説明

周波数制御回路およびCDR回路

【課題】調整のための外部接続端子を必要とする部品や外部接続部品を必要とする部品を不要にする。
【解決手段】CDR回路は、周波数制御回路と、制御電圧に応じて発振周波数が制御されかつ入力データにより発振位相が制御される再生クロックを生成する第1のVCO2と、再生クロックによって入力データのデータ識別を行うFF1と、制御電圧に応じて発振周波数が制御される第2のVCO3とを備える。周波数制御回路は、第2のVCO3の出力信号の周波数を参照クロックの周波数と比較し、検出した周波数差に応じた信号を出力する周波数比較器4と、周波数比較器4の出力信号に応じて出力するデジタル値を上下させるアップダウンカウンタ5と、アップダウンカウンタ5の出力をアナログ信号に変換してVCO2,3の制御電圧として出力するD/A変換器6とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器(VCO)の発振周波数を制御する周波数制御回路、および周波数制御回路によって制御されるVCOにより、入カデータと位相が同期したクロックを抽出するとともに、当該クロックを用いて入力データをリタイミングするCDR(Clock Data Recovery)回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)を実現する手法として開発が進められているPON(Passive Optica1 Network)方式等では、バーストデータを扱う必要がある。これらのシステムにおいては、非同期に受け取るバーストデータに対し瞬時に位相同期を確立してクロックを抽出し、そのバーストデータに対して位相同期を確立したクロックを抽出し、このクロックに同期してデータをリタイミングして送り出すCDR回路が必須である。この種の回路は、たとえば非特許文献1に開示されている。
【0003】
図9はこのような用途に用いられるCDR回路の構成例を示している。100はフリップフロップ(以下、FFとする)、101はメインVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)、102はサブVCO、103は位相比較器、104はチャージポンプ、105はループフィルタである。メインVCO101には入力データが入力され、入力データの電圧値遷移点をトリガとしてメインVCO101の再生クロックの位相が入力データの位相と合うように調整される。位相を調整された再生クロックは、入力データとの位相が合ったクロックとしてメインVCO101から出力され、FF100において入力データのリタイミングに使用される。
【0004】
一方、メインVCO101と同じ回路構成のサブVCO102と、位相比較器103と、チャージポンプ104と、ループフィルタ105とを用いてPLL(Phase-Locked Loop)が形成されている。このPLLは、入力データと周波数が等しい参照クロック、あるいは入力データ周波数の整数分の1の周波数の参照クロックに同期して発振している。そして、サブVCO102の周波数を制御する制御電圧は、同時にループフィルタ105からメインVCO101にも供給され、サブVCO102とメインVCO101の周波数が同じになるように制御される。このような構成により、メインVCO101はデータが入力されていないときにも、データと同じ周波数で発振を継続することができ、入力データが入力された場合には位相のみ合わせることで、非常に短い時間で入力データとの同期を確立することができる。
【0005】
【非特許文献1】M.Nogawa,et al.,“A 10 Gb/s Burst-Mode CDR IC in 0.13μm CMOS”,Digest of Technical Papers,ISSCC2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9に示したCDR回路では、トランジスタの製造ばらつきなどにより、PLL内のチャージポンプのチャージ/ディスチャージ電流が設計値通りにならないため、チャージ電流とディスチャージ電流が設計値に近くなるように外部からの調整端子によって調整する必要があるという問題点があった。また、図9に示したCDR回路では、ループフィルタで用いるキャパシタとしてnF以上の大きな容量値が必要であり、キャパシタをIC内に実装することができず、キャパシタが外部部品になってしまうという問題点があった。
なお、以上のような問題点はCDR回路に限らず、発振周波数を所望の値に制御するPLLのような周波数制御回路であれば、同様に発生する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、調整のための外部接続端子を必要とする部品や外部接続部品を必要とする部品が不要な周波数制御回路およびCDR回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電圧制御発振器(VCO)の発振周波数を制御する周波数制御回路において、前記VCOの出力信号の周波数を参照クロックの周波数と比較し、この比較により検出した周波数差に応じた信号を出力する周波数比較器と、この周波数比較器の出力信号に応じて出力するデジタル値を上下させるアップダウンカウンタと、このアップダウンカウンタの出力をアナログ信号に変換して前記VCOの制御電圧として出力するD/A変換器とを備えるものである。
【0009】
また、本発明のCDR回路は、前記周波数制御回路と、前記制御電圧に応じて発振周波数が制御されかつ入力データの電圧値変移点により発振位相が制御される再生クロックを生成する第1のVCOと、前記再生クロックによって前記入力データのデータ識別を行うデータ識別回路と、前記制御電圧に応じて発振周波数が制御される出力信号を前記周波数制御回路に出力する第2のVCOとを備えるものである。
また、本発明のCDR回路は、前記周波数制御回路と、前記制御電圧に応じて発振周波数が制御されかつ入力データの電圧値変移点により発振位相が制御される出力信号を前記周波数制御回路に出力するVCOと、このVCOの出力信号を再生クロックとして前記入力データのデータ識別を行うデータ識別回路とを備えるものである。
また、本発明のCDR回路の1構成例において、前記D/A変換器は、デルタシグマD/A変換器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のチャージポンプのように調整のための外部接続端子を必要とする部品や、ループフィルタのように外部接続部品を必要とする部品を用いる必要がなくなることから、小型かつ低コストな周波数制御回路およびCDR回路を提供することができる。また、本発明の周波数制御回路は、チャージポンプやループフィルタといったアナログ回路に比べて、デジタル回路を多用するものであるため、プロセス、電源電圧、温度などに起因する各パラメータの設計値からのずれが小さくなる、という効果がある。さらに、これらのデジタル回路のうち、周波数比較器とアップダウンカウンタは、カウンタ回路を主とするものなので、回路規模の小さい安価な周波数制御回路およびCDR回路を提供することができる。
【0011】
また、本発明では、D/A変換器としてデルタシグマD/A変換器を用いることにより、プロセス、電源電圧、温度のばらつきに対する耐性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。図1において、1はFF、2は第1のVCO、3は第1のVCOと同じ回路構成の第2のVCO、4は周波数比較器、5はアップダウンカウンタ、6はD/A変換器である。
【0013】
第1のVCO2には入力データが入力され、入力データの電圧値遷移点をトリガとして第1のVCO2の再生クロックの位相が入力データの位相と合うように調整される。位相を調整された再生クロックは、入力データとの位相が合ったクロックとして第1のVCO2から出力される。データ識別回路となるFF1は、この再生クロックにより入力データをリタイミングして、再生データを出力する。
【0014】
一方、第2のVCO3と周波数比較器4とアップダウンカウンタ5とD/A変換器6とは、周波数制御回路を構成している。周波数制御回路は、外部から参照クロックが入力され、周波数比較器4とアップダウンカウンタ5とD/A変換器6と第2のVCO3とがループ状に接続されたループ回路であり、D/A変換器6の出力を第1のVCO2および第2のVCO3の制御電圧として出力する回路である。この周波数制御回路は、入力データと周波数が等しい参照クロックに同期して発振する。
【0015】
前記のとおり、第1のVCO2と第2のVCO3とは、同じ回路構成のものとする。これらのVCOの構成は、例えば非特許文献1に開示された「GatedVCO」と同じものであってもよい。なお、第1のVCO2の信号入力端子には入カデータが入力されるが、第2のVCO3の信号入力端子は終端されている。
また、FF1の代わりとしてFIFO(Fast-In Fast-Out)を用い、書き込みタイミングと読み出しタイミングを別にする構成にしてもよい。
【0016】
[周波数制御回路の動作]
以下、周波数制御回路の動作について説明する。周波数制御回路のうち、周波数比較器4とアップダウンカウンタ5とD/A変換器6とは、第2のVCO3の出力信号の周波数(以下、発振周波数という)を参照クロックの周波数と比較し、第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数より高ければ、第2のVCO3の発振周波数を下げるように第2のVCO3を制御する制御電圧を出力し、該発振周波数が参照クロックの周波数より低ければ、第2のVCO3の発振周波数を上げるように制御する制御電圧を出力する。
【0017】
そして、第2のVCO3は、当該制御電圧によって発振周波数が調整されるが、第2のVCO3の出力信号は周波数比較器4ヘフィードバックされているため、この出力信号の周波数は、参照クロックの周波数と一致するよう制御される。第2のVCO3に入力される制御電圧は、CDR回路のメインVCOである第1のVCO2にも入力される。先に述べたように、第1のVCO2と第2のVCO3とは同じ回路構成のものであるので、第1のVCO2から出力される再生クロックの周波数は、第2のVCO3の出力信号の周波数と一致する。
次に、周波数比較器4、アップダウンカウンタ5、D/A変換器6の動作について説明する。
【0018】
[周波数比較器の動作]
図2は周波数比較器4の構成を示すブロック図である。周波数比較器4は、参照クロックと第2のVCO3の出力信号とを入力とし、第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数より高ければ、第2のVCO3の発振周波数を低下させる信号(以下、ダウン信号という)を出力し、該発振周波数が参照クロックの周波数より低ければ、第2のVCO3の発振周波数を上昇させる信号(以下、アップ信号という)を出力する。
【0019】
この周波数比較器4は、内部クロックに同期して参照クロックのパルス数をカウントするカウンタ40と、カウンタ40から出力されるカウントイネーブル信号がアクティブのときに、内部クロックに同期して第2のVCO3の出力信号のパルス数をカウントするカウンタ41と、カウンタ41のカウント値と予め設定された比較用所定値とを比較して、カウンタ41のカウント値の方が大きければダウン信号を出力し、カウンタ41のカウント値の方が小さければアップ信号を出力するデジタル比較器42とを有する。なお、内部クロックは、参照クロックよりも高い周波数のクロックである。
【0020】
周波数比較器4についてより詳細に説明すると、カウンタ40は、あるタイミングを起点として参照クロックのパルス数をカウントし始めると共に、カウンタ41に対してカウントイネーブル信号を出力する。そして、カウンタ40は、カウント値があらかじめ設定された比較用所定値に到達すると、カウントイネーブル信号の出力を停止する。
【0021】
一方、カウンタ41は、カウンタ40が出力するカウントイネーブル信号の受信を契機として、第2のVCO3の出力信号のパルス数をカウントし始め、カウントイネーブル信号の出力が停止されたときにカウントを停止する。カウント停止後のカウンタ41のカウント値は、その後段に接続されたデジタル比較器42に出力され、デジタル比較器42により、カウンタ41のカウント値とデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値との大小が比較される。ここで、デジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値とカウンタ40にあらかじめ設定された比較用所定値とは、同じ値である。
【0022】
カウンタ41のカウント値とデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値が等しい場合には、参照クロックの周波数と第2のVCO3の発振周波数が等しいことになるので、デジタル比較器42は何も出力しない。カウンタ41のカウント値がデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値より大きい場合には、第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数よりも高いことになるので、デジタル比較器42は、第2のVCO3の発振周波数を低下させるダウン信号として、1つのパルスをダウン信号用の信号線に出力する。また、カウンタ41のカウント値がデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値より小さい場合には、第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数よりも低いことになるので、デジタル比較器42は、第2のVCO3の発振周波数を上昇させるアップ信号として、1つのパルスをアップ信号用の信号線に出力する。
【0023】
以上の説明では、アップ信号、ダウン信号の例として、1つのパルスを用いる構成について説明してきたが、アップ信号、ダウン信号はそれに限るものではない。例えば、カウンタ41のカウント値とデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値との差に相当する数のパルスを出力するようにしてもよい。
【0024】
例えば、一例としてカウンタ40およびデジタル比較器42にあらかじめ設定された比較用所定値を1000とすると、参照クロックの周波数と第2のVCO3の発振周波数が等しい場合には、カウンタ41のカウント値は1000となる。しかし、カウンタ41のカウント値が1003であったとすれば、第2のVCO3の発振周波数は参照クロックの周波数より高かったことになるので、デジタル比較器42は、3(=1003−1000)つのパルスをダウン信号として生成し、アップダウンカウンタ5に出力する。一方、カウンタ41のカウント値が998であったとすれば、第2のVCO3の発振周波数は参照クロックの周波数より低かったことになるので、デジタル比較器42は、2(=1000−998)つのパルスをアップ信号として生成し、アップダウンカウンタ5に出力する。
【0025】
なお、図2の例では、周波数比較器4とアップダウンカウンタ5との接続としてアップ信号用の信号線とダウン信号用の接続線をそれぞれ個別に設ける構成を説明したが、アップ信号とダウン信号が識別できるような形態で出力されるのであれば、1つの信号線でアップ信号とダウン信号を送るようにしてもよい。
【0026】
[アップダウンカウンタの動作]
アップダウンカウンタ5は、アップ信号またはダウン信号に応じてカウント値を上下させて、このカウント値をデジタル値でD/A変換器6に出力する。アップダウンカウンタ5は、周波数比較器4からアップ信号が入力された場合には、直前に出力していたカウント値をアップ信号のパルス数だけ増やし、ダウン信号が入力された場合には、直前に出力していたカウント値をダウン信号のパルス数だけ減らす。
【0027】
[D/A変換器の動作]
D/A変換器6は、アップダウンカウンタ5が出力したデジタル値をアナログ電圧に変換し、このアナログ電圧を第1のVCO2および第2のVCO3の制御電圧として出力する。
【0028】
第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数より高い場合には、ダウン信号が出力されてアップダウンカウンタ5のカウント値が減少し、第2のVCO3に供給される制御電圧が低下するので、第2のVCO3は発振周波数を下げるように動作する。また、第2のVCO3の発振周波数が参照クロックの周波数より低い場合には、アップ信号が出力されてアップダウンカウンタ5のカウント値が増加し、第2のVCO3に供給される制御電圧が上昇するので、第2のVCO3は発振周波数を上げるように動作する。そして、第1のVCO2と第2のVCO3は同じ構成であるから、第1のVCO2も第2のVCO3と同じ周波数の再生クロックを出力する。こうして、再生クロックは、入力データと位相および周波数が合致したクロックとなる。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、従来のチャージポンプのように調整のための外部接続端子を必要とする部品や、ループフィルタのように外部接続部品を必要とする部品を用いる必要がなくなることから、小型かつ低コストな周波数制御回路およびCDR回路を提供することができる。また、本実施の形態の周波数制御回路は、チャージポンプやループフィルタといったアナログ回路に比べて、デジタル回路を多用するものであるため、プロセス、電源電圧、温度などに起因する各パラメータの設計値からのずれが小さくなる、という効果がある。さらに、これらのデジタル回路のうち、周波数比較器4とアップダウンカウンタ5は、カウンタ回路を主とするものなので、回路規模の小さい安価な周波数制御回路およびCDR回路を提供することができる。
【0030】
第1のVCO2の発振周波数は入力データの周波数とほぼ同じ周波数で発振するよう設計される。例えば、入力データが1Gbpsであれば、第1のVCO2も第2のVCO3も約1GHzで動作するよう設計される。
【0031】
なお、第2のVCO3の出力信号を、1/n倍(nは整数)に分周する分周器を介して周波数比較器4に入力するようにしてもよい。例えば、64分周器を用いた場合、第2のVCO3で1GHzの発振周波数を得るには、15.625MHzの参照クロックを用いればよい。これにより、低速の参照クロックを用いることができるので、周波数比較器4に要求される動作速度を緩和することができる。分周器は、周波数比較器4に実装するようにしてもよい。
また、再生クロックの側だけではなく、参照クロックを1/m倍(mは整数)に分周する分周器を用いてもよく、この場合には、参照クロックの周波数を、入力データのデータレートのm/nの周波数に設定しておけばよい。
【0032】
さらには、分周器を用いるのではなく、参照クロックを逓倍器により周波数を上げて、その逓倍後の参照クロックと第2のVCO3の出力信号の周波数を周波数比較器4で比較するようにしてもよい。
【0033】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態に係る周波数比較器4の構成を示すブロック図である。本実施の形態の周波数比較器4は、カウンタ40a,41aと、デジタル比較器42とを有する。
【0034】
カウンタ40aの動作は第1の実施の形態のカウンタ40とほぼ同様であるが、異なる点は、参照クロックのパルス数のカウント値があらかじめ設定されたリセット用所定値に到達すると、カウント値を0にリセットすると共に、カウンタ41aのカウント値をリセットするリセット信号を出力することである。リセット用所定値は、前記比較用所定値よりも大きい値に設定される。
【0035】
カウンタ41aの動作は第1の実施の形態のカウンタ41とほぼ同様であるが、異なる点は、カウンタ40aからリセット信号が出力されたときに、カウント値を0にリセットすることである。
【0036】
こうして、本実施の形態では、カウントイネーブル信号の出力停止後、デジタル比較器42からアップ信号またはダウン信号が出力されるまで待った後に、次の周波数比較のために、カウンタ40a,41aのカウント値をリセットすることができ、第1の実施の形態で説明した周波数比較を繰り返し行うことができる。
カウンタ40aは、リセット信号を出力した後に、参照クロックのカウントを再び開始すると共に、カウンタ41aに対してカウントイネーブル信号を出力すればよい。
【0037】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図4は本発明の第3の実施の形態に係る周波数比較器4の構成を示すブロック図である。本実施の形態の周波数比較器4は、カウンタ40,41と、デジタル比較器42bとを有する。
【0038】
カウンタ40,41の動作は第1の実施の形態と同じである。デジタル比較器42bの動作は第1の実施の形態のデジタル比較器42とほぼ同様であるが、異なる点は、アップ信号またはダウン信号を出力する期間にアップダウンイネーブル信号を出力することである。このアップダウンイネーブル信号は、真のアップ信号またはダウン信号の出力期間であることを示している。
【0039】
周波数比較器4の後段のアップダウンカウンタ5は、アップダウンイネーブル信号が出力されている期間のみ、アップ信号またはダウン信号に応じてカウント値を上下させ、アップダウンイネーブル信号が出力されていない期間では、周波数比較器4の出力を無視する。こうして、本実施の形態では、ノイズなどにより誤ってアップ信号やダウン信号が出力されたとしても、周波数制御回路による発振周波数の制御に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0040】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図5は本発明の第4の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第1の実施の形態で説明した第1のVCO2と第2のVCO3を1つのVCO7で実現したものである。
【0041】
VCO7の信号入力端子には入力データが入力され、入力データの電圧値遷移点をトリガとしてVCO7の再生クロックの位相が入力データの位相と合うように調整される。位相を調整された再生クロックは、入力データとの位相が合ったクロックとしてVCO7から出力され、FF1において入力データのリタイミングに使用される。
【0042】
一方、周波数比較器4には、入力データと周波数が等しい参照クロックと、VCO7から出力された再生クロックとが入力される。周波数比較器4、アップダウンカウンタ5、およびD/A変換器6の動作は、第1の実施の形態で説明したとおりである。したがって、D/A変換器6から制御電圧の供給を受けるVCO7は、参照クロックと同じ周波数で発振する。こうして、再生クロックは、入力データと位相および周波数が合致したクロックとなる。
【0043】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、さらにVCOの個数を2個から1個に低減することができる。
なお、周波数比較器4の構成は、第1〜第3の実施の形態で説明した構成のいずれであってもよい。
【0044】
また、第1の実施の形態と同様に、VCO7から出力される再生クロックを、1/n倍(nは整数)に分周する分周器を介して周波数比較器4に入力するようにしてもよい。これにより、低速の参照クロックを用いることができるので、周波数比較器4に要求される動作速度を緩和することができる。
また、再生クロックの側だけではなく、参照クロックを1/m倍(mは整数)に分周する分周器を用いてもよく、この場合には、参照クロックの周波数を、入力データのデータレートのm/nの周波数に設定しておけばよい。
【0045】
さらには、分周器を用いるのではなく、参照クロックを逓倍器により周波数を上げて、その逓倍後の参照クロックとVCO7の出力信号の周波数を周波数比較器4で比較するようにしてもよい。
【0046】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図6は本発明の第5の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図であり、図5と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第4の実施の形態で説明したD/A変換器としてデルタシグマD/A変換器6aを用いた構成である。
【0047】
図7はデルタシグマD/A変換器6aの構成を示すブロック図である。デルタシグマD/A変換器6aは、デジタル回路からなるデルタシグマ変調器60と、受動素子からなる低域通過フィルタ61とから構成される。
デルタシグマ変調器60は、減算器62と、積分器63と、量子化器64とを有する。
【0048】
減算器62は、入力信号(アップダウンカウンタ5から出力されるデジタルのカウント値)から量子化器64の出力を減算する。積分器63は、減算器62の出力を積分する。量子化器64は、積分器63の出力を量子化した結果を出力する。
そして、低域通過フィルタ61は、量子化器64の出力から、入力信号(アップダウンカウンタ5のカウント値)の帯域外の信号を除去する。
【0049】
デルタシグマ変調器60では、アップダウンカウンタ5から出力されるデジタル値よりもサンプリング周波数を数倍以上高くしてフィードバックを行う。デルタシグマ変調器60のフィードバックループにより、量子化器64で発生する量子化雑音が高周波側にシェーピングされるため、量子化器64のビット数が少なくても高い精度を実現することができる。このように、本実施の形態では、高い精度の制御電圧をVCO7に出力することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、D/A変換器に、ほとんどがデジタル回路であるデルタシグマD/A変換器6aを用いることにより、第1〜第4の実施の形態に比べて、プロセス、電源電圧、温度のばらつきに対する耐性をさらに向上させることができる。
なお、本実施の形態では、デルタシグマ変調器60として積分器が1つの1次デルタシグマ変調器を用いているが、2次以上の高次のデルタシグマ変調器を使用してもよい。
また、本実施の形態では、デルタシグマD/A変換器6aを第4の実施の形態に適用しているが、第1の実施の形態に適用してもよいことは言うまでもない。
【0051】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図8は本発明の第6の実施の形態に係るデルタシグマD/A変換器6aの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のデルタシグマD/A変換器6aは、デルタシグマ変調器65と、低域通過フィルタ61とから構成される。デルタシグマ変調器65は、第5の実施の形態のデルタシグマ変調器60に対して、ディザ生成器66と、加算器67とを追加したものである。
【0052】
ディザ生成器66は、ディザと呼ばれる疑似雑音を発生する。加算器67は、ディザ生成器66で生成されたディザと積分器63の出力とを加算して量子化器64に入力する。
第5の実施の形態で説明したデルタシグマD/A変換器では、DC信号または非常に低い周波数の信号が入力されると、フィードバックループ内でリミットサイクル発振と呼ばれる発振が起こり、入力信号とは無関係の周波数の強度が強くなり、精度が劣化することがある。本実施の形態では、フィードバックループ内にディザを注入することにより、リミットサイクル発振を防ぐことができる。ディザは、量子化雑音と同様にフィードバックループ内でシェーピングされるので、ディザの持つ周波数成分は抑圧される。
【0053】
なお、図8では、量子化器64の手前でディザを加算しているが、リミットサイクル発振が抑圧できればよいので,デルタシグマ変調器内の他の場所でディザを加算してもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電圧制御発振器の発振周波数を制御する周波数制御回路、および周波数制御回路を用いるCDR回路に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るCDR回路の周波数比較器の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る周波数比較器の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る周波数比較器の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係るCDR回路の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係るCDR回路のデルタシグマD/A変換器の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係るデルタシグマD/A変換器の構成を示すブロック図である。
【図9】従来のCDR回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1…FF、2…第1のVCO2、3…第2のVCO3、4…周波数比較器、5…アップダウンカウンタ、6…D/A変換器、6a…デルタシグマD/A変換器、7…VCO、40,41,40a,41a…カウンタ、42,42b…比較器、60,65…デルタシグマ変調器、61…低域通過フィルタ、62…減算器、63…積分器、64…量子化器、66…ディザ生成器、67…加算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御発振器(VCO)の発振周波数を制御する周波数制御回路において、
前記VCOの出力信号の周波数を参照クロックの周波数と比較し、この比較により検出した周波数差に応じた信号を出力する周波数比較器と、
この周波数比較器の出力信号に応じて出力するデジタル値を上下させるアップダウンカウンタと、
このアップダウンカウンタの出力をアナログ信号に変換して前記VCOの制御電圧として出力するD/A変換器とを備えることを特徴とする周波数制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数制御回路と、
前記制御電圧に応じて発振周波数が制御されかつ入力データの電圧値変移点により発振位相が制御される再生クロックを生成する第1のVCOと、
前記再生クロックによって前記入力データのデータ識別を行うデータ識別回路と、
前記制御電圧に応じて発振周波数が制御される出力信号を前記周波数制御回路に出力する第2のVCOとを備えることを特徴とするCDR回路。
【請求項3】
請求項1に記載の周波数制御回路と、
前記制御電圧に応じて発振周波数が制御されかつ入力データの電圧値変移点により発振位相が制御される出力信号を前記周波数制御回路に出力するVCOと、
このVCOの出力信号を再生クロックとして前記入力データのデータ識別を行うデータ識別回路とを備えることを特徴とするCDR回路。
【請求項4】
請求項2または3記載のCDR回路において、
前記D/A変換器は、デルタシグマD/A変換器であることを特徴とするCDR回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−182898(P2009−182898A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22054(P2008−22054)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】