説明

同報無線システムとその接続管理方法

【課題】複数の屋外子局から連絡通話を同時に実施した際に、優先局のみが親局と連絡通話が実施可能となる。
【解決手段】第1及び第2の屋外子局装置3,4は、それぞれ収容する通信端末がオフフックした時点で自局の識別コードを付加した親局通話開始要求を中継局装置2を介して親局装置1に送信し、要求に対する親局通話開始応答を待機する。親局装置1は、親局通話開始要求を受けた時点で当該要求に付加されている識別コードを読み取り、読み取った識別コードを親局通話開始応答に付加し、中継局装置を介して第1及び第2の屋外子局装置3,4に送信する。第1及び第2の屋外子局装置3,4では、応答受信時にその親局通話開始応答に付加される識別コードから自局宛か否かを判断し、自局宛ならば通信接続処理を継続し、自局宛でなければ処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、親局から屋外子局に無線で情報を中継伝送する同報無線システムとその接続管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、防災無線等の同報無線システムは、親局及び屋外子局間を中継局によって無線で接続し、親局と屋外子局との間で、主に音声による情報を通報可能とするもので、市区町村の役所から地域住民への防災情報、行政情報の伝達を行うシステムに利用されている。また、本システムでは連絡通話の回線も提供している。
【0003】
ところで、従来のシステムでは、中継局にて複数の屋外子局を収容しているが、複数の屋外子局から連絡通話が同時に実施された場合には、無線回線で信号の衝突が発生し、どちらの屋外子局からの発呼要求も親局まで届くことがなかった。
【0004】
そこで、中継局にて子局向け装置を子側、リンク側と2分岐して別々に中継可能とするシステムが開発されている。ところが、このシステムの場合、子側、リンク側各々の中継局配下の屋外子局から同時に連絡通話が実施された場合、従来のように無線回線で信号が衝突しないものの、両側共に接続のシーケンスが進むことになるため、優先順位の低い側の回線が通話できないのに接続されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ARIB STD-T86 市町村デジタル同報通信システム標準規格
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、従来の無線同報システムにあっては、中継局にて子局向け装置を子側、リンク側と2分岐して別々に中継する場合に、子側、リンク側各々の屋外子局から同時に連絡通話が実施された場合、優先順位の低い側の回線が通話できないのに接続されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、自局宛のメッセージかどうかの判断処理を行うことを特徴とする。
【0008】
複数の屋外子局から連絡通話を実施した際に優先局のみが親局と連絡通話が実施可能となるサービスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のデジタル同報無線システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に関係する従来システムにおいて、系統別の各子局から同時に発呼があった場合の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図3】上記実施形態において、屋外子局装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】上記実施形態において、親局無線装置の処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【図5】上記実施形態のシステムにおいて、系統別の各子局から同時に発呼があった場合の全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は実施形態のデジタル同報無線システムの構成を示すブロック図である。このシステムは、図1に示すように、親局無線装置1、中継局装置2、第1及び第2の屋外子局装置3,4を備える。
【0012】
親局装置1は通信端末(電話機)CT0が収容される親局無線装置11に通信用のアンテナ12を接続して構成される。
【0013】
中継局装置2は、親局無線装置11との間で通信を行うためのアンテナ21及び親向け無線装置22と、第1の屋外子局装置3と通信を行うためのアンテナ23及び子向け子側無線装置24と、第2の屋外子局装置4との通信を行うためのアンテナ25及び子向けリンク側無線装置26とを備え、親局向け無線装置22は子局向け子側無線装置24及び子向けリンク側無線装置26を収容する。
【0014】
第1の屋外子局装置3は、通信端末CT1を収容し、子向け子側中継局装置24との間で通信を行うためのアンテナ31を備える。同様に、第2の屋外子局装置4は、通信端末CT2を収容し、子向けリンク側無線装置26との間で通信を行うためのアンテナ41を備える。
【0015】
上記構成において、以下に通信端末CT1,CT2が同時にオフフックされ発呼された場合の従来の処理の流れを図2に示すシーケンスに沿って説明する。
【0016】
図2において、通信端末CT1,CT2が同時にオフフックされて発呼した場合には、それらを収容した第1,第2の屋外子局装置3,4から同時に親局通話開始要求(10−a,10−b)が出され、それぞれ中継局装置2の子側無線装置24、リンク側無線装置26に送られる。ここで、中継局装置2では、初期設定において第1の屋外子局装置3からの要求を優先しているとする。この場合、第1の屋外子局装置3からの親局通話開始要求は、子向け子側無線装置24、親向け無線装置22を介して親局無線装置11に到達する。一方、第2の屋外子局装置4からの親局通話開始要求は、リンク側無線装置26を介して親向け無線装置22に到達するが、この時点で破棄される。
【0017】
上記親局通話開始要求を受けた親局無線装置11は、親局通話開始応答を中継局装置2の親向け無線装置22に返送し(11)、続いて無線チャネルを指示する(12)。ここで、親向け無線装置22では、親通話開始応答、無線チャネル指示を子側無線装置24及びリンク側無線装置25の双方に転送する。この結果、第1の屋外子局装置3だけでなく、第2の屋外子局装置4にも親局通話開始応答、無線チャネル指示が出される。
【0018】
ここで、第1及び第2の屋外子局装置3,4は、上記親通話開始応答を受けると、いずれも無線チャネル指示待ちとなり、無線チャネル指示を受けて無線チャネル指示応答(13−a,13−b)を送出する。第1の屋外子局装置3側の応答だけが親局無線装置11に到達し、第2の屋外子局装置4側の応答は親向け無線装置22で破棄される。
【0019】
続いて、親局無線装置11では、通信端末CT0の呼び出しによる番号通知(15)、オフフックによる親局通話応答(16)、音声(17)を順次受けてそれぞれ中継局装置2の親向け無線装置22に送る。親向け無線装置22では、番号通知(15)、親局通話応答(16)及び音声(17)を子側無線装置24及びリンク側無線装置25の双方に転送する。この結果、第1の屋外子局装置3だけでなく、第2の屋外子局装置4にも番号通知(15)、親局通話応答(16)及び音声(17)が出される。このとき、第2の屋外子局装置4では、番号通知を受けると親局通話応答待ち、次に音声待ちとなり、待機している情報を受け取る毎に次の情報発信に移行する。
【0020】
結局、これらの情報受けた屋外子局装置4では、あたかも通信端末CT2を通話状態のようにしてしまうため、優先されている第1の屋外子局装置3側へだけでなく、第2の屋外子局装置4側にも音声(17)が流れてしまい、擬似的に通話状態にしてしまう。但し、第2の屋外子局装置4は親向け無線装置22で破棄されるため、第2の屋外子局装置4では親局無線装置11からの音声は聞こえるが第2の屋外子局装置4からの音声は親局無線装置11へは届かず、実際には不通状態となる。
【0021】
以上のように従来の構成では、親局無線装置11が屋外子局装置3へ送信しているシーケンスを受信しているため、シーケンスが正常に進んでいると判断し、シーケンスが進み、通話状態となる。この状態では、親局無線装置11に接続されている通信端末CT0が通話している音声(17)と第1の屋外子局装置3に接続されている通信端末CT1が通話している音声(18−a)のうち、通信端末CT0からの音声(17)が第2の屋外子局装置4に接続されている通信端末CT2でも聞こえるが、通信端末CT2で話している音声(18−b)を親局側の通信端末CT0で聞きとることができないという問題が発生する。
【0022】
そこで、実施形態では、第1の屋外子局装置3において図3に示す処理を行い、親局無線装置11において図4に示す処理を行う。尚、第2の屋外子局装置4については、第1の装置3と同様であるので、その説明は省略する。
【0023】
図3において、通信端末CTのオフフックを検出判断(ステップS11)でオフフックが検出されると、自局の識別コードを付加した親局通話開始要求を送信し(ステップS12)、親局通話開始応答の受信待ちとなる(ステップS13)。親局通話開始応答が受信されると、自局宛の応答か判断し(ステップS14)、自局宛でなければ一連の処理を終了し、自局宛ならば無線チャネル指示待ちとなる(ステップS15)。続いて、無線チャネル指示が受信されると、無線チャネル指示応答及び番号通知を親局宛に返送して(ステップS16)、番号通知待ちとなる(ステップS17)。
【0024】
次に、番号通知があると、親局通話応答待ちとなる(ステップS18)。親局通話応答があると、音声待ちとなり(ステップS19)、音声の転送があると、音声を通知し(ステップS20)、一連の処理を終了する。
【0025】
一方、親局無線装置11では、図4に示す処理を実行する。まず、初期段階で親局通話開始要求の待ち状態となり(ステップS21)、親局通話開始要求があると、要求に付加されている子局識別コードを読み取り(ステップS22)、読み取った子局識別コードを親局通話開始応答に付加して中継局装置2に送信する(ステップS23)。
【0026】
続いて、無線チャネル指示を送信し(ステップS24)、無線チャネル指示応答待ちとなる(ステップS25)。次に、無線チャネル指示応答を受信すると、番号通知の転送待ちとなり(ステップS26)、番号通知があると、通信端末CT0の読み出しによる番号通知を送信し(ステップS27)、端末CT0のオフフックに応答して親局通話応答を送信する(ステップS28)。続いて、音声入力を中継局装置2に送信し、相手局から転送される音声を受信通信端末CT0に送信して(ステップS29)、一連の処理を終了する。
【0027】
上記のように、屋外子局装置3,4、親局無線装置11それぞれを機能アップすることにより、実施形態のシステムは、図5に示すような処理の流れとなる。
【0028】
まず、通信端末CT1,CT2が同時にオフフックされて発呼した場合に、それらを収容した第1,第2の屋外子局装置3,4では、それぞれ自局の識別コードを親局通話開始要求(10−a,10−b)に付加して中継局装置2の子側無線装置24、リンク側無線装置26に送出する。ここで、中継局装置2では、初期設定において第1の屋外子局装置3からの要求を優先しているとする。この場合、第1の屋外子局装置3からの親局通話開始要求は、子向け子側無線装置24、親向け無線装置22を介して親局無線装置11に到達する。一方、第2の屋外子局装置4からの親局通話開始要求は、リンク側無線装置26を介して親向け無線装置22に到達するが、この時点で破棄される。
【0029】
上記親局通話開始要求を受けた親局無線装置11は、その要求に付加されている子局識別コードを読み取り、このコードを宛先として親局通話開始応答に付加して中継局装置2の親向け無線装置22に返送した後(11)、続いて無線チャネルを指示する(12)。ここで、親向け無線装置22では、親通話開始応答を子向け子側無線装置24、子向けリンク側無線装置26それぞれに振り分ける。この結果、親通話開始応答が第1及び第2の屋外子局装置3,4に通知されることになる。
【0030】
ここで、各屋外子局装置3,4では、受信した親通話開始応答に付加されている識別コードを読み取り、自局宛であれば次の情報の待機状態となるが、自局宛でなければ一連の処理を終了するため、次の情報の待機状態とならない。この結果、各屋外子局装置3,4の双方で親通話開始応答を受信したとしても、次の無線チャネル指示を受け取るのは第1の屋外子局装置3のみであり、第2の屋外子局装置4は次の処理に移行しない。したがって、以後の親局無線装置11からの番号通知、親局通話応答、音声に応答するのは第1の屋外子局装置3のみとなり、第2の屋外子局装置4に収容される通信端末CT2が通話状態となったと誤認するようなことはなくなる。
【0031】
以上のように、上記実施形態によれば、子局3,4から同時に連絡通話が開始された場合に、親局通話開始応答を受信した子局は本信号に含まれている識別コードを確認し、これが自局宛かの判断し、一致した場合のみ次のシーケンスへ進む。一致しない場合は、他装置が連絡通話を実施していると判断して自局のシーケンスを終了する。このような処理を子局に追加することで、連絡通話の問題が解決できる。
【0032】
尚、上記実施形態はそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせでもよい。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…親局装置、11…親局無線装置、12…アンテナ、2…中継局装置、21…アンテナ、22…親向け無線装置、23…アンテナ、24…子向け子側無線装置、25…アンテナ、26…子向けリンク側無線装置、3…第1の屋外子局装置、31…アンテナ、4…第4の屋外子局装置、41…アンテナ、CT0〜CT2…通信端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置と第1及び第2の屋外子局装置との間を中継局装置で無線により中継する同報無線システムであって、
前記親局装置が、親局通信端末を収容し、前記中継局装置と無線により通信を行う親局無線装置を備え、
前記中継局装置が、前記親局無線装置との間で通信を行うための親向け無線装置と、前記親向け無線装置に収容され、前記第1の屋外子局装置との間で通信を行うための子向け子側無線装置と、前記親向け無線装置に収容され、前記第2の屋外子局装置との間で通信を行うための子向けリンク側無線装置とを備え、
前記第1及び第2の屋外子局装置がそれぞれ子局通信端末を収容し、子向け子側中継局装置との間で通信を行う装置であるとき、
前記第1及び第2の屋外子局装置は、それぞれ
前記収容する子局通信端末がオフフックした時点で自局の宛先情報を付加した親局通話開始要求を送信する要求送信手段と、
前記親局通話開始要求に対する親局通話開始応答を待機し、応答受信時にその親局通話開始応答に付加される宛先情報から自局宛か否かを判断し、自局宛ならば通信接続処理を継続し、自局宛でなければ処理を終了する継続判断手段とを備え、
前記親局無線装置は、
前記親局通話開始要求を受けた時点で当該要求に付加されている宛先情報を読み取り、読み取った宛先情報を前記親局通話開始応答に付加して前記中継局装置に送信する応答送信手段を備えることを特徴とする同報無線システム。
【請求項2】
前記宛先情報は、予め割り当てられた識別コードであることを特徴とする請求項1記載の同報無線システム。
【請求項3】
親局装置と第1及び第2の屋外子局装置との間を中継局装置で無線により中継する同報無線システムに適用され、
前記親局装置が、親局通信端末を収容し、前記中継局装置と無線により通信を行う親局無線装置を備え、
前記中継局装置が、前記親局無線装置との間で通信を行うための親向け無線装置と、前記親向け無線装置に収容され、前記第1の屋外子局装置との間で通信を行うための子向け子側無線装置と、前記親向け無線装置に収容され、前記第2の屋外子局装置との間で通信を行うための子向けリンク側無線装置とを備え、
前記第1及び第2の屋外子局装置がそれぞれ子局通信端末を収容し、子向け子側中継局装置との間で通信を行う装置であるとき、
前記第1及び第2の屋外子局装置側では、それぞれ
前記収容する子局通信端末がオフフックした時点で自局の宛先情報を付加した親局通話開始要求を送信し、
前記親局通話開始要求に対する親局通話開始応答を待機し、応答受信時にその親局通話開始応答に付加される宛先情報から自局宛か否かを判断し、自局宛ならば通信接続処理を継続し、自局宛でなければ処理を終了し、
前記親局無線装置側では、
前記親局通話開始要求を受けた時点で当該要求に付加されている宛先情報を読み取り、読み取った宛先情報を前記親局通話開始応答に付加して前記中継局装置に送信することを特徴とする同報無線システムの接続管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65197(P2012−65197A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208491(P2010−208491)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】