説明

吸音パネル及び吸音壁

【課題】太陽電池パネルの温度上昇が抑制される吸音パネルを提供する。
【解決手段】背面側に太陽電池パネル3を設け、この太陽電池パネル3の側方に背面部35を設けるとともに、この背面部35の表面に遮熱層を形成させる。太陽電池パネル3の側方に背面部35を設けるので、吸音パネル1の背面側全面に太陽電池パネル3が設けられず、その太陽光の受光による温度上昇が抑制される。また、前記背面部35の表面に遮熱層が形成されるので、背面部35の領域における太陽光の受光による温度上昇が効果的に抑制され、吸音パネル1の温度が低減されて、太陽電池パネル3の発電効率が良好なものとなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車両等の走行に伴う騒音を吸音するために、高速道路や鉄道の沿線等に沿って設置される防音壁として、また橋梁や高架道路橋、堀割、半地下道路等の構造体の桁下、下面部や壁面、天井面等に壁体として取付けられ吸音パネルと、これを設置して形成させる吸音壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両などの走行に伴う騒音を遮音、吸音するために用いられる吸音パネルとして、多数の開孔を有する前面板と背面板とにより形成された中空内に吸音材が内装されたものがある。
【0003】
近年、環境問題への対応のために、太陽光による発電機能をこのような道路付帯設備に備える取り組みが進められている。例えば特許文献1には、矩形枠状のフレームと、前記フレームの一方の面に取着され多数のスリットあるいは孔が形成された金属板と、前記金属板の背面に配置された吸音材と、前記フレームの他方の面に受光面を外側に向けて取着された矩形で薄板状の太陽電池パネルと、を備えることを特徴とする太陽電池パネル一体型遮音パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き太陽電池パネル一体型遮音パネルは、太陽光の受光によって温度が上昇し、この熱によって備えた太陽電池パネルの発電効率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池パネルの温度上昇が抑制される吸音パネルと、これを設置して形成させる吸音壁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る吸音パネルは、前面側に多数の開孔を有する前面板を有し、内部に形成された中空内に吸音材が内装された吸音パネルであって、
背面側には太陽電池パネルが設けられ、
該太陽電池パネルは前記吸音パネルの長手方向中央寄りに配置されて設けられ、
該太陽電池パネルの側方には背面部が設けられるとともに、
前記背面部の表面に遮熱層が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る吸音パネルによれば、背面側に設けた太陽電池パネルを前記吸音パネルの長手方向中央寄りに配置させ、この太陽電池パネルの側方に背面部を設けるので、吸音パネルの背面側全面に太陽電池パネルが設けられず、その太陽光の受光による温度上昇が抑制される。
また、前記背面部の表面に遮熱層が形成されるので、背面部の領域における太陽光の受光による温度上昇が効果的に抑制され、吸音パネルの温度が低減されて、太陽電池パネルの発電効率が良好なものとなされる。
【0009】
また、本発明に係る吸音壁は、立設された2本の支柱間に、前記請求項1に記載の吸音パネルが架設され、前記吸音パネルはその両側に支柱係合部がそれぞれ形成され、該各支柱係合部が前記各支柱にそれぞれ係合されて、前記吸音パネルが前記支柱間に架設され、
前記吸音パネルの背面部の側端にはカバー部が設けられ、該カバー部が前記支柱の背面側を覆うように形成されるとともに、該カバー部の表面に遮熱層が形成されていることを特徴としている。
【0010】
前記吸音パネルの両側に支柱係合部をそれぞれ形成させ、この各支柱係合部を立設された2本の支柱にそれぞれ係合させて、前記吸音パネルを前記支柱間に架設させて吸音壁を形成させると共に、前記吸音パネルの背面部の側端にカバー部を設け、このカバー部を前記支柱の背面側を覆うように形成させれば、前記支柱の背面がカバー部の影となって、太陽光の受光による温度上昇が抑制されるので、支柱への蓄熱が抑制され、その熱が太陽電池パネルに伝わることによる発電効率の低減が生じないので好ましい。
また、このカバー部の表面に遮熱層を形成させれば、この遮熱層の遮熱効果によって支柱への蓄熱が効果的に抑制されるので、好ましい。
【0011】
また、前記吸音パネルと前記支柱の背面との間に隙間部が形成されるように前記カバー部を形成すれば、カバー部と前記支柱とが直接的に接触しないので、カバー部の熱が前記支柱に伝わることによる支柱への蓄熱が抑制され、その熱が太陽電池パネルに伝わることによる発電効率の低減が生じないので好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸音パネルによれば、備えた太陽電池パネルの温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る吸音パネルの実施の一形態を示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は背面図である。
【図2】図1のA−A断面の概要を示す図である。
【図3】図1のB−B断面の概要を示す図である。
【図4】図1のC−C断面の概要を示す図である。
【図5】図1の吸音パネルを支柱間に設置させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は吸音パネルであって、前面板2、太陽電池パネル3、横背面部35、上枠材4、下枠材5、側面板6をそれぞれ固定させた略直方体状に形成されている。吸音パネル1は、アルミニウム板からなる多数の開孔21を有する前面板2と、その背後の太陽電池パネル3とによって形成された中空内に、グラスウールなどに吸音材7が内装され、前面板2の開孔21より中空内に入射された騒音は吸音材7によって吸音される。
【0015】
前面板2は、吸音パネル1の上下の端から中央に至るほど吸音パネル1の内側へ向かうように若干傾斜して設けられており、前面板2の上下方向中央で折り曲げられて形成されたり、上下二枚の前面板2により形成するなどして設けられている。
【0016】
前面板2には、吸音パネル1の長手方向に向かう細長いスリット形状の開孔21が上下方向に23個並設させて開孔列22を形成されている。本実施形態の開孔列22は、前記の前面板2の中央の折れ曲がり部分を挟んで上下方向に2個並べて形成されており、これを前面板2の長手方向に8列並設させて形成させている。
【0017】
前記開孔21は細長いスリット形状に形成してもよく、パンチング孔を穿設させて形成してもよく、その他の形状に形成してもよいが、本実施形態は前面板2の長手方向に細長い切れ込みを形成し、後述する図2に示すようにその上部を外側にひさし状に張り出すように折り曲げてスリット形状に形成させている。このように形成させることで、開孔21を容易に形成できるとともに、外側に張り出した開孔21の上部分が屋根のように機能し、開孔21を通じて雨水等が吸音パネル1内へ入り込みにくいものとしている。
【0018】
図1(ニ)に示すように、吸音パネル1の背面には、太陽電池パネル3が設けられている。本実施形態の太陽電池パネル3は、太陽電池セルを複数並設させた板状の太陽電池パネルの四辺を、アルミニウム押出形材からなる背面枠体31で囲って形成されており、太陽電池パネル3は吸音パネル1の長手方向中央寄りに1枚取り付けられている。
また、前記太陽電池パネル3の横側には横背面部35を、下側には下背面部36をそれぞれ取りつけて吸音パネル1の背面側の隙間を塞いでいる。前記横背面部35と下背面部36とは、亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成させている。
【0019】
図2は図1の太陽電池パネル3を備えた箇所のA−A断面の概要を示す図であり、図3は図1の太陽電池パネル3を備えていない箇所のB−B断面の概要を示す図である。図2は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略に描いている。
吸音パネル1の上面、下面、左右側面を構成する、上枠材4、下枠材5、側面板6は、それぞれ亜鉛めっき鋼板を曲げ加工して形成させており、溶接やリベットなどを用いて互いに固定されている。
この前面側と背面側にそれぞれ前面板2と太陽電池パネル3とを固定させ、吸音パネル1を中空の略直方体形状に形成させている。
【0020】
吸音パネル1の中空内には吸音材7を内装させており、本実施形態の吸音材7は、図2に示すようにその厚みを吸音パネル1の厚みの半分以下に形成させている。
吸音材7は上枠材4と下枠材5との間に架け渡して設けられた帯状の支持金具15に支持されて、吸音パネル1の中空内の前面板2側寄りに取り付けられている。このように取り付けられることで、吸音材7と太陽電池パネル3との間には空隙部11が形成される。
また、本実施形態の吸音材7は、その上下方向の大きさが吸音パネル1の中空部分と略同じに形成されている。
尚、本実施形態の吸音材7は板状に形成させたグラスウールの表面をガラス繊維製のシートで被覆して形成させているが、これに限るものではなく、グラスウールを樹脂フィルムなど他の部材で被覆してもよく、グラスウール以外の材質のものを用いても良い。
【0021】
図4は図1のC−C断面の概要を示す図である。図4は各部材の形状や配置を分かりやすく示すために簡略に描いている。
本実施形態の吸音材7の横方向の両端は、吸音パネル1内の中空の大きさより若干小さく形成されており、具体的には前面板1に設けられた最も端の開孔列22の端より内側に位置するように形成され、開孔列22の開孔21の少なくとも一部と前記空隙部11との間に空気が流通可能な隙間が前記吸音材7の側方に形成されるように設けられている。
【0022】
図2〜4に示されるように、吸音パネル1の背面側に設けられた横背面部35と下背面部36の表面には、遮熱層37が設けられている。本実施形態の遮熱層37は断熱性が高い性質に形成されており、太陽光を受光することで生じた熱を横背面部35や下背面部36の内側方向や横方向へ伝達させずに外方へ反射、放出させることで、横背面部35や下背面部36やその周囲に設けられた太陽電池パネル3などの吸音パネル1の部材の温度上昇を抑制させるようになされている。
遮熱層37の断熱性を高く形成する方法としては、遮熱層37の内部に、ガラスやセラミックなどの中空粒子を含有させる方法や、遮熱層37そのものを発泡材料で形成させる、等の方法を用いることができ、その他の方法を用いても良い。
また、本実施形態の遮熱層37は断熱性の高い性質に形成されているが、遮熱層37の遮熱性を高める方法はこれに限るものではなく、日射反射率の高いチタンホワイト、酸化亜鉛系顔料、酸化鉄系顔料、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン系顔料などの顔料を遮熱層37に含有させて、太陽光を反射させることで温度上昇を抑制するように形成させても良いし、遮熱層37の断熱性と光の反射性の両方を同時に高めてもよい。
【0023】
また、本実施形態の遮熱層37は、亜鉛めっき鋼板で形成された横背面部35と下背面部36の表面に、遮熱塗料を塗装することで形成させているが、これに限るものではなく、遮熱性の高いシートを貼着させて形成させても良いし、遮熱性の高いパネル等の部材を取り付けてもよいし、その他の方法を用いても良い。
【0024】
本実施形態の吸音パネル1の横方向の両端には、中央方向に窪む凹溝19が形成されており、具体的には、凹溝19は吸音パネル1の上下方向に沿って上枠材4の上面から下枠材5の下面に至るように、吸音パネル1の中央方向へ窪むように形成されており、前記凹溝19の前面側に支柱係合部17が形成されるように設けられている。また、前記凹溝19の背面側には、カバー部18が形成されるように設けられており、本実施形態のカバー部18は前記横背面部35の側端に設けられており、具体的には前記カバー部18の外側面を前記横背面部35の側端部分で構成させ、前記カバー部18の内側面部分を側面板6で構成させている。
【0025】
図5は図1の吸音パネル1を支柱8間に設置させた状態を示す平面図である。
本実施形態の吸音パネル1は、並設された2本の支柱8の間に取り付けられて、吸音壁を形成するようになされている。また、吸音パネル1を上下方向に複数段積みさせて吸音壁を形成させてもよい。
支柱2は、その両側の側方に上下方向へ向かう支柱溝部81を備えるように設けられており、具体的には各支柱8は2本のフランジ85とそれらの間に1本のウェブを備えた断面H型となされ、2本のフランジ85が前面側と背面側にそれぞれ配置され、前記各フランジ85とこれらの間に形成されたウェブ86とが前記の各支柱溝部81を形成するようにそれぞれ配置されて立設されている。
また、各支柱81は、各々のウェブ86の間の間隔が、前記吸音パネル1の横方向の大きさより若干大きく形成されるように、配置されて立設されている。
【0026】
吸音パネル1は、その両端に形成された各支柱係合部17を、前記各支柱8の各支柱溝部81内に収納させて、各支柱8間に支持、固定されている。
また、各支柱係合部17の内側面と、支柱8の背面側に配置されたフランジ85の内側面との間には、バネSが取り付けられ、吸音パネル1を支柱8の前面側に配置されたフランジ85の内側面に押し付けるように付勢されて設けられている。
吸音パネル1は、その両端の各支柱係合部17を支柱溝部81に収納させて係合され、支柱8の前方や後方に転落することなく支持固定されるとともに、バネSの付勢によって風や車の通行による振動などを受けても、支柱8と摩擦などを起こさず、その劣化が抑制される。
【0027】
吸音パネル1を固定させた支柱8は、その背面側のフランジ85が、固定させた吸音パネル1の凹溝18に挿入されるようになされ、このフランジ85の更に背面側が吸音パネル1のカバー部18に覆われるようになされる。このため、支柱8の背面はカバー部18の影となって直射日光が照射されないようになされ、日光を受けることでその温度が上昇して支柱8に蓄熱され、吸音パネル1の太陽電池パネル3にその熱が伝わり発電効率を低減させるような問題が生じない。
また、本実施形態のカバー部18は、横背面部35の側端部分で構成されているので、この背面横カバー35に設けられた遮熱層37によって太陽光による昇温が効果的に抑制される。
尚、図5は2本の支柱8の間に吸音パネル1を2本の支柱間に固定させた状態を示しているが、吸音パネル1が取り付けられていない側の側方にも更に支柱8を並設させて、他の吸音パネル1をこれら各支柱8の支柱溝部81に固定させれば、吸音パネル1を2条の支柱溝部81にそれぞれ固定させた支柱8の背面の略全面がカバー部18に覆われて、直射日光の受光を避けることができる。
また、本実施形態のカバー部18の外側面は、横背面部35の側端部分で構成されているが、このような構成に限るものではなく、カバー部18の外側面を横背面部35と別部材で形成させてもよく、また、カバー部18の外側面の表面に設ける遮熱層を、横背面部35に設けた遮熱層37と材質や、部材や、形成方法をそれぞれ異ならせてもよい。
【0028】
また、本実施形態の吸音パネル1は、カバー部18の内側面を構成する凹溝18の内側面と、支柱8の背面との間に隙間部Cが設けられるように、形成されている。
隙間部Cの形成によって、カバー部18と前記支柱8とが直接的に接触しないので、カバー部の熱が前記支柱8に伝わることによる支柱8への蓄熱が抑制され、その熱が太陽電池パネル3に伝わることによる発電効率の低減が生じないので好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 吸音パネル
11 空隙部
12 通気部
15 支持金具
16 補強材
17 支柱係合部
18 カバー部
19 凹溝
2 前面板
21 開孔
22 開孔列
3 太陽電池パネル
31 背面枠体
35 横背面部
36 下背面部
37 遮熱層
4 上枠材
5 下枠材
6 側面板
7 吸音材
8 支柱
81 支柱溝部
S バネ
C 隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側に多数の開孔を有する前面板を有し、内部に形成された中空内に吸音材が内装された吸音パネルであって、
背面側には太陽電池パネルが設けられ、
該太陽電池パネルは前記吸音パネルの長手方向中央寄りに配置されて設けられ、
該太陽電池パネルの側方には背面部が設けられるとともに、
前記背面部の表面に遮熱層が形成されていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
立設された2本の支柱間に、前記請求項1に記載の吸音パネルが架設され、前記吸音パネルはその両側に支柱係合部がそれぞれ形成され、該各支柱係合部が前記各支柱にそれぞれ係合されて、前記吸音パネルが前記支柱間に架設され、
前記吸音パネルの背面部の側端にはカバー部が設けられ、該カバー部が前記支柱の背面側を覆うように形成されるとともに、該カバー部の表面に遮熱層が形成されていることを特徴とする吸音壁。
【請求項3】
前記吸音パネルと前記支柱の背面との間に隙間部が形成されるように前記カバー部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載に吸音壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184908(P2011−184908A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49999(P2010−49999)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】