説明

吐出装置

【課題】設計の高い自由度を持ちながら効率的に流動性材料を所望温度に維持できる吐出装置(ディスペンサバルブ)を提供すること。
【解決手段】本発明の流動性材料を吐出する吐出装置1は、流動性材料を吐出させるノズル4と、ノズルに連通しノズルに流動性材料を送る流路6と、ノズルから流動性材料を吐出させる吐出機構と、加熱流体を循環させることによって流路の周囲を加熱する加熱手段10と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、吐出装置に関し、詳細には、流動性の材料を精度良く吐出させる吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂、接着剤、オイル、流動性食品等の流動性材料を所定量ずつ吐出させる吐出装置(ディスペンサバルブ)が、工業上の多くの用途で使用されている。
一般に、流動性材料はその温度によって粘度等が変化するため、吐出装置(ディスペンサバルブ)から吐出される流動性材料の温度が変動すると、流体性材料から製造される製品の品質も変動してしまう。
【0003】
このような製品の品質変動を抑制すべく、吐出装置を加熱して所定温度に調整することによって、吐出装置から吐出される流動性材料の温度を室温より高い一定温度に維持する構成が採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されている「吐出弁」では、「電力を供給され得る発熱体28」(段落0017)によって流体通路を加熱し、流体通路内で吐出すべき媒体を加熱している。
【0005】
また、特許文献2に開示されているような光制御フィルム製造工程で使用される溶融樹脂吐出装置(ディスペンサバルブ)では、直方体形状を有するディスペンサバルブ本体BにリボンヒータRを巻き付ける(図1)等して、ディスペンサバルブを加熱することによって、ディスペンサバルブ内の溶融樹脂を一定の温度に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−276199号公報
【特許文献2】特開2002−67057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の吐出弁は、電気的に発熱する発熱体が内部に組み込まれる構成であるため、発熱体に電力を供給する導線等を吐出弁内に配置することが必要である。このため、絶縁等を考慮した設計が必要となり、設計の自由度が制限されるという問題がある。
【0008】
また、直方体状のディスペンサバルブ本体にリボンヒータを巻き付ける構成では、リボンヒータを小さな曲率で曲げることが困難であるため、図1に示されているように、直方体状のディスペンサバルブ本体とその周囲に巻き付けられたリボンヒータとの間に間隙Sが形成され(図2)、ディスペンサバルブ本体を効率的に加熱することができないという問題がある。
また、リボンヒータを小さな曲率で巻き付けるため、リボンヒータ内の導線が切断されてしまう、という問題もある。
【0009】
さらに、流動性材料が引火性である場合には、発熱体、リボンヒータからの火花等からの引火、爆発等が生じる可能性が有るという問題もある。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、設計の高い自由度を持ちながら効率的に流動性材料を所望温度に維持できる吐出装置(ディスペンサバルブ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
流動性材料を吐出する吐出装置であって、
前記流動性材料を吐出させるノズルと、
前記ノズルに連通し該ノズルに前記流動性材料を送る流路と、
前記ノズルから前記流動性材料を吐出させる吐出機構と、
加熱流体を循環させることによって前記流路の周囲を加熱する加熱手段と、を備えている、
ことを特徴とする吐出装置が提供される。
【0012】
このような構成によれば、流動性材料が通る流路が加熱流体で加熱されるので、電気的な絶縁を考慮する必要がなく装置の設計の自由度が高くなる。また、加熱効率も向上する。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記流動性材料が引火性樹脂である。
加熱手段として電気ヒータを用いずに加熱することで引火、爆発等の起因となる着火源がなくなるため、流動性材料が引火性樹脂でも安全に使用できる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記流路の一部に前記流路が複数の経路に分岐された分岐部を備え、前記加熱手段は、少なくとも前記分岐部の前記複数の経路の周囲に配置されている。
このような構成によれば、経路一つあたりの流動性材料の流量を少なくでき、同一距離において加熱手段により加熱される滞在時間が長くなる分、加熱効率を良くすることができる。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記流路の一部に、前記流路の断面積が他の部分よりも大きく、前記流動性材料を貯留する貯留部を備え、前記加熱手段は、少なくとも前記貯留部の周囲に配置されている。
このような構成によれば、貯留部に滞留する流動性材料を事前に加熱する事ができ、流動性材料が加熱される流路長を短く抑える事が可能である。また、流動性材料が貯留部を通る事で、流動性材料の吐出装置内での滞在時間が増す事で加熱効率が向上する。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記流路の一部に、前記流路の断面積が他の部分よりも大きく、前記流動性材料を貯留する貯留部と、前記貯留部から伸びる複数の経路を有する分岐部と、を備え、前記加熱手段は少なくとも前記貯留部と前記分岐部の前記複数の経路との周囲に配置されている。
このような構成によれば、貯留部内を通る流動性材料は複数の流路によって流路一つ辺りの流量が低下する事で、流路内の滞在時間が増す事で加熱効率が向上する。さらに、流動性材料が貯留部を通る事で、流動性材料の吐出装置内での滞在時間が増す事で加熱効率がさらに向上する。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記流路内に、スタティックミキサーが配置されている。
このような構成によれば、流路の内周面に接触して加熱された流動性材料が、流路に沿って流れつつ、スタティックミキサーで流路の中心側に向けて攪拌されるので、コンパクトな構成でありながら、流路内の流動性材料を効率的に加熱することができる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記吐出装置は吐出前に吐出装置内に流動性材料を充填させる。
このような構成によれば、吐出装置及び吐出装置内の流動性材料の温度が安定した状態で吐出する事ができ、吐出された流動性材料の温度変動を抑える事ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設計の高い自由度を持ちながら効率的に流動性材料を所望温度に維持できる吐出装置(ディスペンサバルブ)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術の溶融樹脂吐出装置(ディスペンサバルブ)の加熱方法の問題点を説明する図面である。
【図2】従来技術の溶融樹脂吐出装置(ディスペンサバルブ)の加熱方法の問題点を説明する図面である。
【図3】本発明の好ましい実施形態の吐出装置1の概略的な構成を示す模式的な図面である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態の吐出装置1の概略的な構成を示す模式的な図面である。
【図5】本発明の他の好ましい実施形態の吐出装置1の概略的な構成を示す模式的な図面である。
【図6】本発明の他の好ましい実施形態の吐出装置1の概略的な構成を示す模式的な図面である。
【図7】図6の実施形態の吐出装置の図面中のx−x線での断面を示した説明図面である。
【図8】図3の実施形態の吐出装置が用いられる光学シート製造方法および装置を説明する概略的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の吐出装置について説明する。
図3は、本発明の好ましい実施形態の吐出装置1の概略的な構成を示す模式的な図面である。
【0021】
図3に示されているように、吐出装置1は、流動性材料である溶融樹脂を吐出する所謂ディスペンサバルブと呼ばれる吐出装置であり、例えば、特開2002−67057号公報に記載されているようなレンズシートの製造方法で樹脂を供給する装置として使用されるものである。溶融樹脂として、消防法で第4類指定となる引火性樹脂が使用される場合がある。
【0022】
吐出装置1は、ノズルから流体性材料を吐出させる吐出機構としてのプランジャ機構が組み込まれたディスペンサバルブ本体2と、ディスペンサバルブ本体2の下側に設けられニードルが組み込まれたノズル4と、樹脂チューブで構成され、ノズル4に連通する流路6とを備えている。ディスペンサバルブ本体2およびノズル4は、SUS等の熱伝導性が高い金属で構成されているのが好ましい。
【0023】
吐出装置1の基本構成および機能は、公知のディスペンサバルブと同一であり、流路から供給されてきた流動性材料(溶融樹脂)を、プランジャ機構の作動によって吐出するノズルである。プランジャ機構とは、ニードルが弁座からリリースされると樹脂の流入口が確保され、該樹脂を連続的に吐出する装置等を含む。
【0024】
本実施形態の吐出装置1は、SUS等の熱伝導性が高い金属で構成され加熱部となる調温ユニット8を備えている。本実施形態では、加熱ユニット8は、図3に示されているように、略L字形状を有した一体型の部材である。
加熱ユニット8の上下方向に延びる立ち上がり部8aは、上下方向に延びるディスペンサ本体2に沿ってディスペンサ本体2との間に間隔をあけた状態で上下方向に延びている。
【0025】
立ち上がり部8a内には溶融樹脂を加熱するための加熱手段10が配置されている。又、立ち上がり部8aの下方位置で水平方向に延びる基部8b内には、流路6が貫通して延びている。
【0026】
加熱手段10は、内部を温水等の加熱流体が循環する管路12を備えている。本実施形態では、管路12は、外部の図示しない熱源で加熱され温度調節された温水等を調温ユニット8に導き、調温ユニット8を介して、基部8b内の流路6を流れる溶融樹脂に熱を伝え、溶融樹脂を所定温度に維持している。
【0027】
さらに、調温ユニット8の基部8bの先端部(図3の左端側部分)は、ディスペンサ本体2の下端部を覆うように配置されているで、ディスペンサ本体2の下側に設けられたノズル4にも、調温ユニット8からの熱が伝えられ、ノズル4内においても溶融樹脂は所定温度に維持される。
【0028】
流路6内には、スタティックミキサー14が配置されている。スタティックミキサー14は、公知の構成を有し、このスタティックミキサー14によって、流路6内を流れる溶融樹脂は流路内で径方向に攪拌される。すなわち、流路6内で、外縁側の溶融樹脂が中心側に、中心側の溶融樹脂が外縁側に移動させられ流路6内の溶融樹脂の温度が径方向で均一化される。
【0029】
また、アース線16が、加熱ユニット8に接続されている。このアース線16によって、樹脂製の流路を流れることによって帯電した溶融樹脂からの除電が行われる。溶融樹脂からの除電を行うことによって、溶融樹脂が静電気の影響で吐出時に飛び散ることなどが防止され、溶融樹脂を所望の経路、形態で吐出させることができる。
【0030】
上記実施形態の吐出装置1では、調温ユニット8がディスペンサバルブ本体2の一側面側のみに配置された構成であるが、図4に模式的に示す構成のように、2つの調温ユニット8、8’が、ディスペンサバルブ本体2の両側面でディスペンサバルブ本体2の側壁と接触するように配置された構成でもよい。
【0031】
さらに、ディスペンサバルブ本体2の三側面に調温ユニットが設けられた構成、ディスペンサバルブ本体2の四側面に調温ユニットが設けられた構成でもよい。
【0032】
上記実施形態の吐出装置1では、加熱ユニット8が略L字形状を有しているが、加熱ユニット8をコンパクトにする方法として、図5に模式的に示す構成のように、加熱流体を循環する管路12が流路6の回りを二重管のように流れる構造としてもよい。このような構造にすることで流路6を流れる溶融樹脂と管路12の距離が近くなる事で熱抵抗が少なくなり熱移動量が増えるため、流路6の長さを短く取る事ができる。
【0033】
上記実施形態の吐出装置1について、他の好ましい実施形態の概略的な構成を図6に示す。
【0034】
図6に示す吐出装置1は調温ユニット8内に溶融樹脂を貯留する貯留部8cを設けてあり、溶融樹脂は貯留部8c内に充填され、貯留部8c内を通り調温ユニット8の基部8dを通りノズルへと溶融樹脂が送られる。
【0035】
溶融樹脂は、貯留部8c内のプール部18aから複数の経路に分岐された分岐部へと送られる。分岐部は、図6に示される中空部材9により構成することができる。図7は図6のx−x線での断面図であるが、図7の通り、中空部材9は貯留部8cから伸びる複数配置された経路からなり、その周囲を温水等の加熱流体の循環を行い、中空部材9内の経路の溶融樹脂の加熱を行う。中空部材9の末端はプール部18bに繋がり、中空部材9内のそれぞれの溶融樹脂はプール部18bにて集合され調温ユニット基部8dの流路6へと流れる。
【0036】
温水等の加熱流体は入口11aから供給され貯留部8cの中空部材9の複数の経路の回りを流れ出口11b排出して循環を行う。加熱流体の入口から出口までの循環経路は、溶融樹脂の流れ方向に対して温調効率が良くなる対向流となるように流れることが好ましいが、加熱流体が貯留部8cの回りを2パス・4パス等の往復する経路を有しても良い。また加熱流体が流れる流路内に邪魔板等を配置する等、貯留部8c内の加熱流体の滞在時間を稼ぐ構造を設けても良い。
【0037】
中空部材9の複数の経路の数は数が多く取るほど、中空部材内一つあたりの流量が少なくなり、同一距離において滞在時間が長くなる分加熱効率が良くなる。また中空部材の外径を小さくする方が中空部材内部の半径方向の温度斑が少なくなり、より加熱効率も良くなる。中空部材9内で分岐される経路の数やそれぞれの経路の径の大きさは許容圧力損失や熱交換効率を考慮して必要に応じて選定することが好ましい。また、流路の途中に複数の中空部材9を配置してもよく、複数の中空部材9を直列に接続しても並列に接続しても構わない。
【0038】
図6に示す吐出装置1は溶融樹脂が上部から下部へ流れる1パス流路となっているが、2パス・4パス等の往復する流路となっていても良い。
【0039】
中空部材9の中にも、スタティックミキサーを配置する事が好ましい。複数のスタティックミキサーを通過することで溶融樹脂全体の攪拌回数が多くなり温調効果が高まるため、溶融樹脂の所望温度への到達が早くなる。
【0040】
図6に示す吐出装置1の調温ユニット8の構造は特にこの構造に限定することは無く、例えば加熱流体が調温ユニット基部の8dの周りを流れる構造や、調温ユニット基部の8d内の流路6a内にスタティックミキサーを設置したり、図4のようにディスペンサバルブ本体2側に調温ユニットを設けたり、図5のような調温ユニット基部の8dが二重管構造になっていたり、各形態を組み合わせた構造になっていてもよい。また、貯留部8cを設けずに、中空部材9の複数の経路に溶融樹脂が分岐される構成としてもよい。
【0041】
図6に示す吐出装置1は溶融樹脂を吐出する前に事前に吐出装置内に溶融樹脂を充填させておくと良い。なお、本発明において吐出装置内に溶融樹脂を充填させる、とは、吐出装置1から溶融樹脂を実質的に吐出することなく、吐出装置内の溶融樹脂の経路を実質的に溶融樹脂で満たした状態のことを指す。吐出前のディスペンサバルブ本体2のニードル60が下がっている状態では、ニードル60と弁座面62の隙間が塞がるが、弁座面まで溶融樹脂を充填させておく事ができる。充填させておく事で溶融樹脂が流路を流動した直後の流路壁面の温度変化が最小限に抑えられ、特に吐出直後の吐出樹脂温度の安定を早くする事ができる。
【0042】
図6に示す吐出装置1のノズル直前には吐出温度を検知する温度検知手段50を設ける事が好ましい。温度検知手段は熱電対、測温抵抗体等が挙げられる。ノズル直前の温度を検知する事で吐出温度を測定でき、測定した温度から温水等の加熱手段の流量を調整する電磁弁(図示せず)を制御する事で、吐出装置1内のみで溶融樹脂の吐出温度を制御する事ができる。
【0043】
温度検知手段50の位置は図6の通りノズル直線でなくても良い。例えば地貯留部8cを通過し調音ユニット基部8d内の流路6中に設けても良い。この場合、溶融樹脂を吐出する前に吐出装置内に充填させた溶融樹脂温度が確認でき、温度が安定した事を実測した状態で吐出を開始する事ができる。
【0044】
次に、上記実施形態の吐出装置1が用いられる光学シート製造装置について説明する。図8は、上記実施形態の吐出装置1が用いられる光学シート製造方法および装置を説明する概略的な図面である。
【0045】
この光学シート製造方法で使用される光学シート製造装置20は、上記実施形態の吐出装置1を使用する点を除き、転写ロールを使用して基材に活性エネルギー線硬化性組成物で表面形状を賦型する従来技術(例えば、特開2002−67057号公報)の光学シート製造装置と同様の構成を備えている。
【0046】
図8に示されているように、光学シート製造装置20では、長尺状の透光性基材22が、矢印B方向に回転駆動される円筒状の転写ロールTRの外周面に巻回されながら矢印C方向に搬送されるように構成されている。転写ロールTRは、その外周面には、製造する光学シートの表面形状と相補的な凹凸形状パターン(転写パターン)が形成されている。
【0047】
透光性基材22としては、例えば、可視光、および紫外線、電子線等の活性エネルギー線を透過する、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等の材料をフィルム、またはシート状に加工したものが使用される。
【0048】
表面形状を賦型するために使用される活性エネルギー線硬化性組成物24との密着性を向上させるために、透光性基材22の表面に密着性向上のための表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などからなる易接着層を形成する方法や、粗面化などが挙げられる。また、透光性基材22には、帯電防止、反射防止、基材同士の密着防止などの他の処理を施してもよい。
【0049】
光学シート製造装置20は、活性エネルギー線硬化性組成物24を透光性基材22に塗布する塗布装置26を備えている。
本実施形態では、この塗布装置26として上記実施形態の吐出装置1が使用され、転写ロールTR近傍で転写ロールTRと透光性基材22の間に活性エネルギー線硬化性組成物14が供給される。
【0050】
供給される活性エネルギー線硬化性組成物24の組成としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線で硬化させたものであれば特に限定されるものではない。
【0051】
例えば、ポリエステル類、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。(メタ)アクリレート系樹脂がその光学特性の観点から特に好ましい。
【0052】
このような硬化樹脂に使用される活性エネルギー線硬化性組成物としては、取扱性や硬化性等の点で、多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート(以下、多価(メタ)アクリレートと記載)、モノアクリレートおよび/またはモノメタアクリレート(未満、モノ(メタ)アクリレートと記載)、および活性エネルギー線による光重合開始剤を主成分とするものが好ましい。
【0053】
代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物が挙げられる。
【0054】
また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、後者の場合には、金属型を使用する場合には水酸基の影響であると思われる金属型との離型困難性を低減するために、少量で使用するのがよい。
また、金属型を使用する場合には、(メタ)アクリル酸およびその金属塩についても、高い極性を有していることから、少量で使用するのがよい。
【0055】
塗布装置26には、温度調整された熱媒体が流れるジャケット28に覆われたタンクTが接続され、温度調節された活性エネルギー線硬化性組成物24を塗布装置26に供給するように構成されている。
【0056】
塗布装置26とタンクTを結ぶ管路30にも、温度調節装置が設けられ、これらの部分での活性エネルギー線硬化性組成物24の温度が、40℃以上80℃未満の温度範囲内、好ましくは40℃以上70℃以下の範囲内、更に好ましくは40℃以上60℃以下の範囲内になるように制御される。
温度調節装置は、特に限定されるものではないが、電熱、熱媒体による温度調節装置が好ましい。
【0057】
図8に示されているように、転写ロールTRに対向して、硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物24の厚さを均一にさせるためのニップローラ32が配置されている。
【0058】
光学シート製造装置20では、透光性基材22が転写ロールTRとニップローラ32の間に挟持され始める領域で、透光性基材22と転写ロールTRの間に塗布装置26から活性エネルギー線硬化性組成物24が供給される。このとき、塗布装置26として使用される吐出装置1では、管路12に所定温度の温水を循環させ、流路6内を流れる溶融樹脂を所定温度に維持している。
【0059】
供給された活性エネルギー線硬化性組成物24は、透光性基材22と転写ロールTRの間に樹脂だまり34を形成する。
【0060】
ニップローラ32の搬送方向下流側には、活性エネルギー線照射装置36が設けられている。本実施形態では、活性エネルギー線照射装置36は、透光性基材22を介して、透光性基材22と転写ロールTRの間に配置された活性エネルギー線硬化性組成物24を、透光性基材22と活性エネルギー線硬化性組成物24と転写ロールTRとの重なった任意の位置から照射するように配置されている。
【0061】
活性エネルギー線照射装置36としては、化学反応用ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、可視光ハロゲンランプ等が用いられる。活性エネルギー線は、例えば、200〜600nm、好ましくは、320〜390nmの波長の波長範囲における積算エネルギーが、例えば、0.1〜10J/cm、好ましくは0.5〜8J/cmとなるように照射することが適当である。また、活性エネルギー線の照射雰囲気としては、空気、または窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。
【0062】
光学シート製造装置20では、活性エネルギー線照射装置36透光性基材22と活性エネルギー線硬化性組成物24と転写ロールTRとの重なった任意の位置から活性エネルギー線を活性エネルギー線硬化性組成物24に照射するので、透光性基材22上で活性エネルギー線硬化性組成物24が硬化する硬化部Hは、転写ロールTRの下側位置H(透光性基材22と活性エネルギー線硬化性組成物24と転写ロールTRとの重なった任意の位置)となる。また、透光性基材22の剥離部Rは、転写ロールTRの外周面の上方となる。
【0063】
光学シート製造装置20による光学シートの製造では、透光性基材22は、略9時の位置で、転写ロールTRとニップローラ32に挟持される。
上述したように、光学シート製造装置20では、透光性基材22が転写ロールTRとニップローラ32の間に挟持され始める領域で、透光性基材22と転写ロールTRの間に活性エネルギー線硬化性組成物24の樹脂だまり34が形成されているので、透光性基材22は、一方の面(転写ロールTR側の面)に活性エネルギー線硬化性組成物24が付着した状態で転写ロールTRとニップローラ32に挟持される。
【0064】
したがって、透光性基材22は、活性エネルギー線硬化性組成物24が塗布された面を転写ロールTRに向け、この面が転写ロールTRの外周面に押圧されるようにして、転写ロールTRとニップローラ32の間に挟持されることになる。
【0065】
次いで、透光性基材22は、転写ロールTRの外周面に巻回され、転写ロールTRの回転によって、転写ロールTRの回転方向(B方向)に移送されていく。このとき、透光性基材22の一方の面に塗布された未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物24は、転写ロールTRの外周面形状が転写され、転写ロールTRの外周面形状と相補的な形状となる。
【0066】
次いで、透光性基材22と活性エネルギー線硬化性組成物24と転写ロールTRとの重なった任意の位置から活性エネルギー線照射装置36から活性エネルギー線が、透光性基材22を通して活性エネルギー線硬化性組成物24に照射され、活性エネルギー線硬化性組成物24が透光性基材22上で硬化させられる。
【0067】
上述したように、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物24には、転写ロールTRの外周面形状が転写されているので、硬化した活性エネルギー線硬化性組成物24によって、転写ロール外周面の転写パターンと相補的な形状のレンズ部が、透光性基材22の表面に形成されることになる。
【0068】
上面で活性エネルギー線硬化性組成物24が硬化した透光性基材22は、転写ロールTRの回転によって、さらに、転写ロールTRの回転方向に移送され、転写ロールTRから剥離される。
【0069】
このような光学シート製造装置20では、塗布装置26として本発明の実施形態の吐出装置1が使用されるので、透光性基材22上に供給される活性エネルギー線硬化性組成物24の温度を所定温度に維持することができる。
【0070】
この結果、透光性基材22上への供給時の活性エネルギー線硬化性組成物24の粘度が一定になり、透光性基材22での活性エネルギー線硬化性組成物24の塗工幅、塗工厚が一定になり、製造される光学シートの品質が向上する。
【0071】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更又は変形が可能である。
【0072】
上記実施形態は、流動性材料として溶融樹脂、詳細には活性エネルギー線硬化性組成物を吐出する吐出装置であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の流動性材料、例えば、接着剤、半田、液晶材、試薬、オイル、流動食品等を吐出する吐出装置であってもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例について説明する。
以下の条件で、実施例と比較例に対し実験を行い、その結果を下記の表1に示す。
【0074】
(実施例)
実施例では、岩下エンジニアリング製ディスペンサAV801を改造して使用した。
改造内容は、(1)樹脂流路部品を樹脂製(ポリアセタール)からステンレス製へ変更し、(2)樹指流路部に静止式スタティックミキサー設置(φ4-L15 ステンレス製エレメン
ト数3)した点である。
実施例の実験条件は、以下の通りである。
材料(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物):
トリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部
ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部
信越化学社製商品名「x−22−1602」:10質量部
チバ・スペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガキュア184」:2.7質量部
チバ・スペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガキュア819」:0.18質量部
タンク内樹脂温度:25℃
吐出時間:7min
ノズルは、MN-20G-13(岩下エンジニアリング製 材質:ステンレス内径0.6mm)を使用
し、吐出量は22.4g/min、温調循環器設定温度は50℃(循環開始後45min後測定開始)とし、1分ごとに吐出された樹脂の温度を測定した。
【0075】
(比較例)
一方、比較例では、岩下エンジニアリング製ディスペンサAV801を改造せずに使用し、
吐出量:18.4g/minとし、実施例と同様の測定を行った。尚、ノズルは実施例と同一
ものを使用した。
【0076】
その結果、実施例では、温度斑が実施例では±3.4℃であり、比較例では±6℃となり、実施例の方が、温度斑が小さいことがわかった。
【0077】

【符号の説明】
【0078】
1:吐出装置
2:ディスペンサバルブ本体
4:ノズル
6:流路
8:調温ユニット
10:加熱手段
12:管路
14:スタティックミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性材料を吐出する吐出装置であって、
前記流動性材料を吐出させるノズルと、
前記ノズルに連通し該ノズルに前記流動性材料を送る流路と、
前記ノズルから前記流動性材料を吐出させる吐出機構と、
加熱流体を循環させることによって前記流路の周囲を加熱する加熱手段と、を備えている、
ことを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記流動性材料が引火性樹脂である、
請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吐出装置であって、
前記流路の一部に前記流路が複数の経路に分岐された分岐部を備え、
前記加熱手段は、少なくとも前記分岐部の前記複数の経路の周囲に配置されていることを特徴とする吐出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吐出装置であって、
前記流路の一部に、前記流路の断面積が他の部分よりも大きく、前記流動性材料を貯留する貯留部を備え、前記加熱手段は、少なくとも前記貯留部の周囲に配置されていることを特徴とする吐出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の吐出装置であって、
前記流路の一部に、前記流路の断面積が他の部分よりも大きく、前記流動性材料を貯留する貯留部と、前記貯留部から伸びる複数の経路を有する分岐部と、を備え、前記加熱手段は少なくとも前記貯留部と前記分岐部の前記複数の経路との周囲に配置されていることを特徴とする吐出装置。
【請求項6】
前記流路内に、スタティックミキサーが配置されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吐出装置。
【請求項7】
前記吐出装置は吐出前に吐出装置内に流動性材料を充填させる、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吐出装置

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49051(P2013−49051A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169545(P2012−169545)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】