説明

同位体標識した化学的に安定な試薬およびその合成方法

放射性同位元素標識試薬は、一般式(I)を有する化合物を含み、式中、aは、各々の態様において、独立に、包括的に11〜14の炭素質量数であり、bは、各々の態様において、独立に、包括的に1〜3の水素質量数であり、各態様のaは、各態様のbが1であるのと同時には12ではなく;Lは、離脱基 R1SO2-O-、R1-S-、12C1H3(12C1H2)n-S-R1C(O)O-、NC-、(R1)3P-、XMg- および Li-であり;nは、包括的に0〜3の整数であり;Xは、クロロ、ブロモまたはヨウ素であり;R1は、H、アリール、アリールを含有する置換基、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルキルを含有する置換基、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルケニルを含有する置換基、C2〜C20アルキニル、およびC2〜C20アルキニルを含有する置換基であるが、nが0である場合は、aは13であり、bは2であり、R1-S中のR1はアリールではないことを条件とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年5月30日に出願された米国仮特許出願第60/320,238号の優先権を主張し、該出願は、参考として本明細書に合体させる。
(技術分野)
本発明は、一般に、同位体標識を有する試薬に関し、詳細には、ハロゲン化アルキル類よりも高い安定性を有するトリチウム化試薬に関する。
(背景技術)
ハロゲン化アルキル類は、有機化学において用途の広いアルキル化剤である。ハロゲン化メチルは、アルキル化剤としてとりわけ汎用的である。ハロゲン化メチルの代表的なものはヨウ化メチルであり、このヨウ化メチルは、純粋状態では透明液体であり、時間経過ともに、種々のヨウ素含有種を形成する分解の結果として褐色となる。ヨウ化メチルは、多くの場合、保存容器に水銀または銅のような固形金属を添加することによって安定化させる。ヨウ化メチルのようなハロゲン化アルキルは化学線分解およびフリーラジカル分解を受けやすいので、ハロゲン化アルキルの保存は、多くの場合問題を生じる。にもかかわらず、時間経過したハロゲン化アルキルは、蒸留法により使用可能な形に容易に再生される。
同位体濃縮ハロゲン化アルキルの取扱いは、ハロゲン化アルキルの化学分解を促進するフリーラジカルを発生させる放射性同位元素放出により、全てがより困難となっている。使用し得るハロゲン化アルキルを分解性の同位体濃縮ハロゲン化アルキルから精製するための蒸留は、実施するための技術的挑戦事項と放射性同位元素の多大な無駄使いの双方をなしている。
放射性同位元素取扱いの複雑さ故に、同位体標識試薬は、合成して迅速に使用し得る小分子である性向を有する。[メチル-3H]ヨウ化メチルは、メチル標識放射性化学物の合成において使用する一般的なメチル化試薬である。残念なことに、トリチウム化ヨウ化メチルおよび他の同位体濃縮ハロゲン化アルキルの急速な分解は、これらの試薬を合成後迅速に使用しなければならないことを意味する。同位体標識ハロゲン化アルキルの急速使用という条件は、試薬の計画的なバッチ生産を必要とし、その後の数多くの試薬消費性反応の実施と続く。最終結果は、標識化反応を効率的に実施し得ず、代りに、ハロゲン化アルキル生産の計画に依存することとなる。さらに、過剰の同位体濃縮ハロゲン化アルキルが必然的に生成し、不足分を構成する第2バッチ生産を実施する可能性を妨げる。結果としての過剰の同位体濃縮ハロゲン化アルキル生産は、材料の浪費であり、廃棄物の廃棄容量を増大させる。即ち、相応するハロゲン化アルキルよりも長い貯蔵寿命を有し特定のアイソト−プ活性の損失のない同位体濃縮アルキル化剤が求められている。
【0002】
(発明の開示)
放射性同位元素標識試薬は、下記の一般式(I)を有する化合物を含む:
L-(aCbH2)naCbH3 (I)
(式中、aは、各々の態様において、独立に、包括的に11〜14の炭素質量数であり、bは、各々の態様において、独立に、包括的に1〜3の水素質量数であるが、各態様のaは、各態様のbが1であるのと同時には12ではなく;Lは、離脱基 R1SO2-O-、R1-S-、12C1H3(12C1H2)n-S-R1C(O)O-、NC-、(R1)3P-、XMg- および Li-であり;nは、包括的に0〜3の整数であり;Xは、クロロ、ブロモまたはヨウ素であり;R1は、H、アリール、アリールを含有する置換基、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルキルを含有する置換基、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルケニルを含有する置換基、C2〜C20アルキニル、およびC2〜C20アルキニルを含有する置換基であるが、nが0である場合は、aは13であり、bは2であり、R1-S中のR1はアリールではないことを条件とする)。
式(I)の化合物の製造方法は、同位体濃縮ハロゲン化メチル(LはaCbH3(aCbH2)nXを代表する離脱基である)を[L]y-Mz+pまたはMgと好ましくは非プロトン性溶媒中の無水条件下に反応させることを含む(上記式中、Mは、金属イオンまたはオニウムイオンであり;Z+は、Mのカチオン価であり;Y-は、Lのアニオン価であり;pは、前記カチオン価で除したアニオン価の絶対値である)。プロトン性溶媒および少量の水は、ある種の合成方式においては許容される。
ターゲット分子を同位体アルキル化する方法は、ターゲット分子を反応条件下に有効量の式(I)の化合物と混合することを含む。式(I)の化合物は、ターゲット分子を同位体標識するのに有用であり、相応するヨウ化メチル試薬と比較して延長された貯蔵安定性の利点を有する。
商業用パッケージは、式(I)の化合物をその同位体標識用試薬としての使用のための使用説明書と一緒に含む。式(I)の化合物の増強された化学安定性は、試薬合成から隔離した同位体標識化反応を実施する可能性を提供する。
【0003】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、相応するハロゲン化アルキルと比較して優れた貯蔵特性を有する同位体標識用試薬としての利用性を有する。本発明に従う標識用試薬は、炭素-11 [11C]、炭素-12 [12C]、炭素-13 [13C]、炭素-14 [14C]を導入するように作用する。メチル炭素が放射性同位元素であるかどうかにかかわらず、メチル基を構成する3個の水素原子は、メチル基の炭素または3個の水素の少なくとも1つが自然発生性の軽度の構成同位体であることを条件として、3個の水素-1 [1H3]、3個の水素-2 [2H3]または3個の水素-3 [3H3]である。好ましくは、より高級なアルキル中のメチレン(-aCbH2-)基は、熱メチル基の同位体同一性を共有する。本明細書において使用するとき、デュートリウムは水素-2と同義、トリチウムは3Hと同義であると認識されたい。本発明によれば、メチル基を構成する3個の水素原子は全て同位体的に同一であるけれども、同位体混合水素原子はメチル基を形成するように作用することを認識されたい。同位体標識試薬は、下記の一般式を有する化合物である:
L-(aCbH2)naCbH3 (I)
(式中、aは、各々の態様において、独立に、包括的に11〜14の炭素質量数であり、bは、各々の態様において、独立に、包括的に1〜3の水素質量数であり、aおよびbの少なくとも1つは、自然発生性の軽度の同位体構成成分である)。
炭素の“同位体”は、本明細書においては、炭素原子の大部分が炭素-12以外の炭素質量数を有するものと定義する。水素の濃縮同位体は、大部分の水素質量数として2または3の値を有する。好ましくは、炭素質量数は12であり、水素質量数は全て3である。
【0004】
離脱基Lは、ターゲット分子求核試薬との反応時に化学的に安定な離脱基を示すように選択する。離脱基Lは、R1SO2-O-、R1-S-、12C1H3(12C1H2)n-S-、R1C(O)O-、NC-、(R1)3P-、XMg- および Li-を代表する。R1は、水素、アリール、アリールを含有する置換基、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルキルを含有する置換基、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルケニルを含有する置換基、C2〜C20アルキニル、およびC2〜C20アルキニルを含有する置換基である。上記置換基は、存在する場合、化合物内の分子内反応に対して非反応性であることを認識されたい。本発明に従うアリール基は、6〜10員の環元素を有する1価の単環式または二環式芳香族炭化水素基であり、具体的には、ナフチル、ナフチルを含有する置換基、フェニル、およびフェニルを含有する置換基があるが、離脱基Lがメルカプトアリール R1-S-である場合には、aは13ではなく、bは2ではないことを条件とする。本発明において有効なC1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニルおよびC2〜C20アルキニル離脱基としては、線状、枝分れ、環状および二環式種がある。アリール、アルキル、アルケニルまたはアルキニルを修飾するのに本発明において有効な置換基は、炭素原子に結合した水素を置換し、各置換基は、アルキル、アミノ、シクロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、-OR2、アシル、および -COOR3からなる群から独立に選択する。アルキル置換基は、C1〜C6、好ましくはC1〜C4である。有効なアルキル置換基としては、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシルがある。本発明において有効なシクロアルキル置換基は、C5またはC6シクロペンチルまたはシクロヘキシル種である。本発明において有効なヘテロシクロアルキルは、フラニル、テトラヒドロフラニル、エポキシ、テトラヒドロピラニル、ジオキシニル、チアシクロペンチル、アゼリジル、ピロリジル、ピペラジル、モルホリル、およびこれらのアルキル置換形から選択する。本発明において有効なハロ置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびイオドから選択する。置換基アミノ基は、NH2、NHRR4またはNR4R5から選択する。R2は、水素、C1〜C6アルキル、C5またはC6シクロアルキル、上述したようなヘテロシクロアルキル、またはフェニルを含有する置換基から選択する。R3は、水素またはC1〜C6アルキルである。R4およびR5は、各態様において、独立に、C1〜C6アルキル、上述したようなアリール、C1〜C6アルコキシ、およびC6フェノキシから選択する。
【0005】
本発明に従う同位体標識試薬の特定の例としては、メチルスルホン酸、メチルトシレート、メチルメシレート、メチルノシレート、ジメチルチオエーテル、ターブチルメチルチオエーテル、安息香酸メチル、メチリドトリフェニルホスフェン、塩化メチルマグネシウム、およびメチルリチウムがある。さらに、離脱基Lの置換基は、本発明の試薬を同位体および分光標識性化合物とする、例えば、シアニン、ローダミンまたは他の共役芳香族官能性のような染料成分を必要に応じて取込みことも認識されたい。さらに、本発明に従って生成させた試薬化合物の各々は、同位体標識ハロゲン化メチル類と比較したとき優れた安定性と取扱い特性を有するものの、これら化合物が有効である反応に関しては制限を有することも認識されたい。例えば、ハロゲン化メチルマグネシウムおよびメチルリチウムは、水性環境においては同位体標識メタンを形成することのみに有効であるのに対し、無水環境においては、当該技術において周知の標識化反応を実施するのに適している。メチリドホスフェン類は、ウィッティッヒ反応を実施するのに有効であるが、一般的な本発明化合物においては、求核置換標識化反応を実施するのに有用である。
【0006】
式(I)の化合物の調製方法は、下記の反応によって要約される:
【化1】

上記式中、Lは、メタセシス反応によっては反応せず代りに付加性で結果としてのグルニャールメチル試薬を生成するマグネシウムを除いて、式Iの化合物に関して説明した離脱基である。そして、メチルリチウムの場合には、反応IIAは、[L]Y-がLi1-あることによって満たされる。Mは、金属イオンまたはオニウムイオンである。Mは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、セシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン、コバルトイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、チタニウムイオン、鉛イオン、クロムイオン、バナジウムイオン、ルテニウムイオン、イットリウムイオン、ランタノイドイオン、アクチノイドイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、水素イオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、またはトリエチルスルホニウムイオンである。好ましくは、金属イオンMは、安定な金属ハライドを生成するように選択し、該ハライドからの本発明の式Iの化合物の分離を容易にする。好ましい金属イオンとしては、銀および他の遷移金属類がある。式Iの化合物によるXは、クロライド、ブロマイドまたはイオジドである。一般式IIAに示しているように、MZ+カチオンの原子価は、好ましくは、包括的に1〜3である。MZ+の原子価が3よりも大きい場合、溶媒中のイオン性金属複合体の溶解は、結晶格子エネルギー増大の結果として生じる性向を有する。結果として、より好ましい実施態様においては、MZ+の原子価は1である。一般式IIAに示しているように、Lの原子価Y-は、同様に好ましくは、1〜3であり、1-の原子価が最も好ましい。Pは、カチオン価Z+で除したY-に対するアニオン価の絶対数であり、それによって正味電荷中性を提示する。
【0007】
反応式IIAおよびIIBにおいて使用するヨウ化メチルは、確立された方法によって調製する。12C3H3Iは、良好に確立された方法によって調製する。Dass, Desmond V.; Dempsey, Victor J.; Martin, R. Wayne; Odell, Allan L., Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals (1987), 24(5), 517-20;Liu, Yu-Ying; Chen, Journal of Labelled Compounds & Radiopharmaceuticals (1996), 38(1), 71-6;および、Schwob, R.; Wuersch, J., Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals (1978), 14(3), 355-60。11C1H3ヨウ化メチルは、良好に確立された二酸化炭素-11と水素化アルミニウムリチウムとの反応およびその後のヨウ化水素酸による加水分解によって調製する。メチル基中に存在する1、2または3個のジュウテリウム原子を有する13Cは、米国特許第6,713,044 B2号に詳述されているようにして調製する。粉末マグネシウムと本発明に従う式[L]Y-MC+pの試薬は、当該技術にとって通常であり、殆どの場合、商業的に入手可能である。式Iに従う化合物を調製するための式IIAおよびIIBの反応を実施する反応条件は、ハロゲン化アルキルに関連する特定の反応について当該技術において既知であり、一般に、無水条件下での非プロトン性溶媒中の反応に特徴を有する。反応条件に関するさらなる指針は、グリニャール試薬合成およびウィリアムソンエーテル合成に関連して見出される。式IIAおよびIIBの反応プロセスは、ハロゲン化アルキルの同位体特性を保持しながら、相応するハロゲン化アルキルよりも高い化学安定性を有する生成物を生じる。得られる本発明の試薬は、不揮発性であることおよび相応するハロゲン化アルキルよりも低い毒性を有することにさらに特徴を有する。
本発明に従う商業用パッケージは、好ましくは純粋形の式Iの化合物を、該化合物を同位体標識用試薬として使用するための使用説明書と一緒に含む。当業者であれば、強酸のエステルを示す式Iの化合物がSN2反応メカニズムによる求核試薬の標識用試薬として良好に適することを認識されたい。また、グリニャール試薬およびアルキルリチウム試薬も、カルボン酸並びに、例えば、アミドおよびエステル類のようなカルボン酸誘導体からのケトン類の製造において良好に適している。エステルの場合、グリニャール試薬の存在下において得られるケトンは、不安定であり、メチル化第三級アルコールを生じることを認識されたい。
【0008】
(実施例)
本発明は、以下の実施例に関連してより良好に理解されるであろう。これらの実施例は、本発明の例示として示すものであり、これらの実施例を読むならば、材料および方法の双方において多くの修正が当業者にとって明白であるので、精神および範囲のいずれにおいても本発明を限定するものと解釈すべきではない。以下の実施例は全て出発物質として12C3H3Iに関するが、本発明に従う他の同位体濃縮ハロゲン化アルキルも本発明において同等に有効であることを認識されたい。
実施例1
[メチル-12C3H]メチルパラ-トルエンスルホネート(III)の典型的な調製
【化2】

0.4ミリモル(35 Ci、無担体)の12C3H3Iを、銀トシレート(140 mg、0.5ミリモル)と5 mlの無水アセトニトリルを含むガラス反応バルブ中に密封する。反応を80℃に1夜加熱する。レービル体(labiles)を除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解する。収率は、30 Ci (85%)の[メチル-12C3H]メチルパラ-トルエンスルホネート(III)である。標識物質および真正寒冷標準は、薄層クロマトグラフィー(TLC) (Whatman LK6DF;ヘキサン-酢酸エチル、10:3;Rf = 0.5)上で共移行した。25℃の酢酸エチル中で600 mCi/mlで保存する。上記のようなTLCにより測定したときの放射化学純度は、20日後で変化していない。
【0009】
実施例2
[メチル-12C3H]メチルパラ-トルエンスルホネート(III)によるL-[N-メチル-12C3H]キヌクリジニルベンジレートメチルクロライド(IV)の合成
【化3】

600 mCi (0.0073ミリモル)の[メチル-12C3H]メチルパラ-トルエンスルホネート(III)と10 mg (0.03ミリモル)のR-(-)-3-キヌクリジニルベンジレートを、2 mlのメタノール中で、室温で1夜撹拌する。反応のTLC (シリカゲルGHLF;n-ブタノール-酢酸-水、4:1:1)は、生成物および未反応トシレートのみを示す。全体をHPLC (Zorbax SB-C8、メタノール-1%TEAA pH4、勾配)で精製して、クロライド源の添加後、L-[N-メチル-12C3H]キヌクリジニルベンジレートメチルクロライド(IV)を得る。比放射能は、質量分光分析により測定して、82.0 Ci/ミリモルであり、上記のようなHPLCにより測定した放射化学純度は99%である。
実施例3
[メチル-3H]メチルパラ-ニトロベンゼンスルホネート(V)の典型的な調製
【化4】

0.14ミリモル(12 Ci、無担体)の12C3H3Iを、銀ノシレート(62 mg、0.2ミリモル)と5 mlの無水アセトニトリルを含むガラス反応バルブ中に密封する。反応を80℃に1夜加熱する。レービル体を除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解する。収率は、6.16 Ci (51%)の[メチル-12C3H]メチルパラ-ニトロベンゼンスルホネート(V)である。標識物質および真正寒冷標準は、TLC (Whatman LK6DF;ヘキサン-酢酸エチル、10:3;Rf = 0.5)上で共移行した。25℃のヘキサン-酢酸エチル(8:2)中で28.4 mCi/mlで保存し、上記のようなTLCにより測定したときの放射化学純度は、4ヶ月後で変化していない。
【0010】
実施例4
[メチル-12C3H]メチルパラ-ニトロベンゼンスルホネート(V)による[メチルエステル-3H]カーフェンタニル(VI)の合成
【化5】

400 mCi (0.005ミリモル)の[メチル-3H]メチルパラ-ニトロベンゼンスルホネート(V)と1.5 mg (0.0036ミリモル)のカーフェンタニルナトリウム塩を、0.2 mlの無水DMF中で、室温で1夜撹拌する。反応のTLC (Whatman LK6DF;クロロホルム-メタノール-水酸化アンモニウム、100:2:1)は、生成物および未反応ノシレートのみを示す。ODSについてのHPLCによる分析は、91%の活量が寒冷標準と共溶出したことを示す。1部をHPLC (Zorbax SB-C8、アセトニトリル-1%トリフルオロ酢酸、勾配)で精製して[メチルエステル-12C3H]カーフェンタニル(VI)を得る。比放射能は、質量分光分析により測定して、80.0 Ci/ミリモルであり、上記のようなHPLCにより測定した放射化学純度は99%である。
実施例5
[メチル-3H]ラクロプライド(VII)の調製
【化6】

ラクロプライドを、反応をDMSO中で70℃に加熱することによって80.5 Ci/ミリモルで調製する。メチルノシレート(V)は容量により分配し得、溶媒を除去して反応容器中で直ぐに使用状態の試薬を残存させる。ラクロプライドプレカーサーのメチル化においては、反応の化学量論を注意深く調整してジメチル化を最小限にし得る。
実施例6
12C3H3Iとメチルノシレート(V)のメチル化比較
ヨウ化メチル対メチルノシレートのメチル化能力を拮抗試験において比較する。2-ナフチル酢酸のカリウム塩をジメチルホルムアミド中で1当量の寒冷ヨウ化メチルおよび1当量のトリチウム化メチルノシレート(V)と一緒に撹拌する。精製物質を86 Ci/ミリモルであると測定する。この試験においては、上記求核試薬は、トリチウム化メチルノシレートにより優先的にメチル化され、代りに、僅かに小画分が未標識ヨウ化メチルと反応する。
【化7】

【0011】
本明細書において引用した特許および刊行物は、本発明が関連する技術における熟練者のレベルを指標し得るものである。これらの特許および刊行物は、各個々の出願または刊行物を詳細且つ個々に本明細書に参考として合体させるのと同程度に、参考として本明細書に合体させる。
上記の説明は、本発明の特定の実施態様の例示であり、その実施への限定を意味するものではない。本発明の全ての等価物を包含する特許請求の範囲により、本発明の範囲を定義するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式を有する化合物を含む同位体標識試薬:
L-(aCbH2)naCbH3 (I)
(式中、aは、各々の態様において、独立に、包括的に11〜14の炭素質量数であり、bは、各々の態様において、独立に、包括的に1〜3の水素質量数であるが、どの態様のaおよびどの態様のbも同時に12および1ではなく;Lは、離脱基 R1SO2-O-、R1-S-、12C1H3(12C1H2)n-S-R1C(O)O-、NC-、(R1)3P-、XMg- および Li-であり;nは、包括的に0〜3の整数であり;Xは、クロロ、ブロモまたはヨウ素であり;R1は、H、アリール、アリールを含有する置換基、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルキルを含有する置換基、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルケニルを含有する置換基、C2〜C20アルキニル、およびC2〜C20アルキニルを含有する置換基であるが、nが0である場合は、aは13であり、bは2であり、R1-S中のR1はアリールではないことを条件とする)。
【請求項2】
全ての場合において、nが0であり、aが12であり、bが3である、請求項1記載の試薬。
【請求項3】
前記離脱基が、R1SO2-O-である、請求項1記載の試薬。
【請求項4】
R1が、アリールである、請求項3記載の試薬。
【請求項5】
R1が、アリールを含有する前記置換基である、請求項3記載の試薬。
【請求項6】
R1が、パラ-CH3C6H5である、請求項5記載の試薬。
【請求項7】
R1が、パラ-NO2-C6H5である、請求項5記載の試薬。
【請求項8】
前記置換基が、アルキル、アミノ、シクロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、-OR2、アシル、および -COOR3からなる群から選ばれる、請求項1記載の試薬。
【請求項9】
前記置換基が、染料成分をさらに含む、請求項8記載の試薬。
【請求項10】
前記染料成分が、シアニンおよびローダミンからなる群から選ばれる、請求項9記載の試薬。
【請求項11】
少なくとも1つの態様におけるbが1であり、同時に、少なくとも1つの態様におけるbが3である、請求項1記載の試薬。
【請求項12】
nが0である、請求項1記載の試薬。
【請求項13】
前記離脱基が、R1C(O)O-である、請求項1記載の試薬。
【請求項14】
R1が、フェニル、または前記置換基の1つを有するフェニルである、請求項13記載の試薬。
【請求項15】
R1が、C1〜C6アルキルである、請求項13記載の試薬。
【請求項16】
前記離脱基が、(C6H5)3P-である、請求項1記載の試薬。
【請求項17】
aCbH3(aCbH2)nXを[L]y-Mz+pまたはMgと反応させる工程を含み(上記式中、Lは、離脱基 R1SO2-O-、R1-S-、12C1H3(12C1H2)n-S-、R1C(O)O-、NC-、(R1)3P-、XMg- および Li-であり;Mは、金属イオンまたはオニウムイオンであり;Z+は、Mのカチオン価であり;Y-は、Lのアニオン価であり;pは、前記カチオン価で除したイオン価の絶対値である)、反応が非プロトン性溶媒中の無水条件下に生じることを特徴とする式(I)の化合物の調製方法。
【請求項18】
aCbH3(aCbH2)nXを[L]y-Mz+P試薬と反応させる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記反応工程が、前記非プロトン性溶媒の沸騰温度以下の温度に加熱することによって生じる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
aCbH3(aCbH2)nXを12C3H3Iと反応させる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
反応条件下に、ターゲット分子と有効量の請求項1、2、3、8、9、10、11、12または13のいずれか1項記載の式(I)の化合物と混合することを特徴とする、ターゲット分子の同位体アルキル化方法。
【請求項22】
前記ターゲット分子が、求核試薬である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ターゲット分子が、有機アニオンの金属塩である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記ターゲット分子が、第三級アミンである、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記式(I)の化合物がXMg-であり;nは、包括的に0〜3の整数であり;Xは、クロロ、ブロモまたはヨウ素であり;R1は、H、アリール、アリールを含有する置換基、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルキルを含有する置換基、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルケニルを含有する置換基、C2〜C20アルキニル、およびC2〜C20アルキニルを含有する置換基であるが、nが0である場合は、aは13であり、bは2であり、R1-S中のR1はアリールではないことを条件とし;前記ターゲット分子がカルボン酸、エステルまたはアミドである、請求項21記載の方法。
【請求項26】
ターゲット分子を同位体標識するための、請求項1、2、3、8、9、10、11、12または13のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項27】
請求項17記載の方法によって得られた請求項1記載の化合物。
【請求項28】
請求項1記載の式(I)の化合物を、その同位体標識アルキル化試薬としての使用のための使用説明書と一緒に含む、商業用パッケージ。
【請求項29】
実施例のいずれかにおいて実質的に記載しているような、請求項1記載の化合物。

【公表番号】特表2006−526645(P2006−526645A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515007(P2006−515007)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/016898
【国際公開番号】WO2004/108636
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504006010)パーキンエルマー ラス インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】