説明

吐出装置、パターン形成装置

【課題】吐出ヘッド52に収容されるペーストPの材料の凝集に起因した吐出孔5204の目詰まりを抑制しつつ、吐出孔5204から吐出されるペーストPの粘性を抑えて、吐出孔5204からのペーストPのスムーズな吐出を可能とする。
【解決手段】シリンジポンプ520内部に収容される塗布液Pを冷却する水冷管521と、水冷管521により冷却された塗布液Pを吐出孔5206から吐出される前に加熱する加熱素子522とを備える。したがって、吐出ヘッド52に収容される塗布液Pの材料の凝集に起因した吐出孔5206の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔5206から吐出される塗布液Pの粘性が抑えられて、吐出孔5206からの塗布液Pのスムーズな吐出が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペーストを吐出する吐出装置、および当該吐出装置が吐出するペーストにより基板にパターンを形成するパターン形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、銀ペーストをニードルから吐出するディスペンサーが記載されている。具体的には、このようなディスペンサーは、シリンジ内に収容する銀ペーストをシリンジ先端に設けられたニードルの吐出孔から吐出する構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−250980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなペーストは、室温等の比較的高温下に置かれている間に、その材料が凝集してしまうことがある。例えば、上述の銀ペーストは、銀粒子、樹脂および溶剤等を含む混合液で構成されたものが一般的であるが、室温下に置かれている間に、樹脂から分離した銀粒子が互いに凝集してしまうことがある。その結果、上述のような吐出装置(ディスペンサー)では、その内部に収容されている間に凝集を起こしたペーストの材料が吐出孔に詰まって、吐出孔が目詰まりを起こしてしまう場合があった。
【0005】
そこで、このような問題に対応するために、吐出装置内のペーストを低温に維持しておくことが考えられる。ただし、ペーストの粘性は、低温になるにつれて増大する傾向にある。そのため、吐出装置内のペーストを低温に維持した場合、ペースト材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりは解消できても、粘性の増大したペーストが吐出孔からスムーズに吐出されないといった別の問題が引き起こされるおそれがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出装置に収容されるペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりを抑制しつつ、吐出孔から吐出されるペーストの粘性を抑えて、吐出孔からのペーストのスムーズな吐出を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる吐出装置は、上記目的を達成するために、その内部に収容するペーストを吐出孔へ供給して、吐出孔からペーストを吐出する吐出手段と、吐出手段に設けられて、吐出手段が収容するペーストを冷却する冷却手段と、冷却手段と吐出孔の間で吐出手段に設けられて、冷却手段により冷却されたペーストを吐出孔から吐出される前に加熱する加熱手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(吐出装置)は、吐出孔からペーストを吐出する吐出手段を備えるとともに、この吐出手段に収容されるペーストを冷却する冷却手段をさらに備えている。したがって、吐出手段内部に収容されるペーストを冷却することで、ペーストの材料の凝集を抑えて、その結果、吐出孔の目詰まりを抑制することができる。しかも、この発明は、この冷却されたペーストを吐出孔からの吐出の前に加熱する構成を備える。具体的には、加熱手段が、冷却手段と吐出孔の間で吐出手段に設けられており、冷却手段により冷却されたペーストを吐出孔から吐出される前に加熱する。したがって、吐出孔からは、加熱によって粘性の低下したペーストが吐出されることとなり、吐出孔からペーストをスムーズに吐出することができる。こうして、この発明では、吐出装置に収容されるペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔から吐出されるペーストの粘性が抑えられて、吐出孔からのペーストのスムーズな吐出が可能となっている。
【0009】
ところで、このような発明では、冷却手段により冷却されていたペーストを、吐出孔から吐出される前に効率的に加熱して、吐出孔から吐出されるペーストの粘性を速やかに低下させることが好ましい。そこで、吐出手段は、吐出孔に向けてペーストが供給される方向に先細りに形成されたテーパー部を有しており、加熱手段は、テーパー部に設けられているように、吐出装置を構成しても良い。つまり、吐出手段に形成されたテーパー部で加熱することで、吐出手段に奪われる熱量を抑えて、吐出前のペーストに効率的に熱を加えることができる。その結果、吐出孔から吐出されるペーストの粘性を速やかに低下させて、吐出孔からペーストをスムーズに吐出することができる。
【0010】
一方、吐出手段に収容されているペーストについては、十分に冷却しておいて、ペーストの材料の凝集をより効果的に抑制することが好ましい。そこで、冷却手段は、吐出手段の外周面に1周以上に渡って設けられているように、吐出装置を構成しても良い。これによって、吐出手段に収容されているペーストを十分に冷却して、ペーストの材料の凝集をより効果的に抑えることができる。その結果、ペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりをより確実に抑制することが可能となる。
【0011】
なお、ペーストの種類としては、種々のものを採用可能である。そこで、ペーストは、銀ペーストであっても良い。このとき、冷却手段は、吐出手段に収容されたペーストを室温よりも低い温度に冷却するように、吐出装置を構成しても良い。これによって、ペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりをより確実に抑制することが可能となる。また、加熱手段は、冷却部により冷却されたペーストを吐出孔から吐出される前に、室温以上の温度に加熱するように吐出装置を構成しても良い。これによって、吐出孔から吐出されるペーストの粘性を十分に低下させて、吐出孔からのペーストのよりスムーズな吐出が可能となる。
【0012】
また、この発明にかかるパターン形成装置は、上記目的を達成するために、基板を支持する支持手段と、上述の吐出装置とを備え、吐出装置を支持手段に対して相対的に移動させながら、吐出装置から基板にペーストを吐出して、基板にパターンを形成することを特徴としている。
【0013】
このように構成された発明(パターン形成装置)は、上述の吐出装置を備えている。したがって、吐出装置に収容されるペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔から吐出されるペーストの粘性が抑えられて、吐出孔からのペーストのスムーズな吐出が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
吐出装置に収容されるペーストの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔から吐出されるペーストの粘性が抑えられて、吐出孔からのペーストのスムーズな吐出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明を適用可能な吐出ヘッドを備えたパターン形成装置の一例を示す正面図である。
【図2】第1実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す正面図である。
【図3】第1実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図4】第2実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
図1は、この発明を適用可能な吐出ヘッドを備えたパターン形成装置の一例を示す正面図である。図1および以下の図では、鉛直方向にZ軸をとったXYZ直交座標を適宜示す。このパターン形成装置1は、例えば表面に光電変換層を形成された単結晶シリコンウエハなどの基板W上に導電性を有する電極配線パターンを形成し、例えば太陽電池として利用される光電変換デバイスを製造するのに使用可能な装置である。
【0017】
このパターン形成装置1では、基台101上にステージ移動機構2が設けられ、基板Wを保持するステージ3がステージ移動機構2により図1に示すX−Y平面内で移動可能となっている。基台101にはステージ3を跨ぐようにしてフレーム102が固定され、フレーム102にはヘッド部5が取り付けられる。ヘッド部5のベース51には、その内部に貯留する液状の塗布液を基板W上に吐出する吐出ヘッド52と、基板Wに向けてそれぞれUV光(紫外線)を照射する第1照射部55および第2照射部56とが取り付けられている。
【0018】
ステージ移動機構2は、下段からステージ3をX方向に移動させるX方向移動機構21およびY方向に移動させるY方向移動機構22を有する。X方向移動機構21は、モータ211にボールねじ212が接続され、さらに、Y方向移動機構22に固定されたナット213がボールねじ212に取り付けられた構造となっている。ボールねじ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0019】
Y方向移動機構22もモータ221、図示しないボールねじ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールねじ機構によりθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。以上の構成により、ヘッド部5の基板Wに対する相対的な移動方向および向きが変更可能とされる。ステージ移動機構2の各モータは、装置各部の動作を制御する制御部6により制御される。上記のように構成されたステージ移動機構2により、この実施形態では、ステージ3に載置された基板Wをヘッド部5に対して矢印Ds方向に相対移動させる。
【0020】
そして、ヘッド部5に取り付けられた吐出ヘッド52が、その下方を矢印Ds方向(X軸方向)に通過する基板Wに対して塗布液を吐出して、基板Wの表面にパターンを形成する。この吐出ヘッド52は、ノズルから塗布液を吐出して、ノズルスキャン方式で基板Wにパターンを形成するものである。続いて、この吐出ヘッド52の詳細構成について説明する。
【0021】
図2は、第1実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す正面図である。また、図3は、第1実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。吐出ヘッド52は、シリンジポンプ520と、このシリンジポンプ520に取り付けられた水冷管521および加熱素子522とを備える。シリンジポンプ520は、塗布液Pを収容するシリンジ5201とシリンジ5201から塗布液Pを押し出すプランジャ5202とで構成されている。
【0022】
シリンジ5201は、ステンレス鋼あるいはアルミニウム等で構成された金属製のものであり、押出方向Dpに延びる円筒形状の円筒部5201aと、円筒部5201aの下端から押出方向Dpに向けて先細りに形成されたテーパー部5201bとを有する。そして、テーパー部5201bの下端にノズル5203が取り付けられている。シリンジ5201の内部には、塗布液Pを収容する収容空間5201cが形成されている。この収容空間5201cはノズル5203と連通しており、収容空間5201cに収容された塗布液Pがノズル5203の下端の吐出孔5204へと供給される。
【0023】
一方、プランジャ5202は、鉛直方向(Z方向)の下方を向く押出方向Dpに可動に構成されており、その押出方向Dpの端面5202aでシリンジ5201内の収容空間5201cに貯留された塗布液Pに当接する。したがって、プランジャ5202が押出方向Dpに移動することで、シリンジ5201内部の収容空間5201cに貯留された塗布液Pが押出方向Dpに押し出されて、シリンジ5201の下端に設けられたノズル5203の吐出孔5204から吐出される。なお、プランジャ5202の押出方向Dpへの移動は、制御部6により制御される。
【0024】
ちなみに、塗布液Pとしては、導電性粒子、有機ビヒクル(溶剤、樹脂、増粘剤等の混合物)および光重合開始剤を含むペースト状の混合液を用いることができる。この実施形態では、導電性粒子は電極配線パターンの材料である銀の粉末であり、有機ビヒクルは樹脂材料としてのエチルセルロースと有機溶剤を含むものである。つまり、塗布液Pは銀ペーストである。また、塗布液Pの粘度は、光照射による硬化処理を実行する前において例えば50Pa・s(パスカル秒)以下で、硬化処理を実行した後は350Pa・s以上になることが好ましい。
【0025】
そして、上述したとおり、このような構成を具備する吐出ヘッド52が、その下方を通過する基板Wに対して塗布液Pを吐出して、基板Wの表面にパターンを形成する。なお、吐出ヘッド52のシリンジ5201は、吐出ヘッド52から取り外して交換可能に構成されている。したがって、基板Wへのパターン形成を繰り返して、シリンジ5201の収容空間5201c内の塗布液Pが使い切られた際には、収容空間5201c内に塗布液Pが充填された新たなシリンジ5201が吐出ヘッド52にセットされて、基板Wへのパターン形成が継続される。
【0026】
また、このようなシリンジ5201の交換頻度を抑えて、基板Wへのパターン形成を効率的に行うために、大容量の収容空間5201cを具備するシリンジ5201が用いられている。具体的には、この大容量のシリンジ5201は、所定枚数(例えば、1000枚)以上の基板Wへのパターン形成に用いられる量(例えば、100cc)の収容空間5201cを具備するものである。
【0027】
ただし、銀ペーストである塗布液Pは、室温に長時間置かれると、銀粉末の凝集を引き起こして、吐出ヘッド52の吐出孔5204の目詰まりの原因となる。したがって、大容量のシリンジ5201内の塗布液Pを使い切るためには、シリンジ5201をセットしてから塗布液Pを使い切るまでの間に渡って、銀粉末の凝集をパターン形成装置1内で抑えておくことが好適である。ちなみに、この明細書において「室温」とは、基板Wへのパターン形成が実行されるクリーンルーム内の管理された温度であり、クリーンルーム内の温度が22℃に管理されている場合は、22℃が室温となる。
【0028】
そこで、この実施形態の吐出ヘッド52は、ステンレス鋼あるいはアルミニウム等で構成された金属製の水冷管521を備えている。具体的には、この水冷管521は、シリンジ5201の円筒部5201aの外周面に1周以上(図2、図3の例では15周)に渡って螺旋状に巻き付けられている。そして、5℃〜15℃に冷却された冷却水が、水冷管521の内部を流れている。したがって、シリンジ5201内に収納された塗布液Pの熱は、シリンジ5201を介して水冷管521へと奪われる。その結果、シリンジ5201内の塗布液Pは、室温未満(5℃〜15℃)に冷却される。また、シリンジ5201の冷却に伴って、シリンジ5201の内壁面(収容空間5201cの壁面)が結露しないように、収容空間5201cは脱気されている。
【0029】
ところで、銀ペーストである塗布液Pは、温度低下に伴って粘性が増大するといった性質を有する。そのため、室温未満に冷却されることで粘性の増大した塗布液Pは、吐出孔5204からスムーズに吐出されないおそれがある。そこで、この実施形態の吐出ヘッド52は、(押出方向Dpにおける)水冷管521と吐出孔5204の間に加熱素子522を備えている。具体的には、この加熱素子522は、ペルチェ素子で構成されており、シリンジ5201のテーパー部5201bの外周面に1周に渡って設けられており、室温あるいはそれより高い温度に維持されている。したがって、シリンジ5201のテーパー部5201bの内部にある塗布液Pは、テーパー部5201bを介して加熱素子522により加熱される。こうして、水冷管521により冷却された塗布液Pは、加熱素子522によって吐出孔5204から吐出される前に加熱される。
【0030】
以上に説明したように、この実施形態の吐出ヘッド52は、シリンジポンプ520の内部に収容するペースト状の塗布液Pを冷却する水冷管521を備えている。したがって、シリンジポンプ520内部に収容される塗布液Pを冷却することで、塗布液の材料(銀粉末)の凝集を抑えて、その結果、吐出孔5204の目詰まりを抑制することができる。しかも、この実施形態の吐出ヘッド52は、この冷却された塗布液Pを吐出孔5204からの吐出の前に加熱する構成を備える。具体的には、加熱素子522が、水冷管521と吐出孔5204の間で水冷管521から離間してシリンジポンプ520に設けられており、水冷管521により冷却された塗布液Pを吐出孔5204から吐出される前に加熱する。したがって、吐出孔5204からは、加熱によって粘性の低下した塗布液Pが吐出されることとなり、吐出孔5204から塗布液Pをスムーズに吐出することができる。こうして、この実施形態では、吐出ヘッド52に収容される塗布液Pの材料の凝集に起因した吐出孔5204の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔5204から吐出される塗布液Pの粘性が抑えられて、吐出孔5204からの塗布液Pのスムーズな吐出が可能となっている。
【0031】
ところで、このような吐出ヘッド52では、水冷管521により冷却されていた塗布液Pを、吐出孔5204から吐出される前に効率的に加熱して、吐出孔5204から吐出される塗布液Pの粘性を速やかに低下させることが好ましい。これに対して、この実施形態のシリンジポンプ520には、吐出孔5204に向けて塗布液Pが供給される方向(押出方向Dp)に先細りに形成されたテーパー部5201bが設けられており、このテーパー部5201bに水冷管521から離間して加熱素子522が設けられている。つまり、シリンジポンプ520に形成されたテーパー部5201bで加熱することで、シリンジポンプ520に奪われる熱量を抑えて、吐出前の塗布液Pに効率的に熱を加えることができる。その結果、吐出孔5204から吐出される塗布液Pの粘性を速やかに低下させて、吐出孔5204から塗布液Pをスムーズに吐出することができる。
【0032】
一方、シリンジポンプ520に収容されている塗布液Pについては、十分に冷却しておいて、塗布液Pの材料の凝集をより効果的に抑制することが好ましい。これに対して、この実施形態では、シリンジポンプ520の外周面に1周以上に渡って、水冷管521が設けられている。これによって、シリンジポンプ520に収容されている塗布液Pを十分に冷却して、塗布液Pの材料の凝集をより効果的に抑えることができる。その結果、塗布液Pの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりをより確実に抑制することが可能となっている。
【0033】
なお、塗布液Pの種類としては、種々のものを採用可能である。そこで、塗布液Pは、上述のような銀ペーストであっても良い。このとき、上述のように、シリンジポンプ520に収容された塗布液Pを室温よりも低い温度に冷却すると良い。これによって、塗布液Pの材料の凝集に起因した吐出孔の目詰まりをより確実に抑制することが可能となる。また、加熱素子522は、水冷管521により冷却された塗布液Pを、吐出孔5204からの吐出前に、室温以上の温度に加熱すると良い。これによって、吐出孔5204から吐出される塗布液Pの粘性を十分に低下させて、吐出孔5204からのペーストのよりスムーズな吐出が可能となる。
【0034】
第2実施形態
図4は、第2実施形態にかかる吐出ヘッドの概略構成を示す断面図である。第2実施形態の第1実施形態との主な差異点は、吐出ヘッド52が有するシリンジポンプ520の先端部分の構成である。つまり、第2実施形態のシリンジポンプ520(のテーパー部5201b)の先端には、Y軸方向に基板Wと同程度の幅を有する幅広の多孔ノズル5205が取り付けられている。そして、この多孔ノズル5205の先端に、Y軸方向に並ぶ複数の吐出孔5206が形成されている。
【0035】
多孔ノズル5205の内部は、シリンジ5201の収容空間5201cに連通している。したがって、プランジャ5202が押出方向Dpに移動することで、シリンジ5201内部の収容空間5201cに貯留された塗布液Pが押出方向Dpに押し出されて、シリンジ5201の下端に設けられた多孔ノズル5205の吐出孔5206から吐出される。このような吐出ヘッド52は、例えば特開2005−353851号公報のように、基板Wに対して複数のフィンガー電極を並べて形成する場合に適している。なぜなら、X軸方向に移動する基板Wに対して、図4の吐出ヘッド52の複数の多孔ノズル5205から塗布液Pを吐出することで、複数のフィンガー電極を一度に形成することができるからである。
【0036】
そして、第2実施形態においても、水冷管521および加熱素子522が吐出ヘッド52に取り付けられている。水冷管521の取り付け位置は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。一方、加熱素子522の取り付け位置は、第1実施形態と異なっている。つまり、第2実施形態では、加熱素子522は、多孔ノズル5205の外周面に一周に渡って設けられている。そして、この加熱素子522が、室温あるいはそれより高い温度に維持されている。したがって、多孔ノズル5205の内部にある塗布液Pは、多孔ノズル5205を介して加熱素子522より加熱される。こうして、水冷管521により冷却された塗布液Pは、加熱素子522によって吐出孔5204から吐出される前に加熱される。
【0037】
このよう、この実施形態の吐出ヘッド52も、シリンジポンプ520内部に収容される塗布液Pを冷却する水冷管521と、水冷管521により冷却された塗布液Pを吐出孔5206から吐出される前に加熱する加熱素子522とを備える。したがって、吐出ヘッド52に収容される塗布液Pの材料の凝集に起因した吐出孔5206の目詰まりが抑制されるとともに、吐出孔5206から吐出される塗布液Pの粘性が抑えられて、吐出孔5206からの塗布液Pのスムーズな吐出が可能となっている。
【0038】
その他
このように上記実施形態では、吐出ヘッド52が本発明の「吐出装置」に相当し、パターン形成装置1が本発明の「パターン形成装置」に相当する。また、シリンジポンプ520が本発明の「吐出手段」に相当し、水冷管521が本発明の「冷却手段」に相当し、加熱素子522が本発明の「加熱手段」に相当し、テーパー部5201bが本発明の「テーパー部」に相当する。また、ステージ3が本発明の「支持手段」に相当する。
【0039】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、塗布液Pに含まれる導電性材料は銀であったが、導電性材料の種類はこれに限られない。したがって、塗布液Pは、例えばアルミニウムを導電性材料として含むアルミニウムペーストであっても良い。
【0040】
また、上記実施形態では、電極配線パターンを形成するための材料(導電性材料)を含む塗布液Pを吐出ヘッド52から吐出する場合について説明した。しかしながら、電極配線パターン以外のパターンを形成する材料を含む塗布液Pを吐出ヘッド52から吐出する場合についても、本発明を好適に用いることができる。
【0041】
具体例を挙げると、上述のような電極配線パターンの形成に先立って、樹脂材料を含む塗布液Pを基板Wに吐出して、基板Wにバンクパターンを形成する場合がある。この場合、複数のバンクパターンが基板Wに予め形成され、これらのバンクパターンの間に導電性材料を流し込むことで、電極配線パターンが基板Wに形成される。
【0042】
バンクパターンを形成するための樹脂材料としては、紫外線硬化型であってアクリル系の材料(具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのいずれかのプレポリマーを含む材料)を用いることができる。そして、このような樹脂材料を含む塗布液Pは、シリンジ5201内に収容中は室温未満に冷却する一方、吐出孔5204からの吐出に際しては室温にまで加熱することが好ましい。そこで、このような樹脂材料を含む塗布液Pを吐出ヘッド52により吐出するにあたっては、本発明の構成を採用することが好適となる。
【0043】
また、上記実施形態では、水冷管521は、シリンジ5201の外周面に一周以上に渡って設けられていた。しかしながら、水冷管521を設ける位置や範囲はこれに限られない。
【0044】
また、シリンジ5201内に収容される塗布液Pを冷却する冷却手段の具体的構成も、上述の水冷管521に限られず、空冷方式やペルチェ素子等を用いた冷却手段を用いることもできる。
【0045】
また、加熱素子522を取り付ける位置についても種々の変形が可能である。そこで、図2、図3に示した構成において、加熱素子522をノズル5203に取り付けるように変更することもできる。あるいは、図4に示した構成において、加熱素子522をテーパー部5201bに取り付けるように変更することもできる。
【0046】
また、加熱素子522の具体的な構成は、上述のペルチェ素子に限られず、電熱線等の種々のものを用いることができる。
【0047】
また、塗布液Pの冷却温度あるいは加熱温度についても種々の変形が可能である。つまり、塗布液Pの物性に応じて、冷却温度あるいは加熱温度を適宜調整すれば良い。
【0048】
また、上記実施形態の吐出ヘッド52では、シリンジ5201が着脱自在に構成されていた。しかしながら、シリンジ5201を着脱自在に構成することは必須ではない。
【0049】
また、吐出ヘッド52の具体的構成は、上述のシリンジポンプ方式のものに限られず、その他の方式を採用した種々のディスペンサーを用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、シリンジポンプ520は鉛直下方に向けて配置されていた。しかしながら、シリンジポンプ520の姿勢はこれに限られず、鉛直方向に対して傾けてシリンジポンプ520を配置したり、鉛直上方に向けてシリンジポンプ520を配置しても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、基台101に固定されたヘッド部5に対し基板Wを載置したステージ3が移動する構成となっているが、基板Wが固定されてヘッド部5が移動するように構成されてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態ではシリコン基板上にフィンガー電極配線パターンを形成しているが、基板Wはシリコンに限定されるものではない。例えば、ガラス基板上に形成された薄膜太陽電池や、太陽電池以外のデバイスにパターンを形成する際にも、本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、基板上に所定のパターン、例えば太陽電池基板上の電極配線パターンを形成する技術に対して特に好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…パターン形成装置
52…吐出ヘッド
520…シリンジポンプ
5201…シリンジ
5202…フランジャ
5201a…円筒部
5201b…テーパー部
5201c…収容空間
5203…ノズル
5204…吐出孔
5205…多孔ノズル
5206…吐出孔
521…水冷管
522…加熱素子
P…塗布液(ペースト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に収容するペーストを吐出孔へ供給して、前記吐出孔から前記ペーストを吐出する吐出手段と、
前記吐出手段に設けられて、前記吐出手段が収容する前記ペーストを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段と前記吐出孔の間で前記吐出手段に設けられて、前記冷却手段により冷却された前記ペーストを前記吐出孔から吐出される前に加熱する加熱手段と
を備えたことを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記吐出手段は、前記吐出孔に向けて前記ペーストが供給される方向に先細りに形成されたテーパー部を有しており、前記加熱手段は、前記テーパー部に設けられている請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記吐出手段の外周面に1周以上に渡って設けられている請求項1または2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記ペーストは、銀ペーストである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記吐出手段に収容された前記ペーストを室温よりも低い温度に冷却する請求項4に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記冷却部により冷却された前記ペーストを前記吐出孔から吐出される前に、室温以上の温度に加熱する請求項4または5に記載の吐出装置。
【請求項7】
基板を支持する支持手段と、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の吐出装置と
を備え、
前記吐出装置を前記支持手段に対して相対的に移動させながら、前記吐出装置から前記基板に前記ペーストを吐出して、前記基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−56317(P2013−56317A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197354(P2011−197354)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】