説明

吊り構造用のケーブル及び測定システム

【課題】斜張橋等の吊り構造物に用いられるケーブルの温度分布,張力,湿度等を,簡単な構造で精度良く測定する。
【解決手段】斜張橋等の吊り構造物において,橋桁3等を支持する吊り構造用のケーブル5と,光ファイバ25aが内蔵された光ファイバ内蔵線25を有する光ファイバセンサ40とを備えた。各ケーブル5の内部には,ケーブル本体21の長さ方向に沿って,光ファイバセンサ40の光ファイバ内蔵線25を設けた。これらの光ファイバセンサ40によって,温度,歪み又は湿度を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば橋梁,建物の屋根等の吊り構造物に用いられる吊り構造用のケーブル,及び,測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば河川,海峡,道路等に架設される橋梁として,斜張橋,吊り橋等,吊り構造用のケーブルを用いたものが知られている。このような吊り構造を有する橋梁の施工時や施工後の維持管理時等においては,ケーブルの形状,長さ,張力等を適切に管理する必要がある。従来,ケーブルの形状変化,長さ,張力等を測定する方法としては,ケーブルの長さ方向における複数箇所の表面温度を測定し,測定された表面温度より,ケーブルの内部の温度分布を推定し,ケーブルの形状変化,長さ,張力等を間接的に測定する方法が提案されている(特許文献1,2参照。)。張力測定法としては,ロードセル方式,歪みゲージ測定方式,振動法測定方式等,様々なものが提案されている(特許文献3,4参照)。また,橋梁の維持管理において,水分によるケーブルの腐食を防止するため,ケーブル内の湿度を管理する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−98609号公報
【特許文献2】特開平5−164630号公報
【特許文献3】特開2000−155059号公報
【特許文献4】特開2001−255222号公報
【特許文献5】特開平10−159019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,従来のケーブルの温度測定法にあっては,ケーブルの表面の温度しか測定できず,ケーブルの内部の温度を直接測定できないので,誤差が生じる懸念があった。また,ケーブルの全長に渡って連続的な温度分布を測定することが難しかった。なお,温度分布の測定精度を向上させるためには,温度センサの設置箇所,即ち測定箇所の数を増加させれば良く,また,ケーブルの全長に渡って温度を測定したい場合は,ケーブルの全長に渡って温度センサを取り付ければ良いとも考えられるが,この場合,非常に多くのセンサが必要であるため,センサの配線等が複雑になる問題があった。さらに,センサの耐候性が悪い問題があった。また,その他の張力測定法,湿度測定法においても,測定を高精度かつ効率的に行うことが難しかった。
【0005】
本発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,ケーブルの温度分布,張力,湿度等を,簡単な構造で精度良く測定できる吊り構造用のケーブル,及び,測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため,本発明によれば,構造部材を支持するケーブル本体を備えた吊り構造用のケーブルであって,前記ケーブル本体の長さ方向に沿って,光ファイバを設けたことを特徴とする,吊り構造用のケーブルが提供される。
【0007】
前記ケーブル本体は,複数の線材と前記光ファイバとを備えたものでも良い。また,前記複数の線材によってパラレルワイヤストランドが構成されていても良い。
【0008】
前記光ファイバは,前記ケーブル本体の内部に1又は2以上設けられていても良い。前記光ファイバは,前記ケーブル本体の少なくとも中央部に沿って設けても良い。この吊り構造用のケーブルは,橋梁に用いられるものでも良い。
【0009】
さらに,本発明によれば,上記のいずれかに記載の吊り構造用ケーブルに設けられる光ファイバと,前記光ファイバから出射する光を利用して所定の情報を検出する測定装置とを備えることを特徴とする,測定システムが提供される。
【0010】
前記所定の情報は,前記光ファイバの温度分布,歪み分布及び/又は湿度分布であっても良い。また,前記所定の情報に基づいて,前記ケーブル本体の形状及び/又は張力を算出する演算部を備えても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,少なくとも1本の光ファイバを用いるだけで,ケーブルの複数箇所の温度,張力,湿度等の情報を,精度良く効率的に測定できる。ケーブル内部の連続的な温度分布,歪み分布,湿度分布等を,ケーブル全長に渡って測定できる。構造が簡単であり,耐久性が良い。光ファイバセンサの付け替え等を行う必要が無いので,メンテナンスに要する労力や費用を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明にかかる実施形態を,吊り構造物の一例である橋梁としての斜張橋に用いられるケーブルに基づいて説明する。図1及び図2は,斜張橋の一例を示している。図1及び図2に例示した斜張橋1は,河川の両岸の間(河川の幅方向)において所定の間隔を空けて立設された一対のタワー2A,2B,河川の両岸の間に架け渡された構造部材としての橋桁3,吊り構造用のケーブルとしての複数本のケーブル5を備えている。さらに,各ケーブル5の温度,張力,長さを測定する測定システム6を備えている。
【0013】
各タワー2A,2Bは,それぞれ2本の支柱10,11を備えている。支柱10は河川の上流側(図2においては左側)に設けられ,支柱11は河川の下流側(図2においては右側)に設けられている。橋桁3は,各タワー2A,2Bの下部において,支柱10と支柱11との間に通されるようにして備えられている。ケーブル5は,各タワー2A,2Bの支柱10,11と橋桁3との間に,それぞれ複数本ずつ斜めに架け渡されている。
【0014】
例えばタワー2Aの支柱10において,ケーブル5は,支柱10の両側(河川の両岸側)にそれぞれ複数本,例えば同じ本数ずつ設けられている。橋桁3の上方において,支柱10の両側には,各ケーブル5の一端(上端,後述するソケット22)が,支柱10の高さ方向に並べて取り付けられている。また,上方に取り付けられたケーブル5ほど,支柱10に対してより大きく外側に向かって傾斜させられ,他端(下端,後述するソケット23)が支柱10からより離れた位置に配置されるようになっている。各ケーブル5の下端は,橋桁3の一縁部(河川の上流側の縁部)に対して一列に並べて取り付けられている。即ち,上端が上方に取り付けられているケーブル5ほど,支柱10から離れた部分において橋桁3を支持するように取り付けられている。こうして,支柱10には,複数本のケーブル5が支柱10の上部を中心として両側に向かう末広がり状に,また,支柱10を中心としてほぼ線対称に配置されている。図3に示すように,各ケーブル5は,後述するソケット22,23がそれぞれ支柱10の側縁部,橋桁3の一縁部に取り付けられ,支柱10の側縁部と橋桁3の一縁部との間に,後述するケーブル本体21が張られた状態で備えられている。
【0015】
同様にして,タワー2Aの支柱11にも,複数本のケーブル5が両側に取り付けられており,各ケーブル5の他端は,橋桁3の他縁部(河川の下流側の縁部)にそれぞれ取り付けられている。さらに,タワー2Bの支柱10,11にも,タワー2Aと同様にケーブル5がそれぞれ備えられ,各ケーブル5の他端が橋桁3の両縁部にそれぞれ取り付けられている。
【0016】
橋桁3は,これら複数本のケーブル5のケーブル本体21によって吊り下げられ,河川の上方に持ち上げられた状態で支持されている。各ケーブル5は,後述するケーブル本体21に対して橋桁3の荷重が加えられることにより,ケーブル本体21に張力が付与された状態でそれぞれ備えられている。
【0017】
次に,ケーブル5の構造の一例について詳細に説明する。図4に示すように,ケーブル5は,例えばケーブル本体21,ケーブル本体21の両端部にそれぞれ設けられたソケット22,23,及び,後述する光ファイバ温度センサ40の構成要素である複数本の光ファイバ内蔵線(光ファイバケーブル)25を備えている。
【0018】
ケーブル本体21としては,例えばパラレルワイヤストランド(PWS:Parallel Wire Strand)が用いられる。かかるケーブル本体21は,複数本の線材としての鋼線(ワイヤ)30と光ファイバ内蔵線25からなる集合体(ストランド)31,集合体31の外側を被覆する被覆層32,被覆層32のさらに外側を被覆する被覆層33を備えている。
【0019】
鋼線30は,例えば外径約7mm程度の略円形の横断面形状を有する細長い線材であり,例えば外周面を亜鉛(Zn)によって被覆した鋼材,即ち,亜鉛めっき鋼線である。かかる鋼線30は,被覆層32,33の内部において,ソケット22からソケット23まで,ケーブル本体21の長さ方向に沿って配設されている。さらに,被覆層32,33の内部には,例えば鋼線30とほぼ同程度の外径を有する1又は2以上の光ファイバ内蔵線25が,ソケット22からソケット23まで,ケーブル本体21の長さ方向に沿って備えられている。各光ファイバ内蔵線25は,光ファイバ(光伝送路)25aと,光ファイバ25aを保護する外管25bとを備えている。これら複数本の鋼線30及び光ファイバ内蔵線25は,互いに略平行に並べられ,隣接する鋼線30の外周面や光ファイバ内蔵線25の外周面が互いに密着させられた状態で束ねられている。
【0020】
なお,これら複数本の鋼線30及び光ファイバ内蔵線25は,僅かに撚り合わせられた状態になっており,例えばソケット22側からみて,ソケット23側に向かうに従い,ケーブル本体21の中央部を中心として左方向に向かうように捩られている。即ち,複数本の鋼線30の中に光ファイバ内蔵線25が混合された状態で撚り合わせられ,束ねられることにより,一本の索状の集合体31が形成されている。従って,鋼線30と光ファイバ内蔵線25(ケーブル本体21の中央部に備えられたものを除く)は,ケーブル本体21の中央部を中心として僅かに螺旋状に巻回された状態で,ケーブル本体21の長さ方向に沿って備えられている。そのため,ケーブル本体21の中央部に備えられた光ファイバ内蔵線25(光ファイバ25a)は,ケーブル本体21の中央部において長さ方向に沿って備えられており,また,ケーブル本体21の中央部の周囲に配置された光ファイバ内蔵線25(光ファイバ25a)は,ケーブル本体21の中央部を中心として僅かに螺旋状に巻回された状態で,ケーブル本体21の長さ方向に沿って備えられている。
【0021】
図5に示すように,光ファイバ内蔵線25は,被覆層32,33の内部において,例えばケーブル本体21の少なくとも中央部に沿って設けられており,さらに,ケーブル本体21の中央部の周囲にも,複数本配設されている。例えば,ケーブル本体21の横断面において,ケーブル本体21の中央部を中心とした同心円上に並べて設けられている。図示の例では,最も外側に配置された鋼線30が位置する半径Rの同心円上に,該同心円の周方向においてほぼ等間隔を空けて配置されており,さらに,半径R/2の同心円上にも,該同心円の周方向においてほぼ等間隔を空けて配置されている。また,各光ファイバ内蔵線25の端部は,図4に示すように,ソケット23の端部から外側にそれぞれ導出されており,後述する測定装置42にそれぞれ接続できるようになっている。
【0022】
被覆層32は,集合体31の外側全体を覆うように設けられている。また,被覆層32は,例えばフィラメントテープ等のテープ32aによって構成されている。即ち,集合体31の長さ方向に沿って,集合体31の外周囲にテープ32aが巻き付けられることにより,鋼線30と光ファイバ内蔵線25が束ねられた状態で保持され,また,テープ32aからなる被覆層32が形成されるようになっている。
【0023】
被覆層33は,被覆層32の外側全体を覆うように設けられている。被覆層33の材質としては,耐候性が高いもの,例えばポリエチレン,フッ素樹脂などの合成樹脂が用いられる。
【0024】
次に,測定システム6の一例について詳細に説明する。図3に示すように,測定システム6は,前述した光ファイバ内蔵線25を有する複数の光ファイバセンサとしての光ファイバ温度センサ40,及び,各光ファイバ温度センサ40の制御等を行う制御コンピュータ41を備えている。
【0025】
光ファイバ温度センサ40は,各ケーブル5に対してそれぞれ複数(即ち,各ケーブル5に対して設けられた光ファイバ内蔵線25の本数と同じ数)備えられている。各光ファイバ温度センサ40は,一本の光ファイバ内蔵線25と,光ファイバ内蔵線25内の光ファイバ25aに光を入射させて反射光を検出することにより光ファイバ25aの全長に渡る温度分布を求める測定装置42とをそれぞれ備えている。図3に示すように,測定装置42は,例えば斜張橋1に備えられたケーブル5の下端側において,各光ファイバ内蔵線25の端部にそれぞれ取り付けられている。
【0026】
各光ファイバ温度センサ40の測定装置42は,制御コンピュータ41に対してそれぞれ電気的に接続されており,制御コンピュータ41から各測定装置42に対して,温度の測定に関する制御信号がそれぞれ送信されるように構成されている。また,各測定装置42において検出された温度分布に関する情報が,各測定装置42から制御コンピュータ41に対してそれぞれ送信されるようになっている。さらに,制御コンピュータ41は,受信した温度分布に関する情報に基づいて,各ケーブル本体21の形状,長さ,張力等を算出する演算部41aを備えている。
【0027】
次に,以上のように構成された斜張橋1におけるケーブル5の温度測定方法について説明する。先ず,温度の測定対象であるケーブル5に設けられたいずれかの光ファイバ温度センサ40の測定装置42に対して,制御コンピュータ41から制御信号を送信し,測定装置42から光ファイバ25aに光を入射させる。すると,光ファイバ25a内で光が散乱して光ファイバ25aの端部から出射し,測定装置42は,光ファイバ25aから出射した光に基づいて,光ファイバ25aの長さ方向における複数箇所の温度,即ち,光ファイバ25aの全長に渡る連続的な温度分布を検出する。こうして得られた温度分布に関する情報が,測定装置42から制御コンピュータ41に送信され,制御コンピュータ41において,その光ファイバ温度センサ40に備えられた光ファイバ25aの温度分布が検知される。
【0028】
以上のようにして,制御コンピュータ41から各ケーブル5に設けられている各光ファイバ温度センサ40に対してそれぞれ制御信号を送信することにより,各光ファイバ温度センサ40によって測定が行われ,測定された温度分布の情報が制御コンピュータ41よってそれぞれ検知される。これにより,制御コンピュータ41においては,各ケーブル5の中央部に設けられている光ファイバ25aの温度分布,半径R/2の同心円上に設けられている光ファイバ25aの温度分布,半径Rの同心円上に設けられている光ファイバ25aの温度分布が検知される。即ち,各ケーブル本体21内の中央部における温度分布,ケーブル本体21内の半径R/2の同心円上における温度分布,ケーブル本体21内の半径Rの同心円上における温度分布が検知される。こうして,各ケーブル本体21の内部の温度を,ケーブル本体21の長さ方向においても径方向(横断面)においても,複数の箇所で測定することができ,ケーブル本体21全体の温度分布を精度良く調査することができる。
【0029】
さらに,制御コンピュータ41の演算部41aにおいては,測定された各ケーブル本体21の温度分布に基づいて,各ケーブル本体21の形状,長さ等を算出できる。即ち,温度変化に伴って生じるケーブル本体21の変形を間接的に検知でき,さらに,ケーブル本体21の張力等も算出できる。これらの算出結果を参照し,各ケーブル本体21の形状,長さ,張力,応力分布等が設計範囲内にあるか否かを判定することにより,各ケーブル本体21の緊張作業等を行う必要があるか否かを判断することができる。
【0030】
かかる構成によれば,ケーブル5に少なくとも一本の光ファイバ25a,即ち光ファイバ温度センサ40を設けることにより,ケーブル5の長さ方向における温度分布を確実に測定することができる。従来の温度測定法よりも,ケーブル5の複数箇所の温度を,容易かつ効率的に,また,多数の箇所について精密に測定できる。即ち,ケーブル5の全長に渡って連続的な温度分布を測定できる。さらに,光ファイバ25aを2本以上設けることで,ケーブル5の温度分布をより精度良く測定できる。また,ケーブル5の内部に光ファイバ25aを設け,ケーブル5の内部の温度を直接的に測定することにより,ケーブル5の内部の温度を精度良く簡単に測定することができる。従って,温度分布に基づいてケーブル5の形状,長さ,張力,応力分布等の測定を精度良く行うことができ,ひいては,斜張橋1の維持管理を適切に行うことができる。
【0031】
また,光ファイバ温度センサ40は,従来の温度測定に用いられる機器と比較して,構造が簡単であり,光ファイバ内蔵線25の耐久性も良い。例えば熱電対等のような温度センサのように,付け替えを行う必要が無いので,メンテナンスに要する労力や費用も削減できる。特に,光ファイバ内蔵線25をケーブル5の内部に内蔵させ,ケーブル5に一体的に配設したことにより,光ファイバ内蔵線25の損傷や劣化を確実に防止できる。また,温度センサや配線等の機器がケーブル5の表面に露出せず,ケーブル5の表面の構造等を簡単にすることができ,ケーブル5の耐候性,意匠性の向上を図ることもできる。
【0032】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態の一例について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0033】
以上の実施形態では,ケーブル5の温度を測定する光ファイバ温度センサ40と測定システム6について説明したが,光ファイバセンサや測定システムによって測定する所定の情報とは,温度には限定されない。例えば,光ファイバセンサとしては,光ファイバ歪みセンサを備えても良い。即ち,光ファイバ歪みセンサを用いて光ファイバの歪み分布を検出し,この歪み分布からケーブル5の張力,応力分布,形状,長さ等を検出する測定システムを構成しても良い。この場合も,光ファイバの全長に渡って歪みを精密に検出でき,ケーブル5の張力,応力分布,形状,長さ等を,効率的に精度良く測定することができる。
【0034】
また,光ファイバセンサは,所定の情報として湿度を測定する光ファイバ湿度センサであっても良く,かかる光ファイバ湿度センサを用いてケーブル5内の湿度分布を測定する測定システムを構成しても良い。この場合,測定された湿度分布に基づいて,ケーブル5内の湿度の調節を適切に行うことができる。
【0035】
さらに,一本のケーブル5に対して,互いに異なる種類の情報を検出する複数種類の光ファイバセンサを備えても良い。例えば光ファイバ温度センサ40,光ファイバ歪みセンサ,光ファイバ湿度センサのいずれか2種以上を備えても良い。そうすれば,ケーブル5の温度,歪み,湿度のいずれか2つ以上の情報をそれぞれ測定することができ,ケーブル5の状態をさらに詳細に調べることができる。従って,ケーブル5の維持管理に有用である。さらに,光ファイバセンサは,異なる2種類以上の情報を検出可能な構成であっても良い。例えば光ファイバ温度歪みセンサ,即ち,温度と歪みの両方の情報を測定できる構成のものであっても良い。
【0036】
ケーブル本体21における光ファイバセンサの配置は,以上の実施形態に示したような,同心円上に並べるものには限定されず,少なくとも1本の光ファイバがケーブル5に設けられていれば良い。また,光ファイバ,光ファイバ内蔵線,光ファイバセンサ等の構成,測定法の原理等は,以上の説明において例示したものには限定されず,様々なものを適用することができる。
【0037】
ケーブルの構造は,以上の実施形態において説明したパラレルワイヤストランドには限定されない。例えば集合体31を構成する鋼線30,光ファイバ内蔵線25は,必ずしも撚り合わせられていなくても良い。また,例えばマルチストランド構造,即ち,実施の形態に示したようなケーブル本体21をさらに複数本集束させて,一本の索状にした構造にしても良い。
【0038】
斜張橋1の構造やケーブル5の配設の態様は,以上の実施形態に示したものには限定されず,本発明は,様々な構造の斜張橋において適用できる。さらに本発明は,その他の種類の橋梁,例えば吊り橋に用いられるケーブル(メインケーブル)に適用することもできる。また,橋梁は河川に架設されるものに限定されず,海峡,道路等に架設されるものであっても良い。
【0039】
さらに,本発明は,橋梁に用いられるケーブルには限定されず,ケーブル本体によって支持される構造部材も,橋桁には限定されない。例えば建築構造物において吊り屋根構造に用いられる吊り構造用のケーブルであっても良く,ケーブル本体によって支持される構造部材とは,屋根であっても良い。その場合,例えば屋根に積雪があったときに,雪によって屋根に加えられる荷重や,屋根に生じている応力分布,温度分布等を,ケーブルに備えた光ファイバセンサによって検出することもできる。即ち,光ファイバセンサの測定結果に基づいて,雪下ろし等の作業が必要であるか否かを判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は,例えば橋梁,吊り屋根等,建築構造物又は土木構造物等において用いられる吊り構造用のケーブルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】斜張橋の構成を示した概略側面図である。
【図2】斜張橋の概略正面図である。
【図3】ケーブル及び温度測定システムの構成を説明する説明図である。
【図4】ケーブルの構成を示した説明図である。
【図5】ケーブル本体の横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 斜張橋
5 ケーブル
6 測定システム
21 ケーブル本体
25 光ファイバ内蔵線
25a 光ファイバ
30 鋼線
31 集合体
40 光ファイバ温度センサ
41 制御部
42 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材を支持するケーブル本体を備えた吊り構造用のケーブルであって,
前記ケーブル本体の長さ方向に沿って,光ファイバを設けたことを特徴とする,吊り構造用のケーブル。
【請求項2】
前記ケーブル本体は,複数の線材と前記光ファイバとを備え,
前記複数の線材によってパラレルワイヤストランドが構成されていることを特徴とする,請求項1に記載の吊り構造用のケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバは,前記ケーブル本体の内部に1又は2以上設けられていることを特徴とする,請求項1又は2に記載の吊り構造用のケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバは,前記ケーブル本体の少なくとも中央部に沿って設けられていることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の吊り構造用のケーブル。
【請求項5】
橋梁に用いられることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の吊り構造用のケーブル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の吊り構造用ケーブルに設けられる光ファイバと,
前記光ファイバから出射する光を利用して所定の情報を検出する測定装置とを備えることを特徴とする,測定システム。
【請求項7】
前記所定の情報は,前記光ファイバの温度分布,歪み分布及び/又は湿度分布であることを特徴とする,請求項6に記載の測定システム。
【請求項8】
前記所定の情報に基づいて,前記ケーブル本体の形状及び/又は張力を算出する演算部を備えることを特徴とする,請求項6又は7に記載の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−297777(P2007−297777A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124294(P2006−124294)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】