説明

同期モータ

【課題】
モータ駆動時に発生する輻射熱を遮断することで、回路基板や素子の温度上昇を防ぎ、また、従来方法より簡易な取り付けを可能とする電動機の搭載素子の保護機構を提供する。
【解決手段】
モータに搭載している回路基板の熱照射側を覆うように、端部を基板に固定するための挟持部を設けた一体成形保護カバーを搭載する。高温あるいは局所的な熱から保護する際には、保護カバーに凹部を設け、空気層とするか、断熱性の高い物質を前記凹部に設けることで、断熱性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを制御するために必要な素子及び素子を搭載している回路基板の熱保護に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動を制御する素子と、モータの駆動温度を検出する素子と、前記制御素子と温度検出素子を保護するケースと、前記制御素子と温度検出素子とケースを搭載した基板を備えたモータは従来から知られている。(特許文献1、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平10−229663
【特許文献2】特開2003−319615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記モータにおいて、基板上に搭載されたホールICなどの磁気位置検出素子や、サーマルプロテクターなどの駆動温度検出素子は、モータ本体の状況を検出しやすいように、モータ本体に近傍するように備えられている。
【0004】
そのため、前記素子は、モータの駆動により発生するモータ本体からの輻射熱を受けやすくなり、素子の誤動作あるいは破損の原因になるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、素子ごとに断熱性の材質のケースを設け、モータ本体の輻射熱から素子を保護している。
【0006】
従来、前記ケースは素子単体毎に設けられており、ケースの大きさは素子に合わせた小さなものである。また、ケースを基板上に固定するために、抜け止め孔を基板上に設け、かつ、抜け止め孔に嵌合させるための突起を設けたケースにしなければならない。
【0007】
前記回路基板の抜け止め孔を設計する作業は、工程作業を増やし、基板のパターン設計が複雑なものになる。また、ケースが素子の大きさに合わせた小型なものであるため、抜け止め孔と嵌合するケースの作成に時間がかかりコストアップになる。また、高い精度が要求されるようになる。
【0008】
前記ケースの場合、小型により壁の厚さが薄いため、急速にモータ本体及び周辺環境の温度が上がった際には、断熱性としては不十分である。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、回路素子の保護ホルダーの簡易な取り付け方法を提供し、かつ、より断熱性を持たせるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に関する発明は、略U字形の形状をしており積層されている固定子コア8と、この固定子コア8に装着された巻線コイル9と、この固定子コア8の内側に配された回転子12と、この回転子12を固定子コア8に回転自在に枢支する軸受と、モータを駆動するための制御を行う制御素子6を装着した回路基板3とからなる同期モータにおいて、回路基板3に装着された位置検出素子4と熱検知素子5の保持、及び、制御素子6と回路基板3の熱保護を行うための保護カバー2を一体成形し、回路基板3と固定子コア8との間に設けたことを特徴とする同期モータを提供するものである。
【0011】
請求項2に関する発明は、
発熱素子を搭載した部分の回路基板裏面と、前記保護カバー2とが接触あるいは近接する部分に凹部11を設けて、空気の層を作ったことを特徴とする請求項1記載の同期モータを提供するものである。
【0012】
請求項3に関する発明は、
前記発熱素子を搭載した部分の回路基板裏面と、前記保護カバー2とが接触あるいは近接する部分に凹部11を設けて、前記凹部11に断熱性の高い物質を設けたことを特徴とする請求項1記載の同期モータを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に関する発明のモータにおいて、図1のように一体成形された保護カバー2が複数の素子を覆うことによって、素子ごとにカバーを形成する必要がなくなる。
【0014】
また、従来技術のように基板の抜け止め孔にケースを嵌合するのでなく、基板の端から挟み込む形にすることで、基板への挿入が簡易になり、工程時間の短縮に繋がる。
【0015】
また、基板の形から挟み込みの位置を考えればよいだけであるため、基板上に抜け止め孔を設ける回路パターンを設計する必要がなくなり、基板設計のレイアウトの自由度が上がる。
【0016】
保護カバー2で基板を覆うことで、基板へのモータからの輻射熱を遮断することができるため、基板の温度上昇を抑えることができる。基板の温度上昇の抑制は、搭載してある素子の温度上昇も抑えることができる。
【0017】
請求項2に関する発明において、特に発熱性の高い素子の場合、保護カバー2上に凹部11をもうけることで、素子との間に空気層を設け、より断熱性の高いものとすることができる。
【0018】
請求項3に関する発明において、前記凹部11に断熱性の高い材質を設けることで、請求項2以上の断熱性を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図6に基づいて説明する。
【0020】
(1)モータ全体の構造
図1、図2に基づいて、本発明のカバーを搭載したモータ全体の構造について説明する。
【0021】
図1より、モータ1は複数枚の鋼板を積層した固定子コア8と、このコア8に嵌合したスプール7にて仕切られた間に、コイル9が巻装されている。スプール7の片先端には回路基板搭載用の突起が設けられ、一方、基板3に切欠き部14を設けて、この突起を切欠き部14に嵌合することで、モータに基板3を固定している。
【0022】
図2より、固定子コア8は略U字形状の抜板が積層されており、U字形抜板の両側のコア部には、巻線が巻き回されたスプール7が設けられている。U字上側には回転子12が、コア8の内側に設けられている。回転子12はN極とS極の2極の永久磁石にて構成されている。
【0023】
図1より、基板3には、モータの駆動状況を検出する位置検出素子4と、モータの駆動温度を検知する温度検知素子5と制御素子6を搭載している。位置検出素子4は回転子12に近傍して、温度検知素子5は巻線コイル9に近傍して設けられている。また、制御素子6は位置検出素子4とは反対の面に搭載している。
【0024】
保護カバー2は、基板3のモータ本体側に密着するように設けており、基板3及び制御素子6がモータ本体1からの輻射熱を直接受けるのを防ぎ、急激かつ局部的な温度上昇を抑えている。
【0025】
(2)保護カバーの構造
図1、図3、図4、図5に基づいて、本発明のケースの構造について説明する。
【0026】
図3により、保護カバー2の端部に基板3を挟んで固定する挟持部12が形成されており、基板3の端をこの挟持部13及び保護カバー2で挟みこんで固定している。図3ではコの字状の形状になっているが、基板3を挟み込んで固定できるようなものであれば、他の形状でも良い。
【0027】
図5のように、基板3の端に係合溝15を設け、カバー2の挟持部13には係合用の突起16を設け、係合溝15の段差と突起16が係合することで、モータ駆動時の振動に対する耐久性を更に上げることが出来る。
【0028】
図1より、位置検出素子4や温度検知素子5のようなモータ本体1に向かって突出した素子がある場合、保護カバー2に素子収納凹部10を個別に設ける。前記凹部10は素子が収納しやすいように大きめに作成しても良い。
【0029】
基板3に保護カバー2を装着する際、素子を素子収納用凹部10に収納しながら、基板3とカバー2の両方から圧力を掛けることで基板端にカバーの突起を係合させることができ、簡易な方法で済ませることが出来る。
【0030】
図4より、保護カバー2は、基板全体を覆うような形でも良いが、発熱性の高い素子や耐熱性の弱い素子を搭載している箇所を部分的に保護する形のものでよい。この形状時では、材料の使用量を減らすことができ、コストダウンになる。
【0031】
本発明の保護カバー2の材質は合成樹脂材料を用いているが、断熱性及び絶縁性のあるものであれば、ゴム系やセラミック系、その他の材質でも構わない。
【0032】
搭載している素子が発熱性の高い抵抗素子6などの場合、図6のように、素子の搭載位置に対応するようにカバー2に凹部11を設けることにより、カバー2と基板3の間に空気層を設けて、さらに断熱性をあげることができる。
【0033】
耐熱性のある発泡スチロール等を前記凹部11に設けることで、保護カバー、断熱材、空気の3層構造になり、さらに断熱性が向上する。
【0034】
カバー2に前記凹部11を設ける際、カバーの厚みを保つために、カバーのモータ本体側が突出する形状になる。
【0035】
カバー2に前記凹部11を設ける際、素子1つ1つに設けるのではなく、複数の素子をひとまとまりとして凹部を設けていく。
【0036】
(3)動作状態
前記構成のモータ1を駆動させると、モータ本体から輻射熱が発生する。保護カバー2を設けることにより、この輻射熱は、回路基板3に直接当たらず、この保護カバー2により熱が遮断される。
【0037】
局所的に高温の熱が発生した場合、その場所に断熱層17を設けていればカバー、断熱材、空気とで熱が遮断され、保護対象素子6は動作可能温度を保つことが出来る。
【0038】
(4)変更例
上記実施形態のモータとして、同期モータを例に取ってみたが、他種のモータでも回路素子の熱保護が必要な場面では、上記のような保護カバーを基板の形状に合わせて搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、モータに搭載している素子を輻射熱から保護する上で信頼性の高いものである。また、回路基板への取り付けが簡易なため、作業工程の簡便性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のモータの側面図である。
【図2】本発明のモータの正面図である。
【図3】本発明のモータの平面図である。
【図4】本発明カバーを搭載する基板のモータ本体側面図である。
【図5】本発明カバーの基板に係合溝を設けた時の側面図である。
【図6】本発明カバーの基板との接触面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 モータ本体
2 保護カバー
3 回路基板
4 位置検出素子
5 温度検知素子
6 制御素子
7 スプール
8 固定子コア
9 巻線コイル
10 素子収納凹部
11 凹部
12 回転子
13 挟持部
14 切欠き部
15 係合溝
16 係合用突起
17 空気層あるいは断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略U字形の形状をしており積層されている固定子コアと、
この固定子コアに装着された巻線コイルと、
前記固定子コアの内側に配された回転子と、
この回転子を固定子コアに回転自在に枢支する軸受と、
モータを駆動するための制御を行う制御素子を装着した回路基板とからなる同期モータにおいて、
回路基板に装着された位置検出素子と熱検知素子の保持、及び、制御素子と回路基板の熱保護を行うための保護カバーを一体成形し、回路基板と固定子コアとの間に設けたことを特徴とする同期モータ。
【請求項2】
発熱素子を搭載した部分の回路基板裏面と、前記保護カバーとが、接触あるいは近接する部分に凹部を設けて、空気の層を作ったことを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項3】
前記発熱素子を搭載した部分の基板裏面と、前記保護カバーとが、接触あるいは近接する部分に凹部を設けて、前記凹部に断熱性の高い物質を設けたことを特徴とする請求項1記載の同期モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−238555(P2006−238555A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47026(P2005−47026)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】