説明

吸引装置、印刷装置及びマイクロアレイの製造装置

【課題】液滴吐出ヘッドのノズルへの充填動作やノズル内の高粘度化した部分の吸引除去動作を行うに際して排出する液体の量を減少する。
【解決手段】本発明の吸引装置は、配列された複数のノズル孔を備えた液滴吐出ヘッドの当該ノズル孔を外部から吸引する吸引装置において、上記液滴吐出ヘッドの複数のノズル孔が形成された面に密着すべき一面側に上記複数のノズル孔にそれぞれ対応して配置された複数の凹部からなる微小キャップ群を有する第1のキャップと、上記第1のキャップの他面側に閉空間を形成する第2のキャップと、上記閉空間を減圧する減圧手段と、を備え、上記微小キャップ群が気体透過性又は弾力性を有する材質で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置、印刷装置及びマイクロアレイの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット印刷装置では、全ノズルから正常に液滴を吐出するために、キャップ部材を用いてノズル面をキャップし乾燥を防ぐとともに、吸引によりノズル先端まで吐出液体を充填する動作や、ノズル内の高粘度化した部分を吸引除去する動作が必要になるが、その際にインクを大量に捨ててしまうという問題があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、DNAマイクロアレイ(DNAチップ)をインクジェット法で製造する方法が示されているが、少量かつ高価な生体高分子溶液をインクジェットヘッドの流路内に充填するために、DNA溶液をムダに消費してしまうため、非常に高価になってしまう。
【0004】
また、特許文献2は、液体を充填する方法として気体透過膜を使用する方法を提案している。この気体透過膜(気液分離フィルタ)を用いることにより、多種の液体をムダなくノズル先端に充填することができる。しかし、ノズル内の液体が乾燥により粘度上昇し、吐出不能になっている場合に、高粘度化している部分を吸引除去することによりノズルを回復させることが難しい。
【0005】
さらに、特許文献3には、多数の貫通穴を設けた吸引キャップを備えることにより、隣接ノズル間の液体の汚染(コンタミネーション)を防止する方法が提案されているが、排出する液体の量を減らすことは難しい。
【特許文献1】特開2001−186880号公報
【特許文献2】特開2004−66506号公報
【特許文献3】特開2006−69091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、インクジェット法を使用して、微量の液滴を対象体の上に供給する液滴吐出装置では、ノズル先端まで吐出液体を充填する動作や、ノズル内の高粘度化した部分を吸引除去する動作に際してノズルから排出する液体の量を十分に減らすことが難しい。
【0007】
よって、本発明は、液滴吐出ヘッドのノズルへの充填動作やノズル内の高粘度化した部分の吸引除去動作を行うに際して使用する液体の量を大幅に減少することを可能とする吸引装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の吸引装置は、複数のノズル孔を備えた液滴吐出ヘッドの当該ノズル孔を外部から吸引する吸引装置において、上記液滴吐出ヘッドの複数のノズル孔が形成された面に密着すべき一面側に上記複数のノズル孔にそれぞれ対応して配置された複数の凹部からなる微小キャップ群を有する第1のキャップと、上記第1のキャップの他面側に閉空間を形成する第2のキャップと、上記閉空間を減圧する減圧手段と、を備え、上記微小キャップ群が気体透過性又は弾力性を有する材質で構成される。
【0009】
かかる構成とすることによって、1つのノズル孔に微小キャップ群の1つの凹部が接し、1つのノズル孔から吸い出される液量は当該凹部の微小容積に限定される。よって、液体を無駄に排出することを防止して、液滴吐出ヘッドへの液体の充填を行うことが可能となる。また、液体を無駄に排出することを防止してノズル内の粘度上昇した液体を排出除去し、不吐出状態のノズルを回復させることが可能となる。また、1つのノズル孔に1つの微小キャップが設けられるのでノズル孔相互間が隔離され、隣接ノズル間の液体の汚染も防止される。
【0010】
上記微小キャップ群の凹部の開口径(直径)は上記ノズル径(直径)よりも大きく、上記ノズル孔相互の間隔よりも小さいことが望ましい。それにより、1つのノズル孔に1つの微小キャップが設けられ、全ノズル孔の個々に対して微小キャップがそれぞれ配置される。また、微小キャップ内にノズル孔が収まり、確実に液体を収容することができる。
【0011】
例えば、微小キャップの開口径はノズル孔の径の2から5倍程度に設定することができる。
【0012】
上記微小キャップ群を構成する材料としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用することができる。ポリジメチルシロキサンは気体と液体とを分離する気液分離材として機能する。また、ポリジメチルシロキサンは透明であるので外部から内部を観察することができる。また、また、液状のポリジメチルシロキサンと硬化剤とを混合し、型に流し込むことによって微小キャップ群を備える第1のキャップを製造することができる。
【0013】
上記第1及び第2のキャップの少なくとも一部が透光性の部材によって構成され、外部から前記微小キャップ群が観察可能になされることが望ましい。それにより、光学的センサを配置して外部から液体の排出状態を検出することが可能となる。
【0014】
上記微小キャップ群を構成する材料は、自己吸着性を有することが好ましい。これによれば、ノズル形成面と微小キャップ群との密着をさらに向上することが可能となる。ここで、「自己吸着性」とは、素材自体の有する性質(例えば、素材の分子構造)により、対象体へ吸着し得る性質をいう。上記ポリジメチルシロキサンはこのような性質を有する。
【0015】
上記第2のキャップの閉空間内に、上記第1のキャップを支持する通気性の支持部材を備えることが望ましい。それにより、第1のキャップを液滴吐出ヘッドのノズル面に密着させることができる。また、吸引時に吸引力によりフィルタが吸引側に引き寄せられ、ノズル形成面とフィルタとの密着性が弱められるのを回避し得る。支持部材としては、スポンジを使用することができる。
【0016】
更に、上記第1のキャップの一面側に接して、上記ノズル孔より吸引されて上記微小キャップ群の複数の凹部に蓄積された液体を吸収する吸収材を備えることが望ましい。それにより、微小キャップ群から容易に液体を除くことができ、第1のキャップを繰り返し使用することができる。吸収材としは、スポンジなどを使用することができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置、印刷装置及びマイクロアレイの製造装置は、上述した吸引装置を備える。これによれば、液滴吐出ヘッドのノズルへの充填動作やノズル内の高粘度化した部分の吸引除去動作を行うに際して使用する液滴の量を可及的に減少することが可能となって具合がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(第1の実施例)
第1の実施例では、吸引装置は、液体の微粒子を対象物に供給する液滴吐出ヘッドのノズル孔群を覆うキャップとキャップ内を吸引するポンプを備えている。キャップは、第1及び第2のキャップを含んでおり、第1のキャップが第2のキャップで覆われている。第1のキャップには各ノズル孔を個別に覆う微小キャップ群が形成されている。例えば、第1のキャップはポリジメチルシロキサン(PDMS)を材料として、第2のキャップはブチルゴムを材料として構成されている。
【0020】
ポリジメチルシロキサンは吸着性があって液滴吐出ヘッドのノズル面に密着しやすいが、より確実に吸着させるために、第2のキャップ内にスポンジが配置されて、その反発力が第1のキャップを液滴吐出ヘッドのノズル面に押し当てるように作用する。
【0021】
また、ポリジメチルシロキサンの代わりに、ポリカーボネートシート(ADVANTEC社製、商品名:ポリカーボネートタイプメンブランフィルタ)等の多孔性膜を利用することも可能である。
【0022】
第1のキャップの微小キャップ群の底部は、例えば、厚さ50μmのメンブレンになっており、第2のキャップ内を吸引すると、第1のキャップ内の空気が微小キャップ群のメンブレンを透過するためその内部が減圧され、液滴吐出ヘッド内の液体がノズル孔から吸い出される。第1のキャップの微小キャップの側壁からもガスが放出されるため、第1のキャップの微小キャップ群が液体で充満されるまで、吸い出される。すべてのノズル孔からの吸引が完了した後にキャップ全体を液摘出ヘッドのノズル面から離間する。
【0023】
液滴吐出ヘッド内の液体は、吸引キャップの容積相当量しか吸引されないため、液体をムダに排出しない。第1のキャップの微小キャップ群はそれぞれ一定の減圧状態になるため、すべてのノズル孔からムラなく液体の吸出しができる。
【0024】
図1は、本実施形態の吸引装置を説明するための図である。同図に示すように、本実施形態の吸引装置は、概略、第2のキャップに相当するキャップ31と、通気性の支持部材32と、第1のキャップに相当するキャップ33と、吸引手段としてのポンプ35とを含んで構成されている。
【0025】
キャップ31は、チューブ36を介してポンプ35により減圧される空間を形成するものであり、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51の周囲を覆って閉空間を形成するものである。キャップ31は、凹部形状を有し、例えばブチルゴムなどの弾性部材を用い、射出成形等により形成される。弾性部材を用いることで、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51が形成された面53(以下、ノズル形成面という)と密着させることが可能となり、閉空間37内の機密性を高めることが可能となるので好ましい。また、キャップ31の先端に、液滴吐出ヘッド50のノズル形成面53との密着性を高め、吸引時における吸引性を高めるために、Oリング等のパッキンを備えていてもよい。その場合キャップ31の材質は、弾性部材でなく樹脂や金属などの十分な強度をもつ材料であることが好ましい。
【0026】
キャップ33の上面には複数の凹部34からなる微小キャップ群が形成されている。微小キャップ34はノズル孔51の吸引時に過剰な液体52の流出を抑止する。微小キャップ34は各ノズル孔51毎に設けられているため、隣接位置にあるノズル孔51相互間のコンタミネーションを抑止する効果もある。
【0027】
微小キャップ(凹部)34は、例えば、ノズル孔の直径が20μmの場合、微小キャップ34の開口部の直径は40〜100μm程度に設定される。例えば、深さは100μm程度に設定される。これはノズル孔相互間の間隔(例えば、140μm)や液体52の必要な吸引量によって異なる。例えば、微小キャップ群の開口径をノズル孔51の口径に比べて大きく設定すれば、液滴吐出ヘッドとキャップとの位置合せが容易になる。その一方、微小キャップの口径を大きくすると微小キャップが複数のノズル孔を覆ってしまう可能性がある。従って、液滴吐出ヘッドの設計に応じて適宜に微小キャップ34の口径及び深さは設計されるものである。なお、微小キャップ34の開口部形状は、特に限定するものではなく、円形、楕円形、多角形(例:三角形、四角形、五角形、六角形等)のいずれであってもよい。
【0028】
キャップ31とキャップ33との相互間に形成される閉空間37内には、支持部材32としてのスポンジ32が充填されている。スポンジがキャップ33を液滴吐出ヘッド50のノズル形成面53に押しつけ、密着させるように作用する。それにより、ポンプ35によってキャップ31内を吸引してもノズル形成面53とキャップ33との密着性が確保される。また、多孔性ゴムであるスポンジは通気性を有し、微小キャップ内のガスはメンブレン、スポンジを通ってキャップ31の外部に吸い出される。
【0029】
キャップ31の下面には、チューブ36を介して吸引手段としてのポンプ35(例えば、減圧ポンプ、チューブポンプ等)が接続されている。これにより、液滴吐出ヘッド50装着時にキャップ31内を減圧にすることが可能となる。なお、チューブ41は、キャップ31と一体形成されていても別体であってもよい。
【0030】
キャップ31の側面には、微小キャップ34への液体52の充填を検出するための光学センサ60が設けられている。キャップ31及び33は共に透明あるいは透光性材料によって構成することが可能であるが、少なくとも、この光学センサ60と微小キャップ34との相互間は透明あるいは光透過性の部材で構成される。ノズル孔51がライン状に配置される場合には、このラインに沿って各ノズル孔(微小キャップ)に対応して複数の光学センサ60を設け、各ノズルからの排出状態を検出することができるが、一部の微小キャップ34をサンプルとして検出することとしても良い。
【0031】
上述した吸引装置30の動作の一例について説明する。まず、キャップ31と液滴吐出ヘッドとの位置合せを行い、キャップ33の微小キャップ群が形成された面を液滴吐出ヘッド50のノズル形成面53に密着させる(図1参照)。位置合せに際しては、キャップ31と液滴吐出ヘッド50に予めマーキングをしておき、これ等を合わせることによってノズル孔51と微小キャップ34との位置が合致するようにすることが可能である。
次に、ポンプ35を起動させ、吸引を開始する。ポンプ35が起動されると、ノズル孔51内の液体52が微小キャップ34内に排出される。予め実験などによって定めた所定時間吸引を行って微小キャップ34内にノズル孔から液体52を排出した後、ポンプ35を停止する。微小キャップ34の容積以上は吸い出されない。
【0032】
なお、上述した光学検出器60による検出状態に応じてポンプ停止時期を決めることとしても良い。
【0033】
このような動作を行うことにより、液滴吐出ヘッド50の種々のメンテナンスが可能となる。
【0034】
上述したキャップを使用する、メンテナンスには、具体的には、例えば以下のものが含まれる。
例えば、リザーバタンクに収容された液体をインクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドのノズル先端にまで、吐出液体(例:インク、生体試料溶液等)を充填させる操作(プライミング)が含まれる。
【0035】
また、例えば、ノズル孔内の増粘した吐出液体や残留する気泡を除去する操作(サッキング)が含まれる。
【0036】
なお、吸引装置30の使用停止時においては、キャップ31を液滴吐出ヘッド50の乾燥防止のために用いてもよい。
【0037】
(第2の実施例)
上述したキャップは繰り返し使用されることが望ましい。液体の吸引の後、キャップ全体を液滴吐出ヘッドから離間すると、第1のキャップ内に吸い出した液体が保持された状態になる。この上面から吸収材を押し当てて、キャップ内の液体を吸引除去することができる。吸収材は親水(親液)性の繊維や多孔質材であればどのようなものでもよい。また吐出する液体が、有機溶剤やオイルを含むものであれば、それを吸収する材料を選択することによって同様の機能を実現できる。
【0038】
図2は、微小ギャップ群に吸い出された液体を除去する例を示している。同図において図1と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
同図に示すように、基板71の凹部に吸収材72を配置した吸収具70をキャップに密着させる。吸収材72は、例えば、スポンジや吸水パッドである。スポンジ72が微小キャップ34に接触することによって毛細管現象によって液体52がスポンジ内に吸収される。それにより、微小キャップ34内の液体52は吸い出され、キャップが再使用可能となる。
【0039】
(第3の実施例)゜
図3は、本実施形態の吸引装置30の他の構成例を説明するための図であり、図4は、図3の部分拡大図である。両図において図1と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
【0040】
この実施例では、図1に示される閉空間に充填された支持部材32を省略している(バックアップ用のスポンジを設けていない)。キャップ33はポリジメチルシロキサンで構成されており、微小キャップ34の凹部底の部分は膜厚50μmのメンブレンになっている。
【0041】
図4に示すように、キャップ31内を吸引しで減圧することにより、微小キャップ34の底部のメンブレンは下方に向かって凸状に変形し、微小キャップ34の容積が拡大する。この動作に伴ってキャップ内部が減圧されてノズルから液体52が吸い出される。微小キャップ群はそれぞれ同じ程度に容積が変化するため、すべてのノズル51からムラなく液体52の吸出しができる。ポリジメチルシロキサンを使う場合、上述したように、気体の透過による吸引も行われるため、より効果的に吸引が行える。
【0042】
(第4の実施例)
図5は、第4の実施例を示している。同図において図1と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明を省略する。
図5に示すように、この実施例では、キャップ33にキャップ31を重ねるように構成している。既述した第1の実施例ではキャップ31の内側にキャップ33を形成しているが、図5に示すように、2つのキャップ31及び33を上下に重ねて構成してもよい。また、キャップ31及び33を同じ材料で一体的に構成してもよい。
【0043】
このような吸引装置30は、印刷装置に用いられるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)のノズル孔51のメンテナンスや、マイクロアレイの製造装置に用いられる液滴吐出ヘッドのノズル孔51のメンテナンス等に好適に用いられる。
【0044】
(第5の実施例)
次に、上記吸引装置30を備えた印刷装置及びマイクロアレイの製造装置の一例について説明する。
【0045】
図6は、本実施形態のインクジェット印刷装置を説明するための図である。
図6に示すように、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、キャリッジ11、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)50、インクカートリッジ13、キャリッジモータ14、タイミングベルト15、ガイド部材16、ブラテン17、及び吸引装置30から要部が構成されている。
【0046】
キャリッジ11は、液滴(インク滴)を吐出する液滴吐出ヘッド50及び液滴吐出ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ13を搭載し、搬送するためのものである。キャリッジ11は、キャリッジモータ14により駆動されるタイミングベルト15に結合されており、ガイド部材16に案内されてプラテン17の主軸と平行(主走査方向X)に往復移動するように構成されている。記録媒体20の送り方向(副走査方向Y)は、主走査方向Xと直交している。
【0047】
液滴吐出ヘッド50は、ノズル孔から液滴を記録媒体20に吐出するものであり、キャリッジ11下部の記録媒体20に対向する側に装備されている。液滴吐出ヘッド50は、静電アクチュエータ、圧電方式のアクチュエータ、サーマル方式のいずれの方式を採るものであってもよい。
【0048】
インクカートリッジ(タンク)13は、液滴吐出ヘッド50に供給するインク(液体)を貯留する容器であり、不図示の接続部を介して液滴吐出ヘッド50上に取り付けられている。なお、本実施形態では、インクカートリッジ13は液滴吐出ヘッド50と別体として構成されているが、一体に構成されていてもよい。
【0049】
吸引装置30は、上述のように、液滴吐出ヘッド50のノズル孔を外部から吸引するための装置である。吸引装置30は、印刷領域外に位置する液滴吐出ヘッド50の格納位置(ホームポジション)に設置される。吸引装置30は、シリンダ又はボールネジ機構等により昇降可能に構成されている。これにより、必要に応じて、吸引装置30を液滴吐出ヘッド50のノズル開口面(ノズル形成面)まで移動させることが可能となる。なお、キャップ31のみが昇降可能になるよう構成されていてもよい。
【0050】
(第6の実施例)
図7は、本実施形態のマイクロアレイの製造装置を説明するための図である。
同図に示すように、本実施形態のマイクロアレイの製造装置100は、基台101、X軸方向に往復移動する液滴吐出ヘッド50、Y軸方向に往復移動しマイクロアレイ基板105を載置するテーブル103、及び、液滴吐出ヘッド50の格納位置(ホームポジション)に吐出液体充填用の吸引装置30を備えている。なお、図5において、104は液滴吐出ヘッド50及びテーブル103の駆動部であり、液滴吐出ヘッド50及びテーブル103は、例えば、タイミングベルト機構やボールネジ機構等を用いて数値制御方式等により移動させることができる。
【0051】
液滴吐出ヘッド50は、DNA又はタンパク質等を含む生体試料溶液をマイクロアレイ基板105上に吐出するものである。液滴吐出ヘッド50は、外部に液滴を吐出するヘッド部とヘッド部に生体試料溶液を供給する貯留部(タンク)が一体的に形成されていても、別体として形成されていてもよい。
吸引装置30は、上述したものと同様のものを用いることが可能である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、液体をムダに排出することなく、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッドを含む)へ充填ができる。液体をムダに排出することなく、ノズル内の粘度上昇した液体を排出除去し、不吐出状態のノズルを回復させることができる。光学的検出手段により、吸引動作の完了を検知することができるので、不確実な吸引動作を繰り返り行う必要がない。吸収材を備えることにより、吸引キャップ内に残留する排出液体を除去し、吸引キャップの繰り返し使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例を説明する説明図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施例である吐出液体の回収を説明する説明図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施例である微小キャップ群の支持部材を有しない例を説明するための説明図である。
【図4】図4は、微小キャップ底部のメンブレンの変形を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施例である2つのキャップを上下に重ねた例を説明する説明図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施例であるインクジェット印刷装置を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の第6の実施例であるマイクロアレイの製造装置を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 インクジェット印刷装置、11 キャリッジ、13 インクカートリッジ、14 キャリッジモータ、15 タイミングベルト、16 ガイド部材、17 ブラテン、20 記録媒体、30 吸引装置、31 キャップ(第2のキャップ)、32 支持部材、33 キャップ(第1のキャップ)、34 微小キャップ、35 チューブ、36 閉空間、37 閉空間、39 貫通孔、41 チューブ、43 支持部材、45 吸収材、50 液滴吐出ヘッド、51 ノズル孔、52 液体、53 ノズル形成面、72 凸部、73 離型剤、75 成形材料、77 平板、100 マイクロアレイの製造装置、101 基台、103 テーブル、104 駆動部、105 マイクロアレイ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔を備えた液滴吐出ヘッドの当該ノズル孔を外部から吸引する吸引装置であって、
前記液滴吐出ヘッドの複数のノズル孔が形成された面に密着すべき一面側に前記複数のノズル孔にそれぞれ対応して配置された複数の凹部からなる微小キャップ群を有する第1のキャップと、
前記第1のキャップの他面側に閉空間を形成する第2のキャップと、
前記閉空間を減圧する減圧手段と、を備え、
前記微小キャップ群が気体透過性又は弾力性を有する材質で構成される、吸引装置。
【請求項2】
前記微小キャップ群の凹部の開口径は前記ノズル径よりも大きく、前記ノズル孔相互の間隔よりも小さい、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記微小キャップ群はポリジメチルシロキサンである、請求項1又は2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記第2のキャップの閉空間内に通気性を有し、前記第1のキャップを支持する支持部材を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のキャップの少なくとも一部が透光性の部材によって構成され、外部から前記微小キャップ群が観察可能になされた、請求項1乃至4のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項6】
更に、前記第1のキャップの一面側に接して、前記ノズル孔より吸引されて前記微小キャップ群の複数の凹部に蓄積された液体を吸収する吸収材を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の吸引装置を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の吸引装置を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の吸引装置を備えることを特徴とするマイクロアレイの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254351(P2008−254351A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99904(P2007−99904)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】