bを形成し、この凹部7bに、硬度30以上の鋼材で作成した入れ子7cが取り付けられた例が示されている。
【0042】
上述ように構成することにより、溶融樹脂の合流により、大きな圧力が加わる合流領域部分m1〜m8の固定金型12に、硬度の大きな入れ子12bを取り付けるとともに、固定金型12に対向して、可動金型7にも、硬度の大きな入れ子7cを取り付けることにより、この部分の可動金型7と固定金型12の変形を少なくすることができ、従って、ばりの発生を抑制することができる。
【0043】
上述したようにして成形されたスキッドS’は、一例として、デッキs1と、デッキs1の4つの角部に形成された隅桁部s2と、隅桁部s2間に形成された中間桁部s3と、図示されていない、デッキs1の中央に形成された中央桁部とを有している。そして、図13に示されているように、一対のスキッドS’間に、熱板Uを配置し、次いで、隅桁部s2を構成するリブ部s2a(図13には、隅桁部s2を構成するリブs2aのみが示されているが、中間桁部s3及び中央桁部においても同様である。)の先端部s2a’を、熱板Uに接触させて溶融し、その後、一対のスキッドS’間から、熱板Uを排出させた後、一対のスキッドS’の溶融状態のリブ部s2aの先端部s2a’同士を当接することにより、一対のスキッドS’から、合成樹脂製パレットSが製造されることになる。なお、通常、溶着されるリブ部s2aの先端部s2a’の溶着代(熱板Uにより溶融されるリブ部s2aの先端部s2a’の長さ)は、略2mm程度である。
【0044】
ところで、上述したように、カウンタープレッシャー法により、リブ部s2aの表面層(スキン層)が、無発泡状態の無発泡表面層s4で、リブ部s2aの内部が、発泡状態の内部発泡部s5となるスキッドS’が成形されることになるが、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1が、零であったり、薄いと、一対のスキッドS’を溶着した際に、図15に示されているように、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着面において、内部発泡部s5同士が溶着されることになり、従って、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着部の強度が低下するという問題があった。
【0045】
そこで、本発明においては、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1を、スキッドS’同士を溶着した際に、図16に示されているように、溶着された一対のスキッドS’のリブ部s2aの先端面s2a”間に、無発泡表面層s4が残存するような距離としたものである。
【0046】
上述したような、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1は、スキッドS’のリブ部s2aの幅W1やエジェクターボックス密閉空間A1に注入される圧縮ガスの圧力の大きさやカウンタープレッシャー法の射出成形に使用される樹脂等により、適宜、調整できるものである。
【0047】
上述したように、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1を、スキッドS’同士を溶着した際に、溶着された一対のスキッドS’のリブ部s2aの先端面s2a”間に、無発泡表面層s4が残存するような距離とすることにより、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着部の強度が高くなり、ひいては、合成樹脂製パレットSの強度や剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図2】図2は、図1の要部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造を構成する密閉蓋等の斜視図である。
【図4】図4は、図2と同様の要部拡大図である。
【図5】図5は、図2と同様の要部拡大図である。
【図6】図6は、図2と同様の要部拡大図である。
【図7】図7は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図8】図8は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図9】図9は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造を用いてスキッドが成形される状態を示す模擬的斜視図である。
【図10】図10は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の移動金型等の平面図である。
【図11】図11は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の部分垂直断面図である。
【図12】図12は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造により成形されるスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの斜視図である。
【図13】図13は、一対のスキッドを用いて合成樹脂製パレットを製造する工程の部分垂直断面図である。
【図14】図14は、スキッドのリブ先端部の部分垂直断面図である。
【図15】図15は、一対のスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの溶着部の部分垂直断面図である。
【図16】図16は、同じく、一対のスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの溶着部の部分垂直断面図である。
【符号の説明】
【0049】
A1・・・・・・・・・・・・・・・エジェクターボックス密閉空間
J・・・・・・・・・・・・・・・・溶融樹脂の合流領域
S・・・・・・・・・・・・・・・・合成樹脂製パレット
S’・・・・・・・・・・・・・・・スキッド
p1〜p3・・・・・・・・・・・・配管
1・・・・・・・・・・・・・・・・可動側取り付け板
2・・・・・・・・・・・・・・・・可動金型用受け板
3・・・・・・・・・・・・・・・・エジェクターボックス
5・・・・・・・・・・・・・・・・エジェクタープレート
7・・・・・・・・・・・・・・・・可動金型
7c・・・・・・・・・・・・・・・入れ子
8・・・・・・・・・・・・・・・・密閉蓋
10・・・・・・・・・・・・・・・固定側取り付け板
11・・・・・・・・・・・・・・・固定金型用受け板
12・・・・・・・・・・・・・・・固定金型
12b・・・・・・・・・・・・・・入れ子
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製パレットを、カウンタープレッシャー法によって成形する際に用いられる金型構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビティへの溶融樹脂の射出前に、キャビティに圧縮ガスを注入して、キャビティ内を加圧状態とし、その後、キャビティ内を加圧状態に保持した状態で、溶融樹脂を、キャビティに注入することにより、製品を成形する、所謂、カウンタープレッシャー法による射出成形が、一例として、特許文献1に開示されている。このカウンタープレッシャー法により、表面層(スキン層)が、無発泡状態で、且つ、内部が、均一な発泡状態の製品を成形することができるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平1−22132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形においては、複数のノズルから、キャビティに注入された溶融樹脂の最終到達領域や溶融樹脂の合流領域において、溶融樹脂の圧力が高まることになり、固定金型と可動金型を離型しようとする圧力が加わることになる。固定金型と可動金型とのパーティング面に、所定以上の間隙ができると、この間隙に、溶融樹脂が入り込み、製品にばりが形成されることになる。
【0005】
カウンタープレッシャー法による射出成形の場合には、キャビティ内が加圧状態にあるので、通常の射出成形に比べて、固定金型と可動金型を離型しようとする圧力は大きく、また、キャビティ内に注入された圧縮ガスが、溶融樹脂の合流領域等において圧縮されて高温になり、この高温化された圧縮ガスにより、溶融樹脂の粘度が小さくなり、従って、固定金型と可動金型とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み、ばりが発生し易くなる。
【0006】
また、固定金型と可動金型との当接及び離型を繰り返すことにより、製品が射出成形されることになるが、固定金型と可動金型との当接及び離型との繰り返しにより、固定金型及び可動金型のパーティング面が変形することがあるが、このような変形が生じると、固定金型と可動金型とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み易くなり、ばりが発生する頻度が高くなる。この問題は、キャビティ内が加圧状態において、射出成形を行うカウンタープレッシャー法の場合においては、より深刻な問題となる。
【0007】
更に、合成樹脂製パレットのような大型の製品を成形する場合には、キャビティ内に充填される圧縮ガスの量も、何十リッターと多く、また、ノズルの数も多くなり、従って、溶融樹脂の合流領域や溶融樹脂に押された圧縮ガスの溜まる領域が増加することになり、ばりの発生が多くの箇所で起こるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の合成樹脂製パレット用金型構造が有する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した目的を達成するために、エジェクターボックス密閉空間及び可動金型と固定金型とにより形成されたキャビティに、圧縮ガスが注入された状態で、キャビティに、溶融樹脂を射出することにより、無発泡表面層と内部発泡部とからなるスキッドを成形するための合成樹脂製パレット用金型構造であって、第1には、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたものであり、第2には、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたものである。
【発明の効果】
【0010】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【0011】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたので、可動金型及び固定金型の合流領域部分の変形を、より確実に防止することができ、従って、ばりの発生を、より確実に防止することができる。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り、何ら、本実施例に限定されるものではない。
【0013】
先ず最初に、図1〜図4を用いて、合成樹脂製パレット用金型構造について概説する。なお、図1には、溶着パレットのスキッドが成形される例が示されている。
【0014】
先ず最初に、合成樹脂製パレット用金型構造の可動金型等の可動側部分について概説する。
【0015】
1は、可動側取り付け板であり、2は、可動金型用受け板であり、3は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2との間に取着された筒状のエジェクターボックスである。4は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とを架橋するように取着されたガイドロッドである。なお、2aは、可動金型用受け板2に取着されたアンギュラーコアである。
【0016】
5は、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とエジェクターボックス3とにより囲まれた密閉状空間(以下、エジェクターボックス密閉空間という。)A1内に収容されたエジェクタープレートであり、エジェクタープレート5に穿設された透孔5aに、ガイドロッド4が、ブッシュ6を介して、嵌入されている。5bは、可動金型用受け板2に対して反対側に位置するエジェクタープレート5の面に取着されたエジェクターロッドであり、エジェクターロッド5bは、可動側取り付け板1に穿設された透孔1aに挿入されている。また、5cは、エジェクタープレート5に取着されたエジェクターピンである。なお、エジェクターロッド5bは、図示されていないシリンダー部材等により、往復動するように構成されている。なお、1bは、可動側取り付け板1に穿設された透孔1aを囲むように、エジェクターボックス密閉空間A1内に位置する可動側取り付け板1の面に取着された円筒状の案内筒体であり、この案内筒体1bに、エジェクターロッド5bが、密閉状に嵌入されている。
【0017】
7は、可動金型用受け板2に取着された可動金型であり、本実施例においては、可動金型7は、複数の分割金型7aに分割されており、分割金型7aは、可動金型用受け板2に形成された凹部2bに組み込まれている。
【0018】
ガイドロッド4付近に位置するエジェクターボックス3には、エジェクターボックス密閉空間A1内に連通されたグリス注入用透孔3aが穿設されている。8は、グリス注入用透孔3aを閉鎖する密閉蓋であり、密閉蓋8の四隅には、ボルト挿入孔8aが穿設されており、また、グリス注入用透孔3aの付近に位置するエジェクターボックス3の外壁には、密閉蓋8のボルト挿入孔8aに挿入されたボルトBの先端部が螺合する螺子穴3bが形成されている。
【0019】
上述したように、エジェクタープレート5に穿設された透孔5aに、ガイドロッド4が、ブッシュ6を介して、嵌入されるように構成されているが、円筒状のブッシュ6の内周面には、円周方向に、複数本のグリス溝6aが形成されており、このグリス溝6aに、グリスを充填しておくことにより、ガイドロッド4に対して、エジェクタープレート5が円滑に往復動することができるように構成されている。
【0020】
後述するように、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2とエジェクターボックス3とにより囲まれたエジェクターボックス密閉空間A1内には、製品の成形工程毎に、圧縮ガスが注入されることになるが、この繰り返し行われる圧縮ガスの注入工程において、グリスが、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aから押し出されて、エジェクタープレート5が円滑に往復動が行えないという問題が生じることになる。
【0021】
上述したような問題を解決するためには、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aに、定期的に、グリスを供給する必要があるが、従来の合成樹脂製パレット用金型構造においては、グリスを供給のために、合成樹脂製パレット用金型構造を分解する必要があり、グリスの供給に、相当の時間と労力を要していた。
【0022】
本実施例において、円筒状のブッシュ6の内周面に形成されたグリス溝6aに、グリスを補充する場合には、密閉蓋8を、エジェクターボックス3の外壁に取り付けているボルトBを外し取り外すことにより、図4に示されているように、エジェクターボックス3に穿設されたグリス注入用透孔3aを開けて、このグリス注入用透孔3aから、噴霧状のグリスを、ガイドロッド4に吹きつけることにより、簡単に、且つ、短時間に、グリス溝6aへのグリスを補充を行うことができる。なお、グリス注入用透孔3a付近に、エジェクタープレート5が位置していると、ガイドロッド4への噴霧状のグリスの効果的な付着が行えないので、図4に示されているように、エジェクタープレート5が、グリス注入用透孔3aに位置しない状態で、グリスの噴霧を行うことが好ましい。
【0023】
また、図5及び図6には、円筒状のブッシュ6の内周面にグリス溝6aを形成する代わりに、ガイドロッド4の外周面に、グリス溝4aを形成した実施例が示されている。グリス溝4aは、圧縮ガスのエジェクターボックス密閉空間A1内への注入時に、エジェクタープレート5の透孔5a内に位置するガイドロッド4の外周面に形成されている。このように構成することにより、ガイドロッド4の外周面に形成されたグリス溝4aに、直接、圧縮ガスが吹きつけられることを防止することができ、従って、グリス溝4aからのグリスの排出を防止することができ、ひいては、グリス溝4aへのグリスの充填作業の回数を減らすことができる。
【0024】
次に、図1及び図7を用いて、合成樹脂製パレット用金型構造の固定金型等の固定側部分について概説する。
【0025】
10は、固定側取り付け板であり、11は、固定側取り付け板10に取着された固定金型用受け板である。12は、固定金型であり、本実施例においては、固定金型12は、固定金型用受け板11に形成された凹部11aに組み込まれている。なお、固定金型12も、可動金型7と同様に、複数の分割金型に、必要に応じて、分割することができる。11aは、固定金型用受け板11に配設されたアンギュラーピンであり、アンギュラーピン11aは、図7に示されているように、可動金型7と固定金型12とが当接した際に、アンギュラーコア2aに形成された透孔2a1に挿入れるように構成されている。
【0026】
13は、合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分に配設された複数個のノズルであり、ノズル13を介して、可動金型7と固体金型12により形成されるキャビティCに、溶融樹脂が注入されることになる。
【0027】
次に、キャビティC及びエジェクターボックス密閉空間A1内へ圧縮ガスを注入する圧縮ガス注入構造について説明する。
【0028】
3cは、エジェクターボックス3に形成された、エジェクターボックス密閉空間A1に圧縮ガスを注入するためのエジェクターボックス側通路であり、エジェクターボックス側通路3cには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p1が取着されている。また、2cは、可動金型用受け板2に形成された、キャビティCに、可動金型7側から圧縮ガスを注入するための可動金型側通路であり、可動金型側通路2cには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p2が取着されている。更に、11bは、固定金型用受け板11及び固体金型12に形成された、キャビティCに、固定金型12側から圧縮ガスを注入するための固定金型側通路であり、固定金型側通路11bには、図示されていない切替弁を介して、圧縮ガス供給源に連結されている配管p3が取着されている。
【0029】
配管p1〜p3は、図示されていない切替弁に連結されており、切替弁は、配管p1〜p3に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給位置と、配管p1〜p3への圧縮ガスの供給を停止する圧縮ガス供給停止位置と、配管p1〜p3を、大気に連通させる自然排気位置とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。
【0030】
次に、上述した合成樹脂製パレット用金型構造を使用したスキッドの成形工程について説明する。
【0031】
図7に示されているように、可動金型7と固定金型12とが接合された状態で、先ず最初に、配管p1を介して、エジェクターボックス側通路3cから、エジェクターボックス密閉空間A1に圧縮ガスを供給する。また、配管p2を介して、可動金型側通路2cに圧縮空気を供給すると、圧縮ガスは、可動金型用受け板2と可動金型7との当接間隙G1及び可動金型7を構成する分割金型7a同士の当接間隙G2を経て、キャビティCに供給され、更に、配管p3を介して、固定金型側通路11bに圧縮空気を供給すると、圧縮ガスは、可動金型7と固定金型12とのパーティング面を経て、キャビティCに供給されることになる。このようにして、エジェクターボックス密閉空間A1及びキャビティCに、圧縮ガスが充填されることになる。
【0032】
上述したように、エジェクターボックス密閉空間A1及びキャビティCに、圧縮ガスが充填された後、切替弁を、配管p1〜p3への圧縮ガスの供給を停止する圧縮ガス供給停止位置に切り換え、その後、ノズル13から、キャビティCに、溶融樹脂を射出する。キャビティC内に、溶融樹脂が60〜90%程度、注入された時点で、切替弁を、圧縮ガス供給停止位置から、配管p1〜p3を、大気に連通させる自然排気位置に切り換えて、キャビティC内の圧縮ガスを、大気に排出させる。
【0033】
その後、可動側取り付け板1や可動金型用受け板2やエジェクターボックス3や可動金型7等からなる合成樹脂製パレット用金型構造の可動側部分を、固定側取り付け板10や固定金型用受け板11や固定金型12等からなる合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分から離反させることにより、固定金型12から、可動金型7を離型させる。次いで、可動側取り付け板1と可動金型用受け板2との略中間位置にあるエジェクタープレート5を、図示されていないシリンダー部材等により、図8に示されているように、可動金型用受け板2方向に移動させて、エジェクターピン5cを、可動金型7から押し出して、射出成形されたスキッドを、可動金型7から取り外す。
【0034】
一例として、図9には、6つのノズル13が、合成樹脂製パレット用金型構造の固定側部分に略均等に配置されており、溶融樹脂は、共通通路H及び分岐通路h1〜h6を経て、6つのノズル13から、可動金型7と固体金型12により形成されるキャビティCに注入されることになる。
【0035】
分岐通路h1から注入された溶融樹脂と分岐通路h2から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.2 において、合流されることになり、分岐通路h2から注入された溶融樹脂と分岐通路h3から注入された溶融樹脂は、合流領域J2.3 において、合流されることになり、分岐通路h3から注入された溶融樹脂と分岐通路h4から注入された溶融樹脂は、合流領域J3.4 において、合流されることになり、分岐通路h4から注入された溶融樹脂と分岐通路h5から注入された溶融樹脂は、合流領域J4.5 において、合流されることになり、分岐通路h5から注入された溶融樹脂と分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J5.6 において、合流されることになり、分岐通路h1から注入された溶融樹脂と分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.6 において、合流されることになる。また、分岐通路h1から注入された溶融樹脂、分岐通路h2から注入された溶融樹脂、分岐通路h3から注入された溶融樹脂及び分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J1.2.3.6 において、合流されることになり、更に、分岐通路h3から注入された溶融樹脂、分岐通路h4から注入された溶融樹脂、分岐通路h5から注入された溶融樹脂及び分岐通路h6から注入された溶融樹脂は、合流領域J3.4.5.6 において、合流されることになる。
【0036】
上述したような、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 においては、上述したように、可動金型7と固定金型12とを離型しようとする圧力は大きく、また、キャビティ内に注入された圧縮ガスが、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 において圧縮されて高温になり、この高温化された圧縮ガスにより、溶融樹脂が加熱されて、溶融樹脂の粘度が小さくなり、従って、可動金型7と固定金型12とのパーティング面に、溶融樹脂が入り込み易くなり、ばりが発生し易くなり、更に、可動金型7と固定金型12との当接及び離型との繰り返しにより、可動金型7と固定金型12のパーティング面が変形することになり、特に、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の変形が大きくなることになる。
【0037】
上述したよう課題を解決するために、本実施例においては、図10に示されているように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分の硬度より高くしたものであり、好ましくは、30以上としたものである。
【0038】
カウンタープレッシャー法における射出成形においては、可動金型7及び固定金型12に使用されている鋼材の硬度(ロックウエル硬度)は、通常、10程度であるが、本発明においては、上述したように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分の硬度より、大きくしたものであり、好ましくは、30以上としたものである。
【0039】
上述したように、可動金型7及び固定金型12のうち、溶融樹脂の合流領域J1.2 、J2.3 、J3.4 、J4.5 、J5.6 、J1.6 、J1.2.3.6 、J3.4.5.6 に位置する可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の硬度を、他の部分より大きく、好ましくは、30以上としたことにより、可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8の変形を防止することができ、従って、ばりの発生を防止することができる。
【0040】
また、上述したように、可動金型7及び固定金型12の合流領域部分m1〜m8のみに、硬度30以上の鋼材を使用することにより、合成樹脂製パレット用金型構造のコスト上昇を抑えることができる。
【0041】
図11には、一例として、固定金型12の合流領域部分に位置する部分に、凹部12aを形成し、この凹部12aに、硬度30以上の鋼材で作成した入れ子12bが取り付けられた例が示されている。また、可動金型7にも、固定金型12の入れ子12bと対向する部分に、凹部7bを形成し、この凹部7bに、硬度30以上の鋼材で作成した入れ子7cが取り付けられた例が示されている。
【0042】
上述ように構成することにより、溶融樹脂の合流により、大きな圧力が加わる合流領域部分m1〜m8の固定金型12に、硬度の大きな入れ子12bを取り付けるとともに、固定金型12に対向して、可動金型7にも、硬度の大きな入れ子7cを取り付けることにより、この部分の可動金型7と固定金型12の変形を少なくすることができ、従って、ばりの発生を抑制することができる。
【0043】
上述したようにして成形されたスキッドS’は、一例として、デッキs1と、デッキs1の4つの角部に形成された隅桁部s2と、隅桁部s2間に形成された中間桁部s3と、図示されていない、デッキs1の中央に形成された中央桁部とを有している。そして、図13に示されているように、一対のスキッドS’間に、熱板Uを配置し、次いで、隅桁部s2を構成するリブ部s2a(図13には、隅桁部s2を構成するリブs2aのみが示されているが、中間桁部s3及び中央桁部においても同様である。)の先端部s2a’を、熱板Uに接触させて溶融し、その後、一対のスキッドS’間から、熱板Uを排出させた後、一対のスキッドS’の溶融状態のリブ部s2aの先端部s2a’同士を当接することにより、一対のスキッドS’から、合成樹脂製パレットSが製造されることになる。なお、通常、溶着されるリブ部s2aの先端部s2a’の溶着代(熱板Uにより溶融されるリブ部s2aの先端部s2a’の長さ)は、略2mm程度である。
【0044】
ところで、上述したように、カウンタープレッシャー法により、リブ部s2aの表面層(スキン層)が、無発泡状態の無発泡表面層s4で、リブ部s2aの内部が、発泡状態の内部発泡部s5となるスキッドS’が成形されることになるが、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1が、零であったり、薄いと、一対のスキッドS’を溶着した際に、図15に示されているように、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着面において、内部発泡部s5同士が溶着されることになり、従って、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着部の強度が低下するという問題があった。
【0045】
そこで、本発明においては、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1を、スキッドS’同士を溶着した際に、図16に示されているように、溶着された一対のスキッドS’のリブ部s2aの先端面s2a”間に、無発泡表面層s4が残存するような距離としたものである。
【0046】
上述したような、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1は、スキッドS’のリブ部s2aの幅W1やエジェクターボックス密閉空間A1に注入される圧縮ガスの圧力の大きさやカウンタープレッシャー法の射出成形に使用される樹脂等により、適宜、調整できるものである。
【0047】
上述したように、無発泡表面層s4の先端部s4aの厚さ、換言すれば、リブ部s2aの先端面s2a”から、内部発泡部s5の先端s5aまでの距離D1を、スキッドS’同士を溶着した際に、溶着された一対のスキッドS’のリブ部s2aの先端面s2a”間に、無発泡表面層s4が残存するような距離とすることにより、スキッドS’同士のリブ部s2aの溶着部の強度が高くなり、ひいては、合成樹脂製パレットSの強度や剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図2】図2は、図1の要部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造を構成する密閉蓋等の斜視図である。
【図4】図4は、図2と同様の要部拡大図である。
【図5】図5は、図2と同様の要部拡大図である。
【図6】図6は、図2と同様の要部拡大図である。
【図7】図7は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図8】図8は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の垂直断面図である。
【図9】図9は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造を用いてスキッドが成形される状態を示す模擬的斜視図である。
【図10】図10は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の移動金型等の平面図である。
【図11】図11は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造の部分垂直断面図である。
【図12】図12は、本発明の合成樹脂製パレット用金型構造により成形されるスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの斜視図である。
【図13】図13は、一対のスキッドを用いて合成樹脂製パレットを製造する工程の部分垂直断面図である。
【図14】図14は、スキッドのリブ先端部の部分垂直断面図である。
【図15】図15は、一対のスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの溶着部の部分垂直断面図である。
【図16】図16は、同じく、一対のスキッドを用いて製造された合成樹脂製パレットの溶着部の部分垂直断面図である。
【符号の説明】
【0049】
A1・・・・・・・・・・・・・・・エジェクターボックス密閉空間
J・・・・・・・・・・・・・・・・溶融樹脂の合流領域
S・・・・・・・・・・・・・・・・合成樹脂製パレット
S’・・・・・・・・・・・・・・・スキッド
p1〜p3・・・・・・・・・・・・配管
1・・・・・・・・・・・・・・・・可動側取り付け板
2・・・・・・・・・・・・・・・・可動金型用受け板
3・・・・・・・・・・・・・・・・エジェクターボックス
5・・・・・・・・・・・・・・・・エジェクタープレート
7・・・・・・・・・・・・・・・・可動金型
7c・・・・・・・・・・・・・・・入れ子
8・・・・・・・・・・・・・・・・密閉蓋
10・・・・・・・・・・・・・・・固定側取り付け板
11・・・・・・・・・・・・・・・固定金型用受け板
12・・・・・・・・・・・・・・・固定金型
12b・・・・・・・・・・・・・・入れ子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エジェクターボックス密閉空間及び可動金型と固定金型とにより形成されたキャビティに、圧縮ガスが注入された状態で、キャビティに、溶融樹脂を射出することにより、無発泡表面層と内部発泡部とからなるスキッドを成形するための合成樹脂製パレット用金型構造であって、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたことを特徴とする合成樹脂製パレット用金型構造。
【請求項2】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製パレット用金型構造。
【請求項1】
エジェクターボックス密閉空間及び可動金型と固定金型とにより形成されたキャビティに、圧縮ガスが注入された状態で、キャビティに、溶融樹脂を射出することにより、無発泡表面層と内部発泡部とからなるスキッドを成形するための合成樹脂製パレット用金型構造であって、溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、他の部分の硬度より、大きくしたことを特徴とする合成樹脂製パレット用金型構造。
【請求項2】
溶融樹脂の合流領域に位置する可動金型及び固定金型の硬度(ロックウエル硬度)を、30以上としたことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製パレット用金型構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−83216(P2009−83216A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254097(P2007−254097)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
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