説明

含金属副産物の造粒物整粒設備

【課題】スケールやグラインダ粉等の含金属副産物の造粒物への転化率を向上する。
【解決手段】整粒設備70は、軸線を横方向に延在させた姿勢で設置された中空の円筒体74と、円筒体74を周方向に変速可能に回転する回転機構82と、円筒体74を傾動する傾動機構88とを備えている。円筒体74に装入された未造粒物は、回転機構82による円筒体74の回転および傾動機構88による円筒体74の傾斜によって、円筒体74の内周面を転動することで、他の未造粒物と吸着・接合して造粒物に成長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼材製造工程で発生する含金属副産物から造粒物を造粒する造粒設備より排出された未造粒物を、造粒物に転化させる整粒処理を行なう造粒物整粒設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼所では、溶解、鋳造、圧延、精整等の各工程を経てステンレス鋼等の金属材を製造する鋼材製造工程において、溶解炉や精錬装置等の原料溶解時に集塵コレクタで吸引除去されるダストや、圧延時に除去した表面酸化物や分塊圧延時の切断屑等のスケールや、グラインダ等の切削工具により鋼片を削った際に生じるグラインダ粉等の様々な副産物が排出される。ダスト、スケールおよびグラインダ粉等の副産物は、鉄分やニッケル分等の有価金属を含んでいるので、これらの副産物(以下、これらを含金属副産物という。)を溶解炉に装入して再利用する試みがなされている。しかし、含金属副産物は細かいので、取扱い性が悪く、また溶解炉にそのまま装入しても集塵コレクタに吸引されて再び外部に排出されてしまうため、有効に再利用するのが難しい問題があった。
【0003】
そこで、含金属副産物を、圧縮造粒(特許文献1参照)や転動造粒(特許文献2参照)して造粒物にすることで、取扱いの容易化を図ることが考えられる。
【特許文献1】特開2002−97525号公報
【特許文献2】特開2002−97514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、鉄の酸化スケールやダスト等の鉄分含有廃棄物に廃プラスチックをバインダーとして混合し、廃プラスチックを加熱することで、鉄分含有廃棄物を圧縮造粒してブリケットを形成する方法が提案されている。しかし、圧縮造粒方法では、鉄分含有廃棄物と廃プラスチックとの混合物を加熱して圧縮する必要があるので、多くのエネルギーを要すると共に設備が過大となる難点がある。
【0005】
特許文献2には、フライアッシュに対して、スケール等の鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえで転動造粒してペレットを形成する方法が開示されている。転動造粒は、圧縮造粒と比較して必要とされるエネルギーが小さい利点はある。しかし、スケールやグラインダ粉は、取扱いに難がある程度に細かいものの、転動造粒するのに適していない大きい粒径のものを含んでいる。このため、含金属副産物の配合条件によっては、造粒設備における転動造粒処理で全ての含金属副産物をペレットに転化できない場合がある。すなわち、含金属副産物を溶解炉で有価金属源として再利用できる割合(回収率)が低くなってしまうことがある。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、スケールやグラインダ粉等の含金属副産物の造粒物への転化率を向上できる含金属副産物の造粒物整粒設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の含金属副産物の造粒物整粒設備は、
軸線を横方向に延在させた姿勢で設置され、鋼材製造工程で発生する含金属副産物から造粒物を造粒する造粒設備より排出された未造粒物が、一方の側部から装入されると共に、他方の側部から造粒物が取出される中空の円筒体と、
前記円筒体を周方向に変速可能に回転する回転機構と、
整粒処理の進行中に、前記円筒体を、水平姿勢と前記他方の側部を傾斜下端とした傾斜姿勢との間で造粒物の形成状態に応じて上下方向に傾動させる傾動機構とを備えていることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、造粒設備から取出された取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物からなる未造粒物を、円筒体に装入して円筒体の内周面を転動させることで、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とを吸着・接合させることができる。すなわち、鋼材製造工程で再利用するためには取扱い性が悪い未造粒物を、造粒物整粒設備により造粒物に転化できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得ると共に、取扱い性を向上し得る。しかも、造粒物整粒設備の整粒処理によって、得られる造粒物の一層の圧密化を図ることができ、造粒物の強度を上げて取扱い性をより向上し得る。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記円筒体の内周面に、半径方向内側に突出した堰部材が配設されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、堰部材により造粒物の移動を阻むことで、円筒体の内周面を未造粒物が転動する時間を稼ぐことができ、造粒物への転化率をより向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る含金属副産物の造粒物整粒設備によれば、従来造粒の困難であった比較的粒径の大きいスケールやグラインダ粉等の含金属副産物の造粒物への転化率を向上することができ、含金属副産物に含まれる有価金属を有効に再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係る含金属副産物の造粒物整粒設備につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、実施例に係る含金属副産物の造粒物整粒設備(以下、単に整粒設備という)70を備える再資源化プラント10を示す概略平面図である。再資源化プラント10は、含金属副産物のうちスケールやグラインダ粉等の粒径が大きいもの(粒径の細かいダストと区別して総称する場合は、スケール類という。)を受入れる第1ホッパー12と、炭化珪素(SiC)等の還元材を受入れる第2ホッパー14と、ダストを貯蔵するダストサイロ24と、スケール類、還元材、ダストおよび水の混合物から造粒物を形成する造粒・整粒設備とを備えている。造粒・整粒設備は、混合物を転動造粒することで造粒物を形成する造粒設備30を備え、この造粒設備30の造粒処理によって混合物のほとんどが取扱いし易い大きさまで成長した造粒物とされるが、取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物(これらの粒状物と混合物とを総称して未造粒物という)が生じる場合がある。そこで、実施例の造粒・整粒設備には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受入れ、未造粒物から造粒物を形成する整粒処理を行なう整粒設備70が設けられている。なお、還元材は、造粒物を溶解炉に装入して再利用した際に、溶鋼から不純物を除去する目的で配合されるものであり、転動造粒による造粒物の形成に関して還元材を配合することは必須要件ではない。
【0012】
前記第1ホッパー12には、目幅が60mm程度に設定された振動スクリーン(図示せず)が設けられ、スケール類のうち転動造粒に適していない大きい粒径のものを振動スクリーンにより排除している。また、第1ホッパー12と造粒設備30との間には、第1ホッパー12から造粒設備30にスケール類を移送する第1コンベヤ16が設置され、第2ホッパー14と造粒設備30との間には、第2ホッパー14から造粒設備30に還元材を移送する第2コンベヤ17が設置されている。
【0013】
前記再資源化プラント10では、ダストの排出元毎およびダストの成分毎にダストサイロ24が夫々設けられ、実施例では4基のダストサイロ24を備えている。実施例では、取鍋精錬装置(LF)から回収されたダストと、アルゴン酸素脱炭装置(AOD)から回収されたダストと、溶解炉におけるニッケル系のダストと、溶解炉におけるクロム系のダストとが夫々のダストサイロ24に分けて貯蔵されている。各ダストサイロ24は、貯蔵したダストを空気圧送により造粒設備30に移送する移送管25を夫々備えている。各移送管25は、移送終端が造粒設備30の上部に設けられた計量器26に夫々接続され、ダストサイロ24から移送管25を介して移送したダストを計量器26で受けて、計量器26で計量した所要量のダストを造粒設備30に装入するようになっている。なお計量器26は、各ダストサイロ24に対応して1つずつ設けられ、ダストサイロ24毎に切分けて造粒設備30にダストが装入される。
【0014】
前記造粒設備30の下部には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を受取って整粒設備70に移送する第3コンベヤ18が設置されている。そして、整粒設備70の取出側には、整粒設備70で形成された造粒物を受取って、造粒物を集積する製品ヤード100まで移送する第4コンベヤ19が設置されている。なお、第1コンベヤ16、第2コンベヤ17、第3コンベヤ18および第4コンベヤ19には、カバーが設けられ、粉塵が外部に漏出したり、雨水が移送物に混入しないようになっている。
【0015】
図2〜図5を参照して、実施例に係る造粒設備30について具体的に説明する。造粒設備30は、スケール類、還元材、ダストおよび水を受入れる円筒形状の処理槽32と、この処理槽32の内部に設けられたブレード52と、同じく処理槽32の内部に設けられたロータ56と、造粒設備30の各機器を制御する制御手段68とを備えている。処理槽32は、縦方向に軸線を延在させた有底の処理槽本体と、この処理槽本体と同心で内部に立設された円筒形状の内壁34とからなる二重円筒形状であって、内壁34と処理槽本体の外壁32aとの間が造粒処理を行なう処理空間33になっている。内壁34は、処理槽本体に対して回転可能に配設される。また、内壁34の外面には、平面視において断面三角形状で処理空間33に突出する突部36が、処理槽32の中心を挟んで対称な関係で複数(実施例では2基)配設されている(図2参照)。
【0016】
前記処理槽32は、上方に開放すると共に、底部に取出口32bが開設されており、取出口32bはシリンダ等の作動機構37b(図4参照)によりスライド移動可能な遮蔽板37aで常には塞がれている(図2参照)。造粒設備30は、造粒処理の適宜タイミングで遮蔽板37aを作動機構37bにより取出口32bを開放する方向に移動して、取出口32bを介して処理槽32の処理空間33から造粒物および未造粒物を第3コンベヤ18に受渡すようになっている。また、処理槽32の上方には、第1コンベヤ16からスケール類を受取って処理槽32に受渡す第1受容部20、第2コンベヤ17から還元材を受取って処理槽32に受渡す第2受容部22、計量した水を供給する給水手段28、前記複数の計量器26および集塵機(図示せず)が配設されている(図1参照)。なお、処理槽32の上部は、カバー(図示せず)で覆われている。
【0017】
前記処理槽32は、処理空間33に装入されたスケール類および還元材の重量を計測することで、スケール類および還元材の装入量を計量する計量手段38を備え(図4参照)、この計量手段38は、制御手段68に電気的に接続されている。制御手段68は、計量手段38によるスケール類または還元材の計量に基づいて、第1コンベヤ16または第2コンベヤ17を停止して、処理空間33に所要量のスケール類または還元材を装入するようになっている。このように、造粒設備30の処理空間33には、各計量器26により計量されたダストと、計量手段38により計量されたスケール類および還元材と、給水手段28により計量された水とが装入される。
【0018】
前記処理槽32における内壁34の内部には、中心に第1回転軸40が回転自在に立設され、第1回転軸40の下部は処理槽32の外底部に設けられた第1変速機構42を介して、処理槽32の外側に設けられた第1モータ44に接続されている(図3参照)。なお、第1モータ44および第1変速機構42は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。第1回転軸40の上部には、該第1回転軸40を挟んで対称な関係で処理槽32の半径方向に延在するアーム46が設けられ、アーム46は第1回転軸40の回転と共に回転するよう構成される。またアーム46には、該アーム46の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に延在させて、一対の第1支持腕48,48が第1回転軸40を挟んで対称に配設されている(図2参照)。各第1支持腕48には、第1回転軸40の回転につれて処理槽32の中心を軸として回転するブレード52と、このブレード52における処理槽32の内底面32cに対する離間間隔を調節する隙間調節機構54とからなる攪拌体50が下垂した状態で設けられている(図3または図5参照)。
【0019】
前記ブレード52は、攪拌体50における隙間調節機構54の下部に、処理槽32の半径方向に延在させて配設された板状の部材である。ブレード52は、該ブレード52における処理槽32の半径方向に沿う一側部52aからこの一側部52aに対向する他側部52bへ向けて処理槽32の内底面32cから離間する傾斜姿勢で設置されている(図5参照)。またブレード52は、処理槽32の内壁34近傍から該内壁34と外壁32aとの略中間部までの間に延在するように配置される(図2参照)。
【0020】
図5に示すように、前記隙間調節機構54は、第1支持腕側に接続した第1ブラケット54aと、この第1ブラケット54aに対して軸部54bを介して処理槽32の周方向へ揺動可能に接続されて、下部にブレード52を備える第2ブラケット54cと、第1ブラケット54aに対して第2ブラケット54cを位置決めするストッパ54dとから構成される。そして、隙間調節機構54は、ストッパ54dの取付位置を変更して、第1ブラケット54aに対する第2ブラケット54cの下垂角度を調節することで、処理槽32の内底面32cに対するブレード52の傾斜角度および離間間隔が変更可能になっている。なお、ブレード52と処理槽32の内底面32cとの離間間隔は、スケール類の粒径との関係で設定される。
【0021】
前記ブレード52は、制御手段68の制御に基づいて第1変速機構42により任意の方向および回転速度で、処理槽32の中心を軸として回転可能に構成される。ここで、ブレード52における傾斜下端の一側部52aを回転方向前側とした回転方向が正方向であって、傾斜上端の他側部52bを回転方向前側とした回転方向が逆方向である。またブレード52は、造粒設備30における造粒初期段階で第1回転速度で逆方向に回転し、造粒中期段階で第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転し、造粒終期段階で第2回転速度で正方向に回転するようになっている。実施例では、第1回転速度が7rpmで、第2回転速度が11rpmに設定されている。
【0022】
前記アーム46には、第1回転軸40を挟んで処理槽32の半径方向に延出した両端部に夫々下垂した状態で配設されたロータ56と、第2モータ58と、この第2モータ58の回転をロータ56に伝達する第2変速機構60とが設けられている(図3参照)。第2モータ58および第2変速機構60は、制御手段68に電気的に夫々接続されている(図4参照)。ロータ56は、アーム46の回転によりブレード52と共に、処理槽32の中心を軸としてブレード52と同一方向に同一速度で回転すると共に、アーム46に対してブレード52における正方向の回転と同一方向に自転するよう構成される。またアーム46の下面には、内壁34が取付けられ、アーム46の回転につれて内壁34および内壁34の突部36が回転するようになっている。
【0023】
前記ロータ56は、上部が第2変速機構60に接続された第2回転軸56aと、この第2回転軸56aの下部に設けられて、第2回転軸56aの半径方向外側へ延出した複数の羽根56bとから構成される(図2参照)。ロータ56には、第2回転軸56aにおける同一高さで放射状に延出する複数の羽根56bからなる羽根組が、上下の関係で多段(実施例では4段)に配設されている(図3参照)。最下段の羽根組を構成する各羽根56bの下面には、処理槽32の内底面32c側へ突出する複数の突起部56cが設けられている。またロータ56は、回転時に処理空間33における半径方向の略全域に亘って羽根56bが通過するようになっている。そして、図6に示すように、各羽根56bの自転方向に沿う断面形状は、自転方向に沿う方向に長辺を延在した矩形を基本として、回転方向前側の上角部には、回転方向後側から前側につれて下方傾斜するテーパが形成されている。
【0024】
前記ロータ56は、制御手段68の制御に基づく第2変速機構60によって、任意の自転速度で自転するよう構成される。またロータ56は、造粒設備30における造粒初期段階で第1自転速度で自転し、造粒中期段階で第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で自転し、造粒終期段階で第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で自転するようなっている。実施例では、第1自転速度が241rpmで、第2自転速度が162rpmで、第3自転速度が110rpmに設定されている。
【0025】
前記アーム46には、該アーム46および第1支持腕48の延在方向と異なる方向で処理槽32の半径方向に沿って延在する複数(実施例では2基)の第2支持腕62が、第1回転軸40を挟んで対称な関係で配設されている。各第2支持腕62の先端には、処理槽32における外壁32aの内面に沿って延在するスクレーパ64が設けられている。スクレーパ64は、平面視において処理槽32の中心側に突出する断面三角形状の部材であって、アーム46の回転につれて外壁32aの内面に沿って回転して、外壁32aの内面に付着する混合物を除去するようになっている。
【0026】
前記造粒設備30では、スケール類、ダストおよび水との混合物が接触する部分が、耐摩耗性金属材料で構成されている。耐摩耗性金属材料としては、例えばハイクロム系やタングステン系等の高張力鋼が採用される。実施例では、処理槽32の底板と、攪拌体50、ロータ56の羽根56b、内壁34の突部36およびスクレーパ64が耐摩耗性金属材料で構成されている。
【0027】
次に、実施例に係る整粒設備70について、図7〜図9を参照して具体的に説明する。整粒設備70は、軸線を横方向に延在させた姿勢で架台72に設置された中空の円筒体74と、この円筒体74を周方向に回転する回転機構82と、円筒体74を傾動する傾動機構88とを備えている。また整粒設備70は、回転機構82および傾動機構88が電気的に接続する制御部94を備え(図9参照)、この制御部94の制御下に円筒体74の回転速度および傾動角度を調節できるようになっている。
【0028】
前記円筒体74は、一方の側端面(一方の側部)74aに開設された第1開口部76と、他方の側端面(他方の側部)74bに開設された第2開口部78とを有し、整粒処理を行なう内部空間77を介して第1開口部76と第2開口部78とが連通している。円筒体74の第1開口部76には、造粒設備30から取出された造粒物および未造粒物を移送する第3コンベヤ18の移送終端部が臨み、第1開口部76を介して第3コンベヤ18から造粒物および未造粒物が内部空間77に装入されるようになっている(図7参照)。また、第2開口部78には、該第2開口部78から放出される造粒物を受けるシュート79が臨み、このシュート79の下方に、整粒設備70と製品ヤード100との間に設置された第4コンベヤ19の移送始端部が配置される。
【0029】
前記円筒体74の内部空間77には、円筒体74の内周面74cから半径方向内側に突出する複数(実施例では3基)の堰部材80が配設されている(図8参照)。複数の堰部材80は、円筒体74の内周面74cにおける同一円周上に、周方向に離間して隙間をあけた状態で配設されている。円筒体74では、堰部材80により造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が阻まれる一方、隙間を介して造粒物等の第1開口部76側から第2開口部78側への移動が許容されるようになっている。なお、堰部材80には、水を含んだ混合物の付着を防止する板(図示せず)が装着されている。
【0030】
前記回転機構82は、第3モータ84の回転を制御部94の制御に基づいて第3変速機構86で変速して円筒体74に伝達し、例えば2rpm〜20rpm(好適には10rpm)の範囲の回転速度で円筒体74を回転するよう構成される。制御部94は、整粒処理において、回転速度を次第に減速するまたは回転速度を段階的に減速するように第3変速機構86を制御している。
【0031】
前記傾動機構88は、円筒体74における他方の側端面74b側に設けられ、架台72に対して円筒体74を傾動可能に支持する軸支部90と、円筒体74における一方の側端面74a側に設けられ、一方の側端面74a側を架台72に対して昇降するシリンダ等を備える昇降部92とから構成される。そして、制御部94により昇降部92を制御することによって、円筒体74は、軸線を水平方向に延在させた水平姿勢と、一方の側端面74a側が他方の側端面74b側より上方に位置した傾斜姿勢との間で傾動される。これにより円筒体74は、傾斜角度(水平面と円筒体74の軸線とがなす角度)が、0°〜2°の範囲で、整粒処理の進行中に造粒物の形成状態に応じて適宜に調節される。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74を0°に近い1°の傾斜角度で運転し、整粒処理が進行するにつれて円筒体74の傾斜角度を次第にまたは段階的に大きくするようになっている。
【0032】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る整粒設備70の作用について、再資源化プラント10による全体の処理の流れに含めて説明する。最初に、造粒設備30の処理槽32に対し、スケール類、還元材およびダストの材料が所定の割合となるように計量して装入される造粒前処理が行なわれる。図示しないストックヤードに貯蔵されているスケール類を第1ホッパー12に装入して、転動造粒に適しない過大なスケール類を振動スクリーンにより除去した後、スケール類は第1コンベヤ16により造粒設備30における処理槽32の上方に位置する第1受容部20へ受渡される。そして、第1受容部20を介して処理槽32にスケール類が装入され、計量手段38による処理槽32に受入れたスケール類の計量に基づいて、第1コンベヤ16を停止することで、予め設定した量のスケール類が処理槽32に入る。一方、ストックヤードにスケール類と別に貯蔵されている還元材は、第2ホッパー14、第2コンベヤ17および第2受容部22を介して処理槽32に装入される。計量手段38による還元材の計量に基づいて第2コンベヤ17を停止することで、予め設定した量の還元材が処理槽32に入る。なお、スケール類と還元材とは、処理槽32への装入タイミングをずらすことで計量手段38により夫々独立して計量される。
【0033】
前記ダストは、ダストサイロ24から対応の移送管25を介して空気圧送されて、対応の計量器26に移送されて、計量器26で計量することで設定量のダストが処理槽32に装入される。ここで、処理槽32に装入するダストとしては、複数のダストサイロ24から移送した成分の異なるダストを適宜の割合で装入して配合しても、単一のダストを装入してもよい。なお、水は造粒処理の過程で給水手段28から供給される。
【0034】
このように、造粒設備30の処理槽32には、スケール類、還元材、ダストおよび水の材料が独立した搬入路を経て装入されるので、各材料が搬入過程で混ざることがなく、材料毎に容易に計量することができる。すなわち、混合物における各材料の配合を正確に行なうことができ、後工程の造粒処理で造粒物を効率よく形成することができる。
【0035】
前記造粒前処理で、スケール類、還元材およびダストを所要の配合割合となるように装入した混合物は、造粒設備30において転動造粒を行なう造粒処理を経て造粒物とされる。造粒処理は、大きくは3つの段階に分けられ、混合物を解砕すると共に混合する造粒初期段階と、混合物を造粒して造粒物を形成する造粒中期段階と、造粒物を成長させる造粒終期段階とを有している。
【0036】
前記造粒初期段階では、ブレード52が低速の第1回転速度で逆方向に回転されると共に、ロータ56が高速の第1自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて下方傾斜するブレード52によって、混合物に対して処理槽32の内底面32cへ向けて力が作用する(図5(b)参照)。すなわち混合物は、ブレード52と処理槽32の内底面32cとに挟まれて潰されるので、比較的粒径の大きいスケール類を破砕して細かくし得ると共に、スケール類、還元材およびダストを混合・混練することができる。また、ブレード52を低速な第1回転速度で回転することで、混合物に対して長い時間に亘って力を加えることができ、破砕および混練を効率よく行なうことができる。そして、ロータ56を高速な第1自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として逆方向に回転することで、混合物を攪拌しつつほぐして細かくすることができる。このように造粒初期段階では、スケール類を破砕および解砕することで、造粒物の核となる粒を形成することができると共に、混合物の粒度分布の均一化を図ることができる。
【0037】
前記造粒中期段階では、給水手段28から処理槽32に対して、水が混合物全体の4重量%〜15重量%の範囲となるように供給される。また造粒中期段階では、ブレード52が第1回転速度より高速に設定した第2回転速度で正方向に回転すると共に、ロータ56が第1自転速度より低速に設定した第2自転速度で回転される。ブレード52を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、回転方向前側から後側へ向けて上方傾斜するブレード52によって、混合物が処理槽32の内底面32c側から上方へ向けて掻き上げられる(図5(a)参照))。すなわち混合物は、ブレード52によって処理槽32の内底面32cから剥がされてブレード52の上面を転動する過程で、粒同士が接触して接合して粒状物として成長し始める。ここで、造粒中期段階の前に造粒初期段階でスケール類を予め破砕して核となる粒を形成してあるから、粒状物の形成が円滑に行なわれる。また粒状物は、更に転動することで圧密化されて、内部に包含していた過剰水分が粒の表面に侵出するので、表面に侵出した過剰水分による表面張力によって、粒または他の小さな粒が粒状物の表面に付着して更に成長する。そして、ブレード52の一側部52aと処理槽32の内底面32cとの離間間隔より粒状物が大きくなると、一部の粒状物はブレード52の一側部52aに押されて処理槽32の内底面32cを転動し、他の粒状物は、ブレード52によって掻き上げられて攪拌される。更に、ロータ56を高速な第1自転速度より低く設定した中速な第2自転速度で自転させつつ、ブレード52と共に処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、羽根56bにより比較的大きい粒状物、小さい粒状物および混合物を攪拌して、両者の接触機会を多くして粒状物の成長が図られる。
【0038】
前記造粒中期段階では、ブレード52およびロータ56が第1回転速度より高速に設定された中速の第2回転速度で回転されているので、処理槽32の混合物および粒状物の接触機会を多く設けることができる。これに対してロータ56は、混合物の解砕を図る第1自転速度より速度を落とした中速の第2自転速度で自転するように設定してあるから、造粒中期段階で形成された粒状物の破壊を抑制しつつ羽根56bにより攪拌することができる。
【0039】
前記造粒終期段階では、ブレード52が第2回転速度で正方向に回転されると共に、ロータ56が第2自転速度より低速に設定した第3自転速度で回転される。造粒終期段階では、ブレード52およびロータ56を処理槽32の中心を軸として正方向に回転することで、造粒中期段階と同様に、ロータ56により混合物および粒状物を攪拌すると共に、ブレード52により混合物および粒状物を処理槽32の内底面32c側から掻き上げつつ、粒状物を転動させて成長を図っている。そして、造粒終期段階では、粒状物がある程度大きくなっているので、ロータ56の自転速度を造粒中期段階の第2自転速度より更に減速した低速の第3自転速度とすることで、羽根56bによる粒状物の破壊を抑制している。但し、造粒終期段階である程度大きくなり過ぎた大型の粒状物は、ロータ56の自転によって羽根56bにより小型の粒状物に分断されて、再び粒状物同士を吸着して成長させる。
【0040】
前記造粒設備30での造粒終期段階を終えて形成された造粒物および造粒物まで至っていない未造粒物は、第3コンベヤ18によって移送されて、整粒設備70の円筒体74に第1開口部76を介して装入される。円筒体74に装入された造粒物および未造粒物は、回転機構82により円筒体74が周方向に回転されることで、円筒体74の内周面74cを転動するから、未造粒物同士または造粒物と未造粒物とが接触して互いに接合する。また、円筒体74は、傾動機構88により他方の側端面74bを傾斜下端として傾いているので、造粒物および未造粒物は、装入側の第1開口部76側から取出側の第2開口部78へ向けて周方向に転動しつつ移動する。ここで、整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の回転速度が高速に設定されているので、未造粒物同士または造粒物と未造粒物との接触機会を多くすることができ、造粒物への円滑な成長を図り得る。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の回転速度を低下させるので、造粒物同士の衝突等に起因する造粒物の分解を抑制することができる。
【0041】
前記整粒設備70は、整粒処理の初期において、円筒体74の傾動角度が小さくなるように傾動機構88を制御しているので、造粒物および未造粒物の円筒体74での滞留時間を長くすることができる。すなわち、未造粒物が第2開口部78から放出されることを抑制できる。そして、整粒設備70は、整粒処理が進行するにつれて、次第にまたは段階的に円筒体74の傾動角度を大きくすることで、成長した造粒物を第2開口部78から適宜に放出することができる。しかも、円筒体74の内周面74cには、複数の堰部材80が立設されているから、これらの堰部材80で造粒物および未造粒物の移動を阻んで、造粒物および未造粒物の滞留時間を稼ぐことができる。
【0042】
このように、整粒設備70による整粒処理で未造粒物は造粒物まで成長し、得られた造粒物は第2開口部78およびシュート79を介して第4コンベヤ19に受渡され、第4コンベヤ19により移送されて製品ヤード100で貯蔵される。
【0043】
実施例の造粒設備30によれば、粒状物の形成段階に合わせて、ブレード52の回転方向および回転速度、ロータ56の自転速度を前述の如く変更することで、粒径の大きいスケール類を含んでいても、造粒物を形成することができる。すなわち、造粒初期段階でブレード52によりスケール類を破砕して、粒状物の核となる粒を形成しているので、他に凝固剤や吸着剤等を添加しなくても、粒径の大きいスケール類を含んでいても造粒物を形成することができる。しかも、スケール類の破砕、混合、混練および造粒を1つの造粒設備30で行なうことができるので、設備および破砕処理の手間を軽減できる。更に、得られた造粒物は、凝固剤や吸着剤等の作用により表面的に固められたものではなく、転動造粒における粒同士の吸着および圧密化の繰返しによって形成されるので、強度に優れている。従って、得られた造粒物は、分解しにくく、優れた取扱い性を有しており、搬送途中での崩壊を抑制できるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得る。
【0044】
前記造粒処理では、ブレード52およびロータ56の回転と共に、処理槽32の内壁34が処理槽32の中心を軸として回転するので、内壁34に設置された突部36によって、内壁34側の混合物または粒状物が外壁32a側に押出される。また、ブレード52およびロータ56の回転と共に、スクレーパ64が処理槽32の中心を軸として外壁32aに沿って回転することで、外壁32a側の混合物または粒状物が内壁34側に押出される。これにより、処理槽32の処理空間33に装入した混合物および粒状物の全体を、ロータ56の羽根56bによりまんべんなく解砕および攪拌することができ、よってブレード52による破砕、混合、混練および転動をむらなく行なうことができる。すなわち、造粒処理の時間を短縮できると共に、処理槽32に装入した含金属副産物の造粒物への転化率を上げることができるから、含金属副産物の再利用効率をより向上できる。
【0045】
前記造粒設備30は、混合物および粒状物が接触する部分が耐摩耗性金属材料で構成されているから、鉄等の金属を多く含むスケール類の如く硬いものであっても、ブレード52、ロータ56、処理槽32の外壁32aおよび内壁34、内壁34の突部36またはスクレーパ64等の摩耗や損傷を抑制することができる。すなわち、造粒設備30の寿命を向上し、メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0046】
実施例の整粒設備70によれば、造粒設備30から取出された取扱いし易い大きさまで成長していない粒状物や未造粒の混合物からなる未造粒物を、造粒物と共に円筒体74に装入して円筒体74の内周面を転動させることで、未造粒物同士または未造粒物と造粒物とを吸着・接合させることができる。すなわち、鋼材製造工程で再利用するためには取扱い性が悪い未造粒物を、整粒設備70により成長させて造粒物にできるから、含金属副産物の再利用効率を向上し得ると共に、取扱い性を向上し得る。しかも、整粒設備70の整粒処理によって、造粒物の一層の圧密化を図ることができ、造粒物の強度を上げて取扱い性をより向上し得る。
【0047】
前述した実施例は、更に以下の如く変更を行なうことも可能である。
(1)造粒設備としては実施例の構成が本発明に係る整粒設備に前置するのに適しているが、公知の造粒装置で代用することもできる。
(2)実施例の造粒物整粒設備では、造粒設備から円筒体に造粒物および未造粒物を装入したが、未造粒物のみを円筒体に装入して整粒処理を施してもよい。
(3)実施例の造粒物整粒設備は、両端面に開口部を夫々設けたが、造粒物の取出し側の開口部は、他方の側端面側に偏倚した位置の周面(側部)に設けてもよい。
(4)堰部材は、円筒体の軸方向に離間して複数設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好適な実施例に係る含金属副産物の造粒物整粒設備を備えた再資源化プラントを示す概略平面図である。
【図2】実施例の造粒設備を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】実施例の造粒設備の制御ブロック図である。
【図5】実施例の造粒設備において、ブレードを拡大して示す側面図であって、(a)は正方向に回転した場合であり、(b)は逆方向に回転した場合を示す。
【図6】実施例の造粒設備において、ロータの羽根を拡大して示す図2のB−B線断面図である。
【図7】実施例に係る含金属副産物の造粒物整粒設備を一部破断して示す側面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】実施例に係る含金属副産物の造粒物整粒設備の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
30 造粒設備,74a 一方の側端面(一方の側部),70 整粒設備,
74b 他方の側端面(他方の側部),74 円筒体,80 堰部材,82 回転機構,
88 傾動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を横方向に延在させた姿勢で設置され、鋼材製造工程で発生する含金属副産物から造粒物を造粒する造粒設備(30)より排出された未造粒物が、一方の側部(74a)から装入されると共に、他方の側部(74b)から造粒物が取出される中空の円筒体(74)と、
前記円筒体(74)を周方向に変速可能に回転する回転機構(82)と、
整粒処理の進行中に、前記円筒体(74)を、水平姿勢と前記他方の側部(74b)を傾斜下端とした傾斜姿勢との間で造粒物の形成状態に応じて上下方向に傾動させる傾動機構(88)とを備えている
ことを特徴とする含金属副産物の造粒物整粒設備。
【請求項2】
前記円筒体(74)の内周面(74c)には、半径方向内側に突出した堰部材(80)が配設されている請求項1記載の含金属副産物の造粒物整粒設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−13492(P2009−13492A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180084(P2007−180084)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】