説明

吸収型多層膜NDフィルターの製造方法

【課題】スパッタリングロールコータを用いて優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】この製造方法は、光源11と、光源からの光を3光路に分配しその2光路を構成する第一、第二光ファイバ121、122が成膜室1内に導入される分岐光ファイバ12と、第一光ファイバから照射され薄膜が形成された樹脂フィルム100を透過した光を受光する第一受光ファイバ201の端部20、第二光ファイバから照射された光を受光する第二受光ファイバ202の端部19および第三光ファイバ123の端部18がそれぞれ接続される測定光切替器17とを備えた透過率モニターを用い、第一受光ファイバを経由し測定された透過率と第二受光ファイバを経由し測定された透過率を、第三光ファイバを経由し測定された光源光量に基づき補正すると共に補正値に対応させて成膜条件を調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視域の透過光を減衰させる吸収型多層膜NDフィルターをロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法を用いて製造する方法に係り、特に、優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造できる吸収型多層膜NDフィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のND(Neutral Density Filter)フィルターには、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルターと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターが知られている。そして、反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合には吸収型NDフィルターが一般的に用いられ、この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜ(色ガラスNDフィルター)あるいは吸収物質を塗布するタイプと、基板自体に吸収はなくその表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとが存在する。また、後者の場合は、薄膜表面の反射を防ぐため上記薄膜を多層膜で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の効果を持たせることも行われている。
【0003】
また、小型で薄型のデジタルカメラに用いられる吸収型多層膜NDフィルターは、組込みスペースが狭いことから基板自体を薄くする必要があるため樹脂フィルムが最適な基板とされ、上記薄膜が多層膜で構成された吸収型多層膜NDフィルターとして特許文献1には酸化物誘電体膜と金属吸収膜から成るNDフィルターが開示されている。
【0004】
そして、気相成膜法を用いて吸収型多層膜NDフィルターを製造する場合、バッチ方式に較べ成膜時間が極端に長くなる欠点はあるものの、帯状の樹脂フィルム面に連続して成膜できるロールトゥロールプロセス方式が適している。このロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法を用いた吸収型多層膜NDフィルターの製造方法とは、気相成膜装置の成膜室内に帯状樹脂フィルムを巻き出す第一ロールと巻き出された帯状樹脂フィルムを巻き取る第二ロールを備え、第一ロールと第二ロール間の搬送路中に設けられた成膜領域において第一ロールから巻き出された上記帯状樹脂フィルムの少なくとも片面に吸収膜若しくは誘電体膜を成膜しながら第二ロールにより回収した後、各ロールの回転方向を反転させかつ上記成膜領域において第二ロールから巻き出された帯状樹脂フィルムの吸収膜若しくは誘電体膜上に誘電体膜若しくは吸収膜を成膜しながら第一ロールにより回収し、以下、必要に応じ上記工程を繰り返して吸収膜と誘電体膜から成る吸収型多層膜を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造するものである。
【0005】
ところで、上記酸化物誘電体膜と金属吸収膜を備える吸収型多層膜NDフィルターは吸収膜である金属膜の膜厚が僅か10nm程度であり、例え0.数nmの膜厚誤差によっても透過率が大きく変化してしまう。このため、成膜時間が極端に長くなるロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法により吸収型多層膜NDフィルターを製造する場合、成膜される多層膜の膜厚制御を高い精度で行う必要があった。
【0006】
そして、単層もしくは多層膜の膜厚制御を行う方法として、特許文献2においては、蒸着ゾーンの終点に至る以前の位置において、連続フィルム状基板に堆積した薄膜の膜厚を測定する光学系の膜厚測定手段を配置し、この測定値から最終的に形成される薄膜の膜厚を制御する方法が提案されている。
【0007】
しかし、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜装置に光学系の膜厚測定(モニタリング)手段を組み込む上記方法においては、経時的にモニタリング精度が低下して得られる多層膜の透過率が目標値から大きくズレることがあり、優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造することが困難な問題が存在した。
【特許文献1】特開2006−178395号公報
【特許文献2】特開平08−225940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法を用いて優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造できる吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を提供することにある。
【0009】
そこで、本発明者は、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜装置に組み込んだ場合でもモニタリング精度が経時的に低下し難い透過率モニターを検討し、かつ、この透過率モニターを利用した吸収型多層膜NDフィルターの製造方法に関しその開発を試みた。
【0010】
そして、以下の表1に示す膜構造の平均透過率12.5%の吸収型多層膜NDフィルターは、図1のグラフ図に示すような分光透過特性を有する。吸収膜である金属膜は、その膜厚が僅か7nmしかなく、例え0.数nmの膜厚誤差によっても透過率は大きく変化してしまう。従って、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法では、金属膜の膜厚(透過率)を正確に監視する膜厚(透過率)モニターが必要となる。
【0011】
【表1】

ところで、表1に示す膜構造の吸収型多層膜NDフィルターについて、バッチ方式の気相成膜装置に取り付けられた膜厚モニターによりその成膜中の透過率変化(片面5層分)を測定すると、図2のグラフ図に示すような変化になる。
【0012】
しかし、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜装置に膜厚モニターを取り付けた場合、成膜室内において成膜基板である樹脂フィルム自体が移動してしまうため、バッチ方式の気相成膜装置のように成膜中における光量変化を測定することができない。このため、成膜後の単層あるいは多層膜の光量を測定するしかなく、特許文献2に記載されているように成膜直後における多層膜の透過光量を測定しなければならない。
【0013】
表1に示す膜構造の吸収型多層膜NDフィルターにおいて、各層の成膜後における波長532nmの透過率を表2に示す。光学モニターのフィルム透過率測定投光部から光がフィルムを透過してフィルム透過率測定受光部に直接入射したときの透過率が100%になる。成膜スタート時の透過率は、理論透過率と同等になるようにゲイン調整することもある。基板のPETフィルムは厚さ50μm〜100μmもあるので、干渉を考慮しなくてよい。PETフィルムのA面成膜後、フィルムを裏返してPETフィルムのB面成膜を行うとき、A面成膜時と同じ透過率にゲイン調整してスタートすることができる。このようにして、波長532nmにおける透過率12.3%(=35.1%×35.1%)のNDフィルターが完成する。
【0014】
【表2】

そして、各層の成膜後に、それぞれ目標の透過率になるように成膜条件(例えば、スパッタリング電力、フィルム搬送速度等)を調整すれば、目標とする吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を得ることができる。
【0015】
しかし、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法は上述したようにバッチ方式の気相成膜法に較べて各層の成膜時間が極端に長くなるため、成膜中における成膜室等の熱膨張に起因する位置ズレ等により光学モニターにおける光源光量の時間変動が起り易く、この光量変動が原因となってモニタリング精度を経時的に低下させているものと思われる。すなわち、成膜室等が熱膨張した場合、成膜室内を搬送される樹脂フィルムと光学モニターの光源との相対距離が変化し、あるいは、光源からの光を樹脂フィルム面近傍まで導く光ファイバと樹脂フィルムとの相対距離が変化する等して樹脂フィルムへ照射される光源光量が微妙に変動する現象が確認される。
【0016】
そこで、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜中に光学モニターにおける光源光量の時間変化を測定し、光源光量の変化に対応させて測定された多層膜の透過率を補正すると共に、補正後の透過率と目標透過率とのズレ分を考慮して成膜条件を制御したところ、膜厚制御を高い精度で継続的に行うことができ、この結果、優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターの安定生産が可能となることを見出した。本発明はこのような技術的検討と発見に基づき完成されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、請求項1に係る発明は、
気相成膜装置の成膜室内に帯状樹脂フィルムを巻き出す第一ロールと巻き出された帯状樹脂フィルムを巻き取る第二ロールを備え、第一ロールと第二ロール間の搬送路中に設けられた成膜領域において第一ロールから巻き出された上記帯状樹脂フィルムの少なくとも片面に吸収膜若しくは誘電体膜を成膜しながら第二ロールにより回収した後、各ロールの回転方向を反転させかつ上記成膜領域において第二ロールから巻き出された帯状樹脂フィルムの吸収膜若しくは誘電体膜上に誘電体膜若しくは吸収膜を成膜しながら第一ロールにより回収し、以下、必要に応じ上記工程を繰り返して吸収膜と誘電体膜から成る吸収型多層膜を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法を前提とし、
白色光源と、光源からの光を3光路に分配し少なくともその2光路を構成する2本の第一、第二光ファイバが上記成膜室内に導入される第一分岐光ファイバと、成膜室内に導入された第一光ファイバの先端が上記成膜領域から第二ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第一受光ファイバと、成膜室内に導入された第二光ファイバの先端が上記成膜領域から第一ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第二受光ファイバと、上記第一受光ファイバおよび第二受光ファイバの各端部と残り1本の第三光ファイバ端部が上記成膜室外においてそれぞれ接続される測定光切替器と、測定光切替器内に設けられかつ測定光切替器に接続された第一受光ファイバ、第二受光ファイバおよび第三光ファイバから出射される白色光を順次一定の時間間隔ごと通過させて対応する3つの受光部へそれぞれ入射させる光切替用回転マスクと、上記各受光部を含む3光路を一つに統合する第二分岐光ファイバと、統合された光ファイバ端部より入射される白色光から特定波長の単色光を分離する分光器と、分離された単色光が入射されてその光量を測定する光量測定器とを具備する透過率モニターを気相成膜装置に組み込み、かつ、第一受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき正転搬送時に成膜された単一若しくは多層膜の透過率を測定し、第二受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき逆転搬送時に成膜された多層膜の透過率を測定する共に、上記第三光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき光源光量を測定し、測定された光源光量に基づき上記各透過率を補正しかつ各透過率の補正値と目標値とを比較して気相成膜装置における成膜条件を制御することを特徴とする。
【0018】
次に、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
上記第一分岐光ファイバが、分岐前の部分がファイバをランダムに束ねた光ファイバにより構成され、かつ、分岐後の第一、第二および第三光ファイバが上記ファイバ束を少なくとも2本分配した光ファイバであることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
白色光源と第一分岐光ファイバ間に拡散板が配置されていることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1、2または3記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法を前提とし、
上記透過率測定値の安定性が±0.05%/10時間以内であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、
白色光源と、光源からの光を3光路に分配し少なくともその2光路を構成する2本の第一、第二光ファイバが上記成膜室内に導入される第一分岐光ファイバと、成膜室内に導入された第一光ファイバの先端が上記成膜領域から第二ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第一受光ファイバと、成膜室内に導入された第二光ファイバの先端が上記成膜領域から第一ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第二受光ファイバと、上記第一受光ファイバおよび第二受光ファイバの各端部と残り1本の第三光ファイバ端部が上記成膜室外においてそれぞれ接続される測定光切替器と、測定光切替器内に設けられかつ測定光切替器に接続された第一受光ファイバ、第二受光ファイバおよび第三光ファイバから出射される白色光を順次一定の時間間隔ごと通過させて対応する3つの受光部へそれぞれ入射させる光切替用回転マスクと、上記各受光部を含む3光路を一つに統合する第二分岐光ファイバと、統合された光ファイバ端部より入射される白色光から特定波長の単色光を分離する分光器と、分離された単色光が入射されてその光量を測定する光量測定器とを具備する透過率モニターが気相成膜装置に組み込まれ、第一受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき正転搬送時に成膜された単一若しくは多層膜の透過率を測定し、第二受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき逆転搬送時に成膜された多層膜の透過率を測定する共に、上記第三光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき光源光量を測定し、測定された光源光量に基づき上記各透過率を補正しかつ各透過率の補正値と目標値とを比較して気相成膜装置における成膜条件を制御している。
【0020】
従って、成膜時間が極端に長くなるロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法に上記透過率モニターを組み込んでも光源光量の時間変動に起因した測定誤差が回避されるため、形成された多層膜の透過率について簡易な構造で低コストにも拘らず高い精度でもって継続的に監視することができ、この結果、優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、気相成膜(スパッタリング)装置は、図3に示すように成膜室(真空チャンバ)1と、この真空チャンバ1内に収容され帯状樹脂フィルム100を巻き出す第一ロール(巻き出しロール)5および巻き出された帯状樹脂フィルム100を巻き取る第二ロール(巻き取りロール)6と、巻き出しロール5と巻き取りロール6間の搬送路中に設けられ上記帯状樹脂フィルム100が巻き付けられる水冷キャンロール2と、このキャンロール2の外周面に沿って設けられかつSiスパッタリングターゲット9とNiスパッタリングターゲット10がそれぞれ配置される成膜領域101とでその主要部が構成されている。
【0023】
また、この気相成膜(スパッタリング)装置に組み込まれた透過率モニターは、図3に示すように白色(ハロゲン)光源11と、この光源11からの光路を3光路に分配しその2光路を構成する2本の第一光ファイバ121と第二光ファイバ122が上記真空チャンバ1内に導入される第一分岐光ファイバ12と、上記第一光ファイバ121の先端(投光部)14が上記成膜領域101から第二ロール(巻き取りロール)6側へ搬送される帯状樹脂フィルム100面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルム100を介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルム100を透過した白色光が先端(受光部)16に入射される第一受光ファイバ201と、上記第二光ファイバ122の先端(投光部)13が上記成膜領域101から第一ロール(巻き出しロール)5側へ搬送される帯状樹脂フィルム100面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルム100を介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルム100を透過した白色光が先端(受光部)15に入射される第二受光ファイバ202と、上記第一受光ファイバ201の端部(出射部)20および第二受光ファイバ202の端部(出射部)19と残り1本の第三光ファイバ123の端部(出射部)18が上記真空チャンバ1外においてそれぞれ接続される測定光切替器17と、測定光切替器17内に設けられかつ測定光切替器17に接続された第一受光ファイバ201、第二受光ファイバ202および第三光ファイバ123から出射される白色光を順次一定の時間間隔ごと通過させて対応する3つの受光部21、22、23へそれぞれ入射させる光切替用回転マスク24と、上記各受光部21、22、23を含む3光路を一つに統合する第二分岐光ファイバ26と、統合された第二分岐光ファイバ26の端部より入射される白色光から特定波長の単色光を分離する分光器27と、分離された単色光が入射されてその光量を測定する光量測定器28とでその主要部が構成されている。
【0024】
そして、気相成膜(スパッタリング)装置に組み込まれた透過率モニターにおいては、第一受光ファイバ201と測定光切替器17を経由した単色光に基づき正転搬送時に成膜された単一若しくは多層膜の透過率を測定し、第二受光ファイバ202と測定光切替器17を経由した単色光に基づき逆転搬送時に成膜された多層膜の透過率を測定すると共に、上記第三光ファイバ123と測定光切替器17を経由した単色光に基づき光源光量を測定し、かつ、測定された光源光量に基づき上記各透過率を補正するようになっている。
【0025】
従って、成膜時間が極端に長くなるロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法に上記透過率モニターを組み込んでも光源光量の時間変動に起因した測定誤差が回避されるため、形成された多層膜の透過率について簡易な構造で低コストにも拘らず高い精度でもって継続的に監視することができ、これにより優れた光学特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造することが可能となる。
【0026】
尚、この気相成膜(スパッタリング)装置において、正転搬送とは、帯状樹脂フィルム100が第一ロール(巻き出しロール)5から第二ロール(巻き取りロール)6側へ搬送されることを意味し、逆転搬送とは、帯状樹脂フィルム100が第二ロール(巻き取りロール)6から第一ロール(巻き出しロール)5側へ搬送されることを意味している。
【0027】
以下、本発明に係る気相成膜(スパッタリング)装置と透過率モニターについて更に詳細に説明する。
【0028】
本発明に係るロールトゥロールプロセス方式の気相成膜装置すなわちスパッタリングロールコータは、真空チャンバ1内に巻き出しロール5と巻き取りロール6を具備し、水冷キャンロール2およびフィードロール3、4の駆動によって帯状樹脂フィルム100は搬送される。そして、上述したように巻き出しロール5から巻き取りロール6へフィルム100が搬送される方向を正転方向、反対方向を逆転方向とする。尚、巻き出しロール5と巻き取りロール6がフィルムの張力バランスをとっている。
【0029】
一例として、この実施の形態ではキャンロール2の両側にSiスパッタリングターゲット9とNiスパッタリングターゲット10が配置され、正転搬送でSiスパッタリングを行い、逆転搬送でNiスパッタリングを行う。また、上記吸収型多層膜NDフィルターのSiとNiの膜厚には大きな差があるため同時に成膜することは極めて困難である。
【0030】
そして、フィードロール4とフリーロール8の間には、正転搬送時のSiスパッタリング時に使用する透過率モニターとしての第一光ファイバ121の投光部14と第一受光ファイバ201の受光部16が配置され、フィードロール3とフリーロール7の間には、逆転搬送時のNiスパッタリング時に使用する第二光ファイバ122の投光部13と第二受光ファイバ202の受光部15が配置されている。
【0031】
安定化電源によって安定化されたハロゲン光源11には上述したように第一分岐光ファイバ12が接続されており、光源光量の時間変化を補正するための第三光ファイバ123と、正転搬送時モニター用の第一光ファイバ121および逆転搬送時モニター用の第二光ファイバ122に分岐している。
【0032】
第一分岐光ファイバ12のハロゲン光源11に接続されている端面は、ファイバがランダムに束ねられており、このファイバ束を少なくとも2本に分配したものであることが好ましく、これによってハロゲン光源の位置による強度ムラを最小限に抑えている。更に、第一分岐光ファイバ12とハロゲン光源11間に拡散板を配置してもよい。
【0033】
上記収型多層膜NDフィルターをロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法すなわちロールコータで成膜する場合、透過率モニターにおける受光システム個々のバラツキの影響を無くすため、上述したように白色(ハロゲン)光源11からの光路を3光路に分配しその2光路を構成する2本の第一光ファイバ121と第二光ファイバ122を真空チャンバ1内に導入し、第一光ファイバ121から帯状樹脂フィルム100へ向けて投光された白色光を対応する第一受光ファイバ201で受光し測定光切替器17側へと導光すると共に、第二光ファイバ122から帯状樹脂フィルム100へ向けて投光された白色光を対応する第二受光ファイバ202で受光し測定光切替器17側へと導光し、かつ、第一分岐光ファイバ12の残り1本の第三光ファイバ123を介して白色(ハロゲン)光源11からの光を上記測定光切替器17側へ直接導光するようになっている。そして、上記測定光切替器17内には、図3および図4に示すように開口25を有する円盤状の光切替用回転マスク24が取り付けられており、測定光切替器17に接続された第一受光ファイバ201、第二受光ファイバ202および第三光ファイバ123の各端部(出射部)18、19、20から出射される白色光を、順次一定の時間間隔ごと通過させて対応する3つの受光部21、22、23へそれぞれ入射させるようになっている。尚、測定ノイズを低減させるため、白色(ハロゲン)光源11からの光をチョッパーでチョッピングしロックインアンプにより信号処理を行う方法を併用してもよい。
【0034】
上記光切替用回転マスク24は、例えば5秒毎に120度回転するように制御されており、正転搬送時には、図4に示すように0度の位置において上記開口25が第三光ファイバ123の端部(出射部)18と受光部21間に配置され、また、120度の位置において上記開口25が第一受光ファイバ201の端部(出射部)20と受光部23間に配置されるようになっている。このため、図5に示すように第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した白色光が分光器27に入射されて特定波長の単色光が分離されかつ分離された単色光が光量測定器28に入射されて光源光量が測定されると共に、第一受光ファイバ201と光切替用回転マスク24を経由した白色光が分光器27に入射されて同様に特定波長の単色光が分離されかつ分離された単色光が光量測定器28に入射されて正転搬送時における透過光量が測定されるようになっている。また、逆転搬送時には、図4に示すように0度の位置において上記開口25が第三光ファイバ123の端部(出射部)18と受光部21間に配置され、また、240度の位置において上記開口25が第二受光ファイバ202の端部(出射部)19と受光部22間に配置されるようになっている。このため、図6に示すように第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した白色光が分光器27に入射されて特定波長の単色光が分離されかつ分離された単色光が光量測定器28に入射されて光源光量が測定されると共に、第二受光ファイバ202と光切替用回転マスク24を経由した白色光が分光器27に入射されて同様に特定波長の単色光が分離されかつ分離された単色光が光量測定器28に入射されて逆転搬送時における透過光量が測定されるようになっている。
【0035】
そして、正転搬送時において、第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき透過光量測定前に測定された光源光量がS1、第一受光ファイバ201と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき測定された単一若しくは多層膜の透過光量がT1、第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき透過光量測定後に測定された光源光量がS2とした場合、光源光量の時間変動に伴う上記透過光量T1の補正を行うには、スタート時の光源光量S0として、
T1’=T1/[(S1/S0+S2/S0)/2]
あるいは、
T1’=T1/(S1/S0)、T1’=T1/(S2/S0)
の関係式から補正値(T1’)を求め、この補正値(T1’)に基づき補正した透過率を求めることができる。
【0036】
同様に、逆転搬送時において、第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき透過光量測定前に測定された光源光量がS1、第二受光ファイバ202と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき測定された多層膜の透過光量がT1、第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した単色光に基づき透過光量測定後に測定された光源光量がS2とした場合、光源光量の時間変動に伴う上記透過光量T1の補正を行うには、スタート時の光源光量S0として、
T1’=T1/[(S1/S0+S2/S0)/2]
あるいは、
T1’=T1/(S1/S0)、T1’=T1/(S2/S0)
の関係式から補正値(T1’)を求め、この補正値(T1’)に基づき補正した透過率を求めることができる。
【0037】
もちろん、測定時のノイズ等を考慮して測定光量の指定回数の移動平均を利用することも可能である。
【0038】
このようなモニターシステムを用いて各層成膜直後の透過率を正確に測定し、目標値と比較すると共に、目標値とのズレ分に応じて成膜条件(例えば、スパッタリング電力、フィルム搬送速度等)を調整すれば、目標とする吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を得ることができる。
【0039】
そして、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、組み込まれた上記透過率モニターにより光源光量を測定しかつ光源光量に基づき多層膜全体の成膜中におけるフィルム透過率を補正しているため、成膜時間が極端に長くなるロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法においても透過率測定値の安定性が約±0.05%/10時間以下にすることが可能となる。
【0040】
また、表1に示す吸収型多層膜NDフィルターの膜構成においては、理論解析により光学膜厚モニターの光量誤差が、±1%、±0.2%、±0.1%、±0.05%のとき、それぞれの吸収型多層膜NDフィルターの透過率誤差は、約±1.3%、約±0.3%、約±0.15%、約±0.07%になる。
【0041】
従って、透過率測定値の安定性を約±0.05%/10時間以下にすることが可能な上記透過率モニターを用いて適切にスパッタリング電力等の成膜条件を制御することで、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法により透過率誤差が約±0.07%以内の吸収型多層膜NDフィルターを安定して製造することが可能となる。
【0042】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0043】
まず、分光透過特性が平均透過率12.5%の吸収型多層膜NDフィルターの膜構造(前記の表1に示す)を設計した。
【0044】
成膜には、ロールトゥロールプロセス方式の気相成膜法、すなわち、透過率モニターが装備された図3のスパッタリングロールコータを用いた。
【0045】
また、金属吸収膜を成膜するためのターゲットにはNi合金ターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用い、酸化物誘電体膜であるSiOを成膜するためのターゲットにはSiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用いた。上記Ni合金ターゲットはArガスを導入するDCマグネトロンスパッタリングで成膜し、SiターゲットはArガスを導入するデュアルマグネトロンスパッタリングを行い、SiからSiOを成膜するためにインピーダンスモニター(ボンアルデンヌ社製プラズマエミッションモニター)により酸素導入量を制御した。
【0046】
透過率モニターにおけるモニター波長(単色光)は532nm、光切替用回転マスク24は5秒毎に120度回転し、第三光ファイバ123と光切替用回転マスク24を経由した白色光、第二受光ファイバ202と光切替用回転マスク24を経由した白色光および第一受光ファイバ201と光切替用回転マスク24を経由した白色光が、順次一定の時間間隔ごと分光器27に入射されるようになっている。
【0047】
また、帯状樹脂フィルムには、厚さが100μm、長さが50mの易接着層付PETフィルム(東洋紡社製)を用いた。
【0048】
SiOは帯状樹脂フィルム100の正転搬送(0mから50mへ)時に成膜するため、第一受光ファイバ201と光切替用回転マスク24を経由したモニター波長に基づきその透過率を測定し、Niは帯状樹脂フィルム100の逆転搬送(50mから0mへ)時に成膜するため、第二受光ファイバ202と光切替用回転マスク24を経由したモニター波長に基づきその透過率を測定した。また、完成されたNDフィルターの分光透過特性は、自記分光光度計(日本分光社製V570)を用いて測定した。
【0049】
最初に、帯状樹脂フィルム100の搬送速度を固定し、かつ、成膜されるSiO膜とNi膜の透過率が目標設定値になるようにスパッタ電力を調整して、正転搬送(0mから50mへ)および逆転搬送(50mから0mへ)における50m間の透過率変化を測定した。その結果を以下の表3に示す。
【0050】
【表3】

次に、帯状樹脂フィルム100の搬送速度を固定し、成膜されるSiO膜とNi膜の透過率が目標設定値になるようにスパッタ電力を調整し、かつ、正転搬送(0mから50mへ)および逆転搬送(50mから0mへ)における50m間の透過率変化を測定すると共に、透過率変化を測定する際に目標設定値とのズレ分を考慮して10m毎に目標設定値になるようにスパッタ電力を再調整した。この結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

表4に示された結果から明らかなように、例えば、1層目のSiO膜においてはその目標透過率が94.8%(開始成膜条件であるスパッタ電力は5003W)であるのに対し、帯状樹脂フィルム100を10m搬送した時点における透過率が94.7%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5009W)、20m搬送した時点における透過率が94.8%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5013W)、30m搬送した時点における透過率が94.7%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5016W)、40m搬送した時点における透過率が94.8%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5023W)、および、50m搬送した時点における透過率が94.8%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5027W)であり、目標設定値とのズレ分が極めて少ないことが確認される。
【0052】
同様に、5層目までの目標透過率が35.1%(開始成膜条件であるスパッタ電力は5005W)であるのに対し、帯状樹脂フィルム100を10m搬送した時点における透過率が34.9%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5009W)、20m搬送した時点における透過率が35.0%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5015W)、30m搬送した時点における透過率が35.1%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5021W)、40m搬送した時点における透過率が35.1%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5024W)、および、50m搬送した時点における透過率が35.1%(監視後の成膜条件であるスパッタ電力は5031W)であり、目標設定値とのズレ分が極めて少ない。
【0053】
このように本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、組み込まれた上記透過率モニターにより光源光量を測定しこの光源光量に基づき多層膜全体の成膜中における透過率を補正することができるため、透過率の補正値に基づき成膜条件(スパッタリング電力やフィルム搬送速度等)を適正に制御することで分光透過率の再現性に優れた吸収型多層膜NDフィルターの安定製造が可能になる。
【0054】
尚、帯状樹脂フィルムの材質は限定されるものではなく、具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂フィルムの単体、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂フィルム単体とこの単体の片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。また、上記ノルボルネン樹脂材料については、代表的なものとして日本ゼオン社のゼオノア(商品名)やJSR社のアートン(商品名)等が挙げられる。
【0055】
また、この実施例においては、ロールコータで成膜したロール全長において透過率測定を行っているので品質管理上の利点もある。更に、分光器のモニター波長を2波長以上にして測定精度を上げることや、フィルム搬送を一時停止させて分光器により可視域の分光透過スペクトルを測定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの製造方法によれば、組み込まれた上記透過率モニターにより光源光量を測定しこの光源光量に基づき多層膜全体の成膜中における透過率を補正することができるため、透過率の補正値に基づき成膜条件(スパッタリング電力やフィルム搬送速度等)を適正に制御することで分光透過率の再現性に優れた吸収型多層膜NDフィルターの安定製造が可能になる。従って、製造される吸収型多層膜NDフィルターは小型で薄型のデジタルカメラに搭載される産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】平均透過率12.5%の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフ図。
【図2】バッチ方式の気相成膜装置に取り付けられた膜厚モニターにより測定された成膜中における多層膜の透過率変化(片面5層分)を示すグラフ図。
【図3】本発明に係る透過率モニターが装備されたスパッタリングロールコータの説明図。
【図4】本発明に係る透過率モニターの測定光切替器内に設けられた光切替用回転マスクの概略正面図。
【図5】帯状樹脂フィルムの正転搬送時における光切替用回転マスクの動作と測定光量との関係を示すグラフ図。
【図6】帯状樹脂フィルムの逆転搬送時における光切替用回転マスクの動作と測定光量との関係を示すグラフ図。
【符号の説明】
【0058】
1 成膜室(真空チャンバ)
2 水冷キャンロール
3 フィードロール
4 フィードロール
5 第一ロール(巻き出しロール)
6 第二ロール(巻き取りロール)
7 フリーロール
8 フリーロール
9 Siスパッタリングターゲット
10 Niスパッタリングターゲット
11 白色(ハロゲン)光源
12 第一分岐光ファイバ
13 第二光ファイバ122の先端(投光部)
14 第一光ファイバ121の先端(投光部)
15 第二受光ファイバ202の先端(受光部)
16 第一受光ファイバ201の先端(受光部)
17 測定光切替器
18 第三光ファイバ123の端部(出射部)
19 第二受光ファイバ202の端部(出射部)
20 第一受光ファイバ201の端部(出射部)
21 受光部
22 受光部
23 受光部
24 光切替用回転マスク
25 開口
26 第二分岐光ファイバ
27 分光器
28 光量測定器
100 帯状樹脂フィルム
101 成膜領域
121 第一光ファイバ
122 第二光ファイバ
123 第三光ファイバ
201 第一受光ファイバ
202 第二受光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成膜装置の成膜室内に帯状樹脂フィルムを巻き出す第一ロールと巻き出された帯状樹脂フィルムを巻き取る第二ロールを備え、第一ロールと第二ロール間の搬送路中に設けられた成膜領域において第一ロールから巻き出された上記帯状樹脂フィルムの少なくとも片面に吸収膜若しくは誘電体膜を成膜しながら第二ロールにより回収した後、各ロールの回転方向を反転させかつ上記成膜領域において第二ロールから巻き出された帯状樹脂フィルムの吸収膜若しくは誘電体膜上に誘電体膜若しくは吸収膜を成膜しながら第一ロールにより回収し、以下、必要に応じ上記工程を繰り返して吸収膜と誘電体膜から成る吸収型多層膜を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造する方法において、
白色光源と、光源からの光を3光路に分配し少なくともその2光路を構成する2本の第一、第二光ファイバが上記成膜室内に導入される第一分岐光ファイバと、成膜室内に導入された第一光ファイバの先端が上記成膜領域から第二ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第一受光ファイバと、成膜室内に導入された第二光ファイバの先端が上記成膜領域から第一ロール側へ搬送される帯状樹脂フィルム面の近傍位置に配置されかつ帯状樹脂フィルムを介しその対向側に配置されて帯状樹脂フィルムを透過した白色光が入射される第二受光ファイバと、上記第一受光ファイバおよび第二受光ファイバの各端部と残り1本の第三光ファイバ端部が上記成膜室外においてそれぞれ接続される測定光切替器と、測定光切替器内に設けられかつ測定光切替器に接続された第一受光ファイバ、第二受光ファイバおよび第三光ファイバから出射される白色光を順次一定の時間間隔ごと通過させて対応する3つの受光部へそれぞれ入射させる光切替用回転マスクと、上記各受光部を含む3光路を一つに統合する第二分岐光ファイバと、統合された光ファイバ端部より入射される白色光から特定波長の単色光を分離する分光器と、分離された単色光が入射されてその光量を測定する光量測定器とを具備する透過率モニターを気相成膜装置に組み込み、かつ、第一受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき正転搬送時に成膜された単一若しくは多層膜の透過率を測定し、第二受光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき逆転搬送時に成膜された多層膜の透過率を測定する共に、上記第三光ファイバと測定光切替器を経由した単色光に基づき光源光量を測定し、測定された光源光量に基づき上記各透過率を補正しかつ各透過率の補正値と目標値とを比較して気相成膜装置における成膜条件を制御することを特徴とする吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
【請求項2】
上記第一分岐光ファイバが、分岐前の部分がファイバをランダムに束ねた光ファイバにより構成され、かつ、分岐後の第一、第二および第三光ファイバが上記ファイバ束を少なくとも2本分配した光ファイバであることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
【請求項3】
白色光源と第一分岐光ファイバ間に拡散板が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
【請求項4】
上記透過率測定値の安定性が±0.05%/10時間以内であることを特徴とする請求項1、2または3記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−70432(P2008−70432A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246616(P2006−246616)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】