説明

吐出製品の製造方法および該製造方法により製造された吐出製品

【課題】可燃性ガスであり、環境への負荷となる液化ガスを充填することなく、安定的に泡を吐出できる吐出製品の製造方法および該製造方法により製造した吐出製品を提供すること。
【解決手段】界面活性剤を含有する水性原液に圧縮ガスを溶解させて発泡させる発泡工程と、前記発泡工程にて得られた発泡物を上昇させて回収する回収工程と、前記回収工程にて回収された発泡物を開封可能な密封容器に充填する充填工程とを有する吐出製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境にやさしく、火気への安全性が高く、安定的に泡を吐出できる吐出製品の製造方法および該製造方法により製造された吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、泡状で吐出する吐出製品としては、例えば、エアゾール製品、ポンプ製品などが広く知られている。エアゾール製品の場合は、耐圧容器内に原液と液化ガスを充填しており、大気圧下に吐出すると、原液中に分散している液化ガスが気化することで体積が数百倍に膨張し、きめ細かい泡が形成される。しかし、液化ガスとして発泡性エアゾール製品に一般的に使用されている液化石油ガスは可燃性ガスであり、吐出直後にほとんど全部が気化するが、泡に裸火を近づけると残留している液化石油ガスにより吐出物に着火する場合がある。
【0003】
液化ガスの代わりに圧縮ガスを使用し泡状で吐出するエアゾール製品があり、原液を耐圧容器に充填した後で圧縮ガスを充填して製造される。圧縮ガスは耐圧容器内において気体であり充填量を重量で管理するのが難しいため、製品圧力と原液への溶解量を考慮して圧縮ガスの充填圧力を設定し、耐圧容器内の圧力と平衡になるように充填している。そのため、充填時の温度や原液の粘度により溶解量に差が生じ、充填量がばらついて安定的に吐出物が得られないという問題がある。
【0004】
また、ポンプ製品の場合は、液体の内容物を一時的に加圧してスポンジなどの多孔質体を通過させて発泡させるが、ポンプの作動毎に液体中に混入できる空気量が変わるため安定的に発泡物が得られない。
【0005】
特許文献1には、タンクの中にホイップクリーム用の原液を充填し、原液に溶解しないガス(窒素ガス)で2kg/cm2以上に加圧しながら攪拌し、原液中にガスを混入させてからエアゾール容器に充填する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−165126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では原液を加圧しながら攪拌して加圧性発泡液体を作る記載があり、原液に圧縮ガスを溶解させながら耐圧容器に充填しているが、加圧性発泡液体を耐圧容器1の下端に設けられている排出口10から取り出されるため、圧縮ガスの溶解量が安定しない。特に、特許文献1では、原液中に無脂乳化固形分、砂糖、植物油脂肪分などを50重量%含有したクリーム状の原液を用いているため、原液に溶解している圧縮ガスの濃度勾配が生じやすく、安定的に吐出物が得られにくい。
【0008】
本願発明は、このような問題点に鑑みてなされた発明であり、可燃性ガスであり環境への負荷となる液化ガスを充填することなく、安定的に泡を吐出できる吐出製品の製造方法および該製造方法により製造された吐出製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吐出製品の製造方法は、界面活性剤を含有する水性原液に圧縮ガスを溶解させて発泡させる発泡工程と、前記発泡工程にて得られた発泡物を上昇させて回収する回収工程と、前記回収工程にて回収された発泡物を開封可能な密封容器に充填する充填工程とを有する吐出製品の製造方法である。
【0010】
前記発泡工程を圧力が0.5〜50MPaの加圧環境下で行うことが好ましい。
【0011】
前記回収工程が、発泡工程にて密度が小さくなった発泡物を水性原液および/または圧縮ガスの導入による流れに乗せて上昇させて回収する回収工程であることが好ましい。
【0012】
前記充填工程における密封容器が、加圧剤を充填することで加圧された密封容器であることが好ましい。
【0013】
前記製造方法により、製造した吐出製品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吐出製品の製造方法によれば、液化ガスが充填されていないにもかかわらず、水性原液に圧縮ガスを溶解させて発泡させ、発泡物を上昇させて回収し、回収した発泡物を開封可能な密封容器に充填することにより、充填する発泡物は圧縮ガスが特定量溶解したものであり、吐出すると安定的に泡を吐出することができる吐出製品の製造方法および該製造方法により製造された吐出製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における密封容器の一例である平袋状パウチ容器を示す図である。
【図2】本発明における密封容器の一例である口栓付パウチ容器を示す図である。
【図3】図3(a)は本発明における密封容器の一例であり、エアゾールバルブが取り付けられた耐圧容器に発泡物が充填された状態を示す断面図である。図3(b)は加圧剤が充填された状態を示す断面図である。
【図4】図4(a)は本発明における密封容器の一例であり、外部容器と内袋との隙間に加圧剤が充填された状態を示す断面図である。図4(b)は取り付けたエアゾールバルブのステムより内袋内の空気が外へ排出された状態を示す断面図である。図4(c)は図4(b)の内袋に発泡物が充填された状態を示す断面図である。
【図5】図5(a)は容積可変の内部容器の一例であるパウチ容器を示す図である。図5(b)は図5(a)のパウチ容器をエアゾールバルブのハウジングに接合した状態を示す断面図である。
【図6a】本発明における発泡工程の一例であり、発泡工程の開始前の態様を示す概略図である。
【図6b】本発明における発泡工程の一例であり、発泡工程中の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の吐出製品の製造方法は、界面活性剤を含有する水性原液に圧縮ガスを溶解させて発泡させる発泡工程と、前記発泡工程にて得られた発泡物を上昇させて回収する回収工程と、前記回収工程にて回収された発泡物を開封可能な密封容器に充填する充填工程とを有する吐出製品の製造方法である。
【0017】
前記発泡工程は、水性原液に圧縮ガスを溶解させることで発泡させる工程であり、例えば、水性原液を圧力室内に充填し、圧縮ガスを圧力室内の下部から導入することで圧縮ガスを水性原液中でバブリングさせながら圧縮ガスを溶解させる、あるいは水性原液を圧縮ガスと共に圧力室内を旋回させながら圧縮ガスを溶解させることで発泡させる工程、水性原液が充填された圧力室内に圧縮ガスを導入しながらミキサーなどにより原液と圧縮ガスを攪拌することで圧縮ガスを水性原液に溶解させ発泡させる工程、圧力室内にメッシュや多孔質体などを設け、水性原液中で圧縮ガスがよりバブリングしやすくすることで圧縮ガスを溶解させ発泡させる工程、圧力室の手前に混合室を設け水性原液と圧縮ガスを同時に導入することで溶解させながら発泡させる工程、などが挙げられる。発泡工程では、前記溶解以外にも水性原液中に圧縮ガスが微細な気泡の状態で分散している状態も含み、溶解および/または分散した圧縮ガスにより水性原液は発泡して発泡物となり、密度が小さくなる。
【0018】
前記発泡工程における圧力室は原液を充填し、圧縮ガスにより所定の圧力に加圧できる空間である。加圧された圧力室内で発泡工程を行うことにより、気体(圧縮ガス)の水性原液に対する溶解量が安定し、泡の平均粒子径の小さな発泡物を得ることができ、該発泡物を大気圧環境下に吐出することで発泡性に優れた吐出製品とすることができる。
【0019】
前記圧力室内の圧力は充填した圧縮ガスにより0.5〜50MPaとすることが好ましく、さらには1〜45MPaとすることが好ましい。圧力が0.5MPaよりも低い場合は水性原液に対する気体の溶解量が少ないため、発泡物と原液の密度差が小さく、安定した発泡物を充填しにくく、吐出時の発泡性が悪くなる傾向があり、50MPaよりも高い場合は密封容器内の圧力との差が大きくなりすぎ、密封容器に高い耐圧強度が必要になり、コストが高くなる傾向がある。
【0020】
前記圧縮ガスとしては特に限定されないが、例えば圧縮空気、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガスなどが挙げられる。
【0021】
さらに本発明の発泡工程について、添付の図6aおよび図6bを参照して説明するが、この態様に限定されるものではない。ここで、図6aは発泡工程の開始前の態様を示す概略図であり、図6bは発泡工程中の態様を示す概略図である。
【0022】
前記圧力室としては、例えば図6aに示すように、タンク61に、気体導入口62、気体排出口63および発泡物回収口64が設けられたタンクとすることができる。なお、図6aには、水性原液をタンク内に充填し、圧縮ガスをタンク内に導入することで水性原液に圧縮ガスを溶解させながら発泡させる工程を示すが、タンク61内にミキサーを設けることで、ミキサーなどにより原液と圧縮ガスを攪拌し、圧縮ガスを原液に溶解させながら発泡させる工程としてもよい。
【0023】
前記気体導入口62にはパイプが連結されており、このパイプの気体導入口62に近接する箇所にはバルブ62aが設けられており、このバルブ62aを操作することで、気体導入口62からタンク61内に気体を導入することができる。
【0024】
また、気体導入口62には導入される気体を微細化することのできる微細化部材62bを設けることが、導入する気体を微細化して気体が原液に溶解されやすくなり、短時間で飽和溶解させることができる点から好ましい。
【0025】
前記微細化部材62bとしては、網構造のもの(メッシュ)、多孔質体などが挙げられるが、導入する気体を微細化することができればこれらに限定されるものではない。
【0026】
さらに、気体導入口62はタンク61に導入された気体が、図6bの矢印Bで示すように原液内を旋回するように設けることで、導入された気体が原液内を旋回し、原液中に溶解しつつ発泡させることができる。さらに、発泡物は導入された気体の旋回流に乗って旋回し、密度が小さくなって上昇する。なお、発泡物が破泡して密度が大きくなるとタンク底部に落下して再び気体の溶解および発泡を繰り返す。
【0027】
前記気体排出口63にはパイプが配設されており、このパイプの排出口63に近接する箇所にはバルブ63aが設けられており、このバルブ63aを操作することで、気体排出口63から気体を排出することができる。
【0028】
前記気体導入口62および気体排出口63は、コンプレッサー65を介したパイプでタンク61の外部において連結されていることが好ましい。このように連結することで、気体排出口63から排出された気体をコンプレッサー65で加圧し、気体導入口62からタンク61に再導入することができることから、環境への負荷が小さく、生産効率がよいという点で好ましい。
【0029】
前記発泡物回収口64はタンクの上部側面に設けられており、密度が小さくなって液面より上昇した発泡物を回収することができる。前記発泡物回収口64には、充填工程Aに発泡物を移送するパイプが配設されており、このパイプの回収口64に近接する箇所にはバルブ64aが設けられており、このバルブ64aを操作することで、発泡物を回収口64から回収することができる。
【0030】
また、タンク61に定期的に原液を充填することのできる原液充填口66を設けることもでき、この原液充填口66を設けることで原液の減少(液面の変化)に応じて原液を追加充填でき、連続的に発泡物を回収し、密封容器に充填できるため、効率的に吐出製品を製造することができる点から好ましい。また、原液の追加充填量により、液面の高さを調整することで回収する発泡物(圧縮ガスの溶解度、泡密度)を調整できる点からも好ましい。
【0031】
圧力室内に水性原液を充填する方法としては特に限定されないが、前記原液充填口66から充填することも、他の方法により充填することもできる。また、圧力室内(タンク61内)を発泡工程までに加圧する必要があるが、水性原液を充填後に加圧することも、加圧後に水性原液を充填することもできる。
【0032】
タンク61中に導入された気体は、図6bに示す矢印Bのように原液70中を旋回しながら原液60に溶解していく。なお、タンク61に導入された気体のうち、原液60に溶解されなかった気体は気体排出口63から排出され、コンプレッサー65により加圧され気体導入口62からタンク61に再導入されるという工程を繰り返し行うことができる。
【0033】
前記回収工程は、圧力室内で形成された発泡物を回収する工程であり、例えば圧力室内に気体が導入され原液60に気体が溶解して次第に泡を形成し始め、さらに気体を導入し続けることにより飽和溶解し、図6bに示すように形成された発泡物70は徐々に発泡工程開始前の原液の液面71より上昇する。その後、タンク61内の上部側面に配設された発泡物回収口64から上昇した発泡物70を回収し、回収された発泡物を充填工程Aに移送することができる。特に、旋回させながら溶解させる場合は発泡物を側面から回収しやすくなる点から好ましい。
【0034】
前記発泡物の上昇は、密度の小さい発泡物ほど上昇しやすい、つまり、多くの気体が溶解した発泡物ほど上昇するので、上昇した発泡物の中でも上層の発泡物のみを発泡物回収口74において回収し充填工程に移送することが、水性原液に圧縮ガスが特定量溶解して適度な密度を有し、安定な泡を形成する発泡物を密封容器に充填することができる点から好ましい。よって、発泡物回収口74をタンク内のより上方に配設することで、より密度が小さく安定した発泡物のみを回収することができる。また、圧力室内に導入された水性原液および/または圧縮ガスの流れに乗せることで発泡物が上昇するという構成とすることもできる。
【0035】
前記回収工程において回収する発泡物の泡密度は0.1〜0.7g/mlであることが好ましく、0.2〜0.6g/mlであることがより好ましい。泡密度が0.1g/mlよりも小さい場合は、泡の状態が維持できなくなり破泡して液化しやすくなる傾向がある。0.7g/mlよりも大きい場合は、圧力から開放(吐出)してもきめ細かな泡になりにくい傾向がある。
【0036】
前記回収工程における圧力は圧力室内の圧力と同圧か0.1〜1MPa低くすることが好ましい。前記圧力が圧力室の圧力よりも1MPa以上低い場合は水性原液中に加圧溶解させた気体が放出されやすくなる傾向がある。
【0037】
前記充填工程は、回収工程で回収された発泡物を密封容器へ充填する工程である。また回収工程から充填工程まで徐々に圧力を下げながら移送する工程を有することが好ましい。圧力が高いまま充填してしまうと充填する容器によっては容器が破裂してしまう可能性がある。また急に圧力を下げてしまうと溶解させた気体が一気に放出してしまうため泡質が悪くなる傾向がある。
【0038】
前記充填工程では発泡物を0.2〜2MPaの圧力をかけながら加圧充填することが好ましく、さらには0.3〜1.8MPaとすることが好ましい。圧力が0.2MPaよりも低い場合は発泡物から圧縮ガスが放出されやすくなり、安定した吐出状態が得られにくい傾向がある。2MPaよりも高い場合は容器が変形する危険性がある。
【0039】
前記充填工程で密封容器に充填する発泡物の泡密度は0.1〜0.7g/mlであることが好ましく、さらには0.2〜0.6g/mlであることが好ましい。泡密度が0.1g/mlよりも小さい場合は、密封容器内で泡の状態が維持できなくなり破泡して液化しやすくなる傾向がある。0.7g/mlよりも大きい場合は、圧力から開放(吐出)してもきめ細かな泡になりにくい傾向がある。
【0040】
前記充填工程で密封容器に充填する発泡物の泡密度A(g/ml)は、密封容器に充填した発泡物を充填した容量B(ml)および充填された重量C(g)より次の式(1)にて算出した。
A=C/B (1)
【0041】
さらに、本発明の吐出製品の製造方法は、密封容器に加圧剤を充填する工程を有することが好ましい。
【0042】
前記加圧剤は、充填された発泡物を吐出するための噴射剤として、また密封容器内の圧力の調整剤として充填される。前記加圧剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの1種または2種以上からなる圧縮ガスを用いることができ、特に環境への負荷が少ない点から圧縮空気を用いることが好ましい。また、加圧剤として用いる圧縮ガスは、発泡物が含有する気体とは同じ気体とすることも、異なる気体とすることもできる。
【0043】
以下に本発明の発泡物および加圧剤の充填工程の一例について添付の図面を参照して説明するが、この態様に限定されるものではない。
【0044】
前記密封容器として、例えば図3に示すような内部容器を有さないエアゾール容器とする場合、図3(a)に示すように、エアゾールバルブを固着した後、加圧環境下で発泡物を密封容器に充填し、図3(b)に示すように加圧剤を充填することで吐出製品とすることができる。
【0045】
また、前記密封容器として、例えば図4および図5に示すような二重エアゾール容器とする場合、発泡物を充填する前に外部容器41と内袋42との隙間に加圧剤43を充填し、その後、エアゾールバルブを固着する。次にステム44を解放することで内袋内の空気を外へ排出し図4(b)、最後に図4(c)に示すようにステム44より発泡物45を加圧充填することで吐出製品とすることができる。なお、外部容器と内袋との隙間の容積は加圧による発泡物の体積の減少等を考慮し適宜選択することができる。なお、図3のエアゾール容器も加圧剤を充填した後で発泡物を充填することができる。この場合、発泡物を加圧されている容器内に充填するため圧力差を小さくすることができ、溶解している圧縮ガスが発泡物から放出されるのを防止できる。
【0046】
本発明の吐出製品の製造方法により製造される吐出製品は、密封容器内に加圧された発泡物が内容物として充填されていることを特徴とする。この吐出製品の内容物(加圧された発泡物)を吐出することで発泡物は圧力から開放され発泡する、つまり、発泡物の体積が増大し、その泡密度が大きくなる吐出物を吐出することができる。
【0047】
前記密封容器内の圧力は0.2〜1.0MPaであることが好ましく、さらには0.3〜0.8MPaに加圧することが好ましい。前記発泡物への圧力が0.2MPaよりも低い場合は全量吐出できなくなる傾向があり、1.0MPaよりも高い場合は吐出時に飛び散りやすくなる傾向がある。
【0048】
以下に本願発明の吐出製品の製造方法により製造される吐出製品について説明する。
【0049】
本発明の製造方法に用いる水性原液は界面活性剤を含有しており、界面活性剤は水性原液中に圧縮ガスを溶解および/または分散させたときに発泡して、密封容器に充填する発泡物を特定の密度にすると共に、安定な泡を形成するなどの目的で用いられる。
【0050】
前記界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン系界面活性剤;脂肪酸石鹸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ油脂肪酸等の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等)、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤;サーファクチンナトリウム、シクロデキストリン、水添酵素大豆レシチンなどの天然系界面活性剤;N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルグルタミン酸、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤などの1種または2種以上を用いることができる。特に本発明の製造方法に適した界面活性剤としては、圧縮ガスを溶解および/または分散させたときに水性原液を2倍以上の容積に発泡させることができるものが好ましい。なかでも、本発明の製造方法で発泡しやすく、かつ泡の保持性に優れる点から、脂肪酸石鹸などのアニオン系界面活性剤、アミノ酸石鹸などのアミノ酸系界面活性剤を含有することが好ましい。
【0051】
前記界面活性剤の含有量は、水性原液中0.1〜20質量%であることが好ましく、さらには0.2〜15質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は水性原液が発泡しにくく、20質量%よりも多い場合は塗布面で残り使用感が悪くなる傾向がある。
【0052】
本発明の製造方法において水性原液の発泡性および泡の保持性に優れる点から前記界面活性剤に加え、発泡補助剤を含有することが好ましい。
【0053】
前記発泡補助剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース類;キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアガムなどのガム類;デキストリン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス−20)コポリマーなどのアクリル酸エステルなどの水溶性高分子;ぶどう糖、果糖、ショ糖、オリゴ糖、グルコース、スクラロース、エリスリトールなどの糖類などの1種または2種以上を用いることができる。特に本発明の製造方法に適した発泡物が得られやすい点から、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、ゼラチンを用いることが好ましい。
【0054】
前記発泡補助剤を含有する場合の含有量は、水性原液中0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには0.2〜8質量%であることが好ましい。前記発泡補助剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は発泡補助剤を配合する効果が得られにくく、10質量%よりも多い場合は粘度が高すぎて取り扱い難くなる傾向がある。
【0055】
前記水性原液には、吐出製品の用途や目的に応じ有効成分、油剤、パウダーなどを適宜含有させることができる。
【0056】
前記有効成分としては、例えば、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、(アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー、N−ビニルピロリドン/メタクリルアミド/N−ビニルイミダゾール共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーなどのスタイリング剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素などの保湿剤;クロタミトン、d−カンフルなどの鎮痒剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤;オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィン、およびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの抗真菌剤;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤;ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどの殺菌・消毒剤;l−メントール、カンフルなどの清涼剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤;パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタンなどの紫外線散乱剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤;シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、天然香料、合成香料などの各種香料などの1種または2種以上を用いることができる。
【0057】
前記有効成分を含有する場合の含有量は、水性原液中0.01〜10質量%であることが好ましく、さらには0.05〜8質量%であることが好ましい。前記有効成分の含有量が0.01質量%よりも少ない場合は効果が充分に得られにくく、10質量%よりも多い場合は有効成分濃度が高くなりすぎ、有効成分によっては人体へ悪影響を及ぼす場合がある。
【0058】
前記油剤としては、たとえば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール;アボガド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油などの油脂;ミツロウ、ラノリンロウなどのロウ類などの1種または2種以上を用いることができる。
【0059】
前記油剤を含有する場合の含有量は、水性原液中0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには0.5〜8質量%であることが好ましい。前記油剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は油剤を配合する効果が得られにくく、10質量%よりも多い場合は発泡性が悪くなり易い傾向があり、さらに乾燥性が悪く使用感が低下する傾向がある。
【0060】
前記パウダーは、使用感を向上させるなどの目的で用いられる。前記パウダーとしては、たとえば、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、窒化ホウ素などの1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
前記パウダーを含有する場合の含有量は、水性原液中0.01〜5質量%であることが好ましく、さらには0.05〜3質量%であることが好ましい。前記パウダーの含有量が0.01質量%よりも少ない場合はパウダーを配合する効果が得られにくくなり、5質量%よりも多い場合は噴射通路で詰まり易くなる。
【0062】
前記水性原液は、界面活性剤や有効成分などを水などの溶媒に配合することで調製することができる。
【0063】
前記密封容器としては、パウチ容器、エアゾール容器などがあげられる。
【0064】
前記パウチ容器としては特に限定はなく、例えば図1に示すような平袋状パウチ容器、図2に示すような口栓付パウチ容器などが挙げられる。また、パウチ容器の材質としてはアルミ箔の両面にポリエチレンやポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を積層加工したシートなどが挙げられ、パウチ容器はシートの周縁を熱や超音波などで溶着して袋状とすることにより製造することができる。これらのパウチ容器は、吐出製品の用途や目的に応じ適宜選択することができる。パウチ容器を密封容器として使用することで、携帯しやすい吐出製品や、1回使いきりの吐出製品とすることができる。
【0065】
前記エアゾール容器としては特に限定はなく、例えば図3に示すような内部容器を有さないエアゾール容器や、図4および図5に示すような容器および内部容器を有する二重エアゾール容器などが挙げられ、特に二重エアゾール容器を用いた場合、吐出製品をどのような方向から吐出しても加圧剤のみが噴射されるなどのミスユースがなく、内部容器に充填された発泡物を外部から加圧剤により均等な圧力で圧縮し、安定な発泡物を吐出できるという点で優れる。
【0066】
前記内部容器を有さないエアゾール容器としては、円盤状のアルミニウムをインパクト成型や絞り・しごき加工などで有底筒状に成型した1ピースタイプの金属容器、ブリキなどの金属板を円筒状にして溶接し、その上下開口に目金部と底部とを巻き締めた3ピースタイプの金属容器、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いて2軸延伸ブロー成型などにより有底筒状に成型した樹脂容器など、耐圧性を有する容器が挙げられる。
【0067】
前記外部容器および内部容器を有する二重エアゾール容器を密封容器とする場合、前述の耐圧容器(外部容器)の内側に、容積可変の内部容器を備えた二重エアゾール容器などが挙げられる。
【0068】
前記内部容器としては、例えば、図4に示すように外部容器内に設けられた合成樹脂製の内袋42や、図5に示すようにエアゾールバルブに接合されたパウチ容器50などが挙げられる。
【0069】
前記内袋42は、例えば、可撓性を有するポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EvOH)、ナイロン(NY)などの合成樹脂を用いてダイレクトブロー成型などにより有底筒状に成型され、前記合成樹脂の単層構造あるいはPE/EvOH/PE、PE/NY/PEなどの積層構造とすることができる。前記パウチ容器50は、例えば、図2に示すパウチ容器と同様に、アルミ箔の両面に熱可塑性樹脂を張りあわせたシートも用いて袋状とし、エアゾールバルブに接合する接合部材をシートで挟着することで得られるパウチ容器とすることができる。
【0070】
以下に、実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
評価方法を以下に示す。
【0072】
1)泡密度
吐出製品を25℃の恒温水槽中に1時間浸漬してから内容物を体積20mlのカップに吐出し、吐出量を測定して泡の密度を算出した。
○:0.7g/ml以下
×:0.8g/ml以上
【0073】
2)吐出の安定性
吐出製品の泡密度を各10本測定して標準偏差を算出し、吐出の安定性を評価した。
○:標準偏差が0.02g/ml以下
×:標準偏差が0.03g/ml以上
【0074】
<水性原液a〜e>
表1に示す水性原液a〜eを調製した。なお、得られた各水性原液の20℃における液密度は1.00g/mlであった。
【0075】
【表1】

*1:ルナック MY−98(商品名)、花王株式会社製
*2:アミノソープ AR−12(商品名)、味の素株式会社
*3:セタノールTK(商品名)、高級アルコール工業株式会社製
*4:SH3771(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製
*5:NIKKOL HCO−60(商品名)、日光ケミカルズ株式会社製
*6:NIKKOL SO−10V(商品名)、日光ケミカルズ株式会社製
*7:イクオスFGL−200TS(商品名)、新田ゼラチン株式会社製
*8:HEC SE−850(商品名)、ダイセル化学工業株式会社製
*9:GENUGEL WG−108(商品名)、三晶株式会社製
【0076】
<実施例1〜5>
水性原液a〜eを圧力室内に充填し、圧縮ガスとして圧縮空気を圧力室の底部から導入して水性原液に圧縮空気を溶解させた。圧力室の圧力を1MPaに維持しつつ、液面より上部にある回収口から発泡物を回収した。そして、図3に示す密封容器にエアゾールバルブを固着した後、圧縮空気で0.4MPaに加圧し、密封容器の内圧が0.6MPaになるように回収した発泡物を密封容器内に充填して吐出製品を製造した。得られた吐出製品について評価した。評価結果を表2に示す。
【0077】
<比較例1〜5>
水性原液a〜eを図3に示す容器に充填し、エアゾールバルブを固着した後に、圧縮空気で0.6MPaに加圧し、吐出製品を製造した。得られた吐出製品について評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【符号の説明】
【0079】
10 平袋状パウチ容器
20 口栓付パウチ容器
21 口栓
22 パウチ容器
31 耐圧容器
32 発泡物
33 加圧剤
34 マウンティングキャップ
35 エアゾールバルブ
36 ステム
37 ハウジング
38 ディップチューブ
41 外部容器
42 内袋
43 加圧剤
44 ステム
45 発泡物
50 パウチ容器
51 エアゾールバルブ
52 ステム
53 ハウジング
60 原液
61 タンク
62 気体導入口
62a バルブ
62b 微細化部材
63 気体排出口
63a バルブ
64 発泡物回収口
64a バルブ
65 コンプレッサー
66 原液充填口
70 発泡物
71 発泡開始前の原液の液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含有する水性原液に圧縮ガスを溶解させて発泡させる発泡工程と、
前記発泡工程にて得られた発泡物を上昇させて回収する回収工程と、
前記回収工程にて回収された発泡物を開封可能な密封容器に充填する充填工程と
を有する吐出製品の製造方法。
【請求項2】
前記発泡工程を圧力が0.5〜50MPaの加圧環境下で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記回収工程が、発泡工程にて密度が小さくなった発泡物を水性原液および/または圧縮ガスの導入による流れに乗せて上昇させて回収する回収工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記充填工程における密封容器が、加圧剤を充填することで加圧された密封容器である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で製造した吐出製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2013−23241(P2013−23241A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158035(P2011−158035)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】