説明

合金ナノ粒子及びその製造方法、並びにその合金ナノ粒子を用いたインク及びペースト

【課題】スズ−銅−銀合金ナノ粒子及びその製造方法、並びに当該合金ナノ粒子を用いたインク及びペーストを提供する。
【解決手段】95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属と、を含む、合金ナノ粒子である。この合金ナノ粒子は、電気伝導性に優れた金属インクまたは焼成温度の低いハンダ材料などの分野に多様に応用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金ナノ粒子及びその製造方法、並びにその合金ナノ粒子を用いたインク及びペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子とはナノスケールのサイズを有する粒子であって、電子遷移に必要なエネルギーが物質のサイズに応じて変化する量子閉じ込め効果及び広い比表面積を有することから、バルク状態の物質とは異なる光学的、電気的、磁気的特性を有する。
【0003】
このような特性から、触媒分野、電気磁気分野、光学分野、及び医学分野などでの利用可能性に関心が高まっている。ナノ粒子はバルクと分子との間の中間体ともいえるため、二つのアプローチ方法、すなわち、「トップダウン」アプローチ法及び「ボトムアップ」アプローチ法を用いてナノ粒子を合成することができる。
【0004】
「トップダウン」アプローチ法はバルク物質を切って小さくする方法であって、ナノ粒子のサイズの制御が容易であるという長所はあるが、50nm以下のナノ粒子の形成が困難であるという問題点がある。したがって、近来、「ボトムアップ」アプローチ法、すなわち、原子や分子から組み立ててナノ粒子を形成する方法が脚光を浴びており、化学的な分子や原子の前駆物質を用いる場合には、主にコロイド液相の合成により行われる。
【0005】
一方、従来の電子機器に内蔵される電子回路基板において、基板と電子部品とを接合するためには、通常、スズ−鉛系のハンダ材料、特に、63重量%のスズ−37重量%の鉛などの低融点(m.p.183℃)を有する材料が用いられてきたが、近来、スズ−鉛系のハンダ材料に含まれている鉛の不適切な廃棄物処理により環境汚染を発生させる恐れがあるため、鉛を含んでいない、いわゆる無鉛ハンダ材料の開発が進められている。このような無鉛ハンダ材料として有望なものの一つが銀−銅−スズ系ハンダ材料である。銀−銅−スズ系ハンダ材料の組成はほとんどの場合、スズ含量が95重量%以下である。ハンダ材料においては融点が重要であって、スズの含量を増やすほど融点の側面からは有利であるが、合金粒子の製造の際、電気伝導性、安定性、及び均一性などの側面からは問題があるため、スズの含量を95重量%以下にして使用している。そこで、本発明は、合金ナノ粒子の融点を大きく低くすることができるように、スズの含量を増やすと共に電気伝導性や安定性などの問題点を解決できる方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来技術の問題点を解決するために、本発明は、電気伝導性に優れ、焼成温度の低い合金ナノ粒子及びその製造方法、並びにその合金ナノ粒子を用いたインク及びペーストなどの材料を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属と、を含む、合金ナノ粒子が提供される。
【0008】
一実施例によれば、上記合金ナノ粒子のサイズは5nm〜300nmであり、上記合金ナノ粒子の融点は150℃〜250℃であることができる。
【0009】
本発明の他の側面によれば、このような合金ナノ粒子を用いたインク及びペーストが提供される。
【0010】
本発明のまた他の側面によれば、スズ塩と界面活性剤を溶媒に溶解させるステップと、上記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップと、上記還元剤が添加された溶液に銅塩を添加してスズ−銅の合金ナノ粒子を形成するステップと、を含む合金ナノ粒子の製造方法が提供される。
【0011】
一実施例によれば、上記スズ−銅の合金ナノ粒子を形成するステップの後に、銀塩を添加してスズ−銅−銀の合金ナノ粒子を形成するステップをさらに含むことができる。
【0012】
一実施例によれば、溶媒として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオールなどのアルコール系溶媒を一つ以上用いることができる。
【0013】
また、スズ塩としては、Sn(NO、SnCl、SnBr、SnI、Sn(OH)、SnSO、Sn(CHCOO)、Sn(CHCOCHCOCHなどのスズ塩を一つ以上用いることができる。
【0014】
一実施例によれば、上記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップは100℃〜260℃で行われることが好ましい。
【0015】
一実施例によれば、銅塩を添加してスズ−銅の合金ナノ粒子を形成するステップは、上記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成した後に3分〜60分以内に行われることが好ましい。
【0016】
ここで、銅塩としては、Cu(NO、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OH)、CuSO、Cu(CHCOO)、Cu(CHCOCHCOCHなどの銅塩を一つ以上用いることができ、銅塩を直接添加してもよく、溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0017】
このように製造されるスズ−銅の合金ナノ粒子は、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銅とを含むことができる。
【0018】
一実施例によれば、上記スズ−銅の合金ナノ粒子を形成するステップの後に、銀塩をさらに添加してスズ−銅−銀の合金ナノ粒子を形成することによりスズ−銅−銀の合金ナノ粒子を製造することもできる。
【0019】
ここで、上記銀塩としては、AgNO、AgCl、AgBr、AgI、AgOH、AgSO、AgCHCOO、AgCHCOCHCOCHなどの銀塩を一つ以上用いることができ、銀塩を直接添加してもよく、溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0020】
一実施例によれば、銀塩をさらに添加してスズ−銅−銀の合金ナノ粒子を形成するステップは、上記スズ−銅の合金ナノ粒子を形成した後3分〜60分内に行われることが好ましい。
【0021】
このように製造されるスズ−銅−銀の合金ナノ粒子は、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属とを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、合金ナノ粒子及びその製造方法を用いて、低融点を有し、電気的特性に優れた合金ナノ粒子、及びこれを用いたインク及びペーストを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例による合金ナノ粒子の製造方法の順序図である。
【図2】本発明の他の実施例による合金ナノ粒子の製造方法の順序図である。
【図3】実施例1による合金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡の写真である。
【図4】実施例1による合金ナノ粒子の示差走査熱量計の分析結果である。
【図5】実施例2による合金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、製造例及び実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、以下の製造例及び実施例はただ本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0025】
本発明の一実施形態では、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属と、を含む合金ナノ粒子を提供する。
【0026】
合金ナノ粒子の場合は、金属それぞれの固有なメリットを利用すると共にデメリット補うことができるが、例えば、銅をナノ粒子として生成する場合、表面積の増加により表面が酸化しやすくなる。酸化により銅表面に酸化膜が形成され、形成された酸化膜は電気伝導性を低下させるという問題がある。また、銀をナノ粒子として生成する場合、酸化安定性及び導電性に優れるが、印刷回路パターンを形成した後に、高い湿度または高い温度で銀イオンが還元析出されることにより、断線を起こす問題がある。
【0027】
したがって、融点を低下できるスズに銅及び銀を合金することにより、それぞれの金属が有する短所を補完し、合金の安定性及び融点降下(ハンダ材料使用時の焼成温度降下)の効果も得ることができる。
【0028】
従来の銀−銅−スズ系合金は、総重量で95重量%以下のスズを含むように開発されてきた。しかし、均一でかつ数百nm以下のナノ粒子であって、95重量%を超えるスズを含む銀−銅−スズ系合金粒子は知られていなかった。
【0029】
ここで、本発明の一実施形態による合金ナノ粒子は、95重量%超過のスズを含み、少量の銅や銀が添加され、低温焼成が可能であり、高い電気電導度、電気信頼性、及び耐酸化性を有する金属インク及び印刷回路パターンの形成に活用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態による合金ナノ粒子において、スズの含量は95重量%を超えて99.9重量%以下の範囲である。純銀の融点は961℃であり、純スズの融点は232℃であり、純銅の融点は1085℃である。合金ナノ粒子の成分中、スズの含量が95重量%以下であれば、合金ナノ粒子の融点を250℃以下に下げることができなくなるので、この合金ナノ粒子は、低融点でなければならないハンダ材料としては不適切である。ハンダ材料として使用するためには、合金ナノ粒子の融点は150℃〜250℃範囲であることが好ましい。融点が250℃より高い場合には高分子基板が熱変形を起こすので適用が困難であり、150℃より低い場合には合金ナノ粒子内の有機物除去が困難である。
【0031】
一実施例によれば、合金ナノ粒子のサイズは1μm以下であり、好ましくは5nm〜300nm範囲である。同じ組成の合金であっても、粒子のサイズにより融点は20〜30℃程度の差が出ることがある。結晶のサイズが小くなると、全体原子に対する表面原子の比が大きく増加し、その結果、物質の熱力学的性質に大きい変化が起こる。粒子のサイズが減少すると、全体原子において、配位数を満たしていない表面原子の比が非常に大きくなる。したがって、粒子のエネルギ状態は不安定になり、高いエネルギを有する表面原子のエネルギから影響を受けることになる。通常、粒子において、固体相から液体相への転移が起こると、固体相ではその結合が強固であったが、液体相では表面原子の再構成により表面積を最小化し、高いエネルギの表面原子を減少させて表面エネルギを容易に低下させることができる。したがって、ナノ粒子の液体相は安定化され、これにより融点が低下することになる。
【0032】
本発明による合金ナノ粒子は、金属インクまたはペーストに用いられることができ、合金ナノ粒子を含むインクまたはペーストは当業者にとって公知の方法により製造されることができる。例えは、銀、銅、及びスズを含む合金ナノ粒子を溶媒に分散させ、分散剤及びその他の添加剤などを添加して製造されることができる。このようなインクまたはペーストは、硬化開始剤、硬化促進剤、着色剤などをさらに含むことができ、粘度調節のために添加剤をさらに含むこともできる。硬化開始剤または硬化促進剤は、水溶性のものでもよく、乳化剤により溶解されるものでもよい。
【0033】
本発明のまた他の実施形態による合金ナノ粒子の製造方法が提供される。
【0034】
図1に示すように、一実施例による合金ナノ粒子の製造方法は、スズ塩及び界面活性剤を溶媒に溶解させるステップS101と、上記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップS102と、上記還元剤が添加された溶液に銅塩を添加してスズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップS103と、を含む。
【0035】
また、図2に示すように、他の実施例によれば、上記スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップS103に対応するS203の後に、銀塩を添加してスズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成するステップS204をさらに含むことにより、スズ−銅−銀合金ナノ粒子を製造することもできる。
【0036】
上記合金ナノ粒子の製造方法によれば、金属塩の相対的な還元速度を考慮して金属塩を順次添加する。すなわち、合金ナノ粒子の製造の際、核の形成時期及び成長条件がそれぞれの金属塩毎に異なるから、還元性の低い金属塩から順次還元させて高い結晶性を有する粒子を生成することができる。上述した合金ナノ粒子の製造に使用される金属塩のうち、最も還元力の強い金属塩はスズ塩である。その次が銅塩であり、銀塩は銅塩より還元力が弱い。したがって、スズ塩、銅塩、銀塩の順に金属塩を添加することが好ましい。
【0037】
ステップS101、S201で、合金ナノ粒子を製造する場合、先ず、スズ塩及び界面活性剤を溶媒に溶解させる。ここで、界面活性剤は、粒子の表面張力を減少させるために添加する。通常、界面活性剤とは、一つの分子内に親水性基と共に親油性基を有する両親媒性物質である。界面活性剤はイオン化されたか否か及び活性剤の主体などにより、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性などで分類され、具体的には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリメチルビニルエーテル(PMVE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、またはこれらの誘導体などを使用することができ、これに限定されるものではない。これらは1種単独で使用してもよく、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
通常、溶媒は、金属塩の還元反応に使用されている溶媒であれば特に制限されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、または1,5−ペンタンジオールなどを使用することができる。これら溶媒は1種単独で使用してもよく、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
ここで、使用可能なスズ塩は、Sn(NO、SnCl、SnBr、SnI、Sn(OH)、SnSO、Sn(CHCOO)、またはSn(CHCOCHCOCHなどがあり、これに限定されるものではない。スズ塩は直接添加してもよく、溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0040】
このようにスズ塩及び界面活性剤を溶媒に溶解させた溶液を用意した後、ステップS102、S202では、上記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成する。ここで、還元剤は、金属また合金の溶液相の還元反応に通常使用されるものであって、当業者にとって知られているものであれば特に制限されない。具体的には、NaBH、NHNH、LiAlH、LiBEtHなどの強い還元剤及びエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのポリオールとアミン系化合物などがよい。
【0041】
上記還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップS102、S202は、100℃〜260℃で行われることがよい。100℃未満で反応が行われる場合には未反応の水が増加するという問題点があり、260℃を超えて反応が行われる場合には粒子が過成長するという問題点がある。より好ましくは、150℃〜250℃で行われることがよい。
【0042】
上記還元剤を添加してスズナノ粒子を形成した後に、ステップS103、S203では、銅塩を添加してスズ−銅合金ナノ粒子を形成する。ここで、使用可能な銅塩としては、Cu(NO、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OH)、CuSO、Cu(CHCOO)、またはCu(CHCOCHCOCHなどがあり、これに限定されるものではない。銅塩は直接添加してもよく、溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0043】
上記スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップS103、S203は、スズナノ粒子を形成した後、3分〜60分内に行われることが好ましい。60分を超えた後にそれぞれのステップが行われると、独立したそれぞれの金属が粒子化されて、均一な分布を有する合金を製造できなくなり、3分になる前にそれぞれのステップが行われると、前工程の金属塩が還元される前に他の金属塩が添加されることになり、順次還元させる意味がなくなる。
【0044】
スズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成する場合、図2に示すように、スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップSS203の後に、ステップS204では、銀塩を添加してスズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成することができる。
【0045】
ここで、使用される銀塩としては、AgNO、AgCl、AgBr、AgI、AgOH、AgSO、AgCHCOO、またはAgCHCOCHCOCHなどがあり、これに限定されるものではない。銀塩は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、銀塩を直接添加してもよく、溶媒に溶解させて添加してもよい。
【0046】
上記スズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成するステップS204は、スズ−銅合金ナノ粒子を形成した後、3分〜60分内に行われることが好ましい。60分を超えた後にそれぞれのステップが行われると、独立したそれぞれの金属が粒子化されて、均一な分布を有する合金を製造できなくなり、3分になる前にそれぞれのステップが行われると、前工程の金属塩が還元される前に他の金属塩が添加されることになり、順次還元させる意味がなくなる。
【0047】
このように形成された合金ナノ粒子を分離させ、洗浄過程などにより精製させることで純度を高めることができる。
【0048】
(実施例1.スズ:銅=99.3重量%:0.7重量%の合金ナノ粒子生成)
Sn(CHCOO)0.135gを24当量のPVP(ポリビニルピロリドン)と共に1,5−PD(1,5−ペンタンジオール)溶液に添加し、窒素雰囲気下で200℃に徐々に加熱しながら溶解させた。200℃で完全に溶解されて透明な溶液が得られると、少量の1,5−PDに超音波により分散させたNaBH溶液を加えた。NaBHを添加すると、溶液の色が黒褐色に変わり、これによって、スズ粒子が形成されたことが分かる。その後、10分間同じ温度で反応を維持させた後に、5mLの1,5−PDに、超音波により分散させたCu(CHCOCHCOCH溶液を入れた。10分間の追加反応により、99.3スズ−0.7銅(重量比)合金ナノ粒子が含まれた分散液を得た。上記分散液にエチルアルコールを加え、これを遠心分離(8000rpm、20分)して過量の残留界面活性剤及びその他有機物などを除去し、この工程を3回繰り返して合金ナノ粒子粉末を得た。
【0049】
図3は、実施例1による合金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)の写真であり、30nmレベルの99.3スズ−0.7銅(重量比)合金ナノ粒子が形成されていることが分かった。また、分散安定性も優れた。
【0050】
図4は、実施例1による合金ナノ粒子の示差走査熱量計(Differential Scanning calorimetry、DSC)の分析結果である。99.3スズ−0.7銅(重量比)合金ナノ粒子の融点である227℃に近い225℃でピークが現れ、これによって、99.3スズ−0.7銅(重量比)合金ナノ粒子が形成されていることが分かった。
【0051】
(実施例2.スズ:銅:銀=96.5重量%:0.5重量%:3.0重量%の合金ナノ粒子生成)
Sn(CHCOO)1.35gを24当量のPVPと共に1,5−PD溶液に添加し、窒素雰囲気下で200℃に徐々に加熱しながら溶解させた。200℃で完全に溶解されて透明な溶液が得られると、少量の1,5−PDに超音波により分散させたNaBH溶液を加えた。NaBHを添加すると、溶液の色が黒褐色に変わり、これによって、スズ粒子が形成されたことが分かる。その後、10分間同じ温度で反応を維持させた後に、少量の1,5−PDに、超音波により分散させたCu(CHCOCHCOCH溶液を入れた。再び10分間同じ温度で反応を維持させた後に、少量の1,5−PDに超音波により分散させたAg(NO)溶液を入れた。10分間の追加反応により、96.5スズ−0.5銅−3.0銀(重量比)合金ナノ粒子が含まれた分散液を得た。上記分散液にエチルアルコールを加え、これを遠心分離(8000rpm、20分)して過量の残留界面活性剤及びその他有機物などを除去し、この工程を3回繰り返して合金ナノ粒子粉末を得た。
【0052】
図5は、実施例2による合金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡の写真であり、50nmレベルの96.5スズ−0.5銅−3.0銀(重量比)合金ナノ粒子が形成されていることが分かった。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解できよう。
【0054】
上述した実施例の他、多様な実施例が本発明の特許請求範囲内に存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
95重量%超過99.9重量%以下のスズと、
0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属と、
を含む、合金ナノ粒子。
【請求項2】
前記合金ナノ粒子のサイズは5nm〜300nmである、請求項1に記載の合金ナノ粒子。
【請求項3】
前記合金ナノ粒子の融点は150℃〜250℃である、請求項1または2に記載の合金ナノ粒子。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の合金ナノ粒子を用いた、インク。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の合金ナノ粒子を用いた、ペースト。
【請求項6】
スズ塩と界面活性剤を溶媒に溶解させるステップと、
前記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップと、
前記還元剤が添加された溶液に銅塩を添加してスズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップと、
を含む、合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップの後に、銀塩を添加してスズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項6または7に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記スズ塩は、Sn(NO、SnCl、SnBr、SnI、Sn(OH)、SnSO、Sn(CHCOO)、及びSn(CHCOCHCOCHからなる群より選択される少なくとも一つの金属塩である、請求項6乃至8の何れか1項に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記銅塩は、Cu(NO、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OH)、CuSO、Cu(CHCOO)、及びCu(CHCOCHCOCHからなる群より選択される少なくとも一つの金属塩である、請求項6乃至9の何れか1項に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記銀塩は、AgNO、AgCl、AgBr、AgI、AgOH、AgSO、AgCHCOO、及びAgCHCOCHCOCHからなる群より選択される少なくとも一つの金属塩である、請求項7に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップは100℃〜260℃で行われる、請求項6乃至11の何れか1項に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップは、前記溶液に還元剤を添加してスズナノ粒子を形成するステップの後3分〜60分以内に行われる、請求項6乃至12の何れか1項に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記スズ−銅−銀合金ナノ粒子を形成するステップは、前記スズ−銅合金ナノ粒子を形成するステップの後に3分〜60分内に行われる、請求項7に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記製造方法による合金ナノ粒子は、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銅とを含む、請求項6乃至14の何れか1項に記載の合金ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記製造方法による合金ナノ粒子は、95重量%超過99.9重量%以下のスズと、0.1重量%以上5重量%未満の銀及び銅からなる群より選択される少なくとも一つの金属とを含む、請求項7に記載の合金ナノ粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−43350(P2010−43350A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120508(P2009−120508)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】